牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第118話になります!

前回で卒業式も終わり、この小説の終わりも近付いてきました。

そういえば、FF14でようやく牙狼装備が実装されましたね!

とは言っても牙狼装備を使えるレベルには達していないから、早くそこまで進めていきたいな……。

さて、今回は前回の続きになります。

梓に贈る曲とは、どのようなものになるのか?

それでは、第118話をどうぞ!




第118話 「天使」

この日は卒業式であり、その卒業式も無事に終えることが出来た。

 

さわ子へ贈る寄せ書きが書かれた色紙を律が持ってきてしまい、それを唯が式の間守っていたことから、それをさわ子が気にするというアクシデントはあったものの、どうにかごまかし切ることに成功した。

 

教室に戻り、卒業証書を受け取り、さわ子にサプライズで寄せ書きを贈り、高校生活最後のホームルームは終わりを告げた。

 

その後はクラスメイトたちと写真撮影を行っていた統夜たちであったが、それが終わると音楽準備室に向かっていった。

 

そして、統夜たちは音楽準備室の前に到着したのだが、真っ直ぐ音楽準備室に立ち寄ることはせず、扉が開いていた屋上へとフラッと入っていった。

 

しかし、唯だけは和を引き止めて話をしていたため少し遅れて部室に続く階段を上がっていた。

 

統夜たちの姿がなかったため、唯はキョロキョロと周囲を見回していたのだが……。

 

「……唯!開いてたぞ!」

 

屋上の入り口にいた律は、唯のことを呼んでいた。

 

律に導かれた唯は屋上に入ると、ギターなどの荷物を入り口近くの壁に置いていた。

 

すると……。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

唯は何故か叫びながら屋上を走り始めていた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

律、紬、澪の順番で唯のように叫んで屋上を走っていた。

 

「やれやれ……」

 

統夜はその様子を苦笑いしながら見守っていたのだが、統夜は叫ばずに同じように屋上を走っていた。

 

屋上の端っこまで走った統夜たちは息を切らせながら肩を組んで、円陣を組んでいた。

 

……統夜だけは息を切らしてはいないのだが……。

 

「……ねぇ、りっちゃん。上手く演奏出来るかな?私、今までで1番緊張しているよぉ」

 

この後、統夜たちは梓に贈る曲を梓のために演奏することになっていた。

 

そのため、その演奏が上手くいくかどうか、唯は不安になっていた。

 

「私も……。凄く手が冷たいのぉ!」

 

普段は手が暖かい紬であったが、梓に贈る曲を演奏する前に緊張してしまったのか、手が冷たくなっていた。

 

唯たちは1度円陣を解除して、紬の手を触り、本当かどうか確認していた。

 

「……本当だ」

 

澪は紬の手を触るのだが、本当に冷たく、緊張感が伝わっていた。

 

「緊張……するよな!」

 

「やばぁい!!」

 

どうやら律も緊張しているようであり、再び円陣を組むと、ギュッと抱きしめるかのように力を入れていた。

 

「やっぱりやめる?」

 

「ダメだ!」

 

「梓ちゃん、喜ぶかしら?」

 

「喜ぶに決まってる!!」

 

律は力強く言っているのだが、自らを奮い立たせ、自らに言い聞かせているようであった。

 

「良かった。みんなドキドキしてたんだねぇ♪」

 

「当たり前だ!」

 

「だけど……統夜は緊張してなさそうだな……」

 

唯たちが緊張する中、統夜はいつも通りであり、そのことが澪は気になっていた。

 

「俺だって緊張してるさ。だけど、俺は梓が喜んでくれるって信じているからな」

 

統夜も内心はドキドキしていたのだが、それを表に出してはいなかった。

 

何故なら、梓がこの演奏を聴いて嫌がるような娘ではないと確信していたからである。

 

『統夜の言う通りだぜ。お前らにとっても大事な後輩だろ?だったらその大事な後輩を信じたらどうなんだ?』

 

「イルバ……」

 

「イルイル……」

 

『唯。お前ってやつは……。ま、まぁ!今だけは許してやろう』

 

イルバは再び唯が変なあだ名で呼ぶことを追求したかったのだが、唯たちを元気付けるためにあえて追求はしなかった。

 

統夜たちがお互いに緊張していたその時だった。

 

一陣の風が吹くと、1羽の鳥が上空を羽ばたき、飛行機雲に重なっていた。

 

統夜たちは円陣を解除すると、その鳥をジックリと眺めていた。

 

そして、同じ頃、梓もまた同じ景色を見ていたことを、統夜たちは知る由もなかった。

 

飛行機雲に重なった鳥が飛び去るのを眺めていた統夜たちは、そのままその場に座り込んでいた。

 

「……ねぇ、私が初めてりっちゃんたちの演奏を聴いたのは、「翼をください」だったよねぇ?」

 

「そうだな。改めて振り返ってみれば本当にメチャクチャな演奏だったけどな……」

 

統夜は苦笑いしながら当時のことを振り返っていた。

 

軽音部は律と澪から始まり、紬が入部してきた。

 

そして、統夜は偶然音楽準備室の近くでイルバと話しているところを律に目撃され、入部希望者と勘違いされたところから半ば強引に軽音部に入ることになったのであった。

 

そして、唯が入部希望として来たのだが、唯は軽音を文字通りの軽い音楽と勘違いをしており、ギターをやるつもりはなかった。

 

しかし、その時初めて統夜たちの演奏する「翼をください」を聴き、楽しげに演奏する統夜たちに惹かれて軽音部入部を決意したのであった。

 

「それで5人で軽音部が始まって……」

 

「あずにゃんが入って、凄くパワーアップしたわよね♪」

 

紬と唯もまた、軽音部として歩んできたことを振り返っていた。

 

「統夜のギターに梓のギターが合わさると、より一層曲が締まるんだよな♪」

 

「唯のは力技だからな」

 

「「お前が言うな」」

 

律もまた、どちらかというとパワフルな演奏をしているため、澪と統夜からツッコミを受けていた。

 

「それに、梓ちゃんは技のギターって感じで、統夜君は力と技が合わさったって感じよね♪」

 

「……なんかどっかで聞いたフレーズだけど……。まぁ、いいだろう」

 

統夜は紬の例えに聞き覚えがあったのか、苦笑いをしていた。

 

「私たちに翼をくれたのはあずにゃんなんだよね!」

 

唯のこの言葉を聞いた統夜、律、澪、紬の4人は無言のままウンウンと頷いていた。

 

「あずにゃんは、私たちを幸せにしてくれた、ちっちゃくて可愛い「天使」なんだよ」

 

「天使って……」

 

「確かにそうかもしれないな……」

 

唯の言っている「天使」というのは、少しばかり大げさかもしれないが、律と澪はその通りだと思っていた。

 

『やれやれ……。お前さんはよくそんな恥ずかしいセリフをスラスラ言えるよな』

 

「そう言うなって。俺だって唯の言葉はその通りだと思うぞ」

 

「うんうん♪統夜君にとって梓ちゃんは正真正銘の天使だものね♪」

 

「……////」

 

梓と付き合っている統夜にとっては、梓は正真正銘の天使であった。

 

紬に的の得たことを言われてしまった統夜は恥ずかしさから頬を赤らめていた。

 

「……ね、ねぇ!みんな!」

 

「「「「ん?」」」」

 

唯は何かを思いついたようであり、統夜たちは一斉に唯の方を見ていた。

 

そして唯は深呼吸をすると……。

 

「♪で〜もね、会え〜たよ。すて〜きな、“天使”に〜」

 

「わぁ♪」

 

「なるほどな……」

 

「ねぇねぇ、どうかな?」

 

「凄くステキだわ!」

 

「天使って……。ちょっと恥ずかしくないか?」

 

「いや、凄くいいと思う!」

 

「あぁ!俺もその部分をどうするか悩んでたけど、今のが1番しっくりきたぞ!」

 

統夜たちは様々な反応を見せていたのだが、どれも前向きな反応であった。

 

律も恥ずかしがってはいたものの、内心は悪くないと思っていた。

 

「この曲もあずにゃんの羽になるかな?」

 

「なる!……と思いたい」

 

「いや、絶対になるさ」

 

「統夜君の言う通りよ!だって、たくさん詰め込んだもの!梓ちゃんへの気持ちをいーーーっぱい!!」

 

「気に入ってくれるといいな」

 

統夜と紬は、この曲が梓の羽になるということを確信していた。

 

『気に入るさ。俺様もそう信じているぜ』

 

イルバもまた、統夜と同じ気持ちだったからか、簡潔でありながら力強い言葉を送っていた。

 

「……お茶にしよっか♪」

 

「……そうだな」

 

「うん!」

 

こうして統夜たちは屋上を後にすると、音楽準備室へと向かった。

 

音楽準備室に到着した統夜たちは長椅子に鞄を置き、統夜、唯、澪の3人はそれぞれの楽器ケースを壁に立てかけていた。

 

その間、紬はティータイムの準備を行っていた。

 

「紅白饅頭食べたい♪」

 

卒業式の時に卒業生全員に紅白饅頭が当たったため、唯はそれを食べようとしていた。

 

「あっ、でもあずにゃんの分も取っておかないとね」

 

紅白饅頭は卒業生の分だけで、在校生である梓には当たらないため、唯は梓の分もとっておこうとしていた。

 

こうして、唯は紅白饅頭を取り出そうとするのだが……。

 

「な、なぁ……。梓にどうやって話を切り出そう?」

 

澪が1番重要となる話を切り出した。

 

「う〜ん……。そうだなぁ……。ここは部長のあたしが……「梓、聞いてほしい曲があるんだ」。と切り出してだな……」

 

律は軽音部の部長であるため、話を切り出すのは自分がやりたいと考えていた。

 

「その後はムギだな。「梓ちゃんのために作ったのぉ♪」って感じでな」

 

『おいおい。紬の真似をするならもっとクオリティを高くしたらどうだ?』

 

「むぅ……うるせぇよ!イルバ!」

 

渾身のモノマネをイルバにダメ出しされてしまい、律はぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「わ、私、上手く言えるかなぁ」

 

紬は重要な役を与えられ、少しだけ不安そうにしていた。

 

「笑ったりしたらダメだよ、ムギちゃん」

 

「あ、でも待って。こういう話をしてる時っていつも……」

 

澪はこういう話をした直後に梓がやってきていたことを思い出していたのだが、その予感が見事に的中し、ガチャっと扉が開く音が聞こえてきて、梓が中に入ってきた。

 

「おぉ、梓」

 

「待ってたぜ、梓」

 

「あっ、すいません。今日くらいは私がお茶を淹れようと思ったんですけど……」

 

「ダメよぉ〜」

 

梓はこの部室で統夜たちとお茶をするのが最後のため、自分がお茶を淹れようと考えていたのだが、自分の仕事を取られたくない紬はそれを拒否していた。

 

「なぁ、梓。これからの軽音部のことなんだけど……」

 

梓へ贈る曲の前に、大きな問題であるこれからの軽音部についての話を律が切り出していた。

 

統夜たちが卒業してしまうため、4月からは軽音部は梓1人になってしまう。

 

あと部員を4人集めなければ、軽音部は廃部になってしまうのである。

 

そんな不安はあったのだが……。

 

「大丈夫です!」

 

と梓は力強く答えていた。

 

「いや、でも……」

 

梓の根拠のない力強い発言に澪は不安になるのだが……。

 

「大丈夫です!新入部員をいっぱい入れて、絶対廃部にはさせません!!」

 

梓にとっても軽音部はかけがえのない存在であるため、廃部だけにはさせるつもりはなかった。

 

「まぁ、俺は桜ヶ丘に残るから何かあったら相談しな。力になるぜ」

 

「はい!!」

 

統夜は卒業しても、魔戒騎士としてこの地に残るつもりなので、これからも何かあれば梓に協力するつもりだった。

 

「あっ、あと……。先輩たちには本当に感謝してまして、手紙を書いてまして、さっきまで書いていたんですけど……」

 

梓が部室に来るのが遅れたのは、統夜たちへの手紙をしたためていたからである。

 

それも1人1人に書いていたため、時間がかかっていたのである。

 

梓は手紙を統夜たちに手渡していた。

 

「……ねぇ、あずにゃん!今読んでもいい?」

 

「は、はい!」

 

この場で手紙を読まれるのは少しばかり気恥ずかしいと思っていたのだが、感謝の気持ちを知ってもらいたいと思い、それを了承した。

 

統夜たちは梓からもらった手紙を開いて読み始めるのだが、それを読んでいるうちに統夜たちの表情が明るくなっていた。

 

梓が統夜に当てた手紙は1番長く、統夜への感謝と、恋人としての言葉。さらには魔戒騎士である統夜に対して無茶はしないようにと警告する言葉などが綴られていた。

 

そんな梓の手紙を読んだ統夜は少しばかり気恥ずかしくなったが、梓の気持ちの込もった手紙を読み、穏やかな表情で笑みを浮かべていた。

 

「あっ、先輩方。ご卒業おめでとうござい……」

 

梓は長椅子に移動して、卒業おめでとうと言おうとしたのだが、長椅子に鞄を置こうとしたら筒に入った卒業証書が目に入り、口をつぐんでいた。

 

「?どうしたの?」

 

「……梓?」

 

梓は学生鞄を長椅子に置いたのだが、それから顔を伏せ、視線を統夜たちからそらしていた。

 

「……卒業しないで下さい……」

 

梓は弱々しい口調で呟くように言っていたのだが、それはハッキリと統夜たちに聞こえていた。

 

「もう、部室片付けなくても……お茶ばかり飲んでても叱らないから……」

 

こう言葉を紡ぎながらゆっくりと統夜たちの方を向くのだが、その目には、涙がいっぱいたまっていた。

 

「卒業……しないでよ……!」

 

梓はまだまだ統夜たちと一緒にいたい。そんな思いが強かったことから、珍しくワガママを言っていた。

 

「うわぁぁぁぁん!!」

 

自分の思いの丈をぶつけた梓は、その場でしゃがみ込み、泣き出してしまった。

 

「あ、あずにゃん!」

 

「梓……」

 

「す、すみません……」

 

統夜たちは席を立つと、梓のもとへと駆け寄っていた。

 

すると……。

 

「オデコ……どうしたの?」

 

梓の額に貼られた絆創膏が剥がれており、ぶつけた部分が露出していた。

 

「ケガ……したのか?」

 

「は、はい……。グスッ……卒業なのに……ヒック……お祝いなのに……」

 

「私、絆創膏持ってるよ!」

 

唯は学生鞄の中から手帳を取り出すと、その中に挟まっている絆創膏を取り出すと、それを梓の額に貼っていた。

 

「……はい。これで大丈夫だよ」

 

「梓、大丈夫か?」

 

「はい……。すいません……。泣かないつもりだったのに……。笑って見送ろうと……」

 

梓は卒業式というイベントのため、どれだけ悲しくても笑って見送ろうと思っていた。

 

しかし、気持ちが爆発してしまい、涙を堪えることが出来なかった。

 

「うん」

 

「気にするなよ、梓。泣きたい時は思い切り泣いてもいいんだぜ」

 

唯は穏やかな表情で相槌を打ち、統夜は優しい表情で梓をなだめていた。

 

「私……大丈夫です。ちゃんと軽音部を続けて……あの、トンちゃんもいますし……」

 

梓は涙を堪えていたのだが、目には涙がいっぱい溜まっていた。

 

それが梓の強がりだと言うのは明らかであり、統夜たちはそんな梓をどう元気付けるべきか考えていた。

 

そんな中、唯は手帳に挟まっているとある写真を見つけた。

 

「……あずにゃん、これをあげよう」

 

そう言って唯が梓に渡した写真は、軽音部が5人揃った時に撮られた写真であり、その写真の端っこには小さく梓の写真が貼られていた。

 

「私たちが1年生の時の写真だよ!今のあずにゃんよりも若いよ!」

 

梓は軽音部の始まりとなった写真を受け取ると、目をウルウルとさせていた。

 

「これもあげよう」

 

唯が続けて梓に渡したのは、1枚の花びらだった。

 

「花びら5枚。私たちみたいだね、あずにゃん♪」

 

「おい、唯。ちょっと待て!」

 

『統夜の言う通りだぜ!5枚だったら1人足りなくないか?』

 

統夜たち軽音部は6人であるため、花びら5枚であるならば、1人足りないのではないかと統夜とイルバは追求していた。

 

「だって、やーくんとあずにゃんは2人で1つなんだもん!」

 

「そ、そうか……////」

 

『やれやれ……。唯、お前さんはそんな台詞を恥ずかしげもなく言えるよな……』

 

唯のストレートな言葉に統夜は頬を赤らめ、イルバは少しばかり呆れていた。

 

「なーに、格好いいことやってんだよ、唯」

 

「そうよ!唯ちゃんばかりずるい!」

 

唯が立て続けに梓へ贈り物をしていることが気に入らなかったのか、律と紬が異議を唱えていた。

 

「梓……。聞いてほしい曲があるんだ」

 

「あー!!澪まで!」

 

「梓のために作った曲なんだぜ」

 

「統夜君!それは私が言うはずの台詞だったのに!」

 

梓に贈る曲について話を切り出すのは律と紬の予定だったが、澪と統夜で話してしまい、出番を奪われた律と紬はぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「ふふふ……」

 

統夜たちのグダグダなやり取りに、梓は目には涙を溜めながらも笑みを浮かべていた。

 

そんな中、唯は梓に手を差し伸べていた。

 

「……あずにゃん。こっちにおいで」

 

「……」

 

梓はゆっくりと唯の手を取ると立ち上がり、唯は梓を長椅子までエスコートしていた。

 

梓が長椅子に座ると、統夜たちはそれぞれの楽器の準備を始めていた。

 

梓は、統夜たちが楽器の準備を行っているのをジックリと眺めていた。

 

数分ほど準備を行うと、チューニング等もバッチリ終わり、統夜たちはみんなの顔を見合わせていた。

 

全員の準備が終わっていることを確認した律はスティックで合図を出し、その合図をもとに統夜たちは曲を奏で始めた。

 

 

 

 

 

〜使用曲→天使にふれたよ〜

 

 

 

 

 

現在統夜たちが奏でているこの曲こそ、梓のために作った曲である。

 

この曲は紬が作曲を担当し、詩は5人で話し合って完成させたものである。

 

この曲は梓へ贈る曲であるため、終始唯のボーカルではなく、5人がそれぞれソロを担当しているのである。

 

最初に歌い始めたのは澪であり、澪がワンフレーズを担当していた。

 

最初は唯から行くと思っていた梓は驚きながら澪の方を見ていた。

 

「……そっか……」

 

梓はこの曲を聴いた瞬間、今までの統夜たちの不可解な行動の理由がわかり、納得していた。

 

自分へのサプライズのために、コソコソしながらこの曲を用意してくれたのだと。

 

そして、続いてのフレーズを担当するのは統夜であり、梓は驚きながら統夜の方を見ていた。

 

統夜は穏やかな表情で笑みを浮かべながらギターを奏で、歌を歌っていた。

 

統夜の次にボーカルを任されたのは律であった。

 

まさか、ドラム担当の律が歌うとは思わなかったのか、梓は再び驚きながら律のことを見ていた。

 

そして続いてボーカルを任されたのは紬であり、紬は朗らかな表情で伸び伸びと歌を歌っていた。

 

そして、この曲はサビに突入するのだが、サビの部分は唯がメインボーカルを務め、他のメンバーはコーラスとして参加していた。

 

『♪で〜もね、会え〜たよ。素敵な、天使に。卒業は、終わりじゃない。これ〜から〜も、仲間だから!』

 

唯は仲間だからという部分を強調していた。

 

これこそが、統夜たちが梓に伝えたかったことである。

 

卒業することによって離れ離れになってしまうが、統夜たちはいつまでもかけがえのない仲間である。

 

そんな統夜たちの気持ちが伝わったのか、梓は涙を堪えることが出来ず、瞳からポロポロと涙が溢れ落ち、その涙は唯からもらった写真に数滴落ちていた。

 

統夜たちは最初から最後まで梓への思いを曲に乗せて、演奏しきった。

 

演奏が終わると、梓はパチパチパチと拍手をしながら立ち上がった。

 

統夜たちは梓へ贈る曲を最後までやり切った達成感を感じているのか、互いに顔を見合わせて笑みを浮かべていた。

 

そして、梓が感想を口にするのだが……。

 

「……あんまり上手くないですね!」

 

「「「「「え!?」」」」」

 

『やれやれ……。それは唯が統夜たちの曲を初めて聴いた時と同じ感想じゃないか……』

 

梓の思いがけない感想に、統夜たちは素っ頓狂な声をあげていた。

 

さらにイルバの言う通り、「あんまり上手くないですね」という台詞は、唯が初めて統夜たちの「翼をください」を聴いた時に言った感想と同じであり、当時のことを思い出して呆れていた。

 

「だけど……。もっともっと聴きたいです!アンコール!!」

 

この「あんまり上手くない」という言葉は、普通に解釈すれば酷評なのだが、梓にとっては最高の褒め言葉を送ったつもりであった。

 

「それじゃあ、今度は、あずにゃんも一緒に!」

 

「はい!!」

 

アンコールは梓も一緒に演奏することになり、梓はギターの準備を始めていた。

 

梓の準備が終わるタイミングで音楽準備室のドアが開くと、さわ子と和が中に入ってきた。

 

「あっ、私たちの曲、聴いてくれる?」

 

唯のこの問いかけに、さわ子と和は無言で頷いていた。

 

統夜たちの表情が明るくなると、互いに顔を見合わせていた。

 

そして律がスティックを叩いて合図を取ると、統夜たちにとっては始まりの曲である「ふわふわ時間」を奏で始めた。

 

この時、統夜たち6人の心は1つになっており、いつも以上にクオリティの高い仕上がりとなっていた。

 

統夜たちは心の底から音楽を楽しみ、このふわふわ時間が終了すると、撤収作業を行い、学校を後にするのであった。

 

こうして、統夜たちの卒業式は幕を閉じたのだが、統夜にとっての「真の卒業式」は、これから始まるのであった……。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『とうとう奏狼もここまで来たか。白銀騎士と共に綴った数々の熱きドラマ。お前らも十分、胸に刻んだろう?次回、「未来」。別れってやつは次の旅への扉なんだぜ!』

 




無事に梓に曲を贈ることが出来て、卒業式も終わってしまいました。

それにしても、ムギが統夜のギターは力と技が合わさってるって言ってましたが、それはいったい何スリャーなんでしょうね(すっとぼけ)

けいおん!本編の話はここで終わってしまいましたが、これで終わりではありません。

そう、この章のタイトルにもあるように、金色の試練が残されています。

その金色の試練とはいったい、どのようなことが行われるのか?

そして、次回はいよいよこの「牙狼×けいおん 白銀の刃」も最終回となります。

僕も次で終わるといった寂しさはありますが、最後まで駆け抜けていきたいと思っています。

それでは、最終回をお楽しみに!


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