牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第106話になります。

最近ポケモンムーンをかなりやってるからか、プレイ時間が100時間を越えてしまいました。

ポケモンばっかやってないで小説書けよと言われたら何も言い返せないです(笑)

ですが、執筆の方もゆっくりではありますが行っているので安心してください(笑)

さて、今回はいよいよ統夜たちがロンドンへ飛び立ちます。

ロンドンへの旅路はどのようなものになるのか?

それでは、第106話をどうぞ!




第106話 「渡英」

統夜たちは卒業旅行を企画し、もうじき訪れる5連休を利用してロンドンへ行くことになった。

 

唯たちは親の承認を得て、統夜は番犬所への承認を得ることが出来たため、卒業旅行に向けて動くことになっていた。

 

それと同時に統夜たち3年生は、唯一の後輩である梓に曲をプレゼントしたいということを考えていた。

 

どのような曲にするかはまだ決まっておらず、各自で考えることにした。

 

他のメンバーがなかなかどのような曲にするか決まらない中、統夜はある程度のイメージは出来ているのか、空いた時間を使ってパソコンでその曲を作っていた。

 

各自がそれぞれの時間を過ごす中、いよいよ卒業旅行の前日を迎えていた。

 

統夜はこの日、いつものようにエレメントの浄化を行っていた。

 

明日から5日間も桜ヶ丘をあけるため、統夜はいつもよりも気合を入れて魔戒騎士としての仕事に臨んでいた。

 

幸い今日は登校日ではないため、統夜は午前中からお昼にかけてじっくりとエレメントの浄化を行い、途中昼食を挟んでから再びエレメントの浄化を行っていた。

 

エレメントの浄化を終えると、統夜は番犬所を訪れた。

 

「統夜、明日はいよいよ卒業旅行ですね」

 

統夜はいつものように狼の像の口に魔戒剣を突き刺して剣の浄化を行うと、それが終わったタイミングでイレスが声をかけてきた。

 

「はい、そうですね」

 

「明日は何時に出発なんですか?」

 

「明日は始発の電車に乗って空港へ向かうので、6時にみんなと待ち合わせをしています」

 

「6時ですか、早いですけど、統夜はそれくらいには起きてますもんね?」

 

「はい。毎日それより早く起きてエレメントの浄化を行ったり鍛錬をしてますので、早起きは苦ではないです」

 

統夜の魔戒騎士としての朝は早く、普段は5時〜6時の間に起きて、鍛錬を行い、それからエレメントの浄化へと向かう。

 

そのため、統夜にとって早起きは苦ではないのであった。

 

「統夜、今日は指令はありません。ですから、この後は直ちに帰宅し、旅行の準備をするといいでしょう。旅行の荷物全部を魔法衣に入れるわけにはいかないですからね」

 

魔法衣の裏地は内なる魔界に通じており、統夜はそこに魔戒剣やギターケースを入れたりしていた。

 

魔法衣の裏地の中に入れるものは最低限度に留めておくと統夜は決めており、他の魔戒騎士たちの場合は魔戒剣やホラー討伐に使う道具をしまう程度に留めていた。

 

イレスの言う通り、旅行の荷物まで魔法衣の裏地に入れてしまうと、いざ旅行先でホラーと出くわした時になかなか魔戒剣が取り出せず、戦いに支障が出る可能性があった。

 

「ありがとうございます、イレス様。ありがたく、その申し出を受けさせていただきます」

 

統夜にとっても明日の旅行の準備をさせてくれるというのはとてもありがたいことであり、深々とイレスに一礼していた。

 

「統夜、楽しんで来てくださいね♪それと、お土産も忘れないように♪」

 

「えぇ、もちろんです!」

 

イレスはちゃっかりお土産を買うよう要求していたが、統夜はそのつもりだったのか嫌な顔1つしなかった。

 

「……あっ、そうそう。統夜、気を付けて下さいね。これは噂なのですが、イギリスの方にはホラーとは異なる魔獣がいるみたいなのです」

 

「ホラーとは異なる魔獣……ですか?」

 

『まぁ、その可能性はあるかもな。イギリスにもホラーはいるだろうが、ホラー以外の魔獣がいたってなんの不思議もないからな』

 

統夜たち魔戒騎士は日頃からホラーという非現実劇な怪物と日夜戦っているため、ホラー以外の怪物がいたとしてもおかしくはないとイルバは推測していた。

 

統夜もそう思っていたのか、ウンウンと頷いていた。

 

「仮にホラーではない魔獣がいて、遭遇した場合は、討伐よりも身の安全を最優先して下さい。倒せるならば倒しても構いません」

 

「わかりました。その時は、守りし者として、最善の行動をとります」

 

本当にホラーではない魔獣と出くわすことはないと内心では思っていながらも、もしそうなった場合は然るべき対応をすることを統夜は決めていた。

 

「頼みましたよ、統夜」

 

「ありがとうございます、イレス様。それでは、失礼します」

 

統夜はペコリとイレスに一礼すると、番犬所を後にした。

 

番犬所を出た統夜は、家に帰る前に以前唯たちと訪れた桜ヶ丘某所にある桜ヶ丘1番のデパートのような建物だった。

 

統夜がここを訪れたのは、旅行に必要なものを購入するためである。

 

「……まずはバッグを見るか……」

 

統夜がまずチェックしたのは、キャリーバッグの売り場だった。

 

《……おい、統夜。お前さんはそんなに荷物はないだろ?だったらそんなでかいバッグは必要ないんじゃないか?》

 

(んー……!確かにそうなんだけど、もしものことを考えて日本食を買って入れとこうって考えてたんだよな)

 

統夜はキャリーバッグを買おうと考えていたのは、自分のためではなく、唯たちのためにここに売ってる日本食を多めに入れておこうと考えてたからであった。

 

《ま、そういうことならわかったが、相変わらず唯たちには甘いな、お前は》

 

(アハハ……そうかもな)

 

統夜は1番サイズが手頃なキャリーバッグをチョイスし、さらにいざという時用の日本食も購入していた。

 

統夜が買い物を終えて、建物を出ようとしたその時だった。

 

「……あれ?統夜さん?」

 

統夜は突如声をかけられたので足を止めた。

 

「……おう、憂ちゃんか。こんなところで会うとは珍しいな」

 

統夜に声をかけたのは憂であり、このような場所で会うとは思っていなかったのか驚いていた。

 

「そうですね。統夜さんは明日の旅行の買い物ですか?」

 

「あぁ、そんなところかな」

 

統夜はキャリーバッグを購入していたため、旅行の買い物に来たということは一目瞭然だった。

 

「もしかして、憂ちゃんも唯のための買い物か?」

 

「はい。おおよその物は揃ってるんですけど、いざという時用に日本食を買っておこうかなと思いまして……」

 

「アハハ……。どうやら、考えてることは一緒みたいだな」

 

「あれ?もしかして、統夜さんも日本食を買ったんですか?」

 

「ま、そういうことになるかな」

 

日本食を買ったというのは隠すようなことではないため、正直に話していた。

 

「やっぱりいざという時のために備えることは大事ですよね!」

 

「そうだな。俺もそう思うよ」

 

統夜と憂はありきたりな会話を交わし、共に笑みを浮かべていた。

 

「それじゃあ、俺はこれから明日の準備をしなきゃいけないし、そろそろ帰るな。それじゃあ、また……」

 

統夜は憂と別れて、家に帰ろうとしたのだが……。

 

「……あっ、統夜さん!待って下さい!」

 

憂はどうやら統夜に用事があるようで、呼び止められた統夜は足を止めて、憂の方を見ていた。

 

「?どうした、憂ちゃん?」

 

「あの、統夜さんたちは、梓ちゃんのために何かしようとしてるんですよね

?」

 

「!?な、何のことだ?」

 

いきなり憂から核心を突いた質問が飛び交い、統夜は驚いていたが、どうにか平静を保っていた。

 

「クスッ、隠さなくても大丈夫ですよ♪お姉ちゃんが梓ちゃんの好きそうなこととか物はないかって聞いた時にそうかなって思ったんです」

 

「さ、流石は憂ちゃん。鋭いな……」

 

憂は唯たちが何をしようとしているのかは知らなかったものの、梓のために何かをしようとしていることは理解していた。

 

「なぁ、憂ちゃん。このことは、梓には……」

 

「もちろん、言いふらしたりはしませんよ。私も、梓ちゃんの喜ぶ顔が見たいので♪」

 

梓の同級生である憂に、サプライズのことがバレてしまったのだが、憂は梓に他言するつもりはなく、統夜は安堵していた。

 

「そう言ってもらえると助かるよ。それじゃあ、悪いけど、よろしく頼むな」

 

統夜は憂に改めて口止めをお願いすると、憂と別れ、そのまま帰路についた。

 

家に帰った統夜は、明日の卒業旅行に備えて、荷物の準備を行っていた。

 

着ていく服は最低限に留め、それ以外の荷物としては、先ほど購入した日本食をキャリーバッグの中に入れていった。

 

こうして、旅行に必要なものをキャリーバッグに入れることが出来たのだが、キャリーバッグには少しばかり余裕があった。

 

「……これでよしっと」

 

『おい、統夜。旅行の荷物にしては随分と少なくないか?』

 

「そうか?こんなもんだと思うけどな」

 

『まぁ、足りないものは現地で仕入れれば問題はないか』

 

「その必要はない気はするけどな」

 

統夜はイルバと共に、荷物のチェックを行うと、キャリーバッグをわかりやすい場所へ移動していた。

 

「さて、とりあえず今日は明日に備えて寝るとしますか」

 

『あぁ。そうした方が良さそうだな』

 

旅行の準備も整ったところで、統夜は明日に備えて休むことにした。

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、統夜はいつもより早く起床し、出かける準備を整えると、待ち合わせの30分前に家を出た。

 

10分ほど歩くと統夜は待ち合わせの駅に到着したのだが……。

 

「……お、3人とも、早いな」

 

既に待ち合わせの駅には唯、律、澪の姿があった。

 

梓はまだ来ていないのだが、紬とは紬の最寄り駅で待ち合わせており、あとは梓が来たら始発の電車に乗り、紬の最寄り駅まで向かうことになっていた。

 

「あっ、やーくん!おはよぉ!」

 

「おう、おはよう」

 

『……やれやれ、お前らも楽器持参なんだな』

 

イルバは唯のギターケースや澪のベースケースを見て、苦笑いをしていた。

 

「あれ?もしかして統夜もなのか?」

 

「あぁ。魔法衣の中に入れてはあるけどな」

 

「むぅぅ!やーくんずるい!!」

 

統夜がいつものように魔法衣の裏地にギターケースをしまっていることが気に入らなかったのか、唯はぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「アハハ……まぁまぁ」

 

澪は苦笑いをしながら唯をなだめていた。

 

「……おっ、梓も来たみたいだぞ!」

 

統夜と唯がこのようなやり取りをしている間に梓も待ち合わせの場所に現れた。

 

『……どうやら、梓の奴もギターを持って来たみたいだな』

 

梓も、唯や澪のようにギターケースを持ってきていた。

 

梓は統夜たちの姿を見つけると、ぱぁっと表情が明るくなり、統夜たちに駆け寄っていた。

 

「皆さん!おはようございます!」

 

「おう、梓。おはよう」

 

「梓もギターを持ってきたんだな」

 

「はい!先輩たちは持ってくるのかな?と思いましたので」

 

梓は最初はギターは持っていかないと考えていたのだが、統夜たちは全員楽器を持ってくるだろうと予想したため、持っていくことにしたのであった。

 

「ぐ、偶然誰か有名なミュージシャンに会ったら、サインもらいたいと思ってな!」

 

澪がベースを持ってきた理由は、有名なミュージシャンに出会えたらサインをしてもらいたいからという理由であった。

 

『なるほど、それは澪らしい理由だな』

 

イルバは澪がベースを持ってきた理由に納得し、カチカチと音を立てながら笑みを浮かべていた。

 

「さて、とりあえずムギ以外は揃ったことだし、ムギの駅まで行こうぜ」

 

紬以外の全員が揃ったため、統夜たちは、数分後に来た始発の電車に乗り込み、紬の最寄り駅へと向かうことになった。

 

統夜たちは電車内で忘れ物がないかを確認し合って過ごしていた。

 

統夜たちが待ち合わせた駅から紬の最寄り駅までは二駅程であり、時間的には10分程度であった。

 

10分ほど電車に揺られ、紬の最寄り駅に到着した統夜たちは、電車を降りると、紬が待っているであろう改札まで移動した。

 

改札まで到着すると、そこで紬は待っていた。

 

「ムギちゃん!おはよぉ!」

 

「……みんな!おはよぉ!」

 

唯が紬に挨拶をすると、紬はおっとりとした笑顔で挨拶を返した。

 

そんな紬は唯のギターケースが目に付いたのか、そのギターケースを見ていると……。

 

「あーっ!!ずるい!私も持って来れば良かったぁ!」

 

紬はキーボードを持参しておらず、ギターを持ってきた唯たちが羨ましかったのか、紬はぷぅっと頬を膨らませていた。

 

「……あら?統夜君はギターを持ってきてないのね?」

 

「いや、俺は……」

 

早朝でも人が行き渡っているため、統夜はギターは魔法衣の裏地の中だということを公言出来なかった。

 

なので、統夜は魔法衣をポンと叩いてこの中にあることを伝えていた。

 

そのことを汲み取った紬は……。

 

「ずるい!統夜君もずるい!!」

 

魔法衣の中にギターをしまっている統夜がずるいと思ったのか、紬は再びぷぅっと頬を膨らませていた。

 

こうして全員が揃ったところで、統夜たちは、紬の最寄り駅近くのバス停から、某国際空港へと向かうことになった。

 

紬と合流してから数分後にはバスが到着し、統夜たちはバスのトランクにそれぞれのキャリーバッグを入れ、バスに乗り込んだ。

 

そしてバスは発進し、某国際空港へと向かっていった。

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

某国際空港に到着すると、まだ暗かった空はすっかりと明るくなっており、朝になっていた。

 

統夜たちはバスの中で朝食を済ませていたので、統夜たちはバスを降りてキャリーバッグを回収すると、そのまま搭乗手続きを済ませることにした。

 

この某国際空港は、日本有数の国際空港であり、連日多くの旅行客で賑わっている。

 

この日も多くの人で賑わっており、空港の規模も大きく、統夜たちはこの雰囲気に少しだけ戸惑っていた。

 

特に統夜は魔戒騎士であるため空港に訪れることはなく、空港の広さやキャリーバッグ片手に行き交う多くの人がとても珍しかった。

 

そのため、統夜はキョロキョロと周囲を見回しており、落ち着きがなかった。

 

《おい、統夜。そんなにキョロキョロするなよ。みっともない》

 

そんな統夜を見かねたイルバは、テレパシーで統夜を注意していた。

 

(だって仕方ないだろ?こんなところ来ること自体初めてなんだから)

 

統夜はイルバに注意されても、キョロキョロと周囲を見回すことをやめなかった。

 

「……統夜先輩って空港は初めてなんですか?」

 

「あぁ。普段はこんなところに来る機会はないしな」

 

「ここ、広いですもんね。統夜先輩がキョロキョロしちゃうのもわかりますよ」

 

統夜の恋人である梓は、統夜がキョロキョロしていることがすぐ気になっていたのだが、それをなだめることはせず、統夜に共感していた。

 

「本当に広いよねぇ……」

 

「あぁ!すっげぇなぁ!」

 

唯と律もあまりに広い空港に驚き、キョロキョロと周囲を見回していた。

 

「みんな!先に荷物を預けちゃいましょう!」

 

空港に何度も来たことのある紬は冷静であり、最初にすべきことを指示していた。

 

こうして統夜たちはまっすぐ搭乗手続きを済ませ、キャリーバッグを預かることになったのだが……。

 

「大変申し訳ございません。本日機内は大変混み合っておりまして……。よろしければ、そちらの荷物をお預かりさせていただいてもよろしいでしょうか?」

 

統夜たちはキャリーバッグを預かることになっていたのだが、機内は混雑しているため、唯たちが背負っているギターケースもキャリーバッグ同様に預かりたいと受付の女性に言われてしまった。

 

そのため、唯たちはギターをキャリーバッグと共に預かってもらうことになった。

 

その前に統夜は魔法衣の裏地からギターケースを取り出しており、同様にギターを預かってもらうことになった。

 

統夜が事前にこのような行動が取れたのは、その前に紬がギターを預かってもらった方がいいと進言したからである。

 

海外旅行へ行くため、荷物のチェックはかなりうるさいのであるということを紬に言われたため、前もってギターを取り出しておいたのである。

 

手続きを済ませた統夜たちは、キャリーバッグとギターケースを預かってもらい、荷物は飛行機のもとへと運ばれていった。

 

「……ギー太。ロンドンで会おう!」

 

唯は運ばれていくギー太に別れを告げていた。

 

搭乗手続きとキャリーバッグ等の大型荷物を預け終えた統夜たちは、そのまま搭乗口近くまで移動するために動く通路に乗って移動していた。

 

「おぉ!これなんかいいね、りっちゃん!これ、学校にもあればいいのに!」

 

「そうだな!歩く廊下な!」

 

「動く……だろ?」

 

律はボケる気はなく、素で歩く廊下と言っていたのだが、澪がすかさずツッコミをいれていた。

 

《つか、廊下が歩き出すとかどんだけホラーなんだよ……》

 

(アハハ……。確かにな……)

 

律の素のボケに、イルバと統夜は苦笑いをしていた。

 

この動く床が気に入ったのか、唯と律は落ち着きがなく次に取った行動は……。

 

「……噂の彼とは、どうなってるんですか?」

 

「付き合ってるんですか?」

 

唯と律は動く床から離れたと思ったら、突然記者の真似事を始め、紬にインタビューを行っていた。

 

「どうなんですか!琴吹さん!」

 

律は記者の真似事をして紬に迫るが、紬はワイドショーに出てくる芸能人の真似事をしているのか、何故かぷぅっと頬を膨らませていた。

 

それが可笑しかったのか、統夜を除く全員が笑い合っていた。

 

《やれやれ……。あいつらは何をやってるんだか……》

 

(まぁまぁ。はしゃぎたくなる気持ちはよくわかるし、これくらいはいいんじゃないか?)

 

《相変わらずお前さんは唯たちに甘いな》

 

(アハハ……そうかもな)

 

イルバに痛いところを指摘された統夜は、苦笑いをしていた。

 

そしてその後も唯と律の暴走は収まらず、澪が終始ツッコミにあたり、統夜とイルバはそれを見て苦笑いをしていた。

 

動く床が終わったところで唯と律はようやく落ち着き、統夜たちはそのまま搭乗口近くの待合室に向かった。

 

待合室到着後は飛行機搭乗までまだ時間があったので、搭乗口に移動するアナウンスが流れるまで、統夜たちは時間を潰していた。

 

それから間もなく飛行機搭乗が始まり、統夜たちは他の搭乗客と共に飛行機に乗り込んだ。

 

飛行機に乗り込み、チケットにある席まで移動すると、席の上にある収納口に手荷物をいれていた。

 

ちなみに統夜たちの席は後方の窓側で、トイレの近くの6席を確保していた。

 

席の並び順は、

 

窓→紬、澪、律

 

窓→唯、梓、統夜

 

となっていた。

 

「……なんか嘘みたいだな!降りたらロンドンなんだよな!」

 

「違う国なんだよな!」

 

「本当にみんなで海外にいけるなんて!」

 

「過去とか未来とかに行けちゃったりして!」

 

「タイムマシンじゃないですよ?」

 

「でも……時間、戻るよ?」

 

「む、ムギ先輩!?」

 

席と席の間の隙間から紬は覗き込むように唯、梓、統夜の3人を見ており、梓は驚いていた。

 

「はい、アイマスク」

 

「ありがとう、ムギちゃん♪」

 

「ありがとうございます」

 

「サンキューな、ムギ」

 

ムギは後ろにいる3人にアイマスクを渡すと、澪や律と会話をしていた。

 

「時間が戻るってどういうことなの?」

 

「簡単に言えば日本とロンドンは時差があるんだよ」

 

「時差?」

 

統夜は時差という言葉を使って説明するが、唯は意味が理解できていないのか首を傾げていた。

 

「地球の自転と反対方向に行くからじゃ……」

 

「そしたら自転の反対側に言ったら時間が戻るの?」

 

「いや、なんて言ったらいいか……」

 

統夜は唯への説明に悩んでいたのだが、その時、ポーン!ポーン!とシートベルトをつける合図が鳴っていた。

 

「唯先輩、統夜先輩。シートベルトをつけてください」

 

「うん」

 

「了解した」

 

梓の指示通り、唯と統夜はシートベルトを装着していた。

 

「ねぇねぇ。ずっと逆回りしたらさ、やっぱり過去に行っちゃうのかなぁ?」

 

「いやいや、そんな極端には戻らんぞ……」

 

「統夜先輩の言う通りです。それに、もう離陸しますよ」

 

「テイクオフですか!?」

 

もうすぐ離陸すると聞いた唯は、窓から見える景色に釘付けになっていた。

 

「あずにゃん!やーくん!ムービング!!」

 

唯が興奮する中、飛行機の離陸が始まった。

 

滑走路を走る飛行機は飛翔し、ロンドンに向けて飛び立っていった。

 

飛行機が一定の高度に到達すると、シートベルト着用の指示は解除され、それと同時に席を立つ者もおり、ワゴンサービスの人も活動を始めていた。

 

「……ねぇ、あずにゃん、やーくん!ここからは日本語禁止だよ!」

 

「えぇ……?」

 

「やれやれ……大丈夫か?」

 

「……オーケー?」

 

「……アイ、アンダースタンド」

 

「Me too」

 

唯は英語禁止を切り出し、梓と統夜は一応英語で返していた。

 

「……あずキャット」

 

「へ!?」

 

「……!ぷっ!ぷくくく……!!」

 

唯の唐突に言った「あずキャット」という言葉がツボだったのか、統夜は爆笑していた。

 

そして言われた本人である梓は、唯の唐突な言葉に困惑していた。

 

「……ノージャパニーズ!」

 

「「……イエス……」」

 

梓と統夜は少々呆れ気味で返事をしていた。

 

「……あずキャット。ミスターやーくん。機内食は英語で……?」

 

《おいおい、何だよ、ミスターやーくんって……》

 

(確かに、唯の英語はめちゃくちゃだよな……)

 

イルバと統夜は、唯のめちゃくちゃな英語に心底呆れていた。

 

「……ふ、フライトミール」

 

梓は機内食を英語で言った言葉を正直に答えていた。

 

「……ビーフ、オア、チキン?」

 

唯は中学校で習う定番のフレーズを言っていた。

 

「……」

 

梓はどう答えようか考えていたのだが……。

 

「エクササイズ!」

 

「ぷっ!」

 

唯は意味不明な言葉を言っていたため、統夜は再び笑っていた。

 

そんな中、梓は……。

 

「……チキン、プリーズ……」

 

「エクセレント!」

 

唯は梓がきちんと答えてくれたのが嬉しかったのか、笑みを浮かべていた。

 

それから間もなくして、自分の英語に笑ってる統夜を膨れっ面で睨みつけていた。

 

そんな中、梓は唯がした質問と全く同じ質問を唯にしていた。

 

それに唯はビーフと答えていたのだが……。

 

「お客様」

 

「あ、はい」

 

「和食と洋食。どちらにいたしますか?」

 

ワゴンサービスの人は英語ではなく普通に日本語で機内食の種類を聞いてきたため、唯と梓は硬直していた。

 

「やれやれ……」

 

呆然と硬直する2人を見て、統夜は頭を抱えながら呆れていた。

 

その後、どうにか機内食を注文し、統夜たち3人は機内食に舌鼓を打っていた。

 

その後は会話をしたり、機内で見られる映画などを見たりしてそれぞれ時間を潰していたのだが、気がつくと夜になっており、乗客のほとんどは寝静まっていた。

 

統夜の前にいる紬、澪、律の3人はどうやらアイマスクをつけて爆睡しているようであった。

 

唯も眠っており、梓は統夜に身を寄せる形で眠っていた。

 

「……」

 

統夜はまだ眠っておらず、穏やかな表情で、眠っている梓の頭を撫でていた。

 

(……イルバ、この機内にホラーの気配はないよな?)

 

《心配するな。ホラーの気配はないし

、ゲートの気配も感じない。この飛行機を降りるまでは安全ってことだぜ》

 

(そっか……良かった……)

 

統夜はこの飛行機に乗った当初から、こんな狭い場所でホラーが現れたらどうしようと考えており、気が気ではなかったのであった。

 

《お前さんが気張るのもわかるが、それじゃせっかくの旅行が台無しだぜ?》

 

(それはわかってるんだけどさ。やっぱり俺は魔戒騎士だから色々考えちゃうわけだよ)

 

《そう考えるのは魔戒騎士としては殊勝なものだが、せっかく体を休めるチャンスなんだ。今のうちに思い切り寝ておいたらどうだ?もし何か異常があれば、俺様が伝えるぜ》

 

(悪い。そうしたら、お言葉に甘えて一休みさせてもらうよ)

 

統夜は魔戒騎士として毎日忙しい日々を送っているため、まともに休養をとる機会はほとんどなかった。

 

月に一度のイルバとの契約の日は、統夜にとっては休日なのだが、仮死状態になっているため、休養とは言えなかった。

 

そのため、統夜はロンドンに着くまでゆっくり体を休めることにして、眠りについた。

 

イルバはそんな統夜の様子をジッと眺めており、しばらく様子を見た後、自分も眠ることにした。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

「……統夜先輩!起きてください!」

 

「ん……んあ……?」

 

梓に起こされ、統夜はゆっくりと目を開けていた。

 

「もう、やっと起きましたか。何度も起こしたんですよ?」

 

統夜はよほど疲れていたのか爆睡しており、そんな統夜を起こすのに苦労した梓は膨れっ面になっていた。

 

《俺様が呼びかけても起きなかったからな。それほど疲れてたんだな》

 

イルバがテレパシーで呼びかけても統夜は起きなかったため、それだけ疲れていたことは容易に想像出来た。

 

「悪い悪い。それで、どうしたんだ?」

 

「もう着きますよ?」

 

「マジか!俺はかなり爆睡してたんだなぁ……」

 

どうやら統夜はかなりの時間寝ていたらしく、それに気付いた統夜は苦笑いをしていた。

 

「そうですよ。それに、もう着陸なのでシートベルトを締めないといけませんよ」

 

「うん、わかったよぉ、あずにゃん」

 

「わ、わかった」

 

統夜は起きて早々シートベルトを締めることになったのだが、指示通りシートベルトを締めた。

 

それから間もなく飛行機は着陸し、滑走路を走った後に、飛行機はようやく停止した。

 

統夜たちはこうしてロンドンの地に降り立ち、空港であるロンドンの某空港に入っていった。

 

空港に入ると、ここにもあった動く床で移動し、入国審査が行われる場所へと向かっていった。

 

「イギリス!?ここってイギリスだよね!?」

 

「思ったより早く着いたよな」

 

「来ちゃったよ!ロンドンに来ちゃったよぉ!」

 

「唯先輩落ち着いて!」

 

ここは既にイギリスであり、統夜たちの興奮は収まらなかった。

 

「なぁ、この後は入国審査だったよな?」

 

「へ?それって何をするの?」

 

「はい!大抵は旅行の目的を聞かれるらしいです」

 

梓は旅行のガイドブックを取り出し、入国審査について説明をしていた。

 

「目的?」

 

「はい!だから、「サイトシーイング(sightseeing)」って答えれば、大丈夫です!」

 

サイトシーイングというのは、名所を見て回るという意味であるため、統夜たちはこう答えれば入国審査は通れると梓は説明していた。

 

こうして統夜たちは入国審査を迎えることになったのだが……。

 

「サイドビジネス!!」

 

唯はサイトシーイングではなく、サイドビジネスと言ってしまった。

 

「……Side Business?」

 

入国審査官は唯のサイドビジネスという言葉に首を傾げるが、恐らくはサイトシーイングだろうと判断してくれたのか、どうにか通ることが出来た。

 

そして、澪、律、紬の3人も難なく入国審査を終えることが出来たのだが……?

 

「……へ?」

 

入国審査官は梓が本当に17歳なのかを疑っており、改めて確認をしていた。

 

「……い、イエス。アイアムセブンティーン」

 

梓は自分で17歳であることを説明し、パスポートにも不備はなかったため、どうにか通ることが出来た。

 

1番の問題は統夜であった。

 

統夜の羽織る魔法衣があまりにも怪しいと感じていた入国審査官は、統夜に魔法衣を脱ぐよう指示し、魔法衣の中に怪しい物が入っていないかをチェックしていた。

 

10分ほどチェックを行い、異常がないことがわかり、統夜はようやく通ることを許されたのであった。

 

「はぁ……。やっと通れた……」

 

入国審査に10分もかかってしまったため、統夜はげんなりとしていた。

 

「魔法衣はバッグの中に入れといた方がいいんじゃないですか?」

 

「本当はそうなんだけどな。魔法衣をバッグに入れたら何かあった時に対応出来ないしなぁ」

 

「大丈夫だって!帰りはあんな感じに引っかからないでくれよ!」

 

「わかってるよ」

 

こうして入国審査を終えた統夜たちは、荷物を受け取ることになった。

 

統夜、唯、律、紬、梓の5人は何の問題もなく、自分の荷物を回収することが出来た。

 

「やっとギー太と出会えたよぉ!これでやっと安心♪」

 

「でも、よく考えたら、私たちは何で楽器を持って来たんですかね?」

 

「アハハ……。確かにな」

 

「澪!荷物来た?」

 

「……まだ……」

 

澪はベースケースは回収したものの、自分の荷物が入ったキャリーバッグは未だに回収できずにいた。

 

「大丈夫、すぐに来るって!」

 

統夜たちは荷物が全部出てくるまで待っていたのだが、澪のキャリーバッグは出てくることはなかった。

 

「……本当に出てこないな……」

 

「……どうして私のだけ?」

 

自分のキャリーバッグが姿を現さないため、澪は不安げな表情をしていた。

 

「無くなっちゃったのかなぁ?」

 

「どうするの?秋山さん、おパンツ。レディとして」

 

「律。この状況であまりからかうなよ」

 

律は澪をからかっていたのだが、統夜はそれを見かねて律をなだめていた。

 

そして、澪は涙目になっていた。

 

「あれ?澪ちゃんって履かない派なんじゃ……」

 

「イエス、シーイズ、ノーパン」

 

「そっ、それは寝る時の靴下の話だろ!?」

 

「どうでもいいが、パンツの話はやめろ////」

 

統夜はこんなに堂々とパンツの話をされるのがら恥ずかしかったのか、頬を赤らめていた。

 

『……おい、澪。そこにポツンと残されたバッグはお前さんのじゃないのか?』

 

何故かパンツの話をしているうちにイルバが澪のと思われるバッグを見つけていた。

 

「……!あ、本当だ!」

 

「アハハ、まさしく灯台下暗しだな……」

 

統夜は思ったより近場にバッグがあったことに対して苦笑いをしており、澪は半べその状態でバッグに駆け寄っていた。

 

こうして、全員入国審査も済み、荷物も回収したところで、空港の外に出ることになった。

 

統夜たちは無事ロンドンの地に降り立ったのだが、統夜たちの卒業旅行は始まったばかりであった。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『ようやくロンドンの地に降り立ったか。まぁ、ロンドンに着いたと言ってもこいつらは相変わらずだけどな。次回、「英国」。まぁ、何も起きなければいいんだがな」

 

 




統夜たちは無事ロンドンに到着し、統夜もなんとか入国審査を通ることが出来ました(笑)

一般人が魔法衣を怪しく思うのは仕方ないかもしれませんね(笑)

そして、イレスが言っていたホラーとは異なる魔獣ですが、他のゲームとのコラボのフラグとなっています。

どのゲームとコラボとなるのか?乞うご期待です!

さて、時間は統夜たちがロンドンの街を見て回ります。

ロンドンの街並みはいったいどのようなものなのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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