牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

13 / 137
この小説も早いもので13話に突入しました。

ここまでが前半という形で、次の14話からは少しずつ話を進めていく予定です。

今回は予告通り戦闘はありません。

そして統夜の意外な真実が明らかになります。

それでは第13話をお楽しみください!




第13話 「屋敷」

御月カオルが桜ヶ丘で個展を開いていたので統夜たちはそれの見学に訪れていた。

 

個展が終わり、統夜たちはカオルたちと共に個展の片付けを手伝った。

 

それも終わり、帰ろうとしたその時、ホラーペインティが現れた。

 

統夜はホラーペインティに立ち向かうが、その途中、黄金騎士牙狼の称号を持つ冴島鋼牙が戦いに乱入してきた。

 

鋼牙の実力を知っている統夜はホラーを鋼牙に任せ、鋼牙はその圧倒的力でホラーペインティを討滅した。

 

その後、鋼牙はその場から立ち去り、統夜たちはカオルの奢りで夕食を取った。

 

食事の席では桜高のことや軽音部のことを話しており、魔戒騎士に関する話は出来なかった。

 

その翌日の放課後、統夜たちはいつものようにティータイムを行っていた。

 

「……なぁ、みんな。今度の日曜日、鋼牙さんの屋敷に一緒に遊びにいかないか?」

 

統夜の唐突な申し出に唯たちの視線が統夜に集中した。

 

「鋼牙さんの?」

 

「あぁ。昨日鋼牙さんも言ってただろ?」

 

「そういえばたまには遊びに来いって言ってましたよね」

 

「昨日カオルさんも遊びに来てねって言ってたわね」

 

カオルは統夜たちと食事をしている時にもぜひ遊びに来てと言っていた。

 

「なぁ、統夜。カオルさんってもしかして鋼牙さんの家に住んでるってことなのか?」

 

「あぁ。カオルさんは鋼牙さんの家に住んでるよ」

 

「そ、それって……。同棲……ですか?」

 

梓は顔を真っ赤にしながら統夜に質問していた。

 

「同棲っていうかあの2人は確か結婚してるハズだぞ」

 

「「「「「そうなの!!?」」」」」

 

「なんでそこまで驚くんだよ……」

 

統夜は大げさに驚く唯たちに呆れていた。

 

統夜の言う通り鋼牙とカオルはすでに結婚していた。

 

しかし、結婚したのは割と最近である。

 

「ねぇ、やーくん。カオルさんってホラーや魔戒騎士のことを知ってるみたいだけど、関係者じゃないよねぇ?」

 

「あぁ。カオルさんは鋼牙さんと出会ってホラーと魔戒騎士の戦いに巻き込まれたんだよ」

 

「私たちみたいに……ってことだよな?」

 

澪の問いに統夜は無言で頷いた。

 

「だけど、カオルさんの場合、みんなより状況は最悪だったんだぞ」

 

「なぁ、統夜。それってどういうことなんだ?」

 

「カオルさんはホラーとの戦いでホラーの返り血を浴びてしまったんだ」

 

「それを浴びてしまったらどうなるの?」

 

「えっと。それはな……」

 

『ホラーの血に染まりし者はホラーにとって格別な餌になってしまう。それ故にホラーの血を浴びた者は問答無用で切り捨てなければならない。魔戒騎士の掟だ』

 

「「「「「!!」」」」」

 

衝撃の事実に唯たちは驚きを隠せなかった。

 

「ホラーの血を浴びた者を斬らなきゃいけないのはそれだけが理由じゃない。ホラーの返り血を浴びた者は100日後に死を迎える。それも地獄のような苦痛を感じてな」

 

「そういえば、私が初めてホラーに襲われた時、統夜先輩は返り血がどうとか言ってましたよね?それって……」

 

「あぁ。お前にホラーの返り血を浴びさせるわけにはいかなかったからな」

 

「そうだったんですね……」

 

梓は、あの時、統夜がなぜあそこまで怒っていたのかその理由がはっきりとわかった。

 

「鋼牙さんは騎士の掟を守ってカオルさんを斬ろうとしたけど、それが出来なかったみたいなんだ。それで、カオルさんは何度もホラーとの戦いに巻き込まれて、その度に鋼牙さんはカオルさんを救った。そうしてるうちにカオルさんを救いたい。そう思ったんだと思う」

 

「鋼牙さんにとってカオルさんはかけがえのない人になったのね」

 

「それで、鋼牙さんは血に染まりし者を浄化する方法を見つけ、どうにかカオルさんを救ったんだよ」

 

「……私、どうして統夜がホラーとの戦いに私たちを巻き込みたくないか、わかった気がするよ」

 

澪の言葉に唯たちの唯たちはウンウンと頷いていた。

 

「……それで話を戻すけど、今度の日曜日一緒に鋼牙さんの家に行かないか?」

 

統夜は改めて唯たちを誘っていた。

 

「私、行ってみたい!」

 

「あぁ、私も行きたい!」

 

「あたしも!何か面白そうだし」

 

「うん♪私も♪」

 

「はい!私も行きたいです!」

 

「決まりだな。それじゃあ今度の日曜日に行こう。鋼牙さんには俺から連絡をいれておくよ」

 

「うん♪お願いね♪」

 

こうして統夜たちは鋼牙の家を訪問することになった。

 

ティータイムを終えると練習を開始し、1時間ほど練習を行った後、解散した。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

鋼牙の家を訪問する日曜日になった。

 

この日まで指令はほとんどなく、あったのは前日の土曜日にホラー討伐が一件あっただけであった。

 

この日、統夜たちはバスで隣町にある鋼牙の家に行こうとの話だったが、紬から前日連絡があった。

 

学校の前で待っていて欲しいと。

 

その話を聞いた紬を除く5人が桜高の前に集まり、紬を待っていた。

 

「ムギちゃん。どうしたんだろうね?」

 

「そうだな、学校の前で待っててだなんて」

 

「もしかして、大きなリムジンで迎えに来るとか!」

 

「馬鹿言うなよ。そんな都合のいい話がある訳……」

 

統夜がそう言いかけたその時、一台のリムジンが統夜たちの前で止まった。

 

そのリムジンの窓が開くと……。

 

「みんなぁ、お待たせぇ♪」

 

紬がニコニコしながら統夜たちに手を振っていた。

 

「……あったな」

 

「あぁ……。まさかマジでリムジンとは……」

 

律の予想が見事に的中し、統夜は驚きを隠せなかった。

 

統夜はたちがリムジンに驚いていると運転席から50代くらいの男が降りてきた。

 

「あなた方が紬お嬢様のお友達でございますね?」

 

「あっ、あなたは?」

 

「申し遅れました。私は琴吹家の執事をしております、斉藤と申します」

 

「ムギの家の執事さん……」

 

紬の家は琴吹財閥というかなりおおきな財閥であり、唯たちがギターなど楽器を買った「10GIA」という楽器店を始め、様々な店を経営している。

 

その家は桜ヶ丘の中でも一二を争うほどの豪邸であり、執事やメイドなども雇っている。

 

統夜たちはそんな紬の家の大きさの一端を目の当たりにして驚いていた。

 

「皆さま、どうぞお乗りください」

 

斉藤と呼ばれる紬の執事がリムジンの扉を開けると、こう促してきたので、統夜たちはリムジンに乗り込んだ。

 

「それにしてもすごいな、ムギ」

 

「本当だよ。まさか本当にリムジンを持ってくるなんて」

 

「だって今日は隣町まで行くでしょう?だったらバスよりもみんな一緒にドライブもいいかなぁなんて♪」

 

紬はあえてバスを使わず、みんな一緒にドライブ気分を味わいたいという思いからリムジンを用意していた。

 

「それにしても……。見るだけでも初めてなのにリムジンに乗るなんて初めてです」

 

「うん!私もだよ!」

 

紬以外はごく普通の家庭で育っていたため、このようなリムジンなどはテレビでしか見たことはなく、見るのも乗るのも初めてであった。

 

「ウフフ♪今日は楽しいドライブになりそうね♪」

 

みんな一緒なのが嬉しいのか紬はニコニコしていた。

 

「斉藤。○□町にある鋼牙さんの屋敷に行って頂戴」

 

「あぁ。雷暝館でございますね?かしこまりました」

 

「「「「雷暝館?」」」」

 

聞きなれない言葉に統夜と紬を除く4人が首を傾げていた。

 

「あぁ、雷暝館っていうのは鋼牙さんが住んでる屋敷の名前なんだよ」

 

統夜の言う通り、雷暝館は現在鋼牙が住んでいる屋敷の名前である。

 

以前は違う屋敷に住んでいたのだが、布道シグマが冴島邸を襲撃し、その時に屋敷は全壊してしまった。

 

その後建てられたのがこの雷暝館である。

 

斉藤はその雷暝館に向かって車を走らせた。

 

移動中の車内では紬はニコニコしている中、統夜たちは初めてのリムジンに困惑していた。

 

しかし、徐々にリラックスしてきたのか雷暝館に到着するまで終始笑い声と話し声が絶えなかった。

 

そして雷暝館に到着したのは、車を走らせてからおよそ30分後だった。

 

統夜たちはリムジンを降りると目の前にはおおきな屋敷の姿が見えた。

 

「ふおぉ……大きい……」

 

「あぁ、すごいな……」

 

「まるでムギの別荘みたいに大きいぞ……」

 

「こんなお屋敷……。テレビでしか見たことがないです……」

 

雷暝館の建物を初めて見る唯、澪、律、梓の4人はその大きさに驚いていた。

 

「…あれ?ムギは驚いてないけど、ここに来たことがあるのか?」

 

「えぇ。実は一度だけお父様と来たことがあるの♪」

 

ムギは過去に一度この家を訪れたことがあったようだ。

 

(そういえば鋼牙さんって表の顔は確か財閥の社長だったっけ?だとしたらムギが一度この屋敷に来たことがあっても納得だよな……)

 

統夜は鋼牙の表の顔のことを聞いたことがあり、ムギがここに来たことがあっても不思議はないと思っていた。

 

「斉藤。それじゃあ私たちは行ってくるわね」

 

「かしこまりました。いってらっしゃいませ」

 

斉藤に見送られながら統夜たちは雷暝館に入るためドアをノックした。

 

すると、扉が開かれ、1人の老紳士が出てきた。

 

「これはこれは。ようこそ、いらっしゃいました」

 

老紳士は深々と頭を下げていた。

 

「こんにちは、ゴンザさん。お久しぶりです」

 

統夜は老紳士のことをゴンザと呼び、一礼していた。

 

「これはこれは、統夜様。お久しぶりでございます!」

 

「ゴンザさんも元気そうで何よりです」

 

「統夜様もお元気そうですね。学校の方はいかがですか?」

 

「えぇ。すごく楽しいです。今日も軽音部の友達と来ました」

 

「お友達……でございますか?」

 

ゴンザが唯たちのことを見ると、紬以外がペコリと頭を下げた。

 

「ゴンザさん、お久しぶりです♪」

 

「こ、これは……!紬様!お久しぶりでございます」

 

ゴンザは紬に深々と頭を下げていた。

 

「えっ!?ムギ、知り合いなのか?」

 

「うん♪実は前に一度このお屋敷に来たことがあるの♪」

 

「そ、そうだったんですか」

 

「統夜様のお友達のお一人が紬様とは驚きました」

 

「うん♪統夜君は大切なお友達よ♪」

 

「左様でございましたか。……ささっ、こちらへどうぞ」

 

統夜たちはゴンザの案内で屋敷の中に通された。

 

「こちらでございます」

 

ゴンザは統夜たちを応接室に案内すると、応接室の扉を開き、統夜たちは中に入った。

 

応接室の中では鋼牙が椅子に座って統夜たちのことを待っていた。

 

「鋼牙様。統夜様とそのお友達でございます」

 

「そうか。……統夜、よく来たな」

 

「はい。お言葉に甘えて早速遊びに来ました♪」

 

「あぁ」

 

「鋼牙さん、お久しぶりです♪」

 

紬は鋼牙に挨拶をすると鋼牙は少し驚いたような表情をしていた。

 

「お前……。琴吹財閥の令嬢か?」

 

「はい、紬です♪私、この前カオルさんの個展でホラーが出た時、統夜君たちと一緒にいましたよ♪」

 

「そ、そうか。あの時琴吹の令嬢に似ている娘がいると思っていたし、名前を聞いてもしやと思ったが、まさか本人とはな。……親父さんは元気か?」

 

「えぇ。おかげさまで」

 

「そうか」

 

鋼牙は紬の父親が息災であることを知り、フッと笑みを浮かべた。

 

「あっ!統夜君たちだ!」

 

応接室の扉が開くとこう声がすると、カオルが中に入ってきた。

 

「あっ、カオルさん。こんにちは」

 

「いらっしゃい♪さっそくみんなで来たんだね!」

 

「えぇ。俺も久しぶりに遊びに行きたいって思ってましたし」

 

「あっ!ちょうど良かった!今ね、料理を作ってたんだけど、良かったらどう?」

 

「え?いいんですか?」

 

「もちろん♪さ、こっちに用意してあるから行きましょっ♪」

 

カオルは統夜たちをダイニングに案内し、鋼牙とゴンザは引きつった顔でその様子を見ており、すぐさま統夜たちの後を追った。

 

統夜たちはダイニングの中に入ると、見た目は美味しそうなピザが並んでいた。

 

「今日はね、ピザを作ってみたんだ♪」

 

「うわぁ!美味しそう!」

 

「本当すごいですね!」

 

「ささ、座って。さっそく食べて食べて♪」

 

カオルは統夜たちを椅子に座らせ、統夜たちにピザを振舞おうとしたが、鋼牙とゴンザがダイニングに入ってきた。

 

「あっ、鋼牙。ゴンザさん。2人も私特製のピザを食べる?」

 

「いや。それより……」

 

鋼牙は唯たちをジッと見ていた。

 

「?あの、鋼牙さん、どうしました?」

 

「お前たち、ちょっといいか?話があるんだが」

 

「?話、ですか?」

 

「そんな大したことではない。……統夜。お前は先に食べててくれ」

 

「?わかりました。……早く来ないと全部食べちゃいますからね」

 

「あぁ。……じゃあついて来てくれ」

 

唯たちは鋼牙の後を追いかけて先程の応接室に戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

「あ、あの……。私たちに話って何ですか?」

 

「そんなに身構えることはない。……カオルのことだ」

 

「?カオルさんのですか?」

 

「あぁ。あいつの作る料理はかなり問題があってな」

 

「…問題……ですか?」

 

「あぁ。あいつの料理を食べたものは全員食中毒ですぐさま病院に送られるんだ」

 

「「「「「!!!」」」」」

 

鋼牙から告げられたあまりにも意外な事実に唯たちは驚きを隠せなかった。

 

「え……。そ、それって本当なんですか?」

 

「残念ながら本当だ。あのままお前たちが何も知らずにカオルの手料理を食べてたら病院行きだったぞ」

 

「え!?で、でもやーくんが……」

 

「あぁ、あいつなら問題ない。統夜はカオルが作った手料理を嫌な顔一つせず平らげることの出来る唯一の人間だからな」

 

『統夜は相当な味覚バカだからな。何を食っても美味いっていうやつなんだよ』

 

「そういえば統夜のやつ、好き嫌いなんてなさそうだったけど……」

 

「それに、何食べても確かに美味い美味い言ってたよな」

 

唯たちはザルバの言った味覚バカということに関して思い当たる節がいくつもあった。

 

統夜は軽音部のティータイムの時も、夏の合宿の時も、さらにはクリスマスパーティーの時もどんな料理も美味い美味いと言いながら料理を食べていた。

 

だがしかし……。

 

(……統夜先輩ってそこまで味覚オンチだったなんて……)

 

統夜の知られざる真実を知り、梓は驚きを隠せなかった。

 

「あっ、そういえば。統夜君は食中毒は大丈夫なんですか?」

 

「あぁ。あいつはカオルの料理を食べて食中毒になったことは一度もない」

 

『まぁ、鋼牙や統夜のような魔戒騎士は内臓も丈夫に出来ているからな。普通の人間なら即死する毒物でも耐えられるしな』

 

「「「「「……」」」」」

 

ザルバの語る真実に唯たちは驚きを隠せなかった。

 

「魔戒騎士って本当にすごいんですね……」

 

『当然だ。統夜から話は聞いてるとは思うが魔戒騎士になるためにはあり得ない程厳しい修行を乗り越えなければならないからな』

 

「あっ、それはやーくん言ってたかも」

 

『……おい、お嬢ちゃん。その「やーくん」って言うのは何なんだ?』

 

「えぇ?やーくんは「とうや」だからやーくんだよぉ」

 

『やれやれ……。随分と変なあだ名をつけられてるな。統夜のやつに同情するぜ』

 

「そういえば、唯先輩。イルバにもあだ名をつけてましたよね?」

 

「うん!イルイルだよ!」

 

唯がイルバのあだ名を言った瞬間、鋼牙が急に笑い出した。

 

「?鋼牙さん?」

 

「あぁ、すまない。魔導輪にまであだ名をつけるというのがおかしくてな」

 

『全くだ。これはいいことを聞いたぜ』

 

鋼牙は笑みを浮かべ、ザルバはカタカタと口を鳴らしながら笑っていた。

 

「そういえば、鋼牙さんの魔導輪はザルバって言いましたよね?」

 

『あぁ、俺様はザルバだぞ』

 

「……」

 

唯はザルバのことをジッと見ていた。

 

『?どうしたんだ、お嬢ちゃん?』

 

「……ザルバだったらザルザル……だね!」

 

『おい、何が「だね!」だ。俺様を変なあだ名で呼ぶな!』

 

「アハハ……。そのリアクションは本当にイルバそっくりですね……」

 

『おいおい、俺様をあんなやつと一緒にするなよ』

 

「それでも本当に見た目は似てますよね」

 

律、澪、紬、梓の4人はザルバのことをジッと見ていた。

 

『まぁ、誠に遺憾だが見た目は似ていると言わざるを得ないようだ』

 

ザルバは見た目は似ているものの、イルバと似ているということを認めたくはなかった。

 

「……それよりも戻るか?お前たちも統夜の様子が気になるだろう?」

 

「あっ、そうですね」

 

こうして唯たちは応接室を後にすると、もう一度ダイニングに戻ってきた。

 

そこで唯たちが目にしたものとは……。

 

「……うん、美味い!カオルさん、また腕を上げました?」

 

「やったぁ♪そう言われると作った甲斐があったな♪」

 

カオルのピザを美味しそうに頬張る統夜と統夜にほめられて喜ぶカオルの姿がそこにあった。

 

「……あぁ、みんな。遅かったな」

 

「う、うん……」

 

「みんながあまりにも遅いから待ちきれずに全部食べちゃったぞ」

 

「あぁ、べ、別に問題ないですよ」

 

「あ、そっかぁ。唯ちゃんたちの分も無くなっちゃったね。私、また作ってくるよ」

 

カオルが再び厨房に行こうとしたため唯たちは慌てていた。

 

「カオル、そこまでしなくてもいい。ゴンザに何か用意させる」

 

「……そう?それは残念だなぁ」

 

カオルは厨房に行くのを鋼牙に止められ、しゅんとしていた。

 

「……統夜先輩、体調はどうなんですか?」

 

「?別に異常はないけど?」

 

「そ、そうですか……」

 

鋼牙の言ったことは事実のようであり、梓は苦笑いをしていた。

 

『お前たち、聞いたんだな……。あれを……』

 

イルバが唯たちを憐れむように口を開いた。

 

「?イルバ、あれって?」

 

『いや、何でもない。大したことではないからな』

 

イルバの言葉に統夜は首を傾げていた。

 

「……カオル。ゴンザはどこに行ったかわかるか?」

 

「あぁ、ゴンザさんならお茶の準備をするって言って出て行ったよ」

 

「そうか……お前たち。何度も移動させて悪いが、お茶は先程の部屋で頂くことにしよう」

 

「あっ、はい。大丈夫です!」

 

唯たちはダイニングを出ると、そのまま応接室に戻っていった。

 

「……ご馳走様でした!」

 

「フフ、お粗末様♪」

 

統夜は席を立つと唯たちを追いかけて応接室に向かい、カオルはピザで使った食器を洗うために厨房へ向かった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

統夜たちが応接室で待っていると、ゴンザが応接室に入ってきた。

 

「……皆様、お茶の用意が出来ました」

 

ゴンザのお茶の準備が終わり、ゴンザはテーブルに様々なお茶菓子を置くと、カップに紅茶を注ぎ、それを統夜たちに配った。

 

「ささ、冷めないうちにお召し上がりください」

 

「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

統夜たちはゴンザが用意してくれた紅茶を一口飲んだ。

 

すると……。

 

「……!美味しい……」

 

「あぁ、確かに美味いな……」

 

「まるで軽音部で飲むお茶みたいだね!」

 

「あ、それは私も思いました」

 

「ウフフ……。軽音部で出してるお茶はここで出してるお茶と同じ茶葉を使っているのよ」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

統夜たちはゴンザの淹れてくれた紅茶に舌鼓をうっていた。

 

「さぁ、お菓子も遠慮なくお召し上がりください」

 

統夜たちはテーブルに置かれたクッキーやマドレーヌなどのお茶菓子を頬張った。

 

「ん!美味い!」

 

「確かに、すごく美味しいな!」

 

「はい!すごく美味しいです!」

 

「うん!ムギちゃんが持ってきてくれるお菓子と同じくらい美味しい!」

 

「えぇ。本当に美味しいわ♪」

 

「ありがとうございます。これらは私が作ったんですけど、喜んでいただいて何よりです」

 

「え!?これ、ゴンザさんの手作りなんですか?」

 

「すごいです!」

 

「アハハ……。そこまでお褒めになられると照れますなぁ」

 

ゴンザは唯たちに褒められまんざらでもないと言った感じだった。

 

「統夜。軽音部とか言ったな?そこでもよく紅茶を飲んでいるのか?」

 

「えぇ。俺たちの軽音部はちょっと特殊でよくティータイムを行っているんですよ」

 

「そうか。その紅茶がゴンザが淹れたのと同じような紅茶であれば俺もぜひ飲んでみたいな」

 

「いつでも桜ヶ丘高校にお越しください♪大歓迎ですから♪」

 

「そうだな。桜ヶ丘に寄ることがあれば寄らせてもらおうか」

 

「はいっ!」

 

鋼牙とやり取りをする統夜はとても嬉しそうだった。

 

「やーくん、楽しそうだね♪」

 

「まぁな。ここにくるとなんか気持ちが安らぐんだよな」

 

「フッ……。そう言ってもらえるともてなし甲斐があるってものだな」

 

『まぁ、そこのクソ指輪は歓迎しないがな』

 

『おい、お前今なんと言った?』

 

『クソ指輪と言ったんだ。貴様、魔導輪のくせに耳まで遠くなったか?この骨董品め』

 

ザルバの挑発にイルバはカチンと来てしまった。

 

『言ったな!貴様なぞその骨董品と同じ形をした骨董品のくせに』

 

『俺様を貴様と一緒にするな!』

 

『それは俺様の台詞だ!』

 

ザルバとイルバはそのまま口喧嘩を始めそうになったが……。

 

「やめろ、イルバ。鋼牙さんの前だぞ」

 

「ザルバもそこまでだ」

 

統夜と鋼牙がそれぞれの相棒を止めていた。

 

「鋼牙さん、すいません。俺の魔導輪が」

 

「それは俺も同様だ。だから気にするな」

 

統夜は申し訳なさそうにしていたが、鋼牙に気にするなと言われて安堵していた。

 

「ささっ、お茶もお菓子もまだまだございますから遠慮なくお召し上がり下さい」

 

ゴンザに薦められる形で統夜たちは紅茶やお茶菓子に舌鼓を打っていた。

 

そうしているとカオルが戻ってきて、ティータイムに参加した。

 

それからは日が暮れるまでティータイムを楽しんでいた。

 

ティータイムが終わると統夜たちは雷暝館を後にし、待っていた斉藤のリムジンにのって桜ヶ丘へ帰って行った。

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

__次回予告__

 

『やれやれ、教師というのはけっこう大変なんだな。人を教えるってことだけが仕事じゃないみたいだしな。次回、「教師」。ま、俺様はそんな仕事勘弁だがな』

 

 




今回は鋼牙とカオルだけではなく、ゴンザも登場しました。

そして統夜はあのカオルの手料理を食べても平然といられるという意外な事実が明らかになりました(笑)

鋼牙やゴンザはすごく嫌がってるのにここまでナチュラルに食べられる統夜はすごいですよね(笑)

統夜はかなりの味覚オンチというのもこの小説執筆当初から考えていたので、出せて良かったです!

さて、次回はあのキャラを登場させる予定です。

それでは次回をお楽しみに!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。