牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

120 / 137
お待たせしました!第108話です!

今回は前回の続きからで、寿司屋から始まります。

回転寿司屋で、統夜たちを待ち受けているものとは?

そして、今回はとあるゲームとのコラボで、とあるキャラが登場します。

そのキャラとは?

それでは、第108話をどうぞ!




第108話 「悪魔」

卒業旅行でロンドンの地へ降り立った統夜たちは、タクシーに乗り込み、どうにか予約の取れているホテルへチェックインすることが出来た。

 

荷物を置いて街を見て回ることにした統夜たちは、靴屋や服屋などを見て、楽しんでいた。

 

そんな中、ロンドンで回転寿司屋を発見した統夜たちは、そこで夕食を取ることに決めて、回転寿司屋の中に入っていった。

 

統夜たちの入った回転寿司屋は、日本の回転寿司屋とは違って、とてもオシャレな雰囲気で、パッと見だと回転寿司のお店とはわからない程であった。

 

「……なんじゃこりゃ……」

 

律は日本の回転寿司屋とは全然違う雰囲気に唖然としていた。

 

「なんか凄い雰囲気だね」

 

「あぁ。俺、回転寿司の店はテレビでしか見たことはないが、明らかに日本とは違う雰囲気だよな」

 

「え!?そうなんですか!?」

 

統夜は回転寿司の店に入ったことはないと知り、梓は驚いていた。

 

「本当に回ってるわねぇ……」

 

紬の言う通り、雰囲気はオシャレでも、きちんと回転寿司としての機能はしっかりしており、様々なお寿司が回っていた。

 

「回ってる……」

 

澪は回るお寿司を見ながら、顔が真っ青になっていた。

 

「アハハ……。空港でのトラウマが蘇ったか?」

 

澪は空港の荷物受け取りの時、自分の荷物が出てこないで近くで発見された事件がトラウマになっており、それ以来回るものに苦手意識を持つようになっていた。

 

「でも、思ってたのとはちょっと違うわ。私、バレリーナみたいなお寿司を想像してたのよね」

 

紬は小さな声で統夜と梓にこう伝えていた。

 

《……どんな寿司屋だよ……》

 

(確かに……。ムギの感性はなかなかのものだよな……)

 

少しずれている紬の感性に、統夜とイルバは苦笑いをしていた。

 

「あれ?何かステージが……」

 

唯は何故か設置されているステージを発見すると、そこへ移動しようとするのだが……。

 

 

 

 

 

……ボフン!

 

 

 

 

唯は誰かとぶつかってしまったのだが、その人物は唯よりも遥かに身長が高かった。

 

「Hello」

 

唯がぶつかった相手は、低い声で唯に挨拶をした後、「日本から来たのですか?」と質問していた。

 

その男性は唯よりも背が高く、唯はその男性に畏怖の感情を抱くにはそれだけで十分だった。

 

「ふ、フロムって言った……。ジャパンって言った……」

 

唯はいきなり話しかけられたため、少し怯えていた。

 

「え、えーと……えーと……。い、イエス」

 

「Welcome to my Sushi-bar」

 

男性はどうやら統夜たちを歓迎してるようであり、唯と握手をしていた。

 

「い、イエース……」

 

「おい、簡単にイエスって言うなよ」

 

「心配すんな。俺の方で通訳はしてるから。それに、今のところは歓迎されてるみたいだぞ」

 

統夜は最初から男性の言葉を通訳しており、ヤバそうであれば、仲介に入るつもりだった。

 

すると、他のスタッフが統夜たちの荷物やコート類を預かり、統夜たちにハッピを着せていた。

 

「凄いね!ロンドンのお寿司屋さんはハッピ着て食べるんだ!」

 

「焼肉屋のエプロンみたいなものか?」

 

何故かハッピを着せられたことに対して、唯と律はこのような解釈をしていた。

 

《おい、統夜。これは……》

 

(あぁ。これは完全に客とは思われてないみたいだな……)

 

統夜は荷物などを預かってハッピを着せられた時点で、普通の客ではないことを察していた。

 

そして、その統夜の予測は現実のものとなりつつあった。

 

「get on stage!」

 

先ほど唯がぶつかった長身の男性がとある方向を指すと……。

 

「え!?ギー太!?どうなってんの!?」

 

預けたはずの楽器たちが何故かステージにスタンバイされており、統夜たちは驚きを隠せなかった。

 

(あちゃあ……。やっぱりそういうことか)

 

予測通りの展開になってしまっているのか、統夜は頭を抱えていた。

 

「な、なんてこと!」

 

何故か紬は怒り気味であり、カツカツと靴音を鳴らしながらステージの方へ向かっていった。

 

「……エクスキューズミー!」

 

紬はステージで準備をするスタッフに声をかけ、何かを話していた。

 

すると相手は手で頭を抑えると、わかったと言いたげな感じで人差し指を立てていた。

 

「ムギちゃん。私たちはお寿司を食べに来ただけだって伝えてくれたんだねぇ♪」

 

「やっぱ持つべきものはムギだよな!」

 

統夜たちは、紬が自分たちは演奏しに来たのではないと相手に伝えたと思っていた。

 

しかし……。

 

「……って!違うじゃん!!」

 

スタッフがキーボードを用意しているのを見て、律がツッコミをいれていた。

 

紬は演奏しに来た訳ではないということを伝えたのではなく、キーボードがないことを伝えていたのであった。

 

紬は「うふふ♪」と満足げに笑みを浮かべると、小走りでこちらに戻って来た。

 

「……何してんだ、ムギ」

 

「だって、キーボードだけなかったんだもの!」

 

どうやら、紬は演奏する気満々のようであった。

 

「仕方ない……。ここは俺に任せろ」

 

軽音部メンバーで1番英語力のある統夜が、先ほどの長身の男性のもとへ向かって事情を話すことにした。

 

統夜の身長は170センチと、魔戒騎士の中では小柄な方であり、だからか、長身の男性ともかなりの身長差があった。

 

 

 

 

 

 

※統夜と男性の会話は日本語になっていますが、英語で話しています。

 

 

 

「あの、すいません」

 

「はい?どうしました?」

 

「僕たち、お寿司を食べに来たのであって、演奏しに来た訳ではないのです」

 

「え!?そうなのですか!?あなたたちは「ラブクライシス」ではないのですか?」

 

「は、はい。違います」

 

「そうでしたか……」

 

男性はここでようやく統夜たちは演奏しに来た訳ではないことを説明していた。

 

「ですが、あなたたちはバンドをやってますね?せっかくですから、演奏してくれませんかね?」

 

「あっ、いや、僕たちは……」

 

「ぜひ!お願いします!今日はこの店の開店祝いなんです!!」

 

どうやら、「ラブクライシス」というバンドがこの店の開店祝いに演奏するらしいのだが、ついでに統夜たちにも演奏をお願いしていた。

 

「……あー……えっと……」

 

「ぜひ!!お願いします!!」

 

男性の熱意は凄まじく、統夜はその熱意に根負けしてしまい、演奏を引き受けることになった。

 

 

 

 

 

 

※会話終わり。

 

 

 

 

 

 

「……あ、やーくん!どうだった?」

 

「みんな、すまん。俺たちは演奏しに来た訳ではないことは伝えたんだけど……」

 

「結局演奏することになったのか?」

 

律の問いかけに統夜は無言で頷いた。

 

「今日はこの店の開店祝いで「ラブクライシス」ってバンドが演奏するみたいなんだよ。……あれ?ラブクライシスって何か聞いたことがあるな……」

 

「統夜!それはマキちゃんたちのバンドだよ!ほら、ライブハウスでのライブで一緒だったろ?」

 

ラブクライシスという名前に統夜は聞き覚えがあったのだが、それは、律の友達のバンドの名前であり、律はそのことを説明していた。

 

律の説明で、統夜だけではなく、澪を除く全員が思い出していた。

 

律の友達であるが故に澪もラブクライシスのことはよく知っていたため、名前を聞いた瞬間に理解していた。

 

「それで、バンドをやってるならぜひ演奏してくれって言われてな。あの人の熱意に根負けしちまったよ」

 

「えぇ!?それじゃあ、演奏しなきゃダメってこと!?」

 

「まぁ、そうなるかな」

 

「仕方ない。どちらにせよ逃げられなさそうだし、やるしかないぜ!」

 

「そうよ!せっかくキーボードを用意してくれたんだもの!やらなきゃ!」

 

どうやら紬だけはやる気満々のようであり、「ふんす!」と力強く息巻いていた。

 

「そうだね!やろうよ!私たちの演奏をロンドンの人に聴いてもらえるチャンスだよ!」

 

唯もどうやら乗り気のようであり、そんな唯の言葉に、統夜たちは頷いた。

 

そして、覚悟を決めた統夜たちは、ステージへと向かい、演奏の準備を始めた。

 

統夜に演奏するよう頼んでいた男性は、演奏準備をしている統夜たちをジッと見つめていた。

 

こうして、ひょんなことから演奏することとなり、演奏準備も整った。

 

「さて……。みんな、何の曲にする?」

 

「そうねぇ……」

 

「どうする、唯」

 

「えーと……えーと……」

 

唯はどの曲を演奏するか考えながら、客席を眺めていた。

 

すると、インド人と思われる男性と目が合い、その男性は穏やかな表情で笑みを浮かべると、手を振ってくれていた。

 

それを見た唯は……。

 

「……カレーのちライスにしよう!」

 

インド人らしき男性を見て、曲を決めたのであった。

 

「カレー!?寿司屋なのにか?」

 

ここは回転寿司屋であるにも関わらず、カレーの歌を歌うという大きな矛盾に、律は驚きを隠せなかった。

 

「ご飯繋がりだよ!」

 

「なるほど!」

 

唯がカレーのちライスを選曲した理由を話すと、律は納得していた。

 

「あと、いい人そうだったから!」

 

「はぁ?」

 

唯のもう1つの理由が素っ頓狂なものであり、律は首を傾げていた。

 

「……やれやれ……。お前、あそこにいる人を見て決めただろ……」

 

統夜もカウンターに座るインド人らしき男性を目視しており、唯がこの曲を選んだ理由に呆れていた。

 

「……みんな、行くよ!」

 

唯はかなりノリノリになっているからか、統夜たちの方を見て、ビシッと親指を立てていた。

 

「……なんのマネだよ……」

 

「……置いてかないでください……」

 

1人盛り上がる唯を、律と梓はジト目で見ていた。

 

「あぁ!ごめんごめん!なんか盛り上がっちゃって!」

 

「やれやれ……。とりあえずやると決めた以上はしっかりやろうぜ!チューニングは問題ないか?」

 

統夜は音程の確認を取るためにギターをジャランと鳴らし、唯と梓も続けてギターをジャランと音を鳴らしていた。

 

「あずにゃん、半音の半音くらいずれてる気がする!」

 

絶対音感を持っている唯は、チューナーを使わずに梓のギターの音程が狂っていることを見抜いていた。

 

「ちゅ、チューニングしてる時間が……」

 

「梓、慌てなくていいから、唯の音に合わせてくれ」

 

「はい!」

 

梓は唯のギターの音を聴いて耳でチューニングを行っていた。

 

そしてボーカルを担当する唯がマイクを自分に合った高さに調整したところで、演奏準備は完全に整った。

 

全員が互いに顔を見合い、ウンウンと頷いていた。

 

「……1!2!1234!」

 

全員の準備が整ったことを確認した律がリズムを取ると、統夜たちは「カレーのちライス」の演奏を始めた。

 

それと同時に天井に吊るされた照明が回り始めた。

 

回る照明を見た澪はビクッと反応し、紬は吹き出しそうになっていた。

 

統夜と梓はジト目になっており、律も吹き出しそうになっていた。

 

唯は照明に見とれながら演奏していたのだが、歌を歌わなきゃいけないことを思い出し、ハッとしていた。

 

『……どうも!放課後ティータイムです!』

 

前奏が終わりそうだったので、唯は早口で自分のバンド名を説明していた。

 

そして、唯はそのまま歌を歌い始めた。

 

統夜たちの演奏する「カレーのちライス」は、ロック調の曲であるため、この店に来ている客たちは、統夜たちの演奏にノリながら寿司を楽しんでいた。

 

即興での演奏にも関わらず、統夜たちの息はピッタリ合っており、練習以上の力を発揮していた。

 

こうして、統夜たちの演奏は終始息ピッタリの状態で終了し、演奏が終わると、あちこちから大きな拍手が鳴り響いていた。

 

「……Thank you!アリガトゴザイマシタ!!」

 

統夜に演奏するよう頼んでいた長身の男性は、慣れない日本語で、統夜たちにお礼を言っていた。

 

そして、統夜たちはこの店のスタッフに囲まれ、スタッフたちは口々に統夜たちの演奏を評価していた。

 

統夜、律、紬、梓の4人はスタッフたちが褒めてくれていることを察して嬉しそうにしており、澪は顔を真っ青にしていた。

 

唯も照れながら笑みを浮かべていた。

 

「サンキュー、サンキュー。それじゃあ、お寿司の方を……」

 

本来の目的は演奏ではなく寿司を食べることだったので、唯はこう話そうとしたのだが、何故忙しなく撤収作業が行われ、統夜たちの着ていたハッピが回収され、荷物とコートを受け取った。

 

帰り支度が済んだところで統夜たちは何故か入り口の方へ案内されていた。

 

そして……。

 

「Thank you!ホーカゴティータイム!!」

 

店のスタッフが手を振りながらこう統夜たちに告げると、統夜たちは何故か店の外に出るハメになり、そのまま扉を閉められて外へ出されてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

統夜たちは偶然立ち寄った回転寿司屋で何故か演奏することとなり、演奏が終わると、寿司にありつけることなく、店の外に出されてしまった。

 

統夜たちは今自分たちが置かれている状況に唖然としながら店の前の階段に座っていた。

 

「……何でこうなったんだよ……」

 

「俺は確かに寿司を食いに来たと伝えたんだけどな……」

 

『恐らくはお前たちの演奏に満足して、そのことをすっかり忘れていたのだろう』

 

「やっぱり……回るのは良くないんだ」

 

空港の荷物受け取りでバッグがなかなか見つからなかったり、回転寿司屋に入ったら演奏させられて寿司は食べられなかったりと、今日は回るものを見るとロクなことが起こらなかった。

 

そのため、澪の回るものに対してのトラウマは募るばかりであった。

 

「……あぅぅ……お腹空いたねぇ……」

 

「言うなよぉ〜!」

 

「言っちゃいましたね……」

 

統夜たちは夕食を食べ損ねてしまったので、お腹が空いてきたのであった。

 

「お寿司〜」

 

「食べたいねぇ」

 

「だけど、もう一度あそこに入る勇気はないわ」

 

回転寿司屋に入ったのだから、お寿司を食べたかったのだが、もう一度入ってお寿司を食べたいと言う勇気は、統夜以外の全員は持ち合わせていなかった。

 

「……とりあえず、邪魔になるから移動しましょうか」

 

「そうだな」

 

ずっとここに座っていては往来の邪魔になるため、統夜たちはとりあえず階段を降りることにした。

 

「それにしても何だったんだよ。あの寿司屋はよぉ!」

 

寿司にありつくことが出来ず、律は恨めしそうに呟いていた。

 

その時だった。

 

「あれ?りっちゃん!澪ちゃん!」

 

「!!い、イエース!!」

 

突然誰かに律と澪の名前を呼ばれ、律は咄嗟に英語で返していた。

 

「ビックリした!もしかして旅行?」

 

「イエース!サイトシーイング!!」

 

「みんなで来たんだ!」

 

「イエース!」

 

律はほとんどイエスとしか答えていなかったが、会話は成立していた。

 

「……やばい、あたし英会話出来てる」

 

「でも、相手は日本語……」

 

律はここまでやり取りが出来たため、英会話が出来てると勘違いしてたが、澪の言う通り、相手は日本語で話していた。

 

「へ?」

 

律はその人物の顔を見たのだが……。

 

「……あっ!マキちゃん!!」

 

「ラブクライシスジャパン!」

 

「……おいおい。ジャパンはいらんだろ」

 

律と澪に声をかけたのは、統夜たちが2年生の時にライブハウスでのライブで一緒だった「ラブクライシス」のマキであった。

 

他のメンバーも一緒であり、唯は何故か「ラブクライシス」にジャパンをつけて呼んでいた。

 

統夜はそんな唯に呆れ気味にツッコミを入れていた。

 

「えー!?なんでいるの!?訳わかんなーい!!」

 

律はこのようなところでマキと会えたのは嬉しかったのか、抱き合って喜びを分かち合っていた。

 

「あっ、そういえば背の高い男の人がラブクライシスがどうとか言ってたけど、もしかしてここでライブを?」

 

統夜は男性との会話でラブクライシスという名前が出ていたことを思い出し、マキに話を振っていた。

 

「うん、そうだよ!みんなはどうしたの?」

 

マキは、統夜たちが何故この店の前にいたのかが気になっていたので、このように話を振っていた。

 

「あのねぇ、なんかお寿司を食べようとしたら演奏してって言われて、演奏したらお寿司が食べられなかったんだよぉ。下手くそだったのかなぁ?」

 

唯は半ベソ状態で、このようになった経緯を話していた。

 

「俺たちはラブクライシスじゃないことは伝えたんだけどな。バンドやってるならぜひ演奏してくれって頼まれちゃってな。それで演奏したらそのままさよならって訳だ」

 

統夜は唯が説明したことに対して補足説明をしていた。

 

「アハハ……そうなんだ。ライブハウスの川上さんは覚えてる?川上さんとここの店長が知り合いで、それで私たちにこの店の開店祝いにライブをして欲しいって頼まれてたの」

 

「あっ、そういえばあの人も開店祝いでどうとか言ってたな……」

 

統夜はマキの話を聞いて、男性との会話を思い出していた。

 

「それにしても、世界は狭すぎるよなぁ」

 

「うん。なんか不思議な気分」

 

意外なところで繋がりがあることがわかり、唯たちはその不思議さに驚いていた。

 

「さて、そろそろ行った方がいいんじゃないか?きっとみんなが来るのを待ってるぜ」

 

「あっ!そうだね!それじゃあみんな!またね!」

 

ラブクライシスのメンバーは各々統夜たちに手を振って別れを告げると、そのまま店の中へ入っていった。

 

「……あたしらもホテルに戻るか?」

 

「そうですね……」

 

こうして統夜たちはホテルに戻ろうとするのだが……。

 

『……統夜!ホラーではないが、妙な気配を感じるぜ!』

 

「妙な気配?」

 

『あぁ。どうやら、イレスの言ってた噂とやらは本当だったようだぜ』

 

「噂……ですか?」

 

統夜とイルバの話の意味がわからず、梓は首を傾げていた。

 

「イレス様が言ってたんだ。このイギリスにはホラーとは異なる魔獣がいるらしいと」

 

「ホラーとは異なる魔獣!?」

 

ホラー以外の怪物がこの世にいることを知り、梓は驚きを隠せずにいた。

 

それは梓だけではなく、唯たちも同様であった。

 

「で、統夜、お前はどうするんだ?」

 

「誰かが襲われてる可能性があるからな。その魔獣のところへ行ってくるさ」

 

「統夜先輩!危険ですよ!相手が誰なのかもわからないのに……」

 

ホラーであれば統夜は戦い慣れているが、ホラーではないものとの戦いとなると、何が起こるかわからないため、梓はいつも以上に統夜のことを心配していた。

 

「……心配するな。俺は必ず戻る。だから、信じてホテルで待っててくれ」

 

統夜は梓の頭を優しく撫でて、このようになだめるのだが……。

 

「……嫌です……」

 

「?梓?」

 

「嫌です!!統夜先輩が行くなら私もついて行きます!じゃないと絶対に認めません!」

 

梓はどうしても行くのなら自分も連れてけと言っていた。

 

「梓の言う通りだぜ。統夜1人残しておいたら心配で旅行どころじゃないからな」

 

梓の言葉に律が同調し、律の言葉に唯たちも頷いていた。

 

「……仕方ない。だったらなるべく俺の側から離れるなよ」

 

『おい、統夜。本気か!?』

 

「心配するな。相手が誰であろうとみんなは俺が守る。守りし者としてな」

 

「「「「「……////」」」」」

 

統夜のストレートな言葉が恥ずかしかったのか、唯たちは一斉に頬を赤らめていた。

 

「?みんな、どうして顔が赤いんだ?」

 

『やれやれ……。彼女がいても鈍感は相変わらずか……』

 

「?」

 

イルバは相変わらず鈍感な統夜に呆れており、統夜は首を傾げていた。

 

「と、とりあえず行くぞ、イルバ」

 

『了解だ。統夜』

 

統夜たちはイルバのナビゲーションを頼りに、妙な気配のする場所へと急行した。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

統夜たちがたどり着いたのは、統夜たちの泊まるホテルアイビスの近くであり、人通りの少ない場所であった。

 

「……イルバ、まさかあれか?」

 

『あぁ。そうみたいだぜ』

 

統夜が指差した方向に、人形のような奇妙な姿をしたものがおり、その人形のようなものは、手に備え付けられている刃物を突きつけながら1人の女性に迫っていた。

 

「あっ!女の人が襲われてます!」

 

「やーくん!助けないと!」

 

「当然!」

 

統夜は魔戒剣を取り出してそれを抜くと、人形のようなもの目掛けて走り出し、蹴りを放って人形のようなものを吹き飛ばした。

 

「……大丈夫ですか?」

 

統夜はこの言葉を英語で伝えると、女性は無言で頷いていた。

 

「早く逃げろ!!」

 

さらにこの言葉を英語で伝えると、女性は逃げるようにその場から走り去っていった。

 

「さてと……」

 

統夜は魔戒剣を構えると、ゆっくりと体勢を整える人形のようなものを睨みつけた。

 

体勢を整えた人形のようなものは、統夜を獲物として捉えたのか、襲いかかってきた。

 

「……っ!」

 

統夜はすぐさま迎撃体勢に入り、魔戒剣を一閃すると、人形のようなものは真っ二つに斬り裂かれ、そのまま消滅した。

 

「……よし。鎧を使うまでもなかったけど、イルバ、これで全部か?」

 

『いや。まだ奴さんはいるみたいだぜ』

 

イルバの感じた妙な気配はまだ消えてはおらず、先ほどのような怪物がまだいることを伝えていた。

 

そして……。

 

『……統夜!来るぞ!!』

 

イルバがこのように警告をすると、統夜の目の前に先ほどの人形のような怪物が4体も現れた。

 

「げっ……!まだあんなにいるのかよ……」

 

この怪物が何なのかはわからなかったが、まだ怪物がいることに、統夜はげんなりとしていた。

 

「……統夜先輩!気を付けて下さい!」

 

「あぁ!わかってるよ!」

 

統夜は改めて魔戒剣を構えると、4体の人形のような怪物は、一斉に統夜に襲いかかってきた。

 

統夜は人形のような怪物の攻撃を難なくかわし、魔戒剣を一閃してまずは1体を葬った。

 

続いて2体の怪物が一斉に襲いかかってくると、統夜は大きくジャンプをして攻撃をかわし、連続で魔戒剣を叩き込むことで、怪物を蹴散らした。

 

残りは1体となり、統夜は魔戒剣を振るおうとするのだが……。

 

「……っ!統夜先輩!!危ない!!」

 

統夜の背後に死神のような怪物が現れると、統夜目掛けて鎌を振り下ろした。

 

「ちっ!まだいやがったか!」

 

統夜は舌打ちをしながら死神のような怪物の方を向いて迎撃体勢を整えた。

 

そして、人形のような怪物を蹴り飛ばそうと考えていたその時だった。

 

 

 

 

 

 

バン!バン!バン!バン!

 

 

 

 

 

 

突如銃声が聞こえてきたと思ったら、人形のような怪物と、死神のような怪物の体は銃弾のようなもので貫かれ、2体揃って消滅した。

 

「……!?銃!?いったいどこから……」

 

統夜は突如銃によって危機を救われたことに驚いていた。

 

すると……。

 

『……!統夜!上だ!』

 

イルバはとある建物の上を指すと、統夜と唯たちはその方向を向いた。

 

そこにいたのは、二丁の拳銃を手に佇む、魔戒騎士のような格好をした男性だった。

 

「……!?あいつ……!!確か、寿司屋の近くですれ違った……!」

 

その男は、統夜が回転寿司屋の近くですれ違った男と同一人物であり、統夜はそのことをすぐに理解していた。

 

「ほう……。あの“悪魔”を難なく倒すとはな……。ガキのくせにやるじゃねぇか!」

 

魔戒騎士のような格好をした男は、魔法衣によく似たコートをなびかせながら、こう統夜の実力を評価していた。

 

男の話す言葉は英語ではなく日本語だったため、統夜だけではなく、唯たちも言葉を理解していた。

 

「悪魔……?奴らはホラーじゃなくて悪魔っていうのか?」

 

「ほう。まさかホラーという名を聞くとはな……。お前、やっぱり魔戒騎士か?」

 

「!?お前、何で魔戒騎士のことを知っている!?」

 

「あ?知ってるも何も俺は……」

 

『統夜!またその悪魔とやらが来るぞ!』

 

イルバがこのように警告をすると、統夜たちより背の高い少し大きな怪物と、先ほどから現れている人形のような怪物が複数現れた。

 

「……またこいつか。それに、あいつは……」

 

『あぁ。どうやら奴が親玉みたいだぜ』

 

「よし、こうなったら……」

 

統夜は臨戦体勢に入ろうとするが、その前に魔戒騎士のような格好をした男が大きくジャンプをすると、統夜の目の前で着地をした。

 

「……お前は下がってな!」

 

「何でだよ!俺だって奴らと戦える!」

 

「そうらしいが、あまりお前に暴れられたら俺が暴れたりないんでね。それに……」

 

「それに?」

 

「ホラーを狩るのがお前の仕事だというなら、悪魔を狩るのが俺の仕事という訳さ」

 

魔戒騎士のような男は、統夜とは戦う相手は違えど、目の前にいる悪魔を狩るものだということは理解した。

 

「……わかった。俺は仲間を守る。奴らはあんたに譲るぜ」

 

統夜は魔戒剣を手にしたまま、その場を離れ、唯たちのもとへと戻ってきた。

 

「……統夜先輩。本当にいいんですか?あの人を1人にしちゃって」

 

「大丈夫さ。あの人だってあの悪魔を狩るものなんだ。俺の力は必要ないだろうさ」

 

「っ!で、でも!」

 

「心配すんな。こちらとしても、みんなを守るのに専念出来るから助かるしな」

 

「「「「「……////」」」」」

 

統夜のストレートな言葉がやはり恥ずかしかったのか、唯たちは頬を赤らめていた。

 

統夜たちがこのようなやり取りをしている間に、人形のような怪物が一斉に魔戒騎士のような格好をした男に襲いかかってきた。

 

男は、両手に持っている拳銃を構えて発砲すると、その一撃で次々と人形のような怪物は倒されていった。

 

何体かの人形のような怪物が銃撃をかいくぐって男に飛びかかっていた。

 

男は背中に装備されている剣を取り出すと、その剣を一閃し、飛びかかってきた人形のような怪物を一気に蹴散らしていた。

 

「!?……そ、その剣!!貴様……まさか、スパーダの……!!」

 

数分もかからないうちに従えていた人形のような怪物は全滅してしまい、さらに男の持つ剣を見た瞬間、親玉の怪物は畏怖の感情を抱いていた。

 

親玉の怪物が話す言葉は英語であり、統夜は話を理解していたが、唯たちはちんぷんかんぷんであった。

 

「あぁ。スパーダは俺の親父だ」

 

魔戒騎士のような格好をした男は、英語で怪物と話をしていた。

 

『……!?スパーダだと!?』

 

「……?イルバ、知ってるのか?」

 

『あの悪魔とかいう怪物も見覚えあると思ってたのだが、そういうことだったのか……』

 

イルバはどうやら、あの悪魔という怪物の存在を知ってはいたようであった。

 

「なぁ、イルバ。それって……」

 

『統夜。詳しい話は後だ!』

 

統夜とイルバは一旦話を中断させると、スパーダの息子と自称している男の戦いを見守っていた。

 

「えぇい……!スパーダの息子だろうと関係ない!!貴様をぶち殺して、俺様が悪魔の王となってやる!!」

 

怪物は、男がスパーダの息子と知って怯えていたのだが、勇気を振り絞り、男を始末しようと駆け出して男に迫っていた。

 

男は非常に冷静であり、ニヤリと怪しい笑みを浮かべていた。

 

「死ぬのは……てめぇだ!!」

 

男は怪物をギリギリまで引き寄せると、剣を一閃し、怪物を真っ二つに斬り裂いた。

 

「つ……強すぎる……!これがスパーダの息子の力か……!」

 

「強すぎるだと?フン、それは認めてやるが、てめぇが弱過ぎるんだよ!」

 

男はまだまだ余力を残しており、余裕の笑みを浮かべていた。

 

男によって斬り裂かれた怪物は、男との力の差を感じながら消滅していた。

 

「す、凄い……」

 

「あの怪物をあっという間に……」

 

「あぁ、まるで魔戒騎士みたいだったな……」

 

「えぇ。本当に凄かったわ……」

 

「はい。びっくりです……」

 

「……」

 

唯たちは男の戦いぶりに驚愕しており、統夜は魔戒剣を青い鞘に納めると、ジッと男を睨みつけていた。

 

「……お前、一体何者だ?」

 

「だから言ったろ?俺は悪魔を狩ってるって……」

 

「それにスパーダってのは何者なんだ?返答次第じゃ、あんたを斬らなきゃいけない!」

 

統夜は再び魔戒剣を抜くと、魔戒剣を男に突き付けて男を睨みつけた。

 

統夜がこのような行動に出たのは、この男の力が余りにも強大で、その力に危機感を覚えたからであった。

 

「ちょ、ちょっと!統夜先輩!?それはいきなりすぎなんじゃ……」

 

統夜が男にいきなり剣を突き付けたことに、梓は驚きながらも止めようとしていた。

 

「やれやれ……。そこのお嬢ちゃんの言う通りだぜ。俺はただ悪魔を退治しただけなのに、お前に剣を突き付けられる理由はねぇぜ」

 

男は睨みつけながら剣を突き付けている統夜を見て呆れていた。

 

「お前がどれだけの魔戒騎士かは知らねぇが、お前に俺が殺せるかな?」

 

男はフッと笑みを浮かべると、手に持っている剣を統夜に突き付けた。

 

「「「「「……」」」」」

 

統夜と男は一触即発の状態となっており、いつ戦いになってもおかしくない状態だった。

 

唯たちはこのあまりに重苦しい空気に、どうしたらいいのかわからなかった。

 

しばらく一触即発の状態が続いていたその時だった。

 

「ちょ……ちょっと!待ってください!!」

 

突如1人の男が現れると、その男は慌てて統夜たちの仲裁に入っていた。

 

その男もまた、魔戒騎士のような格好をしていた。

 

「?あなたは……」

 

突如現れた乱入者によって、統夜の放っていた殺気が消え去っていった。

 

「ったく……。お前かよ、ダリオ」

 

統夜と対峙していた男は、乱入してきた男のことを知っているようで、男のことをダリオと呼んでいた。

 

「……あなたも、剣をおろして下さい。この人は敵ではありません」

 

ダリオと呼ばれた男は、日本語で統夜に剣をおろすよう伝えていた。

 

「……それを信用しろと?」

 

「僕はこの地の魔戒騎士です。この人……ダンテさんとは何度も仕事をしてますから、信用できる人です」

 

「『!?ダンテだって!?』」

 

ダンテという名前を聞いて、統夜とイルバは驚愕していた。

 

「何だよ。俺のことを知ってるのか?」

 

「いや。そうじゃなくて、俺の父の友人の名前がダンテだったから……」

 

統夜は、父の親友であり、後にホラーとなってしまって心滅となってしまった統夜に葬られた剛風騎士ダンテことダンテのことを思い出していた。

 

「ほう。まさか俺と同じ名前のやつがいたとはな」

 

ダリオと呼ばれた男のおかげで一触即発の状態は解除され、統夜とダンテと呼ばれた男は互いに剣をおろした。

 

一触即発の状態は解除され、唯たちも安堵のため息をついていた。

 

「あなたが白銀騎士奏狼ですよね?」

 

「そうですけど、どうして俺のことを?」

 

「あっ、申し遅れました。私はダリオ・モントーヤ。黒曜騎士是武(ゼム)の称号を持つ魔戒騎士です」

 

「!?あなたも、魔戒騎士ですか?」

 

統夜はこのロンドンで魔戒騎士に会えるとは思っておらず、驚きを隠せなかった。

 

「えぇ。この国はホラーだけではなく悪魔も姿を現していまして……。それで、ダンテさんとは度々共に戦っているのです」

 

「ま、そういうことだ」

 

「さっきも聞いたが、スパーダって一体何者なんだ?それに、ダンテだったか?あんたは……」

 

「まぁ、その話はおいおいしてやるよ。それよりも、そろそろ帰った方がいいんじゃねぇか?そこのお嬢ちゃんたちをいつまでそこに立たせておく気だ?」

 

「……っ!」

 

統夜はダンテやダリオから色々聞きたいことはあったのだが、唯たちをいつまでも待たせる訳にもいかず、これ以上のことは聞けなかった。

 

「……まぁ、お前らがいつまでここにいるかは知らんが、聞きたいことがあれば俺の店……「デビルメイクライ」まで来な」

 

ダンテはこのように告げると、剣を背中に背負うようにしまうと、その場を立ち去っていった。

 

「あなたが来ることは番犬所から聞きました。私もデビルメイクライに出入りしていますので、詳しいことはそこで話しましょう」

 

ダリオは統夜に一礼をすると、その場から立ち去っていった。

 

統夜たちだけがその場に残ることになり、しばらくの間、呆然としながらその場に立ち尽くしていた。

 

「……そろそろ戻ろっか」

 

「……そうだな」

 

これ以上ここにいる意味はなかったため、統夜たちはホテルに戻ることにした。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

ホテルに戻った統夜たちであったが、回転寿司屋で寿司が食べられなかったため、まだ食事は取れなかった。

 

そのため、食事をどうするかが問題となってしまったが、ここで統夜が用意した日本食が活躍するのであった。

 

ホテルに戻るなり同室の唯がシャワーを浴びると言い出したので、統夜は日本食を持って部屋を後にした。

 

そして、梓と一緒に隣の部屋である律、澪、紬の部屋へ向かった。

 

「おっ!統夜!お前も日本食を持ってきてたのか!」

 

律は統夜が入ってくるなり、統夜の持ってきた日本食たちを凝視していた。

 

「やれやれ……。ん?お前“も”?」

 

統夜は律の言っていたお前もという言葉が気になっていた。

 

「あっ、統夜先輩!ベッドの上に……」

 

梓はベッドの方を指差していたので、統夜はその方を見ると、そこには日本食やカップ麺などが置かれていた。

 

「あれ?この日本食ってもしかして……」

 

「あぁ!どうやら憂ちゃんが持たせてくれたみたいだぞ」

 

「なるほど……。あの時か……」

 

統夜は旅行の買い物をした時、憂と会っており、その時のことを思い出していた。

 

「これだけあれば、今日のご飯は困らないだろうな」

 

「憂ちゃん、ありがとう♪」

 

「統夜君もありがとうね♪」

 

律はカップ麺を手に、ベッドの上ではしゃいでおり、紬はおっとりとした笑顔で統夜に礼を言っていた。

 

「気にするなよ。それにしても、本当に日本食が必要になるとは思わなかったけどな」

 

統夜は万が一のことを考えて日本食を用意したのだが、本当に必要になるとは思っていなかったので、少しだけ驚いていた。

 

「……ところで、お前らは何で制服を着てるんだ?」

 

統夜はこの部屋に入った時から気になっていた質問をぶつけてみた。

 

「いやぁ、実はさっきまで記念写真撮っててさ♪」

 

律、澪、紬の3人はこの部屋に戻るなり制服に着替えて、記念写真を撮っていたのであった。

 

「それにしても、何で制服なんですか?」

 

「だって!そのために持ってきたんじゃん♪」

 

統夜たちはみんな制服を持っていこうと話に出ていたため制服は持ってきたのだが、律は記念写真を取りたいがために制服を持ってきたのであった。

 

「まったく……。すぐ嬉しがるんだから」

 

「そういう澪先輩もしっかり着てますよね」

 

梓に痛いところを指摘されたのか、澪の顔は真っ赤になっていた。

 

すると……。

 

「あー……さっぱりした♪」

 

シャワーを終えた唯は、パジャマを着た状態でまっすぐ律たちのいる部屋に来ていた。

 

統夜、唯、梓の部屋と律たちの部屋は通路で繋がっているため、気軽に出入りすることが出来るのであった。

 

「それにしても、憂も統夜先輩も本当に準備いいよね」

 

「自慢の憂だからね♪」

 

「まぁ、俺の場合は備えあれば憂いなしって思ったからな」

 

唯は用意周到な憂に感謝しており、統夜は魔戒騎士として、日頃から様々なことに備える癖をつけていたため、日本食を用意していたのであった。

 

唯は髪を乾かそうと、ドライヤーをコンセントに刺そうとしていた。

 

統夜はその事にすぐ気付き……。

 

「……!?ちょっ!?唯、そのまま電源入れるなよ!!」

 

「ほえ?」

 

統夜は慌てて止めに入るのだが、唯は首を傾げながらドライヤーの電源を入れた。

 

すると……。

 

ボン!!

 

「うひゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

爆音と共に少しだけ火花があがり、唯はそれに驚いていた。

 

幸い火が吹いたのは一瞬で、大惨事にはならなかった。

 

「おい、唯。どうしたんだ?」

 

「火……吹いたんだけど」

 

「怖っ!!」

 

唯がドライヤーの電源を入れた途端に起こったことを話すと、その内容に律は驚いていた。

 

「あちゃあ……。だから電源入れるなって言ったのに……」

 

静止が間に合わなかったためこのようなことになってしまい、統夜は頭を抱えていた。

 

「唯ちゃん。変圧器つけないと」

 

『気を付けろよ。日本とイギリスじゃ電圧に違いがあるからな。こういうのが火事のもとになるんだぜ』

 

イルバの説明通り、日本とイギリスでは電圧に違いがあるため、日本の家電を日本にいる感覚で使ってしまうと、先ほどの唯の起こしたことが起こってしまう。

 

変圧器をつければその心配はないのだが、それを忘れると、大惨事になる可能性もあるのである。

 

「もうヤダ……怖いよぉ〜……!」

 

唯は先ほどの光景が余程怖かったのか、ベソをかきながら弱々しい口調になっていた。

 

「……ご飯食べよ?」

 

ベソをかいていた唯であったが、ご飯は食べたいと思っていたのか、こう提案すると、統夜たちは無言で頷いていた。

 

こうして、統夜と憂が用意した日本食を夕食として食べた統夜たちは、それから各自も部屋に戻り、眠りについた。

 

ロンドンに着いてから色々あったのだが、無事にロンドン最初の夜は更けていったのであった……。

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『さぁ、いよいよロンドンも2日目だな。今日は色々回りようだが、どうなることやら……。次回、「街並」。あいつらのことも気になるよな』

 




今回登場したのは、ゲーム「DEVIL MAY CRY」から、ダンテでした。

ホラーと悪魔って何となく設定が似てるため、コラボしても問題ないかなと思い、登場させました。

ちなみに、デビルメイクライの時間軸としては、アニメ版終了直後となっております。

そして、ダンテと共に登場した魔戒騎士のダリオですが、劇場版「牙狼 DIVINE FLAME」に登場した魔戒騎士です。

劇場版に登場したダリオは、盲目の魔戒騎士でしたが、今回登場したダリオは、盲目になる前の若かりし頃のダリオになっています。

ダンテやダリオが次回以降活躍するかは未定ですが、出来れば活躍はさせたいと思っています。

さて、次回はロンドン2日目となっています。

統夜たちの旅行はいったいどうなるのか?

それでは、次回をお楽しみに!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。