俺が攻略対象とかありえねぇ……   作:メガネ愛好者

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メガネ愛好者です

今回で十香編は終わりです
地味に長引いてしまった……とりあえず章の話数を二桁まではいかないようにとの考えです

あらかじめ言っておきます。戦闘を期待していた方、ごめんなさい

そして千歳さんの性能が規格外極まるのであった……

……あ、今回スペースで段落つけてみたのですがどうでしょう?こちらの方がよいのであれば、他の方もつけ直す予定です

それでは


章終話 「やりすぎだって? 知ってる」

 

 

 「いらっしゃい。ゆっくりしてってな~」

 

 どうも、千歳です。今はおじちゃんの銭湯で番台のお仕事をしておりますです。……まぁラノベ読みながらお客さんにあいさつするぐらいなんだけどさ

 

 この番台をやってて分かったんだけど、実はこの銭湯って結構緩いんだよね

 今のご時世、態々銭湯に訪れる者なんてそうはいないだろう。数駅程先の街にはオーシャンパークなる場所があるらしいし、大抵の者はそっちに行くからここに来るのは馴染み深い人達ぐらいしかいないのだ

 大体来る人は決まってる以上、態々受付する必要もないのでほとんどの人は顔パスで済ませていたりする。皆きちんと料金は払うからこれでいいんだよね

 だからこそ俺はこうしてのんびりとラノベを読んでてもモ-マンタイだったりするんだわ。ホント仕事とは思えないね

 

 給料は出ないけどおじちゃんが駄菓子とかくれるから俺としても結構満足してたりする。駄菓子が給料みたいな感じだね

 その駄菓子もこれまた懐かしいものばかりで年代を感じるわー。前世で俺が小さい頃に食べてたものなんか出た日にはもうお前何歳だよと言わんばかりに昔を思い更けていたり

 

 

 ……え? 今回は戦闘回じゃなかったのかって? 残念だったな、銭湯回だ

 

 

 あの蹂躙が起きた次の日、俺は朝からこの銭湯で汗水流しながら働いていたのであった

 いやー大変だったね。やってみて分かったけど、浴場の掃除とかめちゃくちゃ大変なんだわ。これをおじちゃん一人でやってる辺り、おじちゃんってかなりたくましいよね? とてもじゃないが高齢の方には見えな——え? 話が逸れてるって? 知ってる

 いやだってさ? ただただASDの方々を苛め抜いて終えたあの惨状を振り返るのも……酷というものでしょ? ASDの方々が。……本音としてはどーでもいいだけなんだがな

 

 まぁ事の顛末ぐらいは話すさ。訳も分からず結局HAPPY ENDを迎えたあの件をさ。ラノベ読みながら

 いやだって今丁度いいところなんだよ? そんなところで区切るとか俺には無理だね。気になって話がすぐ逸れちまうよ

 

 とりあえず……話す前に一言だけ、言っておこう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の寝床ってあの公園だったじゃん? それが()()()()()()()()()()から居場所無くなっちゃったとです。しょぼーん……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あの時、激おこ状態だった俺と十香だったのだが、まず十香から動きを見せたんだ

 自身の天使〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を顕現する。その姿を一言で言い表すのなら「剣が収められた玉座」だったね。十香の天使ってその玉座込みだったのか……

 その天使と十香の霊装が合わされば、まさに王城の謁見の間に鎮座する一国の主と言ったところだろうか?

 剣からビーム放つ腹ペコで食いしん坊な女性の王様……なんかデジャブを感じるのは俺だけか?

 

 ——シロー、お腹が空きました!——

 

 ……? 空耳か? 何か変な電波を感じた気が……いや、気のせいだな。もしも聞こえたのならシローじゃなくてシドーのはずだし

 

 ——コホン、話を戻そう

 天使を顕現させた十香は、軽く跳躍して玉座の肘掛に足をかける。その場から背もたれに収まっている剣を引き抜いては叫んだんだ。「【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】!!」——ってな

 その言葉を口にした十香の天使に変化が現れる。まず十香が足をかけていた玉座に亀裂が生じ、砕け散った。その砕け散った破片は背もたれから引き抜いた剣へと集まり始め、しばらくするとその剣は10m以上もの長大な剣と化したのだった

 

 

 ハッキリ言おう。最高にイカしてたぜ

 

 

 いやだってそうでしょ? 何なんあのロマン武器? あれで無双すんでしょ? めちゃくちゃ楽しそうじゃねーですかヤダー

 しかもあれでしょ? 必殺技とか最終形態とかそういった状態なんでしょ? 激戦の局面で真価を発揮する超常たる力を解放したお姿なんでしょ? 通常の〈鏖殺公(サンダルフォン)〉であれだけの出力が出るんだったらと思い返してみると……最早wktkもんでしたよ

 あーもう、思い出すだけでも羨ましいなぁオイッ! 俺もそんな力を振るいたかったぞチクショーメェッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——だから創ることにした。【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】をもう一本

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず俺は、その十香が持つ最終形態〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を視界に収める

 それの全体像を視界に入れた俺は、ここで新たな能力を発動——あ、そういやこれも言ってなかったな

 

 久しぶりに本来の霊装を顕現させたからか、今までで溜まりに溜まっていた霊力が俺の中で急激に渦巻いたんだよね。その際、俺に宿る〈心蝕霊廟(イロウエル)〉がその霊力の奔流に当てられちゃったのか……ほとんどの力を使えるようになりました。めでたいめでたい

 どうやら〈心蝕霊廟(イロウエル)〉(腕輪状態)の力は、全部で10の能力があったんだよ。今までの三つはその三分の一だったみたいだわ

 二番目の【(コクマス)】、三番目の【(ビナス)】、九番目の【(イェソス)】……その三つを含め、六つの力が目覚めました

 

 はっきり言おう。ガチなチート、ガチートであると。どこぞのモンスターな狩人に出てくる巨獣じゃないよ?

 

 いやな? 元から知識としては知っていたんだが……いざ使えるようになってしまうと、正直引いた。その規格外さに引いた。〈心蝕霊廟(イロウエル)〉に引きました。引いたけど嫌いじゃないから悲しそうに光を暗くしないで〈心蝕霊廟(イロウエル)

 だってやろうと思えば何でもできるもん。……相も変わらず直接的に殴る蹴るとかの物理ダメージを与えられる力は無いけどさ? ちくせう

 それに、だ。これでまだ本来の力じゃないんだぜ? 最後の十番目の力で本来の天使の姿、力が現界するみたいだが……明らかに腕輪状態よりも高性能すぎるのは確定的明らか。てか確定っぽい

 十番目の力、【(マルクス)】(命名)は未だ目覚めてはいないようだが……俺は一体何を目指しているっていうんだ? 世界の覇者か? キャラじゃないからお帰りください

 まったく……俺の願いは「楽して充実に堕落したい」だぞ? 確かに〈心蝕霊廟(イロウエル)〉のおかげでその願いは叶ってるんだけどさ……明らかに過剰すぎるのは気のせいじゃねーよな?

 今後これで大丈夫なの神様? 狙われたりしない? 既に襲われてはいるけどこれからもっとややこしいことになったりしない?

 

 

 ——ももももももももちろろろんさぁあぁあぁあぁー——

 

 

 野郎……今度はタンスの角にお前自身を斜め四十五度で叩きつけてやろうか?

 ……はぁ、まぁいろいろと助かってるし、礼は言っておくけどさ。一応神様なんだからもっと威厳を持ってくれよ?

 

 ——善処はしよう――

 

 急に素で返してくんなし。——てか通じたことに驚きだよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、そんな訳でいろいろ力を使えるようになったんだし、使わないのもあれなんで「使ってみよう、ホトトギス」精神で発動することにしたのでした。過剰と言ってもやっぱり試したくはなるのですよ

 それでは五番目——【(ゲブラス)】の出番ぜよ

 

 

 

 【(ゲブラス)

 これを簡単に言うのならば……完全転写能力かな

 俺の視界で捉え収めた光景を脳裏に……いや、俺自身の記憶に焼き付ける能力であり、これによって何かを見て顕現させていた【(コクマス)】が楽になるのだ

 

 そもそもな話、【(コクマス)】って二つの種類があるんだよね。その二つが「有から取り寄せる」か「無から創り出す」かのどっちかだ

 

 有から取り出すことに関しては、以前に試したゴミ袋とかがそうだろう。見た光景の中にある物を手元に顕現させることが出来るため、正直【(イェソス)】と見分けがつきにくい。ぶっちゃけそこはアイマイミーだったりするけど……一応区別がつく特徴はあるからダブっているという訳ではない

 

 無から創り出すことに関しては500円玉がいい例だな。後はよしのんか

 イラストや写真など、実物はあるが目の前に無い物を霊力を用いて形にする(創り出す)のがこれに当たる

 余談として、創り出した物は俺の意思でいつでも消すことが出来る。そのまま放置すれば半永久的に存在し続けるが、俺が念じればすぐさま霊力が霧散して形を留めていられなくなってしまう。ゲームセンターでつい500円玉を出しすぎた時に気づきました

 ……あれ? 今この瞬間に今まで使用した500円玉を消したらどうなるんだろ? …………碌なことにならなそうだからやめて置こう

 

 ただ一つ使いどころに難しい点がある

 それは——どちらも動いていると顕現しずらいというものだ

 

 出来ないことは無い。だが、必用以上に霊力を使っちまうんだよ。そこが難点だな

 いくら俺が霊力タンクだからって、底が無い訳じゃないんだ。下手に無駄遣いしていざって時に使えませんでしたとか笑えないだろ?

 

 そこで活躍するのが、この【(ゲブラス)】だ

 これならいちいち写真などを見て顕現するよりも手っ取り早いし、静止画として記憶に留めれば必要以上の霊力を消費しないで済む……ただ念じるだけで顕現できるのだ

 まぁ……その記憶に留めていられる容量は少ないんだけどさ?

 

 実はこの便利だと思える能力、制限付きだ

 その制限というのが……記憶に留めていられる描写が今のところ五つまでしか覚えていられないというものだ。それ以降は上書きするかしないと保存できない

 もしかしたら、何かのきっかけで容量が増えるかもしれない。実際にこうして他の能力も使えるようになったんだし、可能性が無い訳ではない。まぁ今のところその兆しはないけどさ

 

 

 

 ——と、まぁそんな感じだ

 そんな訳で、俺は【(ゲブラス)】を使って十香の【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】を記憶に留め、【(コクマス)】で召喚した

 ……え? 前に超越した能力を持った武器は出せないって言わなかったかだって? 確かに言ってたような気がするわ。……だが、こうも言っていたはずだ

 

 ”()()()()()”ってな

 

 今、俺の目の前にある十香の【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】はこの現実世界に実在している力だ

 頭の中での妄想や空想なんかじゃない、よしのんみたいな一から存在しないものでもない……今、目の前にある常軌を逸脱した力は、確実に俺の目の前にある現実だ

 そうなれば話は早い。俺は【(ゲブラス)】によって頭ん中に焼き付けられた【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】を視て、理解し、顕現させる。——実はこの時、他に一つだけ能力を使っているが……まぁ今はいいだろう。それがメインになった話の際にでも語ろうや

 そして、俺の意思と共に俺の中の霊力が一気に放出され——形を成す(創り出す)

 

 

 ——そして、両手を突き出して顕現させた俺の手の内には……十香の物と全く同一の【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】が握られていた

 

 

 無事に成功。機能上も問題は無い。性能面もオリジナルと引けを取らん出来だ

 そして、創り出した【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】を確認した俺は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——十香に渡した

 

 いやだって俺は剣とか振れないもん。振り回すことは出来ようとも、剣を振る技術なんてある訳がない。剣道なんかをやってれば違うのかもしれねーが、生憎とそんな経歴は無いのさ

 それに、以前と比べて力は上がったんだろうけど……精霊としてはそこまで力がある訳ではないと思うしんだ。だって見た目華奢な十香の拘束を振りほどけなかったぐらいだからな。十香に捕まった際、抜け出そうともがいた俺の徒労は無意味に終わったからな。十香の腕力が精霊として平均的なのであれば、俺の腕力なんて微々たるものなのさ

 そんなか弱い少女(笑)の俺が持っていても身に余るって訳で……って、オイ、待てやゴラァ。(笑)ってどういうことだ? 否定できねーけどなんかムカつくからやめろやワレェ

 

 ……まぁいい。因みに十香は、自身が握る【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】と全く同一の物を俺が顕現させたからかものすごく驚いてました。シカタナイネッ!!

 そりゃー自身だけの力だと思っていたものを出されては驚きもするさ。自分でやっておいて何だが、成功した俺自身が一番驚いてるけど

 

 視界に収めさえすれば他の天使も創り出せるかもしれない……もしそうなら異常過ぎる力だろう。……まぁその分かなりの霊力を使うがな

 【(ゲブラス)】から創り出したにも関わらず、馬鹿みたいに大量の霊力を消費してしまった辺りそんな頻繁に創れる訳じゃなさそうだわ。ずっと造り出しておくってわけにもいかないしな

 そもそも俺は戦闘すること事体に積極性を持ってはいない。やりたくない訳ではないが、面倒なんである。……決して怖いからとかではない

 つまり”憧れはするけど実際にやろうとは思わない”という奴なんですよ

 

 そんな訳で、俺には宝の持ち腐れだからその創り出した【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】は十香に渡すことにしたのだった。——「暴れてこい」との一言と共に

 

 

 そして始まる——開幕ブッパ

 

 

 二振りの【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】は十香の正面の景色を一変させ、この場にいる者全てに見せつける

 

 

 ——二つの巨大な衝撃波により、跡形も無く消し飛んだその大地を……

 

 

 これ、ASDの人達は耐えられるかな? ガンバレあの集団! 訳してASD!!

 

 

 

 

 

 そうこうして始まった蹂躙劇。十香が二振りの【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】で暴れ、ついでに俺がそんな十香の正面に【(イェソス)】を使って周囲に待機していたASD隊員達を次々に転送し始める。……転送されてしまった隊員達は、最早生きた心地はしないだろうな。気付けば暴力的で圧倒的で絶望的な破壊の権化の目の前に身を出されるんだから……

 ぶっちゃけ狙いは主人公クンを撃ったであろう白髪の少女だけなのだが……まぁ連帯責任と言うことで一つ。何事にも失敗したら全員でその子を支えて上げましょうね? 自身の身を挺する形でさ

 そもそも今の状態の十香をその白髪ちゃんだけに向かせるのはあまりにも……な? 敵ながら同情してしまうとです

 ……え? 十香を煽った元凶が今更何を言うんだって? しょうがねーじゃん。あん時は気持ちを抑えきれなかったんだから

 

 そんな俺だが、別に動く必要も無かったから十香が無双乱舞している間は邪魔にならないよう公園から動かずに力を行使し続けてました

 最早霊装も顕現させておく必要がなさそうだったから疑似霊装に戻してたよ。久々の出番だというのにこの霊装さんの扱い……あ、いや、別に蔑ろにしている訳ではありませんよ? ……ただ、スカートが落ち着かないんです

 それと、【(イェソス)】を使っての十香の支援も今思えばする必要性を感じなかったわ。だから途中からはただその光景を傍観していたのは言うまでもない

 その時には俺の中の苛立ちもASDへの同情に変わってたからね。やりすぎたせいで逆に頭が冷静になってしまったパターンですよ

 

 落ち着いた俺は現状を確認する

 辺りの景色はまさに災害跡地。これが元通りになるまでにどれだけの時間がかかるのかなーなんて現実逃避をしてしまうぐらいには冷静になっていた

 正直やりすぎた。主に十香が破壊した跡なんだけど……状況を悪化させたのは間違い無く俺のせいだしな

 二刀流にしてしまったばっかりに被害が悪化してしまった。……でもカッコイイじゃん? 巨大な剣を二刀流する姿とかテンション上がるじゃん? だからしょうがないってことで一つ

 ――え? 駄目に決まってる? 知ってる

 

 ASDの人達は何やら緑色のバリアーなどを展開して防いだりしようとしていたが……うん、紙風船同然に消し飛んだわ

 十香の猛攻にASDの人達は自分の身を守ることで精一杯、限界が来て墜落していく者達から俺らに気づかれぬよう撤退を始めてたね

 まぁ見逃す理由もないけど……正直どうでもよかったし、俺はそんなに人を殺したいわけじゃあない。……え? 今更そんなこと言われても説得力が無い? 知ってる

 それに、十香自身も主人公クンを撃った白髪ちゃんだけしか目に入ってないから構わないだろう。だから白髪さん以外はどうでもいいのだ。後の奴等が逃げようともね

 まぁ、それまでに視界に入った者達は問答無用で斬り伏せられていたがね

 未だ致命傷らしいものを受けた者を見た覚えは無いのが救いかな? 随分としぶといもんだ……っと、やばいやばい。悪役みたいな思考になりかけてたわ

 ……でも、いっそのこと悪役になっちまった方がよかったのかもな。どうせ世界は俺等精霊を受け入れないみたいだし、開き直って思う存分暴れてしまうのも手だよな

 

 ……そんな、思考が黒く染まり始めた辺りだっただろうか?

 

 

 

 ——熱さに悶える主人公クンの声を耳にしたのは

 

 

 

 もう開いた口が閉じなかったね。その声と同時に主人公クンの方を見てみれば、撃たれた場所が燃えながら治っている光景が目に映ったんだから

 何ですかそれ? 何処の不死身さんですか? 五河ボルケーノですか? 「シドタンinしたお!」ですか?

 その時の俺はその光景に混乱してしまい、主人公クンから目を離せないでいたもんだ……

 

 

 

 

 

 そっからは場面がどんどん移り変わっていったせいでうまく表現できないぜ

 主人公クンが起きて、目の前から消えて、気づいたら十香の真上からダイビングしている主人公クン

 十香も自身の名を呼びながら落ちてくる主人公クンを確認し、急いで主人公クンの元に近寄ったんだよ

 

 

 ——俺が創った【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】を俺の方に放り投げて

 

 

 いやしょうがないとは思ったよ? 両手塞がってちゃ主人公クンをキャッチできないもんな。それでも俺の方に投げてくることは無かったと思うんだけどね

 俺に返すつもりで投げたのか、無意識のうちに投げたのかはわかんないけど……凄い速度だったせいで消す暇も無く俺が佇む公園に直撃。溜め込んでいた霊力が暴発し、俺の寝床は崩壊したのであった……

 

 ……え? 因果応報? 知ってるよ……だが悔いはないっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが昨日あった事の顛末だ

 

 そんな訳で寝床を失った俺は、とりあえずいい時間だったので銭湯に向かうことにした

 何も言わずに二人の前から立ち去っちゃったけど……まぁそのうちまた会えるだろ。今回はやりすぎたことを反省しなきゃだし……

 ASDにも結構被害出しちゃったし、二人ほど再起不能にしちゃったわけだから……当分は大人しくしておかないとな。結構霊力使ったから疲れたし

 

 あ、そうそう。その二人を再起不能にしちゃったこの目なんだけど、対処法を思いついたぞ

 ようはアレでしょ? 霊力からなる症状なのは間違いないんだし、俺が望まない力だから……疑似霊装に頼りました

 疑似霊装は俺の意思を反映するからな。俺が望まない事があればそれに対処して変化してくれる。いつもありがとう霊装さん

 結果としては……見た目に変化は一切ありません

 霊力による膜のような物がアイマスクをするかのように両目を覆っただけだったりする。その無色透明な膜は俺の行動を一切妨げることが無いためかなり助かってるよ

 しかもこれ、俺が望めばアイマスク同然の機能も発揮されるから明るい場所での昼寝に便利です。最高だぜ霊装さん!

 

 そんな対応策を講じた俺は、試しにヘアピンで前髪を上げた状態で外を出歩いてみたんだよ。失敗する予感は無かったからな

 案の定効果が現れていたのか誰も症状にかかることはなかった。いや~ホントよかったぜ。これで下手に被害者を作らないで済むわ

 

 ……なんか周りから注目されてた気がするんだけど気のせいかな? ……さっさとヘアピン外しとくか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……お、来たか藤袴」

 

 「また来たわー」

 

 俺が回想を思い返しながらラノベを呼んでいると、見知った少女がやってきた。その名も藤袴(ふじばかま) 美衣(みい)

 彼女はこの銭湯の常連さんで、俺が来る前からもこの銭湯を利用していたとおじちゃんが言ってたな

 

 丁度いいタイミングだな

 俺はこの前有った空間震の件で、藤袴が”アレ”を失ってしまったのを聞いた

 怠そうにその空間震に愚痴を言っていた藤袴だったが……その表情は、それこそよく見ないと気付かない程に悲しみを露わにしていたのを昨日の事のように思い出せる。……まぁ一昨日の出来事何だが

 そんな訳で、俺は日頃からこの銭湯を利用してくれている藤袴に感謝を込めて、その代替品になりそうなものを渡すことにしたのであった

 

 「藤袴、お前確か空間震で”アレ”が無くなったんだったよな?」

 

 「マジ最悪だわー」

 

 「代わりになっかはわかんねーけど……これやるよ」

 

 この前のことを思い出してか少し暗い表情になる藤袴に、一旦ラノベを置いた俺は用意しておいた”アレ”をバックから取り出して手渡すのだった

 

 「これ……」

 

 「あー……すまんな。似たようなもん探したんだが見つからなかったんだわ。もしそれでもいいってんなら貰ってくれ。気に入らないなら捨ててもいいし」

 

 「……マジ引くわー」

 

 「引くなし」

 

 ”アレ”を藤袴に渡すと、普段からあまり表情を出さない藤袴が少し驚いたような表情になった。……気がする。それほどまでに小さな変化を示した

 まぁ言葉では引かれちまったみてーだが、渡した”アレ”を自分のバックにしまった辺り気に入ってくれたのだろうか?

 

 「そんじゃごゆっくりー」

 

 「ん」

 

 俺の言葉を聞くなり女湯の暖簾をくぐって姿を消す藤袴。相変わらずクールな子だよなぁ……

 

 「……うん?」

 

 俺は再びラノベの続きを読もうと、一旦置いていたラノベに視線を向けて……気づく

 

 ……なんか挟まってる?

 

 俺はその挟まっている……紙? をラノベから引き抜き、それがなんなのかを確認するのだった

 

 

 ………………

 

 

 「……口で言えばいいのに。らしいっちゃらしいけどよ」

 

 折りたたまれた紙に、ただ一言記入された簡素な言葉。ただそれは……俺としてはちょっとした幸せでもあったりする

 

 

 『ありがと』

 

 

 「ふぁあ~……まだ転生したばっかなんだ。世界が精霊を受け入れるかどうか……決めつけるのはもう少し後でもいいよな?」

 

 世界が精霊を拒む中、一人の少年はそれを否定し、精霊の少女を肯定した

 それがこの先どういった結末を生むのかはわからねぇ……もしかしたら、俺をも巻き込むかもしれねーな

 一体精霊とはなんのために存在するのか、どうして精霊はこの世界に現れたのか、俺にゃあ全然わからねぇ

 

 ただ一つ、確かなことはある……

 

 

 

 

 

 もうすぐ日が沈む時間帯。俺は欠伸をしながら窓から見える夕暮れを見据える

 ……あの時、自身を受け入れてくれた少年と空で抱き合う十香の姿は……とても幸せそうだった

 

 それだけでも、俺はこの世界に来てよかったと思えたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——ただ、なんで素っ裸だったんだ?

 

 




この二人を組ませちゃあかん。人類滅ぶ

だってあれですよね? ようは破壊の渦の中に転送させられるようなもんですよ? 逃走できず、回避できず、防御はたやすく砕かれる……あかん。マジで危険度が……

そもそも千歳さんの天使が……もう性能が狂っとるとしか言いようがない
どんな能力になるかは決めてあるのですが……改めて見ると、ホント規格外でした

読者の皆様が気になっていた【心蝕瞳】の対処方法はこうなりました
やっぱりここは万能型霊装さんに頑張ってもらいました
眼鏡もよかったのですがね……眼鏡もよかったのですがね……フフフフフ……

最後なんかいい雰囲気になったなぁ……まぁそれでもおじちゃんには届かなさそうですが←

次回、とうとう四糸乃編! ……の前に、少し千歳さんがやらかします

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