牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第110話になります。

クリスマスイブの日、炎の刻印の初打ちに行ってきましたが、結果だけいうとほぼプラマイ0でした。

まぁまぁ連チャンしましたが、その分投資が……(笑)

まぁ、そこら辺の話はここまでにしておいて……。

今回はロンドン3日目となっております。

卒業旅行を楽しむ統夜たちを待ち受けているものとは?

それでは、第110話をどうぞ!




第110話 「参加」

ロンドン3日目の朝、統夜たちは、ホテルのレストランで食事を取っていた。

 

「ふわぁぁ……」

 

梓は寝不足なのか、大きな欠伸をしていた。

 

「梓、寝不足か?」

 

「えぇ、まぁ。ちょっと妙な夢を見たせいで……」

 

「妙な夢ねぇ……」

 

統夜と梓がこのような会話をする中、唯は瞬きもせずに梓のことをジッと見つめていた。

 

(あずにゃんのための曲……)

 

唯は梓に贈る曲のコンセプトをずっと考えており、それを考えているからか、梓のことを凝視していたのである。

 

「……?どうした、唯。梓をジッと見て」

 

「唯先輩。瞬きはした方がいいですよ」

 

唯の集中力はかなりのものだったのか、統夜と梓が声をかけても聞こえてはいなかった。

 

(……あずにゃんにゃんにゃん♪あずにゃんにゃんにゃん♪)

 

唯は頭の中で妙なフレーズを口ずさんでいた。

 

そして梓は唯にジッと見られているのが恥ずかしかったのか……。

 

「そんなに見ないでください!もぉ!」

 

梓は食パンを頬張りながら膨れっ面になっており、そっぽを向いていた。

 

(怒られちゃった……)

 

唯はここでようやく我に返り、怒られていることに気付いたのであった。

 

統夜は、そんな唯をジト目で見ながら、朝食を取っていた。

 

朝食終了後も唯は梓に贈る曲のコンセプトを考えており、全員で出かける時間までずっと考えていた。

 

しかし、良いアイディアは出ず、そのまま街へと繰り出したのであった。

 

まず最初に訪れたのは楽器屋であり、ロンドンならではの品揃えに、統夜や律、澪は興奮していた。

 

そんな中、唯はやはり梓に贈る曲のことを考えていた。

 

(……もっとスケールの……。♪大きな大きな大きいなぁ♪……じゃなくて!)

 

先ほどから妙なフレーズしか頭には浮かばず、どうすればいいのか悩んでいた。

 

楽器屋を出て、次の目的地へ向かう統夜たちだったのだが……。

 

「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

道中、ゾンビの格好をした男の人と遭遇し、澪はそれが怖かったのか、ベソをかきながら逃げ出していた。

 

統夜たちも一緒になって逃げ出し、どこへ行くのかも定まらずにただ走っていた。

 

(……あずにゃんのための曲……)

 

そんな状況下でも、唯の頭は、梓のための曲についてでいっぱいいっぱいだった。

 

しばらくの間走り続けた統夜たちは、疲れたからか、ベンチに座ってひと休みすることにした。

 

(……!!なぁ、イルバ。ここって……)

 

《あぁ。あの男の店……デビルメイクライの近くだな……》

 

統夜たちは偶然にも、デビルメイクライの近くに来ていたのであった。

 

(とりあえず、ひと休みしたら、みんなに話してデビルメイクライに行ってみるか)

 

《あぁ。お前さんも色々聞きたいことかあるんだろう?》

 

(まぁな)

 

統夜とイルバがテレパシーで会話をしていると、突然律の携帯が鳴り出した。

 

律は携帯を取り出すのだが、どうやら電話のようであった。

 

「あれ?川上さんからだ」

 

電話をかけてきたのは、以前ライブハウスでのライブの時に世話になった川上だった。

 

「はい、もしもし」

 

『あっ、もしもし。ラブクライシスのマキちゃんからみんながそっちにいるって聞いてね。まだそっちにいるんでしょう?』

 

「あ、はい」

 

『実はね、ロンドンで日本のポップカルチャーを紹介するイベントがあってね。ラブクライシスのみんなやブラックフリルのみんなも参加するんだけど……。あなたたち放課後ティータイムにも是非参加して欲しいのよね』

 

川上は、統夜たちがロンドンにいると聞いた上で電話をかけており、ロンドンで行われるイベントに参加して欲しいという内容だった。

 

唐突な演奏依頼に、律は驚き、くっついて律の電話の内容を聞いていた統夜たちも驚いていた。

 

「ほえ?ポップコーン?」

 

「いやいや。違うから……」

 

唯はポップカルチャーという言葉を理解していないのかこのようなボケをしており、統夜は呆れながらツッコミを入れていた。

 

『イベントは明日の午後からなんだけど、みんなはそっちにいるかしら?』

 

「あ、明日ですか?明日の夕方には帰るので、少し考えさせてもらえませんか?」

 

律はその場で答えは出さず、答えを保留にしてもらっていた。

 

『わかったわ。詳しいことは後でメールするから、なるべく早めに連絡をちょうだいね』

 

「あ、わかりました。失礼しまーす」

 

こうして、川上との電話は終わり、律は電話を切った。

 

「……まさか、こんなことになるとはな……」

 

統夜も律と川上の電話の会話を聞いており、まさかの展開に驚きを隠せなかった。

 

「律、どうするつもりなんだ?」

 

「後で川上さんからメールが来るし、みんなでじっくり考えようぜ」

 

「そうね。そうしましょうか」

 

明日行われるイベントに参加するかは今は保留にしておいて、後で改めて話し合うことにした。

 

「……なぁ。それだったら、今から1箇所寄りたい所があるんだけど、いいか?」

 

「寄りたい所?」

 

統夜の唐突な提案に、紬は首を傾げていた。

 

「一昨日出会った、悪魔を狩る男、覚えてるか?」

 

「あぁ、あのダンテって人な」

 

「どうやらそいつのやってる店がこの近くにあるらしいんだ。あの男やダリオって魔戒騎士には色々聞きたいことがあるからな。もしみんなが良ければ寄ってみたいと思ってたんだ」

 

統夜はデビルメイクライに立ち寄りたい理由を、詳細に説明していた。

 

すると……。

 

「いいですよ!みんなで行きましょう!」

 

統夜のデビルメイクライへ行きたいという申し出を、梓が即答で了承していた。

 

「え?いいのか?これは俺のワガママだけど……」

 

「だって、統夜先輩のことだから、ダメだって言ったら別行動をしてでも行きそうなんですもん」

 

「たしかに、そうなんだよな」

 

「それじゃあ旅行の意味がないしな」

 

「そうね。みんなで楽しんでこそだものね♪」

 

「それに、私も興味あるよ!ホラーとは違うあの悪魔とか、やーくんとは違う魔戒騎士とか!」

 

「はい!私も興味があります!」

 

唯たちが統夜の申し出を断らなかったのは、唯たち自身も悪魔やダリオの存在に興味があったからであった。

 

「みんな……。ありがとな。それじゃあ、さっそく行こうか!」

 

「はい!」

 

こうして統夜たちは、この近くにあるデビルメイクライという店へ向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

移動を初めてから10分とかからず、統夜たちはデビルメイクライに到着した。

 

「ここがデビルメイクライか……」

 

「どんなお店なんだろうね?」

 

「訳したら悪魔が泣き出すだから……。やっぱり悪魔に関係してるのかな?」

 

澪は、デビルメイクライの意味を訳し、悪魔に関係する店だろうと推測していた。

 

「とりあえず、入ってみようよ!」

 

「そうだな。まずは入ってみるか」

 

統夜たちはデビルメイクライの入り口に立ち、統夜がドアをノックした。

 

すると、「は〜い!!」と、何故か女の子の声が聞こえてきた。

 

そして、ドアが開いたのだが、出てきたのは、ブロンドヘアーで、統夜たちよりも年下の女の子だった。

 

「……」

 

統夜たちを見て、少女は目をパチクリとさせていた。

 

「あ、あの……」

 

統夜は全員を代表して、英語で話しかけていた。

 

「……あっ、すいません。あなたたちは日本人……ですよね?」

 

「あぁ、うん。そうだけど……」

 

統夜がこう答えると、少女の表情はぱぁっと明るくなっていた。

 

「私、日本人に会うの初めて!!えーっと……は、ハジメマシテ!!」

 

少女は慣れない日本語で、統夜たちに挨拶をしていた。

 

「「「「「初めまして!」」」」」

 

唯たちは少女が日本語で挨拶をしてくれたのが嬉しくて、挨拶を返していた。

 

「ところで、ダンテは……いるかな?」

 

「いるけど、あなたたちは、ダンテの知り合い?」

 

「まぁ、そんなところかな。あとダリオも」

 

「え!?ダリオも知ってるの!?そういえば、あなた、ダリオと似た格好をしてるものね!2人ともいるから、さぁ、入って入って!」

 

「……どうやら歓迎されてるみたいだぞ」

 

「そうみたいね。この子の雰囲気で何となくわかるわ」

 

唯たちはこの少女の言葉は理解出来なかったが、歓迎されている雰囲気は感じ取ることが出来た。

 

そして……。

 

「「「「「お邪魔しまーす……」」」」」

 

統夜は堂々と中に入るのとは対照的に、唯たち5人は恐る恐る中に入っていた。

 

「おう、お前ら、来たのか。もう帰っちまったかと思ったぜ」

 

中に入ると、その中は思ったよりも広く、その部屋の奥には大きなテーブルと椅子が置かれており、ダンテはその椅子に座り、足をテーブルにつけた状態で、ピザを頬張っていた。

 

「まぁな。あんたには色々聞きたいことがあるしな」

 

「まぁ、待て。俺はご覧の通りピザを食べている真っ最中だ。適当に座って待ってな」

 

ダンテはどうやらピザが好物なのか、マイペースにピザを食べており、それが終わるまでは話をするつもりはなさそうだった。

 

「アハハ……。さぁ、どうぞ。こちらに座ってください」

 

「あぁ。……みんな、こっちだ」

 

統夜はダンテやダリオとの会話は英語で、唯たちとの会話は日本語と器用に言葉を使い分け、唯たちをソファまで案内した。

 

統夜たちがソファに腰を下ろすと、統夜の隣に少女が腰を下ろしていた。

 

「ねぇねぇ、あなたたちは日本人なんでしょ?日本の話をもっと聞きたいな!」

 

「へ?えっと……」

 

少女は英語で話しかけてきたため、唯たちは言葉の意味を理解出来ず、困惑していた。

 

すると……。

 

「日本の話を聞きたいって言ってるぞ」

 

すかさず統夜が少女の言葉を通訳し、唯たちに伝えていた。

 

「うん!OK!OK!」

 

唯がOKと話すと、それが伝わったのか、少女の表情はぱぁっと明るくなっていた。

 

「ありがとう!私はパティ。パティ・ローエル。あなたたちは?」

 

少女……パティ・ローエルは、簡潔に自己紹介をすると、統夜たちの名前を聞いていた。

 

「俺は統夜。月影統夜だ。そして……」

 

統夜は英語で、5人の自己紹介をしようとしたのだが……。

 

「平沢唯だよぉ!」

 

「田井中律だぜ!」

 

「秋山澪だ」

 

「琴吹紬よ。ムギって呼んでね♪」

 

「中野梓だよ」

 

唯たちは日本語で自己紹介をして、統夜が念のために通訳をしてパティに伝えていた。

 

「えっと……。トウヤにユイに、リツ。ミオ、ツムギ……ムギ?そして、アズサね!」

 

パティは1人1人を指差しながら名前を確認すると、統夜たちは無言で頷いていた。

 

「よろしくね!それじゃあ、日本の話を聞きたいんだけど……」

 

パティは日本の話に興味津々のようで、それを聞き出そうとしたのだが……。

 

「……パティ。悪いがそれは後回しだ。まずこいつらに悪魔のことを話してやらなきゃいけねぇからな」

 

ピザを食べ終えたダンテがソファの所まで移動し、ダリオの隣に腰を下ろした。

 

「え?トウヤたちも悪魔のことを知ってるの?」

 

「あぁ、そうだ。俺たちはこのロンドンへ旅行に来たんだけど、偶然悪魔に出くわしてな」

 

統夜は、パティの言葉を通訳して唯たちに伝えると、今度は悪魔と遭遇した経緯を英語で話していた。

 

「ふーん……。せっかくの旅行なのについてないのね」

 

「アハハ……確かにな」

 

統夜はパティの言葉に苦笑いをしていたのだが、その後、しっかり唯たちに訳した言葉を伝えていた。

 

「なぁ、その悪魔っていうのは、いったい何なんだ?」

 

統夜は1番聞きたかった疑問をダンテにぶつけていた。

 

「悪魔っていうのはな……。簡単にいえば、魔界に生息する怪物のことだ」

 

「!?魔界に生息!?だけど、魔界っていうのはホラーの棲家なはずじゃ……」

 

統夜は翻訳することを忘れて、驚いていた。

 

そのため、唯たちは言葉の意味を理解出来ず、首を傾げていた。

 

「確かにそうですね。実は、ホラーの住む魔界と悪魔の住む魔界……。これらは別々に存在しているのです!」

 

「なるほど。魔界が別々にあるなら、俺たちが今まで悪魔のことを知らなかったのも納得だよ」

 

統夜は、ダリオの補足説明を聞くと、今まで抱いていた疑問が全て解けたため、すっきりとした気分になっていた。

 

「ホラーは陰我をゲートに出現しますが、悪魔はどこから現れるのかわかりません。ですので、ホラー以上に厄介な存在とも言えます」

 

「なるほどな……」

 

統夜は、ホラーと悪魔の出現方法の違いを聞いて、さらに納得していた。

 

「ねぇねぇ、やーくん。あの人たちはさっきから何言ってるの?」

 

「あぁ、悪い悪い。後でまとめて説明してやるから」

 

統夜は今まで聞いた話を後で改めて唯たちに話すことにして、話を進めることにした。

 

「それで、ダリオはホラーだけではなく、悪魔とも戦っているという訳か」

 

「その通りです。私の所属する番犬所は少々特殊な環境でして、特別に元老院からも隔離されてる存在なのです」

 

「なるほど、それだったら俺や他の魔戒騎士が悪魔の存在を知らないってのもわかる気がするよ」

 

「はい。だからこそ、私は、デビルハンターであるダンテさんと度々共闘してる訳です」

 

「まぁ、悪魔は俺の獲物だし、ホラーとの戦いも仕事として時々手伝ってるしな」

 

ダンテもまた、デビルハンターとして悪魔を狩るだけではなく、度々共に悪魔と戦っているダリオと共にホラーと戦うこともあるのであった。

 

「それに、あの悪魔が言ってたスパーダってのは一体何者なんだ?」

 

そして、統夜はもう1つ気になっていた疑問をダンテにぶつけたのだが……。

 

『……それは俺様から話すぜ』

 

イルバも何故か知らないが英語を話せるようであり、イルバも英語で話をしていた。

 

イルバも英語を話せるとは知らなかったのか、唯たちは驚きを隠せず、目をパチクリとさせていた。

 

それだけではなく……。

 

「え!?指輪が喋った!?」

 

パティはどうやら魔導輪を見たことがないようであり、イルバが喋ることに驚いていた。

 

『俺様はイルバ。魔導輪だ』

 

「イルバ……魔導輪……」

 

パティは聞き覚えのない言葉に驚いていたが、ダンテとダリオは魔導輪の存在は知っているからか、驚くことなく、平静を保っていた。

 

「それで、イルバ。スパーダって?」

 

『あぁ。俺様がまだ魔導輪になる前。魔界にいた頃に噂として聞いたことがあったんだ。その魔界の他にもう1つ魔界があって、その魔界はムンドゥスとかいう悪魔の王が支配していたと』

 

「ムンドゥス……悪魔の王……」

 

悪魔が生息している魔界にも、メシアやグォルブのような強大な力を持つ存在がいたことに驚いていた。

 

『そして、そのムンドゥスと敵対して、人間を守った悪魔がいたというのだが、そいつがスパーダというらしい』

 

「人間を守った悪魔……」

 

もう1つの魔界の世界観が統夜たちの関わっている魔界と酷似しており、そのことに驚いていた。

 

「それじゃあ、そのスパーダっていうのが……」

 

「あぁ、スパーダは俺の親父だ」

 

「……」

 

1つの疑問が解決したのだが、その話はあまりにも強大であり、統夜は言葉を失っていた。

 

そして、その疑問を解決したのと同時に、統夜はもう1つの疑問を抱えることとなってしまった。

 

「ちょっと待てよ。そのスパーダっていうのは、人間を守ったって言ってたけど、悪魔なんだろ?それじゃあ、あんたは……!」

 

「あぁ。俺は悪魔の息子でもある」

 

「……!」

 

ダンテのこの言葉を聞いた瞬間、統夜の表情が険しくなり、目を鋭く細めると、ダンテを睨みつけていた。

 

「ちょっと……トウヤ!落ち着いてください!確かにダンテさんはスパーダの息子ですけど、ダンテさんの母親は人間なのです」

 

「!?っということは……」

 

「あぁ。俺は悪魔と人間のハーフって訳だ」

 

「……」

 

統夜はさらなる衝撃的な真実を知り、驚きのあまり目を丸くしていた。

 

「ったく……。トウヤとか言ったか?お前は早とちりが過ぎるぜ。俺を危険視して敵対視したり、悪魔の息子と知って殺気立った目で睨んできたりな」

 

「うぐっ……!そう言われると返す言葉が……」

 

呆れ気味なダンテに痛いところを突かれ、統夜には返す言葉がなかった。

 

「……まっ、俺の話すべきことはここまでだ。これでわかっただろう?俺や悪魔のことを」

 

「あぁ。俺はあんたのことを誤解していたみたいだ」

 

「フン、わかったのならいいんだがな。こっちとしては勘違いされたまま敵視されたり睨まれたりとイライラはしたがな」

 

「そ、それは悪かったよ!」

 

統夜は確かにダンテのことをあまり知らないまま、敵対視していたのは事実なため、素直に謝罪をしていた。

 

「ま、それはともかくとして、話はもう終わりよね?私は、早く日本の話を聞きたいの!」

 

悪魔についての話が終わったと判断したパティは、待ってましたと言わんばかりに話に割り込んできた。

 

「そうだな。そこら辺の話もしようか」

 

統夜はパティに対してこう答えると、唯たちにパティが日本の話を聞きたいということを伝えた。

 

こうして、統夜の通訳のもと、日本について話をしようとしたのだが……。

 

「……おや?今日は随分と賑やかじゃないか」

 

突如このような声が聞こえてくると、50代と思われる壮年の男性が中に入ってきた。

 

「……あっ!モリソン!」

 

パティはこの男のことを知ってるようであり、親しげな雰囲気を出していた。

 

「パティ、この人は?」

 

「情報屋のモリソンだよ。いつも仕事を持ってきてくれるの!」

 

「仕事を?」

 

「この店は表向きは便利屋だからな。ま、こいつの持ってくる仕事はロクなのがないがな」

 

「つれないこと言うなよ、ダンテ。俺の持ってくる仕事は金になる仕事ばかりじゃねぇか」

 

当然モリソンが話しているのも英語であるため、言葉の意味を理解出来ていない唯たちは目をパチクリとさせていた。

 

すると、モリソンは、統夜のことをジッと見ていた。

 

「あ、あの……。何か?」

 

「おぉ!お前さんがダリオの言ってた日本から来た魔戒騎士か!」

 

「え?あっ……はい……」

 

まさか、このモリソンという男も、魔戒騎士のことを知っていることに、統夜たちは驚いていた。

 

「それに……。よく見たら、お嬢ちゃんたちは、回転寿司屋で演奏してた子たちじゃないか!」

 

「!?」

 

統夜はモリソンのまさかの発言に驚きながらも、その発言を唯たちに通訳して伝えた。

 

すると……。

 

「えぇ!?おじさん、私たちの演奏聴いてたんですか!?」

 

唯が驚きながらもこう聴いていたので、統夜は、おじさんという部分を訂正した形で唯の言葉を訳し、モリソンに伝えた。

 

「あぁ。俺はたまたまあそこで寿司を食ってたからな。なかなか良い演奏だったぜ!」

 

モリソンは統夜たちの演奏を素直に褒めており、統夜がその旨を伝えると、唯たちの表情がぱぁっと明るくなっていた。

 

「だとしたら、明日ロンドンアイの近くで行われる日本の高校生によるライブはお前たちは参加するのか?」

 

「!い、いえ……。知り合いに参加しないかと誘われましたが、まだ返事は出してないんです」

 

統夜は、何故かモリソンが明日のイベントのことを知っていたため、そのことに驚きながら、まだ参加するしないの答えを出していないことを伝えた。

 

「なるほどな……。ダンテ、こいつらも明日のイベントに出るかもしれないし、今回俺が持って来た仕事、受けた方がいいんじゃねぇか?」

 

「あ?何で俺が……」

 

ダンテは仕事を受ける気がないのか、気だるそうに返していた。

 

「今回の仕事は悪魔絡みの仕事だぜ。悪魔に好き勝手やられたら、明日のイベントは台無しになるかもな」

 

「……っ!そ、そんな!」

 

「やれやれ……。正直気乗りはしねぇが、悪魔が絡んでるっつうなら話は別だ。モリソン、その仕事、受けるぜ」

 

「そうこなくっちゃな!」

 

ダンテは面倒くさそうな表情をしていたものの、仕事の内容が悪魔絡みだったため、渋々この仕事を受けることにした。

 

しかし……。

 

「……おい、トウヤとか言ったか。お前も俺の仕事を手伝え」

「はぁ!?な、何で俺が!」

 

「お前たちは明日のイベントに出る予定なんだろ?それに、俺は魔戒騎士であるお前の手並みを拝見したいしな」

 

「断る!俺は旅行でこの地を訪れたんだ。ホラー討伐ならまだしも、悪魔退治に積極的に関わることはしないよ」

 

統夜は卒業旅行でこの地を訪れたため、指令でもない限りは自分の専門外である悪魔とは関わるつもりはなかったのである。

 

「まぁまぁ、そうつれないことを言うなよ。これは仕事だから当然報酬は出るぜ。お前さんだって、旅行なら色々と金が必要だろう?」

 

「……」

 

統夜はこの仕事を断るつもりだったが、どうするか考えていた。

 

すると、統夜はあることを思いついたのであった。

 

「……その仕事、引き受けてもいいけど、条件がある」

 

「あ?条件だぁ?」

 

「ダンテ。あんたの持ってる銃のスペアか設計図が欲しい。それをくれるなら金はいらない」

 

「ほぉ、金じゃなくてダンテの銃を欲しがるとは、面白いじゃねぇか。……おい、ダンテ。どうなんだ」

 

「別に設計図くらいならくれてやってもいいが、何に使うつもりなんだ?」

 

魔戒騎士である統夜が銃か銃の設計図を欲しがるとは妙だと感じたのか、ダンテは使用目的を聞いていた。

 

「俺の仲間が対ホラー用の銃を開発してるんだけど、まだ未完成みたいなんだ。その設計図から、その銃完成のヒントを与えられたらと思ってな」

 

統夜がダンテの銃の設計図を欲しがったのは、アキトの作った魔戒銃の改良のためである。

 

魔戒銃完成のヒントを与えることこそが、アキトにとっては最大のお土産になると考えたからである。

 

つまり、自分のためではなく、アキトのためにこの仕事を受けようと考えたのであった。

 

「ったく……。わかったよ」

 

ダンテはソファから立ち上がると、どこかへと移動した。

 

数分後、一丁の拳銃と、その設計図と思われる紙を手にして戻ってきた。

 

「……ほら、これでいいんだろ?」

 

「あぁ」

 

統夜は、ダンテから銃とその銃の設計図を受け取ると、それを魔法衣の裏地の中にしまった。

 

「報酬は前払いしたんだ。もうこの仕事を断るのは許さねぇぜ」

 

「わかってるよ。だけど、まずは唯たちに事情を説明させてくれ」

 

統夜はここで、唯たちに仕事を受ける経緯を説明し、ダンテと共に悪魔退治を行う旨を伝えた。

 

先ほどまでは容赦なく英語が飛び交っていたため、どうしたらいいかわからずちょこんと座り込んでいた唯たちだったが、統夜が日本語で話しかけてくれたことに、唯たちはホッとしていた。

 

「それじゃあ、統夜君は悪魔退治の仕事を手伝うことになったっていう訳ね?」

 

「あぁ。そういうことだ。悪いけど、ここから先は別行動になっちゃうな」

 

「えぇ!?それじゃあ明日のイベントはどうするんだよぉ!」

 

「それはみんなで決めてくれ。俺はその決定に従うよ」

 

「うん。わかったよぉ!やーくん、気を付けてね!」

 

「あぁ、さっさと悪魔を蹴散らしてみんなのところへ帰るさ」

 

こうして統夜は、唯たちの許可をもらい、ダンテと共に悪魔狩りの仕事をすることになった。

 

しかし、そのことに納得出来ない者が1人だけいた。

 

「そんな……!せっかく統夜先輩や皆さんとの旅行だっていうのに……」

 

「あずにゃん……」

 

梓だけは、ホラーではない相手との戦いに統夜が駆り出され、せっかくの旅行を台無しにさせられるのがいたたまれなかった。

 

「……心配すんな。すぐに仕事を片付けて戻ってくる。俺を信じてくれないか?」

 

「……わかりました。私は信じてますからね!統夜先輩がすぐに合流してくれるって!」

 

梓は恋人である統夜を信じる決意を固め、統夜を送り出す決意をした。

 

「あぁ、信じて待っていてくれよな!」

 

統夜は満面の笑みを浮かべると、梓の頭を優しく撫でていた。

 

梓は頭を撫でられて嬉しかったのか、頬を赤らめながら、笑みを浮かべていた。

 

「話はまとまったか?それじゃあ、とっとと行くぞ」

 

ダンテは統夜にこう言い放つと、自分の一張羅であるコートを羽織り、ギターケースにしまったダンテの剣……リベリオンを背中に背負った。

 

「……それじゃあ、みんな。行ってくる」

 

統夜はすでに魔法衣を着た状態であったが、唯たちに向かって力強く宣言した。

 

「えぇ!?もう行っちゃうの!?日本の話は!?」

 

パティはずっと聞きたいと思っていた日本を話を聞きそびれてしまい、ぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「仕方ねぇな……。お嬢ちゃんたちがまだ残るっつうのなら、俺が通訳をしてやるよ」

 

なんとモリソンは、多少であれば日本語が話せるようであり、通訳をやることを名乗り出ていた。

 

「本当!?モリソンって日本語は話せるの!?」

 

「まぁ、それなりにな。……という訳で、トウヤとか言ったか。お前さんは何の気兼ねもなく仕事に専念して来い!」

 

「は、はい!」

 

こうして統夜は、唯たちとパティとの会話の通訳をモリソンにお願いすることにして、ダンテと共にデビルメイクライを後にした。

 

そして、そのまま悪魔が出現しているとモリソンから聞かされた、ロンドンアイ付近へと向かって行ったのであった。

 

統夜がダンテと共に出掛けた直後、モリソンは約束通り唯たちとパティとの会話の通訳を行うことになり、1時間程の会話で、無事に通訳の仕事をこなしたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『やれやれ……。まさか卒業旅行なのに、こんな仕事を引き受けることになるとはな……。まぁ、受けた以上はしっかりと仕事をこなそうぜ!次回、「邪気」。統夜!こいつはなかなか手強いぞ!』

 




統夜たちは川上の紹介でライブをしないかと誘われました。果たして、このライブに統夜たちは参加するのか?

そして、統夜たちは初めてデビルメイクライを訪れました。

それにしても、そこら辺のシーンは日本語と英語が入り混じってるせいでちょっとグチャグチャになったかもしれない……。

駄文しか書けない僕の文章力では限界があるため、そこら辺はご了承下さい。

さて、次回はオリジナル要素の強い回となっております。

ダンテと共に悪魔退治を行うことになった統夜ですが、統夜を待ち受けているものとは?

それでは、次回をお楽しみに!


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