牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第119話になります。

そして、今回はいよいよ最終回になります。

ここまでの長編になるとは思っておらず、僕も驚いていますが、なんとか最終回までこぎつけることが出来ました。

統夜に待ち受ける金色の試練とはいったいどのようなものなのか?

それでは、第119話をどうぞ!






第119話 「未来」

卒業式が無事に終わり、統夜たちは音楽準備室に向かう前に屋上へと足を運んだ。

 

梓に曲を贈る前に統夜たちは緊張しており、その緊張感を共有していた。

 

梓が喜んでくれる。そう信じた統夜たちは音楽準備室へと向かった。

 

統夜たちがどのように話を切り出すか話し合っていると、梓が音楽準備室へとやって来た。

 

梓へ贈る曲を披露する前にこれからの軽音部のことを聞いていた。

 

梓は軽音部は絶対に廃部させないと強く誓っており、統夜たちを心配させまいとしていた。

 

そして、梓は統夜たちに卒業して欲しくないとワガママを言って泣き出してしまったのである。

 

本来であれば笑って統夜たちを見送りたいと思っていたのだが、自分の気持ちを抑えることが出来なかったのである。

 

そんな梓に、唯は2つの贈り物を送り、澪と統夜が梓に聞いてほしい曲があると話を切り出した。

 

そして、統夜たちは梓に贈るために用意していた曲を演奏した。

 

この時にはまだタイトルはなかったのだが、この曲は後に「天使にふれたよ」というタイトルがつけられるのであった。

 

この曲を演奏した後、梓はアンコールを要求するのだが、梓も一緒に演奏することになった。

 

そのタイミングでさわ子と和が音楽準備室に入ってきて、統夜たちはさわ子と和に「ふわふわ時間」の演奏を聞いてもらっていた。

 

統夜たちの演奏が終わると、帰り支度を始め、そのまま帰ることにしたのであった。

 

帰り支度が終わり、みんな揃って音楽準備室を後にしようとしたその時だった。

 

コンコンとドアをノックする音が聞こえると、ドアが開かれとある人物が入ってきた。

 

その人物とは……。

 

「!?ご、ゴンザさん!?どうしてここへ?」

 

黄金騎士牙狼の称号を持つ冴島鋼牙の執事である倉橋ゴンザであり、意外な訪問者に統夜は驚きを隠せなかった。

 

「統夜様。皆様。ご卒業おめでとうございます」

 

ゴンザは統夜たちにこう挨拶をすると、深々と頭を下げていた。

 

「ゴンザさん、まさか、わざわざその挨拶をしに来た訳ではないですよね?」

 

「もちろんでございます。鋼牙様よりこちらを統夜に渡すよう言付かりまして」

 

ゴンザは赤の指令書のようなものを取り出すと、それを統夜に手渡していた。

 

「これは……指令書?」

 

『いや、少し違うようだな』

 

統夜が受け取ったものは形そのものは赤の指令書なのだが、どうやら普通の指令書ではないようであった。

 

「統夜様。読んでみてください。鋼牙様からのメッセージが入っております」

 

「は、はい」

 

統夜は魔導ライターを取り出すと、魔導火を放ち、ゴンザから受け取った指令書のようなものを燃やした。

 

すると、従来の指令書同様に魔戒語の文章が浮かび上がってきた。

 

「……統夜。卒業おめでとう。明日の朝7時。カカシの丘で待つ。魔戒騎士としての卒業式を行う」

 

統夜が文章を読み上げると、魔戒語の文章は消滅した。

 

「……!?カカシの丘って確か……!」

 

『確か鋼牙と零の2人がサバックの本当の決勝戦として決闘した場所だったな』

 

冴島鋼牙が約束の地より魔竜の試練を終えた直後、鋼牙はサバックで優勝した零と本当の決勝戦と称して決闘を行っていた。

 

その場所こそが、今回指定された場所であった。

 

その場所は正式な名前はないものの、鋼牙が幼少時代に修行に使ったカカシが佇んでいることから、そう呼ばれるようになった。

 

『それにしても魔戒騎士としての卒業式か。一体何をするつもりなんだろうな?』

 

「そうだよな……」

 

魔戒騎士としての卒業式がどんなものなのかわからず、統夜は不安そうにしていたのだが……。

 

「……だけど、どんな試練だって乗り越えてみせるさ!」

 

そんな不安を振り払うかのように、統夜は強気な発言をしていた。

 

「統夜先輩!その調子です!」

 

梓は、そんな統夜のことを励ましていた。

 

「あの、統夜君の卒業式……私たちも見届けてもいいですか?」

 

「もちろんですとも!鋼牙様はぜひ皆様にも来て欲しいと仰っておりました」

 

どうやら統夜以外のメンバーも来ても構わないとのことだったので、そのことを知った紬の表情がぱぁっと明るくなった。

 

そして、紬だけではなく、唯たちも見届けたいという気持ちは同じだったため、表情が明るくなっていた。

 

「それでは、明日お待ちしておりますので、よろしくお願いいたします」

 

ゴンザは深々と礼をすると、そのまま音楽準備室を後にして、学校も後にした。

 

「……統夜先輩。明日は頑張ってくださいね!」

 

「あぁ!」

 

「明日は学校で待ち合わせをしましょう。私、迎えに行くね♪」

 

「悪いけど、頼むな、ムギ」

 

こうして、明日の朝は紬の車でカカシの丘まで向かうことになり、その確認を行ったところで学校を後にした。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

統夜たちは学校を後にして、一緒に帰っているのだが、和と梓が先行しており、統夜たちはその後ろをのんびりと歩いていた。

 

「……あずにゃん、喜んでくれたかなぁ」

 

「うん!」

 

「俺はそう信じてるぜ!」

 

梓に向けて曲を贈り、紬と統夜は梓が喜んでくれたと確信していた。

 

すると……。

 

「うぅ……」

 

澪はずっと我慢していたのか、涙を流していた。

 

「あれぇ?澪、泣いてるのか?」

 

「ち、違う!鼻が詰まっただけだ!」

 

澪は泣いていたのだが、律にからかわれるのが癪だったため、このように強がった発言をしていた。

 

「泣いてる暇なんてないわよ、澪ちゃん!」

 

「そうだよ!私たち大学生だよ!」

 

統夜以外の4人は卒業しても同じ大学に進むため、唯は前向きな発言をしていた。

 

「ポジティブだな、お前ら」

 

唯の前向きな発言を聞いた律は苦笑いをしていた。

 

「お茶の時に食べるお菓子も、もっと大人っぽくしなきゃ!」

 

「本当ねぇ♪」

 

「って、そこかよ!」

 

「俺はしばらくムギのお茶が飲めないだろうし、今からムギの紅茶が恋しいよ……」

 

統夜だけは魔戒騎士として桜ヶ丘に残るため、いつものティータイムを楽しむことは出来ないと考え、肩を落としていた。

 

「統夜君、いつでも遊びに来てね♪おもてなしするから♪」

 

「ありがとうって言いたいところだけど、女子大じゃねぇか!」

 

唯たち4人が行く大学は女子大であるため、統夜が気軽に入れるところではなかった。

 

『迂闊に踏み込んだら完全に不審者だよな……』

 

統夜たち魔戒騎士の身に纏う魔法衣はかなり目立つため、迂闊に女子大に踏み込んでしまったら、不審者として通報される可能性があった。

 

「まぁ、統夜が遊びに来た時はなんか考えとくから安心してくれ」

 

「あぁ、そうしてくれると助かるよ」

 

澪はもし統夜が遊びに来てくれた時は統夜が気軽に入れるよう何かしらのことを考えておこうと考えていた。

 

統夜はとりあえずそうしてもらうしかなかったので、澪の申し出を素直に受け入れていた。

 

「……あっ、そういえば、この前DEATH DEVILごっこで使った曲だけどさ、あれも先輩が後輩のために作った曲なんだって」

 

統夜たちは卒業旅行に行く前にDEATH DEVILごっこをしていたのだが、その時に使った曲には、そのような驚きのエピソードがあったのであった。

 

「……ま、人の感性はそれぞれだよなぁ……」

 

先ほど統夜たちが演奏した曲とは曲調があまりに違うため、律は感性の違いを実感していた。

 

すると、唯が急に走り出し、統夜たちも後に続いていた。

 

「ねぇ、来年はどこ行く?」

 

「来年って?」

 

「あずにゃんの卒業旅行だよ!」

 

唯はどうやら、梓の卒業旅行も一緒に行こうとしているようだった。

 

「って、行くのかよ!」

 

「行こうよ!」

 

「そん時は俺は高校生じゃないんだから一緒に行けるかわからんぞ!」

 

統夜はこれから魔戒騎士として本格的に活動するため、今までのようなワガママが通用するとは思えなかった。

 

「行こうよ!だって、統夜君も一緒じゃないと始まらないし!」

 

「……わかったよ。その時はなんとかするさ」

 

統夜の交わした約束は絶対叶えられるという訳ではなかったが、統夜はこれからもみんなとの思い出を大事にしていきたいと考えていたため、どうにかその約束を果たそうと決意していた。

 

すると、唯はまるで飛行機のように両手を広げて走り出すと、先行している梓と和のもとへ駆け寄っていた。

 

こうして統夜たちは途中までみんな揃って帰り道を歩き、解散した。

 

解散後、統夜は番犬所に顔を出すと、改めて卒業の報告を行っていた。

 

そして、イレスに鋼牙から課せられた指令についての報告も行っていた。

 

そのことにイレスは驚いていたが、高校生魔戒騎士最後の戦いを悔いのないよう頑張りなさいとエールを送っていた。

 

イレスへの報告を終えた統夜は、番犬所を後にすると、明日の指令に備えて家に帰り、ゆっくりと体を休めていた。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

翌日、朝6時前に桜ヶ丘高校の前に集まった統夜たちは、紬の執事である斉藤が運転するリムジンに乗り込み、カカシの丘へと向かった。

 

この日は学校も休みであったため、統夜たちだけではなく、梓、憂、純、和、さわ子も一緒だった。

 

およそ50分ほど車を走らせると、カカシの丘に到着し、統夜たちは鋼牙が待っているであろう場所へと向かった。

 

歩くこと5分。統夜たちは鋼牙の指定した場所に到着したのだが、既に鋼牙の姿があり、統夜が来るのを待っていた。

 

さらに鋼牙だけではなく、ゴンザとカオルも一緒であり、カオルは雷牙を抱えていた。

 

それだけではなく、零、戒人、アキト、レオの4人も統夜の試練を見届けるために駆けつけていた。

 

「……統夜、来たか」

 

「はい、鋼牙さん」

 

統夜は鋼牙と軽く挨拶を交わすと、鋼牙と対峙していた。

 

唯たちは少し離れた場所で、統夜の戦いを見届けることにしていた。

 

「……お前もようやく卒業か。この3年間、高校に通いながら魔戒騎士として様々な試練を乗り越えていったようだな」

 

「はい。今の俺があるのは、桜ヶ丘高校でみんなと出会ったからなんです。みんなの存在が、笑顔が、俺を守りし者として力をくれたんです」

 

こう言い放つ統夜の瞳は、自信に満ち溢れていた。

 

そんな自信に溢れた統夜の言葉を聞いた唯たちの表情は明るくなり、鋼牙も穏やかな表情でフッと笑っていた。

 

「そうか……。そうかもしれないな……」

 

鋼牙は先輩騎士として、統夜のことを見守り、度々家に招いたりもしたのだが、唯たちと過ごしている統夜はとても生き生きとしていた。

 

唯たちが統夜にとって守るべき存在だというのは鋼牙も理解しており、統夜の言葉を実感していた。

 

「ところで、鋼牙さん。魔戒騎士の卒業式と言ってましたが、一体何をするんですか?」

 

統夜は昨日指令をもらった時から気になっていた疑問を鋼牙にぶつけていた。

 

「……統夜。お前がこの3年間でどれだけ強くなったのか……俺に見せてみろ」

 

「え?ま、まさかとは思いますが……」

 

「……統夜。俺と戦え」

 

鋼牙は牙狼の証である赤鞘の魔戒剣を取り出すと、鋭い目付きで統夜を睨みつけながら魔戒剣を抜いていた。

 

「!?で、でも、魔戒騎士同士の私闘は禁じられてるのでは?」

 

統夜の言う通り、魔戒騎士同士の私闘は騎士の掟で禁じられていた。

 

それを破ると、罰として何日分かの寿命を没収されてしまうのである。

 

しかし……。

 

『そこは問題ないぜ。グレスから許可は得ているからな』

 

ザルバの説明通り、鋼牙は事前にグレスに報告をし、統夜の力を確かめるために戦わせてくれと申し出ていた。

 

グレスはそれを二つ返事で了承したため、この決闘が実現したのであった。

 

「……そういうことなら!」

 

統夜もまた、鋼牙と戦ってみたいと思っていたのか、魔戒剣を取り出すと、鋼牙を鋭い目付きで睨みつけながら魔戒剣を抜いた。

 

「ルールはサバックと同じだ!どちらかが一滴でも血を流した方の負けとなる!」

 

「わかりました!」

 

今回の戦いは、サバックと同じ形式で行うようであり、統夜はそのルールで了承していた。

 

冴島鋼牙と月影統夜。2人の魔戒騎士が互いに魔戒剣を手にして対峙していた。

 

「……」

 

「す、凄い緊張感だな……」

 

「あぁ……。統夜のやつ、大丈夫かな……」

 

「そうね……」

 

唯、澪、律、紬の4人はヒシヒシと伝わってくる緊張感を肌で感じていたため、少しだけ怯えていた。

 

そんな中……。

 

「大丈夫です!統夜先輩はこれまで色んな試練を乗り越えてきました。今回だって、きっと……」

 

「……そうね。私もそう思うわ」

 

「えぇ。統夜君は私の教え子で、最高の魔戒騎士だもの」

 

「はい!私も統夜さんのことを信じています!」

 

「私も私も!」

 

梓、和、さわ子、憂、純の5人は統夜のことを信じており、力強い言葉を紡いでいた。

 

そんな力強い言葉に、唯たちは無言でウンウンと頷いていた。

 

「……これはなかなか面白いことになりましたね……」

 

「そうだな、師匠。黄金騎士とその他の騎士との戦いなんてそうそう見れるもんでもないしな。記録でもしとくか?」

 

「やめましょう。この戦いは記録に残すのではなく、僕たちの記憶に残しておきましょう」

 

「……そうだな」

 

アキトはこの戦いを記録しようと思ったのだが、レオの記憶に残そうという言葉に賛同したため、その考えはすぐやめることにした。

 

(……統夜。お前の力、見せてくれ。俺にとって最高のライバルであるお前の力を……!)

 

戒人は、統夜の姿をジッと見ており、最高のライバルである統夜の戦いを見届けることにしていた。

 

(……統夜。鋼牙のやつはどの魔戒騎士よりも手強いぞ。それに、お前があれからどんだけ成長したか、俺も楽しみにしてるぜ!)

 

去年の夏に行われたサバックの決勝戦で統夜と戦った零は、あれからどれだけ統夜が成長したのかを楽しみにしていた。

 

「……これは、凄い勝負になりそうですな、カオル様」

 

「そうだね、ゴンザさん。……雷牙、あなたもしっかり見届けるのよ。この2人の戦いを」

 

「あう」

 

まだ1歳にも満たない鋼牙の息子である雷牙だが、赤ん坊にしては大人しく、しっかりと統夜と鋼牙のことを見ていた。

 

こうして、この場にいた全員が真剣な表情でこれから行なわれる統夜と鋼牙の戦いを見守っていた。

 

(……っ!さすがは黄金騎士牙狼の称号を持つ鋼牙さんだ……。オーラが半端ない……。こりゃ、ホラーがビビるのもわかる気がするよ……)

 

統夜は鋼牙と実践形式でぶつかるのは初めてなのだが、鋼牙の放つオーラに気圧されそうになっていた。

 

《おい、統夜。気合を入れろ!みんなが見守っているんだからな!》

 

(そうだったな。これは魔戒騎士としての卒業式だ……。みんなだけじゃない、これから戦う鋼牙さんに無様な姿は見せられないさ!)

 

統夜はこのような思いを抱いたことにより、自らを奮い立たせていた。

 

統夜と鋼牙は何を語る訳でもなく互いを睨みつけており、静寂がその場を支配していた。

 

しばらくその静寂は続いていたのだが、その静寂を破ったのは、鋼牙だった。

 

「……統夜!来い!」

 

「……っ!行きます!」

 

統夜は魔戒剣を構えると、鋼牙に向かって突撃すると、魔戒剣を一閃した。

 

鋼牙はそんな統夜の一撃を魔戒剣で軽々と受け止めていた。

 

統夜は鋼牙の追撃を受ける前に後方に下がって体勢を立て直そうとするのだが、そんな暇を鋼牙が与える訳もなく、統夜を追撃するのだが、統夜はどうにか鋼牙の攻撃を受け止めていた。

 

鋼牙は魔戒剣を手にしたまま、肘打ちを統夜の鳩尾めがけて放つのだが、その一撃は幸いにも鳩尾から外れていた。

 

しかし、その一撃で統夜は怯むのだが、鋼牙は容赦なく魔戒剣を一閃した。

 

統夜はそんな鋼牙の攻撃をかわし、鋼牙は休む間もなく魔戒剣を一閃した。

 

その攻撃は、後方に大きくジャンプすることで、統夜はどうにかかわすことができた。

 

鋼牙はすかさず統夜を追いかけるようにジャンプすると、統夜目掛けて魔戒剣を一閃し、統夜はその一撃をどうにか魔戒剣で防いでいた。

 

最強の魔戒騎士の名は伊達ではなく、鋼牙の容赦ない攻撃に、統夜は防戦一方だった。

 

そんな中、統夜はどうにか反撃をしようと気合で鋼牙を弾き飛ばし、魔戒剣を一閃するのだが、鋼牙は後方に大きくジャンプすることでその攻撃をかわしていた。

 

(……流石は牙狼の称号を持つ鋼牙さんだ……。全然隙がない……。どうにか食らいつくだけで精一杯だよ)

 

統夜は相手が鋼牙であろうとも臆することなくどうにか食らいついていたのだが、並の魔戒騎士ではそれすら出来ないため、ここでも統夜の成長ぶりが伺えた。

 

(……統夜……。本当に強くなってるな……。グォルブと戦った時以上に……。サバックで零と互角に戦ったのも納得だ)

 

鋼牙はレオの魔導具で統夜のサバックの試合は全て見たのだが、実際に戦ったことにより、統夜の実力を実感していた。

 

(ふっ……。だからこそ、本気を出しても問題なさそうだな……!)

 

統夜の成長を垣間見た鋼牙は、闘争心に火がついたのか、本気を出して統夜にぶつかることにした。

 

「……統夜!来い!!」

 

「もちろんです!鋼牙さん!」

 

統夜は魔戒剣を鋼牙に突きつけると、鋼牙を突き刺しそうな勢いで、飛び出していった。

 

そんな統夜の突きを鋼牙は軽くいなすと、鋼牙はすかさず魔戒剣を一閃し、その攻撃を統夜は魔戒剣で受け止めていた。

 

その後、統夜と鋼牙は互いに激しく魔戒剣を打ち合っていた。

 

「す、凄い……」

 

「鋼牙さん、凄く強いわ……」

 

「そんな鋼牙さんが相手だけど……」

 

「あぁ。統夜は食い付いてるよ」

 

「統夜君も鋼牙さんも強過ぎよ!」

 

「そうですね……」

 

「魔戒騎士って凄い……」

 

「統夜さん!頑張って!!」

 

「統夜先輩!」

 

唯、紬、澪、律、さわ子、和、純、憂、梓の順番で、2人のこれまでの戦いの感想を口々に言っていた。

 

憂と梓は、統夜の応援に熱が入っていたのだが……。

 

そして……。

 

「……へぇ、統夜の奴、なかなかやるじゃん」

 

「えぇ。あの鋼牙さんと互角に戦ってますね……」

 

「統夜のやつ……。少し見ない間にまた強くなってるな……」

 

アキトとレオは、鋼牙と互角に戦う統夜に驚き、統夜のライバルである戒人は、統夜の成長を誰よりも実感していた。

 

「へぇ、どうやら統夜のやつ、俺と戦った時よりも強くなってるな♪」

 

『ゼロ。もしかして、統夜ともう一度戦ってみたいなんて思ってないわよね?』

 

「そんなの、思ってるに決まってんだろ、シルヴァ。あんな戦いを見せ付けられちゃなぁ」

 

『もぉ……。ゼロったら……』

 

魔戒騎士は私闘を禁じられているため、今の鋼牙と統夜の戦いのような大義名分がなければ、番犬所に処罰されてしまう。

 

そうとわかっていても零は統夜ともう一度戦ってみたいと思ったらしく、そんな相棒にシルヴァは呆れていた。

 

「統夜様……。立派になられましたな……」

 

ゴンザは統夜の戦いを見守る機会はなかったものの、鋼牙と互角に戦う統夜を見て、魔戒騎士として一人前になっていると実感していた。

 

「そうだね……。それに、強くなっただけじゃない。男としても一人前の顔をしてるよ。統夜君は」

 

「そうですな!これも軽音部の皆様のおかげですかな?」

 

カオルは魔戒騎士としての実力だけではなく、顔つきも立派になっていると見抜いており、それにゴンザが同意していた。

 

「雷牙!お父さんも統夜君も凄いね!」

 

カオルは抱き抱えている雷牙に同意を求めるように語りかけるのだが、雷牙はジッと2人の戦いを見ていた。

 

その落ち着きぶりは赤ん坊のものとは思えないものであり、カオルはそんな雷牙に驚いていた。

 

そして、剣の打ち合いを行っていた2人であったが、統夜は鋼牙の一瞬の隙をついて、腹部めがけて蹴りを放った。

 

「ぐっ……!」

 

統夜の蹴りはかなり効いているのか、鋼牙の表情が歪むと、そのまま後方へと吹き飛ばされてしまった。

 

統夜は油断することなく、すかさず鋼牙へ向かっていき、追い打ちをかけようとしていた。

 

(ほぉ……!今までの統夜なら、あそこで一瞬気を抜いてただろうが……。あそこですかさず攻撃を仕掛けるとは……。統夜もちょっとは成長したみたいだ)

 

長いこと統夜と一緒にいるイルバは、統夜の未熟な部分を熟知していた。

 

今回のように格上の相手に一矢報いた時に、一瞬気を抜くことで、そこを相手に付け入られてひどくやられるというパターンが、統夜は多かった。

 

しかし、今回の統夜は相手が誰であろうと油断することなく、状況を見極めて戦っていた。

 

イルバは、そんな統夜を見て成長を実感するが、それでも統夜はまだまだ未熟だと感じていたのであった。

 

その証拠に、統夜は油断せずに追い打ちをかけるが、それを決め切ることは出来ず、鋼牙の反撃の蹴りを受けて吹き飛ばされてしまったからである。

 

『おい、鋼牙。あんな蹴りをまともに受けるとは……。油断してたんじゃないのか?』

 

ザルバは、先ほど鋼牙が統夜の蹴りを受けたの見て、あれはかわせると思っていた。

 

そのため、統夜の蹴りをかわせなかった鋼牙にダメ出しをしていた。

 

「……ザルバ、少し黙ってろ。集中出来ない」

 

鋼牙はザルバにダメ出しされたことで眉間にしわを寄せて、少しだけ不機嫌そうにしていた。

 

『おいおい。これは統夜と鋼牙の真剣勝負だぜ?魔導輪が口出しするなよな』

 

2人の戦いに水を差すようなザルバの発言に、イルバは異議を唱えていた。

 

『別に、口出しではなくダメ出しをしただけだぜ?お前さんだって統夜にダメ出ししたくなる場面はあるだろう?』

 

『確かにな。だが、お前さんみたいに勝負の最中に口出しをしたりはしないぜ。流石骨董品の魔導輪はそんなこともわかんないんだな』

 

『言ったな。お前さんだって骨董品だろう。このクソドクロが』

 

『何だと!?やるのか、この骨董品!!』

 

『フン!受けて立つぜ!このクソドクロが!』

 

鋼牙と統夜の戦いの最中に、互いの魔導輪であるザルバとイルバの舌戦が始まろうとしていた。

 

「……イルバ!こっちは真剣勝負してんだから喧嘩するな!」

 

「お前もだ、ザルバ」

 

『『……フン!!』』

 

2人の魔導輪であるザルバとイルバは、その容姿が非常に似ているのだが、互いにそれを認めようとはしない。

 

ザルバとイルバはお互いのことを見下しているからか、会えば喧嘩ばかりしていた。

 

そんな悪い癖がこのようなところでも出てしまい、舌戦が始まる寸前で互いの相棒に叱責されて止められていた。

 

ザルバとイルバはまるで子供のようにそっぽを向いており、その様子を見た唯たちは苦笑いをしていた。

 

「……統夜、すまないな。場を白けさせてしまって」

 

「いえ。こちらも悪いですので、お互い様ですよ、鋼牙さん」

 

「そう言ってもらえると助かる」

 

2人は真剣勝負の最中だったのだが、鋼牙は穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

「……統夜!ここから先は互いに鎧を召還して勝負だ!」

 

「……っ!望むところです!」

 

鋼牙はサバックのルールにはない鎧の召還を提案したのだが、統夜は戸惑いながらもそれを了承していた。

 

勝ち負けはともかく、本気の鋼牙と戦いたいという思いがあったからである。

 

「……俺は本気を出す。お前の本当の強さ……俺に見せてみろ!」

 

「もちろんです!鋼牙さん!あなたに見せつけてやります!この3年間で得た集大成を!!」

 

統夜は鎧を召還することで、高校3年間で得た力を全て鋼牙にぶつけるつもりだった。

 

2人は鋭い目付きで互いを睨みつけると、互いに魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれる光な包まれると、2人はそれぞれの鎧を身に纏った。

 

統夜は白銀の輝きを放つ奏狼の鎧を身に纏い、鋼牙は黄金の輝きを放つ牙狼の鎧を身に纏った。

 

統夜は黄金の輝きを放つ牙狼の鎧を目の前にして、一瞬ではあるがその迫力に慄いてしまった。

 

(……黄金騎士牙狼……。味方だとこの上ないほど頼もしいけど、実際対峙すると凄い迫力だよな……)

 

統夜は何度か鋼牙と共に戦ったことがあるため、その時は頼もしさを感じていたのだが、実際ぶつかるとなると、脅威でしかなかった。

 

(……そんな相手だからこそ、俺の集大成を見せるのには相応しいんだ!)

 

しかし、統夜はそんな牙狼の鎧に臆することはなく、むしろ闘志を燃やしていた。

 

「……来い!統夜!!」

 

「行きますよ!鋼牙さん!」

 

統夜は専用の剣である皇輝剣を構えると、鋼牙めがけて突撃した。

 

しかもそのスピードと勢いは先ほどの統夜を上回っており、これは鎧を召還したからという訳ではなさそうだった。

 

「くっ……!」

 

予想以上に勢いのある統夜の攻撃に、鋼牙は表情を歪めていたが、どうにか牙狼剣で受け止めていた。

 

鋼牙は反撃と言わんばかりに牙狼剣を振るうのだが、統夜はギリギリまで攻撃を引きつけて、鋼牙の一閃をかわしたのであった。

 

「何!?」

 

この一撃がかわされるとは思っていなかった鋼牙は驚きを隠せなかったが、統夜はすかさず皇輝剣を握っていない手を思い切り振り下ろし、鋼牙を殴り飛ばした。

 

鎧を召還してからは、統夜が鋼牙を圧倒しており、その光景に唯たちは驚いていた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

鋼牙を殴り飛ばした統夜であったが、攻撃の手を緩めることはなく、皇輝剣を振り下ろしていた。

 

鋼牙は負けじと牙狼剣で統夜の攻撃を防ぐと、反撃と言わんばかりに牙狼剣を一閃した。

 

今度は統夜が皇輝剣で鋼牙の攻撃を防ぐと、2人は再び激しい剣の打ち合いをしていた。

 

(……これが、統夜の本気か……。フッ、ここまで心が踊るのは、零や翼との戦い以来だな……)

 

この戦いは統夜の成長を確かめるための戦いであったが、鋼牙はそんな戦いを楽しんでいた。

 

魔戒騎士最強である牙狼と互角に渡り合えるのは銀牙騎士絶狼こと涼邑零や、白夜騎士打無こと山刀翼くらいであった。

 

統夜はこの高校3年間で、そんな2人と遜色ないほどの力を身につけており、統夜の成長を垣間見た鋼牙は、笑みを浮かべていた。

 

そして、鋼牙は剣を打ち合いながらこのようなことを考えていた。

 

この時間が出来る限り続いて欲しいと。

 

それは鋼牙だけではなく、統夜も同じ気持ちであった。

 

(……本当に鋼牙さんは強いな……。それにしても、黄金騎士である鋼牙さん相手にここまで戦えるとはな……)

 

統夜は自分が最強の魔戒騎士である鋼牙と互角に戦えていることに驚きを隠せなかった。

 

いや、“互角”と言ってしまうのはおこがましい。

 

そんな考えが頭をよぎってしまった統夜は苦笑いをしていた。

 

(……鋼牙さん相手にこんなこと思うのは失礼かもしれないけど、この戦いは、凄く楽しい……!ここまで心が踊ったのは零さんや翼さん。それに、戒人と戦った時以来だよ……)

 

統夜もまた、零や翼だけではなく、ライバルである戒人との戦いを思い出し、笑みを浮かべていた。

 

そして、統夜もまた、この戦いが出来る限り続いてほしいと願っていた。

 

そんな2人を現実に引き戻すかのよう、ガキン!ガキン!と牙狼剣と皇輝剣が響き合う音が聞こえていた。

 

「……」

 

そんな中、統夜のライバルである戒人は、2人の戦いに魅入られていた。

 

「……どうした?戒人」

 

「いや。統夜のやつ、凄いなって思ってな……」

 

「……そうだよな……。鋼牙さん相手にここまでやるとは予想外だぜ」

 

戒人だけではなく、アキトもまた、統夜の予想外の奮闘に驚きを隠せなかった。

 

「……俺も負けてられないな……」

 

戒人はこう呟くと、両手の拳を力強く握りしめており、闘志を燃やしていたのであった。

 

統夜と鋼牙の戦いを見て、闘志を燃やしていたのは、戒人だけではなかった。

 

「……まさか統夜のやつ、ここまでやるとはな……。あんな戦いを見せつけられちゃ、体が疼いて仕方ないぜ」

 

零の場合は、戒人のようにあからさまに闘志を燃やしているわけではないのだが、心の中で闘志を燃やしていた。

 

「それに、この戦いを翼が見たらなんて言うか……」

 

『そうね。翼のことだから、戦いが終わってすぐに俺と戦えって言いかねないわね』

 

シルヴァは、翼の性格もよく理解しており、翼がいたならこのような行動をするだろうと予想して、苦笑いをしていた。

 

そんな中、鋼牙と統夜は渾身の力を込めて互いの剣を振るうのだが、その勢いで、2人は互いに吹き飛ばされてしまったのだが、すぐ体勢を立て直した。

 

そして、鎧の制限時間はあと40秒となろうとしていた。

 

「……統夜!次の一撃で決着をつけるぞ!!」

 

鋼牙はこう宣言をすると、魔導ライターを取り出し、牙狼剣の切っ先に緑の魔導火を纏わせることで、烈火炎装の状態となった。

 

「望むところです!」

 

統夜はその提案に応じると、同じく魔導ライターを取り出し、皇輝剣の切っ先に赤い魔導火を纏わせることで、烈火炎装の状態となった。

 

2人が烈火炎装の状態になると、鎧の制限時間が残り30秒になろうとしており、2人は間を置かずに互いに向かって突撃していた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

鋼牙と統夜はまるで獣のように吠えると、互いに激突し、牙狼剣と皇輝剣の鍔迫り合いが行われていた。

 

「うぅ……くっ……!」

 

「ぐぅぅ……!」

 

2人は互いに一歩も引かず、2人の力は拮抗していた。

 

「負けて……たまるかぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

統夜は再び獣のように雄叫びをあげると、かなりの力で鋼牙を押していた。

 

しかし、そんな統夜の剣は力任せであり、鋼牙は本気を出しているものの、心の余裕はあるのであった。

 

鋼牙は力任せになっている統夜の一瞬の隙を突くと、あえて牙狼剣の力を抜き、統夜の攻撃を受け流していた。

 

「……なっ!?嘘だろ!?」

 

鋼牙の機転によって攻撃を受け流された統夜はそのままバランスを崩してしまった。

 

どうにか反撃しようとするものの、それが上手くいかず、統夜は隙だらけになってしまった。

 

「そこだぁぁぁぁぁ!!」

 

鋼牙はここで来た最大限のチャンスを活かすために全力で牙狼剣を振り下ろした。

 

統夜はどうにか体勢を立て直し、皇輝剣で攻撃を受け止めるのだが、鋼牙は全身の力を込めて牙狼剣を振り下ろし、統夜を吹き飛ばした。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!!」

 

その時の衝撃はかなりのものであり、統夜は吹き飛ばされた後、偶然にも唯たちの近くで倒れ込むと、そのまま鎧の召還が解除されてしまった。

 

鋼牙も鎧の制限時間があと僅かだったため、鎧を解除して、統夜に追い打ちをかけることはせずその場で静観していた。

 

その理由とは……。

 

「うっ……くっ……」

 

「と、統夜先輩!大丈夫ですか?」

戦いの一部始終を見ていた梓は、不安そうな表情で統夜に声をかけていた。

 

「あ、あぁ……。なんとかな……」

 

統夜はゆっくりと立ち上がるのだが、統夜の右手には微かではあるが、鮮血が溢れ落ちていた。

 

「……!」

 

痛いのと怖いのが苦手である澪は、統夜の鮮血を見てビクンと肩をすくめるが、すぐに持ち直していた。

 

「……おぉ!澪のやつ成長したな……」

 

血を見ても前のように顔を真っ青にして怯えたりしていない澪を見て、律は澪の成長を実感して感心していた。

 

「……統夜。勝負あったな」

 

今回の対決は鋼牙に軍配が上がり、鋼牙は魔戒剣を赤い鞘に納めていた。

 

統夜は吹き飛ばされた衝撃で魔戒剣を落としてしまったのだが、その魔戒剣を拾うと、青い鞘に納めていた。

 

「……さすがは鋼牙さんです。俺なんかが勝てる訳はないや……」

 

統夜はこのように自分を卑下する言い方をしていたのだが、内心はあと一歩のところまで追い詰めたという満足感と負けたことに対する悔しさに満ちていた。

 

「統夜。そこまで自分を卑下する必要はないぞ。……いい勝負をさせてもらった。感謝している」

 

鋼牙は統夜の力を確かめるためにこの勝負を持ちかけたのだが、統夜の予想以上の奮闘に鋼牙は本気を出していたのだが、戦いを楽しんでもいたのである。

 

「こちらこそ、感謝しています。俺の力を図る戦いではありましたが、凄く勉強になりました」

 

最強の魔戒騎士である鋼牙と戦った。

 

このことだけでも、統夜にとってはかけがえのない財産となり、統夜をまた1つ成長させたのであった。

 

「統夜……。強くなったな……」

 

「!!」

 

統夜は、鋼牙が言ってくれた言葉に過剰に反応していた。

 

かつて唯たちがさらわれ、統夜は怒りで我を忘れた結果、心滅となってしまった。

 

結果的には鋼牙や零に救われたのだが、その時、鋼牙から言われた「強くなれ」という言葉は、統夜の胸に深く残っていた。

 

そんな鋼牙から「強くなったな」と言ってもらい、統夜は感無量であった。

 

鋼牙の言葉に統夜は泣きそうになったのだが、グッと涙をこらえていた。

 

そして……。

 

「……はい!俺もそう思います!それに、俺がここまで強くなれたのは、軽音部のみんながいてくれたからなんです!」

 

この言葉は、統夜が心から思っていることであり、それを聞いた唯たちの表情がぱぁっと明るくなっていた。

 

「……統夜。お前はこれから普通の魔戒騎士として、今まで以上にホラーと戦っていくことになる。今まで以上の困難がお前を待ち受けてることだろう」

 

「……」

 

統夜は真剣な表情で、鋼牙の話をジッと聞いていた。

 

「だが、お前には守るべき大切な存在がこれだけたくさんいる。守りし者として、そこは深く胸に刻みつけろ」

 

「……はい!」

 

「そして、どんな困難が待ち受けようと、振り返らず走れ!」

 

「ありがとうございます!鋼牙さんの言葉は深く胸に刻みつけます!そして、これからもたくさんの人を守るために精進します!……守りし者として……」

 

統夜は鋼牙からのありがたい言葉を聞くと、自らの決意を鋼牙に打ち明けていた。

 

「そうか……。頑張れよ、統夜!」

 

「はい!」

 

こうして、統夜の魔戒騎士としての卒業式は幕を閉じたのであった。

 

その後、統夜は出血部分を梓に応急処置してもらい、それが終わると唯たちお共に紬の執事の運転するリムジンに乗り込み、桜ヶ丘へと帰っていった。

 

その帰り道は、先ほどの鋼牙との戦いの話で持ちきりであり、唯たちは鋼牙と互角に戦った統夜に驚いていたということを本人に明かしていた。

 

統夜は、互角なんて言うのはおこがましい。俺はまだまだと少し照れながら答えていた。

 

こうして桜ヶ丘に着くまではその話で盛り上がり、桜ヶ丘高校の前に到着すると、統夜たちはそこで解散した。

 

明日からは高校へと行くことはなく、普通の魔戒騎士として生活していく。

 

そのことに少しだけ不安になる統夜であったのだが、高校3年間で得た経験が、統夜の糧になると信じていたため、その不安は取り除かれた。

 

高校を卒業したとしても、統夜の守りし者としての戦いが終わりを告げたわけではない。

 

むしろ、これからが始まりなのである。

 

そんな魔戒騎士としての生活を想像し、決意を新たにした統夜は、イレスに今日のことを伝えるべく番犬所へと向かっていったのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

……卒業!金色の試練編・終

 

 

 

……エピローグに続く。

 

 

 




最終回(これで終わりとは言っていない)。こんな展開になってしまいました(笑)

それにしても、今回の鋼牙との戦いは、統夜の成長を垣間見ることが出来ましたね。

鎧を召還した後、一時的に本気の鋼牙を追い詰めましたからね。

本当はあのまま統夜に勝たせてあげたいと思いましたが、ここで鋼牙が負けたら牙狼のメンツは丸潰れかなと思いまして。

後、この小説の主人公は統夜ですが、牙狼の主人公は鋼牙だぞと言わしめるために、あえて統夜を負かしました。

そして、次回のエピローグで本当に終わりとなります。

エピローグでは、卒業式の後日談が語られますので、エピローグもお楽しみに!


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