牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第115話になります!

最近FF14を始めたのですが、FF14が面白くてそれに夢中になっています。

いつ牙狼とのコラボが来てもいいように進めていかないとな。

それはともかくとして、今回は前回の続きとなっています。

そして、今回花嫁にちなんだとあるホラーが登場します。

そのホラーとは一体?

それでは、第115話をどうぞ!




第115話 「花嫁」

……ここは桜ヶ丘某所にあるとある民家。

 

この家の広間にはウェディングドレスが立てられており、その前に1人の女性が泣き崩れながら座っていた。

 

「タカシ……!どうして!?どうして貴方は私を遺して死んでしまったの!?」

 

この女性、河村千尋は、婚約者である天田タカシを事故で喪い、悲しみにくれていた。

 

タカシは結婚前に親孝行をするとのことで、両親を乗せて日帰りで温泉旅行へ行ってきたのだが、彼らを乗せた車は、飲酒運転をしていた車と正面衝突してしまった。

 

その事故により、タカシたち3人だけではなく、飲酒運転の運転手も即死という最悪な事故として、ニュースにもなっていた。

 

「タカシの命を奪った男は絶対に許さない!だけど、あいつもこの世にはいない!」

 

千尋にとって最も憎むべき相手は、もうこの世にはいないため、この怒りと憎しみをどこへぶつけていいのかわからなかった。

 

「……タカシのいない世界なんて生きてる価値はないわ!こんな世界……!無くなってしまえばいいのよ!」

 

婚約者を喪ったことで、千尋は歪んだ感情を露わにしてしまった。

 

その気持ちは、千尋の大きな陰我であった。

 

タカシを喪って泣き崩れていたその時だった。

 

__ほぉ、お前。この世が無くなることを望むのか

 

「!?だ、誰!?」

 

どこからか突然声が聞こえてきたため、千尋はキョロキョロと周囲を警戒していた。

 

__そんなに怯えることはない。我もこんな世界は消えてしまえばいいと思っている。我と共にこの目障りな人間共を滅ぼそうではないか!

 

「それは私も望んでるけど……そんなこと出来るの?」

 

__あぁ、出来るさ。お前が悪魔と契約する程の覚悟があるならな

 

「えぇ……!タカシのいない世界なんて意味はないもの。悪魔だろうがなんだろうが構わないわ!」

 

千尋は、どうやら人間を捨てても構わないとさえ思っているようだった。

 

__よく言った!ならば、我を受け入れよ!!

 

謎の声が聞こえると、ウェディングドレスからドス黒いオーラが放たれ、そこから素体ホラーが飛び出してきた。

 

「!?」

 

この世のものとは思えない怪物に千尋は驚くが、声をあげる程ではなかった。

 

素体ホラーは体を帯状にすると、千尋の中に入っていった。

 

「……!!」

 

千尋は一切悲鳴をあげることはなく、ホラーに憑依されることを受け入れていた。

 

こうして千尋はホラーに憑依されてしまい、怪しげな笑みを浮かべると、どこかへと移動していった。

 

 

 

 

 

その数日後、千尋は桜ヶ丘某所にある教会にいた。

 

この地で結婚式を挙げるために下見に訪れたカップルを不快そうな表情で見ていたのである。

 

「……何よ。幸せそうにしちゃって……。私よりも幸せになる奴らなんて、この世には必要ないのよ!」

 

千尋は、幸せそうに教会を下見しているカップルに憎悪の感情を抱いていた。

 

そして、千尋はそのカップルが教会から出てくるのを待ち伏せていた。

 

「ねぇ……ちょっといいかしら?」

 

カップルが教会から出てくると、千尋はすかさず声をかけていた。

 

「な……何ですか?」

 

いきなり声をかけられたことに、カップルの男は、怪訝そうな表情をしていた。

 

「何であなたたちは……そんなに幸せそうなの?私はこんなにも不幸なのに……」

 

「はぁ!?あなた、いきなり何言ってるんですか!?」

 

千尋の不可解な言葉に、カップルの女は苛立ちを募らせていた。

 

「ねぇ、あなたたち……。消えてくれないかしら?あまりに幸せそうで目障りだから」

 

「はぁ!?あんたに言われなくたって出て行くわよ!ほら、行きましょう」

 

千尋の言葉にさらに不快感を露わにした女は男と共にこの場から立ち去ろうとするのだが、すかさず千尋は男の手を掴んだ。

 

「なっ……!?何するんだ!」

 

「違うのよ。私が言ってるのは、“この世”から消えてってことよ」

 

千尋は怪しげな表情で笑みを浮かべると、舌舐めずりをして獲物を吟味していた。

 

「い、いい加減にしなさいよ!じゃないと警察を呼ぶわよ!」

 

「ウフフ……。好きになさい。私にとっては“餌”が増えるだけだから……」

 

「え、餌……?」

 

「あなた、何言って……」

 

千尋の不可解な言葉に男も女も動揺していたのだが、千尋はそんな男のもう片方の手も掴んだ。

 

そして……。

 

「ウフフ……。いただきます……」

 

千尋は怪しげな笑みを浮かべて、カッ!と目を見開くと、男の体を粒子状にして、男を自分の体に取り込んだ。

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

千尋に取り込まれてしまった男は、一切抵抗することが出来ず、千尋に捕食されてしまった。

 

「い……嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

女の目の前で男が千尋に捕食されてしまい、女は顔が真っ青になった状態で悲鳴をあげていた。

 

そして、身の危険を感じた女はどうにか逃げ出そうとするのだが、すかさず千尋は女を捕まえていた。

 

「い、嫌!放して!」

 

「ウフフ……。暴れたって大声出したって無駄よ。あなたは私の餌になるのだから」

 

「お、お願い……助けて……!」

 

女は目に涙を溜めて助けを求めるが、千尋はそんな女を冷酷な笑みを浮かべながら睨みつけていた。

 

「うるさいわね……!さっさといただくとしますか……」

 

「ちょっと……やめ……!」

 

千尋は女の言葉には一切耳を傾けず、女の体を粒子状にして、女を捕食し始めた。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

先ほどの男同様、女は一切抵抗することは出来ず、千尋に捕食されてしまった。

 

「……さて、まだまだ目障りな奴らはいるでしょうから、そいつらを喰いに行きましょうかね……」

 

千尋は、自分が許せないと思った相手を捕食するために、移動を開始し、夜の闇に消えていった。

 

千尋がホラーに憑依されたのは、統夜の最後の登校日と同じ日であり、千尋は統夜や戒人を避け、人を喰らっていた。

 

その時、千尋はウェディングドレスを着用しており、夜な夜なウェディングドレスを来た幽霊が現れるといった都市伝説として、世間で騒がれるようになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

そして統夜が梓に頼まれ、花嫁花婿の写真を撮ることになった当日、統夜たちは撮影が行われる「Photo studio NEVER」を訪れた。

 

統夜たちだけではなく、幸太とヒカリ。そして、戒人、アキト、レオも一緒であった。

 

そして、店の中に入った統夜たちは、そこで専属のカメラマンである泉京水と会い、男性陣と女性陣に分かれて衣装の着替えを始めた。

 

女性陣の方にはアシスタントとして憂、純、さわ子の3人が来ており、衣装への着替えや撮影の手伝いを行うことになっていた。

 

一方男性陣の方には京水がついていたのだが、統夜は京水に何かされないか身の危険を感じていた。

 

そんな中、女性陣側の控え室では、アシスタントの3人だけではなく、唯たちやヒカリも梓の衣装を着替える手伝いをしていた。

 

その甲斐あってか着替えにはそこまで時間はかからなかった。

 

そして、ヒカリが梓のメイクを担当した。

 

ヒカリはメイクアップアーティスト助手のバイトをしていたことがあるようであり、メイクを担当するにはうってつけであった。

 

少々時間はかかったものの、的確にメイクをこなし、梓は完璧な花嫁の姿になっていた。

 

それを見た唯たちは……。

 

「ほわぁ……。あずにゃん、綺麗……」

 

「うん!とっても素敵だわ!」

 

「あぁ!可愛いぞ、梓!」

 

「こりゃ、統夜が見たら惚れ直すんじゃないか?」

 

「うん!梓ちゃん、可愛い♪」

 

「似合ってるよ、梓」

 

「エヘヘ……。そうかな?」

 

唯たちは梓の花嫁姿をべた褒めしており、梓はそのことに恥ずかしがりながらも嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

「えぇ、メイクもバッチリだし、可愛いわよ、梓ちゃん」

 

「ぐぬぬ……!教え子の方が先にウェディングドレスを着るなんて……!」

 

ヒカリも梓のことを褒めていたのだが、さわ子だけは少しだけ悔しそうに梓のことを見ていた。

 

「アハハ……。さわちゃん、今日は梓が主役なんだから、嫉妬はダメだって!」

 

そんなさわ子に苦笑いをしながら、律はさわ子をなだめていた。

 

「ねぇねぇ!早くやーくんにも見せてあげようよ!」

 

「そうだな。統夜も準備は出来てるだろうし」

 

「梓ちゃん、歩きにくいと思うから、こっちを持つね♪」

 

「それじゃあ私はこっちを!」

 

憂と純は長いスカートの端を持ち、梓が歩きやすいようサポートをしていた。

 

「あずにゃん!私があずにゃんの手を引くね♪」

 

「は、はい……お願いします……」

 

唯が梓の手を引くために手を差し伸べると、梓は恐る恐ると唯の手を取った。

 

こうして花嫁の衣装に着替えた梓は、自分の晴れ姿を統夜に見せるために移動を開始したのであった。

 

 

 

 

 

 

そしてその頃、統夜もまた花婿の衣装に着替えていた。

 

京水が興奮して着替えを手伝うと言ってきたのだが、それをどうにかかわして、自分で花婿の衣装に着替えたのであった。

 

「おぉ、似合うじゃないですか、統夜君」

 

「確かに。思ったよりサマになってるぞ、統夜」

 

「うんうん。馬子にも衣装っていうしな」

 

『……おい、アキト。それだと褒めてないぞ』

 

「あれ?そうだったか?」

 

アキトは間違った言葉の使い方をしており、それを聞いた統夜は苦笑いをしていた。

 

「うんうん。さらにイケメンになったわね。素晴らしいわ!素晴らしいわ!」

 

「アハハ……。ども……」

 

統夜の花婿姿を見て京水は再び興奮しており、そんな京水を見ていた統夜の顔は引きつっていた。

 

「それじゃあ、先にスタジオで待ってましょうか。梓ちゃんはきっと時間がかかるだろうから」

 

「はい。そうですね」

 

こうして花婿の衣装の着替えを済ませた統夜は、先にスタジオ入りをして、梓が到着するのを待っていた。

 

待つことおよそ15分……。

 

「花嫁さん入られまーす!!」

 

このフォトスタジオのスタッフが、梓が来たことを告げると、スタジオの扉を開けた。

 

そして、花嫁姿の梓が出て来たのだが……。

 

「……////」

 

「へぇ……」

 

「だいぶ見違えたじゃないか」

 

「うんうん。可愛いぜ、梓ちゃん」

 

「あぁ、似合ってるよ」

 

レオ、戒人、アキト、幸太の4人は花嫁姿の梓に称賛の声をあげていた。

 

そして、統夜はいつもと違う梓の姿に見惚れているのか、赤面したまま何も語らなかった。

 

「エヘヘ……。ありがとうございます……」

 

統夜を除く男性陣にも褒められ、梓は満更でもなさそうだった。

 

「……統夜先輩……。どうですか?」

 

そして梓は、頬を赤らめながら、自分のこの格好が似合ってるかどうか統夜に確認を取っていた。

 

「あっ、あぁ。似合ってるよ、梓」

 

「本当ですか?」

 

「本当だよ。それに、悪いな、梓。俺、今までにないくらいドキドキしてるみたいだ。だからか気の利いたことが言えなくてな////」

 

統夜は男として少しは気の利いたことを言おうとしたのだが、梓の花嫁姿に照れてしまい、気の利いたことが言えなくなっていた。

 

「そっ、そうでしたか……。でも、ドキドキしてくれてるなら……嬉しいです////」

 

梓も今になって恥ずかしくなったのか、さらに頬を赤らめ、モジモジしながら恥ずかしがっていた。

 

「……な、なんだ。この甘ったるい空気は……」

 

「た、確かにそうだな……」

 

現在統夜と梓が放っているオーラに、アキトと戒人は引き気味になっていた。

 

「まぁまぁ。いいじゃないですか。2人とも幸せそうですし」

 

「あぁ。俺もそう思うよ」

 

「うんうん。あずにゃんもやーくんもすっごく可愛い♪」

 

「本当ね♪」

 

「ま、こうあからさまだと、ちょっとこっちまで恥ずかしくなるけどな」

 

「た、確かにそうかも……」

 

「ぐぬぬ……!やっぱり幸せそうじゃない!」

 

「アハハ……。さわ子さん、落ち着いて」

 

レオを始めとして、唯たちも口々に今思っていることを言っていたが、さわ子だけは統夜と梓に嫉妬の感情を抱いており、ヒカリが苦笑いをしていた。

 

「さぁ、さっそくだけど撮影に入るわよ!2人とも位置についてちょうだい」

 

「あっ、はい!」

 

「わ、わかりました」

 

花嫁と花婿が揃ったことなので、統夜と梓は撮影場所へと移動し、これから行われる撮影の準備が行われた。

 

アシスタントである憂、純、さわ子の3人も、自分たちの出来る範囲で撮影のお手伝いを行っていた。

 

5分ほど撮影準備が行われると、これから撮影が行われることになった。

 

「それじゃあ、撮影するわよ!梓ちゃんと彼氏くんは腕を組んでちょうだい!」

 

「「は、はい……」」

 

どうやら最初は腕を組ませた状態で撮影がしたいようであり、統夜と梓はその指示に従って腕を組んでいた。

 

「うんうん♪いい感じだね♪」

 

「そうね♪本当に新婚さんみたい♪」

 

「「……////」」

 

唯と紬の言葉を聞いて恥ずかしくなったのか、統夜と梓は顔を真っ赤にしていた。

 

「さぁ、恥ずかしがってる場合じゃないわよ!」

 

これから撮影を始めるため、恥ずかしがっていては撮影にならないため、京水が注意していた。

 

そのことによってハッと我に返った統夜と梓は、撮影に集中することにした。

 

「うんうん。準備は出来たわね。それじゃあ撮影を始めるわよ」

 

「はっ、はい!」

 

「よろしくお願いします!」

 

撮影が始まるとのことであり、先ほどまでは緊張と恥ずかしさで頬を赤らめていた2人だったが、自然とリラックスしており、幸せそうな笑みを浮かべていた。

 

幸せそうな2人を見て、唯たちは満足そうに笑みを浮かべていた。

 

「それじゃあ、撮影するわよ!!」

 

こうして、京水は統夜と梓をモデルに、花嫁花婿の撮影を始めていったのであった。

 

 

 

 

その頃……。

 

 

 

 

「……何よ、あの2人。私より幸せそうにして……。気に入らないわね……」

 

ウェディングドレスを身に纏っている千尋は、遠くから統夜と梓の撮影の様子を見ていた。

 

そして、幸せそうな表情で撮影を行っている統夜たちが気に入らなかったのであった。

 

「……あいつらも喰らってやる……!目障りな奴は消し去るまでよ!」

 

そのため、千尋は統夜と梓を次の獲物に決めたのであった。

 

しかし、統夜が魔戒騎士であることを、千尋は知る由もなかった。

 

 

 

 

 

《……む?》

 

(トルバ、どうした?)

 

《さっき店の入り口あたりから妙な邪気を感じたんじゃ》

 

(妙な邪気?)

 

《うむ。ホラーかもしれないのぉ》

 

(……ちょっと様子を見てくるか……)

 

唯たちだけではなく、レオとアキトも撮影に釘付けになっていたため、戒人はこっそりとスタジオを抜け出し、怪しい人物がいないか確認をすることにした。

 

トルバが妙な気配を探知した場所だけではなく、店の周辺も探ってみたのだが、特に怪しいものはいなかった。

 

「……トルバ。特に怪しいものはなさそうだな」

 

『おかしいのぉ……。さっきは妙な気配を探知したんじゃがのぉ』

 

「まぁ、ホラーがいることは間違いなさそうだな。この撮影が終わったら番犬所で確認してみるさ」

 

『うむ。それが良さそうじゃの』

 

「とりあえず戻るか。あまり長いこといなかったら統夜も心配するだろうしな」

 

『うむ。それが良いじゃろう』

 

こうして、戒人はホラーらしき妙な気配の足取りを掴めないまま、スタジオに戻ることにした。

 

「……あれ?戒人、どこへ行ってたんだ?」

 

未だに撮影が行われる中、戒人が急にいなくなったことをアキトが訪ねていた。

 

「あぁ。トルバが妙な気配を探知したらしいから周囲を見てきたんだ」

 

「妙な気配?ホラーですかね?」

 

「それはわからんがな」

 

《そういえば、確かに妙な気配を感じたかもしれないのぉ》

 

レオの魔導輪であるエルヴァも妙な気配を探知していたのだが、エルヴァも撮影をジッと見ていたため、スルーしていたのだった。

 

「とりあえず、統夜に心配をかける訳にもいかないし、このことは統夜には黙っておこうぜ」

 

「そうですね。それがいいと思います」

 

「あぁ」

 

こうして、アキト、レオ、戒人の3人はホラーが現れたかもしれないことを統夜には黙っておくことにした。

 

せっかくのイベントなのに、統夜に無駄な心配をかけさせたくないからである。

 

そんな中……。

 

(……あれ?戒人たち、集まって何を話してるんだ?まさか、ホラーが近くにいるのか!?)

 

統夜は撮影を行いながら集まって話をしている戒人たちのことが気になっていた。

 

《いや、ただの世間話だろう。心配することはないと思うぜ》

 

(そうか?ならいいんだけど……)

 

実はイルバも妙な気配を探知していたのだが、統夜に妙な心配をかけさせないために黙っていた。

 

戒人たちもいたため、何かあった時は対応してくれると思ったからである。

 

統夜が戒人たちのことを気にしていると……。

 

「ほら、彼氏くん!ボケっとしてるんじゃないわよ!集中集中!」

 

「!は、はい!」

 

ボケっとしてることを京水に注意されると、ハッと我に返り、撮影に集中していた。

 

写真は1枚だけではなく、何枚も撮影していた。

 

様々なバリエーションを撮影したいという京水の思いからである。

 

統夜が戒人たちのことを気にしてボケっとしていたのはちょうど撮影終盤だったため、京水に注意されたのであった。

 

「さぁ!最後の写真を撮るわよ!」

 

どうやら、次の撮影が最後の撮影になるようであった。

 

「あの、京水さん。次はどのような写真を撮るのですか?」

 

「最後はね……。2人、キスをしてちょうだい!!」

 

「「!!?」」

 

京水から言われたまさかの指示に、統夜と梓は驚きを隠せず、顔を真っ赤にしていた。

 

「あ、あの……。さすがにそれは恥ずかしいんですけど……」

 

「何を言ってるのよ!花嫁と花婿のキス。これはとても大事なシチュエーションなのよ!」

 

「そ、それはそうかもしれませんが……」

 

「……梓、こうなったらやれることはやってやろうぜ!」

 

「ふぇっ!?と、統夜先輩!?」

 

統夜がまさか乗り気だとは思っていなかったのか、梓は驚きを隠せなかった。

 

「俺も恥ずかしいけどさ、せっかくこんな格好で写真を撮るんだからさ」

 

「統夜先輩……」

 

統夜も恥ずかしいんだということを知り、梓は覚悟を決めて、写真を撮ることにしたのであった。

 

「さて、梓ちゃんも覚悟を決めたわね。それじゃあ、こっちの準備は出来てるから、自分たちのタイミングでキスをしてちょうだい!」

 

「「は、はい!」」

 

統夜と梓は互いに向かい合い、ジッと見つめ合っていた。

 

そんな2人を見て、唯たちもドキドキしていたのであった。

 

「それじゃあ梓、行くぞ」

 

「は、はい……」

 

統夜と梓はゆっくりではあるが、互いに顔を近づけていった。

 

このゆっくりさが、唯たちをさらにドキドキさせたのであった。

 

そして2人の顔がさらに近付くと、2人の唇と唇が触れ合い、キスをしたのであった。

 

その瞬間、京水は目をギラギラと輝かせ、カメラでその様子を何枚も撮影していた。

 

「……はい!OKよ!」

 

京水の合図を聞いて、統夜と梓はゆっくりと唇を離し、体も離れていった。

 

「「……////」」

 

統夜と梓は今になって恥ずかしくなったのか、互いに顔を真っ赤にして、モジモジとしていた。

 

「これで撮影は終了よ!2人のおかげでかなりいいものが撮れたわ!本当にありがとね!」

 

「いっ、いえ。こちらとしても、良い思い出が出来たので、感謝しています」

 

統夜はみんなを代表して、京水にお礼を言っていた。

 

「さて、今日はこのスタジオは貸切にしたから、みんなも好きな衣装で写真を撮っていいわよ!」

 

京水はモデルを引き受けてくれたお礼に、このスタジオを貸切にして、好きな衣装を着て写真を撮ることを了承していた。

 

「本当ですか!?それじゃあ、私たちもあれを着ましょうよ!幸太!」

 

「アハハ……。わかったよ……」

 

ヒカリは花嫁衣装を着たかったようであり、非常に興奮していた。

 

幸太はそんなヒカリを苦笑いしながら見ていたが、一緒に写真を撮ることを了承していた。

 

「ドレスなら他にも種類があるから、色々見てみるといいわよ!」

 

京水は今日のために複数の衣装を用意していたため、ヒカリの身の丈に合ったドレスもあることが予想された。

 

「やったあ♪それじゃ、行ってくるわね!」

 

ヒカリは嬉しそうに、女性陣の控え室へと向かっていった。

 

「わっ……私も着たい!!」

 

「そうねぇ。せっかくだから、私も着てみたいわ!」

 

「ねぇねぇ、やーくん!私たちもドレスを着たいからさ、花婿さんをやってよ!」

 

「マジか!?まだこれを着てなきゃいけないのか?」

 

「そうですよ!それに、統夜先輩は私の彼氏なんですから、流石にそれは……」

 

梓は自分の彼氏が他の人とウェディング写真を撮るのはどうかと思っていたのだが、唯たちもまた統夜と思い出を作りたいだろうと考え、否定的な言葉をつぐんだのであった。

 

「わ、わかりました。特別ですよ?」

 

「やったぁ♪さすがあずにゃん♪」

 

「梓、いいのか?」

 

「はい。先輩たちだって1つでも思い出を作りたいでしょうし、今日だけならいいかなと思いまして」

 

「そっか……わかったよ」

 

統夜は梓の心中を察したため、それ以上は何も言わなかった。

 

こうして、女性陣は衣装に着替えるために控え室へと移動し、スタジオには京水と撮影スタッフ。そして、幸太を除く男性陣が残されていた。

 

「なぁ、俺たちはどうする?」

 

「僕は見てるだけでいいですけどね」

 

「俺もだ。別に他の衣装を着て写真を撮ることに興味はないしな」

 

レオと戒人の2人は、他の衣装を着て写真を撮ることには興味ないようであった。

 

「うーん……。とりあえず俺は衣装だけでも見てくるかな」

 

どうやらアキトは写真撮影よりも衣装に興味があるようであり、衣装を見るために男性陣の控え室へと移動していた。

 

その場に残された統夜たちは、他愛のない話をしながら時間をつぶしていた。

 

しばらく話をしていると……。

 

「……おう、戻ったぜ!」

 

「あぁ、おかえり。アキ……ト?」

 

「……な、何ですか?アキト。その格好は」

 

どうやらアキトは衣装を見ただけではなく、衣装を着たようなのだが、その姿にレオは驚いていた。

 

「へへっ、これってサムライの衣装だろ?俺、こういうの1度着てみたいって思ってたんだよ♪」

 

アキトが今着ているのは侍の衣装であり、この衣装をアキトが見つけた時、迷うことなく着用していた。

 

「ほう、これがサムライってやつか。俺も初めて見るな」

 

「僕も見たことはありませんが、話なら聞いたことがあります」

 

以前とある侍に憑依したカゲミツというホラーが零と戦ったのだが、その時の話をレオは零から聞いていたため、侍の存在は聞いたことがあった。

 

それは統夜も同様であり、ウンウンと頷いていた。

 

「まぁ♪なかなかイカしてるじゃない!素晴らしいわ!素晴らしいわ!」

 

「へへっ、そうだろそうだろ?」

 

京水はアキトの侍姿を見て、興奮しており、アキトは何故かドヤ顔をしていた。

 

「ささっ、他のみんなが来る前に撮影を済ませちゃいましょう♪」

 

「よし来た!よろしく頼むぜ!」

 

こうしてアキトはノリノリで写真撮影を行うことになった。

 

アキトと同時に幸太も来ていたのだが、幸太は統夜同様花婿の格好をしていた。

 

統夜たちは女性陣の着替えを待つ間、アキトの撮影を眺めていた。

 

京水もアキトもノリノリであり、色んなポーズをとって撮影は行われていた。

 

撮影はしばらく続き、ちょうどアキトの撮影が終わったその時だった。

 

「お待たせぇ♪」

 

唯の声が聞こえてくると、女性陣がスタジオに戻ってきた。

 

どうやら衣装の着替えが終わったようであった。

 

「おう、みんな。待ってた……ぜ……」

 

統夜は唯たちの姿を見て、頬を赤らめていた。

 

その訳とは……。

 

「エヘヘ……。やーくん、似合うかなぁ?」

 

ヒカリや梓だけではなく、唯と澪がウェディングドレスを着ており、いつもと違う2人の姿に、統夜は照れていたのであった。

 

京水は多めにウェディングドレスを用意していたのだが、軽音部のメンバー全員が着るほどウェディングドレスのストックはなく、着たがっていた澪と、唯の2人がウェディングドレスを着ることになった。

 

「あ、あぁ……。見違えたよ……」

 

「本当?良かったぁ♪」

 

「な、なぁ、統夜。私も……似合ってるか?」

 

澪は頬を赤らめて少し照れながら、このように統夜に聞いていた。

 

そんな澪の仕草は、統夜だけではなく、男性陣をドキッとさせるには十分だった。

 

「あ、あぁ。澪も似合ってるぜ!」

 

「ほ、本当か?良かった……」

 

統夜に似合っていると言ってもらい、澪は嬉しそうに笑みを浮かべながら安堵していた。

 

澪は狙ってる訳ではないのだが、嬉しそうに安堵するその表情も男心をくすぐるものであり、主に統夜はドキドキしていたのであった。

 

「私も着たかったなぁ……」

 

「ま、ドレスの数も限られてるし、仕方ないよな」

 

紬と律はドレスのストックが無くて着られなかったのだが、特に紬が残念そうにしていた。

 

「りっちゃんもやっぱり着てみたかったわよねぇ?」

 

「あっ、あたしは別に!」

 

律も実はドレスを着てみたいと思っていたのだが、紬にそこを追求されると、顔を真っ赤にして否定していた。

 

「ウフフ♪りっちゃん、可愛い♪」

 

紬は律もドレスを着たがっていることを見抜いており、笑みを浮かべていた。

 

「う、うるせぇ!!」

 

律は普段あまり見せることのない乙女な一面を見せていたのだが、律はそれを否定するかのように顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。

 

「と、とりあえず、私と幸太が先に写真を撮るからみんなは後でね」

 

「はーい!」

 

ウェディングドレスを着たヒカリは、早く写真撮影をしたいのか、先に撮りたいと主張し、唯がみんなを代表して返事をしていた。

 

こうして、ヒカリと幸太は先に写真撮影を行うことになり、統夜たちはその撮影を見届けていた。

 

ヒカリと幸太の撮影が終わると、続いては紬、唯の順番で、統夜とツーショットで撮影を行い、1人でも撮影を行った。

 

紬と唯の撮影が終わると、京水は今日の記念ということで、全員での集合写真を撮ってくれることになった。

 

衣装を着替えたメンバーが真ん中にたち、衣装を着替えていないメンバーはそれぞれ並んでいた。

 

アシスタントである憂、純、さわ子の3人も一緒に集合写真を撮るため、一緒に並んでいた。

 

「エヘヘ……。まさかこうやってみんなで集合写真を撮ることになるなんてね♪」

 

軽音部の中で集合写真は度々撮っているが、戒人たちやヒカリたちも一緒に写真を撮るのは初めてであった。

 

そのため、唯はいつもとは違う集合写真を撮れることを喜んでいた。

 

「そうだな。俺も嬉しいって思ってるよ」

 

統夜もまた、盟友である戒人やアキト。そして尊敬しているレオと共に写真が撮れるというのは嬉しい限りであった。

 

「……そうですね♪」

 

梓は、統夜の嬉しそうな表情を見て、満足そうに笑みを浮かべていた。

 

「さて……。みんな!撮るわよ!」

 

全員が並んだことを確認した京水は、集合写真の撮影を行った。

 

何枚か撮影を行うと、集合写真の撮影は終了し、統夜たちは衣装からそれぞれ着てきた私服に着替えたところで撮影の仕事は終了した。

 

「梓ちゃん、本当にありがとね♪すごく助かったわ♪」

 

「あっ、いえ。私たちも良い思い出を作れたので、感謝しています」

 

全員の着替えが終わると、京水が店の入り口まで見送りに来てくれた。

 

「写真が出来たら送るわね」

 

「はい!楽しみにしてます!」

 

「あの、私たちの写真はさっき話した住所に……」

 

「えぇ。そこに送るわね」

 

ヒカリは京水に自分と幸太の写真を送ってもらうために住所を教えていた。

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

この写真撮影は一応仕事であるのだが、統夜たちは報酬はもらっていなかった。

 

その代わり、付き添いで来た唯たちの撮影を許可し、撮った写真を送るのを報酬とさせてもらったのである。

 

「それじゃあ、今日はありがとね。また何かあれば連絡するから、よろしくね!」

 

「アハハ……。その時はよろしくお願いします……」

 

統夜たちは京水に一礼すると、そのまま「Photo studio NEVER」を後にした。

 

「……ねぇねぇ、この後どうする?」

 

撮影は思った以上に時間がかかったため、外は既に暗くなっていた。

 

「せっかくだし、みんなで焼き肉でも行くか?」

 

「焼き肉……賛成!!」

 

律は焼き肉が食べたかったのか、唯たちの意見を聞かずに幸太の提案を了承していた。

 

「おい、律!勝手に!」

 

「いいじゃない♪私もぜひ行きたいわ♪」

 

「うん、私も♪ね、憂」

 

「うん!たまには焼き肉もいいよね♪」

 

焼き肉に行くという案に、紬、唯、憂も了承していた。

 

「私もぜひ行きたいです!」

 

「そうね。このメンツで食事だなんてもうないかもしれないしね」

 

さらに、純とさわ子も焼き肉に参加する意思を伝えていた。

 

「……ま、まぁ。みんな行くなら私も行こうかな……」

 

「そうですね……」

 

唯たちは行く気満々なため、澪と梓も参加の意思を伝えた。

 

後、参加するかどうかハッキリしていないのは、統夜たち魔戒組だった。

 

「統夜先輩たちはどうですか?」

 

「うーん、そうだなぁ……」

 

統夜が参加するかどうかを考えていたその時だった。

 

『……!?統夜!どうやら焼き肉はお預けのようだぜ!』

 

「!?ということは……」

 

『うむ!ホラーの気配じゃ!それもこちらに近付いておるぞ!』

 

『レオ!油断するんじゃないよ!』

 

魔導輪たちがホラーの気配を感じ取っており、統夜、戒人、レオの3人は魔戒剣を取り出し、ホラーの襲撃に備えていた。

 

「……みんな!俺たちの後ろへ!」

 

統夜、戒人、レオ、アキトが前に出て、唯たちは統夜たちの後ろへと移動していた。

 

その時、ウェディングドレスを着た女性……千尋が統夜たちの前に現れた。

 

「イルバ……。こいつがホラーか」

 

『あぁ。どうやらそうらしい』

 

『これだけ殺気がむき出しじゃと、魔導火を使うまでもないのぉ』

 

トルバの言う通り、千尋の殺気はかなりのものであり、魔導火を使わなくても、千尋がホラーであると探知することが出来た。

 

「……ねぇ、そこのあなた」

 

「……!?わ、私ですか?」

 

千尋は鋭い目付きで梓を睨みつけると、梓を指差していた。

 

「あなた……。何でそこまで幸せそうなの?正直目障りよ」

 

「へ?な、何でって……」

 

梓は千尋の言葉に困惑していたのだが……。

 

「……言いたいことはそれだけか」

 

統夜は魔戒剣を抜くと、千尋を睨みつけていた。

 

「……あなた……。魔戒騎士だったのね……。さらに目障りなんだけど……」

 

「フッ、目障りか……。俺もホラーであるお前が目障りだと思ってるよ」

 

「あなたたちはまとめて私の餌になってもらうわ」

 

千尋は怪しげな笑みを浮かべると、ホラー態になろうとしていた。

 

「……くっ、ここでドンパチする訳にはいかないな……」

 

統夜たちがいる場所は一応商店街の中であるため、ここで戦ってしまうと、騒ぎになるのは必至だった。

 

そこで統夜は……。

 

「……レオさん!アキト!」

 

「わかりました!行きますよ!アキト!」

 

「おう!わかったぜ!」

 

統夜の意思を汲み取ったレオとアキトは魔導筆を取り出して、とある術を放った。

 

すると、この場にいる統夜たちと千尋の姿が消えてしまった。

 

「Photo studio NEVER」の前から姿を消した統夜たちは、どこだかわからない不思議な空間に移動していた。

 

「……!?こ、ここは……?」

 

「僕とアキトが作った特殊な結界です」

 

「あぁ。ここだったら、どんだけ激しくドンパチしても問題ないからな」

 

統夜は街中で戦うと騒ぎになるのが必至だったため、アキトとレオに結界を作るよう頼んだのであった。

 

「そういうことだ。ここなら思い切り戦えるからな」

 

統夜は魔戒剣を構えると、ホラー態へと変わろうとしている千尋を睨みつけた。

 

「……レオさん、アキト。唯たちを頼む」

 

「あのホラーは俺と統夜で狩る!」

 

戒人も魔戒剣を抜くと、それを構えながら千尋を睨みつけていた。

 

「えぇ。任せてください!」

 

「みんなは俺と師匠が守る!だから、お前らは思い切り戦ってこい!」

 

レオとアキトは魔導筆を構えると、唯たちを守る体勢に入っていた。

 

すると、ホラー態になろうとしていた千尋が、完全なホラーの姿へと変貌した。

 

そのホラーは花嫁のような姿をしていたのだが、その上には巨大なブーケの怪物が姿を現していた。

 

『統夜!こいつはブーケリア。陰我にまみれた花嫁の成れの果てのホラーだ』

 

『このホラーは手強いからのぉ。戒人、油断するではないぞ!』

 

「あぁ!」

 

統夜たちが対峙しているこのホラーはブーケリアと呼ばれるホラーであり、花嫁の陰我から生まれたホラーである。

 

このホラーは上級ホラーであるため、並の魔戒騎士では倒すことは困難な程の力を秘めている。

 

『……統夜!戒人!来るぞ!』

 

イルバが警告をすると、ブーケリアはツタのようなものを統夜と戒人目掛けて放った。

 

「……っ!」

 

「くっ!」

 

統夜と戒人は魔戒剣を振るい、迫り来るツタのようなものを斬り裂いていった。

 

そのツタのようなものは、統夜と戒人だけではなく、唯たちにも迫っていた。

 

「させませんよ!」

 

「あぁ!」

 

レオは法術を放ってツタのようなものを消滅させ、アキトは魔戒銃を取り出すと、法術と魔戒銃を組み合わせてツタのようなものを消滅させていた。

 

アキトの魔戒銃はまだ完璧ではなかったが、統夜の持って帰ったきたお土産のおかげでその性能は飛躍的に向上していた。

 

「……っ!俺も援護する!」

 

幸太も拳銃を取り出すと、ツタのようなものを狙い撃っていた。

 

幸太の拳銃ではホラーにダメージを与えることは出来ないが、ツタのようなものを破壊するには十分だった。

 

「!幸太さん!助かります!」

 

「気にするな!俺だって刑事なんだ。守れるものはこの手で守ってみせる!」

 

「幸太……」

 

ヒカリは、刑事として人を守るために一生懸命な幸太に惹かれたため、そんな幸太に熱い視線を送っていた。

 

こうして、唯たちはレオ、アキト、幸太の3人によって守られ、統夜と戒人はブーケリアとの戦いに専念することが出来た。

 

しかし、ブーケリアの放つツタのようなものはさらに勢いを増しており、統夜と戒人はブーケリアに接近出来ずにいた。

 

『おい、統夜!どうするんだ!このままじゃ奴に接近出来ないぜ!』

 

「大丈夫だ!隙を見つけて鎧を召還して奴に接近するさ!」

 

統夜はどうにか隙を見つけて、鎧を召還するつもりでいた。

 

「あぁ!俺もそうするつもりだ!」

 

どうやら戒人も、隙を見つけて鎧を召還するつもりだった。

そうしているうちにツタのようなものが戒人に迫り、戒人は右に大きくジャンプをしてツタのようなものをかわすと、その状態で魔戒剣を高く突き上げて円を描いた。

 

そして、戒人はその円の中に入っていくと、戒人は紫の輝きを放つガイアの鎧を身に纏った。

 

そして、魔戒剣から姿の変わった堅陣剣を振るってツタのようなものを斬り裂いていくと、どうにかブーケリアに接近しようとしていた。

 

そんな中、統夜もまた、ツタのようなものを斬り裂いて反撃の機会を伺っていた。

 

統夜は何度かツタのようなものを斬り裂くと、後方にジャンプして、ツタのようなものが迫る前に鎧を召還することにした。

 

「……陰我にまみれた花嫁。俺が解き放つ!!」

 

統夜はブーケリアに向かってこのように宣言すると、魔戒剣を高く突き上げて円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれた統夜であったが、ツタのようなものが統夜に迫っていた。

 

統夜が白銀の輝きを放つ奏狼の鎧を身に纏った瞬間、ツタのようなものが統夜の両手と左足にからまった。

 

しかし……。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

統夜は獣のような咆哮をあげると、統夜を縛り付けていたツタのようなものを消滅させ、ブーケリアに向かっていった。

 

統夜は皇輝剣を振るいながらツタのようなものを斬り裂きながら、どうにかブーケリアに接近しようとしていた。

 

そんな中……。

 

「……取った!!」

 

どうにか戒人がブーケリアに接近し、堅陣剣を一閃しようとするのだが……。

 

「……!?しまった!」

 

戒人の左足にツタのようなものがからまってしまい、ブーケリアはそのツタのようなものを振り下ろし、戒人を地面に叩きつけていた。

 

「ぐぅ……!」

 

「!?戒人!」

 

「俺は大丈夫だ!だからホラーに集中しろ!」

 

地面に叩きつけられながらも、戒人は堅陣剣を振るってツタのようなものを斬り裂き、どうにか立ち上がろうとしていた。

 

統夜は戒人が心配だったが、戒人の思いを無駄にしないためにブーケリアに向かっていった。

 

ブーケリアの懐にどうにか接近した統夜は、トドメを刺すべく皇輝剣を一閃した。

 

しかし、ブーケリアは大きなブーケの口の部分から息のようなものを吐いた。

 

「ぐぁぁぁ!!」

 

その息のようなものに吹き飛ばさされた統夜は、思い切り地面に叩きつけられた。

 

「統夜先輩!!」

 

統夜がホラーの攻撃を受けてしまい、心配していた梓が声をあげていた。

 

「……くっ……。っ!?」

 

ブーケリアはゆっくりと立ち上がる統夜に追い討ちをかけるためにツタのようなものを統夜に集中して放っていた。

 

「うっ……くっ……」

 

統夜は皇輝剣でどうにか受け止めるが、このまま押し切られてしまっては体を貫かれる可能性があった。

 

しかし、攻撃を統夜に集中させたことは、ブーケリアにとって致命的なミスとなってしまった。

 

「……戒人!!今だ!」

 

統夜に攻撃が集中したため、ツタのようなものの攻撃から解放された戒人が一気にブーケリアまで接近し、堅陣剣を大きく振り下ろした。

 

その一閃は、ブーケリアの巨体を真っ二つに斬り裂き、その一撃を受けたブーケリアは断末魔をあげながら消滅していった。

 

それによりツタのようなものも消滅し、統夜は絶体絶命の状況から救われた。

 

「……っ!はぁ……はぁ……はぁ……」

 

絶体絶命の状況から救われた統夜は、そのまま鎧を解除すると、その場で膝をついていた。

 

「統夜先輩!」

 

統夜が膝をついたのを見ていた梓は、いの一番に統夜に駆け寄っていた。

 

戒人はその様子を見ながら鎧を解除し、元に戻った魔戒剣を鞘に納めた。

 

「統夜先輩、大丈夫ですか?」

 

梓は統夜の体を支えると、統夜をゆっくりと立たせていた。

 

「あぁ、なんとかな。あのホラー相当手強かったよ。俺1人じゃ危なかったかもしれないな」

 

『まぁ、確かに奴は手強かったが、お前もまだまだだな。お前がもうちょっと慎重になっていればさっきの一撃で奴を倒せたハズだぜ』

 

「そうだな……。俺は魔戒騎士としてはまだまだなんだ。もっともっと精進するさ」

 

統夜は前回のサバックで準優勝した程の実力者なのだが、今でも自分ことを未熟と思っており、常に精進を怠らなかった。

 

「統夜先輩……」

 

梓はそんな統夜のことを心配そうに見つめていた。

 

「だけど、やーくんも戒人さんも無事でよかったよぉ」

 

「そうだな。こっちも見ててヒヤヒヤしたけどな」

 

「それだけあのホラーが強かったってことだよな」

 

「そうねぇ。だけど、本当に良かったわ♪」

 

ホラーとの戦いを度々目撃していた唯たちは、統夜の戦いを心配そうに見ていたのだが、無事に終わって安堵していた。

 

「こ、これがホラーとの戦い……」

 

あまりホラーとの戦いを見てきていない純は、ブーケリアとの激しい戦いに圧倒されていた。

 

「……」

 

憂は統夜が無事で安堵はしていたものの、心配そうに統夜のことを見ていた。

 

「改めて、魔戒騎士っていうのは凄い仕事よね……」

 

さわ子も久しぶりに統夜たちの戦いを見ており、その迫力に圧倒されていた。

 

ブーケリアとの死闘を繰り広げた戒人は唯たちのもとへ歩み寄り、統夜はどうにか魔戒剣を鞘に納めると、梓に支えられながらゆっくりと唯たちのもとへ歩み寄っていた。

 

「さて、ホラーも倒したし、そろそろ結界を解かないとな」

 

「そうですね。……アキト!」

 

「了解だ!師匠!」

 

レオとアキトは魔導筆を用いてとある法術を放つと、2人の作った結界は消えていった。

 

そして、統夜たちはもといた場所へと戻ってきたのであった。

 

「……あ、戻ってきた!」

 

「これで一安心だな」

 

統夜たちは先ほどまでいた「Photo studio NEVER」の入り口に戻ってきて、澪は安堵していた。

 

「さて……ホラーもいなくなった訳だし、気を取り直して焼き肉にでも行くか?」

 

「そうね。行きましょう♪」

 

ホラーも討滅されたということで、幸太は改めて焼き肉を提案すると、それにヒカリが乗っていた。

 

元々行こうという提案していた唯たちも行くことを伝えており、まだハッキリしていないのは、やはり魔戒組だった。

 

「ホラーも倒したし、俺も行こうかな」

 

「僕も行きます!たまにはいいですしね」

 

「俺も俺も♪焼き肉焼き肉♪」

 

統夜、レオ、アキトの3人は行く気満々のようであった。

 

そして、戒人はというと……。

 

「俺はやめておくよ。番犬所への報告もあるしな」

 

戒人は、番犬所にホラーを討伐したことを報告するために、焼き肉屋へ行くのは断っていた。

 

「えぇ?いいじゃねぇか、別に。報告は後でもさ」

 

「む……。だけど……」

 

「そこはアキトに賛成だな。たまにはみんなでワイワイ食事ってのも悪くないと思うけどな」

 

「と、統夜まで……」

 

「ほら、戒人君。ぜひ行きましょう♪」

 

「……」

 

アキト、統夜、レオの3人からの説得を受けて、戒人は少し考えていた。

 

そして……。

 

「……わかった。ちょっとだけ参加させてもらおう」

 

戒人は渋々焼き肉に参加することを決めたのであった。

 

「よっしゃあ!それじゃあさっそく行こうぜ!」

 

アキトは本当に焼き肉を食べたかったのか、凄くノリノリであった。

 

「アハハ……。店はこっちだぞ」

 

幸太が先導をして焼き肉屋へと向かうと、統夜たちは幸太について行った。

 

統夜たちが向かった焼き肉屋は、桜ヶ丘商店街にあり、桜ヶ丘の中では大手の焼き肉屋であった。

 

さらにこの店は幸太の行きつけということもあり、大人数で押しかけても融通が効くのであった。

 

こうして、統夜たちは焼き肉屋に到着すると、大人数での焼き肉を楽しんでいた。

 

そのため、この日は統夜たちにとってもかけがえのない思い出の1ページとなったのであった……。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『卒業が近付いてきたな。だからこそ、このように平穏に過ごしたいよな。次回、「学校」。ま、たまにはこんな1日もいいんじゃないのか?』

 




思ったよりも長くなっちゃいましたが、無事に統夜たちは撮影を終えることが出来ました。

そして、今回登場したホラーは、「CR牙狼 金色になれ」に登場したブーケリアでした。

花嫁といえばブーケリアかな?と思い、今回登場させました。

ブーケリアはかなりの強敵でしたが、レオとアキトが唯たちを守り、統夜と戒人がブーケリアと戦うという完璧なチームプレイのおかげで、どうにか倒すことが出来ました。

この話を考えた時からブーケリアを出すかどうか迷ってましたけど、出したことで牙狼らしさも出て良かったかな?と思っています。

そして、撮影ですが、軽音部メンバーのウェディングドレス姿は凄く見たい!(切望)

まぁ、ドレスの数の都合上、律とムギは着れませんでしたけど。

そして、アキトはアキトでノリノリで楽しんでますよね。魔戒法師でここまで遊び心のあるキャラはなかなかいないんじゃないですかね(笑)

さて、次回からいよいよ卒業式に向かって話が進んでいきます。

この小説の終わりも近付いていますが、最後まで楽しんでいただけると、嬉しいです。

それでは、次回をお楽しみに!


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