そして、今日はクリスマスイブですね!
クリスマスイブ?ナニソレ?オイシイノ?今日の僕はまさしくそんな状態です(笑)
今日は特にやることがないので、この回を投稿したら、炎の刻印を打ちに行ってきます(笑)
初打ちなので、どうなることやら……。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は統夜たちがロンドンの街を回ります。
統夜たちのロンドン観光はいったいどのようなものになるのか?
それでは、第109話をどうぞ!
統夜たちは卒業旅行でロンドンを訪れていた。
どうにか無事にホテルにチェックインした統夜たちはホテルの近くで買い物をし、回転寿司屋を見つけたのでそこで食事を取ろうとした。
しかし、そこで何故か演奏するよう頼まれた統夜たちは演奏することになったのだが、演奏をすると、そのまま店を出されてしまい、寿司にはありつけなかった。
寿司屋の入り口で偶然ラブクライシスのメンバーとばったり出会うという偶然があった。
ラブクライシスのメンバーと別れてすぐ、イルバは妙な気配を感じ取り、その場所へ急行すると、統夜たちは悪魔と呼ばれる魔獣と遭遇した。
統夜は魔戒騎士として悪魔と応戦するが、その最中、悪魔を狩る者であるダンテが現れ、統夜はダンテと出会ったのである。
ダンテの力は圧倒的で、難なく危機は乗り越えられたのだが、統夜はダンテの存在を危険視し、敵意を向けていた。
そのため、統夜とダンテは一触即発の状態になってしまったのだが、その2人の仲介に入ったのが、この地の魔戒騎士である、黒曜騎士是武(ゼム)こと、ダリオ・モントーヤであった。
ダリオのおかげで無益な争いは避けることが出来て、ダンテとダリオは姿を消した。
こうして統夜たちはホテルに戻り、統夜と憂が用意した日本食を食べて、各自の部屋で眠りについた。
そんな中、梓は妙な夢を見ていたのであった……。
〜梓の夢〜
『……あずにゃん!私、留年したよ!』
『へ!?』
『これからは同級生だよ!』
『そ、そんな!?』
『梓、俺も留年したぜ!俺も梓と同級生ってことだな!』
『と、統夜先輩まで!?』
『よろしくね♪』
『よろしくな♪』
『じゃ、じゃあ……。先輩たちのことは何て呼んだら……』
『唯……でいいんじゃないかな?』
『俺は統夜って呼んでくれよ』
『え?えっと……ゆ、ゆ……い?と、とう……や?』
『うんうん!その調子!』
『もっと大きな声で言ってくれよな!』
『ゆ……い。とう……や』
『もっと大きな声で!』
『ちょっと唯!やめてよぉ!!』
『その調子!』
『梓!ほら、俺も俺も!』
『ちょっと統夜!統夜もやめてよぉ!』
『うんうん。いい感じいい感じ♪』
『何だか……しっくり来ません!』
『んなこと言ったって俺たちは……』
『そうそう。私たちはもう、先輩じゃないんだよ……』
ないんだよ……。
ないんだよ……。
ないんだよ……。
〜梓の夢、終わり〜
「……はっ!」
先ほどまで妙な夢を見ていた梓は、ゆっくりと目を覚ましていた。
梓はゆっくりと起き上がるのだが、現在は朝の4時頃であり、まだ唯も統夜も眠っていた。
「……あれ?」
梓は、唯のベッドの枕元の明かりがついていることに気付き、唯の眠るベッドに近付いた。
すると、唯はノートを広げて寝ていたのだが……。
「……え!?」
唯のノートには、「あずにゃん LOVE!」と大きく書かれていた。
「な、何これ!?唯先輩怖っ!」
梓は唯のノートに書かれた内容を素直に受け止めてしまい、唯がそのような性癖があると勘違いして、おののいてしまっていた。
梓は慌ててベッドに飛び込むと、布団を被っていた。
「……おやすみなさいです……」
梓は小さい声ではあるが、しっかりとおやすみの挨拶をしてから再び眠りについた。
それからおよそ1時間後、今度は統夜が目を覚ました。
統夜はゆっくりと起き上がると、唯や梓を起こさないように洗顔等を済ませ、着替えを済ませると、外に出る準備をしていた。
「……ん?」
統夜も唯のベッドの枕元の明かりがついていることに気付いて、そこまで移動した。
統夜はそこに置かれた唯のノートを見たのだが……。
「アハハ……。唯のやつ、何書いてんだか……」
梓はこのノートの内容にドン引きしつつおののいていたが、統夜は呆れ気味に苦笑いをしていた。
《こんなのを梓に見られたら梓のやつ、勘違いするだろうな》
(アハハ……。確かに……)
イルバは唯や梓を起こさないようにテレパシーを用いて会話をしていた。
《統夜。こんなに早く起きたということは、鍛錬しに行くのか?》
(あぁ。いくら卒業旅行っていっても、魔戒騎士としての鍛錬はサボれないしな)
《ま、確かにその考え方は魔戒騎士としては大事だよな》
どうやら統夜は、ロンドンに来ても、魔戒騎士として鍛錬を欠かすつもりはないようであった。
(とりあえずみんなが心配しないように……っと)
統夜は紙とボールペンを取り出すと、目を覚ました唯と梓が心配しないように【鍛錬に行ってくる。心配しなくても朝飯までには戻る 統夜】と伝言を残していた。
(これでよし……っと。それじゃあ、行くぞ、イルバ)
《了解だ。統夜》
統夜は唯と梓を起こさないようこっそりと部屋を出ると、ホテルを後にして、鍛錬を行うことにした。
統夜は最初に、観光がてらジョギングをすることにした。
『おい、統夜。鍛錬って剣の素振りじゃなくてジョギングか?』
「まぁな。鍛錬と街の観光を兼ねてな」
統夜はせっかくロンドンに来たのだから、魔戒騎士として修行をしながらロンドンの街を楽しもうと考えていた。
『やれやれ……。お前ってやつは。修行を何だと思ってるんだよ……』
イルバは、遊び半分な気分で修行に臨む統夜に心底呆れていた。
「まぁまぁ♪たまにはこんな修行もいいだろ?」
『やれやれ……』
「とりあえず、行くぞ、イルバ」
『わかったよ。だが、夢中になり過ぎてあまり遅くなるなよ』
「わかってるって」
こうして統夜は、鍛錬と街の観光を兼ねたジョギングを行うことにした。
昨日は立ち寄れなかった部分を中心に走っており、統夜は心地よい気分で走り続けていた。
そして、1時間ほど走り、統夜はホテルへ戻ることにしたのだが、その途中、気になる建物を発見し、足を止めた。
「……ん?」
『どうした、統夜?』
「なぁ、イルバ。あの建物なんだけどさ……」
統夜が指差した建物は、「DEVIL MAY CRY」と書かれた看板が立てられていた建物であった。
「デビルメイクライ……」
『昨日あの男が言っていた店だな』
「あぁ。あの男や、ダリオって魔戒騎士には色々聞きたいことがあるからな……。今日時間があれば立ち寄ってみるか」
統夜は今日の自由行動の空いている時間に立ち寄れればこの店に立ち寄ろうと考えていた。
『統夜。とりあえず戻るぞ。あまり遅いと唯たちがうるさいからな』
「わかってるって」
こうして、鍛錬を終えた統夜は、そのままどこか寄り道をすることなく、ホテルへと戻っていった。
ホテルへ戻った統夜は梓に電話をかけ、部屋に入っても大丈夫だということを確認してから部屋に入った。
もし確認せずに部屋に入って2人が着替え中だったら、後が怖いからであった。
統夜が部屋に入ると、2人は既に起きており、着替えも済んでいた。
こうして統夜たち3人は、一緒に部屋を後にすると、隣の部屋にいる律、澪、紬の3人と合流し、一緒に朝食を取った。
朝食終了後、統夜たちはホテルを後にすると、梓が立てたプランに基づいてロンドンの街を見て回ることにした。
最初はロンドン市内を歩き回り、その途中でコンビニのような建物に立ち寄った。
しばらくの間、そこに滞在した統夜たちは、その場を離れると、近くにあった「LOOK RIGHT」と書かれた道路標識を発見し、それに合わせて左右を確認していた。
その後、車が来ていないことを確認した統夜たちはそのまま道路を渡り、次の目的地へと向かっていった。
統夜が鍛錬を兼ねて街を見回っていたおかげで、迷うことなく順調に次の目的地へ向かうことが出来た。
その話を唯たちにしたら唯は「ずるい!」と言いながら膨れっ面になっていたが、統夜は苦笑いしながら「はいはい」と話を流していた。
最初の目的地に着いた統夜たちは記念写真を撮影することになった。
唯は梓にくっつこうとするが、離れられてしまい、写真撮影後にベンチで休憩していた時も、唯は梓に近付こうとしたら、逃げるように唯から離れていった。
(アハハ……。どうしたんだ?梓のやつ。今日はやけに唯を避けてるように見えるが、どうしたんだ?)
《まさかとは思うが、梓のやつもあの唯のノートを見てしまったのかもしれないな》
(それなら梓の行動も説明がつくよな)
統夜とイルバはこのような推理をしていたのだが、実はそれが正解で、梓が唯のノートを見てしまったということを2人は知る由もなかった。
ベンチで小休憩を終えた統夜たちはその後、再び街を歩き回り、公園へと到着した。
そこでリスの親子を偶然発見し、統夜たちは目をキラキラと輝かせていた。
その後、統夜たちは公園を歩いていると……。
「ねぇ、みんな!見て見て!ワンちゃんの模様のポストだよ!」
「あ、本当だ!可愛いねぇ♪」
唯は偶然犬の模様のポストを発見し、紬と共に目をキラキラと輝かせていた。
そして、唯はそのポストの口に手を突っ込もうとするのだが……。
「……唯、それに手を突っ込むのはやめといた方がいいと思うぞ」
「ほえ?何で?」
統夜があと少しのところで止めたのだが、唯は何故止めたのかが理解出来ず、首を傾げていた。
「本で読んだことがあるんだ。ロンドンには犬の糞を処理する専用のポストがあるって」
「え!?そうなの!?」
「……っということは、これが?」
「あぁ。そうなんだろうな」
統夜の説明通り、このポストは犬の糞専用のポストであった。
唯は何も知らずにあのまま触れていたらと考えると、顔を真っ青にしていた。
すると、このポストのことを説明するかのように、犬の散歩中の中年女性がポストのところへとやって来た。
その手にはビニール袋が下げられており、その中身は犬の糞であると思われた。
女性は日本人である統夜たちがこのような場所にいるのが珍しいのか、ニコニコしながらも統夜たちのことをジッと見ていた。
統夜は女性の視線に気付いたため……。
「Hello」
と挨拶をした。
まさか向こうから挨拶してくるとは思っていなかったのか、女性は驚きながらも挨拶を返していた。
※ここから先の会話は日本語で表示していますが、英語で会話をしています。
「もしかして、この辺の人ですか?」
「えぇ、そうよ。あなたたちは観光かしら?」
「はい、そうです。それにしても可愛いですね。撫でてもいいですか?」
「もちろんよ♪どうぞ♪」
統夜は女性の許可を得たところで、犬の頭を優しく撫でていた。
統夜が動物好きだというのが犬にも伝わったのか、一切抵抗することなく、むしろ尻尾を振って喜んでいた。
「それにしてもあなたは学生さん?随分と英語が上手なのね」
「はい。僕たちは高校生です。卒業旅行でここに来まして。だけど、僕の英語はまだまだですよ」
統夜は女性にここへ来た目的を話すと、自分の英語力については謙遜気味に答えていた。
「そんなに謙遜することもないのに……。せっかくの旅行、楽しんでね♪」
「ありがとうございます。失礼します」
統夜は女性にペコリと一礼をすると、その場を離れていった。
※会話終了※
「……あっ!やーくん!待ってよぉ!」
どうやら女性との会話は終わったようであり、唯たちは慌てて統夜を追いかけていた。
「統夜先輩、あの人と一体何を話してたんですか?」
「ん?何の変哲もない世間話だよ。学生なのか?って聞かれたから、そうと答えて、卒業旅行に来たとも話してたんだよ」
「そうだったんですか……」
「それにしても、統夜の英語は凄いな。まったく聞き取れなかったぞ」
普段から成績が良く、多少なら英会話も出来る澪でも、統夜と女性の会話を完璧に聞き取ることは出来なかった。
「そうか?あれでちゃんと通じてるか不安だったけどな」
「謙遜することはないわよ。凄かったわよ♪」
「はい!凄かったです!」
「アハハ……。そうかな?」
統夜はベタ褒めされたのが恥ずかしかったのか、頬を赤らめて恥ずかしがっていた。
「おぉ!やーくんが照れてる!」
「う、うるさい!////」
「照れなくてもいいのに♪」
「照れてない!ほら、次行くぞ!」
唯と律はニヤニヤしながら統夜をからかっていたのだが、統夜はムキになってしまい、そのまま歩き出してしまった。
「あー!!やーくん!待ってよぉ!!」
「統夜先輩!待ってください!」
唯たちは慌てて統夜の後を追いかけると、そのまま公園を後にして、次の目的地へと向かっていった。
続いて統夜たちが向かったのは、大きな時計がかなり目立っている店の前だった。
その時計は何故か高速で逆回転しており、それが目に留まったため、立ち寄ったのであった。
梓がガイドブックを開くと、どうやらこの店は、ヴィヴィアン・ウェストウッドというブランドを扱う店の本店のようであった。
そこで記念写真を撮影した後、次の目的地へと向かった。
続いて向かったのは、かつての名探偵であるシャーロック・ホームズが住んでいたと言われているベーカー街B221の建物だった。
この建物は現在はホームズの博物館としてイギリスのみならず、多くの国の人が訪れる観光スポットとなっている。
ここに行きたいと提案したのは、サスペンスが大好きな紬であった。
入るには入館料がかかるため、この建物の中には入らなかったが、入り口にいる門番の人と一緒に記念写真を撮影していた。
写真撮影を終えると、統夜たちは次の目的地へと向かった。
統夜たちは次の目的地である大英博物館へと向かっていたのだが、その途中に澪が行きたがっていたアビーロードを発見し、そこを通って大英博物館へと向かったのであった。
大英博物館に入るなり、唯たちがトイレへ行きたいと言い出したため、統夜1人残して女性陣はトイレへと向かっていったのであった。
1人残された統夜は、どこかへ移動することなく、携帯をいじりながら大人しく待っていた。
数分後、唯たちが戻ってきたため、博物館見学の続きを行うことにした。
30分程、展示物の見学を行った統夜たちは、大英博物館を後にした。
次の目的地はロンドンアイなのだが、その途中……。
「……すっごく歩いたねぇ」
「なぁ、少し休まないか?」
途中、休憩は何度も挟んでいたのだが、それなりの距離を歩いていたため、律が休憩を提案していた。
「確か、この近くにアフタヌーンティーが出来るところが……」
梓はガイドブックを広げると、今いる場所の近くにアフタヌーンティーが出来る店があることを確認していた。
「アフタヌーンティー!あずにゃん、それは私たちの魂だよ!!」
「確かにな。とりあえず行ってみるか」
こうして統夜たちはアフタヌーンティーを行うためにガイドブックに書いてあったお店に向かい、中に入ったのだが……。
「……予約が必要だったとは……」
その店はどうやら予約制の店のようであり、統夜たちは紅茶を飲めずに店を出たのであった。
統夜たちは休憩を諦めることにして、そのまま当初の目的地であるロンドンアイへ向かうことにした。
※※※
「……みんな!早く早く!」
ロンドンアイが見えてくると、唯ははしゃぎながらロンドンアイへ向かって走り出しており、統夜たちもそれに合わせて走り出していた。
そして、階段を降りると、統夜たちの目の前にロンドンアイがそびえ立っていた。
「おぉ!大きいねぇ!」
「そうだな」
統夜たちはロンドンアイの大きさに見とれており、唯と統夜が感嘆の声をあげていた。
「……回ってる……」
「回ってる♪」
この卒業旅行で、回るもの恐怖症になってしまった澪は顔を真っ青にしており、紬はププッと吹き出しそうになっていた。
「早く乗ろうよ!ねー、ムギちゃん!」
「うん♪」
「ねー、みおちゃん!」
「え!?」
ロンドンアイに乗りたいという唯の提案に紬は同意しており、澪は唯に同意を求められて驚いていた。
「わ、私は下でみんなの荷物番をしてるよ!」
「え?」
澪はロンドンアイに乗りたくないのか、荷物番をすると名乗り出ていた。
「じゃ、じゃあな!楽しんでこいよ!はは、あはは……」
澪は引きつった表情で笑みを浮かべながら、統夜たちを見送って逃げようとしていた。
「澪……」
「みおちゃん……」
そんな澪を見て、律と唯が取った行動は……。
「ダメだー!!回るのはダメだー!!」
律と唯が協力して澪の首根っこを掴むと、そのままロンドンアイに向かって引っ張っていった。
残りのメンバーは、それを見守るかのようについて行ったのであった。
「いいからいいから♪」
「ダメだ!本当に回るのはダメだ!」
澪は本当に嫌だったのか、ジタバタと暴れて抵抗をしていた。
「大丈夫よ、みんな一緒なんだから♪」
紬がこう言って励ますのだが、澪は聞く耳を持っていなかった。
「ダメだ!回るのはぁ!!」
こうした澪は半ば強引にロンドンアイに乗ることになり、統夜たちはロンドンアイに乗ったのだが……。
「凄いなぁ!ロンドンが見渡せる!!」
ロンドンアイの中に入ると、澪は拒絶反応は無くなり、それどころか、絶景を見てはしゃいでいた。
「みおちゃん、楽しそうだね♪」
「ま、乗ってたらグルグル回るのは見えないからなぁ」
「そうだな。楽しそうだから良かったよ」
唯、律、統夜の3人は楽しそうに景色を眺めている澪を見て、笑みを浮かべていた。
「そうだ!写真撮ろう」
「はっ!」
澪は写真を撮ろうと考えて、カメラを出そうとするのだが……。
「澪!荷物あずキャットくよ!」
「……」
律までもあずキャットを使って預かると言っており、それを聞いた梓は複雑だったのか、苦笑いをしていた。
ロンドンアイを満喫した統夜たちが次に向かったのは、バラ・マーケット(BOROUGH MARKET)と呼ばれる市場であり、ロンドン有数の食品市場である。
その市場で統夜たちは美味しそうなカップケーキを購入し、食べることにした。
そのカップケーキを食べている途中……。
「……なぁ、ムギ。これ、あずキャットいてくれないか?」
「はーい♪」
澪までもあずキャットを使っており、紬にカメラを預かってもらっていた。
(……流行っちゃった……)
唯が言い出しっぺであり、そこからどんどんあずキャットという言葉が流行りだしてしまい、梓は複雑そうに苦笑いをしていた。
(さ、流石に統夜先輩は使わないよね!)
恋人である統夜はこのようなフレーズは使わないだろうと梓は予想していたのだが……。
「……唯、悪い。これ、ちょっとあずキャットいてくれないか?」
「うん!わかったよぉ!」
(と、統夜先輩まで!?)
統夜までもがこのあずキャットを使っており、梓は目を丸くして驚いていた。
さらに、統夜までもがこのフレーズを使うのが気に入らなかったのか、梓はぷぅっと頬を膨らませながら統夜を睨みつけていた。
《……おい、統夜。梓に睨まれてるぞ》
(あ、本当だ。俺があずキャットを使ったのが気に入らなかったのか?)
《やれやれ……。みんなに合わせて悪ノリするところは、お前さんもまだまだガキだよな》
(うぐっ……!ま、まだ俺は20歳前なんだからガキなのは当たり前だろ?)
《おいおい、開き直るなよな……》
イルバにガキ扱いされたことで統夜は開き直ってしまい、イルバはそんな統夜に呆れていた。
こうして市場を見て回ったところで、この日の観光は終了となり、統夜たちはホテルに戻ってきた。
※※※
「じゃあなぁ!!」
「じゃあねぇ!!」
統夜、唯、梓の3人は隣の部屋である律、澪、紬の3人が部屋に入っていくところを見守っていた。
3人が部屋の中に入ると……。
「私もあっちで」
「あずにゃんはこっちでしょ?」
梓は何故か律たちの部屋に行こうとしており、それを唯に止められていた。
すると梓は……。
「……統夜先輩。もし私が唯先輩に襲われそうになったら、助けてくださいね」
「はぁ?」
小声でこのように統夜に耳打ちをしたのだが、統夜は言葉の意味が理解出来ず、首を傾げていた。
こうして、統夜たちは部屋に入ったのだが……。
「ただいまー!!」
統夜がドアを閉めるなり、唯はまるで梓にキスをするかのように口を尖らせ、梓目掛けて勢いよく迫っていった。
「!!」
梓は唯に襲われると思ったのか、体勢を低くすると、唯のみぞおちにヒジを打ち込んだ。
梓のヒジ打ちは鮮やかであり、唯はその場に倒れ込んでしまった。
「おぉ〜!」
梓の鮮やかなヒジ打ちに統夜は思わず拍手を送るのだが、とんでもないことをやらかしたと思った梓は、倒れている唯に駆け寄った。
「す、すいません!大丈夫ですか?で、でも私、統夜先輩もいますし……そういうんじゃないんです!」
「アハハ……。そういうのって……」
梓の言葉の意味を理解した統夜は、少々呆れ気味に苦笑いをしていた。
すると……。
「ど……どういうの?」
「へ?」
「私はただ、ギー太に抱きつこうとしただけなのに……!」
唯は梓に抱きつこうとしたのではなくて、ホテルに置いてきたギー太に抱きつこうとしていたのであった。
「へ!?」
梓はここで自分が勘違いをしていたことをようやく理解し、その顔はまるで茹で蛸のように真っ赤になっていった。
「すいません!勘違いでした!すいません!」
梓は自分の勘違いが恥ずかしいと思ったのか、ベッドに飛び込み、そのまま布団に包まっていた。
「よっと……。唯、大丈夫か?」
統夜は唯の手を取って唯を起き上がらせるのだが、唯は統夜の手を取ってどうにか起き上がり、その後はみぞおちの部分を優しくさすっていた。
「エヘヘ……。へーきへーき。憂にもらった護身術の本が役に立って良かったよぉ」
唯は梓に強烈なヒジ打ちをもらったことについては怒っておらず、おっとりとした笑みを浮かべていた。
夏休みに憂が買ってくれた護身術の本が、ここに来て活躍するとは思っていなかったので、唯は結果的に良かったと思っていた。
「あぅぅ……」
梓は勘違いをしていた恥ずかしさと、唯への申し訳なさが合わさったからか、涙目になっていた。
「あれ?あずにゃん、寝るの?エヘヘ……子守唄……歌ってあげようかな」
唯は梓のベッドに乗り込み、梓の隣に移動すると、子守唄を歌おうとしていた。
そして……。
「……♪ねーんねーん……ころーりーよー」
唯は本当に子守唄を歌い始めていた。
「すいません……」
梓は申し訳ない気持ちでいっぱいだったため、改めて唯に謝罪の言葉を送っていた。
「おこーろー……りー……よ……。……あぅ……。zzz……」
子守唄を歌っていると梓ではなく、唯が眠くなってしまい、唯はそのまま眠ってしまった。
『おいおい、子守唄を歌う本人が寝ちまってどうするんだよ』
「アハハ……。確かにな」
イルバと統夜は、子守唄を歌っていた唯が眠ってしまったことに呆れながらも苦笑いをしていた。
『どうやら、梓のやつは、本当にあの唯のノートを見ちまったみたいだな』
「あぁ。それで唯がそんな性癖を持ってるって勘違いしたのか」
『まぁ、あんな風に書いてあれば梓が勘違いするのもわかる気はするぜ』
「まぁ、そうだよな」
『おい、統夜。これからどうするんだ?』
梓は布団に包まり、唯は眠ってしまったため、統夜はポツリと1人残された状態になってしまった。
「そうだな……。ホテルを出ると唯たちに心配をかけそうだし、少しだけ休むことにするよ」
『まぁ、それがいいかもしれないな』
こうして統夜は、少しだけ体を休めることにした。
それからしばらくすると、律から「あたしらの部屋に来てくれ!」とメールで告げられたので、この時には既に起きていた唯と共に3人の部屋に向かうことになった。
統夜は既に寝巻き代わりのジャージに着替えており、唯はシャワーを浴びた時に寝巻きに着替えていたため、寝巻きの格好で、3人の部屋に入った。
統夜と唯の2人が律たちの部屋に入ると、澪は今日撮った写真を確認していた。
「……ふふふ」
公園で撮った写真がおかしい写真だったからか、澪は笑みを浮かべていた。
「……って!写真を見るために集まった訳じゃなくてだな!」
「わかってるって。梓のための曲について相談するんだろ?」
「ねぇ、誰か出来た?梓ちゃんへ贈る曲のコンセプト」
紬が、今話すべき話題を切り出していた。
「……まだなーんにも」
どうやら、アイデアはまだ思いついていないようだった。
「ロンドンに来れば、スケールの大きい曲が浮かぶと思ったんだけどね……」
「確かに、インスピレーションが刺激されると思ったが、なかなか上手くいかないよな」
ロンドンで何か良いインスピレーションを得て、それを元手に梓へ贈る曲を作ろうと考えていた統夜たちだったため、曲作りの方は難航していた。
現在、ホテルへ戻ってから2時間程経過しており、梓は布団に包まった状態のまま眠ってしまったため、統夜と唯は梓に怪しまれることなくこの部屋に来れたのであった。
律、澪、紬の3人は既に寝巻きに着替えており、完全にリラックスムードになっていた。
「……ビッグベーン!ロンドンアイ!テムズ川!!」
唯は何故か野太い声で、ロンドンの地名を叫んでいた。
『それは曲じゃなくて、ただ名所を叫んでるだけじゃないか……』
「しかも、何だよ、その野太い声は……」
イルバと統夜は、揃って唯の歌と思えないフレーズに呆れていた。
「だって、今までにない凄い曲を作りたいじゃん!私たちがいなくなった後も、その曲を聞いたらやるぞー!って気持ちになるような……」
唯が考えている曲のイメージは少しばかり抽象的であったが、こんな曲を作りたいという気持ちは伝わってきた。
「無敵になれる感じ?」
「無敵かぁ……」
紬は唯の曲のイメージをこのように解釈していた。
「なぁ、唯の考えてるイメージとはかけ離れてるんだけどさ、俺、1曲だけ作ってみたんだよ」
「え!?そうなの!?」
「つか、そうならそうと何で早く言わないんだよぉ!」
統夜が新曲を作っていたことに、紬は驚き、律は文句を言っていた。
「俺だって早く言いたかったさ。だけど、何度も何度も言うタイミングを逃してな」
統夜の曲が出来たのは、卒業旅行に行く前で、新曲を作ったことは話そうと思えば話せたのだが、旅行中はバタバタしており、なかなか話を切り出せなかった。
「ねぇねぇ!やーくんの作った曲、聞いてみたい!」
「私も聞きたい!」
どうやら唯たちは、統夜の曲と聞いて、興味を示していた。
「そう言うと思ってな、用意はしてきたぜ」
統夜はズボンのポケットから携帯用の音楽プレイヤーを取り出すと、それを唯に手渡した。
唯から順番に統夜の曲を聞いており、紬、律、澪とこの曲を聞いていった。
「やーくん!凄くいい曲だね!私は好きだよ、この曲!」
「えぇ。私も凄く気に入ったわ♪」
どうやら、唯と紬はこの曲を気に入ったようであった。
「あたしも良いとは思うけど、この曲は、梓も交えてやりたいよな」
「あ、それは私も思っていた!」
律と澪もこの曲を気に入ってはいたのだが、梓に贈る曲ではなく、放課後ティータイム全員の曲にしたいと思っていた。
「確かに!その方がいいかもね!」
「梓ちゃんのための曲は、改めて考えましょう」
「そうだな。とりあえずこの曲は、卒業旅行が終わったら楽譜を用意するよ。俺たち放課後ティータイムの曲としてな」
「あぁ!統夜、よろしくな!」
こうして、統夜の作った曲は、梓に贈る曲としては没になったが、放課後ティータイムの曲としては、採用となった。
「ところで、統夜。この曲のタイトルは何なんだ?」
話がまとまったところで、律が気になっていた疑問を統夜に聞いていた。
「あぁ。この曲のタイトルは……。「風〜旅立ちの詩〜」ってつけたんだ」
統夜は曲のタイトルを告げると、唯たちの表情がぱぁっと明るくなっていた。
「うん!凄くいい感じだよ!」
「そうだな!」
「えぇ♪早くこの曲を演奏したいわ♪」
「統夜!この旅行が終わったら早く楽譜作ってくれよ!」
「はいはい。わかってるって」
曲のタイトルを告げたところで、統夜の作った曲についての話は終了した。
時間も遅くなってきたため、梓に贈る曲についての話し合いはここで中断することにした。
「ねぇねぇ、やーくん。部屋の鍵って持ってきた?」
「いや。梓もいるから置いてきたぞ」
「えぇ!?それじゃあ、私たちの部屋に帰れないじゃん!」
「いや、そこから戻れるから問題はないだろ」
統夜はとある方向を指すのだが、この部屋と統夜たちの部屋は繋がっており、正面の入り口だけではなく、裏口からも互いの部屋に行き来することが出来る。
このようなタイプの部屋は、コネクティングルームと呼ばれている。
「あっ、そっか!それなら良かったよ!」
鍵は持ってきてなかったが、部屋に戻る手段を知り、唯は安堵していた。
その頃……。
「……んあ……あれ?」
布団に潜り込んでしまったまま眠っていた梓は目を覚ますのだが、部屋は真っ暗で、統夜と唯の姿はなかった。
梓はまだ寝ボケているのか、少しばかり目がうつろだった。
そんな状態で部屋を出るのだが、律たちの部屋に続く道に何個も飴が落ちていた。
「今度こそ……。本当に道しるべ……」
梓は飴を拾いながら、のろのろと律たちの部屋へと向かっていった。
そして時を同じくして……。
「……それじゃあ!私は、あずにゃんのもとへ帰りますので!」
「唯、俺はもうちょっとここでのんびりしてから戻ることにするよ」
「うん。わかったよぉ!」
唯は自分の部屋に戻ろうとするのだが、唯の手にしている飴の袋から飴がポロポロとこぼれ落ちていた。
「おい、唯!飴ちゃん落としてるぞ!」
「あぁ、あげるよ。食べといて♪」
「おやすみ、唯ちゃん」
「おやすみ♪」
こうして唯はもう1つの出入り口を使って、自分の部屋へと戻っていって。
「やれやれ……。テキトーなやつだな……」
澪は飴を落としても気にする素振りのない唯に呆れていた。
すると、コンコンとドアをノックする音が聞こえてきた。
「あれ?こんな時間に誰かしら?」
「統夜。ちょっと見てきてくれないか?」
「はいはい……」
律は自分がドアまで行って様子を見に行こうと考えたのだが、自分より背の高い統夜に頼むことにした。
統夜はやや呆れ気味の状態でドアに近付くと、覗き窓から誰が来たのかを確認していた。
すると……。
「……!!おい、梓が来るぞ!」
この部屋に訪れたのは梓であり、統夜がその事を伝えると、律たちは大慌てでノートなどを隠していた。
そのノートには梓に贈る曲のネタが書かれていたため、梓に見られる訳にはいかなかった。
ノートなどを隠し終えたところで、統夜はドアを開けると、梓が中に入ってきた。
「はいよ、いらっしゃい」
「あ、ども」
梓はゆっくりとであるがベッドのあるあたりまで移動をしていた。
「梓ちゃん」
「どうしたんだ?」
「もしかして、統夜を探しに来たのか?」
「んー……」
梓は寝ボケているのか、澪や律の問いかけをスルーし、周囲を見回していた。
「……おぉ」
どうやら統夜の存在は認識したようであり、再び梓は周囲を見回すのだが……。
「……ん?」
「「「ん?」」」
梓が首を傾げていたので、律、澪、紬の3人もつられて首を傾げていた。
「……あ、お邪魔しました〜」
梓は寝ボケてたまま、コネクティングドア側から、自分の部屋へと戻っていった。
そして、それから間もなくドンドンドンドンとドアを叩く音が聞こえてきた。
統夜が覗き窓から誰が来たか確認すると唯だったので、統夜はドアを開けるのだが……。
「やーくん!大変!大変大変!!」
唯は何故か血相を変えて部屋に入って来ており、そこから唯の慌てっぷりが垣間見れた。
「おいおい、落ち着けって」
「どうしたんだよ、唯」
「あずにゃんがいないんだよ!」
「梓ちゃんならたった今来たよ?」
「え!?」
「でもまた戻っていった」
紬と澪は、梓が先ほど出て行ったコネクティングドアの方を指差した。
「なんと!」
梓は戻っていると聞いた唯は、慌ててコネクティングドアを使って自分の部屋へ戻って行った。
それから間もなくして、再びドンドンドンとドアをノックする音が聞こえてきた。
統夜は覗き窓を見ると梓だったのでドアを開けるのだが……。
「統夜先輩!おかしいです!!」
今度は意識がハッキリとしている梓が、部屋の中に飛び込んできた。
「あ、起きた」
「唯先輩がいません!」
梓は唯がいないことに慌てていたのだが、紬と澪は何も言わずにコネクティングドアの方を指していた。
「へ?」
梓がそのことに呆然としていると、再びドンドンドンとドアを叩く音が聞こえたので、統夜は再び覗き窓で確認を行った。
すると、再び唯だったため、ドアを再び開けると、唯が慌てて飛び込んできた。
「やーくん!やっぱりいないよ!大変!大変!」
部屋に慌てて飛び込んできた唯は、目の前にいる梓に近付くと……。
「大変だよ、あずにゃん!あずにゃんがいないんだよ!!」
目の前にいるのが梓であることに唯はまだ気付いていないのか、梓に対して梓がいないと話をしており、梓はポカーンとしていた。
その数秒後……。
「おぉ!いるじゃん!」
「は、はい」
「どこ行ってたんだよ。心配したよぉ!」
唯は梓のことをぎゅっと抱きしめていた。
「あ……その……えっと……」
梓はどうリアクションしていいのかわからず、困惑していた。
『……おいおい。何なんだ?今のコントは』
「アハハ……確かに。こんな感じのコントをテレビで見たことがあるような……」
イルバと統夜は、今までの唯と梓のやり取りがコントのようだったため、苦笑いをしていた。
すると、突然部屋に備え付けられている電話が鳴った。
突然の電話に統夜たちは驚いていた。
「な、何だ?こんな夜遅くに」
「もしかして、日本からじゃないか?」
「日本は今、朝の6時だよ!」
「へぇ、時差に詳しくなったな、唯」
統夜は現在の日本の時刻を即答した唯に驚いており、時差計算の速さを褒めていた。
「エヘヘ……」
唯が褒められて嬉しそうにしていると、律が電話を取った。
「あっ、ハロー。イエース!オーイエース!」
律はきちんと会話をしているのか適当に返しているのか、よくわからないが、ハローとイエスしか英語を使っていなかった。
すると……。
「……何!?殺し!?」
「ひっ!?」
律が刑事ドラマのような台詞を言うと、澪はビクン!と怯えていた。
「……なーんちゃって♪出た途端に切れちゃった♪」
どうやら先ほどのやり取りはただのおふざけだったようであり、律はペロッと舌を出していた。
すると……。
ゴツン!!
律のおふざけに起こった澪は、律に拳骨をお見舞いしていた。
「どこからだったんだろう」
「大事な用ならまたかかってくるわよ♪」
「そーだねぇ」
澪、紬、唯の3人が何事もなかったかのように会話をしていると、律は殴られた部分を優しくさすりながらブツブツと何かを呟いていた。
その後、統夜、唯、梓の3人は自分たちの部屋に戻り、そのまま眠りについた。
統夜は普段からの疲れを癒すかのように爆睡しており、唯は梓へ贈る曲をどうするかを考えていた。
そして梓はというと……。
「……あぅぅ……。それじゃあ、唯先輩や統夜先輩のことを何て呼べば……」
また唯と統夜が留年したという夢を見ているようで、このように寝言を言いながらうなされていた。
「?」
唯はそんな梓を見て、首を傾げていた。
こうして、ロンドン2日目の夜は、更けていったのであった……。
……続く。
__次回予告__
『まさか、ロンドンの街でこのようなことをすることになるとはな。統夜、ここは気合をいれないとな!次回、「参加」。そして、奴らの秘密も明らかになる!』
今回はダンテは登場せず、終始ほのぼのな回となりました(笑)
ロンドン観光楽しそうですね!俺もロンドンに行ってみたい!(本音)
そして、妙な夢を見てからの梓と唯のやり取りは面白く可愛かったですよね!
ここら辺のシーンは劇場版でも好きなシーンとなっております。
さて、次回はロンドン3日目ですが、統夜たちを待ち受けているものはいったい何なのか?
そして、ダンテは再び登場するのか?
それでは、次回を楽しみに!
そして、炎の刻印の初打ち、行ってきます!(笑)