この回でこの章は完結となります。
1話から24話までの話は混沌魔戒騎士編という章になりますのでよろしくお願いします。
この章は終わりですが、最終回ではありませんのでご了承ください。
それでは、第24話をどうぞ!
復活した強大な力を持つホラー、グォルブを討滅するために、統夜、鋼牙、零の3人は真魔界に乗り込んだ。
そこで3人が見たものは実体化したグォルブの姿であった。
統夜たちは鎧を召還し、グォルブに立ち向かった。
そんな中、統夜はグォルブの強大な力に徐々に追い詰められていった。
グォルブの容赦ない攻撃に鎧を解除された統夜はグォルブが呼び出した素体ホラーたちと戦っていた。
しかし、体力が限界だった統夜は素体ホラーたちに追い詰められていったのである。
その時、突然音楽が聞こえてきた。
紬がお守りとして統夜に渡した宝石から音楽が聞こえてきたのである。
そしてその時、不思議なことが起こった。
銀色の輝きを放って素体ホラーを消滅させただけではなく、奏狼の鎧にも変化が起こった。
銀色の翼が生え、翔翼騎士奏狼へとその姿が変わったのである。
統夜はその力で見事にホラー、グォルブを討滅し、統夜たちは真魔界から脱出した。
統夜たちが真魔界でグォルブと戦っている間にレオたちは光の柱の前にいた素体ホラーたちを全滅させ、統夜を待っていた。
そして……。
「!統夜君!鋼牙さん!零さん!」
統夜たちの無事を確認したレオは統夜たちに駆け寄り、大輝、ワタル、エイジも統夜たちに歩み寄った。
「皆さん、グォルブを討滅したんですね?」
「あぁ、統夜のおかげだ」
「いや、俺は……」
「謙遜することはないぜ。お前はよくやったよ」
「零さん……」
「ほぉ、どうやら小僧も一人前になったみたいだな」
統夜がグォルブを討滅したと知り、ワタルは笑みを浮かべていた。
「小僧はやめてくださいよ」
統夜はそう言って苦笑いをしていた。
「そうだな。……よくやった。月影統夜。……いや、白銀騎士奏狼」
「ワタルさん……」
統夜はかつての教官であるワタルに認めてもらったことが何よりも嬉しかった。
「あいつらも、きっと喜んでいるよ」
ワタルの言うあいつらとは修練場で統夜のチームメイトであり、ホラーに殺されてしまったシロ、アオ、ヤマブキのことであった。
「……俺もそう思います」
それを察した統夜はこうしみじみと呟いていた。
「とりあえず仕事は終わりだ。レオ、結界を解いても大丈夫だ」
「はい、わかりました」
レオが結界を解こうとしたその時だった。
『鋼牙!どうやらそれはまだ早いみたいだぜ!』
異変を感じたザルバが口を開いたその時だった。
真魔界のゲートとなった光の柱が砕け散り、漆黒の騎士が姿を現した。
「!貴様は!」
「暗黒騎士……ゼクス……」
「馬鹿な!貴様はグォルブに取り込まれて死んだはずだ!」
「馬鹿め。私はその程度では死なん。今の私にはどうしても始末したいやつがいるのでな」
統夜たちの前に立ちはだかったのはグォルブに取り込まれて死んだはずのディオスであった。
それも鎧だけ存在ではなく、本人の思念もあった。
「……月影統夜。貴様だけは私の手で殺す!貴様のせいで我が計画は水泡に帰したからな!」
ディオスは剣の矛先を統夜に向けていた。
「貴様を殺すだけでは物足りん!まず手始めに貴様の大切なものを奪ってやる。貴様を殺すのはそれからだ!」
そう宣言すると、ディオスはレオの貼った結界を破り、どこかへと移動を開始した。
「!逃がすか!!」
大切なものという言葉に心当たりのある統夜はディオスを追いかけるべくとある場所へと向かった。
※※※
その頃、邪美、烈花、翼の3人はホラー出現に備えていた。
唯たちが統夜にエールを送るため音楽準備室に行っている間も3人はホラー出現に備えていた。
唯たちがいなくなっておよそ20分。ホラー出現のゲートになっていた魔法陣が消滅した。
「!邪美姉。魔法陣が!」
「そうだね。どうやら統夜たちは無事にグォルブを討滅したみたいだね」
「ふっ……。統夜、それなりに成長したみたいだな……」
翼は自分の弟子のような存在の統夜の成長を実感し、笑みを浮かべていた。
魔法陣が消滅して数分後、唯たちが校庭に戻ってきた。
「あっ、唯!みんな!どこに行ってたのよ?」
唯たちがいなくなってからもその場に留まっていた和がこう唯たちを問い詰めていた。
「エヘヘ……。実は、演奏してたんだよね……」
「え!?演奏!?こんな状況なのに……ですか!?」
「あぁ、まぁ……ね」
澪は言い訳が思いつかずこう返しながら苦笑いをしていた。
「ま、まぁいいわ。どうやらあの怪物は出てこなくなったみたいだし」
さわ子たちもホラー出現のゲートになっていた魔法陣が消滅したのを見ていたので、唯たちにそのことを報告していた。
「え、そうなんですか?」
さわ子の報告に紬が驚きながら返事をしていた。
(という事は統夜先輩に私たちの音楽が届いたのかなぁ……)
(やーくん、ホラーをやっつけることが出来たんだね!)
唯たちは統夜たちがグォルブを討滅したのだろうと判断し、喜んでいた。
しかし、その喜びは束の間だった。
__ガシャアァァァァァァァァァン!!!
突然桜高入り口の結界が破壊されたと思ったら唯たちの目の前に漆黒の鎧の騎士が現れた。
「!!あ、あなたは!?」
「ま、まさか……」
唯たちはこの鎧を身につけているのがディオスであるとすぐわかっていた。
「あんた……暗黒騎士だね!!」
「その子たちはやらせはしない!!」
「………!」
邪美、烈花は魔導筆を手にディオスを睨みつけ、翼は無言のまま魔戒槍を構えるとディオスを睨みつけていた。
「……魔戒法師に魔戒騎士か。貴様らに私の邪魔はさせん!!」
「魔戒法師?」
「魔戒騎士?」
ディオスの発した言葉が理解できず、さわ子、和、純の3人は首を傾げていた。
「あなたはホラー復活が目的じゃないの!?」
紬は目の前のディオスに畏怖の感情を抱きながらも臆せずディオスを問い詰めていた。
「あぁ。グォルブは復活したさ。だが、グォルブは討滅されてしまったよ。……月影統夜にな」
「という事はやっぱり統夜先輩は勝ったんですね!?」
梓はディオスの言葉で統夜たちの勝利を確信していた。
しかし……。
「だったらお前は何でここに来たんだよ!!」
この場所に来たディオスの目的がわからなかったので、律はこう言い放ってディオスを睨みつけた。
「貴様らを斬るためだ」
淡々と語るディオスの言葉に唯たちは恐怖を感じていた。
「貴様らを殺せば月影統夜の苦しむ顔が見られるからな……。これは見せしめだ」
「何でそんな事するのさ!事情は知らないけど、ただの逆恨みじゃん!!」
「そうね!彼女たちは私の教え子なの。はいそうですかって許さないわよ!!」
事情を知らない純とさわ子であったが、ディオスの言葉が気に食わなかったのか、こう反発していた。
「黙れ!!さもなければ貴様らから始末するぞ!!」
「!やれるものならやってみなさいよ!!私は教師よ!!あの子達は私が守る!!」
さわ子は教師として唯たちの盾になると、ディオスを睨みつけた。
「そうか……。ならば貴様から斬ることにしよう」
ディオスは剣の切っ先をさわ子に向けた。
「さわちゃん!!」
「さわちゃん先生!!」
「「「「さわ子先生!!」」」」
目の前にいるディオスは本気でさわ子を殺そうとしていたので唯たちは思わず声をあげていた。
「!させないよ!!」
さわ子たちを守るため、邪美が術を放とうとしたその時だった。
「させるかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
上空から統夜が飛び出してくると、魔戒剣を一閃した。
統夜の存在に気付いたディオスは統夜の攻撃を魔戒剣で防いだ。
統夜は唯たちをディオスから引き離すために蹴りを放ってディオスを吹き飛ばした。
「「!統夜!!」」
「統夜君!」
「統夜さん!」
「統夜先輩!!」
「やーくん!!」
唯たちを救うために現れた統夜に唯たちは喜びの声をあげていた。
「ちょ、ちょっと統夜君!!これは一体どういうことなのよ!?」
事情を知らないさわ子が統夜を問い詰めていた。
「話は後です!みんなは下がってください!!」
「ちょっと統夜先輩!!どうするつもりなんですか?」
「俺はあいつを斬る。みんなを守るために」
魔戒剣を構えディオスを睨みつける統夜の顔は普段見せる統夜の顔とは別人で、純は困惑していた。
しかし、それは和もさわ子も同様であった。
「き、斬るって……。殺すってことよね?」
「大丈夫だ。あの男はもう化け物……ホラーと同じだ。だから斬らなきゃいけないんだ」
「「「………」」」
目の前にいるあの鎧は化け物と同様であると実感がない和たちは言葉を失っていた。
「和ちゃん!ここはやーくんの言う通りにしよう!」
「純!私たちは下がるよ!!」
「ほら、さわちゃんもだよ!!」
唯たちもさわ子たちを説得しようとしていた。
「とは言っても統夜君は大丈夫なの!?」
「はい、大丈夫です」
「だって…。統夜君は守りし者だもの。私たちのことをきっと守ってくれます」
「「「………」」」
統夜に戦わせる。このことに納得はいかないものの、ここは統夜を信じることにしたさわ子たちは安全な場所まで下がり、唯たちも続いた。
「統夜!!あんたの覚悟、そいつに見せつけてやりな!!」
「!!邪美さん!?それに……」
「邪美姉の言う通りだ!!しっかりあいつを倒して来い!!」
「烈花さん……」
「統夜。お前がどれだけ成長したのか俺に見せてみろ!!」
「翼さん……」
統夜は邪美、烈花、翼の3人がこの桜高を守ってくれていたことに驚いていた。
そして……。
「はい!!こいつは俺が倒します!!」
先輩たちのエールを受け取った統夜の目は必ずディオスを倒し唯たちを守るという使命感に満ちていた。
統夜はディオスを再び睨みつけ、ディオスもまた魔戒剣を構えて統夜を睨みつけていた。
そして……。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
統夜はディオスめがけて突撃すると、魔戒剣を一閃した。
しかし、それは難なく剣で防がれ、ディオスは盾を押し出して統夜を吹き飛ばした。
「くっ……!」
統夜は慌てることなく、再び魔戒剣を構えた。
そして、今度はディオスが攻撃を仕掛けてきた。
統夜はギリギリまで相手を引きつけると、無駄のない動きで魔戒剣の一閃をかわした。
「何!?」
統夜の動きにディオスは驚いていた。
統夜はすかさず魔戒剣を連続で振り下ろし、ディオスはどうにか防いでいたものの、統夜の猛攻に防戦一方だった。
「す、すごい……」
「えぇ……」
「な、何なのよ!統夜君は!あんな強そうな相手と互角じゃない!?」
統夜の戦いを初めて見る純、和、さわ子の3人は統夜の戦いぶりに驚きを隠せなかった。
「そうですね。統夜君はあの鎧の人やさっきの怪物を倒して人を守る魔戒騎士ですから」
こう語る紬の表情はどこか誇らしげだった。
「魔戒騎士……」
「あなたたち、知ってたの?統夜君があんな化け物と戦っているってことを」
「実は私たちもホラーに襲われたことがあって、統夜君が助けてくれたんです」
「そ、そんなことがあったんですか……」
純は唯たちまでこんな非日常に巻き込まれていると知り、驚いていた。
「へぇ、統夜。強くなったじゃないか……」
統夜と久しぶりに会う邪美は統夜の成長ぶりに感心していた。
「はい。俺は統夜が魔導馬の力を初めて使う瞬間を見たけど、その時より強くなっていると思います」
「俺からすればまだまだだな。……だが、悪くはない」
邪美も烈花も統夜の実力を認める中、翼だけは素直に統夜の成長を素直に認めようとしなかった。
しかし、翼は内心統夜の成長を認めていたので笑みを浮かべていたのである。
純たちが統夜の戦いぶりに驚き、邪美たちが統夜の成長を実感する中、戦いはまだ続いていた。
統夜は連続で攻撃を仕掛けて勢いでディオスを圧倒していた。
(くっ……!この小僧、さらに強くなっている……!黄金騎士や銀牙騎士がいて私と互角と思っていたのだが)
グォルブが復活する前は統夜、鋼牙、零の3人でようやくディオスと互角に戦えていた。
しかし、今統夜は自分1人の力でディオスと互角以上に戦っていた。
「何故だ……!貴様は何故そこまで強くなっているのだ!」
「俺は守りし者だ!守るべき者がいる限り俺はそれだけ強くなれる!まぁ、闇の力に魅入られたお前にはわからないだろうさ!」
統夜はこれまでの戦いを通して自分が守りし者であること。守りたい人の存在が自分を強くすることを実感していた。
この気持ちがあるからこそ、統夜は魔戒騎士として大きく成長することが出来たのである。
「闇の力こそ偉大だ!それは貴様もわかっているだろう!」
「いや、今ならわかる。やっぱり闇の力は偽物の力だ!そんなものに頼らなくたって人は強くなれるんだ!」
「何も知らない小僧が……!調子に乗るな!」
ディオスは衝撃波を放つと、統夜を吹き飛ばしたが、統夜はあえてその攻撃を受けたみたいで、吹き飛ばされた勢いでディオスと距離を取った。
「これ以上俺の母校を戦場にしたくないから一気に決めてやる!……貴様の陰我、俺が断ち切る!」
統夜はディオスにむかってこう高々と宣言した。
すると統夜は魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。
円の部分だけが違う空間に変化すると、そこから放たれる光に統夜は包まれていった。
そして……。
ガチャン!ガチャン!との金属音と共に統夜の身体に次々と白銀の鎧が装着されていった。
脚、腕、身体と鎧が装着され、統夜の顔以外は白銀の鎧を身に纏った。
少し時間を置いて統夜の顔に狼のような顔の鎧が装着された。
こうして統夜は白銀の鎧を身に纏ったのである。
「……!す、凄い……」
「ぎ、銀の……狼?」
「すごく、綺麗じゃない!」
統夜の鎧を初めて見る純、和、さわ子はその鎧の放つ輝きに見入っていた。
それは何度も統夜の鎧を見ている唯たちも同様であった。
いや、唯たちはいつも以上に統夜の鎧が輝きを放っているように感じていた。
統夜の身に纏ったこの鎧こそ白銀騎士奏狼。
統夜が受け継いだ魔戒騎士としての名前である。
ソロというのは旧魔戒語で「勇気」という言葉であり、統夜が身に纏う奏狼は勇気の騎士である。
「鎧を召還したか……。だが、貴様1人でこの私を倒せると思うな!」
「違うな!俺は……1人じゃない!」
統夜はディオスに向かって突撃すると、魔戒剣が変化した皇輝剣を一閃し、さらに蹴りを放ってディオスを吹き飛ばした。
「俺は大切なみんなの思いを受け取って共に戦っている!」
「みんなの思い……だと?くだらん!」
「それだけではない!」
この時統夜の脳裏には白皇に跨り魔界を駆ける数多の奏狼の姿が目に浮かんでいた。
「かつて奏狼の称号を受け継いだ全ての英霊と、俺は共に戦って来たんだ!」
「ほざけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
ディオスは獣の咆哮のような雄叫びをあげると、紫の魔導火を剣の切っ先に纏わせて烈火炎装の状態になった。
それを見た統夜もまた皇輝剣の切っ先に赤い炎を纏わせて烈火炎装の状態になった。
この時統夜は初めてディオスと戦った時のことを思い出していた。
その時も今回のように互いに烈火炎装を発動していた。
その時はディオスの圧倒的な力に競り負けたが、今回は負ける訳にはいかない。
そう統夜は思っていた。
そして……。
互いに烈火炎装を発動した2人はその状態で互いにぶつかり合った。
その瞬間を見た誰もが互角の力だと思っていた。
しかし……。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
統夜はまるで獣のように咆哮をあげていた。
そして……。
統夜は一瞬の隙をついて皇輝剣を縦に一閃し、ディオスを斬り裂いた。
「ぐぉっ!!」
その一撃が相当効いているのかディオスは手に持っている魔戒剣を落としてしまった。
「これで終わりだ!!」
統夜はさらに皇輝剣を横に一閃した。
この統夜の一閃が決定打となった。
「ば……馬鹿な……!この俺が……こんな小僧に……!」
統夜の渾身の一撃を受けたディオスは自身が身に纏う暗黒騎士ゼクスの鎧が粉々に砕ける形で解除された。
そして、苦しげな声をあげながらディオスの身体は灰となり、消滅していった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ディオスとの戦いに持てる全ての力を使い切った統夜は息を切らしていた。
そして鎧を解除すると、統夜はその場で膝をついたのである。
「「統夜!!」」
「統夜君」
「統夜さん!」
「統夜先輩!」
「やーくん!」
唯たちは統夜に駆け寄り、和、純、さわ子もそれに続いた。
「統夜先輩、倒したんですね!あいつを。そしてグォルブっていう凄い力を持ったホラーを!」
「あぁ。だけど俺たちがあいつらに勝てたのは俺たちだけの力じゃない」
「?統夜、どういうことなんだ?」
「グォルブとの戦いの時に俺は絶体絶命の状態に追い詰められたんだけど、そんな時に聞こえたんだ」
「聞こえた?それってまさか……!」
「あぁ、みんなの音楽だよ」
統夜はこうしみじみと呟いていた。
ホラー、グォルブや暗黒騎士ゼクスことディオスに勝てたのは自分1人の力ではない。
唯たちの応援があったからであると統夜自身が実感していた。
統夜は紬がくれたネックレスを取り出そうとするのだが……。
「……あれ?ない!ないぞ!」
「?統夜さん?もしかして……」
「あぁ。あの宝石が無くなってる。紐だけはちゃんと残っているんだけど」
「統夜君に歌が届いたのはあの宝石のおかげかもしれないわね。それで、使命を終えて消えたんじゃないかしら」
「なるほど、それなら一理あるかもな」
統夜は紬の推理を聞いてそれがあながち間違いではないと感じていた。
「それよりも、届いたんだね、私たちの音楽が♪」
「あぁ。みんな、本当にありがとな」
「「「「「「……!////」」」」」」
統夜の優しい笑顔を見た唯、律、澪、紬、梓、憂の6人は顔を真っ赤にしていた。
「?みんなどうして顔を赤くしてるんだ?」
『やれやれ。お前は相変わらず鈍いやつだな、統夜』
「え?ゆ、指輪が……しゃ、喋った!?」
イルバが喋るのを目の当たりにした純は驚きを隠せなかった。
「え?指輪が?まさかそんな……」
『いいや、それは間違いではないぜ』
「!?それは、統夜君がいつも身につけてる指輪じゃない!」
『あぁ。俺様はイルバ。魔導輪だ』
「魔導輪?」
『その話は後でしてやるよ』
「……」
こうイルバが説明する中、さわ子はイルバのことをジッと見ていた。
『おいおい、いくら俺様が喋るとはいえそんなに見なくてもいいだろう?』
「その指輪……前からいいと思っていたけど、喋る指輪とか最高じゃない!統夜君!それを私に譲ってちょうだい!」
さわ子はイルバが喋ると知ったことでさらにイルバのことが気になったようで、統夜に欲しいと交渉をしていた。
『えぇい!やめろ!俺様に触るんじゃない!』
「アハハ……。イルバもこう言ってますし。それに、こいつは俺には必要ですから」
「そう?残念ね」
イルバを譲ってもらえないとわかり、さわ子はしゅんとしていた。
「やれやれ。随分と騒がしいね」
邪美たちは統夜たちのやり取りを見て苦笑いをしていた。
「確かに、そうですね」
「あぁ、随分と賑やかだな」
烈花と翼も邪美同様苦笑いをしていた。
その時、3人の前に鋼牙、零、レオの3人が現れた。
鋼牙たちは統夜が戦っている間にディオスが潜伏していた場所の調査を行い、それが終わると大輝、ワタル、エイジの3人は帰って行ったのである。
それを見送ってから鋼牙、零、レオは桜高に向かったのである。
「あぁ、みんな。今来たんだね」
「邪美、烈花、翼。お前たちも来てたんだな」
「あぁ。グォルブの方はお前らがいるから大丈夫だと思っていたからな。だからここを守っていた」
「鋼牙。どうやらグォルブは倒したようだな」
「そうだな。だけど、グォルブを倒せたのは俺や零の力ではない」
「あぁ。統夜の力でグォルブを倒したんだよ♪」
「フッ……。どうやらそうらしい。あいつ、暗黒騎士も倒したからな」
「そうか」
統夜はディオスを倒すと確信していた鋼牙は翼の報告を聞いて笑みを浮かべていた。
「統夜君、強くなりましたね」
「あぁ、そうだな」
「だが、あいつもまだまだな部分は多い」
「だからこそ鍛え甲斐があるんだよ」
翼は統夜はかなり鍛え甲斐があると思っていた。
それ故に自分の弟子である日向や暁以上に厳しく稽古をつけたこともあった。
それでも統夜は必死に喰らいついてきていた。
翼がこの中にいる誰よりも統夜の成長を喜んでいたのである。
しかし、素直な性格ではないのでそれを表に出すことはしなかった。
「さて、ここから忙しくなるね!」
「そうですね。騒ぎを大きくしないために学校にいる人たちの記憶を消さないといけないですしね」
グォルブとディオスは討滅されたものの、まだやるべき仕事は残されていた。
騒ぎを大きくしないために校内に残っている全員の記憶を消さねばならないからである。
そうしなければ校内から出られなくなったことやホラーの話が噂として広まる恐れがあるからである。
邪美、烈花。そしてレオの3人が記憶を消す準備を始めた。
唯、律、澪、紬、梓、憂の6人は前々から魔戒騎士やホラーのことを知り、統夜を支えてくれたということで記憶は消さないでいてくれた。
そんな中、さわ子、和、純の3人は統夜に必死に交渉した結果、記憶は消されずに済んだのである。
こうしてそれ以外の人間のこの戦いに関する記憶を全て消しさったところで、強大なホラー、グォルブ。そして闇の力に堕ちた魔戒騎士である暗黒騎士ゼクスことディオスとの戦いは幕を閉じたのである。
統夜はさわ子、純、和の3人にホラーや魔戒騎士の話をすることになったが、それは別の話である。
※※※
ホラー、グォルブ。及びディオスを討滅してから数日が経った。
強大なホラーを討滅した後であっても魔戒騎士の仕事に休みはない。
統夜はこの日もいつものように起床し、鍛錬を済ませると、朝のエレメント浄化に出掛けた。
それが終わると学校へ向かい、授業を受けた。
数日前は大きな出来事が起こっていたにも関わらず平凡な日常になっているのはあの時学校に残っていた人たちの記憶を消したからであった。
みんな何事もなかったかのように日常を過ごしているのを見て唯たちは驚いていた。
放課後になると統夜は音楽準備室に向かい、この日もいつものようにティータイムが行われていた。
そしてこの日は番犬所から呼び出しがあるとのことで、1時間程ティータイムに参加してから統夜は番犬所へと向かった。
「統夜。ホラー、グォルブと暗黒騎士ゼクスを討滅してから数日が経ちました。……本当によくやってくれましたね、統夜」
「イレス様。ありがとうございます。お褒めの言葉は大変光栄です」
統夜はイレスに深々と頭を下げた。
「統夜の活躍は元老院も高く評価しています」
「元老院が……ですか?」
まさか全ての番犬所を総括する元老院が自分を認めてくれているとは思っておらず、統夜は驚きを隠せなかった。
「統夜……。桜ヶ丘高校を卒業したら元老院に行きませんか?」
「え?俺が元老院……ですか?」
思いもよらなかったイレスの言葉に統夜は驚いていた。
元老院付きの魔戒騎士は相当な実力の持ち主であるからだ。
先の戦いで共に戦った鋼牙、レオ、ワタル、エイジの4人が元老院付きの魔戒騎士である。
零は東の管轄の魔戒騎士であり、翼は魔戒法師の里であり、自分の故郷である閑岱の地を守る魔戒騎士である。
零も翼も元老院付きでもおかしくない実力の持ち主ではあるものの、元老院付きではないのである。
「冴島鋼牙や布道レオも統夜の元老院入りを推薦してくれています」
「鋼牙さんとレオさんが……」
レオはグォルブとの戦いが終わった翌日が教育実習の任期であったので、現在は元老院に戻っているのである。
「統夜、どうですか?この話は悪い話ではないとは思いますが」
「…………」
統夜は真剣な表情で考えていた。
元老院付きの魔戒騎士になれるというのは魔戒騎士にとってこの上ない程の名誉だからである。
さらに黄金騎士牙狼の称号を持つ鋼牙が推薦してくれてるとなればその価値はさらに上がるのである。
少し考えた後、統夜はすぐ結論を出した。
「……大変ありがたいお話ですが、その話はお断りさせてもらいます」
統夜は考え抜いた結果、元老院には行かずこの番犬所に残るという道を選んだのである。
「何故ですか?いい話であると統夜も思ったはずです」
「そうですね。その話を聞いた時はすごく嬉しかったです。俺も魔戒騎士としてそれなりに一人前になったんだなって。ですが、俺は魔戒騎士としてはまだまだです。そんな俺に元老院付きの仕事は難しいでしょう」
「統夜……」
「それに、俺はこの桜ヶ丘が大好きです。だから、この街を守るというのが性に合ってるんですよ」
これは統夜の本音であった。
統夜は生まれ育ったこの桜ヶ丘を愛していた。
それ故この街を守る魔戒騎士でいたい。そう思っていたからである。
「統夜の意思はわかりました。そこまで言うなら無理強いは出来ませんからね」
「申し訳ありません、イレス様。せっかくありがたいお話をくださったと言うのに……」
「良いのです。それに、そう言ってくれて私も嬉しいんですよ♪」
「イレス様……」
「さて、この話はこれでおしまいです。……そして統夜、指令です」
統夜の元老院行きの話がなくなったところでホラー討滅の指令が来た。
人の邪心がある限り陰我は生まれ、ホラーは現れる。
それ故に魔戒騎士に休む暇はない。
だがしかし、それでも統夜は戦うことを辞めない。
何故なら統夜はホラーから人々を守る魔戒騎士であるからである。
これからも統夜の戦いが終わることはない。
統夜はイレスから指令を受け取ると、この日もホラーを討滅するために動き始めたのであった。
……混沌魔戒騎士編・終
統夜とディオスの戦いが終わりました。それでも統夜の戦いは終わりません。これからも戦い続けます。
そしてこの小説も続きます。
とりあえず統夜が学校を卒業するまでは続けたいなぁとは考えています。
しばらくは番外編を何話か投稿し、それからけいおんメインの話になっていくと思います。
次回は前々から宣言していたUA5000記念の番外編を投稿します。
とりあえず今回は統夜の父親である龍夜とバラゴの戦いの話に決めました。
もう1つ考えていたディオスがいかにして暗黒騎士になったかはUAが10000を越えたら記念作品として投稿する予定です。
それでは次回の番外編をお楽しみに!