「牙狼×けいおん 白銀の刃」は完結しましたが、投稿しようと思っていた番外編を新章としてあげていこうと思っています。
その新章は、「番外編 邂逅!もう1人の牙狼編」となっています。
もう1人の牙狼……。そうです!統夜があのキャラと邂逅する訳です!
統夜の織りなす新たなる物語ですが、いったいどうなるのか?
それでは、EPSODE1をどうぞ!
EPISODE1 「邂逅〜ENGAGE〜」
白銀奏狼の称号を持つ若き魔戒騎士、月影統夜が無事に卒業式を迎え、黄金騎士牙狼の称号を持つ冴島鋼牙の与えた試練も、鋼牙に敗北はしたものの、乗り越えることが出来た。
それから少し時は流れ、3月も終わろうとしていた。
この日、唯たちは大学近くの寮に引越しをする日であり、統夜はその見送りに来ていた。
ちなみに、見送りに来てるのは統夜だけであった。
昨日は梓たちが送別会を開いてくれたのだが、その時に、明日の見送りは同じ学年の統夜先輩だけでと梓が気を遣ってくれたからである。
唯たちの必要な荷物は、前もって寮に送ってあり、後は唯たちが寮へ向かって荷ほどきをするだけだった。
統夜たちは今、桜ヶ丘高校の前に来ており、一台の車が止まっていた。
本来であれば、琴吹家の執事である斉藤の運転するリムジンで寮に向かう予定だったのだが、大学の寮へは普通の車で向かいたいという紬の意向から、普通のワンボックスカーで大学の寮へと向かうことになった。
「……みんな。いよいよ大学生なんだな」
見送りに来た統夜はこのようにしみじみと呟いていた。
「……うん!そうだね!今からすっごく楽しみだよ!」
「統夜君、見送りに来てくれてありがとね♪」
「気にするな。しばらくみんなに会えなくなるんだし、今日は絶対に来るつもりだったしな」
「そうだよな……。統夜、元気でな!」
「あぁ。みんなもな。大学に行っても、頑張れよ」
「統夜。時々は軽音部の様子を見てやってくれよな」
「もちろんそのつもりだよ。だから安心してくれ」
「やーくん!たまには遊びに来てね!」
「わかってるって。俺もたまにはみんなに会いたいしな」
紬、澪、律、唯の順番で統夜に別れの挨拶をかわし、統夜は穏やかな表情で笑みを浮かべると、それに応えていた。
「……それじゃあ、統夜君とお別れするのは惜しいけど、そろそろ行くね」
「あぁ。みんな、本当に元気でな」
「や……やーくん!!」
紬の執事の運転するこの車に乗れば、統夜とはしばしの別れになってしまう。
統夜と別れるのが惜しいと思っているのか、唯は瞳に涙を溜めてウルウルとしながら統夜に抱きついていた。
「……っとと!おいおい……」
唯が抱きつくのを見た3人は、唯に続く形で、統夜に抱きついていた。
「ちょ……だから4人いっぺんはきついって……!!」
今回のように一斉に抱きつかれることは度々あったのだが、今回はいつも以上に力が強かったのか、統夜は少しだけ苦しそうにしていた。
「統夜君……!私、統夜君に出会えて本当に良かった!!」
「俺だってそう思ってるぜ、ムギ。ムギだけじゃない。みんなに出会えて、本当に良かった……」
「うん……!」
統夜の言葉が嬉しかったのか、紬の抱きつく力が少し強くなっていた。
「統夜……死ぬなよ!」
「わかってるさ。俺はみんなを遺して簡単に死ぬ訳にはいかないからな」
これから魔戒騎士としての戦いはさらに激化することが予想されたのだが、統夜はそう簡単には死ぬ訳にはいかないと誓っていた。
「梓と仲良くな。それに、梓のこと……よろしく頼むな」
「もちろんだ。任せておけ。澪、みんなのこと……頼むな」
統夜は梓と付き合っているため、これからも梓のことは見守っていくつもりであった。
そのため統夜は、澪に、唯たちのことを任せていた。
「……イルイルも、元気でね!」
『唯!お前さんはいつもいつも……。俺様を変なあだ名で呼ぶな!』
唯はイルバのことを知った時からずっとイルイルと呼んでおり、その度にイルバはそのあだ名を否定していた。
そして今回も、イルバはイルイルというあだ名を否定していた。
「やれやれ……。もういい加減そう呼ばれるのに慣れろよな……」
統夜もまた、唯に「やーくん」と呼ばれるのは慣れなかったのだが、1年程で慣れることが出来た。
そのため、未だにイルイルというあだ名に慣れないイルバに、統夜は呆れていた。
唯たちは統夜との別れを惜しむかのように、統夜をぎゅっと抱きしめていた。
(やれやれ……。これを梓が見たら何て言うのか……。だがまぁ、しばらく会えなくなるんだ。梓も許してはくれるだろうな)
イルバは冷静にこの状況を分析し、万が一梓がいたとしても、渋々許してくれるだろうと判断していた。
しばらく統夜に抱きついていた唯たちも統夜から離れると、そのまま車に乗り込んでいった。
そして、4人が乗り込んだことを確認した執事の斉藤は、車のギアをチェンジさせると、そのまま車を発車させ、N女子大の学生寮へと向かっていった。
唯たちは車の窓を開けると、統夜に向かって大きく手を振っており、統夜もまた、大きく手を振って唯たちの出発を見送っていた。
唯たちも統夜も、互いに姿が見えなくなるまで、手を振り続けていた……。
唯たちがいなくなったのを確認した統夜は少しだけ寂しそうな表情を浮かべると、そのまま番犬所へと向かっていった。
……そんな統夜を、この世ではないどこかで見ているものがいた。
__な、何だ……。あの小僧は……!黄金騎士と同じ輝きを感じるぞ……!
統夜の様子を見守っていたのは、ホラーのような姿をした魔獣だった。
__奴がこの世界の黄金騎士だと言うのか!?あんな小僧が……!
魔獣は、まだ幼さの残る統夜が、牙狼の称号の魔戒騎士と勘違いをしていたのだが、信じられないと言いたいのか訝しんでいた。
__我の復活も近い!その暁には、この世界の牙狼と我の世界の牙狼……。2人まとめて消し去ってやる!!そのことで、完全に忌々しい黄金の輝きを消し去ってやるのだ!!
魔獣は、どうやら牙狼の称号を持つ魔戒騎士に恨みを持っているようであり、統夜を牙狼と勘違いしていることで、統夜を消し去ろうと企んでいた。
そんな魔獣の邪気は、どうやら統夜たちにも伝わったようであった。
『……!?おい、統夜。妙な邪気を感じるぜ!!』
「そうだな……。俺も殺気のようなものを感じるよ」
どうやらイルバだけではなく、統夜も探知出来るほどの邪気であり、統夜は冷や汗をかきながら周囲を警戒していた。
すると……。
『……統夜!!こいつは妙なことになってるぜ!!』
「妙って何が……。!?こ、これは……」
統夜は、今起こっている状況が信じられず、目をパチクリとさせていた。
統夜とイルバは自由に動けるのだが、それ以外の時が止まってしまったのである。
「……この状況……。鋼牙さんから聞いたことがあるけど……。まさか……!!」
『だが、奴は黄金騎士を目の敵にしてる奴だぜ!白銀騎士であるお前さんを敵視する理由はないはずだ!』
「確かにそうだよな……」
どうやら統夜だけではなく、イルバも思い当たる節があるのだが、2人が連想する魔獣は黄金騎士を滅ぼそうとしている存在であり、自分たちが狙われる謂れはないのであった。
時が止まり、統夜は動揺を隠せずにいたその時であった。
『……おい、統夜!!空を見ろ!』
「!?こ、これは……!」
統夜は空を見て息を飲むのだが、先ほどまで青空だった空が緑の空になり、空の一部から歪みのようなものが現れた。
その歪みから大量の風が吹き荒ぶと、統夜を歪みの中へと吸い込もうとしていた。
「うっ……くっ……!な、何なんだよ!これは!」
統夜はたまたま近くにあった電柱に掴まって踏ん張るのだが、風の勢いには勝てず、統夜は歪みの中へと吸い込まれてしまった。
「うっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
統夜の悲鳴がその場に響き渡り、統夜の姿は消えてしまった。
統夜がいなくなった直後に時は再び動き出し、何事もなかったかのように日常が始まっていた。
※※※
謎の歪みに吸い込まれてしまった統夜は、人気のない広い場所へ投げ出されていた。
「……痛っ!!」
統夜は着地をする間もなく、地面に叩きつけられてしまった。
そこそこ高い場所からの落下だったのだが、魔戒騎士として鍛えているため、痛いと感じる程度のダメージであった。
「……ったく……。なんなんだよ……」
どこかわからない場所に投げ出された統夜は、ブツブツと文句を言いながらゆっくりと立ち上がった。
そして、周囲を見回すのだが、先ほどまでいた場所とは景色が変わっており、統夜は驚きを隠せなかった。
「おいおい……。どこだよ、ここ……」
『さぁな。だが、桜ヶ丘でないことは間違いなさそうだ』
「……やっぱりそうか……」
今いるこの場所が桜ヶ丘ではないということは、統夜もイルバも予想することが出来た。
「……まさか、またホラーのいない異世界に来たとかはないよな……」
『その可能性はあり得るが、微かに邪気は感じるぜ。どうやら、この世界にはホラーはいるようだ』
「そうなのか?てっきり魔女みたいな怪物はいる世界なのかと思ったが……」
統夜は異世界に迷い込んだのは間違いないのだが、何故か冷静だった。
統夜が高校2年生の時の夏休み。いつものように魔戒騎士の使命を果たし、とあるホラーを討伐したのだが、その時にこの世のものとは思えない不思議な宝石を拾った。
その宝石に導かれる形で、統夜は異世界に迷い込んでしまったのだが、その世界は何と、ホラーや魔戒騎士の存在しない世界であった。
しかし、そんな世界にもこの世のものとは思えない魔獣は存在し、魔女と呼ばれし魔獣が、人知れず人の命を脅かしていた。
そんな魔女と戦っていたのが、「魔法少女」と呼ばれる統夜よりも幼い少女たちで、統夜が拾った宝石は、その魔法少女の証であるソウルジェムと呼ばれるものであった。
統夜はその戦いに巻き込まれる形で戦うことになり、無事に自分たちの世界に戻ることが出来た。
そんな経験があるからか、統夜は異世界に迷い込んだと聞いても冷静だったのである。
「だけど……。ここがどこなのかは調べないとな……」
統夜がどんな世界に迷い込んだのかはわからないために、情報を集めるためにも動くしかなかった。
『……とりあえず移動しようぜ。どうやらここは街ではないようだが、街に行けば何かはわかるだろ』
「そうだな」
イルバの言う通り、統夜のいる場所は明らかに街から離れた場所にあるようであり、統夜はこの世界の情報を得るためにどこにあるかもわからない街へと向かって歩き始めた。
※※※
歩き始めておよそ1時間後、ようやく街を発見した統夜は、その街に立ち寄り、何か情報を得るために街を歩き回っていた。
統夜はすぐに看板のようなものを発見したのだが、そこには「ラインシティ」と書かれていた。
「……ラインシティ……?聞いたことのない名前だな……」
街の名前に聞き覚えがないからか、統夜は首を傾げていた。
『俺様も聞いたことはないな。とりあえず、この街を見て歩いてみたらどうだ?』
「そうだな……。そうすれば、この世界の魔戒騎士のこともわかるかもしれないしな」
統夜は、このラインシティという街がどのような街かを調べ、この世界の魔戒騎士についての情報を得るために歩き始めた。
1時間ほど街を歩いてみたのだが、特に変わりのない活気のある街であった。
「……いたって普通の街だな……」
『そうだな。だが……』
「だが?」
イルバもこの街は普通の街だとわかっていたのだが、1つだけ気になることがあった。
それは……。
『この街のどこにいても妙な法力のようなものを感じるんだ』
「妙な法力?もしかしてホラーか?」
『いや、この感じは恐らく魔戒法師だろう。それも強大な力を持っている』
イルバは街のあちこちから魔戒法師のものと思われる法力を探知していた。
「魔戒法師って……。この世界にも邪美さんや烈花さんのような魔戒法師がいるってことなのか?」
『そうかもな。だが、その2人よりも強大な力を感じるぜ』
「!?あの2人よりも……なのか!?」
邪美や烈花以上の魔戒法師がいることが信じられないのか、統夜は目を大きく見開いて驚いていた。
『まぁ、あの2人よりも強い奴がいたとしても不思議ではないがな』
「そ、そうかもしれないけど……」
『統夜。とりあえずこの街をもう少し調べようぜ。何か情報が得られるかもしれないからな』
「そうだな……」
統夜はこのラインシティの情報を得るために、再び街の散策を始めた。
さらに1時間街を散策し、合計2時間街を散策したのだが、特に変わったところはなく、魔戒騎士やこの街に法力を放つ魔戒法師の足取りは掴めなかった。
「……夜になったが、特に変わったことはないな……」
『そうだな。何か目ぼしい情報を得られると思ったんだがな……』
「仕方ない。今日はどこかで野宿でもするか」
この日の探索は諦めて、統夜は野宿するのに適した場所を探すために動き始めようとしていた。
その時であった。
『……!統夜!ホラーの気配だ!ここから近いぞ!』
「!世界が違うって言っても、ホラーが出たとなると放っておけないな。イルバ、行くぞ」
『了解だ、統夜』
こうして、統夜はイルバのナビゲーションを頼りに、ホラーの出現した場所へと急行した。
※※※
……ここは、ラインシティ某所にある人気のない広場。
この場所に1人の少女がいたのだが、少女はこの世のものとは思えない怪物……ホラーに襲われていた。
「いや……来ないで……」
少女はホラーから逃げていたのだが、途中で転んでしまい、現在はホラーに追い詰められていた。
その瞳には涙がたまっており、恐怖に支配されていたのだが、ホラーはそんな少女に容赦なく迫っていた。
「ククク……。その恐怖に怯えた表情……たまらんな!」
ホラーは恐怖に支配されている少女を見て、笑みを浮かべていた。
そして、獲物を吟味するかのように舌なめずりをしていた。
「……だ、誰か……!助けて!!」
少女が誰かに救いを求め、ホラーが少女を捕まえようとしたその時だった。
「やめろぉ!!」
どこからか現れた赤いコートの少年……統夜が、魔戒剣を一閃してホラーを斬り裂き、蹴りを放ってホラーを吹き飛ばした。
「……早く逃げろ」
ホラーが吹き飛ばされた隙に統夜は少女を逃がそうとして、少女は統夜に礼を言うこともなく、一目散に逃げ出していた。
「さてと……」
統夜は魔戒剣を構えると、吹き飛ばされて、起き上がろうとしているホラーを見据えていた。
「……まさか、またこいつと出くわすとはな……」
『そうだな。こいつはアレグレウス。お前さんが初めて梓を助けた時に倒したホラーだ』
「ま、世界が違うんだ。同じホラーがいたって不思議はないか」
統夜と対峙しているホラーは、かつて梓を初めて助けた時に倒したアレグレウスというホラーであった。
統夜の世界にいるアレグレウスは既に魔界へと強制送還されているのだが、ここは違う世界のため、交戦経験のあるホラーと遭遇しても不思議はなかった。
「とりあえず、こいつを蹴散らさないとな!」
統夜がアレグレウスをまじまじと見ている間に、アレグレウスは統夜目掛けて襲いかかってきた。
アレグレウスは爪による攻撃を仕掛けるのだが、統夜は軽々と魔戒剣で受け止めていた。
そして、反撃と言わんばかりに魔戒剣を一閃するのだが、その体は固く、皮膚に傷を与えることは出来なかった。
「相変わらず体は固いみたいだな……」
アレグレウスとの交戦経験がある統夜は魔戒剣ではあまりダメージを与える事が出来ないことを理解していた。
その後の攻撃パターンも簡単に見極めることが出来た。
そのため、アレグレウスが反撃として放った衝撃波をかわすと、今度は蹴りを放ってアレグレウスを吹き飛ばした。
「……ぐぅ……!」
アレグレウスはすぐ体勢を立て直すのだが、再び統夜に向かっていった。
統夜は完全にアレグレウスの動きを見切っており、アレグレウスの攻撃をかわすと、今度は魔戒剣を3度振り下ろし、その攻撃で怯んだところに蹴りを叩き込み、近くに立てられた木に叩きつけた。
相手の攻撃パターンを理解しているからか、統夜は鎧を召還することなく、アレグレウスを圧倒していた。
「……貴様……!俺の攻撃を見切っているとでもいうのか!?」
木に叩きつけられ、ゆっくりと立ち上がったアレグレウスは、自分の攻撃がことごとく通用しないことに驚きを隠せずにいた。
「あぁ、そうだ。お前は知らないだろうが、同じ個体と交戦経験があるんでね」
「おのれ……!魔戒騎士……!!」
「……さて、一気に決着をつけさせてもらう!」
統夜は速やかにアレグレウスを討滅するために鎧を召還しようとしていた。
その時だった。
『……!統夜!何かが来るぞ!!』
イルバが何かを感じ取ると、どこからか手裏剣のようなものが飛んでくると、その手裏剣のようなものは、アレグレウスを斬り裂いた。
「……!?な、何だ!?」
統夜は突然の出来事に驚き、手裏剣のようなものが飛んできた方向を見ると、そこには黒いロングコートを羽織った青年と、ポニーテールの女性が立っていた。
「……何者だ!」
「見てわかんない?俺は魔戒騎士だよ。そういうあんたも見ない顔だけど、魔戒騎士なのか?」
「あぁ、そうだ」
「流牙(りゅうが)。あの坊や、それなりに出来るみたいよ」
「そうらしいな、莉杏(りあん)。あのホラーを圧倒してたみたいだしな」
黒いロングコートの青年は道外流牙(どうがいりゅうが)という名前の魔戒騎士であり、ポニーテールの女性は、莉杏という名前であり、どうやら魔戒法師のようであった。
「おのれ……!魔戒騎士に魔戒法師か……!いいだろう!みんなまとめて叩き潰してやる!」
「へぇ……。やれるもんならやってみなよ!」
流牙はアレグレウスに向かって軽口を言いながら魔戒剣を抜くのだが、統夜は流牙の魔戒剣の鞘を見て驚愕していた。
その理由は……。
「……!?う、嘘だろ!?赤鞘……なのか?」
流牙の魔戒剣は赤鞘であり、赤鞘といえば、黄金騎士牙狼の証でもあるものであるからだ。
『あいつがこの世界の牙狼だと言うのか……!?』
冴島鋼牙以外の赤鞘を持つ魔戒騎士に会えるとは思っていなかったからか、イルバも驚きを隠せずにいた。
まさかの出会いに呆ける統夜は御構いなしなのか、流牙は魔戒剣を高く突き上げると、円を描いた。
そこから放たれる光に包まれると、流牙は黄金の輝きを放つ鎧を身に纏った。
その鎧を目の当たりにした統夜は、驚きのあまり目を丸くしていた。
その理由とは……。
「……う、嘘だろ……!?が、?牙狼……なのか?」
流牙の身に纏った鎧もまた、冴島鋼牙同様、黄金騎士牙狼の鎧であったからである。
しかし……。
『……統夜!確かにあれは牙狼の鎧みたいだが、形状が少し違うぞ!』
「……あっ、本当だ……」
イルバの指摘通り、流牙の身に纏った鎧は、統夜の見慣れた牙狼の鎧ではなかった。
この鎧は、「牙狼・翔」と呼ばれる鎧であり、牙狼の鎧が戦闘的に進化したものである。
通常の牙狼の鎧と比べると、より鋭角的になっており、牙狼剣の形も若干ではあるが異なっていた。
「……貴様の陰我、俺が断ち切る!」
流牙はアレグレウスに向かってこう宣言すると、アレグレウス目掛けてゆっくりと歩いていった。
「おのれ……!」
アレグレウスは牙狼の鎧を見ても臆することはなく、衝撃波を放つのだが、牙狼の鎧に傷1つつけることは出来なかった。
流牙はアレグレウスに接近すると、牙狼剣を構え、牙狼剣を大きく振り下ろした。
その一撃でアレグレウスの体は真っ二つに斬り裂かれ、アレグレウスは消滅した。
アレグレウスが消滅したことを確認した流牙は、鎧を解除して、元に戻った魔戒剣を赤鞘に納めていた。
流牙がアレグレウスを討滅したのを見届けた莉杏は、流牙に駆け寄っていた。
「流牙。お疲れ様」
「あぁ。……それよりも……」
アレグレウスを討滅した流牙は、魔戒剣を手にしたまま呆けている統夜の姿をジッと見ており、そんな統夜に話を聞くべく歩み寄った。
「……なぁ、あんた。魔戒騎士なんだろ?ここら辺じゃ見ない顔だけど、管轄はどこなんだ?」
「……」
流牙に呼び掛けられた統夜は、鋭い目付きで何も答えようとはしなかった。
それだけではなく、未だ手にしている魔戒剣を流牙に突き付けて睨みつけていた。
「……!?」
まさか、剣を突き付けられるとは思っていなかったのか、流牙は息を飲んでいた。
これこそが、統夜と、別の世界の牙狼である道外流牙との出会いであった。
この出会いこそが、新たなる激闘の幕開けになるということを、統夜はまだ知る由もなかった……。
……EPISODE2に続く。
こうして統夜は、流牙たちの世界に迷い込み、流牙と莉杏の2人と邂逅しました。
この小説が完結する前から流牙とのコラボは考えていたので、ここで実現出来て良かったかなと思っています。
そして、ホラーは、本編第2話に登場したアレグレウスですが、流牙は圧倒的な力でアレグレウスを討滅しました。
話の最後で統夜は流牙に剣を突きつけていますが、2人は衝突してしまうのか?
この章ですが、次回予告はありません。
本当ならば「牙狼 闇を照らす者」みたいな感じの次回予告にしようと考えもしましたが、番外章のため、次回予告はなくしました。
なので、どのような話になるか、ご期待ください。
次回の投稿時期は未定ですが、出来るだけ早く投稿したいとは考えています。
それでは、次回をお楽しみに!