牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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魔戒烈伝も早いもので4話終わりましたね!

4話も面白かったです!次回予告のタイトルから誰が出てくるのか予想するのも楽しいですよね♪

そしてみなさん、お待たせしました!

ついにあの騎士が登場します。

それでは第12話をお楽しみください!




第12話 「絵画」

統夜が唯たちに修練場での出来事を語ってから数日が経過していた。

 

この日はいつものように朝の鍛錬とエレメントの浄化を行ってから登校した。

 

そして今は休み時間で、統夜は次の授業が美術室での美術の授業だったので、美術室に向かっていた。

 

その途中、掲示板に気になるポスターが貼ってあったので、統夜は足を止めた。

 

「……!へぇ……」

 

そのポスターは「御月カオル 絵画展」という絵の個展のポスターだった。

 

(カオルさん……。桜ヶ丘で個展をやるんだな……)

 

御月カオルとは、画家と絵本作家として活動している女性である。

 

カオルは「白い霊獣と仮面の森」という絵本を出版し、この絵本はベストセラーになっていた。

 

統夜はカオルと面識があり、まるで弟のように可愛がられていた。

 

(個展の場所は……?)

 

統夜はポスターを見て個展の場所を確認すると、桜ヶ丘某所にある有名画家のための画廊であった。

 

その画廊では頻繁に有名画家の個展が行われている場所であった。

 

(日にちは今度の日曜日か……。軽音部のみんなでも誘って行こうかな)

 

統夜はカオルに会うために個展に行く決意をしていた。

 

「……あら、統夜くん、どうしたの?」

 

統夜がポスターを眺めていると、軽音部の顧問でもあるさわ子が統夜に声をかけた。

 

「あっ、さわ子先生。実はこのポスターを見てまして」

 

「ポスター?」

 

さわ子は統夜の見ていたポスターを眺めた。

 

「……えっ?カオル!?あの子、画家になったの?」

 

「え?さわ子先生ってカオルさんのこと知ってるんですか?」

 

「知ってるも何もあの子はこの学校の卒業生よ。クラスメイトだったから仲は良かったわ」

 

「え!?カオルさんが桜高の卒業生!?」

 

統夜はカオルがこの学校の卒業生という事実を知らなかったので驚きを隠せなかった。

 

「ねぇ、統夜君。あなた驚いてるけど、カオルの知り合いなの?」

 

「えぇ、まぁ」

 

「そうなんだ、それは意外ね。……あっ、そういえばカオルの絵本とカオルのお父さんの絵本がここの図書室にあったわ。一度見てみたら?」

 

さわ子はそれだけ言うとその場から立ち去っていった。

 

(カオルさん、ここの卒業生で、しかもさわ子先生とはクラスメイトだったとは……。世界は思ったより狭いな)

 

そんなことを考えていると、次の授業のチャイムが鳴り響いていた。

 

「やべっ!急がなきゃ」

 

統夜は大慌てで美術室に入り、辛うじて遅刻は免れたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、統夜はさわ子からの話を頼りに図書室に向かった。

 

目的はカオルが描いた「白い霊獣と仮面の森」とカオルの父、御月由児が描いた「黒い炎と黄金の風」という絵本を借りるためである。

 

統夜が図書室に入ると目当ての絵本はすぐに見つかった。

 

カオルの個展が近いというのとカオルが桜高の卒業生だというのがあったのか、入り口近くの目立つ場所に2つの絵本は置いてあった。

 

統夜はそれをすぐ手に取ると、本貸し出しの手続きを行った。

 

その2つの絵本を借りてから、統夜は音楽準備室に向かった。

 

「あっ、やーくん来た!」

 

統夜が中に入ると既に全員集合しており、ティータイムの準備は始まっていた。

 

「よう、みんな」

 

統夜はみんなに挨拶をすると、学生鞄と魔法衣を長椅子に置き、ギターケースを壁に立てかけた。

 

「今日は少し遅かったけど、どうしたんだ?」

 

「あぁ、実はこの本を借りててな」

 

統夜は学生鞄から2冊の絵本とイルバ専用のスタンドを取り出した。

 

「え?何?」

 

統夜はイルバ専用のスタンドを置くと、その近くに2冊の絵本を置いた。

 

「えっと……。「黒い炎と黄金の風」と……「白い霊獣と仮面の森」?」

 

「絵本みたいですね……」

 

唯たちが絵本を確認している間に統夜はイルバを指から外して専用のスタンドにセットした。

 

「あぁ、この絵本は御月カオルさんって人が描いた絵本とそのお父さんが描いた絵本なんだ」

 

「統夜君が絵本読むなんてちょっと意外ねぇ」

 

「そうだな。だけど俺は御月カオルさんと知り合いなんだよ」

 

「へぇ、統夜に絵本作家の知り合いがいたんだな」

 

「まぁ、正確にはこの人は画家なんだけどな」

 

「「「「「へぇ……」」」」」

 

「特に俺が読みたかったのはこっちなんだよ」

 

統夜は「黒い炎と黄金の風」をわかりやすく唯たちに見せた。

 

「こっちがカオルさんのお父さんが描いた絵本なんだけど、カオルさんのお父さんはかつてホラーに襲われたことがあるみたいで、黄金騎士に救われたみたいなんだ」

 

「黄金騎士って確かやーくんより強いって言ってた騎士だよねぇ?」

 

「あぁ。黄金騎士牙狼。魔戒騎士の最高位の称号を持つ騎士。それで、カオルさんのお父さんはその時の体験を絵本したんだけど、これがそうなんだよ」

 

「ということはこの絵本には魔戒騎士とホラーの戦いが描かれているんですか?」

 

「まぁ、あくまでもファンタジーとしてだと思うけどな」

 

「ねぇねぇ、さっそく見てみようよ!」

 

「そうだな、ちょっと興味あるかも」

 

こうして絵本を読むことになり、唯たちは統夜の周りに集まっていた。

 

「ねぇねぇやーくん、早く早く♪」

 

「わかったわかった」

 

統夜はさっそく絵本を開き、唯たちと共に読み始めた。

 

この絵本は黄金の鎧を身に纏った騎士がおぞましい怪物を退治していくというものであった。

 

黄金騎士の活躍によって怪物の王は倒され、闇の中から光を取り戻すことが出来た。

 

そして戦いで傷つき、ボロボロになった黄金騎士を待っていたものとは……。

 

「……ってあれ?」

 

「最後のページは白紙……ですよね?」

 

そう、最後のページが白紙になっているのだ。

 

最後のページが白紙とのことで、困惑する読者も多かった。

 

しかしこの絵本は自費出版だったからか部数は少なく、この本を置いている所は少ない。

 

桜高のように図書室に置かれるケースは珍しいのである。

 

「あぁ。俺も初めてこの絵本を見たけど、本当に最後のページは白紙なんだな」

 

「ねぇ、やーくん。この絵本って何で最後のページだけ初めてなの?」

 

「これはこの作品を作ったカオルさんのお父さんがわざとそうしたらしいんだ。結末は人それぞれの中にあるらしい」

 

「結末は人それぞれねぇ……」

 

「まぁ、確かにそれは一理あるわね」

 

「それにしてもこの本は数が少ないらしいから桜高の図書室によくあったなって思ったよ」

 

「え?そうなんですか?」

 

「あぁ。この絵本はカオルさんのお父さんが自費出版で出したらしいからな」

 

「なるほどな……」

 

「ねぇ、やーくん。こっちの絵本はどんな本なの?」

 

唯がカオルが出版した「白い霊獣と仮面の森」の絵本を指差した。

 

「これはカオルさんが出した絵本だな。カオルさんはこの絵本を出版するまでかなり苦労したらしい」

 

統夜はカオルから絵本出版のいきさつを聞いたことがあった。

 

カオルがこの絵本の製作を始めたのは布道シグマが魔戒騎士を滅ぼそうとしていた時期であった。

 

この頃にカオルは絵本の出版を頼まれて製作を始めるが、なかなか上手くいかなかった。

 

紆余曲折を経てどうにか絵本は完成し、今に至る。

 

「ねぇねぇ、この絵本も見てみようよ!」

 

唯がこう提案してするが……。

 

『おいおい、練習はどうするんだ?お前ら最近ダラダラし過ぎだろ』

 

「そうですよ!練習しましょうよ!」

 

イルバの駄目出しに梓が乗っかっていた。

 

「そうだな。この本を返すのは来週だからゆっくり読む時間もあるしな」

 

統夜はゆっくりと立ち上がると、2冊の絵本を学生鞄にしまった。

 

「えぇ?もっと読みたかったな……」

 

唯がぷぅっと頬を膨らませてむくれていた。

 

「まぁまぁ、唯ちゃん。練習しましょ?」

 

紬が唯のことをなだめていた。

 

唯はしぶしぶ練習を承諾し、このまま練習することになった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

統夜が借りた絵本を軽く読んでから練習が行われ、練習が終わるとみんなでいつもの帰り道を歩いていた。

 

「なぁ、みんな。今度の日曜日にカオルさんが個展を開くみたいなんだけど、一緒に行かないか?みんなをカオルさんに紹介したいしさ」

 

「うん♪行きたい♪」

 

「たまには絵の個展もいいわね♪」

 

「あぁ、私も行きたい!」

 

「はい!私も行きたいです!」

 

「みんなが行くならあたしも行こうかな」

 

唯たちは二つ返事で個展に行くことを告げた。

 

「決まりだな」

 

統夜たちは当日の待ち合わせの場所と時間を決め、そこで番犬所の近くに到着した。

 

「それじゃあ俺は番犬所に寄るからここで」

 

「うん。やーくん、また明日ねぇ」

 

「統夜先輩。今日も無茶はしないで下さいね」

 

「あぁ、わかってるよ。それじゃあまたな」

 

統夜は唯たちと別れ、そのまま番犬所へと向かった。

 

この日は指令がなかったので、夜の街を見回り、この日は帰宅した。

 

 

 

そして個展当日、統夜は待ち合わせ場所に来ていた。

 

しばらくは指令らしい指令はなく、統夜はここ数日、まったりとした日々を過ごすことが出来た。

 

そして待つこと10数分後……。

 

「あっ、統夜!」

 

澪、律、紬、梓が統夜と合流した。

 

「おう、みんな。待ってたぞ」

 

「統夜、ずいぶんと早いな。だいぶ待ってたか?」

 

「いや、エレメントの浄化の仕事をこなしてから来たからそんなには待ってないよ」

 

「なるほど、それでその赤いコートを持ってきてるという訳か」

 

律は統夜が手に持っている魔法衣を指差した。

 

「そういうことだ。この魔法衣は魔戒騎士にとって必要なものだからな。いくらプライベートだと言っても手放せないんだよ。ホラーも急に現れるかもしれないからな」

 

「やっぱり魔戒騎士のお仕事って大変ねぇ」

 

「まぁ、それが守りし者の務めってやつだよ」

 

「それよりも唯先輩が来ませんね」

 

現在はちょうど待ち合わせの時間なのだが、唯が現れる気配はなかった。

 

「あぁ、唯のことだからな。恐らくは……」

 

「ごめーん!!遅くなったぁ!!」

 

唯が大慌てで待ち合わせ場所まで駆けつけていた。

 

「唯先輩、遅いですよ」

 

「エヘヘ……。ごめんごめん。憂に起こしてもらったんだけど、寝坊しちゃった」

 

「ま、そんなことだと思ったよ」

 

律はジト目で唯のことを見ていた。

 

「とりあえずみんな揃ったんだし、さっそく行こうぜ」

 

統夜たちはカオルの個展が開かれる画廊に向かって歩き始めた。

 

 

そして歩くことおよそ15分、画廊に到着した。

 

「ずいぶんおっきい会場なんだねぇ」

 

「ここはね、有名な画家さんたちがよく個展を開いている場所なのよ」

 

「さすがムギ。知ってたんだな」

 

「えぇ。ここはお父様とよく行くのよ。画家の知り合いも多いから」

 

(アハハ……さすがムギ……)

 

紬の家の財力の大きさに統夜は苦笑いをしていた。

 

「それにしてもそんなところで個展が開けるなんてカオルさんって人はすごいんですね」

 

「そうだな、あの絵本を出してからはけっこう忙しい日々を送ってるみたいだよ」

 

「へぇ、すごいなぁ」

 

(……そういえばこの前カオルさんと会ったのはいつだっけ?鋼牙さんの家に遊びに行った時に会って以来かな?)

 

統夜は何度か黄金騎士牙狼である冴島鋼牙の家で何度かカオルと会っていたのだ。

 

今日は久しぶりの再会になる。

 

「ねぇねぇ、早く入ろうよぉ!」

 

「あぁ、そうだな。中に入るか」

 

こうして統夜たちは個展の会場に入った。

 

中に入ると受付を済ませ、パンフレットを受け取った。

 

「おぉ、すごいねぇ」

 

「はい。私、こういう絵は好きですよ」

 

統夜たちはさっそく展示された絵を見ていたのだが、唯と梓はカオルの絵を気に入ったようだ。

 

「なぁ、統夜。そのカオルさんはどこにいるんだろう?」

 

「さぁ、そこは俺もわからない。とりあえず絵を見て回ってれば会えるだろ」

 

「そうだな。せっかくだから色々見て回ろうよ。こんな機会は滅多にないからさ」

 

「そうね♪みんなでこういう絵を見るのもそうだけど、統夜くんとおでかけも久しぶりだものね♪」

 

「そういえばそうだったな」

 

統夜は魔戒騎士として忙しい毎日を送っているせいか唯たちと出かけたり遊んだりというのが少なかった。

 

「だから今日は思いきり楽しみましょうよ。私、先輩たちとおでかけは楽しみでしたから♪」

 

梓にとっては軽音部の先輩たちと初めてのおでかけだったので梓はこの日を楽しみにしていた。

 

「あぁ。俺も楽しみにしてたぞ。俺にとっても久しぶりにみんなで出掛けるんだからな」

 

「うん♪そうだね♪」

 

「ねぇねぇ、統夜君。あっちにも絵があるから早くみましょう♪」

 

「ちょっとムギ。引っ張るなって」

 

統夜は紬に引っ張られ向こう側の絵の展示スペースに移動し、唯たちもそれに続いた。

 

展示されている絵を楽しみながら見続けて15分、この個展の目玉と言えるスペースに来た統夜たちは1番目立つ展示をされている絵の前で記者から取材されている1人の女性を見つけた。

 

「あ、カオルさんだ」

 

「あの人がカオルさん……ですか?」

 

「あぁ。声をかけたいが、今は取材中だな。声をかけるのはもう少し待とう」

 

統夜は絵を見ながら待っていると、数分しないうちに取材は終わったようだった。

 

取材が終わると、取材を受けていた女性……御月カオルは統夜の存在を見つけた

 

「あっ、統夜君!!」

 

カオルがブンブンと手を振っていたので統夜はカオルのもとへ駆け出した。

 

「カオルさん、お久しぶりです」

 

「うん♪久しぶりだねぇ♪」

 

カオルは満面の笑みで統夜との再会を喜んでいた。

 

「統夜君、しばらく見ないうちにまたちょっと男っぽくなったんじゃない?」

 

「アハハ、ありがとうございます。ところで鋼牙さんはお元気ですか?」

 

「うん、相変わらずだよ。桜ヶ丘で個展をやるって鋼牙に言ったら「統夜によろしく伝えておいてくれ」って言ってたよ」

 

「そうですか!相変わらずなんですね、鋼牙さんは」

 

「それよりも……」

 

カオルは少し離れたところで動向を見守っている唯たちを見ていた。

 

「統夜君ってば隅に置けないわねぇ」

 

カオルはニヤニヤしながらこう言うが、統夜は首を傾げていた。

 

「?何のことです?」

 

「統夜君が女の子と一緒だなんてね。それも5人も」

 

「あぁ、彼女たちは軽音部の友達ですよ」

 

「そっかぁ。統夜君って桜ヶ丘高校に通ってるって言ってたもんね♪……それで、統夜君の彼女はどの子なの?」

 

「ちょ!?な、何言ってるんですか!?」

 

「ウフフ、照れちゃって♪統夜君ってレオ君と同じくらいからかい甲斐があるよね♪」

 

「カオルさん、からかわないでくださいよ!」

 

統夜は顔を真っ赤にしており、カオルはクスクスと笑っていた。

 

統夜が照れている間にカオルが唯たちをに向かって手招きをすると、唯たちはゆっくりと2人のもとへ歩み寄った。

 

「あなたが統夜君の言ってた軽音部のみんなね。私は御月カオル。よろしくね♪」

 

「初めまして、平沢唯です!」

 

「田井中律です」

 

「あっ、秋山澪です」

 

「琴吹紬です。ムギって呼んでください」

 

「中野梓です!」

 

「唯ちゃんにりっちゃんに澪ちゃんにムギちゃん。そして梓ちゃんね」

 

「はい!よろしくお願いします」

 

「こちらこそ♪……あなたたちも桜高なのよね?実は私も桜高の卒業生なのよ」

 

「え!?そうなんですか!?」

 

「えぇ。だからいつかこの桜ヶ丘で個展を開きたいって思ってたの」

 

「カオルさんの夢が叶ったってことですね」

 

「そうね。おかげさまで夢がひとつ叶ったわ♪」

 

夢が叶ったと語るカオルはとても嬉しそうな顔をしていた。

 

「それでね、軽音部の話を聞きたいんだけど……」

 

カオルが唯たちに話を聞こうとしたその時だった。

 

「カオル!?あなた、カオルじゃない!」

 

「あっ、さわちゃん!」

 

カオルに声をかけたのがさわ子だと律はすぐにわかった。

 

「えっ!?さわ子?久しぶり!」

 

カオルとさわ子はお互いに再開を喜んでいた。

 

「カオル、あなた画家になれたのね」

 

「まぁね。それで、さわ子は今何をやってるの?」

 

「私は先生よ。この子たちは私の教え子なの」

 

「あのさわ子が学校の先生ねぇ……」

 

高校時代のさわ子を知っているカオルは苦笑いをしていた。

 

「昔は相当やんちゃしてたあのキャサリンがねぇ……」

 

「やめてよ!今の私は優しくおしとやかな先生で通してるのに」

 

「まぁ、俺らには本性バレてますけどね」

 

さわ子の本性を知っている統夜たちは苦笑いしていたが、梓だけが首をかしげていた。

 

しかし、梓も梓でさわ子は優しくおしとやかな先生っていうのが本性ではないということはなんとなくわかっていた。

 

「まぁ、私は軽音部の顧問をやってるからね。それは仕方ないわよね」

 

「だけど、さわ子が元気そうで良かった。紀美たちは元気なの?」

 

「たまに会ってるけど、変わらず元気よ。それで、亜佐美は元気?たまに会ってるんでしょう?」

 

「亜佐美も相変わらずよ。この前も彼氏と別れたってぼやいてたわ」

 

「うっ!相変わらず恋愛はイマイチなのね、亜佐美は……」

 

さわ子とカオルは同級生ということもあって、昔話に花を咲かせていた。

 

「あっ、ごめんね、みんな。さわ子と久しぶりの再開だったからつい話が弾んじゃって……」

 

「俺たちは大丈夫ですから、2人でのんびり話をして下さい。俺たちはもっと絵を見てますから」

 

統夜がこう言うと唯たちもウンウンと頷いていた。

 

「ごめんなさいね、みんな」

 

さわ子も申し訳なさそうにしていた。

 

「いいんですよ。先生とカオルさんは積もる話もあるでしょう?そんな機会って滅多になさそうですし……」

 

「本当にごめんね。とりあえずゆっくりしていってね。……あっ、そうだ!今日6時にはこの個展は終わるんだけど、片付けを手伝ってくれない?帰りに何か奢るから♪」

 

「え?いいんですか?」

 

「えぇ。私もあなたたちともっとお話したいしね♪」

 

「ありがとうございます。それじゃあもうちょっと絵を見て6時にはここに戻って来ますね」

 

統夜たちは1度カオルと別れ、個展の見学を再開した。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

統夜たちは一通り個展の見学を済ませると1度画廊の外に出ていた。

 

現在の時刻は15時半。約束の時間である18時はまだ先であった。

 

「まだ6時まで時間ありますね」

 

「これからどうしよっか?」

 

「ねぇねぇ、近くにカラオケがあるから2時間くらい歌っていかない?」

 

唯は約束の時間近くまでカラオケをしようと提案した。

 

「おぉ、カラオケいいな!」

 

唯の提案に律はノリノリだった。

 

「うん♪行きましょ行きましょ♪」

 

「か、カラオケですか……」

 

「あぁ……」

 

紬はノリノリだが、梓と澪はあまり乗り気ではないようだった。

 

「あずにゃん、行こうよぉ」

 

「あれぇ?澪ぉ、恥ずかしいのかぁ?」

 

唯は梓を説得し、律はニヤニヤしながら澪をからかっていた。

 

「は、恥ずかしいわけないだろ!」

 

「じゃあ別にいいよな?」

 

「いいぞ。行こうじゃないの!」

 

澪は律に焚き付けられる形でカラオケに行くことを了承した。

 

「ま、まぁ……。先輩たちが行くなら……」

 

梓もカラオケに行くことを了承した。

 

「やーくんは大丈夫?」

 

「イルバ。今日は番犬所から指令は来てるか?」

 

『いや、今のところは来てないな。まぁ、最近は忙しかったし、たまにはいいんじゃないのか?』

 

「……ありがとな、イルバ」

 

『よせよ、統夜。お前さんに礼など言われると気持ち悪いぞ』

 

「イルイル照れなくてもいいのに♪」

 

『だから変なあだ名で呼ぶな!』

 

唯とイルバが変わらぬやり取りをしていたので統夜は苦笑いをしていた。

 

「それじゃあ、さっそく行こっ♪」

 

こうして統夜たちはカラオケに行くことになった。

 

カラオケで歌うこと2時間後、店を出た統夜たちは再び画廊に戻って来た。

 

「あっ、統夜くん!みんな!」

 

画廊の中に入ると、カオルが統夜たちを見つけて手を振っていたので、統夜たちはカオルに駆け寄った。

 

「あれ?さわ子先生は一緒じゃなかったんですか?」

 

「さわ子ならちょっと前に帰ったわ」

 

「そうでしたか」

 

「みんなによろしく言ってたわよ」

 

統夜はこの場にさわ子先生がいなくて助かったなと思っていた。

 

カオルと話をする時には魔戒騎士絡みの話もするだろうと思っていたからだ。

 

「さて、早く片付けを終わらせてご飯を食べに行きましょ♪」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

統夜たちは個展のスタッフと共に絵の個展の片付けを手伝った。

 

 

 

個展の片付けは統夜たちの手伝いもあり、1時間強で終わり、個展のスタッフは先に画廊から撤収した。

 

「さて……。終わりましたね」

 

「ありがとね、みんな。おかげで早く終われたよ♪」

 

「いえ。少しでも力になれたなら良かったです」

 

「それじゃあ、私たちも撤収しましょう。約束通りご飯奢るから♪」

 

「わーい♪ご馳走さまです♪」

 

「おい唯!……すいません、カオルさん」

 

「クスッ、いいのいいの♪ほら、早く行きましょっ♪」

 

統夜たちがカオルと共に画廊を出ようとしたその時だった。

 

「……御月カオルだな」

 

統夜たちの前にサングラスをかけた明らかに怪しい男が現れた。

 

統夜は嫌な予感がしていたので魔法衣を羽織って、不測の事態に備えていた。

 

「えぇ、そうですけど」

 

「絵本作家としてデビューして以来、画家としても活躍してると聞く」

 

「あの……ご用件は?」

 

「俺は……。貴様の才能が欲しい。貴様を喰らってな」

 

男がカオルに迫る前に統夜が男の前に立ちはだかった。

 

「!統夜君!」

 

「……小僧、そこをどけ」

 

「ホラーの言うことなんか聞けるかよ」

 

統夜は魔法衣の懐から魔戒剣を取り出し、それを抜いた。

 

「カオルさん、みんなを頼みます」

 

「えぇ!みんな、こっちよ!」

 

カオルは唯たちを連れて安全な場所まで移動した。

 

「小僧……魔戒騎士か」

 

「まぁな」

 

統夜は魔戒剣を一閃するが、これは男にかわされてしまった。

 

『統夜。こいつはペインティ。他人の才能を喰らって自分の才能にしてしまうたいしたことのないホラーだぜ」

 

「なるほどな。自分の力じゃろくな作品は作れないって訳か」

 

「黙れ!貴様に何がわかる!」

 

「わかるさ。芸術ってのは自分の力で作っていくもんさ。他人の力を手に入れてもそれは所詮猿真似以下だ!」

 

「貴様ぁ!許さん!」

 

統夜の挑発に激昂したペインティは早々に人間態からホラーに姿を変えた。

 

「ろくに戦わず正体を見せるとは、本当にたいしたことはなさそうだな」

 

統夜は魔戒剣を構えながらペインティを挑発していた。

 

「貴様……!これをくらっても同じことが言えるか!」

 

ペインティは筆のような形をしたミサイルを6つ出して、統夜めがけて放った。

 

「……」

 

統夜は笑みを浮かべながらミサイルを魔戒剣で切り落とそうとした。

 

……その時だった。

 

統夜の前に何者かが現れたと思ったら統夜と同じような形の剣を振るい、6つのミサイルをあっと言う間に斬り裂いた。

 

「「「「「!!」」」」」

 

唯たちは突然の乱入者に驚いていたが、統夜とカオルは平然としていた。

 

「くっ……!貴様、何者だ!!」

 

統夜の目の前に現れた男は、統夜の魔法衣と似た形をした白いコートを羽織り、統夜の魔戒剣と似た剣を手に持っていた。

 

統夜の持っている魔戒剣は柄が青なのだが、男の剣の柄は赤だった。

 

「……鋼牙さん!お久しぶりです!」

 

「統夜、久しぶりだな」

 

統夜の前に現れたのは冴島鋼牙。黄金騎士牙狼の称号を持つ魔戒騎士で、現時点で最強の魔戒騎士である。

 

「……統夜、こいつは俺の獲物だ。すまないが譲ってくれないか?」

 

鋼牙は魔戒剣を構え、こう統夜に告げた。

 

「鋼牙さんがそう言うなら。俺は久しぶりにお手並みを拝見させてもらいます」

 

「フッ……別に構わないぞ」

 

統夜は魔戒剣を鞘に納めると、唯たちの元へ駆け寄った。

 

「やーくん!?あの人を助けなくていいの!?」

 

「大丈夫。俺が助太刀しても邪魔になるだけだから……」

 

「統夜先輩。それってどういうことですか?」

 

「梓ちゃん。あいつはね。みんなの希望になる存在……。黄金騎士牙狼なの」

 

鋼牙のことを語るカオルの顔は完全に鋼牙のことを信頼していると言いたげな顔であった。

 

「牙狼!?それって確か……最強の……」

 

「が、牙狼だと!?貴様、まさか!?」

 

『やれやれ。この街まで俺たちが追いかけて来たっていうのにこいつが何者か知らなかったんだな』

 

鋼牙の指にはめられたドクロの指輪がカチカチと音を立てながら口を開いていた。

 

この指輪は、「魔導輪ザルバ」。黄金騎士牙狼である鋼牙の相棒であり、ホラーとの戦いにおいて鋼牙のサポートを行う。

 

その容姿はイルバにそっくりなのだが、お互いそれを認めたくないらしく、会う度にケンカをよくしている。

 

「無駄話はそれまでだ。貴様をこれ以上逃すわけにはいかないからな」

 

(あのホラー、人を喰らいながら桜ヶ丘まで逃げてきたのか)

 

統夜はペインティがなぜこの桜ヶ丘に来たのかを分析していた。

 

「牙狼だかなんだか知らねえが、貴様を喰らってあの女を喰らってやる!」

 

「カオルは俺にとって誰よりも守るべき女だ。貴様ごときに喰わせるわけにはいかない」

 

「ちょっ!?鋼牙!?」

 

鋼牙がサラッと言った言葉を聞いたカオルの顔が真っ赤になっていた。

 

「……貴様の陰我。俺が断ち切る!」

 

鋼牙はペインティに向かってこう宣言すると、魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

円を描いた部分だけ空間が変化し、そこから光が放たれた。

 

そこから放たれる光に包まれた鋼牙の体にガチャン!ガチャン!と音を立てながら鎧が装着されていった。

 

そして……。

 

統夜たちの前に黄金の輝きを放った狼の騎士が姿を現せた。

 

この騎士こそが魔戒騎士の最高位と言われた黄金騎士牙狼。

 

闇を照らす希望の光を放つ騎士である。

 

鋼牙の魔戒剣は専用の剣である牙狼剣に変化していた。

 

「く、くそ!!やってやる!やってやるぞ!!」

 

牙狼の雄々しき姿に畏怖したのかペインティはがむしゃらに筆の形をしたミサイルを連射していた。

 

鋼牙はミサイルをかわそうとはせず、全てを受けたのだが、黄金の鎧に傷一つ付いておらず、鋼牙は一歩一歩ゆっくりと前に進んでいた。

 

「このっ……!」

 

ペインティはミサイルだけではなくまるで絵の具のような衝撃波を放つが、鋼牙はそれを全て受けるが、それでも鋼牙は止まらなかった。

 

「く、くそ!こいつ……化け物か……!」

 

『おいおい。ホラーのお前さんにそれは言われたくないぜ』

 

ペインティの言葉にザルバは思わずツッコミをいれていた。

 

「……」

 

鋼牙は牙狼剣を構えると、恐怖に怯えるペインティを睨みつけていた。

 

そのまま牙狼剣を一閃すると、ペインティの体は真っ二つに切り裂かれた。

 

最強の魔戒騎士牙狼を相手に手も足も出なかったペインティは断末魔をあげながらその肉体が消滅した。

 

「……」

 

鋼牙はペインティを討滅すると、そのまま鎧を解除した。

 

鎧を解除すると、手に持っていた牙狼剣は元の魔戒剣に戻っていた。

 

鋼牙は魔戒剣を赤い鞘に納めた。

 

「鋼牙さん!」

 

ペインティが消滅したことを確認した統夜は鋼牙に駆け寄り、唯たちもそれに続いた。

 

「統夜。……すまなかったな。お前の獲物を横取りする形になってしまった」

 

「いいんです。久しぶりにあなたの戦いを見られたんですから」

 

「フッ……。そうか」

 

鋼牙は優しい表情で笑みを浮かべていた。

 

「……鋼牙。相変わらず凄かったよ」

 

「カオル。すまなかったな。またお前の個展の会場で戦うことになってしまって」

 

「うぅん、いいの。もう個展は終わってたし、あなたなら私を絶対に守ってくれると思ってたから」

 

「あぁ、そうだな」

 

鋼牙がカオルに向けた笑みは統夜に向けた笑みとは違い、愛情にあふれたものであった。

 

「……ところで、統夜。彼女たちは?」

 

「あぁ。彼女たちは軽音部の仲間です」

 

「……そうか。ホラーとの戦いに何度も巻き込まれているそうだな。零から話は聞いている」

 

鋼牙はここに来る前に零から軽音部の話を聞いており、唯たちが何度もホラーに襲われ、それを統夜に救われていることを話していた。

 

「あのっ、平沢唯です」

 

「田井中律です」

 

「秋山……澪です」

 

「琴吹紬です。ムギと呼んでください」

 

「中野梓です」

 

「俺は冴島鋼牙だ。……統夜がいつも世話になってるみたいだな」

 

「あのっ、私たちは何も……」

 

「はい。統夜先輩は私たちのことをいつも守ってくれて……」

 

「そうだったか。これからも統夜のことをよろしく頼むな」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

「……カオル。俺はもう帰るが、お前はどうする?」

 

「私はこれから統夜くんとご飯を食べに行くわ」

 

「……そうか。俺は先に帰るぞ」

 

鋼牙は画廊を出るために歩き始めるが、すぐ足を止めた。

 

「……統夜。たまには家に遊びに来い。ゴンザも会いたがってたぞ」

 

「はい!ぜひ遊びに行きます!」

 

「あぁ。……それじゃあまたな、統夜」

 

鋼牙はそう統夜に告げるとその場を立ち去った。

 

「……さて、私たちも行きましょうか」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

鋼牙がいなくなってすぐ、統夜たちは食事を取るためこの場を後にした。

 

その後統夜たちはカオルの奢りで夕食をご馳走になり、主に桜高の話で盛り上がっていた。

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『おいおい統夜。本当にあいつの家に行くのか?俺様は気がすすまないんだがな。次回、「屋敷」。まぁ、お前が行くっていうなら仕方ないか』

 




鋼牙とカオルが登場しました!

ここでオリジナルの設定なんですが、カオルは女子高時代の桜ヶ丘高校の卒業生という設定にさせてもらいました。

そしてあのさわちゃんとも仲が良かったという設定になっています。

鋼牙と牙狼も無事登場させました。

ですが戦闘シーンがあっという間で物足りないって人もいると思いますが、鋼牙の圧倒的強さを出すために戦闘シーンはあっさり目にさせてもらいました。

普段の戦闘シーンも結構あっさり目かもしれませんが(笑)

次回は戦闘シーンなしのほのぼの回になると思います。

そして、次回は統夜の意外な事実が明らかになります。

それでは次回をお楽しみに!


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