牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました、第22話です!

ここからディオスとの決着編に入っていきます。

そして今回はあの意外な原作キャラが登場するかも?そこをふまえてお楽しみ下さい!

話は変わりますが、もうすぐ「牙狼 DIVINE FLAME」が公開になりますね。皆さんは観に行きますか?

僕は日曜日に観に行く予定です。

そして今日は「牙狼 炎の刻印」のニコ生放送と「魔戒列伝」のニコ生放送と本放送があるから大忙しです(笑)

それでは、第22話をどうぞ!




第22話 「突入」

桜ヶ丘高校軽音楽部の部室である音楽準備室で統夜たちはティータイムを行っていた。

 

外が暗くなり、そこでティータイムは終了して統夜たちはディオスのもとへ向かう準備を整えた。

 

「……統夜、いよいよだな」

 

統夜たちが音楽準備室を出る前に律が統夜に声をかけた。

 

「あぁ、そうだな」

 

「統夜、無茶だけはするなよ」

 

「あぁ、ありがとな、澪」

 

「統夜先輩、必ず生きて帰って来て下さいね」

 

「あぁ。俺は必ず戻ってくる。信じて待っててくれ」

 

「やーくん、私、信じてるから」

 

「おう、信じていてくれよな」

 

「ねぇ、統夜君、これ」

 

紬が手に持っていたのは蒼い輝きを放つネックレスだった。

 

「ムギ、これって高いものじゃないのか?そうだとしたら申し訳なくて受け取れないよ」

 

「これは宝石としての価値はないわ。これはお守りよ」

 

「お守り?」

 

「えぇ。きっと統夜君を守ってくれるわ」

 

「……ありがとな、ムギ」

 

「うぅん。今つけてあげるね♪」

 

紬はそのネックレスを統夜につけてあげた。

 

その間紬の柔らかい肌の感触が伝わり、さらにいい匂いもしていたので統夜はつけてもらっている間は顔を真っ赤にしていた。

 

「……何か、初々しいな。統夜のやつ」

 

「……あぁ、そうだな」

 

鋼牙と零は恥ずかしそうにネックレスをつけてもらっている統夜を見て苦笑いをしていた。

 

「……はい、大丈夫よ」

 

「あっ、ありがと」

 

統夜は照れながらも唯たちの方を見ると唯たちはニヤニヤしながらこっちを見ていた。

 

「そ、それじゃあ俺たちは行くから」

 

このままではからかわれると思い、統夜は音楽準備室を出ようとしていた。

 

「統夜先輩!」

 

しかし、梓に引き止められたので統夜はすぐに足を止めた。

 

「あっ、あの……!ご、ご武運を!」

 

梓の言葉を聞いた統夜は振り向いて微笑むと、そのまま音楽準備室を出て行った。

 

統夜が出て行くと、鋼牙たちも統夜に続いた。

 

「統夜……死ぬなよ……」

 

こう呟く律の言葉に唯たちは頷いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

音楽準備室を後にした統夜たちは学校の入り口で待機していた大輝と合流した。

 

合流してから歩くこと3分。ディオスの潜伏先は本当に桜高のすぐ近くだった。

 

「……鋼牙さん、ここですか?」

 

「あぁ、そうだ」

 

『どうやら間違いなさそうだ。この先からとんでもない邪気を感じるぜ』

 

イルバも邪気を感知できることから、ディオスが潜伏しているのはほぼ間違いなかった。

 

『当然だろう。俺様が前もって探知出来たんだ。お前のような骨董品とは違うんだよ』

 

『言ったな!貴様も俺様と同じ形の骨董品のくせに!』

 

『俺様をお前と一緒にするな!』

 

敵地を目の前にしてザルバとイルバが喧嘩を始めてしまった。

 

「おい、やめろイルバ!」

 

「お前もだ、ザルバ。……どうやら来たようだな」

 

ザルバとイルバが喧嘩している間に統夜たちの目の前に大量の素体ホラーが現れた。

 

「おっと……。これはこれはずいぶんな数だな」

 

「これだけのホラーを従えてるとは、あいつもどうやら本気みたいだな」

 

「……レオ。関係ない人たちが巻き込まれないように結界は貼ってあるか?」

 

「えぇ。そこは抜かりないです。これで関係ない一般人がこの戦いに巻き込まれることはありません」

 

「よっしゃあ!一気に片付けようぜ!!」

 

「はい!!」

 

統夜たちはそれぞれの魔戒剣を抜くと、構えた。

 

「みんな、行くぞ!!」

 

「おう!」

 

「「はい!!」」

 

「承知!!」

 

鋼牙の号令で統夜たちはそれぞれ素体ホラーに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

統夜たちがディオスの潜伏先に到着し、大量の素体ホラー相手に戦いを挑んでいた頃、桜高の中ではちょっとした騒ぎが起きていた。

 

帰ろうとしてもなぜか校内から出ることが出来なくなっているのだ。

 

この時間になっても残っている生徒たちが校内から出られないのは、レオが貼った結界が作動しているからである。

 

ホラーとの戦いに関係ない人を巻き込まないために、戦いが終わるまでの間、校内から出られないようにしているのだ。

 

そうとは知らない唯たちはとりあえずお茶を飲んでいたのだが……。

 

「梓ぁ!!大変だよ!!」

 

まだ校内に残っていた純と憂が音楽準備室に駆け込んできた。

 

「じゅ、純!どうしたの?そんなに慌てて」

 

「い……今ね、何でかわからないけど、学校から出られなくなってるの!!」

 

「「「「「え!!?」」」」」

 

「今、校内が大騒ぎになってるの。皆さんも来て下さい!」

 

「う、うん!わかった!」

 

憂もこう言っていたので唯たちは2人の後に続いて玄関へ向かった。

 

どうやら玄関から外には出られるようだが、校庭に少しだけ人だかりが出来ていた。

 

「ど……どうなってるんだありゃあ!?」

 

「まさかみんな出られないのか?」

 

校内には結構な数の生徒が残っており、校庭は少しだけ騒然としていた。

 

それを見ていた唯たちは唖然としていた。

 

(……!そういえばレオ先生が結界がどうとか言ってたからそれで外に出られなくなってるの?)

 

梓の推測通り、レオはこの校内全体にホラー除けの結界を貼っていた。

 

グォルブ復活のゲートがこの学校の近くにあるということが判明していたので、この学校の中にホラーを入れないために結界を施していたのだ。

 

普段は人の出入りは出来るくらい結界は弱かったのだが、今回は誰も出入り出来ないくらい強い結界になっていた。

 

「……あっ、唯!みんな!!」

 

校庭の人混みの中にいた和が唯たちを見つけて声をかけた。

 

「あっ!和ちゃん!」

 

唯たちは和を見つけると、和のもとへ駆け寄った。

 

和の隣にはさわ子の姿もあった。

 

「みんな、今大変なことになっているのよ」

 

「ご覧の通り今この学校から出られなくなっているのよ。原因は全くわからないんだけどね」

 

さわ子が改めて事情を説明したのだが、教師であるさわ子もこの異常事態に困惑していた。

 

「そ、そう……ですか」

 

「ん?あなたたち、何か知っているの?」

 

さわ子は訝しげな目で唯たちのことを見ていた。

 

「し、知らないよ!さわちゃん!あたしらにそんなのわかる訳ないじゃん!」

 

「まぁ、そうよねぇ……」

 

「……一体、何が起こっているのかしら……」

 

「わからないわ……。だけど、今何かが起こってて、大丈夫になったら私たちも出られるんじゃないかしら」

 

紬はこう推測して和たちを安心させようとしていた。

 

(!もしかして……もう戦いが始まってるってこと……だよね……。やーくん……無事だといいけど……)

 

唯はこれだけの騒ぎから統夜たちがすでに戦いを始めたのではないかと推測し、統夜のことを心配していた。

 

(まさか……。この近くであのディオスって人と統夜さんたちが戦っているの?)

 

憂はこう推察するが、それが当たっていることを本人は知らなかった。

 

唯たちはどうすることも出来ず、この場で待機することしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

ちょうどその頃、遠くから結界が張られている桜ヶ丘高校を見つめる3つの影があった。

 

「……どうやら、始まったようだね」

 

「はい、そうみたいです」

 

「どうやら、思ったより事態は深刻なようだな」

 

「そうだね。でも統夜だけじゃない。鋼牙や零もいるんだ。あたしらが手を貸すまでもなさそうだね」

 

「あぁ、そうだな」

 

「だけど、統夜の学校とあの子たちは俺たちが守ってやるさ」

 

「あぁ、そうだね」

 

「統夜……。お前がどれだけ力をつけたのかお手並みを拝見させてもらおうか」

 

この3人はどうやら統夜たちのよく知る人物のようであった。

 

3人は遠くから統夜たちの戦いを見守り、そして桜ヶ丘高校を守れるよう目を光らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

統夜たちは大量の素体ホラーを相手にしていたのだが、予想異常にホラーの数が多く先に進めることが出来なかった。

 

「くそっ!きりがない!どんだけの数のホラーを用意してるんだよ!!」

 

統夜は1体、2体と素体ホラーを斬り裂きながらぼやいていた。

 

「そうだなぁ!これは少々面倒だぜ!!」

 

零も次々と素体ホラーを斬り裂きながら文句を言っていた。

 

「ここでグズグズしていてはグォルブが復活してしまう!」

 

素体ホラーを次々と斬り裂きながら鋼牙は焦っていた。

 

ここでいたずらに時間を費やしていてはホラー、グォルブが復活してしまうからである。

 

「統夜君!鋼牙さん!零さん!先に行ってください!」

 

レオは素体ホラーを斬り裂きながら統夜、鋼牙、零の3人に先に進むよう進言した。

 

「!レオさん!?」

 

「そうだな。ここは俺とレオが引き受ける!3人は先に行ってくれ!」

 

「え?でも……」

 

『統夜!迷ってる暇はないぜ!このままじゃグォルブが復活してしまうからな!』

 

『あぁ!どうやらそのようだな!』

 

『ゼロ!迷ってる暇はないわよ!』

 

イルバ、ザルバ、シルヴァはレオや大輝の提案を受け入れるべきと考えていた。

 

「……わかった。零、統夜、行くぞ」

 

「おう、わかったぜ!」

 

「レオさん、大輝さん!無理はしないで下さい!」

 

「ふっ……。まだまだ未熟なお前に心配される筋合いはない!」

 

大輝は優しく笑みを浮かべながら素体ホラーを斬り裂いた。

 

「僕たちなら大丈夫です!そちらこそ無理はしないで下さいね!」

 

「はい!」

 

鋼牙、零、統夜の3人は大量の素体ホラーを突っ切ると、そのままディオスのもとへ向かっていった。

 

「さて、レオ……。ここは1つ気合を入れないとな」

 

「そうですね」

 

大輝とレオは笑みを浮かべながら素体ホラーに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

ディオスが潜伏しているのは今は使われていない3階建の広めな廃ビルだった。

 

そのビルの3階の1番広い部屋にディオスは潜伏していた。

 

「もうすぐだ……。もうすぐグォルブは復活する!」

 

ディオスはすでにグォルブ復活の儀式を済ませており、グォルブの牙は描かれている魔法陣の中央に突き刺さっていた。

 

グォルブの牙は封印が解かれてから十分なほど力を蓄え、いつ復活してもおかしくない状況だった。

 

その時だった……。

 

「ディオス!!」

 

統夜、鋼牙、零の3人がディオスの前に現れた。

 

「来たか……。だが遅かったな。まもなくグォルブは復活する!お前たちに止めることは出来ない!」

 

「そんな事は……させるか!」

 

統夜は魔戒剣を構え、ディオスを睨みつけた。

 

「フン……暗黒の力を拒絶した貴様らにこの私を止める事は出来るかな?」

 

「あぁ、出来るさ。お前を斬ってグォルブ復活を阻止してやるよ!」

 

「これ以上、貴様の好き勝手にはさせない!」

 

零と鋼牙は魔戒剣を構え、ディオスを睨みつけた。

 

「いいだろう。ここで貴様らを始末すればグォルブ復活を妨げる奴はいなくなるからな……」

 

ディオスは魔戒剣を抜いて、それを構えた。

 

統夜、鋼牙、零の3人は一斉にディオスに向かっていった。

 

統夜と零が両サイドから攻撃を仕掛けると、ディオスは統夜の一撃を魔戒剣で、零の一撃を盾で防いだ。

 

そして、鋼牙がその隙を突いて魔戒剣を一閃した。

 

「……っ!」

 

ディオスは統夜と零を吹き飛ばすと、どうにか鋼牙の一撃を魔戒剣で防ぐことが出来た。

 

「……なかなかやるじゃないか。先程の攻撃は少しだけ焦ってしまったぞ」

 

こう言ってはいるものの、まだまだディオスは余裕そうにしていた。

 

「ふっ……。まだまだだ!」

 

鋼牙は蹴りを放つと、ディオスを吹き飛ばした。

 

「くっ……!」

 

「今だ!」

 

「もらった!!」

 

統夜と零が同時に魔戒剣を振るった。

 

「ふっ……甘いわ!!」

 

ディオスは無駄のない動きで統夜と零の攻撃をかわした。

 

「ちっ……!ダメか……」

 

「へぇ、なかなかやるじゃないか!」

 

統夜は舌打ちをし、零はディオスの実力に素直に感心していた。

 

『ゼロ!感心してる場合じゃないわよ!』

 

すかさず相棒のシルヴァがツッコミを入れていた。

 

「わかってるって」

 

零はシルヴァのツッコミに苦笑いをすると、2本の魔戒剣をグルグルと回転させながら構えた。

 

「こいつ……やっぱり強いな……!」

 

今の統夜には怒りの感情はなく、冷静にディオスの実力を分析していた。

 

『そうだ、統夜。冷静になればお前にも奴を倒すチャンスがあるぜ』

 

「あぁ、そうだな」

 

統夜は素直にイルバのアドバイスを受け入れていた。

 

「はぁっ!!」

 

統夜は再びディオスに向かっていき、零も統夜の援護を行っていた。

 

『鋼牙!あの男、思った以上にやるみたいだぜ!』

 

「そうらしい。だが、あいつの動きはだいぶ見切ってきた!」

 

鋼牙はこの短い時間でディオスの動きを見切りつつあった。

 

それを確かめるかのように鋼牙も攻撃に加わった。

 

「くっ……。さすがは最強の魔戒騎士か……。手強いな……」

 

ディオスは焦っていた。鋼牙と零の実力が自分の予想を遥かに上回っているからである。

 

それも無理はない。

 

鋼牙と零は暗黒騎士キバであるバラゴとの交戦経験があり、その後も様々な修羅場をくぐり抜けてきたのである。

 

そんな鋼牙と零を簡単に倒せる訳はないのである。

 

(それに、あの小僧……)

 

ディオスは統夜の動きが初めて戦った時より良くなっていると感じていた。

 

(最初に戦ったより強くなっている……。何故だ?奴は暗黒騎士ではないというのに)

 

統夜の実力は鋼牙と零には及ばないものの、引けを取らないものであった。

 

統夜の成長にディオスは焦りを感じていた。

 

「はぁっ!」

 

「てぇい!!」

 

「このぉ!!」

 

統夜、零、鋼牙は一斉にディオス目掛けて魔戒剣を振るった。

 

「このぉ……調子に乗るな!!」

 

ディオスは魔戒剣を盾に共鳴させて衝撃波を放つと、統夜たちを吹き飛ばした。

 

「うわっ!」

 

「「くっ……!」」

 

衝撃波を受けて吹き飛ばされた3人はすぐさま体勢を整えていた。

 

「思ったよりやるようだな。だが、これ以上貴様らの好き勝手にはさせん!」

 

ディオスは魔戒剣を盾に共鳴させると、魔戒剣を前方に突きつけた。

 

すると、前方に円の空間が浮かび上がると、そこから放たれた光に包まれた。

 

光に包まれたディオスは漆黒の鎧を身に纏った。

 

こうしてディオスは暗黒騎士ゼクスの鎧を身に纏ったのである。

 

「向こうも本気になったようだ。……零、統夜。俺たちも行くぞ」

 

「おうよ!」

 

「はい!いつでもいけます!」

 

鋼牙、零、統夜の3人はそれぞれの魔戒剣を構えた。

 

「貴様の陰我……俺たちが断ち切る!」

 

鋼牙がディオスに向かってこう言い放つと、鋼牙、零、統夜の3人は魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれる光に3人は包まれた。

 

そして……。

 

統夜は白銀の鎧を身に纏い、奏狼の鎧を召還した。

 

続いて零も統夜とは違うが白銀の鎧を身に纏い、絶狼の鎧を召還した。

 

そして鋼牙は金色の鎧を身に纏い、牙狼の鎧を召還した。

 

「ほぉ、それが牙狼の鎧か……。実物を見るのは初めてだな」

 

ディオスは初めて牙狼の鎧を見て笑みを浮かべるが、その黄金の輝きが鬱陶しいと感じていた。

 

「ディオス!今度こそお前を倒す!」

 

統夜がこう言い放つと3人はゼクスの鎧を見に纏ったディオスに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

その頃、レオと大輝は未だに大量の素体ホラーと戦っていたのだが、なかなか数が減っていなかった。

 

「くっ……!きりがない!!」

 

「どうした、レオ。もう音をあげるのか?」

 

大輝は素体ホラーを斬り裂きながらこうレオをからかっていた。

 

「何の!まだまだです!」

 

レオも負けじと素体ホラーを斬り裂いていた。

 

(とは言うものの、このままではまずいな……。ある程度数が減れば鎧を召還して一気に蹴ちらすのだが……)

 

大輝は素体ホラーの数が思ったより減らないことに焦りを感じていた。

 

その時だった。

 

 

突然誰かが乱入してきたと思ったら素体ホラーを斬り裂いた。

 

「……!あなた方は!!」

 

レオは突如乱入してきた2人に見覚えがあった。

 

「ほぉ……思ったより自体は深刻なようだな」

 

「あぁ、そのようだ」

 

1人は40代中頃くらいの男で、そのオーラは歴戦の勇士が放っているオーラであった。

 

もう1人は30代前半から中頃くらいの男性で、彼もまた歴戦の勇士のような雰囲気を出していた。

 

40代くらいの男は四十万ワタル。雷鳴騎士破狼(バロン)の称号を持つ魔戒騎士で、かつては修練場で偶然統夜の指導教官になっていた男である。

 

もう1人は毒島(ぶすじま)エイジ。邪骨騎士義流(ギル)の称号を持つ魔戒騎士である。

 

2人は元老院所属の魔戒騎士であり、今回の事態を重く見た元老院の神官グレスが2人を桜ヶ丘に派遣したのである。

 

「……あなたは、ワタルさんとエイジさん!どうしてここに?」

 

同じ元老院所属の魔戒騎士であるレオは当然2人のことは知っていたので驚いていた。

 

「元老院からの指令だ。ホラーグォルブ復活を阻止する手伝いをするようにとな」

 

「元老院はそれだけ今回の件を重く見ているという訳だ」

 

「そうだったんですか……。でも、ありがたいです!」

 

レオは素体ホラーを切り裂きながら笑みを浮かべていた。

 

(これだけ実力のある魔戒騎士が揃うとはな……。これなら、どうにかなりそうだ!)

 

頼もしい味方が援軍に来たのを受けて大輝の戦意は一気に上昇していた。

 

「よし、さっさとこいつらを掃除するぞ!」

 

「おう!」

 

「はい!」

 

「承知!」

 

ワタルの号令にエイジ、レオ、大輝の3人は力強く返事をした。

 

そして……。

 

ワタルは両腕を交差させることで鎧の召還に必要な円を呼び出した。

 

円は上空に移動するとそこから光が放たれた。

 

光に包まれたワタルは蒼の鎧を身に纏った。

 

ワタルが身に纏った鎧は雷鳴騎士破狼。

 

雷鳴のような雄々しさを持ち、蒼い輝きを放つ騎士である。

 

そしてエイジは鎧の召還に必要な円を呼び出すと、円が上空に移動し、魔戒剣を突き上げた。

 

円の部分から光が放たれ、その光に包まれたエイジは銅の鎧を身に纏った。

 

エイジが身に纏った鎧は邪骨騎士義流。

 

銅の渋き鎧が歴戦の勇士であることを物語っている。

 

続いて大輝とレオは魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

放たれた光に包まれて、大輝は鋼の鎧を、レオは狼怒の鎧を身に纏った。

 

鎧を召還した4人はそれぞれの武器を構え、多くの素体ホラーを睨みつけていた。

 

そして……。

 

4人は一斉に攻撃をしかけると、先ほどよりも早いスピードで素体ホラーを次々と蹴散らしていった。

 

4人が鎧を召還してから1分も経たないうちに大量にいた素体ホラーは全滅したのである。

 

素体ホラーの全滅を確認したところで、4人は鎧を解除した。

 

素体ホラーが全滅したところで4人はディオスと戦っている統夜の応援に向かおうとするのだが……。

 

__ズドォォォォォォォン!!

 

統夜たちが戦っている場所から轟音が鳴り響いていた。

 

「な、何だ!?」

 

「ま、まさか!グォルブが!?」

 

「何てことだ……!」

 

「統夜君……!鋼牙さん……!零さん……!」

 

レオたちは統夜たちが突入したビルをジッと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

ワタルとエイジが応援に駆けつけた頃、統夜、鋼牙、零の3人はそれぞれの鎧を召還してディオスに戦いを挑んでいた。

 

暗黒騎士であるディオス相手に苦戦すると思われていたが、3人は善戦していた。

 

1番経験の浅い統夜も心滅したことで魔戒騎士としての未熟さを思い知ったのか大きく成長し、ディオスに立ち向かっている。

 

「くっ……!思ったよりやるな、こいつら……!」

 

ディオスは鎧装着後も統夜たちの善戦ぶりに焦りを感じていた。

 

特に統夜の成長ぶりには畏怖の感情さえ感じていた。

 

鎧を纏った状態でも最初に戦った時は余裕で叩き潰せたが、今の統夜はまるで別人のような成長ぶりであった。

 

「月影統夜……!貴様、いつの間に力をつけたのだ!?」

 

「俺は……何も変わっちゃいない!」

 

統夜は皇輝剣を振るうとディオスは盾で防ぐが、そのままディオスを吹き飛ばした。

 

「ぐぅ……!何も変わっていない……だと!」

 

ディオスは体勢を整えながら統夜を睨みつけた。

 

「俺には守りたい人たちがいる!その想いが俺を強くするんだ!守りし者として!」

 

「統夜……」

 

「へへっ、言うじゃねぇか、統夜!」

 

統夜の守りし者としての強い想いを聞いた鋼牙と零は笑みを浮かべていた。

 

「守りし者だと……くだらん!闇の力こそ崇高なる力なのだぁ!!」

 

「その力は偽物の力だ!俺は心滅してそれを思い知ったんだ!」

 

統夜は連続で皇輝剣を振るい、ディオスはそれを受け続けていた。

 

「小僧が……調子に乗るな!」

 

ディオスは統夜めがけて衝撃波を放つと、統夜は皇輝剣で受け止めていた。

 

「うっ……!ぐぅぅ……!」

 

その衝撃波の威力は相当なもので、統夜は受け止めるだけで精一杯であったが、着実にダメージは受けていた。

 

「こ……鋼牙さん!零さん!今です!」

 

ディオスの攻撃を受け止め切ったところでこう鋼牙と零に告げた。

 

その時のダメージがかなりのもので、統夜の鎧は解除されてしまい、統夜は膝をついた。

 

「統夜!」

 

「承知!」

 

統夜がくれたチャンスを無駄にしないため、鋼牙と零はディオスに向かっていき、牙狼剣と銀狼剣を振るった。

 

その時だった。

 

__ズドォォォォォォォン!!

 

グォルブの牙が突き刺さっている魔方陣から衝撃波が放たれた。

 

「ぐぅ……!」

 

「ぐぁっ!」

 

その衝撃波に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた鋼牙と零の鎧が解除されてしまった。

 

「鋼牙さん!零さん!」

 

「統夜、大丈夫だ!」

 

「あぁ!これくらい何ともないぜ!」

 

鋼牙と零の2人は鎧を解除されてしまってもダメージはあまり残っていなかった。

 

「今の衝撃は……何だ!?」

 

「フハハハハハ!!いよいよグォルブが復活する!黙ってそこで見ているがいい!メシアの腕と呼ばれし魔獣、グォルブの復活を!」

 

「そんなこと……させるかよ!」

 

統夜は魔戒剣を構えてディオスを睨みつけた。

 

「もう遅い!すでにグォルブの復活は始まっているのだ!」

 

魔方陣から邪悪な輝きが放たれ、徐々に力が解き放たれていった。

 

「私はグォルブと1つになり、この世界を私の思い通りの世界にするのだ!」

 

ディオスはグォルブと一体化し、その意識を乗っ取ることで最強の存在となり、自分の理想の世界を作り上げようとしていた。

 

ディオスは徐々に力を解き放つグォルブの牙をその手に掴んだ。

 

「さぁ、グォルブよ!我と1つになるのだ!そして、最強のホラーとして君臨するのだ!」

 

ディオスは高々と叫び、グォルブと1つになろうとしていた。

 

しかし……。

 

『ククク……。愚かな男よ……!貴様如きがこの私を制御出来ると本当に思っているのか!?』

 

「なんだと……!?そんな馬鹿な!!」

 

『愚かな暗黒騎士よ!望み通り私と1つになるがいい!!』

 

グォルブはディオスという媒体を手に入れたことで完全に覚醒しようとしていた。

 

「!まずい!一度外に出るぞ!」

 

鋼牙の号令を聞いた統夜と零は危険と判断したため、今いる場所から撤退した。

 

統夜たちが脱出したその時だった。

 

__ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

 

轟音が響き渡ると、ディオスが潜伏していたビルが崩れていった。

 

素体ホラーを全滅させたレオたちもその光景を唖然としながら見ていた。

 

ビルの崩壊が止まると、そのビルの跡地から怪しげな輝きを放つ光の柱が現れた。

 

この状態こそ、人界と真魔界が繋がってしまった瞬間であった。

 

こうしてメシアの腕と呼ばれた強大な魔獣、グォルブは完全な形で復活してしまったのである。

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『ついに復活してしまった強大な魔獣。こいつは今まで以上に気を引き締めなければいけないようだぜ!次回、「翔翼」。銀の翼が空を駆ける!』

 

 




統夜たちの応援として登場したのはあのワタルとエイジでした!

ワタルはともかくとしてエイジの登場はかなり予想外だったと思います。

この頃のエイジは元老院付きの魔戒騎士として活躍していて、アカリさんもまだ亡くなる前という設定です。

それにしても騎士の鎧同時召還は燃えるシーンですよね。

僕が1番鳥肌がたったのが、「makaisenki」の牙狼、絶狼、打無の鎧同時召還のシーンですね!あそこはマジで格好いいです!

この話でも奏狼、牙狼、絶狼の鎧同時召還のシーンを入れていますが、そこはけっこう気合を入れて書いたつもりです。

あと、活動報告に書いた番外編ですが、この章が完結したら投稿する予定なのでご了承下さい。

さて、次回はいよいよ復活したグォルブとの対決になります。

統夜、鋼牙、零の3人はグォルブを倒すことが出来るのか?

そして、予告に書いてある銀の翼とは?

それでは、次回をお楽しみに!



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