牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第111話になります!

もうすぐ年越しですが、今回の話が、今年最後の投稿になります。

さて、今回は統夜がダンテと共にとある悪魔と戦います。

その悪魔の正体とは?そして、統夜を待ち受ける運命とは?

それでは、第111話をどうぞ!




第111話 「邪気」

統夜は、卒業旅行で訪れたロンドンの地で、偶然、ホラーとは異なる魔獣である悪魔を狩る男……ダンテと出会った。

 

そして、ロンドン滞在3日目に偶然ダンテの店であるデビルメイクライに、統夜たちは偶然訪れることになった。

 

そこで、ダンテから聞かされたのは、悪魔という存在のこと。そして、ダンテが人間と悪魔のハーフであるということであった。

 

その話を聞いた統夜であったが、ひょんなことから、悪魔退治の仕事を引き受けることになった。

 

本来ならば断るつもりだったが、ダンテの持つ銃の設計図を手に入れれば、アキトの魔戒銃完成のヒントになると考えていた。

 

そのため、ダンテの持つ銃のスペア及び設計図を報酬として求めることで、統夜はこの仕事を引き受けたのであった。

 

こうして、仕事のため、唯たちとは別行動することになった統夜であったが、ダンテと共に、今回の仕事の場である、ロンドンアイ付近へと向かっていた。

 

「……まさか、またここに来ることになるとはな……」

 

統夜とダンテはロンドンアイに到着したのだが、統夜はグルグルと回っているロンドンアイをじっくりと眺めていた。

 

『まぁ、もし明日のイベントに出るのなら、また来ることにはなるがな』

 

「そうだな……。明日のイベントを中止にしないためにも、さっさと悪魔を見つけて蹴ちらさないとな……」

 

統夜は早々に仕事を片付けたいのか、鋭い目付きで、周囲を見回していた。

 

「おい、トウヤ。慌てるなよ。この人の多さだ。悪魔も不用意には仕掛けてはこないぜ」

 

常日頃から悪魔を狩り続けているダンテは、非常に冷静であった。

 

悪魔もホラーのように人間に擬態する場合もあれば、どこかへ潜伏して、獲物を捕食する場合もある。

 

どちらにしても、人の多い場所に現れて、暴れ回るケースはほぼないのである。

 

「今、悪魔の気配を追っている。見つけ次第叩きに行くからちょっと待ってろ」

 

『おい、ダンテ。俺様も協力しよう。俺様はホラーを探知するが、悪魔の気配も探知出来るはずだぜ』

 

「ま、好きにしな」

 

こうしてダンテとイルバは、悪魔の気配を探り始め、特にやることのない統夜は、大人しくしているしかなかったのであった。

 

それからおよそ30分後……。

 

「……!どうやら、出てきたみたいだな」

 

『あぁ。俺様も妙な気配を探知したぜ』

 

「!?それはどこに?」

 

「ついて来い。こっちだ」

 

悪魔の気配を探知したダンテは移動を開始すると、統夜は、その後を追った。

 

移動すること数分。2人が訪れたのは、ロンドンアイのある広場のはずれであり、人通りの少ない場所であった。

 

「……イルバ、ダンテ。ここなのか?」

 

「あぁ、そうだ」

 

『妙な気配を感じるぜ。統夜、気を付けろよ』

 

「あぁ……!わかった!」

 

統夜は魔戒剣を取り出すと、いつでも抜刀出来る状態にしておき、鋭い目付きで周囲を見回していた。

 

すると……。

 

『……!統夜!来るぞ!』

 

イルバが何かを感じ取り、それを統夜に伝えた。

 

その直後に巨大な影が統夜たちの前に姿を現した。

 

その巨大な影の正体は、巨大な蜘蛛のような怪物だった。

 

「……!?こ、こいつも……悪魔!?」

 

統夜は蜘蛛のような怪物が、予想以上に大きかったことに驚いていた。

 

「……フン!人間風情が、私のことを知っているのか!」

 

この蜘蛛のような怪物は、人間の言葉を話せるようであり、英語を使って統夜のことを見下す発言をしていた。

 

そんな中、ダンテは……。

 

「……やれやれ……。またお前かよ……。大人しく眠っていりゃあいいものを……」

 

どうやらこの悪魔を知っているようであり、その悪魔が登場したことに呆れ果てていた。

 

「……!?貴様は……!スパーダの息子か……!!」

 

「どうやら、俺のことは覚えているようだな。また、地獄へ叩き返してやるぜ!」

 

ダンテは二丁の拳銃を構えると、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「なぁ、ダンテ。お前はあいつのことを知っているのか?」

 

ダンテがこの悪魔のことを知っていることに驚いており、魔戒剣を抜いて、構えながらあの悪魔のことを聞いていた。

 

「まぁな。奴はファントム。俺がムンドゥスの野郎をぶっ飛ばす前に倒したザコだ。だから、そんなに気張るなよ、トウヤ」

 

ダンテは1度倒したことがあるからか、蜘蛛のような怪物……ファントムのことを、見下すような発言をしていた。

 

「おのれ……!またしても私のことを馬鹿にしおって!許さんぞ!!」

 

ダンテに見下されたことに激昂したファントムは、前脚についている鋭い爪を統夜とダンテ目掛けて振るった。

 

「くっ……!ダンテの奴、ザコとか言ってたけど、何て力だよ……!」

 

統夜とダンテはジャンプをしてファントムの攻撃をかわすのだが、ファントムの予想以上のパワーに統夜は驚いており、ファントムをザコ扱いしていたダンテに心の中で文句を言っていた。

 

「トウヤ!俺が隙を作る!お前はそいつで奴を叩っ斬れ!」

 

「言われなくても!!」

 

ダンテは2丁拳銃を交互に発砲して、ファントムの動きを止めようとしていた。

 

ダンテの2丁拳銃の攻撃は効いているようであり、その攻撃でファントムが怯んだ隙に、統夜はファントムへと向かって魔戒剣を一閃した。

 

しかし、その一撃でファントムの身体に傷をつけることは出来ず、ファントムは反撃と言わんばかりに尻尾についた針を統夜に向けるが、統夜はその一撃を魔戒剣で受け止めた。

 

「うっ……くっ……!」

 

統夜は魔戒剣でどうにかファントムの尻尾についた針を受け止めるのだが、予想以上の力に統夜の表情は歪んでいた。

 

魔戒剣から飛び散る火花が、その激しさを物語っていた。

 

「ったく……。世話の焼ける!」

 

ダンテは2丁拳銃を交互に発砲することでファントムを怯ませると、隙が出来たため、統夜は後方に下がり、体勢を立て直した。

 

「すまない、ダンテ」

 

「おい、トウヤ。仮にもお前は魔戒騎士だろ?こんなザコ相手に手こずるなよな」

 

「無茶言うな!こいつ、並のホラーよりも手強いんだから!」

 

ダンテはファントムをザコ扱いしているが、統夜はファントムをかなりの強敵と感じており、普段戦っているホラーよりも手こずっていた。

 

それは、ホラーと悪魔は別の存在ということもあるのだが、ファントム自体が、悪魔の中では強大な個体であるからであった。

 

統夜は、そんなファントムをザコ扱いしているダンテに驚きながらも、本当にそう思っているのか半信半疑だった。

 

「ほざくな、ダンテ!それにそこのガキ!貴様は魔戒騎士なのだな?」

 

「!?貴様、何故魔戒騎士を知っているんだ?」

 

「フン!貴様ら魔戒騎士はあのホラーと戦っているのだろう?」

 

「!?ホラーのことまで知ってるのか!?」

 

統夜は、ファントムが魔戒騎士だけではなく、ホラーのことも知っていたことに驚いていた。

 

「フン!我々悪魔は、ホラーごとき低級な魔獣とは一味もふた味も違う。そんな奴らと一緒にされては困る!」

 

『おいおい。それは俺様も聞き捨てならないな!』

 

イルバは魔導輪であるが、元を辿ればホラーであり、自分のことを馬鹿にされた気分になったイルバは不快感を露わにしていた。

 

「貴様は人間ごときに協力している無能なホラーか。そこの無能な人間のガキと共に私の餌になるがいい!」

 

『おい、統夜!あんな奴相手に負けるんじゃないぞ!』

 

「アハハ……。わかってるよ……」

 

イルバがいつも以上にムキになっており、統夜は苦笑いをしていた。

 

「愚かな魔戒騎士とダンテめ……!2人まとめて葬ってやる!」

 

ファントムは口の中で炎を収束させると、それを炎の弾として、統夜とダンテめがけて放った。

 

「……っ!?」

 

統夜はファントムの炎の弾を防ぎ切ることが出来ないと判断したのか、左に横っ飛びをして、ファントムの攻撃をかわした。

 

ダンテは、統夜とは反対方向である右に横っ飛びをして、攻撃をかわしていた。

 

「こいつ……!接近戦だけでも厄介なのに、遠距離攻撃も出来るのかよ!」

 

『統夜!まずは奴の接近戦を封じるために奴の脚と尻尾を叩っ斬るしかないぜ!』

 

「簡単に言うなよ!奴の懐に入るのは一筋縄じゃ行かないぞ!」

 

統夜はファントムに接近するのは容易ではなく、げんなりとしながらどのように接近するかを考えていた。

 

「ったく……。だらしねぇなぁ。こんなん軽々突破出来ねぇでどうするんだよ」

 

弱気になっている統夜に呆れていたダンテは、背中に背負っていたギターケースからダンテ専用の剣……リベリオンを取り出すと、それを手に、ファントムへと突っ込んでいった。

 

「愚かな……!!私を今までの私と一緒にするな!!」

 

ファントムは策もなく突っ込んでいくダンテを見てニヤリと不敵な笑みを浮かべると、針のついている尻尾を、ダンテめがけて放っていた。

 

ダンテはリベリオンを一閃してそれを防ぐのだが、その尻尾は囮であった。

 

「……っ!」

 

ファントムは右前脚を振るってダンテを吹き飛ばすと、すかさず先端についている鋭い爪をダンテの胸に突き刺し、そのまま壁に叩きつけた。

 

「!?ダンテ!!」

 

統夜はその光景に目を丸くしていた。

 

腕に自信のあるはずのダンテが、いとも簡単にやられてしまったからである。

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

ダンテがやられたことに激昂した統夜は、何も策を立てることなく、ファントムに突っ込んでいった。

 

今まではずっと英語で話していた統夜であったが、怒りのあまり、英語ではなくつい日本語が出てしまっていた。

 

「愚かな……。貴様のあの男の二の舞にしてやるわ!」

 

ファントムは左前脚や尻尾を使って統夜に攻撃を仕掛けるが、魔戒剣を振るって攻撃を防ぎ、さらに魔戒剣を一閃して、ダンテの体を貫いている右前脚を切断した。

 

ファントムは痛みのあまり、断末魔をあげていた。

 

「おのれ……!下等な人間風情が……!貴様は私が必ず殺す!」

 

ファントムの体の一部を斬り裂いたことでファントムの怒りを買ってしまった統夜は、ダンテに駆け寄る隙も与えてもらえず、ファントムの猛攻撃をひたすらに防いでいた。

 

(くっ……!鎧を召還してケリをつけたいけど、その隙がねぇ!どうする?)

 

統夜は決着をつけるために鎧を召還しようと考えていたのだが、ファントムの攻撃が激しいため、その隙を与えてはくれなかった。

 

そしてファントムはさらなる追い討ちをかけるべく、口から炎の弾を放った。

 

「……っ!」

 

統夜は後方にジャンプして、炎の弾をかわしたのだが……。

 

「愚か者が!死ぬがよい!!」

 

ファントムはジャンプしたことで統夜に隙が出来たことを見逃さず、針のついた尻尾を統夜めがけて放った。

 

「くっ……!」

 

ファントムの尻尾は統夜の心臓を狙っていたのだが、統夜が魔戒剣を一閃したことで軌道がずらされ、右腕をかすめる程度にとどめることが出来た。

 

「ぐぅ……!」

 

ファントムによる攻撃は最少限度に留めることは出来たものの、右腕から鮮血が飛び散り、その痛みからか、統夜は表情を歪めていた。

 

統夜はどうにか着地をして、体勢を立て直した。

 

だが、ファントムの攻撃は、まだ終わらなかった。

 

「愚かな人間よ……!まずは貴様から喰ってやるわ!!」

 

ファントムは、統夜を捕食するべく左前脚と、尻尾を同時に放っていた。

 

「くっ……!」

 

ファントムの激しい攻撃が迫り、統夜はこの攻撃をどう防ぐべきか考えながら息を飲んでいた。

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

バン!バン!バン!バン!

 

 

 

 

 

 

 

突如銃声が聞こえてきたかと思ったら、その銃弾はファントムの体を貫き、その攻撃を受けたファントムは吹き飛ばされたのであった。

 

「!?銃!?いったい誰が……?」

 

統夜はどこから銃弾が飛んできたのかを確認するためにキョロキョロと周囲を見回すのだが……。

 

「……ったく……。相変わらずお前は早とちりが過ぎるぜ……トウヤ」

 

「!?だ、ダンテ……なのか!?」

 

統夜を救うために銃を発砲したのは、ファントムによって体を貫かれて、死んだと思われていたダンテだった。

 

「!?馬鹿な……!貴様は私の手で始末したはずだ!」

 

「ダンテ、あんたはよく生きてたよな……」

 

心臓を貫かれたはずなのだが、ピンピンとしているダンテに、ファントムだけではなく、統夜も驚きを隠せずにいた。

 

「あ?馬鹿じゃねぇか?俺は悪魔と人間のハーフだと言ったろ?あんな攻撃で俺が死ぬはずはねぇぜ」

 

悪魔と人間のハーフであるダンテは、普通の人間とは体の作りが違うため、心臓を貫かれたからと言って死ぬ訳ではないのである。

 

「おのれ……!!こうなったら、貴様らまとめて始末してやる!」

 

ファントムは、統夜だけではなく、生きていることがハッキリしたダンテも、改めて始末しようと威嚇をしていた。

 

「おい、トウヤ。お前もそろそろ本気を出しやがれ。じゃねぇと、前払いした報酬を取り上げるぞ」

 

「!?それは困る!だから、ダンテの注文通り、本気を出してやるよ。あいつの動きも見切ったしな」

 

統夜は今までの戦いは、ある程度本気で戦ってはいたものの、100%の力ではなかったため、ここで、100%の力を出そうとしていた。

 

統夜がここまで本気を出さなかったのは、ファントムの力がどれほどのものかを見極めるためであった。

 

「本気を出すだと……?下等な人間風情が、私を倒せると思うな!」

 

「ファントム!!貴様の陰我……俺が断ち切る!!」

 

統夜はファントムに向かってこう宣言すると、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれた光に包まれると、統夜は白銀の輝きを放つ、奏狼の鎧を身に纏った。

 

「ほぉ……。これがあいつの鎧か……。ダリオのとはまるで違うじゃねぇか……」

 

ダンテは統夜と同じ魔戒騎士であるダリオの鎧を見たことがあるため、そこまで驚くことはなかったが、奏狼の鎧の放つ白銀の輝きに、ダンテはウンウンと頷いていた。

 

「なるほど……。それが貴様の本気という訳か……。良いだろう!その忌々しき輝きごと、貴様を消し去ってやる!」

 

「貴様に出来るかな……?」

 

統夜は魔戒剣が変化した皇輝剣を構えると、鋭い目付きでファントムを睨みつけていた。

 

「……行くぞ!!」

 

そして、統夜はファントム目がけて突っ込んでいった。

 

「愚か者が……。突っ込むだけで私を倒せると思うな!!」

 

ファントムは先ほどのように左前脚を統夜目がけて振り下ろすが、統夜はそれを難なくかわした。

 

しかし、左前脚の攻撃は囮であり、針がついた尻尾で、奏狼の鎧を貫こうとしたのだが……。

 

「……愚か者は……お前だ!!」

 

統夜はこの攻撃を読んでいたのか、無駄のない動きでファントムの尻尾をかわすと、皇輝剣を一閃し、尻尾を斬り落とした。

 

右前脚だけではなく尻尾まで斬り落とされ、ファントムは痛みのあまり、断末魔をあげていた。

 

「殺す……!!貴様だけは絶対に殺す!!」

 

人間である統夜相手にここまで追い詰められたことにファントムは激昂し、統夜のみをターゲットにしていた。

 

「やれやれ……。俺のことを忘れるなよな……」

 

ファントムはダンテのことを忘れているようであり、そのことにダンテは心底呆れていた。

 

「こいつでその鎧を溶かしてくれるわ!!」

 

統夜が後方に下がる前に、ファントムは口から炎の弾を統夜目がけて放った。

 

炎の弾は至近距離から放たれたからか、統夜は攻撃をよけることが出来ず、皇輝剣で炎の弾を受け止めていた。

 

「うっ……くっ……!!」

 

統夜は苦しそうな声をあげて炎の弾を防いでおり、統夜は少しずつではあるが、後方に下がっていった。

 

そして、ある程度下がりきると……。

 

「……はぁっ!!」

 

統夜はわざと後方に下がったのか、一定の距離まで下がると、皇輝剣を振り下ろし、炎の弾をかき消した。

 

「馬鹿な!?人間風情が私の炎を防ぐだと!?」

 

「そんな炎じゃ俺は殺せないぜ!それに、俺はただの人間じゃねぇ!そのことを思い知らせてやる!!」

 

統夜はファントムに向かってこう宣言すると、魔導ライターを取り出し、皇輝剣の切っ先に赤の魔導火を浴びせ、烈火炎装の状態となった。

 

「フン!そんな炎で私を倒せると思うな!」

 

「それは……こいつを受けてから言うんだな!」

 

ファントムは再び炎の弾を放つのだが、統夜は皇輝剣を一閃することで炎の弾をかき消した。

 

そして、赤い炎の刃を前方に収束させると、それをファントム目がけて放った。

 

統夜の放った赤い炎の刃は、ファントムの左脚全てを斬り落とした。

 

左脚が全てなくなったことでファントムはバランスを崩し、左側に倒れ込んだ。

 

ファントムの左脚を斬り落とした赤い炎の刃は、統夜の方へと戻っていき、統夜の体に纏われた。

 

「おのれ……!魔戒騎士など所詮は無能な人間に……この私が負けるはずはない!!」

 

統夜の猛攻によって、すでにボロボロだったが、ファントムはまだ諦めておらず、ゆっくりと統夜に迫っていた。

 

「……これで決めてやる!」

 

統夜は皇輝剣を構えて、ファントムにトドメを刺そうとしたのだが……。

 

「おい、トウヤ。お前の本気はわかったが、こいつは俺の獲物だ。トドメは俺に譲れ!」

 

「やれやれ……。わかったよ」

 

ダンテはリベリオンを構えてやる気満々なため、統夜はダンテにトドメだけは譲ることにした。

 

『……統夜!ダンテ!来るぞ!!』

 

イルバがこのように警告する通り、すでに満身創痍の状態であるファントムが統夜とダンテ目がけて飛び掛ってきた。

 

統夜はファントムをギリギリまで引き付けて、赤い炎を纏った皇輝剣を何度も斬りつけると、ファントムの残った全ての足を斬り落とし、地面に叩きつけた。

 

その隙を見逃さなかったダンテは、全ての脚を失ったファントムの上に飛び乗ると、ファントムの体のコアと思われる部分目がけて何度もリベリオンを突き刺していた。

 

「これで……終わりだ!!」

 

ダンテはファントムにトドメを刺すべく1度ファントムから飛び降りると、ファントム目がけてリベリオンを一閃し、ファントムの体を真っ二つに斬り裂いた。

 

その一撃を受けたファントムは、痛みのあまり断末魔をあげていた。

 

そして、そのまま倒れ込み、動かなくなった。

 

ファントムだ倒れたことを確認した統夜は、鎧の制限時間が迫っているということもあり、鎧を解除した。

 

しかし、まだ油断は出来ないため、元に戻った魔戒剣は手にしたままであった。

 

「……やったな、ダンテ」

 

「フッ、お前もまぁまぁやるじゃねぇか」

 

統夜はダンテのもとへと駆け寄ると、互いの健闘を讃えていた。

 

すると……。

 

「おのれ……。ダンテ……!脆弱な魔戒騎士……!私はまだ負けていない!」

 

体を真っ二つに斬り裂かれたファントムはまだ生きており、統夜とダンテを倒すという執着心によって突き動かされていた。

 

「!?あいつ……!まだ生きてるのかよ!?」

 

『やれやれ……。ゴキブリ並の生命力だな……』

 

体を真っ二つにされても生きているファントムに統夜は驚愕しており、イルバは呆れ果てていた。

 

「コロス……!コロシテヤル……!!」

 

ファントムは統夜とダンテを葬るべく、2人に飛びかかってきた。

 

統夜は魔戒剣を構えて臨戦体勢に入る中、ダンテはニヤリと笑みを浮かべていた。

 

そして……。

 

「……Jack pot!」

 

ダンテは片方だけ手にしている拳銃を突きつけると、何度も発砲し、ファントムに容赦なく銃弾の雨を浴びせた。

 

その攻撃によって体を貫かれたファントムの体から爆発が起こり、ファントムは断末魔をあげながら消滅した。

 

『……どうやら、これで奴は本当に消滅したようだぜ』

 

「あぁ、そうみたいだな」

 

統夜はファントムが完全に消滅したことを確認したところで、魔戒剣を青い鞘に納めた。

 

そして、魔戒剣を魔法衣の裏地の中にしまった。

 

ダンテもまた、手にしている拳銃をホルスターにしまうと、リベリオンをギターケースに収納し、それを背中に背負った。

 

「……これで、仕事は終了だな」

 

「あぁ。それにしても、悪魔って連中は、ホラーと同じくらい厄介な存在なんだな」

 

統夜はファントムと交戦したことで、改めて悪魔という存在の厄介さを認識していた。

 

「フッ、あんな奴如きにそう感じてる時点でお前もまだまだだな」

 

ファントム相手にかなり苦戦していたのだが、ダンテはファントムはザコだと思っていたようであり、そんなファントムを厄介と感じている統夜に呆れていた。

 

「アハハ……。俺が未熟なのはわかってるよ……」

 

統夜は魔戒騎士として、それなりに経験は積んでいるものの、自分はまだまだ未熟だと考えていた。

 

統夜は更に精進しようと考えていたのだが、そう考えていたその時……。

 

「……やーくん!!」

 

「「統夜!!」」

 

「統夜君!」

 

「統夜先輩!」

 

何故か唯たちが来ており、統夜のことを呼んでいた。

 

「み……みんな!何で!?」

 

統夜は唯たちがここに来ていることに、驚きを隠せずにいた。

 

「……ほら、行ってこい」

 

ダンテは統夜の背中を押すと、統夜を唯たちのもとへと向かわせようとしていた。

 

「え?いいのか?」

 

「仕事は終わったんだ。これ以上お前がここにいる必要はねぇぜ」

 

「……悪いな、ダンテ。また会おうぜ!」

 

「フッ、気が向いたらな」

 

統夜はダンテに別れを告げると、そのまま唯たちのもとへと駆け出していった。

 

「……あっ!来た来た!」

 

「みんな、何でここに来たんだ?」

 

「モリソンさんから聞いたの。統夜君たちがロンドンアイの近くで仕事をしてるって」

 

「それに、凄い爆発とかしてましたからね。ちょっと騒ぎになってましたよ」

 

「それで、その爆発を辿って様子を見に来たんだ」

 

紬、梓、澪の3人がここへ来た経緯を説明していた。

 

「ちょうど私たちが来た時には、やーくんは鎧を召還してたよ!」

 

「アハハ……。そうだったのか……」

 

唯がさらに、この場に着いた時の状況を説明しており、それを聞いた統夜は苦笑いをしていた。

 

「……あっ!そうそう。明日のイベントはどうするつもりなんだ?」

 

統夜はダンテとの仕事中もずっと気になっていた疑問をぶつけていた。

 

「あぁ、あれからあたしたちだけで話し合ったんだけど、参加することは決めたんだ」

 

「おぉ、そうか。したら頑張らないとな」

 

「だけど、まだ川上さんに返事を出してないんだよ」

 

「へ?何でなんだ?」

 

「だって……」

 

「やっぱり統夜先輩も一緒で、返事を出したいからです!」

 

唯たちは明日のイベントに参加することは決めていたのだが、返事を出すのは統夜がいる時にと決めたため、まだ返事は出していなかったのである。

 

「みんな……」

 

みんな一緒にという気持ちを大切にしてくれたことに、統夜は素直に喜びを現していた。

 

すると、律は携帯を取り出すと、何故か携帯を高く突き上げていた。

 

律は携帯を持っていない手で手招きをしており、澪、紬、唯の順番で律の携帯に手を添えていた。

 

それを見た統夜は笑みを浮かべると、同じように律の携帯に手を添えていた。

 

「ほら、あずにゃん!早く早く!」

 

「はいっ!」

 

梓は頬を赤らめ、嬉しそうな表情で律の携帯に手を添えた。

 

「……よし、それじゃあ行くぞ!そーしん!!」

 

全員の手が添えられたことを確認した律は、予め書いておいた明日のイベントに参加することを伝えたメールを送信した。

 

「おぉ!未来に向かって送信した!」

 

『おいおい、お前さんはまだ時差のことを言ってるのかよ……』

 

飛行機に乗った時から言っていた話を唯はまた持ち出しており、そのことにイルバは呆れていた。

 

こうして、統夜たちは明日行われるライブに参加することになったのである。

 

しかし……。

 

「なぁ、明日って帰国する日だよな?ライブの時間は何時からなんだ?」

 

統夜は今頃になって大事なことを思い出し、律に確認を取っていた。

 

「演奏は16時からだって」

 

「16時か……。空港に行かなきゃいけないのは17時だから、ギリギリだけど……。なんとかなるだろ」

 

『おいおい、随分と楽観的だな』

 

「そんなことはないさ。飛行機の時間は心配してるけど、そこを今から気にしたってどうしようもないからな」

 

統夜は飛行機の時間に間に合わないのではと内心気が気ではなかったのだが、あえてそこは気にしないようにしていたのであった。

 

こうしてライブの参加が決まり、統夜の仕事も終わったため、統夜たちはホテルに戻ると、明日のライブの演目などを決めなければいけないため、打ち合わせを行っていた。

 

その中で、唯が「ごはんはおかず」の英語バージョンを歌いたいと言い出したため、統夜が必死になって歌詞の翻訳を行っていた。

 

1時間程の話し合いでライブについての内容が決まったため、統夜たちはそれぞれの部屋に帰ると、明日に備えて寝ることにした。

 

統夜もファントムとの戦いで疲れ果てていたのでぐっすりと眠っていた。

 

そんな中、梓はロンドンに来てから見ている唯と統夜が留年するという夢に苦しめられてうなされていたのであった。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『ロンドンの街ともお別れか。まぁ、俺様もかなり楽しませてもらったぜ。次回、「帰国」。その前にライブを成功させないとな!』

 




今回登場した悪魔は、ゲーム「DEVIL MAY CRY」に登場した蜘蛛型の悪魔である「ファントム」でした。

僕はデビルメイクライはだいたいプレイしてますが、このファントムにはボコボコにされた苦い思い出があるのです(笑)

それがファントムを登場させた理由ではないですけど(笑)

そして、デビルメイクライではお約束かな?と思われるダンテが貫かれるシーンも入れてみました。

こうやって見ていると、悪魔もホラー並に手強い相手でしたね。

ダンテの協力もあってどうにか倒しましたけど。

さて、次回はいよいよロンドン編のクライマックスになります。

ライブイベントに参加することを決めた統夜たちですが、いったいどのようなライブになるのか?

それでは、次回をお楽しみに!

そして、良いお年を!


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