牙狼ライブの執筆に夢中になってしまい、投稿が遅くなってしまいました。
まぁ、それだけが理由ではないのですが……(笑)
それはともかくとして、前回の最後で出会った統夜と流牙ですが、統夜は流牙に剣を突き付けていました。
この後、いったいどうなってしまうのか?
それでは、EPISODE2をどうぞ!
3月の終わり、唯、澪、律、紬の4人が大学の寮へ向かうのを見送った統夜は、何者かの手によって別の世界に飛ばされてしまった。
その世界にもどうやらホラーはいるようであり、統夜はこの世界の情報を得るために、近くにあった「ラインシティ」と呼ばれる街を訪れた。
暗くなるまで街の散策を行うものの、目ぼしい情報は得られなかったのだが、野宿先を探そうとした矢先に、かつて統夜が倒したホラー、アレグレウスと遭遇した。
統夜はアレグレウスを圧倒していたのだがらそんな時に、魔戒騎士である道外流牙と魔戒法師である莉杏が乱入してきた。
流牙の魔戒剣はなんと赤鞘の魔戒剣であり、牙狼の称号を流牙が持っているという証であった。
流牙は牙狼・翔の鎧を召還すると、一太刀でアレグレウスを討滅したのであった。
そして、牙狼の存在に驚いていた統夜であったが、こちらに歩み寄ってきた流牙に魔戒剣を突き付けたのであった。
「……ねぇ、これはいったい何の真似なの?」
「赤鞘の魔戒剣……。牙狼の鎧……。あんたが黄金騎士牙狼だって言うのか……!」
「あんたも見てただろ?俺が牙狼の称号を持つ魔戒騎士だってば」
「……」
統夜に魔戒剣を突き付けられ、流牙はいつでも抜刀出来るように備えていた。
「……すまないな。あんたじゃない牙狼の存在を知ってるからつい……」
統夜はどうにか冷静さを取り戻すと、魔戒剣を下ろし、そのまま青い鞘に納めていた。
統夜に敵意がないことを知った流牙は安堵のため息をついていた。
「ねぇ、あなた。流牙じゃない牙狼を知ってるってどういうことなの?」
「……俺は実はこの世界の人間じゃないんだ。俺の知ってる牙狼とは違ったからついあんたに敵意を向けちまった」
「……へぇ、異世界の魔戒騎士ねぇ……」
流牙は、統夜が異世界から来たと知っても特に驚いたりはしていなかった。
「……驚かないのか?」
「別に。こんな仕事をしてるんだ。異世界の人間が紛れ込んだって何の不思議もないよ」
流牙が統夜に向かってこう答えると、流牙は何かを感じ取り、左手に嵌められた指輪のバイザーを外した。
すると……。
『俺様は気になるがな。異世界の魔戒騎士とやらがな』
バイザーから出てきたのは、鋼牙の相棒であるザルバと全く同じであった。
そのため……。
「ざ、ザルバ!?」
統夜は流牙の魔導輪がザルバであると知って、驚いていた。
『なんだ、小僧。俺様のことを知っているのか?』
「まぁな……。俺の知ってる牙狼の相棒もザルバだったから……」
「へぇ、やっぱり黄金騎士の魔導輪はザルバなんだな」
統夜の世界の牙狼もザルバが相棒だと知り、流牙は感嘆の声をあげていた。
「……そういえば自己紹介がまだだったな。俺は道外流牙。魔戒騎士だ」
「私は莉杏。魔戒法師よ」
流牙と莉杏は、統夜に自己紹介をしていた。
「俺は月影統夜。あんたらとは住む世界は違うが、白銀騎士奏狼の称号を持つ魔戒騎士だ」
「白銀騎士奏狼?」
「聞いたことないわね」
流牙と莉杏が聞き覚えがないことでわかるように、どうやらこの世界には奏狼の称号を持つ魔戒騎士はいないようであった。
『……ま、世界が違えば奏狼が存在してなくても仕方ないよな』
「「ざ……ザルバ!?」」
口を開いたイルバを見た流牙と莉杏は、イルバの見た目がザルバそっくりだったため、驚いていた。
『違う!俺様はイルバ!白銀騎士の魔導輪だ!間違えるな!』
イルバはザルバと間違えられるのが嫌いなため、少しだけ怒りの口調で自分の存在をアピールしていた。
「へぇ、それにしても、本当に似てるんだな……」
『あぁ。俺様も驚きだぜ。まさか、自分そっくりの魔導輪がいるとはな……』
どうやらこの世界のザルバは、イルバのことを嫌っている訳ではなさそうなので、イルバはいつもと違う感じに少しだけ戸惑っていた。
「それにしても、君は凄く若いけど、何歳なの?」
莉杏は統夜のことを一目見た時から、魔戒騎士にしては幼いと感じていた。
そのため、統夜に年齢を聞くのだが……。
「今は18で、もうじき19になる。ちなみに、魔戒騎士になったのは15だったかな?」
「じゅ、15で魔戒騎士になったのか!?」
「ず、ずいぶんと凄いわね……」
流牙と莉杏は、10代で魔戒騎士として活躍している統夜に驚きを隠せなかった。
自分が牙狼の称号を受け継いだ時よりも統夜が奏狼の称号を受け継いだ方が早かったため、特に流牙の方が驚いていた。
「……その若さで活躍するなんて、統夜は本当に苦労したのね」
「そうかもしれないな。俺は高校に通いながら魔戒騎士として使命を果たして心から守りたいと思った大切な人と出会ったんだ」
「え!?統夜って、学校に通いながら魔戒騎士の仕事をしていたの!?」
どうやらこちらの世界では、統夜のように学校に通いながら魔戒騎士の仕事をする者はいないようであり、莉杏は驚きを隠せずにいた。
「……なるほどな……。学校に通いながらってのはわからないけど、統夜は統夜で守りし者とは何なのかを理解していたんだな……」
「ま、そういうことかな」
『俺様から言わせてもらえば学校とやらに通いながら魔戒騎士をするなど解せないがな。お前さんの他にもそういう奴はいるのか?』
「あぁ。俺と同じで15で魔戒騎士になった奴がいるんだけど、そいつが今年の春に高校に入学するんだ。恐らくは俺の影響かな?」
統夜が言っている人物は、先ほど統夜が言った通り15で魔戒騎士になった統夜の後輩騎士である如月奏夜のことであった。
奏夜が高校に入ることを決意したのは、統夜の存在が大きいと言っても過言ではない。
高校に通いながらも魔戒騎士の使命を果たすことが出来る。
そのことを統夜が証明してみせたので、これからも高校や大学に通いながら魔戒騎士として使命を果たす者が増えてくることが予想された。
『ほぉ……。どうやらお前さんはその若さで残すものを残していたんだな……』
統夜の残した足跡について話を聞いていたザルバは、ただの小僧と侮っていた統夜の評価を改めていた。
『ま、まぁ。確かにそうなのかもしれないな……』
鋼牙の相棒であるザルバは、統夜のことを認めたことはなかったのだが、このザルバは統夜のことをあっさりと認めており、その違いにイルバは戸惑っていた。
「とりあえず他にも聞きたいことはあるけど、今日のところはゆっくり休んで明日リュメ様のところに行こう」
「リュメ様?」
統夜は聞いたことのない名前を聞いて、首を傾げていた。
「この街を治めている魔戒法師のことよ」
「へぇ、この街には番犬所は存在しないんだなぁ」
「リュメ様のいる場所が番犬所みたいなものだけどね」
どうやらこのラインシティの魔戒騎士は、リュメと呼ばれる魔戒法師のもとへ行き、そこで指令を受けるようであった。
「明日そこに案内するよ」
「今日は私たちが泊まってるところがあるから、統夜も一緒に行きましょう」
「そうだな。それじゃあ、遠慮なくご一緒させてもらおうかな」
流牙と莉杏は、このラインシティ某所にある使われていない建物を隠れ家として使っており、そこで寝泊まりをしていた。
2人は統夜をそこに案内し、その場所で眠ることになった。
統夜としても野宿をする予定だったので、2人の申し出はありがたかった。
そして、統夜たちは互いの世界の話や互いにどのようなホラーを狩ってきたなど武勇伝を語り合ってから、眠りについた。
※※※
そして翌日、統夜は流牙と莉杏に連れられて、ラインシティ某所にある海の見える通りに来ていた。
「……なぁ、流牙。もしかして、ここが昨日言ってたリュメ様とやらがいる場所に繋がってるのか?」
「ま、そんな感じかな。……見てな」
流牙はバイザーに覆われたままのザルバを目の前の壁にかざすと、魔法陣のようなものが出現し、これこそが魔戒法師であるリュメのいる「リュメの間」に繋がっている場所であった。
「さぁ、統夜。行くわよ」
「あ、あぁ」
流牙と莉杏が先にリュメの間へと入っていったので、統夜もそれを追いかける形でリュメの間へと入っていった。
中に入ると、何もない道をひたすらまっすぐ進んでいき、しばらく歩いたところにリュメの間はあった。
その様相は番犬所に酷似していたため、統夜は驚きのあまりキョロキョロと周囲を見回していた。
すると、この部屋の中央部分だけが高くなっており、そこに20代前半くらいの女性が立っていた。
そして、その女性を守るように付き人の秘書官らしき仮面の男2人が左右に展開していた。
女性がよく見える場所まで進んだ流牙と莉杏は、その女性に深々と頭を下げていた。
統夜はこの瞬間、あの女性こそがリュメだと理解し、同様に頭を下げていた。
「……よく来たね。流牙、莉杏」
「「はい、リュメ様」」
リュメは穏やかな表情で流牙と莉杏に挨拶をすると、2人は簡潔に返事をしていた。
「……おや?そこの魔戒騎士は見ない顔だね」
リュメは統夜を初めて見たため、興味津々と言いたげにジッと統夜を見ていた。
「……は、はい。おれ……私は白銀騎士奏狼の称号を持つ、月影統夜といいます。ここではない世界で魔戒騎士として活躍していたのですが、何故かこの世界に迷い込んでしまいまして……」
「白銀騎士奏夜……。聞いたことない称号だね……。昨日、妙な気配を感じ取ったんだけど、きっとそれは統夜だったんだね」
昨日、リュメは統夜がこの世界に迷い込んだのと同じ時刻に妙な気配を感じ取ったのだが、統夜がこの世界に迷い込んだと聞き、そのことだろうと推測していた。
「統夜、ちょっとこっちに来てくれるかい?」
「え?」
まさかの言葉に統夜は戸惑って流牙と莉杏の方を見るのだが、2人は穏やかな表情で頷くだけだった。
統夜は戸惑いを隠せないまま、リュメの立つ高台の前に移動すると、統夜の足元の部分が変化すると、リュメと同じ高さまで移動した。
「こ、こんな感じでよろしいでしょうか?」
「もっと近くまで来てくれるかい?」
「は、はぁ……」
統夜はさらに戸惑いながらもさらに前に出ると、リュメの近くに立っていた。
「こ……これでいいですか?」
「うん。大丈夫だよ」
リュメは穏やかな表情で笑みを浮かべると、リュメは両手で統夜の頬を触れると、自分の額を統夜の額にくっつけていた。
「!?」
突然の出来事に、統夜は驚きを隠せずにいた。
『ほぉ、これは……』
イルバはリュメが何をしているのかを理解しているようであるため、感嘆の声をあげていた。
「……統夜。お前は苦労して魔戒騎士になったんだね……」
どうやらリュメは統夜の思念を読み取ったようであり、どのようにして魔戒騎士になったのかを理解したのであった。
「……それに、仲間たちと笑い合ってるのが見えるよ……。統夜はこの子たちを守るために戦っているのかい?」
「……!?そうです。俺にとってあいつらはかけがえのない存在ですから……」
唯たちの存在まで読み取られるとは思わなかったので、統夜は驚きを隠せなかったが、毅然と答えていた。
「……わかったよ。ありがとう、統夜」
リュメは統夜から離れると、統夜は何も言わずに一歩下がり、足元が下がって元の状態へと戻っていた。
足元が元に戻るのを確認した統夜は、流牙と莉杏のもとへと戻っていった。
「……統夜。お前は信用出来る魔戒騎士みたいだ。元の世界に戻る間、私たちに力を貸してくれるかい?」
「もちろんです、リュメ様。俺は1日でも早く元の世界に戻りたいと思っていますが、それまではリュメ様の信頼に応えてみせます!」
統夜は、元の世界に戻る間だけではあるが、自分のことを信頼出来ると言ってくれたリュメのために動くことを決意した。
「ありがとう、統夜。期待しているよ!」
「はい!」
穏やかな表情でリュメは微笑んでおり、統夜は力強くリュメの言葉に応えていた。
「……それじゃあ、さっそくだけど、統夜の力を見たいから、この指令を受けてくれないかな?」
リュメがこのように宣言すると、赤い仮面を被ったリュメの付き人の1人が統夜に赤の指令書を渡していた。
統夜が魔導ライターを取り出すと、魔導火を放ち、指令書は消滅した。
すると、魔戒語で書かれた文章が浮かび上がってきた。
統夜はその文章を読み上げるのだが……。
「こ、こいつは……」
統夜は最後まで文章を読み上げて魔戒語で書かれた文章は消滅したのだが、その内容に驚きを隠せずにいた。
「?統夜?」
「い、いえ……。実はこのホラー、元の世界で戦ったことがありまして……」
「え!?そうなの!?」
「そういえば、昨日現れたアレグレウスも戦ったことがあるって言ってたよな?」
今回の指令で戦うホラーと交戦経験があることに莉杏は驚き、流牙は昨日のホラーとの交戦経験があることを確認していた。
「あぁ。まさか、2回連続で知ってるホラーが相手でびっくりしてるけどな……」
『ホラー、タイガードか……。初めて奏夜と出会った時に戦ったホラーだったな』
「?統夜、その奏夜っていうのは誰なんだい?」
「はい。実は俺の世界には、俺と同じで15で魔戒騎士になった如月奏夜という俺の後輩騎士がいるんです。今回戦うタイガードは、その奏夜と初めて共闘した時のホラーなんです」
『ま、お前さんはほとんど手を出してなかったがな』
「まぁな。それは奏夜の成長に必要だと思ったし……」
「それで、タイガードってホラーはどんなホラーなんだ?」
「あぁ。奴はかなりすばしっこくてそこが厄介だけど、そこさえなんとかすれば倒すのは容易だよ」
「そう……。それじゃあ、統夜のお手並みを拝見ね」
「あぁ、任せてくれ」
「とりあえず、頼んだよ。統夜、流牙、莉杏」
「「「はい!」」」
こうしてリュメから指令を受けた統夜たちは、リュメに一礼をすると、リュメの間を後にして、ホラーを捜索するため行動を開始した。
※※※
統夜たち3人はイルバのナビゲーションを頼りにホラーを探していた。
気が付けば夜になっており、統夜たちは現在ラインシティ某所にある人気のない広場にいた。
「……イルバ、ここか?」
『あぁ。かなりの邪気を感じるぜ。統夜、油断するなよ!』
統夜は魔法衣の裏地の中から魔戒剣を取り出すと、いつでも抜刀出来るようにしながら周囲を警戒していた。
すると……。
『……統夜!来るぞ!!』
イルバがこのように警告すると、虎のような姿をしたホラー、タイガードが現れれと、統夜を急襲していた。
統夜は冷静にタイガードの攻撃をかわすと、魔戒剣を抜いて一閃するのだが、素早い動きでかわされてしまった。
「……統夜!大丈夫か!?」
タイガードが出現したため、流牙は魔戒剣を取り出そうとしたのだが……。
「……大丈夫だ。ここは俺に任せてくれ!」
統夜は流牙や莉杏の力を借りずに、自分の力でタイガードを倒すつもりだった。
「……流牙。ここは統夜に任せてみましょう」
「……そうだな」
流牙は魔戒剣を取り出すのをやめると、タイガードは統夜に任せることにした。
タイガードは素早い動きで統夜を翻弄しようとしていたのだが、統夜は魔戒剣を構えるとそんなタイガードの動きを見極めていた。
(……奏夜はあいつの機動力を奪って倒していたが、そこまでする必要はないな……。あいつの動きは見切れる!)
どうやら統夜はタイガードの素早い動きを全て捉えており、攻撃を見切るのは容易だった。
そんなことなど知る由もなく、タイガードは素早い動きで統夜に接近し、爪による攻撃を繰り出すのだが、統夜は軽々と魔戒剣で受け止めていた。
そして反撃と言わんばかりに魔戒剣を一閃するが、タイガードにかわされてしまい、再び素早い動きで統夜を翻弄する。
しかし、これは全て統夜の計算通りだった。
「……っ!あのホラー、相当すばしっこいわね……」
「だけど統夜は冷静だよ。まるであいつの動きを全て捉えてるみたいだ」
「へぇ……。それが本当だとしたら、やるじゃない、統夜」
タイガードの動きを見極めている統夜の実力を流牙は冷静に分析しており、莉杏はそんな統夜に関心していた。
タイガードは素早い動きで動き回りながら統夜に接近するが、統夜はタイガードがどこから攻撃を仕掛けてくるのかを予想することが出来た。
「……そこだ!!」
タイガードは統夜の右側から攻撃を仕掛けるのだが、それを見切っていた統夜は、魔戒剣をタイガードの脛に叩き込んだ。
その一撃を受けたタイガードは痛みのあまり転倒し、統夜はその隙に体勢を立て直していた。
「……なるほどね……。あの素早い動きも足が資本になってるから、そこを突いたって訳ね……」
「へぇ、その発想はなかったから驚きだな……」
統夜の的確な攻撃に、莉杏と流牙は関心していた。
統夜もタイガードの機動力を奪って確実に仕留める戦い方だったのだが、奏夜の時とは違い、素早い動きを見極めた上でタイガードの足を狙って機動力を奪うという作戦であった。
「ぐ……グゥゥ……」
タイガードはゆっくりと立ち上がるのだが、統夜の一撃が効いており、得意の素早さは活かせそうになかった。
「……貴様の陰我、俺が断ち切る!!」
統夜はタイガードに向かってこう宣言すると、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。
その部分だけ空間が変化すると、そこから放たれた光に、統夜は包まれた。
すると、変化した空間から白銀の輝きを放つ鎧が現れると、統夜はその白銀の鎧を身に纏った。
こうして、統夜は白銀騎士奏狼の鎧を身に纏ったのである。
「白銀の鎧……」
「へぇ、これが統夜の鎧か……」
統夜の鎧を初めて見た莉杏と流牙は、感心しながら白銀の輝きを放つ鎧に見入っていた。
「ぐ……グゥゥ……!」
統夜が鎧を召還するのを見て、タイガードは素早い動きをしようとするのだが、統夜の一撃が効いているのか、先ほどのスピードで移動することは出来なかった。
統夜は一気に決着をつけるためにゆっくりとタイガードへと向かっていった。
このままでは何もせずにやられてしまう。
それを避けるためにタイガードは正面から統夜に向かっていき、爪による攻撃を繰り出すのだが、統夜はその一撃を鎧で受け止めていた。
そして、そのまま渾身の力で魔戒剣が変化した皇輝剣を一閃すると、タイガードの体は真っ二つに斬り裂かれた。
皇輝剣による一撃で斬り裂かれたタイガードは、断末魔をあげ、その体は陰我と共に消滅した。
「……」
統夜はタイガードが消滅したのを確認すると、鎧を解除し、元に戻った魔戒剣を青い鞘に納めていた。
タイガードを討滅したことを確認した流牙と莉杏は、統夜に駆け寄った。
「……統夜、あなた、思ったよりもやるじゃない。びっくりしたわ」
「そうだな……。俺よりも若いのに、統夜はかなり経験を積んでるみたいだな……」
統夜の戦い方はベテランの魔戒騎士と同じものだと流牙は感じていたため、その実力に驚いていた。
「……まぁ、俺は色んな試練を乗り越えてここまで来たからな……」
統夜は高校に通いながら様々な事件を解決しており、その経験が魔戒騎士として統夜を大きく成長させたのである。
「そうみたいだな……」
「えぇ。統夜に聞かせてもらった話はとても興味深かったしね♪」
統夜は流牙や莉杏に自分が直面した事件の話をしたのだが、それを流牙や莉杏は興味深く聞いていた。
そのため、統夜が色々な試練を乗り越えたという言葉は理解出来たのである。
「……とりあえず、ホラーは倒したし、帰ろうか」
「そうね」
「そうだな」
タイガードは統夜によって討滅されたため、統夜たちは流牙と莉杏の隠れ家へと移動を開始した。
※※※
そんな統夜の戦いを遠くから見ている影があった。
__何だと!?あの小僧……。黄金騎士ではないのか!?
統夜の戦いをこの世ではないどこかで見ていたのは、統夜をこの世界へと送り込んだ魔獣であった。
魔獣は、統夜を黄金騎士だと思い込んでいたため、統夜の正体に驚きを隠せなかった。
__だが、奴から黄金騎士と同じ輝きを感じるのは事実……。この世界の黄金騎士と共に消し去らねばならぬな……。
魔獣は、統夜が黄金騎士ではないとわかっても、統夜のことを狙っており、それだけではなくこの世界の黄金騎士である流牙のことも狙っていた。
__もうじき我は復活を遂げる!!その時が貴様らの最後だ!!
魔獣は徐々に力を蓄えており、間もなく流牙たちのいる世界に現れようとしていた。
そのため、魔獣は自身の復活に備えて力を蓄えていた。
「……ハッ!?」
ここはラインシティから離れたところにある祭壇なのだが、この場所に、統夜をこの世界へと送り込んだ魔獣が眠っていた。
この地を守っている小柄でツインテールの魔戒法師は、祭壇に起こっている若干な変化を感じ取っていた。
「このままでは魔獣、「ザジ」が復活してしまう……!奴は黄金騎士を狙う魔獣……!黄金騎士にこのことを伝えなければ……!」
自分の力では、ザジと呼ばれる魔獣の復活を食い止めることは出来ないため、黄金騎士である流牙にこのことを報告しなければと思っていた。
この魔戒法師は、流牙がラインシティにいることを知っているため、魔戒法師はラインシティへと向かった。
……統夜と流牙に待ち受ける激闘は、この魔戒法師との邂逅によって始まるということを、2人は知る由もなかった……。
……EPSODE3に続く。
統夜と流牙の2人はぶつかるのか?と思われましたが、どうにか2人の衝突は回避されました。
一昔前の統夜であれば、おそらくあのまま流牙に斬りかかっていたでしょうが、ここでも統夜の成長を見ることが出来ますね。
そのため、初対面の相手と衝突するという牙狼の伝統行事は回避されました。
その後の統夜たちの関係は良好ですしね。
そして、登場したリュメ様。
リュメ様は本当に理想の上司ですよね。異世界から来た統夜を受け入れる程ですからね。
そして、この世界に来て初めて統夜は鎧を召還しました。
タイガードは統夜も交戦経験があるため難なく倒しましたね。
さて、次回は物語が動き出します。
ザジの復活を警戒している小柄でツインテールの魔戒法師はいったい何者なのか?
それは次回明らかになります。
次回の投稿時期は未定ですが、なるべく早くあげたいとは思っています。
それでは、次回をお楽しみに!