牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第17話です。

今回はロック要素のある回ということでけいおん要素も入っています。

この回は闇を照らす者の6話を参考に作りましたが、所々は変えています。

それでは第17話をどうぞ!




第17話 「響音」

統夜がホラー、ローウィンを討滅した日の夜、紅の番犬所所属の魔戒騎士、桐島大輝はとあるホラーと戦っていた。

 

「……はぁっ!」

 

大輝は魔戒剣を一閃するが、その攻撃はホラーにかわされてしまった。

 

続けて大輝は蹴りを放つと、ホラーを吹き飛ばした。

 

「……ふん、他愛もない。一気に決着をつけるぞ」

 

大輝が魔戒剣を振り下ろし、ホラーにとどめを刺そうとしたその時だった。

 

「……ん?音楽?どこから……」

 

どこからか音楽が聞こえてきたので、大輝は思わず手を止めてしまった。

 

その時だった。

 

「ヒャッハー!!ノって来たぜぇ!!」

 

ホラーのテンションが突然上がったと思ったら蹴りを放って大輝を吹き飛ばした。

 

「くっ!こいつ、急に動きが?」

 

大輝はホラーの動きが先ほどとはうって変わったことに驚いていた。

 

続けて大輝は反撃で魔戒剣を一閃するが、ホラーは鮮やかな動きで攻撃をかわしていた。

 

「ヒャッハー!たまんねぇぜ!」

 

ホラーはピョンピョン跳ねながら蹴りを放ち、大輝はそれを受けるしかなかった。

 

「くっ…!調子に乗るな!!」

 

大輝はどうにかホラーを斬ろうとするが、ホラーは鮮やかな動きで大輝を翻弄していた。

 

魔戒剣による攻撃もかわされたり受け止められたりとホラーは大輝を圧倒していた。

 

しかし……。

 

「……ん?あれ?終わり?」

 

音楽が終わってしまい、機敏だったホラーの動きが止まってしまった。

 

「動きが止まった?今だ!」

 

大輝は魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれ、大輝は銅の鎧に包まれた。

 

大輝は魔戒騎士としてはとてもベテランな騎士ではあるが、称号を持つ魔戒騎士ではなかった。

 

大輝が身に纏う鎧は「鋼(ハガネ)」と呼ばれる称号を持たない魔戒騎士が身につける鎧である。

 

称号を持たないと言っても大輝は魔戒騎士としては統夜以上の経験があり、その戦闘力も統夜を上回っている。

 

大輝は変化した牙狼剣や皇輝剣に似た魔戒剣を振るうが、ホラーは大きくジャンプし、攻撃をかわした。

 

「……今日はここまでだ!」

 

ホラーはそのまま逃走し、どこかへと姿を消してしまった。

 

「くそっ!逃したか」

 

大輝は鎧を解除し、元に戻った魔戒剣を鞘に納めた。

 

「くっ……!思ったよりダメージが……あるのか?」

 

大輝はホラーの攻撃を受けた時に負傷してしまったようだった。

 

ホラーに逃げられてしまったため、大輝はその場を離れることにした。

 

 

 

 

ちょうどその頃、大輝がホラーと戦っている場所とは別の場所で1人の青年が路上ライブを行っていた。

 

青年はプロを目指すSHU(シュウ)と言われるミュージシャンで、時折このように路上ライブを行っている。

 

「♪bright hope〜、今〜、闇の向こう〜」

 

青年が歌っている曲はbright hopeと呼ばれる曲で、SHUが作曲した曲である。

 

SHUの人気はそれなりにあるようで、この日の路上ライブにもけっこうな数の客がついていた。

 

演奏が終わると観客は大きな拍手を送った。

 

「みんな、ありがとう!bright hopeでした!」

 

「SHU!!」

 

「最高!!」

 

「明日のライブ見に行くからね!!」

 

観客たちは口々に感想を述べて歓声を上げていた。

 

「おーい、SHU!」

 

ライブの様子を見ていたとある会社のプロデューサーがSHUに駆け寄った。

 

「今日の演奏も良かったぞ!この調子で明日のライブも頑張ってくれよ!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

SHUはプロデューサーにほめられまんざらでもないようだった。

 

そしてSHUは翌日に桜ヶ丘某所にあるライブハウスでライブを予定していた。

 

さらに、今演奏していたbright hopeもレコーディングを予定しており、SHUはミュージシャンとしてデビュー目前だった。

 

この日は路上ライブは終了し、SHUも撤収した。

 

SHUの手に握られていたピックは透明で歪な形をしており、怪しい輝きを放っていた。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

統夜がレオと協力してホラー、ローウィンを討伐した翌日の放課後、統夜は音楽準備室に入るが、まだ誰も来ていなかった。

 

「あれ?まだ、誰も来てないな……。それだったら」

 

統夜は魔法衣を長椅子に置くと、ギターケースからギターを取り出して構えた。

 

そして統夜は何を演奏するか考えた後、演奏を始めた。

 

統夜が今演奏している今日はSHUが歌っているbright hopeだった。

 

統夜は携帯の動画サイトで偶然SHUの演奏を聞いてSHUのファンになっていた。

 

SHUの作った曲が格好いい曲が多かったため、それで統夜は気に入ったのであった。

 

そのため、魔戒騎士の使命の合間にSHUの曲を動画で見て楽しんでいた。

 

「♪bright hope〜今〜闇の向こう〜」

 

統夜は歌も歌い始め、ご機嫌な感じでギターを弾いていた。

 

最後まで統夜は楽しげにギターを弾き続けていた。

 

「ふぅ……」

 

統夜が一息つくと、パチパチパチと拍手が聞こえてきた。

 

「おう、梓か」

 

統夜が音の方を見ると、拍手を送っていたのはいつの間にか音楽準備室に来ていた梓だった。

 

「さすがです!統夜先輩!今弾いたのって確かSHUの曲でしたよね?」

 

「あぁ。新曲のbright hopeだよ。動画で見てハマってな」

 

「SHUいいですよね!そういえば今日の夜ライブがあるみたいですよ?」

 

「そうなのか!?いやぁ、指令がなければ行きたいんだけどなぁ……」

 

『統夜、ダメに決まっているだろう。いつ指令が来るかわからない状況なんだからな』

 

「ですよねぇ」

 

統夜はイルバに改めてダメと言われるとがっくりと項垂れていた。

 

「と、統夜先輩。私は見に行きますから……」

 

「そうなのか!?じゃあ明日でも感想を聞かせてくれよ!」

 

「は、はい……」

 

統夜の食い気味なリアクションに梓はタジタジだった。

 

2人がSHUについて話をしていると唯、律、澪、紬の4人も音楽準備室に入ってきた。

 

「おっ、統夜。練習か?」

 

「まぁな」

 

「統夜先輩、今SHUの曲を弾いてたんです」

 

「SHUかぁ、路上ライブ見たことあるけど、なかなかいいギタリストだよな」

 

「うんうん、あたしも澪と一緒だったけど、悪くなかったぜ」

 

律と澪もSHUの評価は上々であった。

 

「それで、今日の夜にSHUのライブがあるみたいですよ?」

 

「マジで!?あたしも行きたい!」

 

「私も!ライブを見るのは軽音部としてもいい勉強になるしな」

 

「私はよくわからないけど、みんなが行くなら一緒に行きたいわ♪」

 

「うんうん、私も♪」

 

どうやら律や澪だけではなく、紬と唯もライブに行くようだった。

 

「はぁ……。みんな、いいよなぁ……」

 

みんながライブに行くとわかり、統夜は少しだけヘコんでいた。

 

「と、統夜は魔戒騎士の使命があるもんな……」

 

「うん!し、仕方ないよな!」

 

「まぁ、それはわかってるけどさぁ……」

 

「きょ、今日はお茶の前に練習しましょうか?」

 

「そ、そうだね!」

 

唯たちは統夜の気を紛らわせるために先に練習を始めることにした。

 

1時間ほど練習を行い、その後はいつものようにティータイムを行っていた。

 

そしてティータイムが始まって間もなくだった。

 

『……統夜。番犬所からの呼び出しだぜ』

 

「そうか。また何か指令かな?」

 

統夜はイルバの言葉を聞くと残った紅茶を一気飲みすると、席を立った。

 

「統夜先輩、今日も指令なんですね……」

 

「この前もホラーと戦ってたんだろ?バイクレースに潜り込んでさ」

 

「え?もしかして見てたのか?」

 

「あぁ。私がレースとか見るの好きでな。たまたま昨日のレースをワンセグで見てたら統夜が映ってたって訳だ」

 

「顔を隠してもあのコートを着てたらバレバレだったよ」

 

「そ、そうか?ヘルメット以外にも仮面を被ったからバレないかなって思ってたが」

 

統夜は自分の変装がバレバレだと知り、苦笑いをしていた。

 

「それで、やっぱりホラーは風間隼人だったのか?」

 

「あぁ、そうだけど、もしかしてあいつをコースアウトさせた時点でわかったか?」

 

「あぁ。すぐにわかったぞ」

 

「まぁ、あのホラーはあの後無事に討伐したけどな」

 

「それは残念だけど、ホラーだったら仕方ないよなぁ」

 

澪は少しだけ残念そうにしていたが、ホラーであるからと割り切っていた。

 

このような話をしている間に統夜は帰り支度を済ませていた。

 

「それじゃあ、行ってくるな」

 

「はい。統夜先輩、頑張ってくださいね」

 

「あぁ」

 

統夜は音楽準備室を後にすると、そのまま番犬所へ直行した。

 

 

 

 

 

統夜は番犬所に到着すると、そこには統夜の先輩騎士である大輝が待っていた。

 

「おう、来たようだな、統夜」

 

「だ、大輝さん、どうしたんですか?その怪我は」

 

統夜は大輝が怪我をしていたことが気になり、すぐに事情を聞いていた。

 

「あぁ……。実はホラーにな……」

 

「え?大輝さんほどの人がやられるなんて……。それほど手強いホラーだったんですか?」

 

「あぁ。最初は大したことはないと思ったんだがな。戦いの途中で音楽が聞こえてきたんだ」

 

「音楽?」

 

「あぁ、ギターのような音も聞こえたな。その音楽を聞いた途端にホラーの動きが急に変わってな」

 

「ということはそのホラーは音楽を力の源に強くなるってことですかね?」

 

『いや、他にも秘密がありそうだけどな』

 

イルバは今回のホラーは他にも秘密が隠されていると読んでいた。

 

「あぁ、そうかもしれないな。俺がこのザマだからな。このホラーの討伐をお前に頼みたい」

 

「大輝さんの頼みとあれば任せてください!」

 

統夜は二つ返事で大輝からホラー討伐の仕事を引き継いだ。

 

「統夜、大輝。話はまとまりましたか?」

 

「はい、イレス様。このように今回のホラーの討伐を統夜にお願いしたところです」

 

「そうですか。……統夜。相手はあの大輝を打ち負かすほどの相手です。油断してはいけませんよ」

 

「はい、わかりました。全力でホラーを討伐します」

 

「ここ最近ホラーの数が増えています。無理だけはしないでくださいね?」

 

「……イレス様、ありがとうございます」

 

統夜はイレスと大輝に深々と頭を下げると、番犬所を後にし、ホラー捜索のために行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

イルバのナビゲーションを頼りに統夜が訪れたのは桜ヶ丘某所にあるライブハウスだった。

 

「……イルバ、もしかしてここにホラーが?」

 

『あぁ。この中からホラーの気配を感じるぜ』

 

「……って、ここは今日SHUさんがライブを行う会場じゃねぇか!」

 

統夜が偶然訪れたライブハウスは奇しくもSHUのライブが行われるライブハウスだった。

 

(……まさか、SHUさんが……?調べる価値はありそうだな……)

 

統夜は裏口に移動すると、裏口からライブハウスの中に入った。

 

誰にも見つからないようライブハウスの中に入ると、SHUが談話室でのんびりしていた。

 

SHUは煙草をくわえ、それに火をつけようとした。

 

統夜はそのタイミングでSHUの瞳を魔導ライターで照らした。

 

しかし……。

 

(……!何の反応もない!?ということはハズレか……)

 

統夜はSHUがホラーでないかと疑っていたが、その予想は外れてしまった。

 

「あぁ、すいません」

 

SHUは統夜が煙草に火をつけてくれると勘違いをして魔導火に顔を近づけてきたので統夜は慌てて魔導ライターの火を消した。

 

「?」

 

「す、すいません……。何でもないんです!」

 

統夜はSHUに謝罪しながら魔導ライターを魔法衣の懐にしまった。

 

「えっと……君は?」

 

「あっ、すいません……。実は僕、SHUさんのファンでして……」

 

統夜は事実を交えながらどうにか話をごまかそうとしていた。

 

「そうなんだ、ありがとう」

 

「勝手に入ってごめんなさい。どうしてもSHUさんの顔を一目見たくて……。あっ、そうだ。こんなものしかないんですけど、サイン、もらえませんか?」

 

統夜はポケットからピックを取り出すと、それにサインをお願いした。

 

「サイン?あぁ、はい」

 

SHUはサインペンを取り出すと、そこにサインを書いた。

 

「ありがとうございます♪これで軽音部のみんなに自慢できます♪」

 

「へぇ、君は軽音部なんだ」

 

「はい!今日は僕の友達もライブを見に行くって言ってました!」

 

「へぇ、バンドメンバーと仲が良いんだね。それはとても……」

 

「SHUさん!スタンバイお願いします!」

 

ライブのスタッフがSHUを呼びに来ていた。

 

「あっ、すいません。休憩の邪魔しちゃって」

 

「大丈夫だよ、それじゃあ俺はこれで」

 

「ありがとうございます。ライブ、頑張って下さい!」

 

統夜はSHUを見送ると、SHUは休憩室を出て行った。

 

統夜も休憩室を出ようとしたその時、入り口に見覚えのある顔が見えた。

 

「……あれ?レオさん、どうしたんですか?」

 

「あぁ。僕も統夜君のサポートをするように頼まれましてね」

 

「おぉ!それは心強いです」

 

「それで、ホラーは見つかりましたか?」

 

「いえ、まだです。ライブが始まったらホラーも出てくるとは思うんですけど……」

 

「そうですか。それじゃあ一緒にホラーを探しましょう」

 

「はい!」

 

統夜とレオは2人で休憩室を後にすると、何事もなかったかのように裏口から出て行き、表で受付をしてライブ会場に入った。

 

その時だった。

 

「……あれ?統夜とレオ先生じゃん!」

 

律が統夜とレオを見つけて声をかけてきた。

 

「おう、みんなで来てたんだな」

 

「はい。統夜先輩とレオ先生はもしかして……」

 

「あぁ。ホラーを捜索中だ。この会場のどこかに紛れてる可能性が高くてな」

 

「えぇ!?そうなの!?」

 

「えぇ。でも、安心して下さい。僕と統夜君がいますからホラーの好き勝手にはさせませんよ」

 

「レオ先生がそう言うと心強いです♪」

 

「とりあえず、一緒に行きましょう」

 

偶然唯たちと合流した統夜とレオは一緒に行動することになり、2人はライブ開始前もホラーがいないか周囲に目を光らせていた。

 

そして、ライブ開始時刻となり、ライブは始まった。

 

ライブが始まってから2曲演奏したのだが、特に不審な動きはなかった。

 

(これで2曲目……。だけど、ホラーの動きはない……。普通の演奏じゃホラーは反応しないのか?)

 

統夜は聞きたかったSHUのライブであったが、ホラーを探すために演奏に集中出来なかった。

 

『みんなありがとう!それじゃあ新曲行きます!……bright hope!』

 

統夜も好きな曲であるbright hopeが始まろうとしたのだが、SHUは今のピックから透明で歪な形をしたピックに変更した。

 

統夜はその瞬間を見逃さなかった。

 

(!あれってまさか……)

 

《統夜。あれはホラーの鱗だな》

 

(なんでホラーでもないSHUさんがそんなものを!)

 

《さぁな。もしかしてホラーと戦った時に鱗だけが剥がれて、あの男が偶然それを拾ったんじゃないのか?》

 

統夜とイルバがテレパシーで話をしていると演奏は始まっていた。

 

「?統夜君、どうしました?」

 

「レオさん、この曲でホラーは動き始めます。気をつけてください」

 

「え?それはどうして……」

 

統夜が確信を持って言った言葉にレオは何故と問おうとしたが、統夜たちがいる場所から離れたところが急に騒々しくなった。

 

「ヒャッハー!!これだよこれ!!たまんねぇぜ!!」

 

小太り気味な中年男性が急に暴れ始めていた。

 

「!レオさん、ホラーはあそこです!」

 

統夜がホラーの存在に気付き、レオもホラーを補足した。

 

「……人が多い……。これじゃあホラーに近づけませんよ!」

 

この日はライブハウスが満員になるくらい人が入っており、移動するのも容易ではなかった。

 

周囲の客も会場の異変に気付き始めていたが、見て見ぬ振りをしていた。

 

そうこうしているうちに曲の1番が終わろうとしていた。

 

「よっしゃあ!このまま全員喰ってやろうか!!」

 

ホラーが人々を捕食しようとしていた。

 

ホラーが1人でも捕食すれば、ライブが中止になるだけではなく会場は大混乱に陥るだろう。

 

そうなると人混みに紛れてホラーは逃走してしまう。

 

統夜とレオはこう危惧していた。

 

「くっ……このままじゃあ……」

 

「仕方ない……。レオさん、俺に任せてください!」

 

統夜はそう言うと今いる場所からステージまでジャンプをし、ステージに乱入した。

 

「は!?」

 

「え?」

 

突然の出来事に観客だけではなく、ステージの人たちも困惑していた。

 

統夜はそんなことはお構いなしにSHUのギターを無理やり奪い取った。

 

「ちょ!?一体何を!?」

 

「すいません、ちょっと借ります!」

 

統夜はポケットからSHUにサインしてもらったピックを取り出すと、ギターをジャラーン!と鳴らしていた。

 

『♪bright hope〜今〜闇の向こう〜探していた揺るぎなき証を〜』

 

統夜がbright hopeを歌い始めると、始めは困惑していた観客だったが、乱入者の演奏に歓声をあげていた。

 

「おぉ!」

 

「上手いな……」

 

「さすがはやーくん!」

 

「はい、統夜先輩のギターはかなりのものですからね!」

 

「素晴らしいわぁ♪」

 

唯たちは突然の統夜の演奏に満足していた。

 

その後統夜は最後まで演奏を続けていた。

 

他のギターの人もベースの人もドラムの人も最初は戸惑っていたが、統夜に合わせて演奏を再開した。

 

「う、上手い……」

 

プロ入りの道が見えているSHUも評価するほど、統夜のギターテクニックは高かった。

 

「ちっ……興ざめだよ……」

 

ホラーは演奏者が統夜に変わったことががっかりだったのか、ライブハウスを後にした。

 

「あっ、待て!」

 

レオが慌ててホラーの追跡を始めた。

 

『急にすいません!だけどこの後もライブを楽しんで行ってください!』

 

統夜はこう言うとSHUにギターを返却し、会場を飛び出していった。

 

「あっ!やーくん!」

 

「みんな、追いかけよう!」

 

唯たちも統夜に続いて会場を出て行き、入り口辺りで統夜を発見して合流した。

 

「統夜、どうしてライブに乱入したんだよ?」

 

統夜の唐突な行動を澪が問い詰めていた。

 

「あのままだとホラーが誰かを喰ってたぞ。そんなことになりゃライブはあんな混乱じゃ済まなくなる。俺はライブの混乱を最小限にするためにあえて乱入したんだよ。こんなことはしたくなかったけどな」

 

統夜は自分がファンであるSHUのライブを汚すような真似はしたくなかったが、魔戒騎士として人を守る為に仕方なくこのような行動に出ていた。

 

「まぁ、そういうことなら仕方ないですよね」

 

「そうよねぇ。変に騒ぎ立てるよりこっちの方がいいと思うわ」

 

「まぁ、俺のせいでライブを滅茶苦茶にしちゃったからもちろん謝りには行くけどな」

 

「統夜、ホラーはいいのか?」

 

『あぁ、問題ない。今はレオが追跡している。仮に逃げられたとしてもどうにかなるだろうさ』

 

「あぁ、俺もイルバの意見に賛成だ」

 

統夜とイルバはレオがホラーを追跡しているから任せても大丈夫だろうと思っていた。

 

統夜たちはライブが終了するタイミングを見計らってSHUに謝りに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

bright hopeの演奏中に統夜が乱入し、その後はライブどころではなくなってしまった。

 

その後、1曲だけ演奏するものの盛り上がりに欠けてしまい、ライブはここで終了することになってしまった。

 

ライブが終了すると、SHUは休憩室に移動し、突然の出来事にがっくりとうなだれていた。

 

すると、裏口から中に入ってきた統夜たちが休憩室に入ってきた。

 

「あの……SHUさん……。すいませんでした……」

 

「お前……何てことしてくれたんだ!」

 

SHUは怒りに満ちた表情で統夜の胸ぐらをつかむと、思い切り統夜の頬を殴った。

 

「ってぇ……」

 

「と、統夜先輩!!?大丈夫ですか?」

 

「あぁ、平気平気。殴られるのは覚悟の上だし。それに……」

 

統夜はいつの間にかSHUから盗んだ透明のピックらしきものを唯たちとSHUに見せた。

 

「!?か、返せ!」

 

SHUはピックらしきものを取り返そうとするが、統夜はひらりとSHUをかわしていた。

 

「SHUさん、これはどこで手に入れたんですか?」

 

「お前には関係ない!返せ!」

 

「こんなものを持ってたらダメです、SHUさん」

 

「俺の大事なライブをぶち壊しておいて何偉そうなこと言ってんだよ!」

 

「それは謝ります。だけど、これには恐ろしい力が宿っているんです」

 

「恐ろしい力?」

 

SHUは統夜の言葉を素直に信じられないと言いたげな顔だった。

 

「信じられないとは思うんですけど、本当みたいなんです!」

 

梓が話に入り、統夜に助け舟を出していた。

 

「馬鹿な!5年間全く売れなくて、諦めかけてた時にそいつが俺にチャンスをくれたんだ!メジャーデビューがそこまで来てるんだよ!」

 

「俺もSHUさんのデビューを応援したいし、売れない頃からのファンでした。だけど、それことれとは話が別です。こいつはあなたが思ってるほど……」

 

「そんなの関係ない!頼む、そいつはレコーディングに必要なんだよ!頼む!返してくれ!」

 

SHUは再びピックらしきものを取り返そうとするが、再び統夜にかわされた。

 

「統夜、返してやるのはダメなのか?さすがにこのままじゃSHUさんが可哀想だよ」

 

「ダメだ。これでレコーディングなんかされたらあちこちでホラーが活発化しちまうだろうが。それだけは許されない。例え誰かの夢を踏みにじってもな」

 

統夜はホラーの活性化を防ぐ為にあえて冷酷な人間を演じることにした。

 

個人的にはSHUを応援したかったが、ホラーとの戦いに私情を挟むわけにはいかなかった。

 

「頼む……!俺は……音楽に命をかけてるんだ……」

 

「………」

 

必死に訴えかけるSHUの言葉を聞いて統夜は考え込んでいた。

 

「SHUさん。さっきも言ったけど、俺は人気が出る前からあなたのファンです。だからこそあなたの演奏に思うところがあるんです」

 

「思うところ?」

 

「あなたは売れたいと思う一心で音楽を奏でているから俺の心にあなたの音楽は響かなかった。……だけど俺が乱入した時、素人の俺の演奏でもみんなは盛り上がってくれましたよね?それは何故だかわかりますか?」

 

「?それは一体……」

 

統夜はSHUに足りないものを説くが、SHUはそれをわかってはいなかった。

 

「俺は演奏している時は楽しく弾くことを心がけています。音楽を楽しむって気持ちはけっこう敏感に伝わるものです。確かに演奏技術も大切ですが、心から音楽を楽しむ気持ちは自然と演奏をより良くするものです」

 

「音楽を心から……楽しむ……」

 

「……俺みたいな若造が生意気なことを言ってすいません。だけどあなたはこんなものがなくたって最高の音楽を奏でることが出来ると俺は信じています」

 

統夜は唯たちを連れてその場を後にしようとしたその時だった。

 

「……いっその事演奏して貰えばいいじゃないですか」

 

休憩室に突如現れたのはホラーを追っていたはずのレオだった。

 

「れ、レオ先生?」

 

「レオさん、ホラーは?」

 

「残念ながら逃げられました。だけど、はっきりわかったことが一つあるんです」

 

「わかったこと?」

 

「えぇ。統夜君もご存知の通りそれはホラーの鱗です。彼の歌声とその鱗から発せられる波長が共鳴してホラーが活発化しているんです。さらに、ホラーはこの波長の音の近くに寄ってくる傾向があることもわかりました」

 

「……あ!もしかしてSHUさんにそれで演奏してもらってホラーをおびき寄せるって作戦ですかぁ?」

 

「……唯さん、ご名答です」

 

唯がレオの考えていることを当てると、唯はなぜか「ふんす!」とドヤ顔を決めていた。

 

「……なるほど、それはありですね」

 

統夜もレオの提案に賛同していた。

 

「な、なぁ……。話が見えないんだけど……」

 

今までの話を聞いていたものの、SHUは話についていけなかった。

 

「SHUさん、これを返してもいいですけど、条件があります」

 

「ま、まさかもう一度ギターを弾けってことか?」

 

「えぇ。嫌なら無理強いはしません。今から俺がするのは危険な事ですから」

 

「危険なこと?」

 

「詳しいことは言えません。……SHUさん、あなたは音楽に命がけだと言いましたよね?俺にも命がけでこなすべき使命があるんです」

 

「命がけで……」

 

「えぇ。あなたの本気、ぜひ見てみたいって気持ちも俺にはあります」

 

「……」

 

統夜の純粋な気持ちにSHUは何かを考え込んでいた。

 

「……まぁ、無理ですよね。だったらその役目は軽音部のみんなに……」

 

「やらせてくれ」

 

統夜はSHUがこの提案を飲むとは思っていなかったので、驚きを隠せなかった。

 

「……SHUさん、いいんですか?」

 

「あぁ。お前の事情はわからないけど、お前に俺の本気の演奏を聴いてもらいたいって思ったんだ」

 

「SHUさん……」

 

「そんなものに頼るのはこれっきりだ」

 

SHUの覚悟を聞いた統夜はホラーの鱗を投げ渡した。

 

「……あなたの本気、特等席で堪能させてもらいます」

 

統夜はSHUの協力を得てホラーをおびき寄せようとした。

 

しかし……。

 

「やーくん!私たちも協力するよ!」

 

唯がこう統夜に提案すると、唯、梓、澪はそれぞれの楽器を準備していた。

 

「私たちの演奏じゃ足を引っ張るだけかもしれないですけど、私たちも統夜先輩の力になりたいんです!」

 

「……みんな……」

 

「統夜君。僕はホラーをおびき寄せる準備をしながら彼女たちのことを守ります。統夜君は現れたホラーの掃討をお願いします」

 

「わかりました」

 

唯たちとSHUは準備のためレオと共にドラムやキーボードが置いてあるステージに移動し、統夜は外でホラーを迎え撃つことになった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

統夜は外に移動すると、ホラーを待っていた。

 

統夜のいるライブハウスの入り口に大型のアンプを設置し、そこからステージの演奏が聞こえるようレオがセッティングしてくれた。

 

「さて……。あとはホラーが出てくるのを待つだけか」

 

『統夜。ホラーは音楽を聴いて戦闘能力が格段に上がっている。しかもあの大輝を打ち負かしているんだ。油断だけは絶対にするなよ!』

 

「あぁ、わかってる」

 

統夜は魔戒剣を抜き、ホラーの来襲に備えた、

 

そして、ステージの準備が整い、唯たちとSHUは演奏を開始した。

 

 

 

〜使用曲→bright hope (桜高軽音部コラボver)〜

 

 

 

演奏が始まるとすぐ、ホラーは姿を現した。

 

「ヒャッハー!!最高にご機嫌だぜぇ!!」

 

ホラーのテンションは最初からマックスであった。

 

『……統夜、来るぞ!』

 

「承知!」

 

ホラーは高いテンションのまま統夜に体当たりを仕掛けるが、統夜はそれを見切ってかわした。

 

「おらぁ!!」

 

統夜は魔戒剣を一閃するが、それはホラーに軽く受け止められてしまった。

 

「くっ……!こいつ、なんて馬鹿力なんだ……!」

 

ホラーの鱗の効果は最高にてきめんだったのか、戦闘能力だけではなく、ホラーの腕力も上がっていた。

 

ホラーは統夜に頭突きをお見舞いしようとするが、その前に蹴りを放ってホラーを吹き飛ばした。

 

「……よし、一気に行くぞ!」

 

統夜はホラー相手に斬りかかろうとしたその時だった。

 

「ヒャッハー!!祭りの場所はここなのかぁ?」

 

突然ホラーがもう一体現れ、統夜に襲いかかってきた。

 

「げ!?もう一体いるなんて聞いてないぞ!?」

 

『恐らく、近くのゲートから出てきたホラーがこの音に引き寄せられたのだろう』

 

「解説してる場合かよ!?っとと……」

 

統夜はかろうじて2体のホラーの攻撃をかわした。

 

「ヒャッハー!!さっさとそこの魔戒騎士を喰ってそこの中にいる奴らも喰ってやる!」

 

「おう!!餌は山分けだぞ!!」

 

2体のホラーは統夜を喰らってさらにライブハウスの中にいる唯たちとSHUを喰らおうとしていた。

 

音楽を聴いてやる気全開になっている2体のホラーは統夜に一斉に襲いかかってきた。

 

「……くっ!」

 

統夜はどうにか2体を迎え撃とうと考えていたその時だった。

 

突然何者かが現れると、2体のホラーを斬り裂き、蹴りで吹き飛ばした。

 

「……統夜、無事か?」

 

統夜の危機を救ったのは、負傷してホラー討伐の仕事を統夜に託した大輝であった。

 

「だ、大輝さん、どうして?」

 

「後輩のお前に仕事を丸投げするのが心苦しいと思っただけだ」

 

「で、でも、この前の戦いの怪我がまだ……」

 

「お前が仕事を引き継いでくれたおかげで少しは休ませてもらった。これくらいなら問題ない」

 

大輝は先程乱入してきた痩せ型の体型のホラーを斬り裂きながらこう答えていた。

 

「それに……人の心配をする前に自分の心配をしろ!お前の悪い癖だ」

 

「は……はい!」

 

統夜は大輝に叱責を受けながら小太り体型のホラーを迎撃していた。

 

「統夜、こいつは俺が斬る。お前はそっちのホラーに専念しろ!」

 

「わかりました!」

 

統夜は大輝の協力を得てホラーを分断することに成功した。

 

「ヒャッハー!!何人来ようと俺様たちを止めることは出来ないゼェ!」

 

大輝が応援に来てもホラーの動きが変わることはなかった。

 

ホラーはピョンピョンとジャンプをしながら2度3度と統夜に蹴りを放った。

 

「くっ……」

 

統夜はどうにか反撃しようとするが、ホラーの猛攻に反撃の機会がなかなか得られなかった。

 

「うっ……くっ……」

 

ホラーはさらに跳ねながら蹴りを放っていた。

 

(くそ……こんなところで……負けてたまるか!)

 

SHUの本気に応えるためにこんなところで負けるわけにはいかない。統夜は気合でホラーの蹴りを受け止め、逆に蹴りを放ってホラーを吹き飛ばした。

 

「ヒャッハー!!なかなかやるじゃねぇか!だが!!」

 

小太り体型のホラーは人間の姿からホラーの姿へ変わっていった。

 

『統夜!こいつはグール。パワーはあるが単細胞なホラーだ』

 

「なるほど。確かに脳筋っぽいな」

 

統夜はイルバの話を聞いてグールが脳筋なホラーであるとすぐ察しがついた。

 

「この野郎!馬鹿にするんじゃねぇ!」

 

グールは統夜に体当たりを仕掛けるが、統夜はその攻撃をかわし、魔戒剣による一撃でグールを斬り裂き、さらに蹴りを放ってグールを吹き飛ばした。

 

そのタイミングで統夜は魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれて、統夜は奏狼の鎧を身に纏った。

 

それを見て再び突撃してくるグールめがけて皇輝剣を一閃し、グールの体を真っ二つに斬り裂いた。

 

切り裂かれたグールは断末魔をあげながら消滅した。

 

鎧を召還して一撃でグールを斬り裂いた統夜は鎧を解除した。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

グールとの戦いで相当消耗したのか統夜はかなりばてていた。

 

そして、唯たちとSHUの演奏は統夜が鎧を解除したタイミングで終了していた。

 

「……統夜、やったな」

 

統夜とは別のホラーを引き受け、それを討伐した大輝が統夜に駆け寄った。

 

「大輝さん……ありがとうございます……」

 

「……さて、ホラーは討伐したし、俺は行くぞ」

 

「えぇ?もう行っちゃうんですか?」

 

「明日もエレメントの浄化があるからな。お前が学校に行っている間は俺の仕事だからな」

 

大輝こそが統夜が学校に行っている間のエレメント浄化を引き受けてくれている魔戒騎士であった。

 

「大輝さん、いつもありがとございます。大輝さんのおかげで俺は最高の学校生活を送れてます」

 

「フッ……それは何よりだ。統夜、お前は学校生活を通して守りし者とは何なのかを知ることが出来たのだろう?」

 

「えぇ、それはとても」

 

統夜は日々の学園生活を通して守りし者とは何なのかということをよく理解していた。

 

「それは結構だ。じゃあな、統夜。これからも頑張れよ」

 

大輝はそのままライブハウスを後にした。

 

統夜は立ち去る大輝の背中を見守りながら深々と頭を下げた。

 

大輝を見送った統夜はライブハウスに戻ろうかと考えていたが……。

 

「やーくん!」

 

それより先に唯たちが統夜に駆け寄ってきた。

 

「統夜先輩……大丈夫ですか?」

 

「まぁ、だいぶ苦戦はしたけど、問題はないよ」

 

統夜は梓たちに心配させないためにこう言って強がっていた。

 

「……SHUさん。あなたの本気、たっぷりと堪能させてもらいました」

 

統夜はこう言いながらSHUの目をじっと見ていた。

 

「どうだった?俺の本気は……」

 

「すごかったけど……。心には響かなかったです」

 

「ちょ、統夜!?」

 

統夜の正直すぎる感想に澪が思わず声をあげていた。

 

「ハハッ、そうかもな。……俺、命がけだなんて格好つけてただけなんだよ……。こんな物に頼って……。それでメジャーデビューが出来たってそれは俺の力じゃない。そんな偽物な歌じゃファンだって喜ばないよ……」

 

SHUはこうしみじみと言うとホラーの鱗を統夜に投げ渡した。

 

「それはもう必要ない。……俺、もう一度頑張るよ。お前のようなファンがいるんだ。お前もお前以外のファンも納得させるような音楽を作ってみせる」

 

「……はい、期待しています」

 

「なぁ。お前らは軽音部なんだよな?良かったらこれからもこの曲を演奏して欲しい」

 

統夜はSHUがここまで言ってくれるとは思っていなかったのでSHUがこれからもbright hopeを弾いて欲しいとの言葉は素直に嬉しかった。

 

「……SHUさんが良いって言うなら遠慮はしませんよ?学園祭とかライブハウスとかで弾く機会があるなら絶対に演奏しますから!」

 

「あぁ、そうしてくれ。俺はこのbright hopeは封印するから、これからはお前たちの曲として演奏してくれたら俺も嬉しいよ」

 

「はいっ!ありがとうございます!!」

 

統夜はSHUに一礼をすると、ライブハウスを後にして、唯たちはそれを追いかけた。

 

「……桜高軽音部の月影統夜……か……。あいつには負けてられないな」

 

SHUはその場を立ち去る統夜たちの背中を見送りながらこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

SHUが見えなくなる場所まで歩くと、統夜は倒れそうになったので唯たちが統夜のことを支えた。

 

「ちょ、統夜君、大丈夫?」

 

「まったく……。SHUさんの前だからって格好つけちゃって……」

 

「そ、そんなんじゃないよ……。あの音楽を背負うのは俺だけで十分だから……」

 

「やーくん……」

 

「統夜先輩、それは違いますよ。私たちだって一緒にこの曲を演奏したんです。だから私たちだって一緒にこの曲を背負っていきますよ」

 

梓の言葉に唯たちはウンウンと頷いていた。

 

「確かに……。この6人が桜高軽音部……ですもんね♪」

 

「はい……そうですね!」

 

統夜はSHUから受け取ったホラーの鱗を投げると、魔戒剣を居合のように一閃し、鱗を真っ二つに斬り裂いた。

 

「……さて、帰ろうか」

 

こうしてこの日の仕事を終えた統夜はそのまま帰路についた。

 

 

 

 

 

ちょうどその頃……。

 

「……ここか。魔獣の牙が眠る場所は……」

 

ホラー、ローウィンとの戦いを終えた統夜の様子を見ていた謎の男が桜ヶ丘郊外にある洞窟を発見した。

 

「ククク……。もうすぐだ……。俺はグォルブを復活させ、俺の望みを叶えてみせる……!」

 

男はとてつもなく大きな計画を企んでいた。

 

「……だが、あの魔戒騎士の存在は目障りだな……。こいつを奪ったら一度挨拶をするとしようか……」

 

男は統夜との接触も視野に入れていた。

 

「……待っていろ、月影統夜。貴様も、あの女のように……!」

 

男は怪しい笑みを浮かべると、そのまま高笑いをしていた。

 

この男との出会いが、統夜の運命を大きく変えることを統夜は知る由もなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『……やれやれ……。これはまた厄介なやつが現れたもんだ。この男、一筋縄じゃいかない相手みたいだぜ!……次回、「邪悪」。漆黒の騎士が牙を剥く!!』

 




桜高軽音部の持ち曲にbright hopeが追加されました。

そして今回出てきた桐島大輝は統夜の先輩であるベテラン騎士で、統夜が学校に行っている間にエレメントの浄化を行っている魔戒騎士です。

一応扱いはオリ騎士ではなくモブ騎士なので登場させない予定だったんですが、今後の展開を考えて登場させました。

大輝は称号持ちの騎士ではないためにモブ騎士扱いとなります。

今回はこの小説初の唯たちの演奏シーンがありました。

この作品はけいおんと牙狼のクロスのはずなんだけど……(笑)

そして動き始めた謎の男。次回は物語が一気に進んでいきます。

そこもふまえて次回をお楽しみに!


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