機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ異伝 ~死の戦記~ <完結> 作:二円
頭の中を光が走った。
真っ暗闇の中でずっと佇んでいたカルタが、
ようやく感じ取れた変化だった。
それが何かは分からなかった。
だがそれが合図だったのか、
光の濁流がカルタの頭の中を勢いよく流れていく。
頭の中に何かが入ってくる。
今までそのような経験がないカルタは絶叫した。
不思議な事に声が出なかった。
一体何が起きているのか訳が分からなかった。
もしも流れる光の濁流が遅ければ、
それがプログラムの一文である事が分かるかもしれないが、
カルタは気づかなかった。
やがて光の濁流が頭の中を全て流れていったのを、
カルタは感覚で理解した。
何が起きたのか?
それを考える余裕が出来た時だった。
「システム起動」
突然頭の中に表示された文字を口に出していた。
何故そんな事を言ったのか分からない。
そもそも何故頭の中でそのような文字が出てきたのか?
謎は深まるばかりだった。
やがて周囲の闇を光を照らし、
景色が映し出された。
気がつけば、
そこは何処かのMS格納庫らしき場所が目に映った。
視線の高さからして、
どうやらMSに搭乗したままだとカルタは判断したが、
此処が何処なのか全く心当たりが無かった。
手掛かりを得ようと辺りを見渡した時だった。
「カルタ様!」
「気がつかれましたか!」
カルタの部下の歓喜の声が聞えた。
声のする方に向けば、
MS二機が立っている方だった。
MSに搭乗しているらしいと判断するカルタは、
そこで違和感に気づくも、
まずは状況を確認しようと部下に話しかけた。
「貴方達、
此処は一体?」
カルタの問いに部下達は詰まった。
それに気づいたカルタは厳しく問い詰めようとした時だった。
「それは私が答えよう」
聞いた事がある声だった。
その方向に下向けば、
何かを操作している技術仕官と、
カルタの方を見ている男がいた。
その男の事をカルタは知っている。
「マクギリス……」
カルタの幼馴染でもあり気になる存在であるマクギリスだった。
「カルタ、
君は最近の出来事を覚えているか?」
「最近?」
マクギリスに言われて、
思い出そうとする。
「あっ……」
頭の中で、
過去の記憶がフラッシュバックされた。
そこはミレニアム島での戦闘だった。
降下して、
敵の前で名乗りを上げている途中に攻撃され、
激怒するカルタの姿が映し出される。
「おのれ……」
続いて映し出されたのは、
鉄槌を下そうと突撃する途中で、
足元が爆発して転倒するグレイズリッターの姿。
「おのれっ……」
最後に映し出されたのは、
青いグレイズらしきMSの攻撃を受ける寸前の、
グレイズリッターの姿だった。
「おのれぇ!」
ようやくカルタは思い出した。
「私は敗れたというのか!
作法も知らない野蛮人に!
カルタ・イシューが!」
カルタは叫んだ。
正々堂々と戦って負けたのならば、
ここまで文句は言わなかった。
だが卑怯な手を使われて負けたとなれば、
決して認められるものではなかった。
すぐに奴らを追わねば。
そう思っていた時だった。
ようやく違和感に気づいた。
(コクピットが見えない?
そもそも私は何を通してこの景色を見ている?)
MSに搭乗しているならば、
コクピットにいる事になる。
それならば当然、
計器類が見えている筈で、
先程からそれが見えない。
それどころか、
体を動かそうとしても、
動かしている感覚が無かった。
「……マクギリス。
私に何があったの?」
自身の身に起きた事を知っているであろうマクギリスに、
カルタは聞く事にした。
「カルタ、
君はミレニアム島での戦闘で負傷し、
君の部下達が君を連れて撤退、
すぐに再生医療を受ける事になった。
傷は癒えたが、
脳の損傷が酷かった影響か、
意識が戻る事は無かった」
「嘘おっしゃい!
それならば何故こんな所にいる!」
「嘘ではない。
君の部下達が君の意識を取り戻すため、
あらゆる伝手を頼って捜しても、
その方法を見つける事が出来なかった」
「申し訳ありませんカルタ様!」
「我らが不甲斐ないばかりに!」
カルタの部下が謝っているのが聞えたが、
それを受け入れている余裕がカルタには無かった。
何か嫌な予感がする。
それでも聞かなければならなかった。
「君の意識を取り戻す方法を私は知っていた。
君の部下達にそれを提示した。
最初は断っていたが、
君を救うためと了承したよ。
この場合は事後承諾と言うべきか」
「マクギリス、
私に何をしたの!」
「阿頼耶識だ。
君に阿頼耶識システムを施した」
「何……ですって!?」
カルタは言葉を失った。
(マクギリスは何を言っている?
阿頼耶識だと!?
馬鹿な!
そんな事!)
カルタは認める事が出来なかった。
自身にそんなものが仕込まれるなど、
認められなかった。
しかし、
いくら目を凝らしても自身の肉体が見えない。
代わりにMSのモニターの情報が、
ディスプレイにではなく目に映っている。
認めるしかなかった。
自身は機体と直結している事に。
「マクギリスゥ!」
カルタは再び叫びだした。
今度は怒りの矛先をマクギリスに向けた。
「失った脳機能を機械で補う事で、
君の意識が回復したんだ」
「そんな事!
私は望んではいなかった!
宇宙ネズミと同じ存在になるのならば、
死んだ方がマシだった!」
「カルタ様!」
カルタの部下の悲痛な叫びにも、
怒りに染まったカルタの心には響かなかった。
「私を殺せマクギリス!
でなければ貴方を殺すわよ!
宇宙ネズミになってまで私は生きようとは思ない!」
「イシュー家の名に泥を塗ったままでか?」
「何ですって!?」
「あの戦いでの君の独断行動と結果で、
今まで築いてきたイシュー家の名声は地に落ちたといっていい。
君はその汚名をすすがずに果てる事を望むのか?」
「それは……」
イシュー家という言葉を聞き、
ようやくカルタは怒りを抑えた。
だが怒りの炎が消えたわけではなく、
あくまでも強火から弱火になっただけに過ぎない。
「確かに君に断り無く手術を行った事は謝る。
私は君を助けたかった。
君は私にとって、
手の届かない憧れのような存在だった。
覚えているか?
私が君とガエリオとの最初の出会いを。
誰もが私を避け、
下等な存在だと見下していた時、
君だけが哀れみでも情けでもなく、
私を平等に扱ってくれた」
「……感謝されるような事じゃないわ」
「私の目に映る君は高潔だった。
君に屈辱に塗れたまま終わってほしくなかった」
「マクギリス……」
「許してくれとは言わない。
如何なる罵倒も甘んじて受けよう。
だがそのために君に阿頼耶識システムを施した訳ではない」
「どういう事?」
「君は誤解しているようだが、
阿頼耶識システムは本来、
選ばれし者のみが授かる栄誉でもあった」
「栄誉ですって!?
馬鹿な!
それならば何故禁忌とする?」
カルタにはマクギリスの言う事が信じられなかった。
禁忌とされる阿頼耶識システムを栄誉と呼ぶなど、
施された自身に対する慰めにしか聞えなかった。
「三百年前、
長く続く厄祭戦に人々は疲弊し、
人類存亡の危機に瀕していた。
戦争を終わらせるには、
戦力の均衡を破る圧倒的な力で、
人間の能力を超えた力をもって終わらせる必要があった。
同じ志を持つ者達が集まり、
国や経済圏の枠にとらわれない独自の組織が編成された。
そして彼等は、
人類最強の戦力であるMSの性能を極限に高めるシステム、
すなわち阿頼耶識システムを作り上げた。
そしてそれを発揮できるMS、
ガンダム・フレームも作り上げた。
阿頼耶識システムを施すという事は、
人である事を捨てるという事。
彼等はそれを受け入れ、
その力をもって厄祭戦を終わらせた。
彼等の組織は後にギャラルホルンと呼ばれる事になる。
当然セブンスターズと呼ばれる事になる彼等も、
阿頼耶識システムを施していた事になる。
イシュー家も例外ではない。
阿頼耶識システムは、
人類を救った栄誉あるものだ」
「馬鹿な……」
カルタは絶句した。
それが事実ならば、
何故賞賛こそあれど険悪されるのか?
そんなカルタの疑問を読み取ったのか、
マクギリスは答えた。
「しかし栄誉ある阿頼耶識システムの力に、
彼等は恐怖を覚えた。
これが世の中に広まれば、
今度こそ人類は滅亡する。
だからといって圧倒的な力を有するそれを、
捨て去る事も出来ない。
そこで、
阿頼耶識システムを禁忌として広め、
険悪させるように意識誘導した。
こうする事で、
世の中に広まる事を防いだわけだが、
まさか宇宙ネズミ共に施されるようになるとは、
彼等も思いもしなかっただろうな」
「……マクギリス、
何故貴方がそれを知っているの?」
先程の疑問が解けたが、
新たな疑問が現れカルタは困惑した。
先程の話は、
明らかにトップシークレットと呼ぶべきものである。
カルタ自身知らなかったのだから、
おそらくセブンスターズの一族当主クラスの極限られた者のみが知る内容だ。
現当主ではないマクギリスが何故それを知っているのか?
カルタは困惑した。
「それはファリド家には隠された使命を持っているからだ」
「使命ですって?」
「阿頼耶識システムを施すに相応しい人物を見極める事だ」
「何ですって!」
「三百年経って、
ギャラルホルンは腐敗し、
今や世界の調停役としての機能は無く、
権力闘争の温床と化してしまった。
最早かつての面影は無くなってしまった。
このままでは厄祭戦レベルの戦争が起きた時に、
止める事など不可能だ。
そうならないためにも、
かつてのギャラルホルンの姿を取り戻すためにも、
変革を促す必要がある。
そのためには、
それを行うに相応しい人物を見定め、
相応しい人物だと判断すれば、
阿頼耶識システムを施し、
その人物を支える事。
それがファリド家には隠された使命だった。
私はそれに相応しい人物を既に見つけていた。
カルタ、
君の事だ」
「私が?」
「そうだ。
君の高潔なる精神。
阿頼耶識システムを施すに相応しい人物だと確信している。
その力をもって、
ギャラルホルンを正しき方向に導いて欲しい。
そして阿頼耶識を纏ったその身をもって示すんだ。
人の身である事を捨てて人類を救ったギャラルホルンの原点を。
私も出来るだけの手伝いをする事を約束しよう」
「ファリド特務三佐の言うとおりです!
カルタ様以外に相応しい人物はおりません!」
「我等もカルタ様の覇道を支えてみせます!」
カルタは考えていた。
(まさかマクギリスにそこまで評価されていたなんて。
そしてチャンスを与えてくれた。
これを無碍には出来ない。
でも、
どうしてもやらなければならない事がある!)
「……御免なさいマクギリス。
その話は今は受け取る事は出来ないわ。
私にはどうしてもやらなければならない事があるの」
「それは?」
「鉄華団よ。
宇宙ネズミ共を追うわ。
クーデリア・藍那・バーンスタインと蒔苗東護ノ介の身柄を押さえ、
奴等との決着をつけない限り、
イシュー家の汚名をすすげない。
まずはそれからよ。
マクギリス、
奴等は今何処にいるの?」
「残念ながら、
ミレニアム島沖を出てからは消息が掴めていない」
「馬鹿な!
衛星監視網はどうなっている!」
「内部に協力者がいるという事だろう。
これこそが、
ギャラルホルンの腐敗の何よりの証拠だ」
「おのれ獅子身中の虫め!」
カルタは激怒した。
身内にスパイがいる事が許せなかった。
「向う先は分かっている。
エドモントンにある議事堂だ。
そこで待ち構えていれば、
向こうからやってくる。
それに備えて、
MS部隊が配置される事になっている。
君の部隊が配置されるように手配しておこう」
「マクギリス、
余計な……」
気遣いは無用と言おうとして、
マクギリスが待ったを掛けた。
「これは気遣いではない。
手伝いだ。
ファリド家の使命としてではない。
君に憧れている一人の男として、
君を支えたい」
「な、何を言っている!?」
まるで愛の告白のような台詞に、
カルタは動揺してしまった。
実はカルタはマクギリスに出会った当初から思いを寄せていた。
そのため先程の言葉に強く反応してしまった。
「受け取って貰えないか?」
(ええい!
そういう言い方をしてくるんじゃないわよ!
こ、断れないじゃない!)
「わ、分かったわ。
あなたがそこまで言うのなら、
任せるわ」
「ありがとうカルタ。
必ず君を送り届けてみせる」
「カルタ様!
我等もついて参ります!」
「今度こそ奴等を倒しましょう!」
「元よりその心算よ。
マクギリス良いわよね?」
「勿論だとも」
「感謝しますファリド特務三佐!」
「必ず吉報を届けに戻ります!」
「期待しよう。
では私は早速手続きをしなければ」
カルタ達のMSを、
エドモントンの警備として配置させるための手続きをするために、
この場を後にしようとマクギリスは歩き出す。
「待ちなさいマクギリス」
今度はカルタから待ったが掛けられた。
「どうしたんだカルタ?
私はこれから手続きをしたいのだが?」
「聞きたい事があるの。
このMSは何なの?
胴体は私が乗っていたもののようだけど?」
カルタは自身の機体の全体図を表示させていた。
その姿は明らかにグレイズリッターではなかった。
見た事もないパーツが取り付けられている。
特に目を引くのが両肩のシールドで、
先にはクローが取りつけられていた。
「その事か。
グレイズは元々阿頼耶識システムに対応しているMSではない。
だから阿頼耶識システムを施した君に対応出来るように、
コクピットを改造し、
他の部分に専用パーツを特別に用意したものだ。
胴体に君が乗っていたグレイズリッターをベースにしたのは、
乗りなれた機体の方が扱いやすいだろうという私なりの配慮だ」
「……そういう事。
ここまでくるとグレイズリッターと呼ぶ訳にはいかないわね」
マクギリスはカルタが呼び止めた理由を察した。
部隊を配置する際、
機体名とコールサインを登録する必要がある。
カルタは自身が考えた機体名とコールサインで登録して欲しいようだ。
「ギャラルホルンの腐敗には、
私も憤りを覚えるわ。
それに立ち向かうという意味を込めて、
この機体を『グレイズネメシス』と名付けるわ!
構わないわね?」
「素晴らしい名前ですカルタ様!」
「カルタ様の決意が伝わります!」
カルタの部下が賛同する。
マクギリスは少し考える振りをした。
(……グレイズネメシスか。
『グレイズカルタ』と登録する心算だったが、
本人の要望だ。
その位叶えさせてやろう)
「……ネメシス、
義憤を意味する女神の名前だったか。
素晴らしい名前だ。
分かった。
その名前で登録しておこう。
コールサインもネメシスだな?」
「分かってるじゃない。
頼むわよマクギリス」
「任せてくれカルタ。
君に最高の舞台を用意しよう」
今度こそこの場を去るために、
唯一の出入り口であるエレベーターに向って、
マクギリスは歩き出した。
(喜ぶといいカルタ。
雪辱を晴らすための最高の舞台を用意しよう。
そして見せつけてやれ。
君の存在が、
ギャラルホルンを変える)
カルタは上機嫌であった。
マクギリスの手配で問題なくエドモントン市東側に配置され待機中、
マクギリスから送られた蒔苗の位置情報を頼りに、
三機とも市内に向け出陣した。
MSを市内に持ち込むという問題行動に、
カルタは何の問題も抱かなかった。
蒔苗が乗っている装甲車両を発見し、
護衛のMWを無力化した。
その内の一台を掴み、
鉄華団全員に通信出来るように指示を出した。
破壊しなかったのは伝令役が必要だったからだ。
その内容は、
降伏勧告ではなく、
決闘の呼び掛けだった。
完全なる決着をつけたいなら、
MSでの決闘が望ましい。
そのためには、
彼等の護衛目標であるクーデリアと蒔苗の身柄を、
こちらで押さえておく必要がある。
マクギリスからのアドバイスを受けて実行した作戦が上手くいき、
決闘に持ち込む事が出来た。
そして今、
カルタは三日月を連れて自身が決めた決闘場所、
議事堂前に向っていた。
議事堂前にはマスコミが待機している。
そこで自身の戦う姿を見せ、
その存在を示す。
それがカルタの考えだった。
(今に見てなさい宇宙ネズミ共。
この力で叩き潰してくれるわ)
二機は今、
厄祭戦の戦没者慰霊地でもあり、
エドモントン最大の公営墓地でもある、
『エドモントン・セントラル・メモリアルホール』付近を通っていた。
公営墓地を横切ろうとしてはいないものの、
MSのスラスターの風圧で、
周囲に植えられた木々が大きく揺れ、
葉を散らしていた。
それを見たカルタは、
スラスターの勢いを弱めた。
死者の眠りを妨げる行動は慎むべきという配慮だった。
後からついてきているMSもこちらに合わせるだろう、
カルタはそう思っていた。
「激突注意!」
網膜に表示された文字をスピーカーを通してカルタは叫んだ。
慌ててグレイズネメシスを後方に向けると、
そこにはレンチメイスを振るおうと突撃するバルバトスの姿があった。
「何!?」
スピードを緩めたグレイズネメシスの隙を突いて、
バルバトスが不意打ちを仕掛けてきたのだ。
もしもカルタが生身のままならば、
そのまま動けずに攻撃を受けていただろう。
しかし阿頼耶識システムを施していたカルタは、
思わず広い場所へ避けようという条件反射が働いて、
バルバトスの攻撃をかわす事に成功した。
「避けた?
あの動きは阿頼耶識か」
三日月は避けられた事よりも、
相手が阿頼耶識使いである事に驚いていた。
ミレニアム島での戦闘では、
間違いなく相手は阿頼耶識使いでは無かった事は、
三日月自身確認していた。
にもかかわらず、
今の相手の動きは阿頼耶識システムでなければ説明つかない動きだった。
「まあいいさ。
殺すだけだ」
三日月は深く考えず、
相手を追うために公営墓地内に入った。
「貴様!
まさか此処で戦う心算!?
此処を何処だと……」
「あんたが死ぬ所だ」
公営墓地で戦うわけにはいかないと、
すぐに出て行こうとした所を、
バルバトスが踏み込んだために、
カルタは抗議しようとしたが、
三日月はそれを一蹴し、
レンチメイスを振うも、
グレイズネメシスは後ろへ大きくジャンプしてこれを避けた。
振るったレンチメイスが設置された墓石を粉砕するのを見て、
カルタは激怒した。
「おのれぇ!
何という非道!
もうよい!
此処で決着をつけてくれる!」
網膜に表示される戦闘モード起動という文字を選び、
グレイズネメシスの戦闘システムを起動させた。
「戦闘モード起動!」
カルタの叫びとともに、
グレイズネメシスのフェイスカバーが開かれ、
赤く発行するセンサーボールが見える。
そして足先の爪が展開され、
グレイズネメシスの戦闘モードが移行される。
グレイズネメシスには、
通常モードと戦闘モードが存在している。
これは失われた脳機能を、
MSとリンクする事で補っているカルタの負担を軽減するためである。
戦闘では機体を動かすための負担が大きいため、
少しでも負担を軽くするために、
戦闘ではない場合には、
通常モードで戦闘にしか使用しない機能を停止する事で、
負担を軽減している。
勿論、
戦闘モードでも負担を軽減する工夫がされている。
それは戦闘に必要ないと判断される脳機能に制限を掛けて、
負担に耐える脳のキャパシティを増やすというものだった。
それはつまり、
カルタの人としての思考と行動が制限される事を意味していた。
MSと直結しているに等しいカルタはその事に気づいていなかった。
先程の叫びは機体の状態を阿頼耶識システムがカルタを通して伝えたもので、
決して音声認識で起動する類ではない。
本人の意思に関係なく勝手に喋らされている。
最早MSパイロットというよりも、
生体ナビゲーターと言ってもよかった。
「
[意訳:手加減はしない!
恐怖で恐れおののくがいい!]」
言語が何故か四字熟語に省略された状態でカルタは叫ぶ。
言語機能が制限され、
それを不審に思う思考も制限されているために、
カルタは異常に気づかない。
「何言ってるか全然分からない」
四字熟語を知らない三日月は、
カルタの言動を理解出来なかったが、
警戒を怠らずレンチメイスを構える。
グレイズネメシスは背中に二本の大剣が懸架しており、
右の大剣を取り出した。
大剣を持っている腕ごと叩き潰そうとバルバトスは、
レンチメイスを構えて突撃しようとした時、
グレイズネメシスは持っていた大剣が振るわれた。
間合いが遠く当たる事はなく、
空振りに終わると思われた。
その時、
大剣の刃の部分が等間隔に分裂した。
その奇妙な動きに、
バルバトスは動きを止める。
「剣が取れた?
いや違う!」
三日月は目を凝らして分裂した刃を見た。
刃の部分がワイヤーで繋がれているのが見えた。
グレイズネメシスの手が動き、
それに連動して繋がれた刃達がバルバトスを襲う。
「ちっ!」
咄嗟にレンチメイスで機体の前面を隠す。
間一髪、
本体には当たらず、
レンチメイスに刃が直撃し、
斬撃というよりも打撃のような衝撃を受けた。
「あの武器、
厄介だな」
三日月はグレイズネメシスの持つ武器に注目した。
唯の大剣ではなかった。
刃の部分がワイヤーで繋がれつつ等間隔に分裂し、
鞭のように変化するギミックを備えた剣、
蛇腹剣だったのだ。
またもグレイズネメシスの手が動く。
それに連動して繋がれた刃達がくねりだし、
バルバトスに再び襲い掛かる。
先程と同じく、
レンチメイスで機体の前面を隠す。
しかし刃はレンチメイスに当たらず、
右肩に直撃しバルバトスはふらついた。
それを見て気を良くしたのか、
蛇腹剣の攻撃が続けて行われた。
何とか避けようとするも通常の剣とは違い、
蛇腹剣は鞭のようにしならせ、
不規則な軌道を描くために動きが読めず避け辛い。
今度は左脚部に命中し、
バルバトスは膝をついた。
「あのクネクネ、
邪魔だな」
三日月は蛇腹剣の対処を考えていた。
このままでは手を出せないまま負ける。
懐に入るまで一気に近づくか?
蛇腹剣の刃を掴み、
鞭としての機能を無力化させるか?
「
[意訳:この素早い攻撃の前に、
バラバラになるがいい!]」
膝をついたバルバトスを見てチャンスと思ったカルタは、
トドメを刺すべく、
グレイズネメシスの腕を大きく振り上げた。
振り下ろす際の勢いを強める事で威力を上げるためだ。
「そこだ!」
バルバトスはレンチメイスをグレイズネメシスに向けて投げた。
「
[意訳:何だと!]」
これにはカルタも驚きを隠せなかった。
思わず投げてきたレンチメイスに向って蛇腹剣を振り下ろし、
地面に叩き落された。
蛇腹剣が振り下ろされると同時にバルバトスは突撃した。
もう一度振るわれる前に懐に入る心算だった。
万が一振るわれたとしても、
大したダメージにはならないと三日月は考えていた。
鞭のような攻撃は適切な距離で振るわなければ、
その一撃の威力は下がってしまうからだ。
背中に懸架されている刀を取り出し、
切っ先をコクピットに向け突き刺そうとした。
この動きをカルタは黙って見ている筈がなかった。
残っていた左の蛇腹剣を取り出してなぎ払い、
バルバトスの刀の突きの軌道を逸らした。
もう一突きしようかと思った三日月だったが、
グレイズネメシスの右手が動いているのを見て、
バルバトスを後退させる。
先程の攻撃で蛇腹剣の間合いを計っっていた三日月は、
本体に直撃されない距離まで下がった。
間一髪、
バルバトスのいた場所に、
グレイズネメシスの右手で操作していた蛇腹剣が巻きつこうとしていた。
後数秒遅れていたら、
脚部が巻きつかれ動きを封じられていただろう。
結局、
バルバトスの突撃は失敗してしまった。
手持ちの武器は刀のみ。
対してグレイズネメシスは両手に蛇腹剣を持ち、
右手の方は鞭状に伸ばしており、
リーチが長い。
状況は先程よりも悪化していた。
「でもこれ扱いづらいんだよなあ」
三日月は刀を気に入ってなかったが、
レンチメイスはグレイズネメシスの近くに落ちているために拾えない。
刀でどうにかするしかなかった。
「……そう言えば、
シノが言ってたっけ。
刀は切る事が出来る、
叩き潰す武器じゃないって」
ミレニアム島での戦闘前に、
シノが言っていた事を思い出した。
切る事が出来れば、
蛇腹剣に対応出来る。
「でもどうやって?」
刀で切るにはコツがいる。
それを三日月は知らなかったが、
包丁での切り方のコツは知っていた。
それは昔、
アトラの料理の手伝いをして、
野菜を力いっぱい押して切っていた時だった。
「ちょっと三日月!
それは押して切るものじゃないの!
手前に引くか、
向こうに押すかしながら切り下げるものなの!
危ないから私がやる!」
そう言ってアトラが手本を見せてくれた事を思い出した。
(手前に引くか、
向こうに押すかしながら切り下げるか……)
「
[意訳:隙あり!]」
好機と見たカルタは、
右手の蛇腹剣を振るった。
狙いはバルバトスではない。
バルバトスの持つ刀だった。
刀身に蛇腹剣がグルリと巻かれる。
刀を巻きつけ動きを封じる心算だろう。
本体には届かないが、
刀を巻きつけるには十分届いていた。
拘束から逃れるため、
咄嗟にバルバトスは刀を引いた。
偶然にもそれはアトラのアドバイスを取り入れた動きだった。
すると驚くべき事が起きた。
巻きついていた蛇腹剣の刃のワイヤー部分がプツリと切れ、
繋がっていた刃達が地面へと落ちていったのだ。
「
[意訳:馬鹿な!]」
これにはカルタも三日月も驚いた。
カルタは武器が破損した事に。
三日月は切る事が出来た事に。
「……そっか。
これが切るって事か。
ありがとうアトラ。
お陰でコレの使い方が分かった」
先程の感覚を三日月は覚えた。
刀で切るという事を感覚で理解したのだ。
バルバトスは刀を構え直し、
再び突撃を開始した。
グレイズネメシスは破損した右手の蛇腹剣を捨て、
残った左手の蛇腹剣を構え対峙する。
鞭のように伸ばそうとはしていなかった。
距離が既に近すぎていたからだ。
バルバトスの刀とグレイズネメシスの蛇腹剣がぶつかり合うと思われた時、
カルタが叫びだした。
「
[意訳:策に掛かったな!
宇宙ネズミめ!]」
何とグレイズネメシスの肩シールドが展開し、
サブアームのように動き出し、
バルバトスを挟み込むかのように攻撃を仕掛けてきたのだ。
肩シールドの先に取り付けられているクローが高速回転を始め、
バルバトスを穿とうとする。
左右からの攻撃にバルバトスは刀を捨て、
肩シールドの端を掴み攻撃を防ぐが完全に防いではいなかった。
ガンダム・フレームの高い出力を生かしてのパワー以上に、
グレイズネメシスのパワーが上だった。
徐々に徐々に回転するクローが、
バルバトスのコクピットに近づいている。
コクピットに穿たれるのは時間の問題だった。
しかしカルタはそれで決着をつける心算は無かった。
蛇腹剣の切っ先をバルバトスに向ける。
蛇腹剣で突き刺しトドメを刺す心算だった。
「
[意訳:報いを受けるがいい!
宇宙ネズミめ!]」
カルタは勝利を確信し高らかに叫んだ。
「黙れよ」
三日月の言葉に、
グレイズネメシスは動きを止めた。
怒気を孕んだ三日月の言葉に気圧されたわけではない。
敗者の最後の言葉を聞いてやろうという余裕だった。
「さっきから何言ってるか分かんないんだ。
でもアンタが勝った気になってるのは分かる。
ふざけるなよ。
オルガの邪魔したアンタに、
負ける訳が無いだろ?
徹底的に潰してやるよ。
なあ、
バルバトス?」
三日月の問いに、
バルバトスの目が輝いた。
それに気づかないカルタは、
三日月の言葉を唯の戯言と切り捨て、
蛇腹剣で突き刺そうとした。
正面のコクピットに迫る蛇腹剣の刃に、
バルバトスは何と抑えていた互いの肩シールドをずらし、
クローで刃を挟み込むかのように叩きつけて攻撃を逸らした。
互いのクローと刃がぶつかり、
カルタは慌ててクローの回転を止める。
幸い折れる事はなかったが、
クローの高速回転で幾分か刃が削れていたものの、
戦闘は可能だった。
折角のチャンスを逃してしまい、
カルタは悔しがった。
「
[意訳:姑息な手を!
次こそは仕留めてくれる!]」
そう宣言して、
ぶつかったままの互いの肩シールドを動かし、
視界を広げた。
その先にあったのは、
レンチメイスを大きく振り下ろそうとしたバルバトスの姿があった。
互いのクローをぶつけた後、
バルバトスは落ちていたレンチメイスを拾っていたのだ。
しかしグレイズネメシスは、
ぶつかった肩シールドが死角となっていてその動きが見えていなかった。
それが致命的な隙となった。
バルバトスの攻撃は、
グレイズネメシスの左肩上に直撃した。
レンチメイスの一撃は腕の間接部だけではなく、
肩シールドを動かすためのサブアームの間接部を歪ませ、
その衝撃に耐えられず地面に膝をついた。
「左腕損傷!」
機体に新たに表示された情報を、
阿頼耶識システムはカルタを通して叫ばせた。
(何たる事!
手傷を負わされるなんて!)
機体損傷の影響か、
制限されていた思考が緩和されていた。
(兎に角、
間合いから離れないと!)
バルバトスの追撃を避けるため、
グレイズネメシスは地面についた膝を起こすが、
ここでカルタはミスを犯した。
膝を起こすために、
蛇腹剣を杖代わりに支える道具として突き立ててしまったのだ。
気がついた時には既に遅く、
バルバトスの持つレンチメイスの先端が開口し、
グレイズネメシスの右腕間接部を挟み込んだ。
「右腕圧迫!」
また新たに表示された情報が、
カルタを通して叫ばれる。
凄まじい力で間接部が圧迫されていく。
(まさか、
負けるというの?
私が、
カルタ・イシューが!)
敗北に近づきつつある状況に、
カルタは必死に否定する。
(私は負けない、
負けられないのよ!)
グレイズネメシスの左脚部をバルバトスに向けて蹴り上げる。
足先の爪がバルバトスの顔面を襲うが、
バルバトスはレンチメイスを手放し、
しゃがむ事でこれを回避した。
レンチメイスが手放された事で、
右腕間接部が圧壊される事は免れた。
しかし蹴り上げた事で、
しゃがんだバルバトスが何をしているのか見えていなかった。
その事がカルタを次の地獄に突き落とす。
バルバトスは両方の肩シールドによる挟撃の際に捨てた刀を拾い、
グレイズネメシスの後ろに回り込み、
蹴る際の支えになっている右脚の間接に狙いを定め刀を振るった。
見事なまでに間接は切断され、
グレイズネメシスは地面に倒れ背中を強く打った。
「右脚破損!」
新たに表示された情報が、
カルタを通して叫ばれ、
機体を動かす事が困難になった。
(馬鹿な!
何故私が追い詰められている!?
こんなのは違う!
こうなるべきは私じゃない!)
戦況がどんどん不利に傾いていく事に、
カルタは焦り始めた。
どうにかしてバルバトスから離れようとするが、
片足が切断されて機体が倒れて起き上がれない状況では難しい。
見上げれば右側にバルバトスがいた。
バルバトスはグレイズネメシスの左脚部の関節部を、
力一杯込めて踏みつけた。
これにより左脚部間接はひしゃげてしまい、
左脚部は動かなくなってしまった。
「左脚損傷!」
更に増えた情報が、
カルタを通して叫ばれる。
歩行が不可能になり、
此処に至ってカルタは恐怖した。
(認めない!
こんな所で負ける筈がない!
力を得た私が、
チャンスを得た私が負ける筈がない!)
死ぬ事をカルタは恐れてはいない。
屈辱に塗れたまま負ける事をカルタは恐れていた。
バルバトスの猛攻はまだ続く。
今度はグレイズネメシスの左肩シールドのサブアームを踏みつけ、
左肩シールドを引き剥がし、
肩シールドの先にあるクローを、
左腕間接部目掛けて突き立てた。
歪んでいた左腕間接部は千切れ、
これにより左腕は動かなくなった。
「左腕破損!」
絶望的な情報がカルタを通して叫ばれ、
カルタは認めざるを得なかった。
勝負は決した。
両腕両足が機能しないグレイズネメシスに最早勝機は無い。
(馬鹿な……。
こんな所で……私は終わるのか?
折角……あの人の思いを……、
あの人から貰った力とチャンスを……、
無に帰すなんて……)
バルバトスが刀の切っ先をグレイズネメシスのコクピットに向けたまま、
刀を両手で振り上げる。
トドメを刺す心算だ。
(死にたくない!)
先程まで死を恐れていなかったカルタが、
死に恐怖した。
必死に逃げようとグレイズネメシスを動かそうにも、
手足を封じられた状態では、
逃げようが無かった。
「
[意訳:化け物め!
来るな!]」
必死に叫ぶも、
意味が分かっていない三日月に声は届かない。
「何言ってるか分からないって言ってるだろ?
もういいよ、
黙れよ」
三日月には喚き散らす騒音にしか聞えなかった。
(此処で!
こんな所で!
私は死ねないのよ!
死にたくないのよ!
私は!
わたしは!)
グレイズネメシスは大破寸前だった。
そのためにシステムもダウン寸前だった。
その影響か?
それとも恐怖に駆られたカルタの暴走か?
制限された脳機能が解除された。
これにより言語機能が回復され、
普通に話す事が出来る。
カルタは叫んだ。
「ワタシヴァアアアァァァ……!!」
それは言葉にならず悲鳴となった。
バルバトスが刀を突き立てたのだ。
今度こそカルタは意識を失うだけではなく、
命を失った。
それに伴いグレイズネメシスは機能を停止させ、
機体は完全に沈黙した。
カルタは最後に何を言いたかったのか?
それを知る機会は二度とない。
「ようやく黙った」
突き立てた刀を引き抜き、
挟み込んだレンチメイスを回収し終えた後、
三日月は安堵した。
それは敵を倒したからではなく、
意味不明の言葉を発する相手が沈黙したからだった。
「オルガは無事かな?」
三日月はオルガが捕らえられた方向に目を向けた。
市内突入前のビスケットからの指示で、
決闘終了後は速やかにアジーとラフタの方に加勢する事になっていた。
だがオルガの安否が気掛かりで直ぐ動けずにいた。
先程倒した相手の事は欠片も考えていなかった。
救出は成功したのか?
通信したかったが、
傍受されている可能性があり、
オルガを危険に晒す可能性を高めてしまうために、
それが出来ず歯痒かった。
幸いなのは、
重大な問題が発生した際に発する赤い発行信号が、
空に撃ち上げられていない事だった。
それでもオルガの安否が気になってしょうがない。
市内を出ようと道に迷ったふりをして、
市内のギャラルホルンの部隊を叩き潰してやろうか?
八つ当たりに近いこの行動を本気で実行しようかと思った時だった。
「やったなミカ!」
オルガの声がした。
「オルガ!?」
三日月は驚き、
声のした方向にMSを向ける。
するとその先には、
MWが停車していた。
そのMWは撹乱組の『ガット・ゼオ』が操縦しているもので、
その上にオルガが立っていた。
それが意味する事は明白だった。
「オルガ、
無事だったんだ」
「ああ。
撹乱組に助けられた。
屋上に乗せられたMWはもう使えねえから、
撹乱組のMWで乗って行ったんだ。
安心しろミカ。
クーデリアと蒔苗の爺さんは無事送り届けた。
仕事は成功したんだ」
「良かった。
でも何で此処に?」
「ミカが此処で戦ってるってタカキから連絡があってな。
見届けに来たんだよ。
ミカを一人にさせちゃいけないからな」
「そっか……」
「こっから先は時間稼ぎだ。
今クーデリアと蒔苗の爺さんが議会に、
ギャラルホルンとの停戦要請を出している所だ。
それまで逃げるなり隠れるなりして、
生き延びればいい。
そうすりゃ俺達の勝ちだ。
ミカはアジーさんとラフタさんの所へ行ってくれ。
此処まできて拠点を落されちゃ敵わないからな。
任せたぞミカ!」
「うん、
任された!」
先程までの不安が嘘のように晴れ、
三日月はオルガの指示通りに、
アジーとラフタが戦っているであろう更地を目指して移動を開始した。
バルバトスの姿が見えなくなるまで見届けたオルガは、
MWに操縦しているガットに移動開始を指示しこの場を後にした。
公営墓地に再び静寂が戻った。
後に残るのは、
手足をもがれ肩シールドが突き刺さっているMSの残骸があるのみ。
その姿は巨大な墓標のようだった。
次回予告「最初は生き残る事に必死だった。
でも今は違う。
仲間のために。
未来のために。
そのためならば命を賭けられる。
可笑しなもんだよな。
死にたくないから必死にやってきたのに、
随分と変わったもんだ。
恐れはない。
何も出来ないまま失う事の方が余程怖いからな。
最後までやってやるさ。
次回最終話『オルフェンズの明日』」