牙狼×けいおん 白銀の刃   作:ナック・G

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お待たせしました!第102話になります。

前回の前書きでポケモンのストーリーをクリアしたから小説の執筆に専念できると言いましたが、ストーリークリア後も色々やることがあるからか面白くて全然小説の執筆が進まない(笑)

ポケモンを楽しみながらこの小説を書いていきたいと思います。

さて、今回は一連の事件の黒幕と直接対決します。

事件の黒幕は一体誰なのか?そして、前回現れた冴島大河はどのような戦いを見せてくれるのか?

それでは、第102話をどうぞ!




第102話 「双融」

統夜は無事新しい年を迎えることが出来た。

 

しかし、新年早々に普段以上に邪気が大きくなっているという異変が起こっていた。

 

その異変の元凶が桜ヶ丘郊外にあるかつてグォルブの牙を封印していた洞窟にあるとわかった統夜は、戒人と共に異変の元凶を断つべく洞窟へと向かった。

 

そんな2人を待っていたのは、強大な陰我を纏った洞窟及びその近辺と、入り口に現れた多数の素体ホラーだった。

 

2人は多数の素体ホラーに苦戦するが、アキト、大輝、奏夜の3人が応援に駆けつけ、その力でホラーの数を減らすことに成功した。

 

そして、残ったホラーを大輝と奏夜に託した3人は、洞窟の中に入るのだが、そこにあったのは人界と魔界を繋ぐゲートであった。

 

このゲートを作った漆黒の鎧の騎士は、ここからホラーの出入りをしやすくするだけではなく、世界を闇で覆うということを企んでいた。

 

統夜はそんなゲートを調査しようとするが、突如ホラーの奇襲に遭い、危機に直面した。

 

そんな統夜を救ったのは、なんと黄金騎士牙狼であったが、その鎧を纏っていたのは冴島鋼牙ではなかった。

 

その人物とは……。

 

「……冴島大河。かつて牙狼の称号を受け継いだことのある男だ」

 

「「「!!?」」」

 

冴島大河という名前に聞き覚えのある3人は、その人物が目の前にいることに驚きを隠せなかった。

 

「……あなたは、ひょっとして、鋼牙さんの……」

 

「……あぁ。鋼牙は私の息子だ」

 

「「「……」」」

 

統夜たちの目の前に現れたのは、かつて牙狼の称号を受け継いだ冴島大河であった。

 

しかし、統夜たちはある疑問を抱いていた。

 

「あの……。大河さんは確かあのバラゴにやられて……」

 

「そうだ。私はバラゴに敗れて命を落とした。だから私は本来の実体を持ち合わせていない。言うならば私は冴島大河の思念の塊というものだろうか」

 

「……そんなことがあるのか……?」

 

死者が思念の塊として実体化という非現実的な話に、戒人は半信半疑であった。

 

しかし……。

 

「いや、この前だって死んだ奴が怨念の塊として実体化したんだ。まったくあり得ない話じゃないさ」

 

統夜は以前、暗黒騎士ゼクスことディオスが怨念の塊として蘇った実例をあげていた。

 

「怨念の塊……。暗黒騎士ゼクスのことか?」

 

「!?大河さん、知っているんですか?」

 

大河がゼクスの存在を知っているとは思っていなかったのか、統夜たちは驚きを隠せなかった。

 

「確かにゼクスはそこのお前への恨みを募らせた結果、実体化した。だが、それは奴1人の力ではなく、そのように仕向けた奴がいるのだ」

 

「仕向けた奴……」

 

「……!!まさか、もう1人の暗黒騎士、キバの仕業とでもいうのか!?」

 

アキトはこのように推測をするが、自分でも信じられない話だと思っていた。

 

「その通りだ。暗黒騎士キバの鎧は私の息子である鋼牙の手で葬り去られた。しかし、奴は完全に消滅した訳ではなく、邪気を少しずつ体に蓄えて実体化する時を待っていたのだ」

 

「「「……」」」

 

大河の口から語られる信じがたい話に、統夜たちは驚きを隠せなかった。

 

「そして、キバはもう1人の暗黒騎士ゼクスが憎しみを募らせて実体化しようとしていることを知り、奴を利用しようと考えた」

 

「!?それじゃあ、ゼクスは結果的にキバ復活に利用されてただけって訳なのか?」

 

統夜はこのように推測していたのだが、大河はそれに無言で頷いていた。

 

「そして、ホラーを封印した12本の短剣を奪うよう仕向け、その力でゼクスは復活し、それと同時にキバも実体化したのだ」

 

「だけど、そのゼクスも統夜が倒したハズだぜ。実体化しても奴がやられたのなら意味ないんじゃないのか?」

 

アキトはここまでの話を聞いて、もっともな疑問を投げかけていた。

 

「あの戦いは私も遠くから見守っていた。だが、あの戦いでゼクスはかろうじて消滅を免れた。そこにキバが現れ、ゼクスを取り込んだのだ。そして、本格的に力を取り戻すまで奴は潜伏していたという訳だ」

 

「!?そんな!俺が奴を仕留めきれなかったから、キバの力を高めちまったのか?」

 

『統夜、落ち着け。それはお前さんのせいではない。奴と戦っていたのが戒人だろうと結果は同じだっただろう』

 

「ほぉ……。その魔導輪……」

 

大河は統夜の魔導輪であるイルバをまじまじと見つめていた。

 

『おいおい。あのザルバと似てるなんていうなよ。俺様はイルバ。あのザルバなんかよりも優秀な魔導輪なんだからな』

 

「ほう、お前はイルバというのか」

 

大河はイルバを見てザルバと似ていると言いたかったが、それをイルバが良しとしなかったため、そこは言わなかった。

 

「奴は暗黒騎士ゼクスの力を吸収し、さらにはこの街の邪気をも吸収したことによって新たな力を手に入れた。言うならば奴は「闇呀(やみきば)」と言ってもいいだろう」

 

「闇呀……。それがこの事件の黒幕……」

 

「それに暗黒騎士キバと言ったら、最強の魔戒騎士の牙狼でさえ手に負えない相手……。そんな奴に勝てるのだろうか……?」

 

統夜は今まで様々な強敵と戦ってきたのだが、今回戦うであろう闇呀こそが、最大の強敵と予測していたからか、珍しく弱気になっていた。

 

『おい、統夜、しっかりしろよ。お前はみんなと一緒に卒業するんだろ?どんな強敵だろうと跳ね除けるくらい強気でいないでどうするんだよ』

 

イルバは弱気になっている統夜を叱咤激励していた。

 

「!!そうだな……。俺はみんなと卒業するんだ。だから、こんなところでやられる訳にはいかないんだ!誰が相手だろうと……!」

 

イルバの叱咤激励によって、統夜に闘志がみなぎってきたのであった。

 

「ふっ……その意気だ。私は君たちにも協力してもらおうと思っているのだからな」

 

「あの……。大河さんはもしかしてその闇呀を倒すために……?」

 

「そういうことだ。私は、生前バラゴを止めることは出来なかった。だからこそ、私は闇呀にこれ以上好き勝手をさせる訳にはいかないのだ」

 

「「「……」」」

 

何故大河が思念の塊として実体化したのかという理由を聞いた統夜たちは、死してもなお戦おうとする大河の姿勢に言葉を失っていた。

 

それと同時に、真の守りし者としてあるべき形というものを、統夜たちに知らしめていた。

 

「……大河さん、俺は闇呀を倒すのに協力します!俺だって、この街をあいつの好きにはさせません!」

 

「俺も同じ気持ちです!」

 

「俺だってこの街のことは気に入ってるんだ。奴の好きにさせるつもりはないぜ!」

 

統夜、戒人、アキトの3人は、大河と共に闇呀の野望を食い止める覚悟を決めていた。

 

「そう言ってもらえると私も助かる。君たちの力を貸してくれ」

 

「「「はい!!」」」

 

こうして、統夜たち3人は大河に協力することになった。

 

「闇呀は恐らくこのゲートを使って魔界へと移動しているのだろう。ここがホラーの出入り口となるのも時間の問題だろう」

 

「それを阻止するためには、魔界へ乗り込んで闇呀を倒せばいいってことですね?」

 

「単純な作戦だけど、それしかなさそうだな」

 

「うむ。私もそう考えていた。闇呀は手強い相手だ。小細工は通用しない相手だろう」

 

大河も、作戦を立てることなく闇呀と戦おうと考えていた。

 

「まずは魔界へ乗り込もう。この先は何があるかわからない。油断するんじゃないぞ!」

 

「「「はい!」」」

 

こうして、統夜たちはこの事件の首謀者である闇呀の野望を止めるために魔界へ乗り込むことにした。

 

4人は闇呀が開いた人界と魔界を繋ぐゲートの中に入り、魔界へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

人界と魔界を繋ぐゲートは一本道であり、1分ほど歩くと、魔界へとたどり着いた。

 

「……ここが魔界か……」

 

初めて魔界へと足を踏み入れる戒人は、キョロキョロと周囲を見回していた。

 

「さすがに落ち着かないな、ここは」

 

アキトも魔界は初めてで不安からか落ち着かないといった感じだった。

 

「……」

 

グォルブとの戦いの時に真魔界に来たことがある統夜ではあったが、この重々しい雰囲気には慣れていなかった。

 

『……!統夜!強大な邪気を感じるぜ!』

 

イルバが周囲を探っていると、強大な邪気を感じ取っていた。

 

「あぁ……!そうみたいだな……!」

 

その邪気は統夜も感じ取れるものであり、統夜は冷や汗をかいていた。

 

「……!みんな、あそこだ!」

 

大河はとある方向を指差すと、そこにいたのは……。

 

「……ほぉ、魔戒騎士に魔戒法師か。よくぞここまでたどり着いたな」

 

漆黒の鎧の騎士こと闇呀であった。

 

闇呀はゼクスだけではなく、様々な邪気を吸い取っていたからか、体の周囲には目で見えるほど大きな邪気が纏われていた。

 

「……お前が暗黒騎士キバ……!いや、闇呀か!!」

 

暗黒騎士キバはかつて統夜の父親である月影龍夜を手にかけており、そのことを思い出した統夜は険しい表情で闇呀を睨みつけていた。

 

「いかにも。……闇呀とはいい名前だな。これからはそう名乗らせてもらおうか!」

 

暗黒騎士キバこと闇呀は、統夜の言った闇呀という名前が気に入ったようで、このように自称するようになっていた。

 

「ゼクスを蘇らすように仕向けたのも、お前が実体化して、力を得るためか!!」

 

「フン、そこにいる冴島大河に聞いたか。その通りだ。全ては私が強大な闇の力を手に入れてこの世に舞い戻るためだ。この世界を闇で覆うために」

 

統夜たちはここで初めて闇呀の野望を直接聞いたのであった。

 

「……そんなことさせるか!!」

 

統夜は魔戒剣を構えると、闇のへと向かっていった。

 

「……!統夜!よせ!」

 

大河は慌てて統夜を制止するが、既に手遅れだった。

 

「愚かな……。あまりにも直情的で未熟!!」

 

闇呀は専用の武器である黒炎剣の切っ先から衝撃波を放つと、統夜はその一撃をモロに受けてしまった。

 

「ぐぁっ……!」

 

その一撃によって吹き飛ばされてしまった統夜は、大河たちのもとへ戻り、体勢を立て直した。

 

「貴様ら如き奴らが何人集まろうと所詮は烏合の集。私の敵ではない」

 

「そんなことは……。俺たちを倒してから言うんだな!」

 

闇呀の先制攻撃を受けてしまった統夜ではあったが、強気な発言をしていた。

 

「フン、口だけは達者なようだな。……いいだろう。私と戦いたければこいつらを倒し、私のもとへ来るがよい!」

 

闇呀はそう言うと精神を集中させ、別のゲートを作った。

 

そして、闇呀はそのゲートの中に入って姿を消した。

 

さらに……。

 

『……!!統夜、気を付けろ!数えきれないほどの邪気を感じるぜ』

 

イルバがこのように警告すると、闇呀の入っていったゲートの付近から邪気が溢れ出すと、おびただしい数の素体ホラーが姿を現した。

 

「……!?こ、これは……」

 

『おいおい、とんでもない数だぜ』

 

『ざっと数えても2000体はくだらないじゃろうなぁ』

 

トルバの推測通り、統夜たちの前に現れた素体ホラーは2000体ほどおり、先ほど洞窟に現れた素体ホラーの何倍にも及んでいた。

 

「このホラーを何とかしなければ奴のもとへはたどり着けない。みんな、協力して奴らを倒すぞ!」

 

「「「はい!」」」

 

大河の言葉かけに、統夜たち3人は応じていた。

 

『この魔界では鎧の制限時間はない。だから、思い切り行け!』

 

「そういえばそうだったよな」

 

魔戒騎士は人界で鎧を召還する時は99.9秒という制限時間があるが、魔界ではその制限時間はない。

 

真魔界で戦った時もそうだったため、統夜はその時のことを思い出していた。

 

そして、アキトを除く3人は魔戒剣を高く突き上げ、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれると、3人はそれぞれの鎧を身に纏った。

 

戒人は、紫の輝きを放つガイアの鎧を身に纏った。

 

統夜は、白銀の輝きを放つ奏狼の鎧を身に纏った。

 

そして大河は、黄金の輝きを放つ牙狼の鎧を身に纏った。

 

冴島鋼牙の身に纏う牙狼の鎧は瞳が緑なのだが、冴島大河の纏う牙狼の鎧の場合、瞳は赤になっていた。

 

魔戒騎士の鎧は、装着者によって、瞳の色は異なってくる。

 

鎧を召還した3人は、そのまま魔導馬を呼び出し、烈火炎装の状態となった。

 

「統夜、戒人。私たちはあのホラーの群れに突っ込むぞ!」

 

「「はい!!」」

 

「撃ち漏らしは俺に任せてくれ!」

 

アキトもまた、魔戒銃と魔導筆を構えて臨戦体勢に入った。

 

「行くぞ!」

 

「はい!!」

 

「承知!」

 

大河の号令で、統夜たち3人は烈火炎装の状態で素体ホラーの大群に突っ込んでいった。

 

それぞれの魔導馬も魔導火を纏っており、素体ホラーに突進をしていくと、次々と素体ホラーは蹴散らされていった。

 

3人の攻撃で撃ち漏らした素体ホラーは、アキトの魔戒銃や法術によって倒されていった。

 

2000体というのはおびただしい数ではあるものの、3人の激しい攻撃により、その数は一気に減っていった。

 

「よし……!まだまだ!!」

 

最初の攻撃でかなり素体ホラーの数は減らしたものの、未だに千体強のホラーが残っていた。

 

統夜たち3人は烈火炎装の状態のまま、再びホラーの群れに突撃し、次々とホラーの群れを蹴散らしていった。

 

アキトも負けじと魔戒銃と法術を駆使し、ホラーを討滅していった。

 

その甲斐あってか、2000体いたホラーの9割は討滅することが出来た。

 

「残りは俺とアキトで片付ける!統夜は大河さんと共に闇呀を追え!」

 

「ホラーの数はだいぶ減ったからな。後は任せておけ」

 

「……統夜。ここは2人に任せるとしよう」

 

「わかりました。……戒人、アキト。後は頼んだぞ!」

 

統夜と大河は残った素体ホラーは戒人とアキトに任せ、魔導馬を走らせると、闇呀が入っていったゲートへと向かっていった。

 

そして、2人はゲートの中に入るのだが、その時の衝撃で、鎧は魔導馬と共に解除されてしまった。

 

ゲートの中に入り、統夜と大河が訪れた場所は、魔界ではあるのだが、戒人やアキトが戦っている魔界とはかけ離れた場所であった。

 

統夜たちのいる場所は足場はあるのだが、それほど足場は広い訳ではなく、落ちてしまえば何もない空間に放り出されてしまうのであった。

 

「……こ、ここは?」

 

『どうやら、ここは魔界ではあるようだが、闇呀が作った空間のようだな』

 

「うむ、そのようだ。奴は近くにいるはずだ。油断はするんじゃないぞ」

 

「はい!」

 

大河はゆっくりと魔戒剣を構え、統夜もまた魔戒剣を構えると、どこから闇呀が現れても対応できるように周囲を警戒していた。

 

すると……。

 

『……!統夜、あそこだ!』

 

イルバは闇呀の気配を探知しており、統夜と大河はその方向を見ると、禍々しいほどの邪気を纏った闇呀が統夜たちの前に立ちはだかった。

 

「……ほう、よくここまでたどり着いたな。褒めてやろう」

 

「闇呀……!!」

 

統夜は目の前に立ちはだかる闇呀を鋭い目つきで睨みつけた。

 

「せめてもの手向けだ。私自らの手で貴様らを葬ってやろう」

 

闇呀は、黒炎剣を構えると、臨戦体勢に入っていた。

 

「……統夜!ここで奴を倒し、奴の野望を阻止するぞ!」

 

「はい!」

 

大河と統夜は互いに顔を見合わせると、目の前に立ちはだかる闇呀を睨みつけて、臨戦体勢に入った。

 

すると、統夜と大河は同時に魔戒剣を高く突き上げると、円を描いた。

 

そこから放たれる光に包まれると、2人はそれぞれの鎧を身に纏った。

 

統夜は、白銀の輝きを放つ奏狼の鎧を身に纏った。

 

そして大河は、黄金の輝きを放つ牙狼の鎧を身に纏った。

 

「……行くぞっ!!」

 

「はい!」

 

鎧を召還した統夜と大河は、そのまま闇呀のもとへと向かっていった。

 

2人は同時に皇輝剣と牙狼剣を一閃するのだが、それは軽々と闇呀に防がれてしまった。

 

反撃と言わんばかりに闇呀は黒炎剣を一閃すると、その一撃を受けた大河は上空へと吹き飛ばされてしまった。

 

「……!?大河さん!このぉ!!」

 

統夜は大河が吹き飛ばされてしまった直後に皇輝剣を一閃するのだが、逆に返り討ちにあってしまい、大河同様に上空へと吹き飛ばされてしまった。

 

「……!統夜!」

 

大河はこちらに向かってくる統夜を自分の足で受け止めると、自分の足をバネにして、統夜を再び闇呀のもとへと向かわせた。

 

「……これでどうだ!!」

 

大河のおかげで着地に成功した統夜は、そのまま闇呀に向かっていき、皇輝剣を一閃した。

 

その一撃は闇呀の黒炎剣で受け止められてしまった。

 

統夜はこのまま闇呀を押し切って反撃しようと考えていたのだが、それは叶わなかった。

 

統夜の背後から何者かが現れると、統夜はその何者かに斬られてしまった。

 

「ぐっ……!な、何だ!?」

 

統夜はもう1人いる敵の方を振り向くと、それは何ともう1人の闇呀であった。

 

「!?う、嘘だろ!?」

 

闇呀が2体いることに統夜は驚きを隠せなかったのだが、そうしているうちに闇呀がもう1体現れると、3体の闇呀は統夜に一斉攻撃をした。

 

「……くっ!!」

 

統夜はどうにかその攻撃を防ぐことは出来たが、身動きを取ることは出来なかった。

 

「……統夜!!」

 

闇呀に吹き飛ばされていた大河は、体勢を立て直すと、統夜を救うために、統夜の背後にいる闇呀に攻撃を仕掛けると、統夜が体勢を立て直す手助けをした。

 

大河は統夜と合流すると、3体いる闇呀に警戒していた。

 

しかし、闇呀はさらに数を増やすと、闇呀は6体になってしまった。

 

6体になった闇呀は一斉に統夜と大河に襲いかかってきた。

 

統夜と大河はそれぞれ3体ずつの闇呀を相手にしていた。

 

『おいおい。今度は分身しやがったぜ』

 

イルバは分身能力を兼ね備えている闇呀に驚きながらも戦いを見守っていた。

 

闇呀は3体ずつに分かれて統夜と大河を相手にしていたが、真っ先に統夜を潰そうと考えたのか、1体は大河を相手にして、残りの2体は統夜に向かっていった。

 

故に統夜は5体の闇呀を相手にしなければならなくなってしまった。

 

1体1体の戦闘力は引けを取らないものであり、5体の闇呀相手に統夜はなすすべもなく攻撃を受けていた。

 

「ぐぅ……!くっ……くそ!」

 

統夜はどうにか反撃の糸口を掴もうとするが、反撃をすることは出来ず、闇呀によるダメージによって、表情が歪んでいた。

 

そんな中、分身した闇呀は容赦ない攻撃を繰り出していた。

 

そして5体の闇呀は一斉に蹴りを放つと、統夜を吹き飛ばし、そのまま何もない空間へと突き落とした。

 

「ぐぁぁぁぁ!!」

 

闇呀の蹴りによる衝撃で、奏狼の鎧は解除されてしまい、統夜はそのまま何もない空間へと落ちていった。

 

「……!統夜!!」

 

大河は対峙している闇呀を牙狼剣の一閃によって吹き飛ばすと、統夜を救うために自らも何もない空間へと飛び出していった。

 

「……フン、血迷ったか。自ら無の空間へと飛び込むとは……」

 

闇呀は、勝ち誇った表情で笑みを浮かべると、何もない空間へと落ちていった統夜と大河を眺めていた。

 

『……!統夜!!このままだとまずいぞ!早く上に戻らないと一生ここから出られないぞ!』

 

「わかってるよ!俺だって初詣でみんなとお参りしたばかりなんだ。そう簡単に死ねない!」

 

いくら統夜が魔戒騎士といえど、空を飛ぶ力はなく、絶望的な状態であるのだが、最後まで諦めてはいなかった。

 

「……そうだ、統夜!諦めるな!!」

 

上空から声が聞こえてきたので、統夜はその方向を向くと、統夜の瞳には金色の輝きを放つ牙狼の鎧が飛び込んできた。

 

「……!?大河さん、どうして!?」

 

統夜は、自らを救うために飛び込んできた大河に驚きを隠せなかった。

 

「……未来ある有望な魔戒騎士をこんなところで死なせる訳にはいかないからな」

 

大河は生前は牙狼の称号を持つ魔戒騎士だったため、統夜のような若くて有望な魔戒騎士をこのような場所で死なせるのは忍びないと思っていた。

 

「……統夜!我が力を使うのだ!そうすれば闇呀も倒せるはずだ!」

 

「大河さんの力を……?でも、どうやって……?」

 

大河の力を借りるというのは願ってもないことだったが、どうすればいいのかはわからなかった。

 

「我が力を纏え!はぁっ!!」

 

大河は精神を集中させると、牙狼の鎧は光に包まれ、大河は光の塊となった。

 

光の塊となった大河は、そのまま統夜の体の中に入って統夜の中に入っていった。

 

そのことによって統夜の体に何かしらの異変があった訳ではないのだが、統夜の左手にある物が握られていた。

 

それは……。

 

「……これは……。牙狼剣!?」

 

いつの間にか統夜の手に牙狼の称号を持つ者の証である牙狼剣が握られていたことに、統夜は驚きを隠せなかった。

 

本来であれば牙狼の称号を持つ者でなければ扱えないはずの牙狼剣を統夜は普通に手にしているからである。

 

__我が牙狼剣の力を使うのだ!我が牙狼の力とそなたの奏狼の力……。合わせれば闇呀を倒せるはずだ!

 

「……牙狼の力と奏狼の力……?そんなことが……?」

 

統夜は大河の言っていた牙狼と奏狼。2つの鎧の力を合わせるなど聞いたことがなく、本当にそんなことが出来るのかと半信半疑だった。

 

『統夜!この状況だと迷ってる暇はないぜ。ここは冴島大河を信じてやってみるしかないぞ!』

 

「そうだな……。この状況を打破出来るなら、それに賭けてみるさ……」

 

このままだと、永遠に何もない空間を落ちながら彷徨い続けるだけなので、打開策があるのなら、統夜はそれに賭けることにしたため、腹をくくった。

 

「……大河さん……。黄金騎士の力……お借りします!」

 

統夜は大河の力を借りることを決意すると、右手に持っている魔戒剣と左手に持っている牙狼剣をそれぞれ左右に突き上げると、それぞれで円を描いた。

 

すると、統夜は左右の円から放たれる光に包まれた。

 

2つの光から鎧が飛び出してくると、その鎧のパーツは、統夜の身に纏われることはなく、統夜の周囲を回転していた。

 

その時、不思議なことが起こった。

 

奏狼と牙狼の鎧のパーツが合わさったのであった。

 

そのパーツが統夜の身に纏う瞬間、統夜の体から強大な光が放たれた。

 

「……!?な、何だ?この光は……!」

 

統夜と大河が落ちゆく姿を見ていた闇呀であったが、突如現れた強大な光に驚きを隠せずにいた。

 

光が収まると、統夜は落下することなくその場に留まり、さらには金と銀の鎧が合わさった不思議な鎧を身に纏っていた。

 

この形態は、「双烈融身(そうれつゆうしん)」。

 

統夜が奏狼の鎧と牙狼の鎧を同時に召還することによって2つの鎧が融合し、変形した奇跡の形態である。

 

奏狼と牙狼。2つの力を身に纏った統夜のこの形態は、「双烈融身奏狼」と言うべき姿であった。

 

この形態の最大の特徴は、背中から烈火炎装の翼を生やして飛翔する能力である。

 

さらに、奏狼の皇輝剣と牙狼の牙狼剣の両方を操ることが可能であり、統夜は魔戒騎士最高位である牙狼の力を使うことが可能となった。

 

烈火炎装の魔導火も、2つの鎧が合わさったことにより、赤と緑と2色が混じった魔導火になっていた。

 

双烈融身の鎧を身に纏った統夜は、烈火炎装の翼を使って飛翔すると、上で待ち構えている闇呀の元へと向かっていった。

 

そのスピードは疾風(かぜ)のように速く、あっという間に闇呀の前に姿を現した。

 

「……な、何だ、あの鎧は!?2つの鎧が合わさったとでも言うのか!?」

 

暗黒の力を手に入れた闇呀でさえもこのような力は知らないようであり、驚きを隠せなかった。

 

「……闇呀……!!世界を闇で覆おうとしている貴様の陰我……。俺が断ち切る!」

 

統夜は皇輝剣と牙狼剣の両方を構えると、闇呀に対してこのように宣言していた。

 

「フン!牙狼の力を得ようと所詮は未熟な小僧。私の敵ではないわ!」

 

雄々しきオーラを放つ統夜に闇呀は一瞬たじろぐのだが、恐れることなく、自分の分身体を統夜に向かわせた。

 

すると……。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒュン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

統夜は素早い動きで移動をしながら皇輝剣と牙狼剣を一閃すると、一撃で5体の闇呀の分身体を消滅させた。

 

「なっ……!?我が分身を一撃で葬った……だと!?」

 

双烈融身の予想以上の力に、闇呀は驚きを隠せなかった。

 

「闇呀!次はお前だ!!」

 

統夜は皇輝剣を前方に突きつけると、闇呀に狙いを定めていた。

 

「フン!貴様の力はわかった。だが、究極の闇の力を手に入れた私の敵ではない!!」

 

闇呀は、素早い動きで上空に飛翔すると、精神を集中させると、今まで自分が集めてきた邪気を身に纏っていった。

 

「……まさか今まで貯めてきた闇の力をこんなところで使うことになるとはな……。だが、ここで貴様を始末し、また闇の力を集めさせてもらうさ!」

 

闇呀は、暗黒騎士ゼクスを始め、多くの闇を吸収し、力の肥やしにしてきた。

 

集めた闇の力を全て解放することで、統夜を確実に葬るつもりだった。

 

闇の力を解放することにより、闇呀の体は大きくなり、体に纏っていた邪気もさらに禍々しくなっていた。

 

「……」

 

統夜は闇の力を解放して強化された闇呀を見ても臆することはなく、ジッと闇呀を見据えていた。

 

「……地獄に落ちろ!未熟な魔戒騎士!!」

 

闇呀は、黒炎剣の切っ先に邪気を集中させると、その邪気の塊を統夜目掛けて放った。

 

「させるかよ!!」

 

統夜は皇輝剣と牙狼剣を同時に一閃すると、自分目掛けて放たれた邪気の塊を跡形もなく斬り裂いた。

 

「……!?何だと!?」

 

闇の力を解放した攻撃でさえも統夜に軽々と防がれ、驚きを隠せなかった。

 

「……闇呀!!貴様の闇、俺たちの金と銀の刃で断ち切る!!」

 

統夜は闇呀目掛けて飛翔すると、皇輝剣と牙狼剣を同時に一閃した。

 

「……させん!貴様の光を我が闇の力で断ち切ってやるわ!」

 

闇呀も負けじと黒炎剣を構えて臨戦体勢に入っていた。

 

そして、統夜による攻撃を黒炎剣で受け止めて、3つの剣の切っ先からバチバチと火花が飛び散っていた。

 

「ぐぅぅ……!」

 

「このぉ……!」

 

統夜と闇呀の力は拮抗しており、互いに負けじと剣を振り切ろうとしていた。

 

(……!俺は、負ける訳にはいかないんだ!唯たちの……そして、梓のもとへ帰るために!)

 

統夜は頭の中でこのようなことを考えていた。

 

頭の中で大切な人のことを思い描くことで、統夜に力が湧き、先ほどまで拮抗していた剣の押し合いだったが、徐々に統夜が闇呀を押していっていた。

 

「……!?な、何だと!?こいつ、どこからそんな力が?」

 

「俺には守りたい人がいる!その想いが俺を強くするんだ!守りし者として」

 

「くだらん!そんなものは無意味だということを貴様を葬ることで教えてやる!」

 

「死ぬのは……貴様だ!!」

 

統夜は闇呀の黒炎剣を斬り裂くと、隙が出来た闇呀にすかさず皇輝剣と牙狼剣を一閃した。

 

2つの刃に斬り裂かれ、闇呀の体はバラバラになっていた。

 

「……!ば、馬鹿な……!この俺が……こんな小僧に……!」

 

「俺は小僧ではない!」

 

「何だと……!?」

 

「我が名は奏狼!白銀騎士だ!!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

統夜が自らの称号を高々と宣言すると、闇呀は断末魔をあげ、その体は爆発と共に消滅した。

 

「……やった……。あの闇呀相手に俺……勝ったんだ……!」

 

今までで一番の強敵に打ち勝ち、統夜は喜びの気持ちを露わにしていた。

 

__統夜。喜ぶのはまだ早い。一刻も早くここから……そして、魔界から脱出するのだ。

 

『冴島大河の言う通りだぜ。まずはここから脱出してから安心するんだな』

 

「わかってるよ」

 

統夜は鎧を解除することなく、そのまま闇呀が作り出したゲートから脱出し、魔界へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

 

その頃、魔界で多数の素体ホラーと戦っていた戒人とアキトは、2000体のホラーを討伐し終えた後も現れる素体ホラーと戦い続けていた。

 

「……くそ!キリがない!数があまりにも多すぎるぞ!」

 

現在、戒人は魔導馬の召還を解除し、鎧を身に纏った状態で戦っていた。

 

現在戒人とアキトの前にいる素体ホラーは50体もいないのだが、2000体との戦いで疲弊している2人にとってはかなりの数のホラーだった。

 

「お、俺も……。そろそろ力を使い果たしそうだぜ……」

 

アキトも、多数の素体ホラーとの戦いで消耗しており、魔導筆による法術を放つには限界であり、魔戒銃の弾も尽きそうになっていた。

 

「……このままじゃ……やばいぞ……!」

 

戒人とアキトは絶体絶命の状況に陥っており、覚悟を決めて腹を括っていた。

 

その時だった。

 

ゼクスの作り出したゲートから何かが出てくると、そのゲートは消滅したのであった。

 

さらに、その何かはこちらに飛翔してくると、たった一振りで50体程の素体ホラーを一掃したのであった。

 

「……!?な、何だ!?」

 

「あの数を一撃で……!」

 

戒人とアキトは、突如現れた何者かの圧倒的な力に驚きを隠せなかった。

 

その何者かは2人の前まで来たのだが……。

 

「……戒人、アキト。無事か?」

 

その何者かから統夜の声が聞こえてきたため、2人は驚いていた。

 

「お、お前……。統夜……なのか?」

 

「それに、その鎧……まるで牙狼の鎧が合わさったような……」

 

「その説明は後だ。とりあえず、闇呀は倒した。ここから脱出しようぜ」

 

「そうなのか!?」

 

「そういうことなら了解だ!」

 

戒人は魔戒剣を鞘に納め、戒人とアキトは一足先に魔界と人界を繋ぐゲートを使って脱出し、それを見届けてから、統夜は同じゲートから脱出した。

 

(……大河さん、本当にありがとうございました!あなたと共に戦うことで、俺は魔戒騎士として多くのことを学びました。そのことをこれからの使命に活かしていきたいと思っています)

 

統夜は人界と魔界を繋ぐゲートに入った瞬間に鎧を解除しようとするが、その時に共に戦った大河へお礼を言っていた。

 

__うむ。私は英霊としてこれからも戦いを見守っていくつもりだ。統夜もそうだが、鋼牙と我が血を受け継ぎし者も見守っていく。

 

大河は、本来あるべき姿に戻り、これからは英霊として統夜たちの戦いを見守っていくことにしたのであった。

 

__統夜……。強くなれ!

 

(……はい!)

 

大河からのエールに力強く答えた統夜は、鎧を解除し、それと同時に牙狼剣は消滅した。

 

すると、今まで統夜の脳裏から聞こえてきた大河の声が聞こえなくなっていた。

 

(……大河さん、本当にありがとうございました!)

 

統夜は心の中で改めて大河に礼を言うと、ゲートを通って、人界へと戻っていったのであった。

 

「……統夜!無事だったか!」

 

統夜がゲートから戻ってくると、先に戻っていた戒人とアキトが、統夜の帰りを待っていた。

 

「……統夜、大丈夫か?」

 

「あぁ、何とかな」

 

戒人の問いかけにこう答えながら、統夜は魔戒剣を青い鞘に納めていた。

 

「あの闇呀を倒したって言ってたけど……大河さんは?」

 

「大河さんは、闇呀を倒す時に俺に力を貸してくれて、その役目を終えた後は、消えちゃったんだよ」

 

「そうだったか……。それじゃあ、あの妙な鎧は、大河さんが力を貸した結果なんだな?」

 

アキトは、統夜の身に纏っていた鎧について推察すると、それが正しかったからか、統夜は無言で頷いていた。

 

「……とりあえず入り口に戻ろう。まだホラーがいるなら、大輝さんと奏夜が戦ってるはずだ」

 

「そうだな、急いで戻ろうぜ」

 

こうして、魔界から無事生還した3人は、洞窟の入り口で戦っているであろう大輝と奏夜のもとに戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

 

 

その頃、統夜たちが乗り込んだ洞窟の入り口では、大輝と奏夜が入り口にいた多数の素体ホラーの殲滅をたった今終えたばかりだった。

 

「はぁ……はぁ……。キルバ、これで全部か?」

 

『あぁ。どうやらそのようだ。それに、洞窟の中から感じた邪気が消えた。恐らくあの3人がこの事件の黒幕を倒したのだろう』

 

入り口の素体ホラーを殲滅した奏夜は、相棒であるキルバにその確認を行った結果、素体ホラーは完全に殲滅したようであった。

 

さらに、洞窟内の邪気が消滅したことから、統夜たちが黒幕を倒したということをキルバは推測していた。

 

「……と言うことは……。統夜さんたち……勝ったんだ!」

 

「フッ……流石だな、あの3人は……」

 

キルバの推測を聞いた奏夜は歓喜の声をあげ、大輝は統夜たちの実力を改めて評価していた。

 

その時、洞窟の入り口から何者かが出てきた。

 

その正体とは……。

 

「……統夜さんたちだ!」

 

「フッ……。3人とも無事でなによりだ」

 

統夜、戒人、アキトの3人が洞窟の入り口から出てきたため、奏夜と大輝は安堵の笑みを浮かべていた。

 

統夜たち3人は、ゆっくりとした足取りで、奏夜と大輝に歩み寄り、それを見た2人は魔戒剣をそれぞれ鞘に納めていた。

 

「……皆さん、無事でなによりです!」

 

「あぁ。そっちも大丈夫だったようだな」

 

「そうだな。奏夜も魔戒騎士として多少は成長したようだからな。俺も少しは楽をさせてもらったよ」

 

大輝の言葉は先輩騎士として多少厳しい言葉ではあったものの、自分の成長を認めてもらえたということが、奏夜には嬉しかった。

 

「ありがとうございます!俺、もっともっと精進を続けます」

 

「フッ……。もっと精進するんだな」

 

「やれやれ。奏夜も頑張ったんだから、もっと素直に褒めてやれよ。大輝のおっさん」

 

「……だからおっさんはやめろ!」

 

大輝は相変わらず自分のことをおっさん扱いするアキトにやめるよう言っていた。

 

「アハハ……」

 

奏夜は、大輝とアキトのやり取りを見て苦笑いをしていた。

 

「それで、事件の黒幕は誰だったんだ?」

 

洞窟の入り口でずっと戦っていた大輝は、気になっていた話を切り出した。

 

「それなんですけど……。今から俺の家に来ませんか?そこでゆっくりと話をしたいなぁと思いまして」

 

「お!いいじゃねぇか!行こうぜ行こうぜ!」

 

アキトは、統夜の家に行くという案にノリノリであった。

 

「はい!俺も統夜さんの家に行きたいです!」

 

「まぁ、今日は仕事も終わったし、いいかもしれないな」

 

東京から来た奏夜と大輝も、統夜の家に行くということを了承していた。

 

「俺も行きたいが、その前に番犬所に報告に行くよ。誰か1人は報告に行った方がいいと思うからな。それが終わったら合流する」

 

「戒人。お前は相変わらず真面目だねぇ……」

 

アキトは、戒人の生真面目な言動に少々呆れていた。

 

「あっ、報告だったら、俺が……!」

 

この中で最年少である奏夜が番犬所への報告を名乗り出たのだが……。

 

「いいんだ、奏夜。お前は翡翠の番犬所の魔戒騎士だし、イレス様への報告は紅の番犬所にいる俺の仕事だからな」

 

「戒人さん……」

 

「奏夜。とりあえず報告は戒人に任せよう」

 

「……はい、わかりました」

 

統夜はこのように奏夜をなだめると、奏夜は納得したのか、あっさりと了承していた。

 

こうして、戒人は番犬所へと向かい、残りのメンバーはそのまま統夜の家に向かうことにした。

 

統夜の家で、買って来た食料を食べながら、統夜は魔界での闇呀との戦いや、冴島大河との出会い。さらには不思議な力で闇呀を倒したことを話していた。

 

統夜はこのような話をしているうちに、同じ話を唯たちにもしたいと考えながら話をしていた。

 

こうして、闇呀は統夜や大河の力によって討伐され、世界を闇で覆うという野望は阻止された。

 

桜ヶ丘に平穏が訪れたのだが、ホラーの脅威は消えた訳ではなかった。

人の邪心がある限り、陰我は生まれてホラーは出現する。

 

そう、統夜たちの戦いは決して終わることはないのである。

 

そうだとしても、統夜たち魔戒騎士は、守りし者として戦っていこうという決意を固めながら戦っていくのであった……。

 

 

 

 

 

 

……続く。

 

 

 

 

 

 

 

__次回予告__

 

『いよいよ唯たちの受験が近付いて来たな。4人揃って合格出来ればいいのだがな。次回、「受験」。サクラよ、咲き誇れ!』

 

 




統夜は大河の力を借りて今回の事件の黒幕である闇呀を倒すことが出来ました。

そうです。今回の事件の黒幕は闇呀でした。この章のタイトルで闇呀と書いてあったので、もうお察しだったと思いますが(笑)

パチンコ版では闇牙という字でしたが、キバは漢字で書くと呀なので、今回の小説では闇呀と表記させてもらうことにしました。

そして、統夜が大河の力を借りてなった「双烈融身」は、「炎の刻印」の最終回でレオンがヘルマンの魔戒剣を使い、2つの鎧が合わさった形態となっています。

今回、統夜は大河の力を借りてこの形態となったため、奏狼と牙狼の鎧が合わさった形態となりました。

何で牙狼でもない統夜が牙狼剣を持てるの?と疑問に感じる人もいるかと思いますが、大河が力を貸しているため、一時的に牙狼剣が操れるようになったという解釈をしていただけるとありがたいです。

そして、次回はこの章のエピローグで、いよいよ唯たちの受験となっています。

唯たち4人は無事に第一志望の大学に受かることは出来るのか?

それでは、次回をお楽しみに!


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