牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!番外編です。

タイトルを見たらもしやと思う人もいるかと思いますが、今回はテスト回です。

ホラー、グォルブを討伐した統夜に待ち受ける期末試験。

統夜は無事に試験を乗り切れるのか?

それでは番外編をどうぞ!




番外編③ 「期末」

紅の番犬所の神官であるイレスが1週間という短い期間ではあるが、イギリスから来た留学生として桜ヶ丘高校に潜り込み、普通の高校生としての生活を送っていた。

 

イレスは番犬所の神官としては味わうことの出来ない多くの体験を行っていた。

 

1週間という期間はあっと言う間に過ぎていき、イレスは再び番犬所の神官という日常に戻っていった。

 

イレスの留学最終日は、クラスの誰もがイレスとの別れを惜しんでいた。

 

クラスメイトたちはイレスに色紙を送ったり、放課後にパーティーを行うなどしてイレスと最後の日々を過ごしたのだ。

 

そして翌日、イレスはいないが、平凡な日々は始まったのである。

 

統夜もいつもの日常に戻ると思いきや、その生活に若干の変化が生じていた。

 

統夜はイレスのおかげでクラスメイトたちとの交流の機会も増え、以前よりもクラスの誰かと接する機会が増えたのである。

 

以前の統夜は魔戒騎士独特の雰囲気のせいで近付き難い雰囲気を出していたのだが、ちゃんと話してみると話しやすいことがわかったのか、クラスメイトたちは統夜と話をするようになったのである。

 

統夜は真面目な生徒ではあるのだが、その独特な雰囲気から生徒だけではなく教師にも時々怖がられ、「真面目な不良」という矛盾だらけなあだ名が教師たちにつけられるほどである。

 

そんな統夜ではあるが、少しだけクラスメイトたちとの関係も良好になり、この日は過ぎていった。

 

そしてこの日の放課後も統夜は音楽準備室に向かったのだが……。

 

「よう、みんな!……って、あれ?」

 

統夜が音楽準備室に入ると、何故か唯と律が難しい表情をしていたので統夜は首を傾げていた。

 

「おい、唯、律。どうしたんだ?難しい顔をして」

 

統夜は魔法衣と学生鞄を長椅子に置き、ギターケースを壁に立てかけながらこう唯と律に聞いてみた。

 

「あっ、統夜先輩」

 

「いや、もうすぐ期末試験だろ?唯と律は今回自分たちの力で頑張るって決めてな。それからあんな調子なんだよ」

 

澪は唯と律が難しい顔をしている理由を統夜に説明した。

 

「ふーん。期末テストねぇ……。それは頑張らなきゃ……」

 

統夜は自分で「期末テスト」という単語を言うと何かを思い出したのか硬直していた。

 

そして……。

 

「何ぃ!!?期末テストだと!!?」

 

「だからさっきからそう言ってるじゃないですか……」

 

大袈裟な程驚く統夜を見て梓はジト目でツッコミを入れていた。

 

「うわ……。ここ最近はグォルブのことがあったからな。勉強のことなんかすっかり忘れていたわ……」

 

統夜は中間テストをどうにか切り抜けた後にホラー、グォルブ復活をめぐる事件に巻き込まれ、解決に奔走していた。

 

そのため、その間は魔戒騎士の使命に集中していたあまり試験のことなど頭の片隅にもなかった。

 

その事件解決後もイレスが留学してきたこともあり、統夜は勉強するという発想が完全に無くなってしまったのである。

 

統夜は再び厳しい現実を突きつけられ、顔を真っ青にしていた。

 

「アハハ……統夜先輩、また試験のことを忘れてたんですね……」

 

梓は中間テストの前にも同じような光景を見ていたのでそれを思い出して苦笑いをしていた。

 

『やれやれ……。これがあのグォルブを討滅した魔戒騎士とは思えないな……』

 

イルバは統夜のあまりの動揺ぶりに呆れていた。

 

「明日から試験期間で部活も出来ないし、統夜君も勉強に集中するいい機会じゃない?」

 

「ムギの言う通りだな。唯と律も自分の力で頑張るって言ってるんだ。統夜も自分の力で頑張ってみたらどうだ?」

 

「うっ……」

 

統夜はこう澪にたしなめられ、顔を真っ青にしていた。

 

『統夜、諦めろ。ここで頑張らないとお前さんに待っているのは追試だぞ』

 

「わ、わかってるよ!」

 

こうして統夜もどうにか自分の力で試験勉強を頑張ることにした。

 

この日は少しだけティータイムを行って解散となった。

 

 

 

 

 

統夜は唯たちと別れた後、よく行くカフェで夕食を取りながら勉強していたのだが……。

 

「……全くわからん……」

 

統夜は数学の問題に悪戦苦闘していた。

 

《おいおい、統夜。そんなんで大丈夫なのか?》

 

(やっぱり理数系は苦手だよ……。他の教科なら勉強しなくても何とかなるんだけど……)

 

統夜は理数系の教科の成績は絶望的に低いのだが、他の教科は平均並。教科によっては学年トップ並の成績を取れるものもある。

 

(勉強が苦手な唯や律だって自分で頑張るって言ったんだ。俺だって……!)

 

統夜は「ふんす!」と気合いを入れると再び数学の問題に向かっていった。

 

この日は2時間程勉強を行った後に店を出て、その後は街の見回りを行ってから家路についた。

 

 

 

 

 

こうして期末試験に向かってどんどん日々は過ぎていった。

 

朝はエレメントの浄化を行うものの、放課後は幸い指令はなかったので、勉強に集中することが出来た。

 

統夜は放課後になると、学校の図書室やいつも通ってるカフェで勉強をしていた。

 

期末テスト3日前。この日も統夜はいつも通ってるカフェで軽食を取りながら勉強をしていたのだが……。

 

「ふんふんふーん♪……ってあれ?統夜?統夜じゃないか!」

 

偶然このカフェに立ち寄った青年が統夜に声をかけた。

 

「……!シグトさんじゃないですか!」

 

統夜に声をかけたこの青年はシグトという名前で、邪美や烈花と同じ魔戒法師である。

 

「おう、久しぶりだな、統夜」

 

「お久しぶりです、シグトさん。それよりもシグトさんは指令で桜ヶ丘に来たんですか?」

 

「まぁ、指令と行っても届け物を届けるだけなんだけどな。それで偶然この街に立ち寄ったんだけど……。まさかここがお前の住んでる街だったとはな」

 

シグトはとある物をこの街に住む魔戒法師に届けるという指令でこの街に訪れていた。

 

仕事を終えたシグトが偶然この店に立ち寄ると、統夜に偶然会ったのである。

 

シグトは統夜の座るテーブルの空いている席に腰を下ろした。

 

「なぁ、統夜。ここのオススメってあるか?」

 

「ここのオムライスは美味いですよ」

 

「よし!それにするか」

 

ちょうどシグトが注文したものを決めたタイミングで店員がシグトに水を持ってきた。

 

「あっ、すいません。コーヒー1つとオムライス1つ!」

 

「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 

一礼すると、店員はキッチンに向かっていった。

 

「ところで統夜はここで食事でもしてたのか?」

 

「いえ、俺はもうすぐ学校のテストがあるんでテスト勉強をしてたんです」

 

「テスト勉強?」

 

「えぇ、今はこんな勉強してます」

 

統夜はシグトに今勉強で使ってた教科書を見せた。

 

「うわぁ……高校生ってこんなこと勉強するのかよ。俺にはさっぱりだぜ……」

 

シグトはすぐさま教科書を統夜に返した。

 

「アハハ……シグトさん、零さんと同じこと言ってますよ」

 

「え?そうなのか?」

 

「まぁ、確かに難しいって言うのはわかります。俺だって今この問題に悪戦苦闘してた訳ですし」

 

「ふーん、大変だな。統夜、頑張れよ」

 

「はい、何とか頑張ります」

 

統夜とシグトが話をしていたその時だった。

 

「お待たせ致しました。コーヒーとオムライスです」

 

シグトが注文していたコーヒーとオムライスがシグトの前に置かれた。

 

「おぉ!確かに美味そうだな!」

 

目の前に置かれたふわふわでトロトロなオムライスにシグトの胸は踊っていた。

 

「いただきます!」

 

統夜が数学の問題を解く中、シグトはオムライスを一口頬張った。

 

「……ん!美味え!!確かにここのオムライス美味えよ!」

 

「アハハ……。そこまで喜んでもらえたら勧めた甲斐がありましたよ」

 

シグトはコーヒーとオムライスをじっくりと味わい、統夜はコーヒーを飲みながら勉強を行っていた。

 

 

シグトがオムライスとコーヒーを完食したタイミングで統夜もこの日のノルマを終わらせた。

 

「……おっ、統夜。もういいのか?」

 

「はい。この日のノルマは終わらせました」

 

勉強のノルマを達成した統夜の顔はとても疲れ果てていた。

 

「アハハ……。俺が傍で飯食ってて邪魔じゃなかったか?」

 

「そんなことはないですよ!むしろリラックスして勉強出来ましたし!」

 

「そう言ってもらえると俺も嬉しいよ」

 

「アハハ……。それじゃあ出ましょうか」

 

こうして統夜とシグトは会計を済ませて喫茶店を後にした。

 

本来であれば自分の食べたものをそれぞれ会計する予定だったのだが、シグトが統夜に奢ると言っていたので、統夜はシグトの言葉に甘えて奢ってもらうことにした。

 

喫茶店を出た統夜はそのまま番犬所に向かうことになっていたので、統夜とシグトは喫茶店の前で別れた。

 

そして統夜は一度番犬所に顔を出し、その後は街の見回りを行ってから家路についた。

 

 

 

 

 

 

統夜は順調に勉強を進めて行ったのだが、テスト前日、ホラー討伐の指令が下された。

 

いくら今はテスト前の大事な期間であるとはいえ、魔戒騎士の使命は全うしなければならない。

 

統夜は番犬所から指令を受けると、イルバのナビゲーションを頼りにホラーの捜索を始めた。

 

 

 

 

 

「イルバ……ホラーはここか?」

 

統夜がたどり着いたのは今は使われていない廃品置き場であった。

 

この場所は思ったよりも広く、統夜の周囲には使われていない家電や自転車など大量のゴミが置かれていた。

 

『あぁ、油断するなよ。統夜!』

 

統夜はホラー襲撃に備えていつでも魔戒剣を抜ける状態にしておいた。

 

そして……。

 

『統夜!来るぞ!』

 

イルバがこう警告をすると、統夜の目の前に巨大なホラーが現れた。

 

「でかっ!よりにもよってこんな面倒くさそうな奴が相手かよ!」

 

統夜は目の前にいる明らかに強そうなホラーを見てげんなりしていた。

 

『こいつは……。ハンプティ……か?俺様が知っているハンプティとは姿が違うが……』

 

「ハンプティって確か鋼牙さんが初めて轟天を召還した時に倒したホラーだったよな?まさか、その強化系か!?」

 

統夜の言う通り、牙狼の称号を持つ冴島鋼牙は、初めて魔導馬轟天を召還した時にハンプティを倒している。

 

統夜の目の前にいるハンプティはそのハンプティよりも装甲が強化されている強大なホラー、「ハンプティマグナ」であった。

 

『……!統夜、来るぞ!』

 

「!!」

 

ハンプティマグナが先制攻撃を仕掛けて来たので、統夜は魔戒剣を抜き、後方へジャンプすることで攻撃を回避してハンプティマグナと距離を取った。

 

「こいつは鎧を召還しないとダメそうだな……。……貴様の陰我、俺が断ち切る!」

 

統夜はハンプティマグナに向かって魔戒剣を突きつけると、その魔戒剣を上空へ高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれて、統夜は奏狼の鎧を身に纏った。

 

それだけではなく、統夜は鎧の召還と同時に、自分の魔導馬である白皇を召還した。

 

統夜は白皇に跨がり、ハンプティマグナと対峙した。

 

『こいつの装甲はやっかいだぞ、統夜』

 

「あぁ、どうやらそうらしいな」

 

統夜は白皇の力で皇輝剣を皇輝斬魔剣に変化させると、ハンプティマグナを睨みつけた。

 

「明日はテストなんだ……。一気に決めるぞ!」

 

統夜は全力でハンプティマグナを討滅させるため、白皇をハンプティマグナに向かって走らせた。

 

ハンプティマグナは体から種のような弾丸を放つが、統夜は皇輝斬魔剣でそれらを全て弾き飛ばした。

 

「……取った!!」

 

統夜は絶妙なタイミングで皇輝斬魔剣を振るうが、ハンプティマグナの装甲は予想以上に強固であり、その身体に傷をつけることは出来なかった。

 

「何!?」

 

統夜は今の一撃でハンプティマグナを倒せなかったことに驚いていた。

 

「くそっ……!まだだ!」

 

統夜は諦めずに再び皇輝斬魔剣を振るうが、ハンプティマグナの腕で軽々と防がれ、統夜はハンプティマグナの攻撃で少し吹き飛ばされてしまうが、どうにか体勢を立て直し、ハンプティマグナと距離を取った。

 

『こいつ……!ただのハンプティより装甲が硬いぜ……。ということはこいつはハンプティマグナか!?』

 

イルバは今までの戦いでこのホラーがハンプティではなく、ハンプティマグナであると確信した。

 

ハンプティマグナは「どうした?かかって来いよ!」と言うかのように手招きをしてこちらを挑発していた。

 

(くそっ!あんな馬鹿みたいに硬い奴はどうやって倒せばいいんだよ!?)

 

統夜はハンプティマグナをどう攻略するか考えていた。

 

すると……。

 

(……!待てよ!あの方法なら!)

 

統夜はグォルブと戦った時に皇輝斬魔剣を烈火炎装させたことを思い出した。

 

「よしっ!これなら!」

 

統夜は皇輝斬魔剣に赤い魔導火を纏わせると、再びハンプティマグナに向かっていった。

 

統夜は赤い魔導火に包まれた皇輝斬魔剣を3度、4度とハンプティマグナの身体に叩きつけた。

 

その後統夜は全身を切り裂かれたハンプティマグナを睨みつけた。

 

ハンプティマグナの身体は魔導火の炎に包まれ、少しずつ崩壊していった。

 

そして……。

 

統夜の放った連続攻撃が致命傷になったのか、ハンプティマグナの身体はバラバラになり、爆発四散した。

 

「よしっ……なんとか……倒したな……」

 

統夜はハンプティマグナを撃破したことを確認すると鎧を解除し、元に戻った魔戒剣を青い鞘に納めた。

 

「か……帰ろう……。今日は……疲れた……」

 

ハンプティマグナとの戦いで全力を使い果たした統夜はフラフラになりながらもどうにか帰宅した。

 

 

 

 

統夜は家に到着するなり風呂場へと直行した。

 

統夜はシャワーを浴びてその日の汚れを洗い流すと、浴槽に入ることはせずに風呂場を出た。

 

統夜はバスタオルで全身拭くと、パンツだけをはいて、後は全て手に持って寝室へと向かった。

 

「……もう、寝よう……今日は……疲れた……」

 

統夜はパジャマに着替え、イルバを専用のスタンドにセットすると、ベッドにダイブし、1分もかからずに眠りについた。

 

ハンプティマグナとの戦いで疲れ果てた統夜は翌日がテストだということはすっかり忘れて眠りについてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

翌日、統夜の疲労は相当だったのか、普段起きる時間になってもまだ眠り続けていた。

 

『……おい、統夜!起きろ!』

 

それを見かねたイルバが統夜を起こしていた。

 

「うにゃあ……何だよイルバ……もうちょっとだけ寝かせてくれよ……昨日のホラーとの戦いは……ハードだったんだから……」

 

統夜は寝惚けながらなかなか起きようとしなかった。

 

『おい、統夜!今日から期末テストだろう?そんな悠長にしていていいのか?』

 

「期末テストぉ……?そんなの別にどうでも……あれ……?」

 

統夜は寝惚けながらも期末テストという単語に反応していた。

 

そして……。

 

「やっべぇ!!全然勉強してねぇ!!」

 

統夜はガバッと起き上がった。

 

『やれやれ……ようやくお目覚めか?』

 

「い、イルバ……どうしよう……。俺、昨日は全然勉強してない……。それに、勉強した内容を全部忘れちまった……」

 

統夜は昨日勉強してないということだけではなく、勉強した内容を忘れたというとんでもない爆弾発言をしていた。

 

『やれやれ……それはお前さんの自業自得だろ?』

 

「だってよ!昨日は仕方ないだろ!?あんな手強いホラーを相手にしたんだから!」

 

統夜が昨日戦ったハンプティマグナはホラーの中でもかなり強大な部類に入るホラーで、並の魔戒騎士ではまず歯が立たないホラーである。

 

そんなホラーを相手に全力を尽くしたせいで統夜は勉強したことも全て忘れてしまったのだ。

 

『はぁっ……。統夜、今日の教科は何だ?』

 

「現国と社会だけど……」

 

『数学が来なくて良かったな。今日数学があったらお前は赤点必至だったぞ』

 

「まぁ、そうだな」

 

『とりあえずさっさと顔を洗って来い。今日もエレメントの浄化をしてから学校に行かなきゃいけないんだからな』

 

「わかってるよ」

 

統夜は顔を洗い、軽く朝食を済ませると、学校に出掛ける準備を済ませ、いつものように朝のエレメントの浄化に出かけて行った。

 

 

 

そして日課のエレメントの浄化を終えた統夜は急いで学校に向かい、これから行われる試験に備えた。

 

こうして期末テスト初日はどうにか無事に終わり、翌日は統夜が大の苦手な教科が待ち構えていることもあり、統夜はすぐさま家に帰って勉強に集中した。

 

その甲斐があってか、統夜は苦手教科もどうにか切り抜けることが出来た。

 

苦手教科を切り抜けて勢いに乗った統夜はその後も勉強に集中したことでどうにか期末テスト全教科を無事に乗り切ったのである。

 

 

 

そしてテストの返却日、統夜たちは音楽準備室でテストの点数を見せ合っていた。

 

「じゃーん!!どうだ、すげーだろ?」

 

律が自慢気に唯と統夜に自分のテストを見せていた。

 

すると、律はなんと数学で「82点」となかなかの高得点を叩き出していた。

 

「おぉ!りっちゃん凄い!」

 

「な……なん……だと……!?」

 

唯は律の点数に関心し、統夜は同類と思っていた律が自分より遥かに高い点数を叩き出していることに驚愕していた。

 

「おいおい、これは本当に律のテストか?カンニングした訳じゃないだろうな!」

 

「失礼なことを言うんじゃねぇよ!馬鹿統夜!」

 

統夜の言葉にムッときた律は統夜に拳骨をお見舞いした。

 

「いってぇ!」

 

統夜は律の拳骨を受けてあまりの痛みに拳骨を受けた場所を手で押さえていた。

 

「やれやれ……」

 

澪はそんな統夜たちのやり取りをジッと見ていた。

 

「澪ちゃんもお疲れ様♪」

 

「あぁ、本当に疲れたよ……」

 

澪は紬の言葉にこう気軽に答えたのだが……。

 

(……ってあれ!?バレてる!?)

 

「ウフフ♪」

 

紬は澪の考えを見透かして笑みを浮かべていた。

 

実は律がここまで高得点を取ることが出来たのは澪のおかげなのである。

 

澪は唯や律が自分の力で頑張るという言葉を信じて律が勉強を教えてと泣きついてきても勉強を教えないつもりだった。

 

しかし、澪は律の必死な懇願に根負けしてしまい、仕方なく律の勉強を見ることになったのである。

 

紬は澪が唯や律に勉強を教えないと言いながらも教えるだろうと予想し、その予想が見事に当たったのである。

 

「そういえば唯はテストどうだったんだ?」

 

統夜は唯のテストの結果が気になったので、唯に質問してみた。

 

「今回は憂に教えてもらったから追試はなかったよ」

 

「何だよ!結局1人でやってないじゃないか!」

 

そう言って律は笑っていたのだが……。

 

『おい、ちょっと待て。確か憂は1年生だったな?……ということは唯は下級生に勉強を教わったってことなのか?』

 

「「「「「あっ!!」」」」」

 

「ほえ?」

 

唯以外の全員はイルバの言葉の意味を理解して驚愕するが、唯だけは理解出来ずに首を傾げていた。

 

『ま、まぁ……。赤点を回避出来たなら結果オーライで良かったんじゃないのか?』

 

イルバの言葉に唯以外の全員がウンウンと頷いていた。

 

「そういえばやーくんはどうだったの?」

 

統夜のテストの結果が気になった唯はがこう聞くが、それを聞いて統夜はドキッとしていた。

 

「あー、えっと……」

 

「まさか、追試だって言うんじゃないだろうな?」

 

「それはない。何とか追試は回避したんだよ」

 

「?それじゃあどうしてはっきりそうだって答えないんですか?」

 

梓は赤点がないならそう答えればいいのに何で答えをはっきり言わないのか気になり、そう訪ねてみた。

 

「えっとな……。これを見ろ」

 

統夜は一番苦手な数学のテストを唯たちに見せた。

 

それを見た唯たちは統夜のテストの結果に驚愕していた。

 

その理由は……。

 

「え……これって……」

 

「31点……。赤点が30点以下だからギリギリ……だよな……」

 

統夜は僅か1点差で赤点を免れたので、ハッキリ答えたくなかった。

 

『まぁ、自力で何とかしたにしては上出来じゃないか?テスト前日はホラーのせいでテスト勉強も出来なかったしな』

 

「えっ!?そうなんですか!?」

 

「あ、あぁ。実はそうなんだよ」

 

『それだけならまだいいが、その時戦ったホラーがかなりの強敵でな。全力を尽くしてどうにか討滅はしたものの、統夜は勉強した内容を全て忘れちまったんだよ』

 

「な、なるほど……。それでギリギリ赤点回避って訳ですか……」

 

統夜のテスト前日の話を聞いた梓は苦笑いをしていた。

 

「ま、まぁ!良かったじゃん!追試はないんだから!」

 

「それもそうだな!これで勉強からは解放される訳だし♪」

 

『いやいや、普段からちゃんと勉強しろよ』

 

イルバのツッコミに澪、紬、梓はウンウンと頷いていた。

 

こうして統夜は期末試験をギリギリではあるが、無事に乗り切ったのであった。

 

 

 

 

……完

 

 




統夜は無事に試験を乗り切ることが出来ました。

今回シグトが初登場しました。本編で出てこなかったシグトがここで登場しました。

そして今回はテスト回にも関わらずとんでもない強敵も出てきました。

今回出てきたハンプティマグナは「CR牙狼 魔戒ノ花」に出てきたホラーです。

そのリーチを再現した戦い方をした統夜でした。

そんな強敵を倒した後のテストでしたが、統夜はなんとか試験を乗り越えました。

次回も番外編になりますが、番外編は次回で最後にしようと思っています。

さて、次回は一体どのような話になるのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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