牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました。番外編は終わって第25話です。

ここからはけいおんメインの話が増えていくと思いますが、ホラーとの戦いはちょこちょこ出していく予定です。

今回はタイトル通り、軽音部の合宿回になっております。

軽音部の合宿とは一体どのようなものなのか?

それでは、第25話をどうぞ!




放課後ティータイム結成編
第25話 「合宿 前編」


強大なホラー、グォルブを討滅し、その復活を企んでいた暗黒騎士ゼクスことディオスを討伐してからそれなりに時間が経過していた。

 

統夜はその間も魔戒騎士としてホラーを討滅し続けていた。

 

そしてこの日は終業式であり、翌日からは長い夏休みが始まるのである。

 

夏休みの間は学校に行く機会が減るため、その分時間を魔戒騎士としてエレメントの浄化や自身の鍛錬に使うことの出来る貴重な時間であった。

 

しかし、終業式の放課後、音楽準備室でいつものようにティータイムをしていたその時であった。

 

「合宿をしよう!」

 

律の口から突然合宿の話が告げられたのであった。

 

「おぉ!いいね!やろうやろう!」

 

律の提案に唯はノリノリであった。

 

「合宿ですか……。練習がいっぱいできそうだし、いいですね♪」

 

(アハハ……それはどうかな)

 

梓の言葉を聞いた統夜は苦笑いをしていた。

 

統夜は去年の合宿もどうにか参加したことがあり、その時は練習よりも遊んでる時間が多かったことを思い出していたからである。

 

「ムギ、今年も別荘は使えそうなのか?」

 

「うん♪任せて♪」

 

今年も紬の家の別荘は使えそうとわかり、合宿は決定的だったのだが……。

 

「悪い。今年の合宿なんだけど、参加出来るかわからないんだよ」

 

「えっ?そうなの?」

 

「あぁ。今年の合宿も3泊4日くらいだろ?さすがにそれだけ長い期間魔戒騎士の仕事を休むのもなぁ」

 

統夜は魔戒騎士であるため、合宿に参加するということはそれだけの間、エレメントの浄化もホラー討伐も出来ず、その仕事は全て大輝に任せることになってしまうからである。

 

「そっかぁ……。そういう理由なら仕方ないよね……」

 

統夜が合宿に行けないかもしれないとわかり、唯はしゅんとしていた。

 

「とりあえず。イレス様には頼んでみるよ。ダメ元だけどさ」

 

「それじゃあ、聞いてみてくれないか?もし統夜が駄目なら私たちだけでも行くさ。それは残念だけどな」

 

「わかった。今日も番犬所に立ち寄るつもりだからイレス様には聞いてみるな」

 

統夜は番犬所に寄った時にイレスに合宿に参加出来るよう交渉することになった。

 

善は急げとのことで、統夜はカップに入った紅茶を一気飲みすると、席を立って帰り支度を始めた。

 

「あれ?やーくんもう行くの?」

 

「あぁ、善は急げと言うしな。交渉が終わったら律の携帯にメールを入れるよ」

 

「あぁ、わかった」

 

統夜は帰り支度を終えると、そのまま音楽準備室を後にし、番犬所へ直行した。

 

 

 

「……あら、統夜。今日は随分と早いですね」

 

統夜が番犬所に顔を出すと、イレスは驚いていた。

 

普段なら部活に顔を出している時間なのだが、なぜか統夜は番犬所に顔を出しているからである。

 

「えぇ、実はイレス様にお話がありまして……」

 

「?お話……ですか?あっ、もしかしてまたデートですか?」

 

「いえ……違うんです」

 

「デートじゃないんですね……。あっ!もしかして軽音部のみんなとお出かけですか?」

 

「そんな感じですかね。実は明日から夏休みなんですけど、今度軽音部で3泊4日で合宿に行くことになったのです。俺も参加したいのですが、番犬所の許可を得なければと思いまして」

 

統夜は軽音部で合宿に行くことをイレスに伝えた。

 

「うーんそうですねぇ……。許可したいのは山々ですが、統夜が4日もいないとなるとその間はエレメントの浄化もホラー討伐も大輝1人にやってもらわねばなりませんからねぇ……」

 

イレスは統夜の合宿行きを許可したかったが、大輝1人にかかる負担を考えると、簡単に許可は出せなかった。

 

無論、統夜もそのことは承知していたので、合宿行きを許可してもらえるのは難しいと考えていた。

 

しかし……。

 

「話は聞かせてもらったぞ」

 

突如統夜たちの前に大輝が姿を現した。

 

「だ……大輝さん?」

 

「統夜、4日くらいならこの街を空けても問題はない。ホラーは俺に任せてお前はその合宿とやらを楽しんで来い!」

 

「大輝がそこまで言うのなら良いのですが……。大輝、本当に大丈夫なのですか?」

 

「あぁ、問題ない。俺は俺に出来ることをやるだけだ。それに……お前の高校生活は限られてるからな。楽しめる時に楽しんでおくといい」

 

「いいんですか?でも……」

 

大輝の申し出は有難かったが、統夜は大輝1人に仕事を任せることを申し訳ないと思っていた。

 

「それに、ちょうどいいタイミングで助っ人が来たからな。統夜が合宿に行ったとしても仕事をするのは俺1人ではない」

 

「えっ?助っ人……ですか?」

 

助っ人が来るなんて話は聞いていなかったのか統夜は驚いていた。

 

その時……。

 

「そういうことです。ここは僕に任せて統夜君は楽しんで来て下さい」

 

そう言って番犬所の中に入って来たのは元老院付きの魔戒騎士であり、魔戒法師でもある布道レオだった。

 

「れ……レオさん!?どうして……」

 

「ちょうど元老院からの指令で桜ヶ丘で仕事がありましてね。そのついでに統夜君や大輝さんの手伝いをしようと思ってたんですよ」

 

「あぁ!そういえばお母様がそのようなことを言ってた気がします。今思い出しました」

 

どうやらイレスもレオが来ることを聞いてはいたものの、先ほどまで忘れていたようであった。

 

「それにしてもどうしてこの時期に……?」

 

「僕が学校に潜り込んだ時、唯さんや律さんから合宿の話を聞きましたからね。それで、そろそろ合宿の時期になるかなと思ってたらちょうど元老院から仕事が来たって訳です」

 

『ほぉ、それはなかなか絶妙なタイミングじゃないか』

 

レオの仕事が来るあまりのタイミングの良さにイルバも驚いていた。

 

「そういうことですので、統夜君は思い切り楽しんで来て下さい!」

 

「レオさん……大輝さん……。本当にありがとうございます!」

 

統夜は自分がいない間に仕事をしてくれるレオと大輝に感謝の気持ちを込めて深々とお辞儀をした。

 

「そういう訳ですので、統夜の合宿行きは許可します。統夜、楽しんで来て下さいね」

 

「イレス様……本当にありがとうございます」

 

そして統夜はイレスにも深々と頭を下げてお辞儀をしていた。

 

「それじゃあ、合宿に行く前に一仕事をしてもらいましょう。……指令です」

 

「はい!」

 

イレスの付き人の秘書官が統夜に赤い指令書を渡すと、統夜は魔導ライターを取り出し、指令書を燃やして指令の中身を確認した。

 

指令を確認した統夜はイレス、大輝、レオに一礼をすると、番犬所を後にして、指令の対象となったホラーを探すために行動を開始した。

 

統夜はホラーの捜索中、律に合宿に行ける旨をメールで伝えた。

 

律にメールした後、統夜はホラー捜索を再開し、気が付けば夜になっていた。

 

統夜はイルバのナビゲーションを頼りにホラーのいる場所まで移動すると、そのホラーを鎧を用いて討滅した。

 

ホラー討滅後、統夜はそのまま家路に着いたのである。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

翌日、この日は夏休みであったが、軽音部の練習はあったため、統夜は部活に参加した。

 

この日は珍しくティータイムは少なめで、練習が中心に行われ、昼頃にはこの日の練習は終わった。

 

練習後、統夜たちは合宿の買い物をするために商店街を歩いていた。

 

「合宿の買い物とは聞いてますけど、何を買うんですかね?」

 

初めて合宿に参加する梓はワクワクしながら統夜と澪に聞いていた。

 

「んー、そうだなぁ……」

 

「新しい機材とかですかね?」

 

「えーっと……」

 

統夜と澪は今回の買い物で何を買うのか予想はついていたのだが、返答に困っていた。

 

2人がどう答えるか考えていると……。

 

「水着だよ」

 

水着が売っている店で足を止めた唯があっさりと答えていた。

 

(!あ、遊ぶ気満々だ!)

 

梓は水着を買いに来た時点で練習よりも遊び重視の合宿になると察しがついてしまった。

 

「どうせそんなことだろうと思いました」

 

梓はガクッと肩を落としていた。

 

「べっ、別にずっと遊ぶ訳じゃないぞ」

 

「信用出来ないです!」

 

梓がぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「何で?」

 

『まぁ、普段のお前さんたちを見てたらそれもわかるがな』

 

「ぐぬぬぬ……」

 

イルバのツッコミに律は何も言えなくなってしまった。

 

「まぁ、息抜きも必要だから……。なっ?」

 

「……そっか……。そうですよね!」

 

澪の言葉に梓が納得したところで澪は梓の頭を撫でていた。

 

頭を撫でられた梓はエヘヘと笑いながら喜んでいた。

 

『それにしても、澪と梓だが、2人並ぶと姉妹に見えなくもないよな?』

 

「あぁ、言われてみればそうかもな」

 

統夜とイルバは澪と梓を見ながらこのような会話をしていた。

 

「とりあえず、みんなは水着を見てきなよ。俺は近くで待ってるからさ」

 

統夜は逃げるようにその場から移動しようとするが、律に捕まってしまった。

 

「統夜……。逃がさないよ……」

 

「な、何だよ!」

 

統夜は一刻も早くこの場から離れたいと思っていた。

 

男である統夜が女物だらけの水着売り場付近に居続けるのは恥ずかしいからである。

 

「なぁ、みんな。統夜に水着を選んでもらわないか?」

 

「おぉ!それは面白いかも!」

 

律の提案に唯はノリノリだったのだが……。

 

「悪いが、それは無理」

 

「えぇ!?何でだよぉ!」

 

「恥ずかしいからだよ!」

 

『律、諦めろ。俺様から言わせれば、統夜のセンスで水着を選ぶのはオススメ出来ないぜ』

 

(うぐぐ……。イルバの言ってることは正しいが、なんかムカつくな)

 

統夜はイルバの容赦ない言葉にイラっとしていた。

 

「とりあえず、俺はいいから行ってきなって」

 

「うん、それじゃあ……。行ってくるね」

 

紬が先に店の中に入り、唯たちもそれに続いて店の中に入っていった。

 

「ふぅ……。やれやれ……。とりあえずそこのベンチで待ってるか……」

 

統夜は近くにベンチを発見したので、そこに腰をおろし、全員の買い物が終わるのを待っていた。

 

 

およそ20分ほど待っていると、唯たちが買い物を終えて戻って来たので、その後は行きつけのファストフード店で食事と雑談をしてから解散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

そして合宿当日、統夜たちは駅で待ち合わせをし、電車を乗り継いで紬の別荘へ向かった。

 

電車移動と徒歩移動を合わせると、およそ1時間半ほどかかっていた。

 

それだけの時間を費やし、紬の別荘に到着したのだが……。

 

「「「「「ふぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」」

 

紬以外の5人は別荘のあまりの大きさに驚いていた。

 

「これはまた一段とすげぇなぁ……」

 

律は驚きながらこう呟いていた。

 

「本当にすごいな……」

 

『全くだ。去年も驚いたが、これだけの別荘を複数持ってるってのが驚きだぜ』

 

統夜だけではなく、イルバも別荘の大きさに驚いているようだった。

 

「ムギちゃん!ここが去年言ってた借りれなかった別荘だね?」

 

「ごめんなさい。その別荘は今年もダメだったの……。少し狭いと思うけど、我慢してね」

 

((((まだ上があるのか!))))

 

紬は申し訳なさそうに言っていたのだが、統夜、唯、律、澪の4人はこれより別荘があることに驚いていた。

 

『ほう、ここよりデカイ別荘があるとはなかなか驚きだぜ』

 

「そ、そうかな?」

 

イルバの驚きの言葉に紬は少し照れていた。

 

「とりあえず中に入ろうぜ」

 

統夜たちは別荘の中に入り、荷物などを置いたのだが……。

 

「よっしゃあ!遊ぶぞぉ!」

 

「おぉ!!」

 

いつの間にか水着に着替えていた唯と律は完全に遊ぶ気満々であった。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉい!!!」

 

そんな2人に澪は思わずツッコミを入れていた。

 

「遊ぶのは練習してから!!」

 

「えぇ!?」

 

「遊びたい!」

 

唯と律は頬をぷぅっと膨らませながら抗議していた。

 

『やれやれ……。お前ら、本当に子供だな……』

 

イルバはそんな2人に呆れていた。

 

「私たちは子供だ!」

 

「そうだそうだ!」

 

『おいおい、開き直るなよ……』

 

「あぁ、全くだよ……」

 

ツッコミを入れながら呆れるイルバに統夜は共感していた。

 

「それじゃあ多数決にしよう。私は練習が先がいい」

 

「「遊ぶ!!」」

 

「練習がいいです!」

 

澪と梓は先に練習という意見であり、唯と律は遊ぶという意見であった。

 

そして……。

 

「遊びたいです♪」

 

紬も遊びたいという意見だった。

 

「統夜はどっちなんだ?」

 

「えっと……俺は……」

 

「練習ですよね!?」

 

「遊びだよね!?」

 

決断が遅れた統夜に梓と唯が詰め寄ってきた。

 

「あー……えっとだな……」

 

「統夜の意見で決まるんだからはっきりしろよな!」

 

「そうだそうだ!」

 

続いて澪と律も詰め寄ってきたので統夜はさらに返答に困っていた。

 

『やれやれ……。統夜、お前も男ならはっきり決めたらどうだ?それにお前は別荘着いたら練習したいと言ってたじゃないか!』

 

「まぁ、確かに練習はしたいとは思ったけどな……」

 

「統夜が練習なら多数決でも3対3かぁ……」

 

「イルバはどっちなんですか?」

 

『おいおい、練習も遊びもしない俺様に話を振るなよな。別に俺様はどっちでもいいって思っているぜ』

 

イルバはどちらでもないという中立な意見であった。

 

「それじゃあ公平にじゃんけんで決めないか?俺が勝ったら先に練習で、俺が負けたら遊びってことで」

 

「よっしゃあ!その勝負、受けて立つぜ!」

 

こうして練習か遊びかは統夜と律のじゃんけんで決めることになった。

 

その結果は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すまん」

 

統夜の負けだった。

 

「……統夜が気にすることはないよ……」

 

「そうですよ……」

 

澪と梓は生暖かい目で励ましているものの、先に練習したかったのかその目は少しだけ恨めしそうな目であった。

 

『やれやれ……。お前はここぞって時にはじゃんけんが弱いな、統夜』

 

「うっさい。気にしてるんだから言うなよなぁ」

 

ここぞの時にじゃんけんが弱いことを統夜は気にしていたのか、イルバをジト目で睨みつけていた。

 

こうして遊ぶことになり、全員の着替えが済んだところでビーチに向かっていた。

 

唯たちは全員水着を着ていたのだが、統夜は下は水着であるが、白いTシャツを着て、まるで魔法衣を少し小さくしたような赤いパーカーを着ていた。

 

唯と律は急ぎ足でビーチに向かっていたのだが、残りのメンバーはゆっくりとした足取りでビーチに向かっていた。

 

その道中、澪は先に遊ぶのが納得いかなかったのかブツブツと愚痴を呟いていた。

 

「統夜先輩。ムギ先輩の遊びってどんなのですかね?こんなに凄い別荘を持ってるんですもん」

 

「去年は特に変わったことはなかったけどな。……あっ!これは俺のイメージだけど、豪華なフルーツジュースを飲みながら日向ぼっこをしたり、大きな船でクルージングとかしたりしたら面白いかもな!」

 

統夜は自分のイメージで金持ちの遊びを想像し、それを梓に伝えていた。

 

「あっ、それはわかる気がします!私も似たようなイメージはありましたし!」

 

『おいおい、お前ら。そんな都合のいい展開がある訳……』

 

イルバがある訳ないと言い切ろうとしたその時だった。

 

統夜と梓の目に浮かんできたのは日向ぼっこに最適な椅子が2つと、海に漂う大きな船だった。

 

統夜と梓が驚いていると……。

 

「……いらないって言ってるでしょう!?浜辺にあるものを今すぐ片付けて!お船もいらない!」

 

紬が涙目になりながら家の人間に電話をしていた。

 

「あ……アハハ……」

 

「こんな都合のいい展開がある時もあるんですね……」

 

『全く……。この展開はさすがの俺様も驚きだぜ』

 

統夜の言ったことがそのまま再現されていたことにイルバも驚いていた。

 

統夜たちが驚いている間に船や椅子などは撤収され、それを確認してから統夜はレジャーシートをセットした。

 

レジャーシートのセットが終わると、唯と律がビーチバレーで遊び始め、残りの全員はレジャーシートに座ってのんびりとしていた。

 

ビーチバレーを楽しむ唯と律は満面の笑みを浮かべており、そんな2人の様子を見ていた梓はぷぅっと頬を膨らませていた。

 

(こんなんでちゃんと練習出来るのかなぁ……)

 

多数決で遊ぶことになったものの、ちゃんと練習が出来るのか不安になってしまったのである。

 

「あずにゃん!ねぇねぇ!あずにゃんも一緒に遊ぼうよぉ!」

 

「結構です!」

 

唯が梓を誘うが、梓はふくれっ面のまま唯の誘いを断っていた。

 

「あれぇ?もしかしてスポーツとかは苦手だったりするのかぁ?」

 

律がニヤニヤしながら梓を挑発していた。

 

その言葉に梓はムッとしてしまった。

 

そして……。

 

「そんなことありません!やってやるです!」

 

律の挑発に乗った梓はビーチバレーに参加することになった。

 

こうして3人がビーチバレーを行っている中、統夜、澪、紬の3人はレジャーシートに座ってのんびりとしていた。

 

「ウフフ♪梓ちゃん、すっかりみんなと仲良くなったわねぇ♪」

 

「……そうか?」

 

『俺様はただ単純に律の挑発に乗ってヒートアップしてるだけだと思うんだがな』

 

「俺もそう思う」

 

紬の言葉をイルバが否定し、統夜はそれに賛同していた。

 

「……ところで、統夜君も遊ばないの?」

 

「俺はいいんだよ。こうやってのんびりとしてるだけでも楽しいし、リフレッシュにもなるしな」

 

「そういえば去年の合宿の時に海で遊んだ時も統夜はこんな感じでのんびりとしてて水の中に入ったりはしなかったよな」

 

「うっ……」

 

澪は去年の合宿で気になったことを言うと、統夜の顔は真っ青になっていた。

 

『統夜、痛いところを突かれたな』

 

「うっさい!余計なことは言うなよイルバ!」

 

「そういえば確かにそうよねぇ……。ねぇ、統夜君、どうして?」

 

「そっ、それは……」

 

統夜は水に入りたくない理由を言うことを拒んでいた。

 

「統夜、もしかして泳げない……とか?」

 

澪は統夜が水に入りたくないのはカナヅチではないかと推測し、統夜に聞いてみた。

 

「いや、泳ぐことは全く問題ないんだよ」

 

「そうなの?それじゃあ、どうして?」

 

「あー……えっと……」

 

統夜は紬の追求にどう答えるべきか悩んでいた。

 

『統夜、お前はただ単純に背中の傷を見られなくないからだろ?』

 

「あっ!イルバ、言うなよ!」

 

『こいつらは統夜が魔戒騎士だと知っているんだ。傷の話くらい問題ないだろう?』

 

「そ、そりゃそうだけど……」

 

統夜は水が苦手だったり嫌いだったりという訳ではなく、単純に上半身裸になることにより背中にある傷を見られなくないだけなのである。

 

「何だ、そういうことだったのか。統夜がそこまで隠すから何か深い理由があるのかと思ったよ」

 

「ねぇねぇ、統夜君。私、その傷って見てみたいな♪」

 

「なっ!?そ、それは別にいいだろ?」

 

『統夜。別に背中の傷くらい見せてもいいんじゃないのか?こいつらはここまで騎士の秘密を知ってる訳だし』

 

「い、イルバまで……」

 

イルバが見せても問題はないと言うので、統夜の逃げ場が無くなってしまった。

 

統夜がそのことに呆然としていると……。

 

「ねぇ、みんな!!ちょっと来て!」

 

紬がビーチバレーをしている3人を呼び出した。

 

「?ムギちゃん、どうしたの?」

 

「実は統夜君ね、背中に傷があるらしいのよ」

 

「え?そうなの?」

 

「なるほど……。統夜が去年の合宿でも頑なに上半身裸にならなかったのはそれが理由なのか……」

 

「統夜先輩は魔戒騎士だから、やっぱり傷くらい出来ますよね……」

 

「ねぇねぇ、ちょっとその傷を見てみたくない?」

 

「うん!見たい見たい!」

 

「確かに興味はあるな!」

 

「私も気になります!」

 

先ほどまでビーチバレーをしていた3人も統夜の傷がどんなものか気になるようだ。

 

「……全く……。仕方ないな……。背中の傷を見ても引くなよ?」

 

統夜は渋々背中の傷を見せることを了承すると、パーカーとTシャツを脱ぎ、背中を唯たちに見せた。

 

それを見た唯たちは……。

 

「「「「「おぉ!凄い!!」」」」」

 

「…………」

 

澪以外の全員は統夜の傷に驚き、澪は統夜の傷を怖がりながら見ていた。

 

統夜の背中には爪で切り裂かれたような大きな切り傷の痕が残っていた。

 

この傷は、統夜が魔戒騎士になったばかりの頃にホラーから人を守った時にホラーに攻撃されて出来た傷である。

 

統夜のような魔戒騎士は幼少の頃から修行を行っているが、修行の時に傷を負い、それが痕として残るということが良くあるのである。

 

統夜の場合はそのような傷はなかったが、ホラーとの戦いでついた傷であり、その傷は人を守った誇りある傷であった。

 

「……やーくん……。苦労して魔戒騎士になったんだもんね……」

 

唯は統夜の傷痕を優しく撫でていた。

 

それが恥ずかしかったのか、統夜は顔を真っ赤にしていた。

 

「も、もういいだろ?」

 

統夜は唯が数秒傷痕を撫でると統夜は回れ右して傷痕を見せるのをやめた。

 

「もぉ、やーくんってば照れなくてもいいのに♪」

 

「べ、別にそんなんじゃないって!それよりも俺もビーチバレーに混ぜてもらおうかな!」

 

統夜は立ち上がると、浜辺の方へと向かっていった。

 

「あっ、やーくん!待ってよぉ!」

 

唯、律、梓の3人は統夜の後を追いかけていった。

 

『おい、統夜。なるべく俺様に水はかけないでくれよ?海水如きで俺様はサビはしないが、俺様は海水は嫌いだからな』

 

「わかってるって」

 

こうして統夜は唯、律、梓の3人としばらくの間ビーチバレーを楽しみ、澪と紬はその様子を見学していた。

 

ビーチバレーの後は海で泳いだり海を散策したりとそれぞれで楽しんでいた。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

「ふはぁ……」

 

「遊んだ遊んだ。……もうご飯食べて寝よう……」

 

気が付けばそれなりに時間が経っており、統夜たちはさっきまで遊び続けていた。

 

「「練習はどうした?」」

 

唯と律が完全にだらけモードだったので、統夜と澪がツッコミを入れていた。

 

『やれやれ。お前たち、今日の目的を忘れてるんじゃないのか?』

 

「イルバの言う通りですよ!やっぱり遊ばずに先に練習した方が良かったじゃないですか!」

 

梓はプリプリと怒りながら抗議をするのだが、統夜たちはそんな梓を見て固まっていた。

 

「……梓が1番遊んでたじゃん……」

 

梓だけが日焼けで真っ黒になっていたからである。

 

「アハハ……確かにそうかもな」

 

『それにしても梓だけよくもそこまで焼けたものだな。これには俺様も驚きだぜ』

 

梓の豹変ぶりに統夜だけではなく、イルバも驚いていた。

 

「わっ、私はちゃんと練習するもん!」

 

「じゃあ一晩中?」

 

律はニヤニヤしながら意地悪なことを言っていた。

 

「む……。す、するもん!」

 

梓も梓でムキになっており、こう言い放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

こうして遊ぶだけ遊んだ統夜たちは着替えを済ませてからスタジオへ移動した。

 

「うぅ……。疲れたぁ……。お腹すいたぁ……」

 

『やれやれ、あんだけ遊んだんだからちょっとくらいは我慢したらどうだ?』

 

「あぁ、イルバの言う通りだぞ!」

 

ブーブー文句を言う律をイルバと澪がなだめていた。

 

そしてスタジオの中に入ると……。

 

「うわぁ!すごーい!」

 

「確かに凄いな……」

 

「あんなアンプ使ったことないです!」

 

スタジオの中は良質な機材がそろっており、高校生が使う機会がないくらい高級なアンプなどが揃っていた。

 

「澪!統夜!早く練習しようぜ!スネアが新品だ!」

 

ピカピカのドラムセットを見た律は、先ほどとはうって変わってやる気満々になっていた。

 

「「現金なやつ……」」

 

統夜と澪は同時にツッコミを入れていた。

 

こうして練習することになり、チューニングなど準備をしていたが……。

 

「ねぇねぇ、あずにゃん。それは何?」

 

唯は梓のギターについているチューナーが気になり、聞いていた。

 

「これですか?これはただのチューナーですけど……」

 

「へぇ、チューナーって言うんだぁ」

 

「へ!?唯先輩、チューナー知らないんですか?」

 

梓は唯がチューナーを知らないことに驚いていた。

 

「あれ?唯、チューナー知らなかったんだな」

 

統夜は唯がチューナーを使ってるのを見たことがないことを思い出していた。

 

「じゃあどうやってチューニングを……」

 

「えっ?適当に……」

 

唯は適当に微調整をすると、完璧な音程でチューニングをしていた。

 

「ほら」

 

「ぜ、絶対音感!?」

 

「あぁ、だから唯はチューナー使わなくてもチューニング出来てたんだな。音程が狂ってなかったから気にもしなかったよ」

 

統夜は唯がチューナーを使わないことに違和感を感じてはいなかった。

 

「統夜先輩はチューナー使ってますよね?」

 

「チューナーはあるけど、面倒だから使ってないんだよ。俺もこうやって適当にだな……」

 

統夜も唯のように適当に微調整をすると、完璧なチューニングをしていた。

 

「これでどうだ?」

 

「と、統夜先輩も絶対音感ですか!?」

 

梓は同じギターの先輩2人が共に絶対音感を持っていることに驚いていた。

 

『そういえば統夜も絶対音感を持ってたな。チューナーなしのチューニングを当たり前に見てたから俺様も気にもしなかったぜ』

 

(統夜先輩は凄いって思うけど、唯先輩は凄いのか凄くないのかわからないよ!)

 

梓は統夜は才能を持っていて凄いと思っているが、唯は上手い時とか下手な時の落差が激しいので絶対音感も素直に凄いと思えなかった。

 

全員の準備が終わった所で練習は開始された。

 

 

 

 

練習では何回か「ふわふわ時間」の合わせを行っていた。

 

そして数回目の「ふわふわ時間」の演奏が終了した。

 

「お、今のはなかなかいい感じだったと思うぞ」

 

統夜は今の演奏に手応えを感じていた。

 

「はい!私もそう思います!」

 

梓も今の演奏に手応えを感じていたようである。

 

『律、今日は珍しくリズムキープが正確だったじゃないか』

 

「イルバの言う通りだな。特訓でもしてたのか?」

 

イルバと澪はいつもは走りがちのリズムを叩く律が正確なリズムキープをしていることを褒めたのだが……。

 

「あぅぅ……お腹が空いて力が出ないよう……」

 

「……お腹が空いてるから無駄な力が抜けたのね」

 

「あぅぅ……。もうご飯にしよう……。飯食わせろぉ!」

 

どうやら律は空腹が限界で、これ以上は練習に集中出来ないようであった。

 

「わ、私も……」

 

どうやら紬も空腹のようであった。

 

「みんな腹も減ってきた訳だし、練習は中断して飯にするか」

 

統夜がこう提案をすると、律の顔がぱあっと明るくなった。

 

「そうだな、材料を買って食事の準備をしようか」

 

統夜の提案に澪も乗ったことで、練習は一時中断となり、夕食の準備を行うことになった。

 

この日はバーベキューをすると決まっていたので、その材料をスーパーで買ってくることになった。

 

澪と律に留守番を頼み、残りのメンバーがスーパーで買い出しに行くことになった。

 

この頃にはもう夕方になっていたのだが、統夜たちの合宿はまだまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『合宿も随分と盛り上がって来たな。いくら合宿とは言えども、楽しいことだけではないみたいだぜ。次回、「合宿 後編」。さて、この合宿は一体どうなることやら……』

 

 




こうして軽音部の合宿は始まりました。

豪華な別荘での合宿……体験してみたいもんですね(笑)

それにしても統夜がマジでリア充すぎる(笑)もし統夜が魔戒騎士じゃなくて普通の生き方をしていてもこんな生活を送っていたのでしょうか?

そして今回レオが再登場しましたが、ここ以降の出番はしばらくないかもしれません(笑)

次回で合宿の話は完結となります。予告で不穏な言葉がありましたが、果たして合宿は一体どうなってしまうのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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