今回はいよいよ学園祭でのライブで、今回で学園祭は終わりとなります。
統夜たち3年生にとっては最後の学園祭ライブとなりますが、果たしてライブは成功するのか?
それでは、第94話をどうぞ!
学園祭も2日目を迎え、間もなく統夜たち「放課後ティータイム」のライブが行われる。
全ての準備を整えた統夜たちは現在講堂の舞台袖に来ていた。
すると、先ほどまで公演を行っていた落語研究会の発表が終わり、舞台袖に撤収するところだった。
「お疲れっした〜」
律が落語研究会の人たちに軽く挨拶をしていた。
先ほどまで行われていた落語研究会の発表の次が統夜たちのライブであるため、統夜たちはライブのセッティングを開始した。
ドラムやキーボード。さらにはアンプのセッティングを終えると、統夜たちは自分たちの楽器のチューニングなどを行っていた。
「……よし、準備万端だな」
ライブの準備は手際良く行われたため、準備は早く終わった。
「ねぇねぇ、学園祭でのライブもこれで3回目だよね?」
「そうだな。2年前は初めてで、すっごく緊張したっけ」
「そうそう。俺もかなり緊張したよ」
統夜たちにとって初のライブは全員が緊張していたが、どうにか成功したのであった。
しかし……。
「2年前……」
2年前のライブでのトラウマを思い出した澪は顔を真っ青にしていた。
「あぁ!そういうことじゃなくて!」
律はからかうつもりはなかったため、焦ってフォローしようとしていた。
「ほ、ほら!去年は!」
律はどうにか話をそらすために去年の話題を振ったのだが……。
「私が風邪をひいて、ギー太を家に忘れてきたんだっけ……」
今度は去年のライブのことを思い出した唯が落ち込んでしまった。
「……あの時は……本当に申し訳ない……」
「あぁ、いやいや!だからそういうんじゃないんだってば!」
律は必死になって澪や唯のフォローを行っていた。
統夜はその様子を見て苦笑いをしていた。
『おい、お前ら。もうライブが始まるぞ。気持ちを入れ替えろ』
ライブ前に気落ちしてはまずいと判断したイルバは統夜たちをフォローしていた。
その言葉で統夜たちがハッとしたその時だった。
『さぁ、皆さんお待ちかね!桜高祭の目玉イベント。放課後ティータイムの演奏です!』
和は心からそう思っているのか、このようなアナウンスを行っており、このアナウンスを聞いた客席からは拍手が聞こえてきた。
「ハードル上げるなよ、和……」
和がこう言ってくれたのは光栄だったのだが、逆にそれがプレッシャーとなっており、律は苦笑いをしていた。
「もうヤダ……。あんなのヤダ……」
「だ、大丈夫よ、澪ちゃん」
「2度あることは3度あるっていうし!」
「おいおい、それは励ましてないから……」
逆に澪を追い詰める言葉に統夜は苦笑いをしていた。
すると、唯がコードに足を引っ掛けてしまい、唯はその場に座り込むような形で転んでしまった。
「唯ちゃん!?」
「唯先輩!?」
「ふ、ふぇぇ……」
急に転んでしまい、唯は涙目になるが、それと同時にステージの幕が上がった。
そして、幕が完全に上がると、統夜たちは客席が異様な光景になっていることに驚いていた。
「な……何これ!?」
「み、みんな私たちと同じTシャツを着てます!」
唯と梓だけではなく、統夜たちもここにいる観客全員が自分たちと同じTシャツを着ていることに驚いていた。
唯は驚きながらもゆっくりと立ち上がっていた。
『……さぁ、皆さん!盛大な拍手を!』
こう言いながら和がステージに登場すると、客席から大きな拍手が送られた。
「の、和ちゃん!?これは!?」
「ちょっと和、何やってるんだよ」
「……なんかなし崩しにだけど、澪ファンクラブの会長、引き継いじゃったし」
和は和で澪ファンクラブの仕事として、軽音部を盛り上げていた。
「じゃあじゃあ!」
「みんなが着てるTシャツは?」
「落ち着いて」
和は興奮している唯と梓をなだめていた。
「Tシャツは山中先生が用意してくれて、ライブ前にみんなに配ったのよ」
そして、和は舞台袖を指すと、観客のみんなが統夜たちと同じTシャツを着ているのは何故かを説明していた。
「うぅ……。さわちゃんありがとう!」
「ありがとうございます!」
唯と梓は涙目になりながらさわ子にお礼を言っていた。
「先生ありがとー!!」
「ありがとー!!」
歓声が響き渡るなか、信代と三花の声が聞こえてきた。
さわ子は唯たちだけではなく、客席からもありがとうという言葉が聞こえてきたことに満足そうだった。
『えぇ……?放課後……ティータイムです……。えっと……』
和やさわ子たちによるTシャツのサプライズが嬉しかったのか、唯の目には涙が溢れており、声も涙声だった。
すると、客席から「頑張れ唯!」や「頑張れー!!」と唯を応援する声が聞こえてきた。
『みんなありがとぉ!……私たちの方がみんなに色々してもらって……。グスッ、なんだか涙が出そうです』
「もう、泣いてるじゃねぇか……」
律の的を得ているツッコミに、客席は笑っていた。
「唯ー!!」
唯のことを呼ぶ声が聞こえてくると、唯はずずっと鼻をすすっていた。
「汚いよ!」
「部長ナイス!」
「エッヘン!」
「澪も何か言ってぇ!」
「え、えっと……ありがとう……」
客席からの無茶ぶりに澪は照れながらも答えると、客席から黄色い歓声が上がっていた。
「統夜も何か言ってくれ!!」
客席から統夜に無茶ぶりをしたのは、アキトだった。
(!?アキトのやつ……)
アキトからも無茶ぶりが飛んでくるとは思わなかったので、統夜は苦笑いをしていた。
「みんな!今日はライブに来てくれてありがとな!!」
統夜が力強く宣言すると、再び歓声が聞こえてきた。
「統夜ー!!最高だぜぇ!!」
アキトは興奮気味に叫んでおり、隣にいたレオは苦笑いをしていた。
『それじゃあ、1曲目行きます!』
最初の挨拶もほどほどにして、統夜たちは最初の曲を演奏することになった。
統夜たちはそれぞれの楽器を構え、演奏体勢に入っていた。
『……「ごはんはおかず」!』
唯は1曲目のタイトルを言うと、「何だそりゃ!」という声と、笑い声が聞こえてきた。
『ではでは、聴いてください!!』
唯はみんなの顔を見て合図を送ると、みんなは頷いていた。
「……1・2・3・4!!」
律の合図で、ライブの1曲目の演奏が始まった。
統夜たちが今奏でているのは、「ごはんはおかず」というタイトルの曲だった。
この曲は、部室が使えなくなった頃に唯が書いた歌詞で、あまりにも独創的な歌詞だったため、当初は却下された曲だった。
しかし、ご飯という食べ物の素晴らしさを表現した曲だという唯の熱弁に根負けした統夜たちは、この歌詞を採用することになった。
歌詞は独創的であるのだが、曲調はハードロックっぽい感じであり、結果的にはこのギャップが魅力となったのであった。
この曲は要所要所でセリフがあるので、そこで笑いが取れるだろうと統夜たちは予想していた。
そして、最初のセリフの部分が近付いてきた。
『♪でも私、関西人じゃないです!』
「「「「「どないやねん!!」」」」」
唯以外の全員がこのセリフを言うと、客席が笑いに包まれていた。
続いて、1番盛り上がるであろうサビに突入した。
『♪1・2・3・4・GOHAN!……1・2・3・4・GOHAN!!』
1曲目からこの曲を持ってきたのが吉と出たのか、観客たちは手拍子をしたりしながら演奏を盛り上げていた。
この曲は1曲目にも関わらず、いきなり演奏者と観客が一体となってライブを盛り上げていた。
大いに盛り上がる中、再びセリフの部分が近付いてきた。
『♪私前世は、関西人!』
『どないやねん!!』
今度は統夜たちだけではなく、先頭でライブを盛り上げてくれているクラスメイトもセリフを言ってくれた。
サビの部分で唯は「GOHAN!」の部分を言ってもらうために客席にマイクを向けていた。
1回目は唐突だったからか何も反応はなかったが、2回目は元気よく応えてくれて、客席を大いに盛り上げてくれた。
こうして、大盛り上がりの中、1曲目の「ごはんはおかず」の演奏は終了した。
まだ1曲しか終わっていないにも関わらず、まるで最後の曲を終えたかのような拍手と歓声だった。
統夜はまさかここまで盛り上がってくれるとは思っていなかったのか、驚きを隠せなかった。
『えっと……。ごはんはおかずでした!……改めまして、放課後ティータイムです!』
1曲目が終わり、唯が挨拶をすると、客席から大きな歓声が聞こえてきた。
『私たち3年生のメンバーは、みんなは同じクラスなんですけど、昨日は演劇をやって大変だったんですよぉ』
唯がMCでこのように語り出すと、客席からは「えぇ!?」と驚く声が聞こえてきた。
『黄金の騎士、格好良かったですよね!あの中に入ってたのは、やーくんだったんですよ!』
「お、おい、唯!!」
唯が黄金騎士の中の人が統夜だということをあっさりとバラしており、驚きを隠せなかった。
しかし、観客たちはポカンとすることなく、逆に統夜に拍手や歓声を送っていた。
『ねぇねぇ、やーくん。何かやってよ』
『はぁ?まさか、セリフをか?』
『うん』
唯がいきなり無茶ぶりを振り、統夜は困惑していた。
しかし、観客たちは期待しているのか、大きな歓声を送っていた。
《……やれやれ。ライブでも唯は相変わらずだな》
(まったくだよ……。ま、ここは期待に応えますかね……)
いきなりセリフを言えというのは恥ずかしかったが、観客たちの期待に応えるために、セリフを言うことにした。
統夜は1度深呼吸をしてから、セリフを言い放った。
『……貴様の闇、俺が断ち切る!!』
統夜は素体ホラーこと怪物と対峙した時のセリフを言うと、客席から大きな歓声があがっていた。
その歓声には黄色い歓声も混じっており、「格好いい!」や、「統夜先輩!!」などといった声も聞こえてきた。
統夜は澪のようにファンクラブがある訳ではないが、女子生徒の人気は高く、一部ではアイドルのような扱いを受けていた。
『ねぇねぇ、みおちゃんも準主役だったんだから、何かセリフを言ってよ』
唯の無茶ぶりの矛先は、続いて澪に向けられた。
『ふぇ!?ば、バカ!!そんなの出来る訳ないだろ!?』
『えぇ!?』
唯が澪にもセリフを言って欲しいとの言葉に主に澪ファンクラブの子達が黄色い歓声を送っていた。
「いいだろ、澪。セリフだってまだ覚えてるだろ?」
「り、律まで!!」
律は自分に無茶ぶりの矛先が向かないことを良いことに、ニヤニヤしながら澪のセリフを待っていた。
結局澪は、歓声に負けてセリフを言うことにした。
『……待ってください!光の騎士様!私も行きます!』
澪が劇中のセリフを言った瞬間、この日1番の黄色い歓声が飛び出していた。
その迫力にステージに立つ統夜たちは苦笑いをしていた。
セリフを言った後、澪は恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしていた。
その様子がファンにはたまらないのか、さらに澪のファンが歓声をあげていた。
『ありがとう、ご両人!……あっ、ちなみに私は、木Gでした!』
《おいおい、その情報はいらんだろ……》
(俺もそう思うよ……)
イルバが所々でツッコミをいれており、統夜はそれをテレパシーで返していた。
『ずっと動いちゃいけないって言われてたんだけど、途中我慢できなくてくしゃみをしちゃいましてぇ♪』
唯のトークに客席から笑いが飛び出すのが、このまま唯がグダグダと喋り続けていれば、それだけライブの時間が押してしまう。
そのことを危惧していた和は、舞台袖から「巻きで行け」と合図をしていた。
唯は和の合図にはまったく気付いておらず、お構い無しといった感じでMCを続けていた。
すると唯は木の時のように梓の方に移動すると、梓にぶつかってしまった。
『あっ、ごめんあずにゃん!』
『もう、大丈夫ですか?』
『梓ちゃんのクラスは何をやったの?』
『え?喫茶店です……』
梓は一応唯の質問に答えたのだが……。
「いいから次行ってください!」
梓はグダグダと喋り続ける唯を耳打ちで注意していた。
『あぁ、はいはい。……それでは、次の曲に行きましょう!』
唯はすぐさま自分の位置に戻っていったのだが……。
『あっ!私たちの劇は御月カオルさんのお父さんの御月由児さんが描いた絵本が原作で、ムギちゃ……琴吹さんがシナリオとナレーションを担当しました!』
《おいおい、次の曲に行くんじゃないのかよ……》
(まったくだ。いつになったら新曲に行くのやら……)
統夜とイルバは再び思い出したかのように語り出す唯に呆れていた。
『琴吹さんのナレーション。凄く良かったですよね!』
紬はここで自分が脚本とナレーションをしたことを紹介してくれるとは思っておらず、満面の笑みを浮かべていた。
『それに、この劇をやることを了承してくれたカオルさん、ありがとうございました!』
唯は父親の作品を劇としてやることを了承してくれたことに感謝の気持ちを表していた。
「……アハハ、まさかこんな形で私まで紹介してくれるなんて……」
カオルにスポットライトは当たらなかったが、自分の名前と父親の作品が紹介されるとは思っていなかった。
『カオルさんは実はこの桜ヶ丘高校のOGなんですよ!それで……』
唯はさらにトークを進めようとしたのだが……。
『おい、唯。そろそろ次の曲へ行くぞ。じゃないとお前の漫談でライブが終わっちまうからな』
『あぅぅ……。やーくんの意地悪……』
唯のグダグダとしたトークはこれ以上見過ごせないと思った統夜はこう唯を促し、この2人のやり取りの後、客席から笑い声が聞こえてきた。
「ねぇねぇ。次の曲ってなんだっけ?」
「だからどっかにメモを貼っとけって言っただろ?」
「どこかに無くしちゃったみたいで……」
「落としたのか?」
「ポケットに入れといたんだけど……」
「あっ!さっきTシャツに着替えたから」
『はっ!そうか!』
唯は曲順を記入したメモを誤ってブレザーのポケットにいれてしまい、その事に気付いた唯はハッとするが、その時の声をマイクが拾ってしまった。
そのことで客席から再び笑いが起こっていた。
統夜たち軽音部はライブの中でもグダグダであり、統夜はそんな状況に頭を抱えていた。
※※※
そんなグダグダな状態だったが、どうにか2曲目に突入することが出来た。
2曲目に演奏している曲は、統夜たち放課後ティータイムの十八番である「ふわふわ時間」だった。
この曲は統夜たちは何度も演奏している曲であり、統夜たちは楽しげな表情で演奏をしていた。
「……」
統夜たちの演奏を聴いていた穂乃果は、楽しげに「ふわふわ時間」を奏でる統夜たちがキラキラ輝いて見えていた。
そんな統夜たちに見入っていた。
「……穂乃果?どうしたのですか?」
海未は目を大きく見開いて統夜たちに見入っている穂乃果のことが気になっていたので、声をかけていた。
「……え?いやぁ……。統夜さんたち、凄くキラキラしてるなぁって思って……」
「……確かに、統夜さんたちはとてもいきいきしていますよね」
「うん♪凄く楽しそうだよね♪」
「それが……どうしたんだ?」
統夜たちが楽しそうに演奏していることは奏夜も理解しており、穂乃果はそれを見て何を考えてるのかは理解出来なかった。
「……私たちもさ、来年高校に入ったら、統夜さんたちみたいにキラキラした何かを出来るのかなぁ?」
「キラキラした何か……ですか?」
「うん。上手く言葉には出来ないけど、私は音ノ木坂に入ったら、統夜さんたちみたいに何かをやって輝きたいんだよね」
「輝きたい……。うん!ことりもそう思うよ!」
「えぇ。きっと出来ますよ。穂乃果がその気になれば」
「あぁ。俺も応援するぜ」
「ことりちゃん……。海未ちゃん……。そーくん……。ありがとう」
穂乃果は自分の曖昧なビジョンを否定することなく受け入れてくれた奏夜たちに感謝していた。
そして、今の統夜たちのようにキラキラ輝きたいと願いながら統夜たちの演奏を聴いていた。
しかし、2年後に穂乃果たちは今の統夜たちのように打ち込めるものが見つかり、大きく輝いていくことを、知る由はなかった……。
こうしている間にも、2曲目であるふわふわ時間は終了した。
2曲目が終わり、次のMCは統夜が担当することになっていた。
『ありがとうございます!ふわふわ時間でした!』
統夜がこのようにMCを入れると、大きな拍手と歓声が送られた。
『次の曲は僕の作った曲なので、僕がMCを務めます!』
3曲目は統夜の曲を演奏するため、統夜がMCをすることになったのであった。
『この曲は僕にとって大切な曲で、特別な想いを込めてこの曲を作りました』
特別な想いというキーワードが出てきたため、観客たちは次の曲に大いに期待していた。
『次の曲はゆったりとしたバラードではありますが、聴いてください!「哀愁の輪舞」』
統夜は曲名を宣言すると、演奏は始まった。
〜使用曲→哀愁の輪舞(放課後ティータイムver)〜
紬のピアノソロからこの曲は始まった。
紬がしっとりとピアノを奏でた後、統夜たちが入り、統夜がしっとりと歌い始めた。
この哀愁の輪舞は、サバックの時に、統夜が多くの魔戒騎士の前で歌った曲であった。
「……!この曲って……」
「あぁ、鎮魂の儀の時に統夜が歌ってたよな、この曲」
サバックに出場していた戒人は、この曲に即座に反応しており、アキトも鎮魂の儀の時にはいたため、この曲のことを知っていた。
「その曲を軽音部用にアレンジしたんですね……」
「へぇ、悪くないじゃん♪」
レオはサバックで歌った曲を軽音部用にアレンジしたことを推測しており、零は統夜のしっとりとした歌声に聞き入っていた。
「……ふっ、悪くないな……」
鋼牙はレオからサバックの映像を見せてもらった時に統夜の歌も聴いていたのだが!改めて統夜の歌を聴いて笑みを浮かべていた。
普通の観客たちもこの曲に聞き入っていたのだが、鋼牙たちは特に統夜たちの演奏に聞き入っていた。
奏夜も例外ではなく、目を閉じて一音一音を噛みしめるかのように聴いていた。
こうして、統夜がボーカルを務めた「哀愁の輪舞」は終了した。
曲が終了すると、客席から大きな拍手が送られた。
『……哀愁の輪舞でした!』
次のMCは唯のため、唯がMCを入れていた。
『やーくんの作った曲はどうでした?凄く良かったですよね!』
唯は観客たちにこう投げかけると、客席から再び大きな拍手が送られた。
『それでは、ここでメンバーを紹介したいと思います』
唯は前からの打ち合わせ通りこのタイミングでメンバー紹介を行うことにしていた。
『まず最初に……顧問のさわちゃんです!』
「えぇ!?私!?」
最初に紹介されたのが顧問で、しかも唯は普段と同じ呼び方で呼んでいたため、統夜はズッコケそうになっていた。
「おいおい、山中先生だろ?」
ここはステージ上で、他の先生も見ているということもあったので、澪は訂正するよう耳打ちをしていた。
『あ、山中先生です!山中さわちゃん先生!』
「……お前、それじゃ意味ないだろ」
唯が苗字とあだ名をくっつけた呼び方をしており、統夜はジト目になって呆れていた。
『山中先生はいつも優しくて、私たちの部活をいつも応援してくれてます!』
「みんなぁ!凄く輝いているわよ!」
さわ子が統夜たちにエールを送ると、客席から大きな拍手が送られた。
『……続いてベースのみおちゃんです!』
唯は澪のことを紹介すると、待ってましたと言わんばかりに大きな拍手と歓声を送っていた。
『みおちゃんは昨日の劇で準主役を務めまして……』
『それはさっき言っただろ?』
『あう!』
統夜に的を得たツッコミをされた唯だったが、その様子を見ていた客席から笑い声が聞こえてきた。
『……こんにちは。今日は私たちのライブを聴いてくださいまして、ありがとうございます』
澪は恥ずかしがることはなく、しっかりとした口調で挨拶をしていた。
『私……。ここにいるみんなとバンドをやってこれて……。最高です!』
澪の力強い発言を聞いたファンクラブの子たちの興奮が高まり、先ほど以上に黄色い歓声が上がっていた。
『みおちゃんにはファンクラブもあるので、入りたい人はそこにいる和ちゃんに言ってください』
「へ!?」
『和ちゃんは私の幼なじみなんですけどら生徒会長で、しっかり者で、いつも助けられています』
「ちょ、ちょっと、唯!」
舞台袖にいた和はまさか自分の名前を呼ばれるとは思っていなかったのか、驚きながらステージに出てきた。
すると、すかさずスポットライトが和に当たり、和は逃げるように舞台袖に引っ込んでしまった。
『それでは、和ちゃんも一言どうぞ!』
「何でよ。私はいいから次行きなさい、次」
和は頑なにステージに現れようとはせず、手だけを出して先に進むよう促していた。
『えぇ!?……まぁ、いいや』
唯は和の挨拶がないことに納得がいかなかったのだが、とりあえず次にいくことにした。
『続いて、キーボードのムギちゃんです』
『皆さん、こんにちは!今日は、私たちの演奏を聴いてくださいまして、ありがとうございます!』
唯に紹介された紬は、簡単に挨拶をしていた。
すると……。
「せーの……」
『ムギー!!』
クラスメイトたちが一斉に紬のことを呼んでいた。
『!みんな、ありがとー!バンドってすっごく楽しいです!今も、すっごく楽しいです!!』
紬はクラスメイトに呼ばれたことが嬉しかったのか少し興奮気味だった。
『ムギちゃん、落ち着いて。……ムギちゃんの淹れてくれる紅茶はとても美味しくて、私たちも毎日楽しみなんですよ』
唯がティータイムのことを軽く話すと、客席から「私も飲みたい!」という声が聞こえてきた。
『いつでも部室にお越しください!大歓迎ですから!』
『部室にはトンちゃんもいますので、ぜひ会いに来てあげてください!』
唯はトンちゃんのことまで紹介していたのだが、客席から「トンちゃんって?」という声が聞こえてきた。
『あぁ、はいはい。トンちゃんっていうのは、部室で飼っているスッポンモドキっていう亀で、鼻が豚みたいで可愛いんですよぉ♪ね、あずにゃん?』
『あっ、は、はい……』
唯はトンちゃんのことを紹介すると共にトンちゃんの魅力について梓に同意を求めていた。
『続いて、ギターのあずにゃんです!』
唯はこの流れのまま梓を紹介したのだが、いつも通りあずにゃんと呼んでいた。
『な、中野梓です。よろしくお願いします……』
梓は恥ずかしそうに自己紹介をするのだが……。
「梓ー!!」
「梓ちゃーん!!」
客席から純と憂の声が聞こえてきた。
『あずにゃんは2年生なんですけど、すっごくギターが上手くて、私はいつもあずにゃんに教わってます。いつもありがとね、あずにゃん♪』
『あっ、ありがとうございます……』
梓は唯に改まってお礼を言われたのが恥ずかしかったのか、頰を赤らめていた。
『次にドラムのりっちゃんです!我らが軽音部の部長です!』
唯が律を紹介すると、律はドラムの椅子から立ち上がり、そのまま挨拶を始めた。
『えぇ、みなさん。本日は私たちのライブを聴いてくださり、ありがとうございます』
「よっ、りっちゃん!」
「緊張してんじゃないよ!」
『……それでは次でーす』
律はクラスメイトの声を聞き流し、次に話を振っていた。
「え?いいの?」
「いいよ」
「うーん……。まぁ、いいや」
律は簡単な挨拶しかしていなかったが、唯は気を取り直して次に進むことにした。
『……次にギターのやーくんです!』
続いて唯は統夜を紹介していた。
すると……。
「「統夜ー!!」」
「統夜さーん!!」
「ちょっと、奏夜!!」
アキトと戒人が同時に統夜を呼んでおり、離れたところにいた奏夜も統夜を呼んだのだが、それが恥ずかしかったのか、海未に注意されていた。
さらに……。
「統夜ー!!」
「統夜くーん!!」
「統夜せんぱーい!!」
クラスメイトだけではなく、あちこちから統夜の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
『やーくんはちょっと鈍いところはあるけれど』
『強さと優しさを併せ持っていて』
『誰よりも軽音部のことを大切にしていて』
『誰よりも頼もしくて』
『尊敬出来る先輩です!!』
唯、紬、律、澪、梓の順番で口々に統夜のことを紹介していた。
統夜は突然このようなことを言われて嬉しさと困惑が入り乱れていた。
統夜はゴホンと咳払いをすると、そのまま語り始めた。
『皆さん、今日は俺たちのライブに来てくれてありがとうございます!俺は軽音部のみんなから、多くのものをもらうことが出来た。今日、このメンバーでライブが出来るのが幸せだし、最高だ!!』
統夜は今自分が思っている素直な気持ちを明かすと、大きな歓声が上がっていた。
『やーくん、ありがとう!……それじゃあ、次の曲行きます!』
唯は自分の紹介をしないで先に行こうとしていた。
「唯、自分の紹介をしてないぞ」
「あっ、そうだった!」
ここで唯は自分の紹介がまだなことを思い出しており、苦笑いをしていた。
『最後にギターの唯ちゃんです』
そんな唯に代わり、紬が唯の紹介をしていた。
『唯は見た目のまんまでのんびりしててすっとぼけてるけど』
『いつま全力で、一生懸命で』
『周りのみんなにもエネルギーをくれて』
『自然とみんなを笑顔にしてくれる』
『とっても頼れる先輩です!』
律、紬、澪、統夜、梓の順番で唯のことを紹介していた。
「うぉ!?どうした!?何があった!?」
唯も先ほどの統夜同様に嬉しさと困惑が入り乱れていた。
「お姉ちゃーん!!」
突然憂の声が聞こえてくると、唯は声の方へ振り向いていた。
『おぉ!ういー!!』
「お姉ちゃーん!!」
平沢姉妹は互いに目が合うと、手をブンブンと振っていた。
「あぁ♪お姉ちゃんと目が合ったよ♪」
憂は唯と目が合って互いに呼び合ったのが嬉しかったのか、その喜びを純に伝えていた。
「アハハ……。そりゃ目が合うだろうよ……」
あれだけ大きな声で呼びかければ目が合うのは当然だと考えていた純は苦笑いをしていた。
「唯ー!!」
「放課後ティータイム!!」
「放課後ティータイム!!」
会場の盛り上がりがピークに達したのか、唯の名前だけではなく、統夜たちのバンド名である放課後ティータイムの名前を呼ぶ者もたくさんいた。
これは統夜たちにとっては予想外の出来事であり、それと同時に喜ぶべきことでもあった。
統夜たちはこのステージ上で自分たちの名前を呼んでくれていることにしばらく耳を傾けていた。
『……それでは、次が最後の曲です!』
盛り上がりがひと段落したところで唯が話を進めるのだが、最後の曲とわかると、客席からそれを惜しむ声が聞こえてきた。
『もっと演奏していたいけど、時間が来ちゃいました』
「良かったよー!」
「放課後ー!!」
「放課後ー!!」
「せめてティータイムまで言ってあげようよ!」
統夜たちのバンド名を略して言っている者がおり、誰かがそのことにツッコミをいれると、客席から笑いがおこっていた。
『今日は本当にありがとうございました!山中先生!Tシャツありがとー!!和ちゃん!いつもありがとー!憂!純ちゃん!ありがとー!』
唯は曲に入る前に色々な人に感謝の言葉を伝えていた。
「唯ー!!」
「最高!!」
『トンちゃんありがとー!!部室ありがとー!!みんなみんな本当に、ありがとー!!』
唯の興奮が冷め止まぬ中、唯は様々なことに対して感謝の言葉を述べていた。
その感謝の言葉を聞くと、客席から大きな拍手と歓声が送られていた。
そして、歓声と拍手が落ち着いたタイミングで、唯は再び語り始めた。
『放課後ティータイムは。いつまでも……いつまでも……。「放課後」です!!』
唯の言葉の意味が理解出来なかったのか、客席が一斉に静まり返ってしまった。
ほとんどの観客がポカーンとする中、憂だけは目をキラキラと輝かせていた。
しばらくすると、気を遣った数人が小さく拍手をしてくれた。
『それでは、最後の曲、聴いてください!……「U&I」!』
唯が最後に演奏する曲名を宣言すると、大きな歓声が上がっていた。
律のドラムが合図となり、統夜たちの演奏は始まった。
このU&Iは、唯が詩を書いた曲で、とてもクオリティの高い詩になっていた。
いなくなったことで初めてそのありがたみがわかるという思いが込められていた。
この歌詞は憂にあてたものであり、日頃からお世話になっている憂への感謝の気持ちも込められていた。
憂は風邪を引いた時にこの歌詞を見た時、これは自分にあてた歌詞であると理解していたため、思い入れは大きかった。
最後の曲ということもあり、統夜たちは一音一音に気持ちを込めていた。
そんな中、統夜はギターを奏でながら会場を見回していた。
まず最初に目についたのはクラスメイトたちであった。
クラスメイトたちは曲に合わせて小刻みに動きながらノっていた。
続いて目についた鋼牙は、穏やかな表情で笑みを浮かべており、カオルも雷牙を抱えながら楽しげにしていた。
その隣にはヒカリと幸太もおり、ヒカリと幸太はウンウンと頷きながら統夜たちの演奏を聴いていた。
零とレオは統夜たちの演奏を聴きながら笑みを浮かべており、戒人とアキトは、興奮しながら盛り上がっていた。
奏夜、穂乃果、海未、ことりの4人も、楽しげな感じで演奏を聴いていた。
憂と純は手拍子を叩きながら演奏を盛り上げていた。
そして、舞台袖にいる和とさわ子は、幸せそうな表情で演奏を聴いていた。
それだけではなく、統夜たちの演奏を聴いている他の観客たちも、心の底から演奏を楽しんでいた。
この時、統夜は考えていた。
この時間が終わることなく続いて欲しいと。
それだけ今回の演奏に手応えを感じており、統夜たち6人の気持ちは1つになっていた。
それは統夜だけではなく、唯たちも同じ気持ちであり、この時間がいつまでも続けばいいのにと思っていた。
しかし、無情にも現実はそれを許してはくれず、大歓声の中最後の曲は終わり、最高の結果となったライブは幕を閉じたのであった。
※※※
ライブが終了し、機材も含めて全ての撤収を終えた統夜たちは部室に戻ってきた。
統夜たちは並んで地べたに座り込むと、ライブ成功の余韻に浸っていた。
「……大成功……だよね?」
「なんか……あっという間だったな……」
「そうだな。それは俺も思ったよ」
今回のライブが最高に楽しかったからなのか、ライブの時間があっという間に過ぎ去ってしまったのであった。
「ちゃんと演奏出来たかどうか、全然覚えてないわ……」
「……っていうか、Tシャツのサプライズで全部吹っ飛んだ……」
「私もです……。もう、何が何だか……」
統夜たちはライブ冒頭にいきなり行われたTシャツのサプライズに驚いていたため、頭が真っ白になっていたのである。
(……俺も、ちゃんと演奏出来たか覚えてないや……)
統夜もこんな気持ちになるのは初めてであり、ライブの時の記憶が曖昧になっていた。
《やれやれ、お前もか。俺様が聞く限りは今までで1番良かったと思ったがな》
(それ、後でみんなに聞かせてやれ。喜ぶと思うから)
イルバは素直に統夜たちの演奏を評価していたのだが、それを言葉にはせず、統夜にだけテレパシーで伝えていた。
「……でも、すっごく楽しかったよね!」
「今までで最高のライブだったな!」
「みんなの演奏もバッチリ合ってたし」
『まぁ、俺様も良かったと思うぜ』
「あぁ。本当に完璧な演奏だったよ」
「エヘヘ……。やーくんとイルイルに褒められたぁ♪」
イルバは先ほど思っていたことを唯たちに伝えて、統夜もそれに同意していた。
唯はそのことに喜んでいたのだが、イルバはあえてあだ名を言われても何も言わなかった。
「……ギー太も喜んでるんじゃないのか?」
「うん!エリザベスもね!」
「エリザベスぅ♪」
澪は自分のベースに抱きついていた。
エリザベスというのは唯が命名したのだが、何だかんだ言いながらも澪はその名前が気に入ったのであった。
「私のむったんだって!」
梓は自分のギターをむったんと名付けて対抗していた。
「おぉ!梓のギターはむったんっていうのか」
「ムスタングだからむったんです!」
「ウフフ……♪」
「やーくんのギターは……」
「名付けなくていいからな」
統夜は自分のギターに変な名前をつけられることを嫌がっていた。
「ねぇねぇ!この後何する?」
「とりあえず、ケーキが食べたいです!」
「おぉ、部費ならあるぞ♪」
「ダメよぉ。私持ってきてるもん!」
紬は自分の持ってきたケーキを食べて欲しいのか、足をパタパタとさせていた。
「やったぁ♪それ食べながら次のことを考えよう!」
「次は……クリスマスパーティーだよな!」
「初詣に行きましょう!」
「それから……次の新歓ライブか……」
「また学校に泊まり込んじゃおっか♪」
「今度はさわちゃんも誘おうよ!」
「いいですね!それ!」
唯たちの語る未来はこれから決して起こることのない未来であった。
『……おい、お前ら。それは……』
「イルバ」
統夜はこれからのことを嬉々として語る唯たちを止めようとするイルバを制した。
この時、イルバはその未来がないとわかってて言っていることを察したため、口をつぐんでいた。
「夏になってもクーラーあるし♪」
「合宿もあるし♪」
「楽しみだねぇ♪」
唯たちはあるはずのない未来を語ることをやめようとはしなかった。
統夜はその言葉を1つ1つ反芻していくうちに胸の痛みを覚え、やるせない気持ちになっていた。
来年には統夜たちは卒業することを知っているため、言葉を1つ1つ噛み締めていると、次なんてものはないことを思い知らされるため、切ない気持ちになっていったのである。
「その次はねぇ」
「えっと……その次はですねぇ」
「……って!次はないない」
こう未来を語ることを制止する律の瞳にはうっすらと涙がにじんでいた。
「来年の学園祭は……もっともっと上手くなってるよぉ……?」
こう語る唯の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。
「お前、留年する気か?高校でやる学園祭はもうないの」
「そっかぁ……。それは残念だねぇ……」
「ヤダヤダぁ!!」
紬はまるで子供のように駄々をこねながら、大粒の涙を流していた。
「ムギ先輩、ワガママ言わないで。唯先輩も子供みたいに泣かないでください」
「これは汗だよぉ……!うぅっ!」
唯と紬は我慢出来ずに泣き始めてしまった。
「梓……。俺だって嫌だよ……。これが最後だなんて……!くっ!」
統夜も軽音部での日々はかけがえのないものであるため、最後の学園祭というのが納得出来ず、涙をこらえることが出来なかった。
「統夜先輩……」
梓は、統夜がここまで涙を流すとは思っていなかったので、驚きを隠せなかったのだが、なんて言葉をかけていいのかわからなかった。
「み〜お〜。リコピーン!」
律は顔を伏せて泣いている澪を笑わせようとこんなことを言っていた。
「……ぷっ!ふふ……律だって泣いてるくせに」
「あたしのも汗だ!」
律は泣いてると認めようとしなかったが、澪と共に笑い合っていた。
「ほら……ムギ先輩も」
梓はハンカチを取り出すと、ポロポロと泣いている紬の涙を拭いていた。
「梓ちゃん……。グスッ……ありがどぉ!」
「ムギ先輩。大丈夫ですから、落ち着いて」
まだ卒業まで時間のある梓は統夜たちがいなくなるということが実感出来てないのか、1人だけ涙を流すことはなく、冷静だった。
「……良かったよな!……本当に良かったよな!!」
「うん!本当に良かった!」
「私、みなさんと演奏出来て……幸せです!」
「俺も……。みんなと出会えて、一緒にライブが出来て……幸せだぜ」
「ヒック……。グスッ……やーぐぅーん!!」
唯が涙をポロポロとこぼしながら統夜に抱きつくと、他のみんながそれに続いて一斉に抱きついていた。
「ちょ……!?唯、おま!鼻水鼻水!!」
唯は涙と共に鼻水も出ていたため、統夜はその状態で抱きつかれるのは鼻水がつきそうで焦っていた。
「あぅぅ……。ムギぢゃーん!」
「アハハ……鼻水ぅ!」
「汚い!アハハ!」
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
「リコピーン!」
「アハハハハ……」
統夜たちの涙と笑い声が、夕焼けの日差しに溶けていった……。
この時、統夜は胸に強く刻み込んでいた。
この日、夕焼け空の下でみんなで流したこの涙を絶対に忘れないと……。
この想いは、統夜を魔戒騎士としてさらに成長させるということを、確信させるには十分だった。
こうして、統夜たちは気が済んで泣き止むまで、ひたすら泣き続けていた。
〜さわ子 side〜
唯ちゃんたちのライブが終わってしばらく経ち、私は真鍋さんと一緒に音楽準備室に向かっていた。
「唯たち……。すごく驚いてましたね」
「ウフフ……。ドッキリTシャツ作戦大成功!」
うんうん。我ながら完璧な作戦だったと思うわ!
唯ちゃんたち、すっごく驚いてたもんね……。
ウフフ……。これでみんなも……。
〜さわ子の妄想〜
『さわちゃん!やっぱりさわちゃんは凄いよ!』
『あぁ!さわ子先生以上の先生に出会ったことがないよ!』
『えぇ。さわ子先生は最高だわ!』
『あぁ、あたしもそう思う!さわちゃんは最高だよ!』
『はい!さわ子先生はすごく素敵です!』
『参ったな……。俺、鋼牙さんと同じくらい……。いや、それ以上に先生のことを尊敬してるよ!』
『やれやれ。お前さんがここまで優秀だったとは、俺様も驚きだぜ!』
『『『『『『『さわ子!さわ子!さわ子!さわ子!』』』』』』』
__妄想終了。
「みんな!お疲れ様!」
こんな妄想をした後、私は音楽準備室のドアを開けた。
だけど、中はとても静かだった。
「……ん?」
「あら?」
私たちはくっついてすやすや眠っているみんなを発見した、
「……幸せそうな顔……」
「クスッ……。そうね……」
みんな手を繋ぎながら眠っており、そんなみんなの姿を見た私の表情は緩んでいた。
『……おい、お前ら。静かにしろよ。こいつら泣き疲れてさっき寝たばかりなんだからな』
ずっとみんなの様子を見てたであろうイルバは、みんなが眠った経緯を説明してくれた。
「……えぇ。わかってるわよ」
みんな幸せそうに寝てるんだもん。しばらくそっとしておきましょう……。
真鍋さんも私と同じ気持ちだったのか、何も言わずに一緒に音楽準備室を後にした。
……続く。
__次回予告__
『学園祭は無事に終わったのはいいが、こんなことをやるとはな。次回、「写真」。やれやれ、これは面倒なことが起きそうだぜ!』
統夜たちにとって最後となる学園祭が無事に終わりました。
夕焼け空の下、みんなで泣いたことは一生忘れることの出来ない思い出になると思います。
今回は様々なキャラが統夜たちのライブを聴きに来てました。
その中でも穂乃果たちは、統夜たちのライブを見て何か感じるものがありました。
これこそが、次回作の伏線になっていくと思います(笑)
今回で学園祭編は終わりなので、そろそろヒロインを決めていこうかなと思っています。
もう僕の中でヒロインをどうするかは決めましたが、他の案があれば考えようかなと思っています。
ヒロインは96話か97話あたりで明らかにしようと思っていますので、ご期待ください!
さて、次回は再びほのぼのとした日常編となっています。
けいおん!!の学園祭回は神回でしたが、次回は髪回となっております(笑)
それでは、次回をお楽しみに!