活動報告でも新年の挨拶はしましたが、明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!
今回は新年初投稿となります。
とあるイベントのライブに参加することになった統夜たちがそのライブを迎え、日本に帰国します。
ロンドン最終日は一体どのような1日になるのか?
それでは、第112話をどうぞ!
統夜がダンテと共にファントムを倒し、さらに川上から誘われていたライブにも参加することになった。
そして翌日、この日はライブの当日であり、日本に帰国する日でもあった。
朝食を済ませた統夜たちは6人揃ってエレベーターに乗っていた。
「ふわぁぁ……」
エレベーターの中で、梓は大きなあくびをしていた。
「眠そうだね、あずにゃん」
「梓、昨日はあまり寝られなかったのか?」
梓と同室だった統夜と唯は、眠そうにしている梓を気遣っていた。
「唯先輩と統夜先輩の夢を見たせいでよく眠れなかったんです」
「え?どんな夢なの?」
「それが凄く変な夢だったんですよ」
「それでそれで?」
「……秘密ですけど」
統夜と唯が留年するということが正夢になっては嫌だったため、梓はジト目で口をつぐんでいた。
「えぇ!?」
唯は梓の見た夢の内容を秘密にされたのが面白くなかったのだが、そうしているうちにエレベーターは1階に到着したため、統夜たちはエレベーターを降りた。
「……あっ!ちょっと待ってて!」
エレベーターを降りるなり、紬はロビーの奥へと向かっていった。
それを追いかけるように統夜たちもついていったのだが……。
「!?ど、どうしたの!?ムギちゃん」
「エヘヘ……♪」
紬は自分が愛用しているキーボードを抱えており、唯は驚きのあまり目を丸くしていた。
だが、それは統夜たちも同様であった。
「まさか、わざわざ自分のキーボードを持ってきたのか?」
「だって、私のだけなかったんだもの♪」
自分だけ楽器を用意しておらず悔しさを募らせていた紬であったが、自分の楽器が到着したことがとても嬉しかったのか、満面の笑みを浮かべていた。
「……金持ちすげーな……」
紬のキーボード程のものをわざわざ日本からここまで運ぶのはかなりのコストがかかるため、律は呆然としていた。
「いっぱい揃って良かったね!」
「まぁ、これでライブの準備は整ったってことなのかな?」
キーボードであればライブ会場のスタッフが貸してくれるとは思うが、紬愛用のキーボードが届いたため、ライブの準備は整ったと思われた。
律は自分のスティックは持参しているものの、自分のドラムだけは持ち運びは出来ないため、ドラムセットだけは借りる必要があった。
こうして準備を整えた統夜たちはチェックアウトをしてホテルを後にすると、そのままライブの会場であるロンドンアイへと向かった。
※※※
こうして、ロンドンアイに到着した統夜たちは、階段を降りていき、再びグルグルと回るロンドンアイを眺めていた。
「何度見ても大きいねぇ」
「……何度見ても回ってる……」
唯はキラキラと目を輝かせながらロンドンアイを見ていたのだが、澪は顔を真っ青にしながらロンドンアイを見ていた。
どうやら、回るものに対するトラウマはまだ治ってないようであった。
「……どうやら、会場はあっちみたいだな」
統夜はイベント会場の入り口ゲートを発見したのか、そこを指差していた。
こうして統夜たちはライブを行うイベント会場へと足を踏み入れた。
このイベントは日本のポップカルチャーを紹介するイベントのようで、屋台ではたこ焼きや焼きそばなどといった日本特有のメニューが並んでいた。
そして、コスプレをしている人の姿も多く、セーラー服を着た女性や袴を着た女性、さらには戦国武将の甲冑を着ている者もいたのである。
統夜たちはライブ会場を探しながらイベント会場の盛り上がりぶりを眺めていた。
しばらく歩いていると、ライブ会場に到着した。
「……あっ!りっちゃん!みんな!!」
統夜たちの姿を見かけたラブクライシスのマキは、ブンブンと手を振って律や統夜たちのことを呼んでいた。
「あっ、マキちゃん!」
その姿を見かけた律はマキのもとへ駆け寄り、統夜たちも後に続いていた。
「マキちゃんたちは何時からなの?」
「私たちは3時半だよ」
「あっ、私たちの前なんだ」
「ねぇ、ブラックフリルさんたちは?」
近くにはブラックフリルの2人が座っており、唯が出演時間を聞いていたのだが、言葉を発さずに手で「4」とサインをしていた。
「え?4時!?」
「私たちも4時からでしたよね?」
「おい、律。出演時間を間違った訳じゃないだろうな」
統夜は律に出演時間の確認をしていたのだが、ここで間違っていることがわかれば、飛行機に間に合わなくなることが必至になるからであった。
「あ、あたしはちゃんと確認したぞ!」
律は唇を尖らせながらしっかりと確認したことを伝えていた。
すると……。
「間違いじゃないよ。私たちとブラックフリルは中のステージでライブをやるんだけど、りっちゃんたちは野外ステージでライブを行うんだよ」
どうやらライブ会場は1箇所だけではないようで、マキが演奏場所の割り振りを説明していた。
その説明を受けて、統夜たちは野外ステージの方へ移動した。
「へぇ、ここで演奏をするのか……」
「うん!結構いい眺めだよね!」
野外ステージからの眺めはなかなかのものであり、統夜たちは目を輝かせながら周囲を見回していた。
「素敵ね♪ここで演奏するなんて!」
「そうだな!」
「それにしても、あたしたちだけ野外かよって思ったけど、いいかもしれないな!」
「はい!それは私も思いました!」
統夜たちがそれぞれこの野外ステージでライブが出来ることに感動していると……。
「ハーイ!ホーカゴティータイム?」
ステージの下から、このライブのスタッフらしき男性が声をかけてきた。
「イエス!」
統夜が全員を代表して返事をすると、スタッフらしき男性の指示を聞いて、了承の旨を伝えた。
「……みんな!セッティングを始めてくれとのことだから、始めようぜ!」
統夜がスタッフらしき男性からの指示を伝え、統夜たちはライブのセッティングを始めていた。
ちょうどその頃、ラブクライシスのメンバーは、ライブを行っており、自慢のパフォーマンスを観客に見せつけていた。
そして統夜たちはコートを脱いでライブの準備を行っており、律はドラムセットの調整や、スネアなどのチューニングを行っており、紬はキーボードのスタンバイをしていた。
統夜たち弦楽器組も、それぞれ楽器をスタンバイし、チューニングもバッチリ行っていた。
今回のステージは制服で出ると昨日の打ち合わせで決めたため、統夜たちはホテルを出る時には既に制服を着ていた。
あとはシールドのプラグをアンプに差し込めばおおよその準備は完了なのだが……。
「……ねぇ、これって挿していいのかな?」
「え?」
「火花が出たりしない?」
「そんなこと、ある訳ないじゃないですか!」
唯はどうやらホテルで変圧器を使わずにドライヤーを使って火花が出たことがトラウマになっているようであった。
「……そうだな、何か嫌な予感がする」
「澪先輩まで!?」
「やれやれ……。こいつは日本製の楽器じゃないんだから、火花が出るとかあり得ないだろ……」
統夜は呆れているのか、ジト目で唯のことを見ていたが、唯はシールドのプラグをアンプに差し込むことをためらっていた。
「ったく……しょうがねぇな……」
統夜が唯に代わってシールドのプラグをアンプに差し込もうとするのだが、その前に何者かが乱入し、シールドのプラグを掴んでいた。
そして……。
「そのまま挿せばいいのよ!」
乱入者はシールドのプラグをアンプに差し込むのだが、唯は勢いあまって尻もちをついてしまった。
統夜たちは恐る恐る乱入者の顔を見るのだが……。
「「「「「「……さ、さわちゃん!!」」」」」」
乱入者の正体は何とさわ子であり、統夜たちは驚きのあまり、全員揃ってさわちゃんと呼んでいた。
「そもそも、そのギターは日本のメーカーじゃないでしょ?」
さわ子は、先ほど統夜が言っていたこととまったく同じことを言っていた。
「な、何?幻?」
「何でこんなところに!?」
「足は……ある」
「まさか、ホラーの仕業か!?」
統夜たちは驚きのあまり気が動転してるのか、言いたい放題であった。
『おいおい、ひどい言われようだな……』
「そうよ!私は幽霊でもホラーでもないわよ!」
さわ子は言いたい放題な統夜たちの発言を否定していた。
「だけど、念には念を入れないと……」
統夜はいつものように制服の上から魔法衣を羽織っており、魔法衣の裏地から魔導ライターを取り出そうとするのだが……。
「違うって言ってるでしょ!!」
さわ子は軽音部時代に戻ったかのように、鋭い目付きでギロリと統夜を睨みつけていた。
「も……申し訳ございません……」
統夜はさわ子のあまりの迫力に、顔が真っ青となり、しゅんとしながらさわ子に謝っていた。
「さわちゃん、何でロンドンに?ハネムーン?」
唯はさわ子にロンドンへ来た理由を聞いていたのだが、とんでもないことを言っていた。
「おいおい……。お前なぁ」
『さすがは天然娘だな……』
統夜とイルバは恐れ知らずな唯の発言に呆れ果てていた。
「マイルが貯まってたのよ。飲み会もカードで払ってコツコツ貯めて……。なのに、有効期限が切れそうだったから」
さわ子がロンドンを訪れたのは、大人ならではの理由だった。
「それに私、軽音部の顧問だしね♪」
さわ子がロンドンへ訪れたのは、マイルの期限が切れそうだというのは建前で、本当は軽音部の顧問だからというところが大きいと思われた。
「それで、いつ来たの?」
「着いたのは昨日よ」
「帰るのは?」
「今夜♪」
「……大人って凄い……」
澪は、さわ子の大人ならではの行動力に驚きを隠せなかった。
「さわちゃん、一言言ってくれればいいのに……」
「あら、電話はしたわよ。だけど、あなたたち、出なかったんだもの」
「あー……。あの時の電話はさわちゃんだったのか……」
ホテルの部屋にかかってきた電話の正体がさわ子だと知り、律は苦笑いをしていた。
「それに私は今日のために衣装を持ってきたのよ!……ジャパニーズニンジャ!アンドレディースニンジャ!」
「忍者とくノ一かよ!!」
さわ子はキャリーバッグを開けて衣装を取り出すのだが、それは日本ならではである忍者とくノ一の衣装であった。
さわ子が見せたのはくノ一の衣装だったのだが……。
「ブラボー!ブラボー!」
それをたまたま見ていた壮年の男性が、歓声をあげながら拍手を送っていた。
「い、いやいやいや……」
律は苦笑いをしながらこの衣装を着ることを否定していた。
「モデルにも着てもらったんだから、ちょっと見なさい!」
「モデル……?」
「これよ、これ!」
さわ子はここに来る前に誰かにこの衣装を着てもらったらしいのだが、それが誰だかわからず、統夜は首を傾げていた。
そして携帯を取り出したさわ子は写真を統夜に見せるのだが……。
「……!!和ちゃん!?」
まず最初のモデルは和であり、唯は驚きを隠せなかった。
「まだいるわよ♪」
「……!憂まで!」
「純まで!?」
和だけではなく、憂や純もモデルになっていたようであり、唯と梓は驚いていた。
「……ふふん♪今度のはとっておきよ♪」
さわ子はさらに写真を撮っていたようで、それを統夜たちに見せていた。
「……!?レオ先生!?」
「アキトまで!!」
『……何やってんだ。あいつら……』
さわ子のとっておきと言うのが、先ほどの3人同様に忍者のコスプレをしているレオとアキトであった。
意外すぎる人物に澪と統夜は驚くのだが、イルバだけは呆れ果てていた。
「この写真を撮った時にたまたま2人が来てね。急遽モデルをお願いしたのよ♪」
「……しかも2人とも随分とノリノリだなぁ」
「アキトならまだしも、レオさんまでノリノリとは……」
写真をよく見ると、2人とも楽しそうであり、レオまでもここまで楽しそうにしてるのを見て、統夜は苦笑いしていた。
「それに、魔戒法師レプリカの新作もあるのよ♪」
さわ子は新しく作った魔戒法師レプリカの衣装を見せようとするのだが……。
「……却下」
「えぇ!?」
「はい、みんなスタンバイスタンバーイ!」
律はジト目のまま手を叩いてこのように統夜たちを促すのだが、さわ子は自分の衣装を採用してもらえず、ぷぅっと頬を膨らましていた。
こうして統夜たちは再びライブの準備を始めると、16時にライブをスタートさせた。
※※※
統夜たちがライブをスタートさせようとしているちょうどその頃……。
「……ほら、早く早く!」
「はいはい。引っ張らなくても大丈夫よ。パティ」
デビルメイクライで統夜たちが出会った少女……パティが、黒髪の女性と一緒に統夜たちが参加するイベントの会場に来ていた。
「……ここまで一緒に来てくれて、ありがとね、レディ」
パティは黒髪の女性をレディと呼んでいた。
その名前は本名ではないのだが、彼女の本名を知る者は少ないのであった。
「いいのよ。私だって気になるしね。ダリオとは違う日本の魔戒騎士っていうのが」
「あぁ、トウヤのことね?トウヤは魔戒騎士としてはまぁまぁだなってダンテが言ってたよ」
「へぇ、トウヤって言うのね……」
「あ、あそこにいるのがそうだよ!」
パティは野外ステージで演奏をしている統夜たちの姿を発見し、指を指していた。
「へぇ……あの子が……」
統夜はこの時魔法衣は羽織ってなかったが、放課後ティータイム唯一の男子であるため、レディはすぐに統夜の存在を認識していた。
(……かなり若いけどあの子……。それなりに修羅場をくぐってるみたいね……)
レディは人間でありながらダンテの同業者であるデビルハンターであり、その経験からか統夜がただの子供ではないことを見抜いていた。
「へぇ、本当にみんなバンドやってるんだ!」
パティは演奏している統夜たちを見て、キラキラと目を輝かせていた。
「ふーん……。なかなか可愛らしいバンドじゃない……」
レディは、統夜たちの演奏を聴き、日本語はわからなかったが、可愛らしい雰囲気を出していることに対して笑みを浮かべていた。
現在統夜たちは1曲目の演奏を終えて、2曲目である「ふわふわ時間」を演奏していた。
(……ん?)
統夜は演奏中にパティの姿を見つけるのだが、レディとは会っていないため、それが誰なのかわからず、首を傾げていた。
(パティの隣にいるあいつは誰なんだ?ただ者じゃないって言うのは間違いなさそうだけど……)
統夜は演奏しながらレディのことをジッと見ており、彼女から放たれるオーラが並の人間のものではないことに驚いていた。
レディもそんな統夜の視線に気付いてウインクをしていたのだが……。
《おい、統夜!本番中だぞ!集中しろ!》
(わ、わかってるよ!)
イルバに叱責されたことで我に返った統夜は、演奏に集中し、ミスをしないよう努めていた。
こうして、2曲目の「ふわふわ時間」もどうにか最後まで演奏することが出来た。
2曲目が終了し、客席からパチパチパチと大きくはなかったが、拍手が起こっていた。
『……という訳で、ロンドンとっても楽しかったです!ベリーインタレスティング!』
唯はMCとして簡単に挨拶をするのだが、統夜が唯の言葉をすかさず通訳し、観客にもわかるようにしていた。
「……合ってる?」
「大丈夫だ。それに、通訳もしてるし、問題はないぜ」
「……唯、そろそろ飛行機の時間が……」
ライブの時間も決まっており、あまり長々とライブをしていては帰りの飛行機に間に合わないため、律がそのことを唯に伝えていた。
唯は律の言葉を聞いて無言で頷くと、再び観客の方を見ていた。
そして……。
『……それでは、最後の曲です!「ごはんはおかず」!』
唯がこのように話をすると、統夜がすかさず通訳を入れたのだが、タイトルを聞いて、客席から少しだけ笑いが起きていた。
「……1!2!1・2・3・4!」
律の合図と共に、統夜たちは「ごはんはおかず」の演奏を始めた。
統夜たちが演奏しているごはんはおかずは、前回の学園祭で初めて演奏した曲であり、唯が作詞した非常に独特な曲である。
お米の素晴らしさを歌った曲であるため、ロンドンの人々に伝わるかはわからないが、全員の話し合いの末、この曲を最後の曲にしようと決めたため、現在演奏しているのであった。
こうして、イントロが終わり、唯は歌い始めた。
『♪ごはん〜は凄い〜よ。何でもあ〜うよホカホカ〜♪』
唯は日本語の歌詞で歌っていたのだが……。
(結局……)
(日本語かよ……)
(昨日一生懸命翻訳したのに……)
統夜は昨日の夜にライブの打ち合わせをした時に、唯に「ごはんはおかず」の英語バージョンを歌いたいから訳してくれと頼まれたたま、疲れた体に鞭を打ちながら訳していた。
しかし、結局はいつもと同じ日本語で歌っていたのを聞いた統夜はがっくりと肩を落としていた。
《残念だったな、統夜。まぁ、俺はこうなるだろうとは思っていたがな》
(あぅぅ……。思っていても言うなよな……)
イルバはカタカタと音を鳴らしながらテレパシーで統夜をからかうと、統夜はさらにしゅんとしてしまった。
しかし、演奏自体には手を抜いておらず、いつも通りの演奏を行っていた。
こうして、演奏は何の問題もなく進んでいったのだが、曲の後半になると、唯はステージから最も近い場所で座っている親子連れをちょくちょく見るようになっていた。
母親らしき女性が穏やかな表情で赤ん坊を抱いていたのだが、赤ん坊はあうあうと言いながら動こうとしていた。
さらに近くに止まった鳩を触ろうと必死に手を伸ばしていたのだが、唯は演奏して歌いながらその様子を見ていた。
《おいおい。唯のやつ、さっきからあの赤子ばかり見てるが、大丈夫なのか?》
(それは俺も気になってた。唯のやつ、変なミスをしなきゃいいけど……)
イルバと統夜は、テレパシーでこのような会話をしながら、唯がミスをしないか心配していた。
そんな中、演奏は最後のサビを残すのみとなった。
『♪……1・2・3・4、GOハン!……1・2・3・4、GOハン!』
後は同じフレーズをもう一回言えばこの曲も終わりになるのだが、唯は先ほどから気にしていた赤ん坊と目が合い、赤ん坊は無邪気に笑っていた。
その姿にメロメロになってしまった唯は、最後のフレーズの「GOハン」の「ん」の部分が、「うぅ〜♪」となってしまっていた。
そして……。
『もう一回!』
後は曲を終わらせるだけなのだが、唯が唐突に曲を継続させようとしており、それに統夜たちは困惑しつつも、一瞬崩れた曲をすぐに持ち直していた。
『ロンドンブリッジ!テムズリーバー!ロンドンタワーにロンドンアイ!!』
唯はロンドンの名所を指差しながら歌っていたのだが、これは完全に唯のオリジナルであった。
「……ここで英語かよ……」
「唯先輩……」
「やれやれ……。1人で暴走しやがって……」
律は急に英語バージョンになったことに対して苦笑いをして、梓はポカーンとしていた。
そして、統夜は1人で暴走している唯をジト目で見ながら心底呆れていた。
『♪ロンドン!ロンドン!やっぱり、お好み焼きアンドご飯!私自身は、ロンドン人!!』
(……どないやねん)
「……どないやねん」
唯のメチャクチャなフレーズにさわ子は心の中で思い切りツッコミを入れており、統夜はジト目でツッコミを兼ねて「どないやねん」と言っていた。
その後は普段通りの演奏を繰り返し、この曲は終了した。
そして、曲が終了すると、唯は……。
『……スカイハイ!』
と、唯が叫ぶと、大きな拍手が送られ、ここで統夜たちのライブは終了となった。
※※※
ライブ終了後、統夜たちは大急ぎで撤収すると、タクシーを捕まえるべく道路を目指して走っていた。
「何だよ!スカイハイって!」
唯が暴走したことによって演奏時間が延びてしまい、律はそのことに文句を言っていた。
「やり過ぎちゃった!赤ちゃん可愛かったんだもん!」
「それには同意しますけど!!」
どうやら梓も赤ん坊の存在を認識していたようだが、だからと言って最後の曲の時間を延長させたことを認めた訳ではなかった。
「あ、それって、前に座ってた子よね?」
「あぁ、そうだ。だからと言って暴走し過ぎなんだよ、お前は!」
紬も認識していたようであり、確認を取る問いかけに同意した統夜は、暴走していた唯に文句を言っていた。
「格好いいところを見せたかったんだよぉ!!」
唯は申し訳ないとは思っていたものの、熱い思いを止めることは出来なかった。
統夜たちはどうにか車道のある道にたどり着き、タクシーを呼ぼうとしていたのだが、その前に小型のバスが止まると、運転席から壮年の男性が出てきた。
「お前ら、乗りな!急いでんだろ?」
「!?モリソン!?どうして?」
その男性は情報屋としてダンテに仕事を提供しているモリソンであり、統夜は驚きを隠せなかった。
「パティの奴に頼まれてな。統夜たちを空港まで送ってやれってな」
「それはありがたい!モリソン!よろしく頼むよ!」
「任せな!さぁ、早く乗りな!」
統夜たちは小型バスのトランクにキャリーバッグや楽器を積み込むと、バスに乗り込んだ。
モリソンも運転席に座ると、バスを走らせ、空港へと向かっていった。
統夜たちが乗ったバスは小型で、10人ほどが乗れるバスで、統夜たちは自然と近くに集まっていた。
梓は統夜の隣に座っていたのだが、しばらくすると統夜にもたれかかって眠っていた。
「……寝ちゃったな」
「梓ちゃん、旅行中色々調べてくれて、頑張ってくれたもの」
梓はこの旅行が決まった時から旅行の計画を立てており、旅行中もガイドブックを頼りに色々調べものをしたりと統夜たちのために頑張ってくれたのであった。
「疲れたのかもな」
澪や紬だけではなく、律もすやすやと眠る梓を穏やかな表情で見守っていた。
「……あっ、雪だ!」
どうやら雪がちらちらと降ってきたみたいであり、唯は窓から見える景色を眺めていた。
統夜たちも同じように窓から見える景色を眺めていた。
「……ねぇ、私、凄いことに気付いたよ」
「「「「ん?」」」」
唯は何かを発見したようであり、それが何なのかわからない統夜たち4人は、首を傾げていた。
「……いつもの自分たちの曲でいいんだよね?」
「あら、今頃気付いたの?」
「私もそう思ってたわよ。唯ちゃん」
「私もとっくの昔に気付いていたよ」
「気付いてないのはお前だけだぜ、唯」
『そうだな。俺様から言わせてもらえば、何で今まで気付かなかったのか不思議なくらいだぜ』
「えぇ!?」
いつも通りでいい。このことに統夜たちは気付いていたのだが、唯は今回のライブを通して、ようやく気付いたようであった。
こうして統夜たちを乗せた小型バスは空港に到着した。
統夜は全員を代表してモリソンに礼を言うと搭乗手続きを済ませ、統夜たちの乗った飛行機が日本へ向けて飛び立っていった。
こうして統夜たちの卒業旅行は幕を閉じ、今回の旅行は統夜にとって忘れられないものとなった。
唯たちも、初の海外を大切な仲間たちと過ごすことが出来たため、かけがけのない思い出となったのであった、
……続く。
__次回予告__
『ようやく日本に帰ってきたな。帰って早々こうなるとは大忙しだな。次回、「学友」。統夜が学校に通うのもあと僅かだぜ!』
今回もデビルメイクライのキャラが登場しました。
レディは、「デビルメイクライ3」から登場下キャラであり、アニメでもダンテの相棒キャラ的な活躍をしています。
そして、ライブのシーンはほぼ原作と同じ感じになりましたが、ごはんはおかずの英語バージョンは統夜が翻訳をしており、それを採用されなかったことに統夜は肩を落としています(笑)
こうしてライブはどうにか終わり、モリソンのおかげでどうにか時間ギリギリで空港にたどり着くことが出来ました。
今回でロンドン編は終了となり、次回からクライマックスに向けてストーリーが進んでいきます。
次回は、日本に帰国した統夜たちがクラスメイトたちのためにとあることを行うことになります。
そのとあることとは?
それでは、次回をお楽しみに!