牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました。番外編になります。

とりあえず今回で番外編は一度終わりで、次回から本編に入っていく予定です。

今回は外出とありますが、いったいどんなお話になるのか?

それでは、番外編をどうぞ!




番外編④ 「外出」

 

 

〜梓 side 〜

 

 

 

……こんにちは、中野梓です。

 

突然ですが、今日の私は凄くドキドキしています。

 

それは何故かというと……。

 

「……梓、どうした?顔が真っ赤だけど」

 

「ふぇ!?い、いや!な、何でもないんです!何でも!」

 

「本当か?」

 

「はい!」

 

「ならいいんだけど……」

 

 

 

私、中野梓は現在、統夜先輩とデートをしているからです。

 

先輩とのデートは楽しみで、凄くドキドキものなんです!

 

どうしてこんな状況になったのか……。

 

それは4日前に遡ります。

 

 

 

 

 

 

〜三人称 side 〜

 

 

統夜はホラー討滅と期末試験をどうにか乗り越えてから2日後、予想外の出来事が起こっていた。

 

統夜はその日の休み時間に梓に呼び出され、屋上に来ていた。

 

「梓、どうした?こんなところに呼び出して」

 

「えっ?あっ、あのっ……!」

 

梓は顔を真っ赤にし、モジモジしていた。

 

(おぉ!梓のやつ、思い切ったことをするな!頑張れ!)

 

イルバはこの状況をとても面白がっており、梓のことを応援していた。

 

「統夜先輩、今度の日曜日ってひ、暇……ですか?」

 

「えっ?今度の日曜日?」

 

(なんだよ、そっちか。梓のやつ思いきって統夜に告白すると思ったんだがな。……ん?待てよ?これはこれで面白いことになりそうだ)

 

イルバは梓が統夜に告白すると予想していたが、その予想は外れてしまった。

 

しかし、梓の目的をすぐに察したイルバはこれはこれで面白いとこの状況を楽しんでいた。

 

「まぁ、エレメントの浄化以外は特に予定はないけど。……イルバ、そうだよな?」

 

『あぁ、その日は特に予定はないぜ』

 

統夜はその日は特に予定がないとイルバにも確認を取って、それを聞いた梓は安堵していた。

 

「あっ、あのっ……」

 

梓はどうにか話を切り出そうとするが、ドキドキするあまりなかなか思い通りに話を切り出せなかった。

 

「?梓?」

 

「は、はい!あのっ、実はですね、この前お父さんに動物園のチケットをもらったんです!」

 

「動物園かぁ。テレビで見たことはあるけど、行ったことはないな」

 

「それで……もし良かったら……一緒に……行きませんか?」

 

「あぁ、いいぞ」

 

統夜は二つ返事でOKを出し、それを聞いた梓は驚いていた。

 

「ほ、本当ですか?」

 

「あぁ。だって俺だけじゃなくて軽音部のみんなも誘うんだろ?」

 

「『えっ!?』」

 

統夜のあまりにもデリカシーのない発言に梓だけではなく、イルバまで反応してしまった。

 

「?イルバまでどうしたんだよ?」

 

『おい、統夜!どうしたんだよじゃないだろう?そこはちょっとは空気を読めよ!』

 

あまりに鈍感な統夜を見てじれったいと思ったのかイルバが思わず口を出してしまった。

 

「?空気を?」

 

統夜はイルバの言葉の意味を理解していなかった。

 

(ダメだこりゃ……。この唐変木め……)

 

イルバは統夜の鈍感ぶりに苦笑いをしていた。

 

そして梓は統夜の言葉に呆然としていた。

 

(落ち着け……落ち着くのよ、梓。統夜先輩が鈍感なのは今に始まった事ではないじゃない!)

梓は冷静になるために深呼吸をしていた。

 

「……統夜先輩。このチケットは2人分しかなくて、私は統夜先輩と行きたいんです。……ダメ……ですか?」

 

(よし!梓、よく言った!!)

 

梓ははっきりと統夜をデートに誘い、イルバはそんな梓を称賛していた。

 

「……俺でいいのか?動物園だったら唯あたりが喜びそうだけど」

 

(おい!言うに事欠いてまだそんなことを抜かすか!この唐変木が!)

 

統夜がまたまたデリカシーのないことを言うのでイルバは呆れることしか出来なかった。

 

「はい!今回は統夜先輩と行きたいんです!」

 

梓は統夜がそう言ってくると予想していたのか冷静に返していた。

 

「あぁ、そういうことならわかったよ。俺も動物園は行ってみたいって思ってたしな」

 

「!本当ですか!?」

 

「あぁ」

 

「それじゃあ、今度の日曜日、楽しみにしてますね♪」

 

「わかった。待ち合わせとかは近々メールで決めようか」

 

「わかりました!」

 

こうして梓は統夜をデートに誘うことが出来たのである。

 

『おい、統夜。俺を梓の指にはめろ』

 

「?何だよ、イルバ、藪から棒に。もう休み時間は終わるからそんな暇はないぞ」

 

『俺は梓に話があってな。梓、大丈夫だよな?』

 

「は、はい!」

 

「まぁ、そういうことなら……」

 

統夜は渋々自分の指にはめてあるイルバを外し、梓の指にはめた。

 

「あっ、ありがとうございます。それじゃあ次の休み時間にイルバを返しに行きますので……」

 

「あぁ、わかったよ」

 

こうして統夜は屋上を後にした。

 

「それで……イルバの言ってた話って何なんですか?」

 

『あぁ。……梓……チャンスだぞ!』

 

「ふぇ!?ちゃ、チャンス?」

 

『あの統夜をデートに誘うってことはそういうことなんだろう?思い切ったことをしたもんだな』

 

「わっ、私はそんなつもりじゃ……」

 

イルバの言葉の意味を理解した梓は顔を真っ赤にしていた。

 

『梓。言っておくが、俺様はお前さんを応援してるんだぜ?』

 

「え?わ、私を?」

 

『お前さんが統夜に惚れてるっていうのはだいぶ前から知っていたからな』

 

「もう!からかわないでよ!」

 

梓は顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。

 

『だからこそボヤボヤしてられないぜ?俺様は知っているんだからな。お前ら5人と憂のやつが統夜に惚れてるってことを』

 

「え!?そうなんですか!?」

 

イルバには全てわかっており、それを聞いた梓は驚きを隠せなかった。

 

『何だ、お前さんはそのことを知らなかったのか。てっきり知っていてアドバンテージを取るために統夜をデートに誘ったのだと思ったのだが』

 

「そっ!そんなんじゃないです!」

 

『アハハ!照れるな照れるな!』

 

「もぉ!知らないです!イルバの馬鹿!』

 

梓は顔を真っ赤にしながら屋上を後にした。

 

(やれやれ……。梓も梓でずいぶんと初々しいものだ。こんなんで大丈夫なのか?)

 

イルバは梓のあまりの初々しさにこれから行われるデートが上手くいくのか心配になってしまった。

 

梓は教室に戻ると、指にはめているイルバを机の中に隠し、授業を受けていた。

 

そして休み時間になると、梓は統夜のクラスに向かい、統夜にイルバを返した。

 

統夜は梓からイルバを受け取ると、梓とどんな話をしたのかを聞いたが、イルバは答えなかった。

 

統夜はその後いつものように授業を受けていた。

 

そして放課後、統夜はいつものように音楽準備室に向かい、いつものようにティータイムを行っていたのだが……。

 

「……////」

 

梓は顔を真っ赤にしたまま紅茶を飲んでいた。

 

「……あずにゃん、どうしたんだろ?」

 

「さぁ、今日部室に来た時からあんな感じだったけど……」

 

「統夜……何か知ってるか?」

 

「あぁ、俺が思い当たる事と言えば……」

 

『ま、まぁいいじゃないか!梓には梓の事情があるんだろ』

 

統夜は正直に話そうとするが、イルバがそれを阻止していた。

 

「あれぇ?イルイル。何か隠してない?」

 

『そんなことはないさ。俺様は思ったことを言っただけだ。それに唯!お前は毎度毎度俺様を変なあだ名で呼ぶな!』

 

「もぉ!イルイルってばそうやって誤魔化すんだもん」

 

イルバと唯がいつものやり取りをしていると、唯が頬をぷうっと膨らませていた。

 

(?何でイルバは俺と梓が出かけるってことを隠すんだ?別に隠すことはないと思うんだけど)

 

統夜はイルバがなぜ話を誤魔化すのかわからず首を傾げていた。

 

統夜はわからないながらもここで言うべきではないのだろうと空気を読んだ結果、統夜の口から今度の日曜日の話が出ることはなかった。

 

そしてこの日は最後まで部活に参加した統夜は番犬所へ顔を出した。

 

 

 

 

 

「……あれ?大輝さん、今日は来てないのかな?」

 

統夜は大輝に用事があったのだが、大輝は番犬所の中にはいなかった。

 

「?統夜、大輝がどうしました?」

 

「イレス様。実は、大輝さんに用事がありまして……」

 

「大輝なら少し前に指令を受けてホラー討滅に向かいましたよ」

 

(あっちゃあ……。少し遅かったか……。指令だったら仕方ないけど)

 

統夜は大輝の不在に頭を抱えるが、ホラー討滅とのことだったので、それも仕方ないと感じていた。

 

「統夜、大輝に何の用事なんですか?」

 

(イレス様には話しておいた方がいいかな)

 

そう判断した統夜は話を切り出した。

 

「実は、今度の日曜日に梓と2人で出掛けることになりまして……。昼間のエレメント浄化ともし指令が来た時はお願いしようかと思いまして」

 

統夜は正直に事情をイレスに説明した。

 

「へぇ、梓と……ですか?」

 

「えぇ」

 

「ということは梓とデートということですか?」

 

「さぁ……デート……なんですかね?」

 

「へ?」

 

統夜のとんでもない発言にイレスは素っ頓狂な声をあげていた。

 

『イレス、気にするな。こいつは女が絡むとあり得ないくらいに鈍感になるからな』

 

イルバは統夜が女性関係の話になると鈍感になるという短所をイレスに説明していた。

 

「そ、そうだったんですね……」

 

「べ、別に俺は……」

 

『いいや、否定はさせないぜ。この天然ジゴロが』

 

「なぁ、イルバ。天然ジゴロって何だ?」

 

統夜はイルバの言葉の意味が理解できず、首を傾げながらイルバに聞いてみた。

 

『まぁ、それはお前さんが知る必要はないぜ』

 

「??」

 

イルバが答えてくれないので、統夜は首を傾げていた。

 

「と、とにかく、事情は理解しました。ホラー討滅の指令が来たら大輝の方に回します」

 

「ありがとうございます。これから大輝さんにも事情を説明しに行ってきますね」

 

「わかりました。統夜、楽しんできてくださいね♪あと、梓にもよろしく言っておいてください」

 

「はい、わかりました」

 

統夜はイレスに一礼すると、番犬所を後にした。

 

それから統夜は街を見回りながら大輝を探すことにした。

 

 

 

 

 

統夜が番犬所を出てからおよそ1時間後、大輝は指令がの対象であるホラーを見つけ、交戦していた。

 

「はぁっ!」

 

大輝は魔戒剣を一閃し、ホラーに攻撃をしかけた。

 

そのホラーは素体ホラーであり、大輝の一撃を受けた素体ホラーはひるんでしまい、その隙をついた大輝は蹴りを放って素体ホラーを吹き飛ばした。

 

「よし……一気に決着をつける!」

 

大輝は魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれ、大輝は「鋼」の鎧を身に纏った。

 

「これで……終わりだ!!」

 

大輝は魔戒剣を一閃し、素体ホラーを真っ二つにした。

 

大輝の攻撃を受けた素体ホラーは断末魔をあげながら消滅した。

 

素体ホラーを討滅したことを確認した大輝は鎧を解除し、魔戒剣を鞘に納めた。

 

「ふぅ……」

 

ホラーを討滅し、大輝が一息つくと、パチパチパチと拍手を鳴らしながら大輝の目の前に赤いコートの少年が現れた。

 

「さすが大輝さん……。お見事です!」

 

その少年……統夜は、大輝の仕事を労っていた。

 

「統夜か……。こんなところまで会いに来るのは珍しいな。どうしたんだ?」

 

「はい。実は大輝さんに頼みがありまして……」

 

「頼み?」

 

「はい。番犬所の方には話をしたのですが、実は今度の日曜日に梓と2人で動物園に出掛けることになりまして……。昼間のエレメント浄化ともしホラー討滅の指令が来たらそれを大輝さんにお願いしたいのです」

 

統夜は事情を説明し、大輝に交渉していた。

 

「梓……。確かあのちっこい嬢ちゃんだったな。それに動物園か……行ってこい行ってこい!そんな機会は滅多にないからな」

 

大輝は統夜の交渉に嫌な顔1つせず、二つ返事で了承した。

 

「大輝さん……。ありがとうございます……」

 

「なぁに、気にすることはない。お前は普段は魔戒騎士の使命を全うしてるんだ。遊ぶ機会があるのなら思い切り遊んでおくといい。お前は高校を卒業したらそんな暇はなくなるからな」

 

大輝が二つ返事で統夜の話を了承したのは、統夜が高校を卒業したら本格的に魔戒騎士の使命を全うすることになる。

 

そのため、今のうちに遊んでおくといいと考えているからである。

 

「ま、日曜日は楽しんでこいよ」

 

大輝は統夜の頭にポンと手を置くと、すぐさまその手を放し、その場から姿を消した。

 

『これで日曜日は大丈夫になったな』

 

「あぁ、そうだな」

 

大輝との話は終わったので、統夜はそのまま家路についた。

 

統夜は梓とメールのやり取りをして当日の待ち合わせ場所と時間を決めていた。

 

2人が行こうとしている動物園は隣町にある動物園で、電車やバスを乗り継いでおよそ1時間くらいかかる場所にある。

 

そこで統夜は交通費を浮かせるために、当日はバイクで動物園へ向かうことにしたのである。

 

統夜はすでにバイクの免許を持っており、それがとある指令の時に役に立ったこともあった。

 

当日は梓の家の近くで待ち合わせをし、そのまま動物編へ向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜梓 side 〜

 

統夜先輩とのデート前日の夜、私はクローゼットの中に入っている服たちとにらめっこをしていました。

 

明日どんな服を着ていくかを決めるためです。

 

「……うぅ……何着ていけばいいかわからないよぉ……」

 

私は服選びに悪戦苦闘している最中です。

 

統夜先輩……どんな服が好みなんだろう……。

 

というより統夜先輩があんなだから先輩の好み自体がわからないんだよね……。

 

統夜先輩優しいから何を着ても似合うじゃん!って言ってくれそうなんだけど……。

 

本当だったら憂か純あたりに相談したかったけど、憂は統夜先輩のこと好きみたいだし、純に言ってもからかわれるだけだからね……。

 

私は誰にも相談することができず服選びをしているという訳です。

 

……それにしても明日は統夜先輩とデートか……。

 

勇気を出して誘ってみたけど、まさか行くと言ってくれるなんて思ってなかったな……。

 

まぁ、鈍感ぶりは相変わらずなんだけどね……。

 

私が統夜先輩のことが好きだと気付いたのはいつからだろう?

 

ホラーに襲われたところを助けてくれた時から統夜先輩のことは気になってたけど、この気持ちに気付いたのは統夜先輩がグォルブとかいうホラーと戦ってるときかな?

 

あの時、唯先輩の提案で先輩に歌を届けた時、私は自分自身の気持ちに気付けたんだと思う。

 

そう考えたら先輩たちや憂もその時に統夜先輩のことが好きになったのかな?

 

私はいつかこの気持ちを伝えたいとは思っているけど、統夜先輩はホラーから人々を守る魔戒騎士で、私はただの一般人。

 

住む世界が違うって言われちゃうかな……?

 

そう言われるのが怖くて、気持ちを伝えられないのかも……。

 

ダメダメ!そんなこと気にしてたらダメだよ!

 

明日はデートなんだからそんなことは考えずに楽しまないと!

 

……その前に服はちゃんと決めないとね……。

 

私は服選びにかなり時間はかかったけど、なんとか着る服を決めて眠りました。

 

……明日が本当に楽しみだなぁ♪

 

 

 

 

 

 

 

翌日、私は待ち合わせの2時間前くらいに目を覚ましました。

 

顔を洗い、髪型をセットし、そんなことをしていると、あっという間に待ち合わせの30分前になっていました。

 

私は軽く食事を取り、服を着替えると、急いで待ち合わせの場所に向かいました。

 

統夜先輩は朝は魔戒騎士の仕事をするって言ってるから少しは遅れるとは思うけど、時間には余裕を持っておかないとね。

 

そんなことを考えながら待ち合わせ場所に向かうと……。

 

「……おう、梓。早かったな」

 

統夜先輩がすでに来ていました。

 

「と、統夜先輩!?早かったですね!」

 

「あぁ。エレメント浄化が思ったより早く終わったからな。それで早めに来たんだよ」

 

「そうだったんですか。お疲れ様です」

 

「それよりも早く乗りなよ。今日は思い切り楽しむんだろ?」

 

「はいっ!」

 

統夜先輩はバイクに跨ると、私は先輩の後ろに座りました。

 

統夜先輩はヘルメットをかぶると、スペアのヘルメットを私に渡してくれたので私はそれを被りました。

 

……バイクに乗るなんて初めてだな……。

 

私はそんなことを考えながら統夜先輩の体にしがみ付きました。

 

すると……。

 

「……!////」

 

ヘルメットをかぶってるからよく見えなかったけど、統夜先輩の顔が赤くなってる気がする……。

 

統夜先輩は統夜先輩でドキドキしているのかなぁ……?

 

そんなことを考えてたら、統夜先輩は首を傾げていた。

 

まさか……。

 

私は少しムッとしたので統夜先輩の頭をポカッと叩いた。

 

「痛っ!急になんだよ、梓」

 

「統夜先輩。さっき失礼なこと考えてませんでした?」

 

「へっ?そ、そんなことはないぞ!」

 

……どうやら図星みたいだね……。

 

どうせ私の胸がないとか思ったんでしょ?

 

いいもん!これから大きくなるんだもん!

 

……おっと!それよりも今日のデートを楽しまなくちゃ♪

 

統夜先輩は苦笑いしながらもバイクのエンジンを吹かせると、バイクを発進させてそのまま動物園に向かいました。

 

 

 

 

 

 

〜三人称 side 〜

 

 

 

梓とのデート当日、統夜は朝のエレメント浄化を済ませてから一度家に戻り、バイクで梓との待ち合わせ場所へ向かった。

 

待ち合わせ場所へ到着すると、その数分後には梓が現れ、統夜は梓を後ろに乗せて動物園へと向かった。

 

バイクを走らせておよそ40分後、動物園に到着した。

 

バイクを駐輪場に停めると、梓はよほど楽しみだったのかニコニコしていた。

 

「統夜先輩っ♪早く早くっ♪」

 

統夜はヘルメットをしまい、魔法衣を取り出していると、梓はニコニコしながら統夜を呼んでいた。

 

「わかってるって!」

 

統夜は急いで梓に駆け寄った。

 

「統夜先輩♪早く行きましょっ♪」

 

「わかったから引っ張るなって!」

 

梓は統夜の手を取ると、そのまま入り口まで統夜を引っ張っていった。

 

入り口に入った2人はチケットを渡したことで入場料は払わずに中に入ることが出来た。

 

「へぇ、思ったより動物がいるんだな」

 

統夜は入り口に置いてあるパンフレットを見ながらどのような展示コーナーがあるのかを確認していた。

 

「統夜先輩、統夜先輩!すぐそこにキリンがいますよ!ほら!」

 

梓は入り口近くにあるキリンコーナーを指差しながらまるで子供のようにはしゃいでいた。

 

(梓のやつ……楽しそうだな。それだけで一緒に来た甲斐があったよ)

 

統夜は子供のようにはしゃぐ梓を見て笑みを浮かべていた。

 

「ほらほら、早く行きましょっ♪」

 

「そうだな」

 

統夜と梓は最初にキリンコーナーを見ることになった。

 

この動物園のキリンコーナーは入り口から近いこともあり、目玉スポットの1つであった。

 

それ故現在も多くの家族連れやカップルがキリンに見惚れていたのである。

 

「わぁ♪キリン、可愛いですね♪」

 

「そうだな。キリンを生で見るのは初めてだからな。凄いよ!」

 

統夜も統夜で今までテレビでしか見たことのなかった生のキリンに興奮気味であった。

 

(やれやれ……。統夜のやつもはしゃいでるな……。いくら多くのホラーを討滅している魔戒騎士といえどもまだまだ子供だな)

 

イルバは梓ほどではないがはしゃいでいる統夜を見て子供っぽいと呆れていた。

 

数分間、2人はキリンを見続けていた。

 

「統夜先輩!今度はライオンを見ましょうよ!」

 

「そうだな。ここからだったらライオンコーナーは近いしな」

 

統夜はパンフレットの地図を見ながら効率の良い回り方を推察していた。

 

「ほらっ、早く早くっ♪」

 

「おっ、おい!梓!」

 

統夜は梓に引っ張られる形でライオンコーナーへと移動した。

 

そしてライオンコーナーに到着した2人は生のライオンの雄々しさに見入っていた。

 

「ふぉぉ……。凄いです!」

 

「そうだな、ライオンもやっぱり生で見たら違うよなぁ」

 

「はいっ!そうですね♪」

 

2人は数分間、ライオンを見続けていた。

 

「さてと、次は……」

 

「オオカミコーナーですかね?」

 

「そうだな、ここからなら一番近いし、次はそこがいいと思う」

 

「それじゃあ早く行きましょっ♪」

 

「おいおい、そんな急がなくてもオオカミは逃げないって」

 

急いで向かおうとする梓をなだめながら統夜はオオカミコーナーへと向かった。

 

「おぉ!オオカミも凄いです!」

 

「そうだな」

 

梓は目を輝かせながらオオカミを見ており、統夜もじっくりとオオカミを見ていた。

 

(魔戒騎士の鎧はオオカミがモチーフになってるからな……。なんかオオカミを見ていると他人じゃないって思えるんだよな)

 

魔戒騎士の鎧の顔の部分はオオカミをモチーフに作られており、それは統夜が普段身に纏う奏狼の鎧も例外ではなかった。

 

統夜はオオカミを見ていてオオカミに親近感を覚えていた。

 

「あっ、統夜先輩!あの子を見て下さい!」

 

梓は何かに気付いてとあるオオカミを指差していた。

 

「?どうした、梓?」

 

「あの子の顔……何となく奏狼の顔に似てませんか?」

 

「あいつが……か?」

 

統夜は梓が指差すオオカミを凝視してみた。

 

すると……。

 

「……何となくだけど似てる……かもな」

 

少しは似ているのではないかと思っていた。

 

「凄い偶然ですね!統夜先輩、ここで鎧を着てみますか?」

 

「おいおい、ホラーもいないこんなところで鎧の召還をしたら騒ぎになるだけだろう?」

 

「クスッ……それはわかってますよ♪冗談で言っただけですから♪」

 

「ま、そりゃそうだよな」

 

梓が冗談を言うと思っていなくて統夜は苦笑いをしていた。

 

「梓、次はペンギンコーナーに行くか?この動物園のイチオシみたいだぞ」

 

「はいっ!行きましょう♪」

 

統夜と梓が次に向かったのは、この動物園の1番人気であるペンギンコーナーであった。

 

そのことを物語るかのようにペンギンコーナーは多くの人で溢れかえっていた。

 

「うわ……さすがに人が多いな……」

 

「そうですね……」

 

ペンギンコーナーの人の多さに梓は少し不安げな表情を浮かべていた。

 

すると……。

 

 

 

 

 

ぎゅっ……。

 

 

 

 

 

統夜が不意に梓の手を握ったのである。

 

「ふぇ!?とっ……ととととと……統夜……先輩!?」

 

突然の出来事に梓は顔を真っ赤にし、動揺していた。

 

「か、勘違いするなよ。迷子になったら大変だし、面倒だからな。それで手を繋いだんだからな!」

 

そう言う統夜の顔も真っ赤になっていた。

 

(!こいつは……!統夜のやつ無自覚とはいえ、味なことをするじゃないか!これは面白くなってきたぜ……!)

 

このデートをずっと見守っていたイルバは、統夜の予想外な行動に驚くが、この展開を楽しんでいた。

 

「そ、それじゃあ行くぞ」

 

「はっ、はい……」

 

先ほどまでは子供のようにはしゃいでいた梓であったが、ここに来て恥ずかしくなったのかしおらしい表情を見せていた。

 

こうして2人は人混みの凄いペンギンコーナーを見に行ったのである。

 

本来であればじっくりとペンギンを見たかったのだが、人が多いせいで、1分も見ることが出来なかった。

 

「……あんまり見れませんでしたね……」

 

「まぁ、少しでも見れただけでも良かったと思うぞ」

 

「それもそうですね」

 

人の流れがまばらになったところで、統夜は繋いでいた手を離した。

 

「あっ……」

 

梓は少し残念そうな表情をしていたが、統夜はそのことを気にする素振りはなかった。

 

(おい!何でそこでどうした?くらい言えないんだよ!これはデートなんだぞ!?少しは気の利いた言動をしろよ!さっきは良くやったって褒めてやりたいところだったのに……)

 

イルバはまるで当事者のように熱くなり、統夜の行動にダメ出しをしていた。

 

「さて、次はどこにしようか……」

 

統夜はパンフレットを見ながら次に見て回る場所を探していた。

 

そんな中……。

 

「……////」

 

梓は先ほどの統夜の行動を気にしてなのか顔を真っ赤にしていた。

 

「……梓、どうした?顔が真っ赤だけど」

 

「ふぇ!?い、いや!な、何でもないんです!何でも!」

 

「本当か?」

 

「はい!」

 

「ならいいんだけど……」

 

梓の顔が赤くなったことが気になった統夜は梓に聞いてみるが、梓は何でもないと答えていた。

 

そんな梓に首を傾げていたが、統夜はあまり気にしないようにしていた。

 

「梓、けっこう色々歩き回ったんだし、休憩がてら飯でも食うか?」

 

「そ、そうですね。私、お腹空いてきましたし」

 

2人は動物を見るのを一時中断し、動物園内にある食堂で昼食を取った。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

動物園の中にある食堂で昼食を取った2人は、その後も動物園の中にいる動物たちの見学を続けていた。

 

統夜たちが訪れているこの動物園はテレビでもよく取り上げられる動物園であり、展示されている動物も全国の動物園の中でもトップテンに入るほどである。

 

梓はまるで子供のようにはしゃぎながら動物たちを見ており、統夜はそんな梓に振り回される形で動物たちを見ていたのだ。

 

楽しい時間というのはあっという間に過ぎていくもので、気付けば閉園時間が迫っていた。

 

「……おっと、そろそろ閉園時間か」

 

統夜は場内に流れている閉園間近の音楽を聞いて閉園時間が迫っていることを知った。

 

「なんか、あっという間でしたね♪」

 

「そうだな。一通りは回ることも出来たしな。……梓、楽しかったか?」

 

「はいっ!」

 

「そっか。それは良かったよ」

 

統夜は安堵の表情で笑みを浮かべると、それを見た梓は顔を赤らめていた。

 

「とりあえず、出ようぜ」

 

「あっ、はい!そうですね」

 

2人は動物園を後にして、駐輪場に停めてあるバイクの前まで戻ってきた。

 

「さて、この後どうする?」

 

「もうそろそろ夕食の時間ですし、どこかご飯でも食べに行きますか?」

 

「俺もそうしようかなって思ってたんだよ。この近くといえばファミレスかな?駅の方に行けば美味しい洋食屋があるんだけどさ、そこでも……」

 

「統夜先輩。私はファミレスでいいですよ。私は気軽なファミレスの方が気楽ですし」

 

「そうだな、したらファミレスに行こうか」

 

「はいっ!」

 

統夜と梓はバイクに乗り込むと、バイクを走らせて、近くにあるファミレスへ向かった。

 

ファミレスの中に入ると、店員に席まで案内された。

 

その後、統夜と梓はそれぞれ注文するものを決めると、店員を呼んで注文を済ませた。

 

注文した料理が来る間、統夜と梓は世間話をしながら料理が来るのを待っていた。

 

そして、待つこと10数分……。

 

「お待たせしました」

 

注文していた料理が2人の前に並べられた。

 

梓が注文していたのはエビフライ付きのハンバーグプレートで、統夜が注文したのはこのファミレスで人気メニューのオムライスドリアだった。

 

「統夜先輩のドリア美味しそうですね!」

 

「梓のハンバーグも美味そうじゃん」

 

「それじゃあ一口食べてみますか?」

 

「あぁ、俺のも一口食べてみろよ」

 

「えっと……それじゃあ……」

 

梓はハンバーグをフォークで一口サイズに切ると、それをフォークに刺し……。

 

「あ……あーん……」

 

「あ、梓……。それって……」

 

女性関係の話はあり得ない程鈍感な統夜でも梓の行動の意味は理解していた。

 

「だ……ダメ……ですか……?」

 

「あっ……えっと……」

 

梓は上目遣いで統夜に訴えかけると、統夜はリアクションに困っていた。

 

(おぉ……。梓のやつずいぶんと攻めるじゃないか。さすがの統夜もリアクションに困ってるしな)

 

イルバは梓のあーんに困惑する統夜の様子を面白おかしく観察していた。

 

(あ、梓のやつ……何でそんなこと……。えぇい!俺も男だ!どうにでもなれ!)

 

こう決断した統夜は梓のあーんに応え、フォークに刺さったハンバーグを頬張った。

 

「……うん、美味いな」

 

統夜は平静を装ってこう答えるが、梓は凄く恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしていた。

 

「さてと、次は俺の番かな」

 

統夜はドリアを一口分スプーンですくうと……。

 

「ほら、あーん……」

 

統夜は先ほどの梓のような行動を取った。

 

「ふぇ!?と、統夜先輩!?////」

 

「梓もやってたから俺もやった方がいいかなって思ってさ」

 

統夜はここで空気を読んでこのような行動を行っていた。

 

(統夜のやつ変なところで空気を読むじゃないか……。これは面白くなってきたぜ)

 

イルバはこの状況を楽しみ、2人に聞こえないようにカタカタと音を立てながら笑っていた。

 

「そ、それじゃあ……////」

 

梓は顔を赤らめながら統夜が差し出した一口分のドリアを頬張った。

 

「美味しい……。けど、恥ずかしいです……////」

 

「アハハ、慣れないことはするもんじゃないよな」

 

統夜はそう言って笑いながら手に持ったスプーンでドリアを頬張った。

 

「あっ……」

 

「?どうした、梓?」

 

「な、何でもないんです!」

 

「??」

 

何故梓がここまで顔を真っ赤にしているのか理解出来ず、首を傾げていた。

 

(い、今のって……。間接キス……だよね……?こんなことやっといて今更だけど……)

 

梓は統夜がドリアを食べた瞬間、それが間接キスであると理解していた。

 

(!ということはこのフォークで食べたら……私も……////)

 

梓はこのフォークでハンバーグかエビフライを食べたら自分も間接キスになると意識すると恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしていた。

 

(おぉ、梓のやつ恥ずかしがってるな。それにしても統夜のやつは間接キスでも全く気にしないんだな。そこら辺はさすがと思うがな)

 

イルバは間接キスの状態になっても気付く素振りのない統夜に呆れていた。

 

梓はしばらく呆然としていたが、どうにかハンバーグを食べ始め、顔を真っ赤にしながら食事を取っていた。

 

統夜は梓と話をしようにも梓が恥ずかしがっていたので思うように話が出来ず、少しだけ気まずい雰囲気のまま食事を終えたのであった。

 

 

 

 

 

食事を終えた2人はそのまま桜ヶ丘に戻って来たのだが、統夜が行きたいところがあるということでとある場所にバイクを走らせた。

 

2人が向かった場所とは、桜ヶ丘の街並みが一望出来る展望台であった。

 

この展望台は夜になると夜景が見られるということからカップルにも人気のあるデートスポットにもなっている。

 

「うわぁ……」

 

バイクから降り、展望台に向かうと見えて来た絶景に梓は見入っていた。

 

「本当にここはいい景色だよな……」

 

「本当ですね♪」

 

「…………」

 

統夜は普段見せない程穏やかな表情をしており、それを見た梓はドキッとしていた。

 

「俺さ……。守れたんだよな……?この風景をさ」

 

「統夜先輩?」

 

「グォルブとあのディオスを倒してからそれなりに経ったけどさ……。俺、未だに実感出来ないんだよ。いくら鋼牙さんたちの協力があったからと言ってもよくあんな強敵を倒せたな……ってさ」

 

「統夜先輩……」

 

まっすぐ夜景を見つめる統夜の瞳には憂いの感情が写っているようにも見えた。

 

「……守れましたよ」

 

「梓?」

 

「だって統夜先輩はその命をかけて全力で戦ったじゃないですか!そりゃ、鋼牙さんたちの協力があってのことかもしれませんけど、今日もこんなに穏やかな毎日を送れるのは統夜先輩のおかげなんです!もっと自信を持って下さいよ」

 

「梓……」

 

統夜は梓のまっすぐな言葉が何よりも嬉しかった。

 

「……そうだな。俺は魔戒騎士。守りし者なんだもんな……。俺はこれだけ大きなものを守れたんだ。もっと自信を持たなきゃダメだよな」

 

「はい!そうですよ」

 

こう言いながら梓は笑っていた。

 

「統夜先輩。今日はありがとうございました。今日はすっごく楽しかったです!」

 

「そっか。そう言ってもらえると俺も嬉しいよ。……それに、俺は梓に礼を言わないといけないしな」

 

「お礼……ですか?」

 

「俺はさ、魔戒騎士だからこんな風に出掛けることなんてほとんどなかったんだよ。今日は来たことのなかった動物園に行けてすごく楽しかったよ」

 

こう語る統夜の顔は喜びに満ちていた。

 

「それに、動物園にいた人たちの幸せそうな顔を見てたらさ……。俺はこれからも魔戒騎士としてそんな当たり前の日常を守っていかないとなって思ったんだよ。今日はいい息抜きにもなったし、魔戒騎士としてもっと気を引き締めないとなと思った日でもあるんだ。だから……ありがとな」

 

「そ、そんな。お礼なんて……。私はただ、統夜先輩とお出かけが出来て嬉しかったんですよ」

 

「俺もさ、梓と2人で出掛けるってのがなんか新鮮で楽しかったよ」

 

「……はいっ!」

 

梓が統夜に見せた笑顔は満面の笑みであり、それを見た統夜は顔を赤らめながら夜景を見ていた。

 

そんな統夜を見た梓はさらにクスリと笑みを浮かべていた。

 

そのまま2人は何も語らずに夜景を眺めていたのだが……。

 

(おい!いい雰囲気なのはいいが、梓は何故アクションを起こさないんだ?今こそ告白する大チャンスだろうが!えぇい!この沈黙が焦れったい!)

 

イルバだけがこの雰囲気を焦れったいと感じてしまい、悶々としていた。

 

梓はこの場で統夜に告白することも考えてはいたが、こうして統夜と2人でいられるだけで満足してしまったので、告白はしなかったのである。

 

統夜と梓は1時間程ここの夜景を見続け、それから梓を家に送り届けたところで解散となった。

 

梓を送り届けた統夜はそのままバイクを自宅に向けて走らせ、帰路についたのであった。

 

 

 

 

 

……完

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『もう夏休みだな。ということは魔戒騎士の勤めに専念出来ると思ったんだがな。次回、「合宿 前編」。やれやれ。今年も行くんだな』

 




今回は梓とのデート回でした!

やっぱり梓がどんどんメインヒロインに近づいていってる気がする……(笑)

だけど、まだヒロインは確定させないつもりです。

イルバは5人+憂が統夜に惚れてるという衝撃発言をしていましたが、その度合いには差があるという設定になっています。

それにしても大輝もイレスも統夜にかなり寛容ですよね。

上司や先輩に恵まれてるから統夜は高校生活を送れるんだと思います。

今回の最後に次回予告が出てきましたが、次回からは本編に戻ります。

次回以降はけいおんメインの話が多くなってくるとは思います。

それでは、次回をお楽しみに!


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