俺が攻略対象とかありえねぇ……   作:メガネ愛好者

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メガネ愛好者です

えー、前回の後書きにて予告した内容を訂正します

暗くなりません。シリアスもありません。くるみんの事情も語りません。申し訳ない

いやですね、書いてて思ってしまったんですよ……まだくるみんの事情を少しだとしても語るには早すぎる、と
事実、まだ物語は中盤にも差し掛かっていないですからね。それなのに情報を公開するのは……うん、早いですよね

特に千歳さんの魔王の名バレとか、天使の正確な能力も公開していないのに出すべきではないと思った次第です

ですので今回はシリアスさんがいません。シリアスさんはお盆休みに神社へ出向いているようです

そして書き直した今回の話ですが……ある方が爆発します
※キャラ崩壊注意。割とマジで

それでは


第三話 「無駄話も程々に? 知ってる」

 

 

 「えー……こほん。話を戻すぞ」

 

 「「はーい……」」

 

 「……」

 

 向かい側のソファーにて、仲良く同じところにたんこぶを作っているくるみんとミクを視界に収めながら、俺は再び話し合いを始める事にした

 全く、一度火が付くと収拾がつかなくなるのは一体誰に似たんだかな。一向に本題に入れないまま時間だけが過ぎてったせいでもう夜だよ。……え? 俺に似た? ……チガウンジャナイカナー?

 因みに俺の隣に座っている七罪は呆れたような表情で二人を見ていた。まぁあんなやり取りをしていれば呆れるのもしょーがねーわな。二人にはもう少し自重ってものを覚えてほしいもんだ

 

 「いやあんたもだから」

 

 「解せぬ」

 

 そしてこの子も読心術を常備しているというのか? 俺のプライバシーは一体どこに……そもそもあるのだろうか?

 

 「ありませんわね」

 

 「ないんじゃないですかー?」

 

 「……なさそうね」

 

 「shit(クソが)

 

 どいつもこいつも好き放題言いやがって。てか七罪の言葉が一番ツラいのは何故だ? ……あぁ、現状を正しく把握しての答えだからかチクショウ

 

 

 

 「はぁ、もういいから本題に入るぞ。んで、改めて聞くがミク……なんで七罪を襲ったんだ? その……性的に」

 

 

 

 俺の言葉に隣の七罪はビクッと体を震わせ、次第に顔を俯かせていく。……よく見ると頬が上気してるな。思い出させてすまん、少しの間堪えてくれ

 ミクは「あはは……」と俺から目を逸らしながらも表情は七罪に対して申し訳なさそうに歪められていた。罪悪感を感じているようだが自業自得だお馬鹿、欲情する前に反省しろや

 くるみんは予め事情を聞いていたからそこまで反応を見せなかったが、それでも携帯越しに聞いたことだったから、こうして今回の件が本当だったという事実を突きつけられて少し複雑そうな表情を浮かべている。確かにこういった時……慕っている人がやらかした場合、自分がどういった反応をすればいいかわからなくなるよな。俺だってそうだし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事の始まりは今日の朝。精霊だからか寝る必要がほとんどないのをいい事に、俺とくるみんは狂三の処置を徹夜で行っていたんだわ

 それで一息ついた頃には朝日が昇っていて、んじゃ気分転換に朝御飯でも食べようと俺が準備しようとしたところで……くるみんの所持していた携帯が鳴り響いたのだった

 くるみんはすぐに電話に出て会話し始める。そして幾らか言葉を交わし合った後——俺に代わるよう携帯を渡してきたんだ

 何で俺に? って思いつつもくるみんから携帯を受け取った俺は、とりあえず携帯を耳に宛がって話を聞くことに

 そして聞こえてきた言葉、ミクの第一声が――

 

 

 

 「千歳さあああん!! 七罪ちゃんって子を千歳さんと間違えて襲っちゃいましたー!! こういう時ってどうすればいいんですかー!?」

 

 

 

 ……これだった

 待て、おかしい。いろいろとおかしい。なんだそのふざけた内容は……そう思った俺の反応は間違ってないと思うんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は少し遡って先日の夕方、アイドルをやめたミクが自由気ままに商店街を見て回っていた時に事件は起きた

 

 「……あ゛ぁぁぁぁぁ……」

 

 ……女の子として出していい声では無いのだが、話が進まないのでここは割愛する

 後に買い物の為に商店街へと足を運んでいたと証言したミク。だが実際の目的は買い物などではなかった

 

 「千歳ざぁぁぁぁぁん……何処におられるんですかぁぁぁぁぁ……」

 

 ミクはどうやら俺を探していたらしいのだ。探す当てもなく、運任せで

 四月終わりから約一カ月半、俺と会えなかった期間が長すぎたせいでミクに禁断症状が出始めたんだとか。いや、なんで会えないだけで禁断症状がでるんだよ。俺はアレな薬じゃねーぞ? ……能力に催眠・依存系のはあるけどさ

 

 言っておくがミクにそう言った能力を使った(ためし)は一度も無いからな? てか使うわけねーだろ。大切な妹分の想いを歪ませてまで慕われようなんてゲスイ真似、そんなん俺自身が許せねーから

 ……なんか考えただけでムカついてきた。気分も切り替えるついでに話を戻すことにしよう

 

 そんなミクがとうとう我慢できなくなってしまい、俺に会うべく街へと躍り出たそうだ

 日々抱えてきたストレスやらもあった為、二割がた気分転換(後の八割は俺探し)も兼ねていたそうなんだが……ここで一つ、疑問に思うことがある

 

 「あれさ? くるみんが俺の事を知ってるの分かってたんだからくるみんに聞けば早かったんじゃないか? 現にそうしていれば、その時一緒にいた俺と会えただろうし」

 

 「街で偶然、『運命的にも』再開するというのがポイントなんですー」

 

 「さ、さいですか……」

 

 ミクにはミクなりの拘りがあるらしい。まぁそれを否定する気は無いが、そのせいで今回は被害者が出てるんだから今後は無理に拘ろうとしないでくれ

 そんな偶然会う事に拘り、自分の足で探していたミクは項垂れながらも俺に会うため探し歩いていたようなんだが……さっき言った通り、ミクが探し歩いていた時間帯に俺はくるみんと治療した狂三の分身体をどうするか話し合っていたんだよね。その時点でエンカウントする確率はゼロだったんだが……後の祭りか

 

 

 あ、そう言えば狂三(分身体)がどうなったかを詳しく言っていなかったな

 まぁ簡潔に言うんなら……あれだ、今は本体と同じようにくるみんの影で眠りについているよ

 少し補足するとこうなる。元は天使であるくるみんが狂三と霊力によって繋がる事で彼女達二人は、ほぼ同一の存在へと()()()()のだ

 くるみんが狂三のスケープゴートとなる為に自身の影と同化させる事で、狂三が持つ力を受け継いだ。そのおかげでくるみんは狂三そっくりの姿になれるし、一対の銃や〈時喰みの城〉、空間震の強制発動をすることができるようになったとか

 そして狂三はくるみんの影の中で、いわば滅多に出てこない二重人格と言うポジションに落ちついたそうな

 どうやらいつでも表に出てこれるらしく、今日も学校で途中までは狂三が表に出て体を動かしていたみたいだからね。まぁそんな狂三は「本体と分断された以上、最早わたくしには目的がありませんわ」と、あまり表立って行動する気が無いみたいだ。くるみんの話によると、狂三はこのまま影の中でニート生活……影内警備員になるらしい。それでいいのか狂三

 そんな狂三が最後の外出だと言わんばかりに活躍したそうだ

 純粋に狂三の分身体としての役割を全うする事で一時的に本体を欺いたんだとか。……今日学校へ登校し、五河と接触する予定だった狂三(本体)の分身体の役割を奪い変わる事で

 本体である狂三さえいなければ、くるみんは簡単に分身体へ干渉できるからな。記憶を改竄し、不自然の無いように分身体を帰らせた後は狂三が表に出てきてその分身体になり変わったんだとか。そのおかげで本体もくるみん達が自身の送り込んだ分身体が入れ替わっていると気付けなかったらしいぜ?

 

 

 ……おっとすまん、また話がそれたな

 まぁそんな訳で部屋に帰っていた俺がミクと街で出会う訳も無くただただ時間だけが過ぎ去っていった。もうその時点で諦めてくるみんに連絡しろよと思った俺は間違っているだろうか?

 そして夕暮れ時、半日ほど俺を探し回ったミクは時間も時間の為に今回は諦めたらしく、今日のところは大人しく家に帰宅する事にした

 

 

 

 

 

 ——そんな時だ。ミクが七罪と出会ったのは

 

 帰宅中、ミクの目の前の店から丁度出てきた一人の女性。その女性はミクを気にかける素振りも無くその場を立ち去ろうとしていた

 その女性——七罪を視界に収めたミクの次の行動は……何処か懐かしいものを俺は感じたのだった

 

 

 何とミクは、七罪を見るなり目にも止まらぬ速さで接近、全体重を乗せて勢いよく七罪に抱きついたらしい。……背後から

 

 

 それを聞いた瞬間「いやおかしいだろ!?」とツッコんでしまった俺を誰が責めようか。そしてミクの突撃ハグの威力を知っている身としては、それを受けた七罪に同情を隠せなかったよ

 あのなミク? 確かにお前は攻撃系じゃねーのは知ってるぜ? でも……精霊なんだ。常人と比べて身体能力が人間離れしているってことをもう少し自覚してくれ……

 

 さて、何故俺がミクの証言におかしいと唱えたのか? その理由は、七罪と俺とでは決定的に異なる点があったからだ

 

 

 ——身長の差って言う、見間違う筈も無い異なった点がな

 

 

 髪色なんかは光の加減で見間違うこともあるかもしれない。夜だったこともあって、街灯はあれど暗かっただろうしな

 それに()()七罪の髪は日頃から手入れをしていなかったのか、気持ちボサッとした感じに伸びている。その辺りは確かに俺と似たところがあるのだろう

 ——だが、俺と七罪では明らかに身長が違いすぎるだろう? 俺と七罪の身長差はおおよそ20cm近くあり、横に並び立っても一目瞭然だ。これを見てどうやったら見間違えるんだよ

 そう言ったこともあり、どうも不可解な間違いに俺はミクへと問い詰めた。間違いようもないだろうと

 しかし、これに関してはミクだけがどうこうって話では無かったようだ

 

 

 どうやらミクが間違えた原因には七罪の方にもあったらしい。何せ、その間違えてしまった要因である俺と似た背丈と言うのが――七罪が持つ天使の能力によるものだったからだ

 

 

 まず初めに、七罪が俺達と(まぁくるみんは別として)同じ精霊なのはもう察してもらえているだろうか? とりあえず七罪が精霊だという事をここで覚えていてほしい。OK?

 付け加えておくと、今七罪が身に纏っている魔女っ娘の様な衣服も霊装みたいだしな。部屋の中では気づかなかったが、外に出て感じ取って見ればあら不思議、霊力を感じられました

 

 七罪は昨日、どうやら静粛現界とやらでこの天宮市に降り立ち、自由気ままにこの世界を見て回っていたところだったようだ

 

 

 ——大人の姿で——

 

 

 そう、その時の七罪は大人の姿で街に出向いていたらしい。その姿を見たミクが俺だと見間違えて七罪に突撃してしまったのだ

 

 ここで七罪の天使を紹介しよう(まぁ七罪に直接教えて貰った事しか知らないんだけど)

 七罪の天使の名前は〈贋造魔女〉(ハニエル)、箒型の天使だ。魔女っぽいね

 その能力を簡単に言えば——姿を変える能力だ

 自分の姿を大人にする事は勿論、他人の姿にも変わる事が出来るようだ。それと同時に姿を変えた相手の性格も真似る事ができるとか

 

 そんな天使の能力で、七罪は自分のコンプレックスである幼い体を理想の体へと変身していたらしい。七罪が言うには、今とは正反対の「背が高くて美しく、周囲を虜にするような妖艶な女性」へと

 

 ……まぁ後ででいいか

 

 そんな子供の姿から大人の姿になった七罪を、ミクは俺だと見間違えてしまったらしい

 長身、緑色の髪、そして服装も露出を控えめとしたスーツだったらしく、それらが合わさった事で七罪の後ろ姿が俺に見えたんだとか

 

 まぁ、あくまでミクから見た印象では、だがな

 実際にさっき七罪に変身してもらい、その姿を確認させてもらったんだけど……正直見間違うほど似てはないと俺は思うんだよなぁ

 身長は確かに同じぐらいだったよ? でも髪型は今のボサッとした髪ではなく、サラサラと手触りの良いストレートヘアーだった。色はまだ間違えるのもしょうがないとして……髪型はもう見間違う筈の無いレベルなんだよ。俺の髪型と異なる時点で気づけよと言いたい千歳さんでした

 だって俺の髪はショートからセミロングの間ぐらいかな? とにかく七罪よりも短いし、手入れも普段からあんまり意識していないからか若干ボサついてるんだよね。今の七罪みたいに

 

 それなのにミクは間違えた。間違えてしまった

 しばらく会っていなかったせいで発症した禁断症状に多少目が盲目になっていたようで、普段なら見間違う筈も無い七罪の後ろ姿を俺だと勘違いしてしまう。そして自覚無しの強烈な一撃を七罪の背中へと決めたようだ

 突然の衝撃、そして何より姿は変われど体が屈強になるわけでは無い為、そのミクのサイコ〇ラッシャー……こほん、突撃ハグの衝撃に七罪は耐えられなかったようだ。俺が以前にやられた時と同じく七罪も簡単に意識を刈り取られてしまう

 そんな七罪に未だ俺ではない事に気付けなかった半暴走体のミクは、七罪が意識を失って倒れてしまったのに慌てて何を血迷ったことか——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「——ドリームランドに連れ込んでしまいました」

 

 「なんでそこでラ〇ホに連れ込んでんの!? せめて自宅に連れてけよ!! 連絡すれば使用人達が迎えに来てくれただろ!?」

 

 「だ、だって家だと気まずいじゃないですかぁ!! 急に部屋に親が入ってきたらどうするんですかぁ!?」

 

 「いや部屋に入ってこられたらまずいようなことしようと考えてんじゃねーよ!? 倒れた人間に何する気だったんだテメー!!」

 

 「そりゃ勿論ナ——」

 

 「言わせねぇよ!?」

 

 そう、ミクはあの忌まわしき洋風の城へと七罪をお姫様抱っこしてご来店してしまったのだ

 てかミクが見境無さすぎて社会的に不味いことになってやがる。モラル的に完全アウトだし、そもそも両者合意の元じゃねーのに連れ込むんじゃねーよ。……合意だったら合意だったで反応に困るけどさ

 

 「別にいいんですもん。だって私、精霊ですからー」

 

 「そういうところばっか精霊特権使うんじゃねーよ。普通に逮捕もんなんだからもっと常識を持て、常識を」

 

 (いえ、お母様が言えた事じゃありませんわよ? 種類は違うとはいえ窃盗、偽造、詐欺に不法侵入と数多くの悪事を何の悪びれも無くやってきたお母様が常識を説くなど……)

 

 「……精霊に常識とか馬鹿げてるな。ミク、どんどんやっていいぞ。正し精霊以外で」

 

 「わーい! 千歳さん大好きー!」

 

 「手の平返すのが早すぎる!? しかもご自身に被害が及ばぬ様、精霊から人へと矛先を誘導しましたわね!?」

 

 当たり前だろう? 俺は自分勝手に日々を過ごしたいし、これからも行動を自重しようなんて思ってないもん。ミクにも襲われようとは思ってないしな

 言っておくが、俺が体を張る対象として優先度が高いのは精霊なんだ。人と精霊のどっちかに被害が被る事になるとしたら人に矛先を向けるのは当然だろう? 差はあれど精霊の事を敵視する人間がいるんだから、まだ同族である精霊を庇護するのはおかしい話じゃあない

 それに俺等は精霊だもん。人間の法なんて知ったことか

 

 「その精霊だからという理由、都合が良すぎますわね」

 

 「事実だろ。それにくるみんも同じことしてるだろ? このミクの言い訳……どう見てもくるみんの影響だろうし」

 

 「え? ……あ、いや、そのような事は——」

 

 「『ワタクシ、堕天使ですから』……だったっけか? 俺が屋上について様子見をしていた時に確か同じ事言ってたよなー。……ミク、この言葉に聞き覚えは?」

 

 「多少言葉は違いますけどぉ……毎月、屋敷で何か問題を起こした時には決まって言ってましたねー、それ」

 

 「……んで? そこんとこどうなのかね、くるみんちゃんよぉ……?」

 

 「そ、それは……その……」

 

 俺とミクの言葉に慌てふためき出すくるみんであった

 九年間もの間くるみんはミクと一緒にいたんだ。何かしらミクがくるみんに影響されててもおかしくは無いだろうが……まさか悪いところを習っちまったとはな

 まぁくるみんだけに非がある訳じゃないけどさ? 俺だって同じような言い訳するもん。だからあまり強くは言えないんだよね……それでも注意をする事には変わりないが

 俺と比べてくるみんはまだ真面目な方なんだ、あまり俺の様な適当な性格にはなってほしくはないのです。……そうすりゃ俺みたいにはならねーだろうしな

 そうこう考えながら静かにくるみんの返答を待っていると、意を決したのかくるみんはようやく口を開いて言葉を発するのであった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「え、えーと……てへぺろ☆」

 

 「あざとい。でも可愛い。……だが殺意を覚えたからギルティ」

 

 「調子に乗って申し訳ありませんでしたぁ!! ですからチャンスを! 弁解のチャンスをおおお!!」

 

 「全く、こっちは注意するだけで終わらせようと思ってたってのに……」

 

 「あら、そうだったんですの? なら戯れていても別によかったと――」

 

 「あ? んなわけねーだろ? ふざけんなよコラ。ミクに悪影響与えた事には変わりねーんだから、反省してなかったら説教するに決まってんだろ」

 

 「ひぃ……っ!?」

 

 俺の言葉と共に何かを見て委縮するくるみん。多分俺の目を見たからかな?

 今の俺、確実にくるみんの事を睨んでるしね。髪の隙間から見え隠れする鋭い眼光が恐怖を煽るーってやつだと思う。隣にいるミクにも見えたのか少し怖がっているし

 まぁミクに関しては今回の加害者だし、少しお灸を据えるには丁度いい。ついでに睨んでおこう

 そんな視線を俺が二人に送っていると、いち早く気を取り直したくるみんが反論してきたのだった

 

 「い、いえ、少し待ってくださいまし! ワタクシの場合は……そう! お母様に影響されたんですわ!! だってワタクシ、お母様の娘ですもの!!」

 

 「うぐ、痛いところを突かれたな……でもなくるみん? お前は別に心が幼かった訳じゃないんだから、俺の悪いところをちゃんと区別出来ただろ? そうわかってんならわざわざ見習おうとすんなし」

 

 「そ、それはそうかもしれませんが……ですが! お母様の悪いところも含めて似てこそお母様の娘だとワタクシは思うんです! ですから引き継ぎます! いわば親から継承した由緒正しき伝統ですわ!!」

 

 「そんな伝統シュレッダーにかけろバーカ」

 

 「つまり千歳さんからくるみん、くるみんから私へと伝統を引き継いでいるという事ですねー。これはもう、家訓でいいんじゃありませんかぁ?」

 

 「サラッと俺とくるみんがミクの家族になっている件について」

 

 「あながち間違いじゃないと思いますよー? 千歳さんは私の執事ですし、くるみんは私の従者なんですから」

 

 「「確かに」」

 

 ……って、そんな訳ねーだろうが。何故納得しかけてしまったよ千歳さん

 とにかくだ。一度ミクとくるみんは常識を学ぶべきなんだ。そして俺のブレーキ役になってほしい

 俺だって思い思いに騒ぎてーんだよ。三人でアクセル全開のフルスロットルだったら誰も止める奴いないから、今はこうして俺が二人のブレーキ役になってるけどさ……俺だってな、俺だってなぁ……

 

 

 

 

 

 ——そんなことを考えているから俺は……つい忘れていた。彼女の事を——

 

 

 

 

 

 「……ねぇ」

 

 俺を含めた三人は、その声を聞くと同時に動きを止めた

 背筋が凍えるような冷たい声。その声に俺達三人は騒ぐのをやめ、その声がした方へとゆっくり顔を向けるのだった

 

 

 

 

 

 「あのさ……いい加減にさ……」

 

 顔を向けた先にいるのは一人の少女。今回の一番の被害者であり、その身に秘める怒りをぶつけるべき少女

 その少女の顔は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……いい加減、話が逸れるのやめてくれない? なに被害者ほったらかして漫才始めてんのよ。……それとも何? 私なんて眼中に無いと? ここにいる必要性皆無だとそう言いたい訳? ——ふざけんじゃないわよ。確かに私なんてあんた達からしたら其処等のゴミ溜めにある廃棄物と同種族の汚らわしい餓鬼なのかもしれないけどさ……それでも、それでも私にだって意思があるのよ? 理不尽な事されて鬱憤晴らすぐらいしないと気が収まらないのよ!! それなのに何なのさっきから!? こっちが大人しく事が終わるのを待ってるってのに一向に終わらないどころか脱線に脱線を繰り返して私の存在オール無視!? 自分等だけで盛り上がって羨まし——じゃなかった、私を蔑ろにしてそんなに楽しいわけ!? 傍から見てあんた等は楽しそうに言葉を交えているようにしか見えないのよ!! それに比べて私はあんた等が話し終えるのを律儀に待ってるってのに——っ!! 私をほったらかしにしてふざけてんじゃないわよおおおおおおおおおお!!!」

 

 「「「も、申し訳ありませんでしたッ!!!」」」

 

 ——自分を他所に無駄話をしていた三人に対する怒りで般若の如き表情へと変化していたのであった

 その七罪の言葉に流石の三馬鹿も冷や汗をかきながら七罪の前で許しを請い始める。流石にふざけすぎたと今更後悔するが……もう遅い

 彼女の——七罪の猛攻が、今ここに始まる

 

 「この変態女ぁ!! あんたはまずごめんなさいの一言も無いわけ!? それどころか再犯するような言動ばかりとって本当に謝る気あるの!? そこのところどうなのよ!! えぇ!? なんとか言ってみなさいよクソ色情魔がぁ!!」

 

 「ご、ごめんなさいいぃぃぃ!! もう七罪ちゃんには今後一切無理矢理致しません!! 反省してますうぅぅぅ!!」

 

 「次にそこのマザコン女ぁ!! 一々余計な事言って話を脱線させようとしてんじゃないわよ!! あんたが茶々いれる度に無駄話がエスカレートしている事に気付いてくんない!? 真面目な話し合いの場では迷惑でしかないのよ!!」

 

 「も、申し訳ありません……で、ですが話が逸れるのは私だけのせいでは——」

 

 「あんたが一番脱線させてんのよ!! それにそうやって言い訳を挟むのがほとんどの原因でしょうが!! 何でもかんでも言い訳しないと気が済まないわけ!?」

 

 「う、うぅ……おっしゃる通りです……」

 

 「最後にそこの色気もクソも無い男女ぁ!! 最初は真面目に注意してたのに何で途中から自分も混ざって騒ぎ始めてんのよ!! そう言うのが一番質が悪いって事あんたなら知ってんでしょ!? まとめ役が職務放棄してんじゃないわよ!!」

 

 「マジですまなかった……こればかりはホント、返す言葉もございません……」

 

 「確認の為に聞くけど、あんた等この集まりがなんなのか本当にわかってるわけ!? まさかただバカ騒ぎしたいが為に集まっただけって言うつもりじゃないでしょうね!? ——違うでしょ!? そこの変態女が私に謝罪の意を示す為の話し合いでしょうが!! ふざける場面じゃないってのは雰囲気で分からないの!? わかってるんならいい加減真面目にやりなさいよこのキチガイ共がああああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある一室に木霊する少女の叫び

 もし、そんな少女の叫びに釣られて部屋を訪れた者は目撃する事になるだろう……

 

 中学生程の少女の前で、高校生程の少女達が仲良く並んで土下座するという……年上として情けない光景を

 

 




七罪は がまん を つかった
さながらヒカリのポッチャマの高火力砲が千歳さん達に炸裂するのであった
……あのポッチャマ凄いですよね。確か「がまん」でアリアドスの巣を数体のアリアドス共々吹き飛ばしていた気がしますし

そんな訳で我慢の限界に達して爆発してしまう七罪ちゃんでした。それと同時にキャラも爆発霧散したそうな……ネガティブっ子は一体何処に
多分この四人の中では一番の常識人になると思います。そして一番の苦労人にも……
ガンバレ七罪! 君が最後の希望だ!

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