急な話ですが、実は……千歳さんのイラストを描いておりました
しかし、そこで私は深く思い知ったのです……才能が無いと
首から上は何とか形にはなるんです。しかし、胴体が絶望的に下手くそすぎて泣いた。あんな姿にしてしまった千歳さんに私の心が酷く痛みました。ごめんなさい千歳さん……
そもそもイラスト書いてる暇があったら投稿しろよと言う自問自答に行きついた瞬間もう笑うしかなかったですねハハハ……はぁ……
とりあえずはネタが行き詰った時にでも再チャレンジしてみようと思ってます
良い出来だったら挿絵として投稿するかもしれませんが……まぁ自分の合格ラインが無駄に高いせいで、その可能性は限りなく低いでしょう
もしも挿絵が投稿されてたら……うん、笑ってくれて構いません。とりあえず投稿優先ではあるので出すとしても当分先でしょう
因みに、千歳さんの私服姿を書こうとしたわけなんですが……何故かイメージがカゲプロのキドだったんですよね
まぁ私個人としては好みのタイプなのでそれでもいいかなーなんて思っていたりもします。因みにイメージの中でも前髪は伸ばしているのは安定
さて、今回の話ですが、実は第四章第一話を合わせての前後編の話となっています
実際原作でも三、四巻は続け様の流れでしたからね。少し似せてみました
まぁ今回はタイトル通りの駆瑠眠が中心の話なのですがね。とりあえず前編です
それでは
おっすおっす。俺は千歳ってんだ! ……え? 知ってる? そりゃそっか
いやーなんかもうね、すげー心が軽いんだわ。今の俺
もう何も怖くねーって感じ。不吉ではあるけどまさにそんな気分なんだよなぁ。その後に向かえる結末がなんであれ、一切悔いが残らないぐらいには気分爽快状態だ
マミれるもんならマミってみろやお菓子〇魔女! 奇襲なんぞ捨ててかかってこい! 大きく開けた口にテ〇ロ・フ〇ナーレぶち込んでやんぜゴラァァァッ!!
……え? テンション高い? 知ってる
まぁそんな訳で、なんで俺がこんな深夜テンションにも似たタガが外れた状態なのか……皆さん、気になりますよね? ……ならない? そう言わんといて気になってよ。素っ気ない態度が一番虚しくなるんだから
さて、そんじゃあテンションが昂っている理由をお教えいたしましょう。特に出し惜しむ事も無いから率直に暴露します
実はだな……
「——俺に何の言伝も無く単独で突っ走った挙句に自分から注意しなきゃいけねぇって言ってた相手を煽りに煽ってキレさせた結果、最終的には街崩壊一歩手前まで事が進んでしまうという事態にまで発展させちゃった馬鹿娘にプッツンしているからさ」
「どなたに語りかけて——いえなんでもありませんわ。ですからその手に携えた”〈
「とりあえず自分がしたことについて反省しろや」
「ぅ……はい……」
来禅高校の屋上でやりたい放題やってたくるみんを半ば無理やり回収し、その時にあったいざこざを何とか退けた末に自宅へ帰還、及び反省会をやっているのでした
……え? 屋上で何があったんだって? とりあえず暫し待たれよ。反省会がある程度進んだら説明しますんで
それにしても……何度見てもやっぱりこの天使カッケーわ。十香の〈
……なんてな。俺も元は男なんだ、こういったカッケー武器を見ちまうとついつい興奮しちまうのもしょうがねーってもんなのさ。……実はテンションが高い理由、この天使が原因の割合が少し高い
だって五河の妹が実は精霊だったって言う超展開にも勝ってるもん。普通は「なんで五河の妹が!?」ってなるところ、突如として現れた五河妹を見た俺の反応は「やべぇ!? あの天使すげぇカッケェ!? あれ欲しい!!」だったもん。しょうがねーよね? 男だったら皆わかってくれる筈だ!
まぁ確かに五河妹にも驚かされたぜ? 驚くは驚くでも五河妹が精霊だったことに驚いた訳じゃねーけどさ
出現と同時に「またアンタが原因かアアアアアアアアッ!!?」って怒鳴り散らしながら俺に大斧を振りかぶって来た時は驚かずにいられなかったよ。だってなんでそうなったかよくわかんないんだもん。妹さんオコでしたけど、俺なんか粗相でもしましたかね五河さんよ?
……まぁ全然心当たりが全く無い訳じゃあないけどな。とりあえずそこも後で詳しく語るとするか
そんな訳で、俺は屋上に現れた五河妹の天使を【
……え? 危ないから人に向けてはいけないって? 知ってる。だが止めない。そんな俺はくるみんへ向ける砲門を背けることなくその場待機さ
因みに五河妹は砲門から炎を放っていたのに対し、こっちの複製版は俺の馬鹿みたいにある霊力が噴き出します。深緑色の奔流が少し綺麗だったり不気味だったり。3:7ぐらいで不気味さが勝ってるかな? もう少し明るい色だといいんだけどね。まぁ俺は気に入ってる色だから気にはしないけどさ
そんな複製版〈
まぁ複製した天使を自分で使うのもこれが初めてだからしょうがないのかもね。以前の〈
砲門からチラチラと俺の霊力が見え隠れする度にくるみんが怯えたり青ざめたりしててちょっと可哀想かも……俺の良心が死に絶えそうだ。まぁくるみんの方が辛いとは思うから気にしないようにするけどさ
くるみんが今どれ程辛い状態なのかと言うと、目の前でいつ暴発するかわからない恐怖に加えて元いた時代で植え付けられたトラウマが再発しているぐらいには気が滅入っていると思う
話に聞くと、どうやらあの場で宿主である狂三が油断した結果、五河妹の〈
ただ、酷な事ではあるだろうけど……お仕置きみたいなもんなので続けます。 ……え? 鬼? 悪魔? 否、精霊だ
くるみんが辛い事は重々承知。でもそのぐらいくるみんが危ないことをしていた事を自覚してほしいんだ。……ぶっちゃけ結構心配したし
だって俺が
いつの間にかに姿を消していたくるみんに気づいて外に出た時はホント焦った。だって霊力感知が不得意な俺でもわかる程の大きな霊力反応が玄関から出てすぐに現れたんだもん。ホントくるみんが居ない事に疑問を持って良かったよ……
何ですぐに気づけなかったのかって言うと、くるみんの魔改造という名の未来技術によって改造されたこの部屋の外と中では、まるで壁によって遮られているかのように一切霊力を通さなくなるからだったりする
それによってASTやDEM社、〈ラタトスク〉などの組織に霊力を感知されなくなったのはいいことだけど、今回はそれが仇となったみたいだわ
外でくるみん達がドンパチしている事にさえ気付けなくなるとは思わなんだ。こう言った面ではちょっと不便かもだし、後でくるみんと相談する事にしよう
……まさか俺に気づかせない為に狙ってやったわけじゃないよね?
俺の事を危険に晒したくないが為に頑張ってくれるのは正直嬉しいんだけどさ、それでくるみんが危険な目に合う羽目になるんだったらやめてほしい。もう誰かを失うのはこりごりなんだ、心臓に悪いからやめてくれ
——あれ? 俺って……誰を失ったんだっけ? そもそも俺、誰かを失った事なんかあったか?
……なんかよくわからなくなってきたから今はいいや。思い出せないってことはそこまで大事な事じゃなかったんだろ、きっと
とりあえず今は先にくるみんとの反省会を再開するとすっか
俺は目の前で正座をしているくるみんを見つめて反応を伺う事にする
怯えながらも何処か申し訳なさそうに黙り込むくるみん。複製版〈
くるみんは察しが良いし、俺がトラウマを抉るような真似をしてまで怒っているんだって事は察してくれてるとは思うんだよね。そうじゃなかったら、例え俺の事をお母様だと慕っていようが構わず機嫌を悪くするだろうからな。誰だって触れてほしくない事はあると思うし
そんなくるみんのトラウマに少し触れてみたのも、彼女に今回みたいな行動を取ってほしくないという意味を込めてます
くるみんはここまでしないとわかってくれない節があるからなぁ。少しの期間で分かったことだが、くるみんって俺の事となると自分の事を疎かにしちゃうような子なんだよ。それが彼女を堕天させた願いによる副作用なのかはわからないけど……とりあえず、無茶はしないで危うい時には必ず逃げてほしいというのが俺の意見だ。「命大事に」だよ、くるみん
……え? 実力行使じゃなくて話し合いで解決しろって? いやそれは……その……あんまり口で心配したとか気恥しくて言えないからつい
複製版〈
とりあえず次からは一言ぐらい声をかけてくれってことなんだよ。何してるかわかってればこちらとしても幾らかは安心できるしさ
そんな訳でだ。俺がくるみんの目の前で(砲門を向けながら)思考を巡らせていると、顔を少し歪めながらくるみんが俺へと恐る恐る言葉を投げかけてくるのだった
その重く閉ざされた口が開き、彼女が紡いだ言葉とは――
「あ、あの……お母様? 前髪の隙間からお見えになられる眼光が、素晴らしい事にRPGのラスボスのそれと全く同一のものですわよ? 普段見せない妙な威圧感にワタクシの心がストレスでマッハ——」
「……ん? 何? 俺も煽っちゃう? 宿主の精霊だけじゃ無くて俺も煽っちゃうのくるみん? ……イイ度胸じゃん。覚悟はいいみたいでよかったぜ」
「調子こいて申し訳ありませんでしたあああ! お慈悲を! お慈悲をおおおお!!」
——反省の言葉なんてなかったよチクショウ。前言撤回、やっちゃえカマエルー!(某運命の幼女風)
……なんてな。撃つ気は無いから安心してよ。ただ臨界点まで力を溜めてるだけだからさ?
どうやらくるみんに俺の想いは届かなかったようです。残念、親密度が足りていないようだって感じだわ
まぁそんな都合良く察してくれるなんて思ってなかったよ? 少し期待してただけで
でもお母様って慕ってくれるぐらいには親身に接してくれるようないい子なんだぞ? くるみんが気づいてくれると思っても不思議じゃないよね? たまに自然と心読んでくるし
もしかしたらわかってる上であえてふざけたのかも……くるみんならありえそうだと思ってしまった
とりあえず「ゴゴゴゴ……ッ」って複製版〈
……まぁまずはどっちもまともに振り回せるようにならなきゃなんだけどさ。何時エンカウントしても良い様に、今のうちに世界最強さん対策をしておかなくちゃだからね
それにしてもだ。トラウマ突っつかれても尚、ネタに走ろうとする辺りぶれないよなぁくるみんも。ハァ……心配してたのが馬鹿馬鹿しくなるじゃねーのさ
まぁこんな対応しか出来なかった俺にも非があるとは思うぜ? 言葉にして伝えないと相手には伝わらないって言うのはわかるんだけど……くるみんさんや、ちょっとぐらいは察してくれてもええんやで? ……そんなこと出来ない? 今更感が大きすぎてなんか釈然としないです
そもそも何だよラスボスって。完全悪役やんそれ。最終的に殺害か封印ENDじゃないかよそれ
……いや、結構俺って悪役側なのか? 今でも店から気に入った物を盗——いやいや、あれは借りてるだけなんだから問題ないか。うん、俺の気のせいだった。全然”悪”じゃないね! だって何時か返せばいいんだもん! ……相手が覚えていたらの話だけださ
……え? 借りパクだって? し、知らないなぁそんな言葉は、ハハハ……
た、例えそうだったとしてもしょうがないだろ? 常に時代は進化しているんだ。新しい道具や娯楽品が出てたら欲しくなるのは人間として当然の欲なんだよ!
……え? 今は精霊だろって? 今は触れんといて……
それはそうと、これだと反省会ももう少し続きそうな気がするし……よし、じゃあ俺達が反省会をやってる間、みんなには屋上で何があったのか回想シーンを拝見して頂こうと思います
まぁ所々省略はします故そう時間は取りません。ごゆるりと拝聴して頂ければ幸いでございます
それではどうぞ
「不思議とお母様には丁寧語が似合いませんわね」
「知ってる」
もう悔いてる雰囲気全く無いじゃねーかくるみんさんや
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なう・ろーでぃんぐ
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——数刻程遡り、来禅高校屋上にて——
「キャー♪ 士道様、お助けくださいましー♪」
「ちょちょちょ……ッ!? ちょっと待「ダァンッ!」——あぶなぁ!?」
「士道さん邪魔ですわ! さっさとそこの出来損ないから離れていただけませんこと!?」
「狂三様。怒りは美容の敵ですわよ? その綺麗なお顔に皺が刻まれることとなります。結論、もう少々COOLに振舞えませんこと?」
「……えぇそうですわね。ですのでさっさと目障り以外の何者でもない不出来な愚か者は退場して頂きましょう……!」
——ダダァンッ!!
「士道様バリアー」
「あ、あぶっ、だからやめ——いぃッ!?」
現状、駆瑠眠は半場無理矢理に士道の背後に周り、彼を盾にしながら狂三の銃撃から身を守っていた。そんな士道も、何とか体を捻る事で銃弾から逃れようとするものの、避けきれなかった銃弾は勿論ある。現に彼の制服はかなりボロボロになっていた
何故こんなことになったのか? ……簡潔に五行でここに記すとしよう
・駆瑠眠、狂三に対して煽り始める
・最初は相手にしなかった狂三
・そんな狂三に駆瑠眠が最後に一言
・「とある方のものまね、入りまーす♪ 『……きひひ。まさかこの時をも統べるわたくしの因果に抗う愚者が現れよ——』」
・そこまで聞いた狂三が即座に天使を乱射。その表情は怒りに歪んでいる。何故?
——以上だ
最早士道には訳が分からなかった
駆瑠眠の言葉が不快に感じたのはわかるのだが、士道にはその理由がよく分からない
そもそもこの後ろに張り付く存在が未だに何なのかが分からない。駆瑠眠の話によると、彼女は狂三の堕天使であるという事なのだが……目の前の狂三はそれを否定しているし、実際に天使も操っている
堕天使と言えば詠紫音も当てはまり、士道は彼女から堕天使についてはある程度聞いていた。だからこそ駆瑠眠の言葉にある矛盾点に士道は気づいていた。同一の存在である天使と堕天使が同時に存在している事になるという矛盾を——
しかし駆瑠眠の姿は狂三と酷似しており、口調も似ている
彼女は一体何者なんだ? 士道は駆瑠眠の存在に混乱し、インカム越しに聞こえる〈フラクシナス〉のクルー達も、この状況に混乱を示している
——ただ、一つわかる事が——
「頼むから俺を壁にして逃れようとしないでくれ!! 今のところ掠り傷程度で済んでるけど普通に痛いんですけど!?」
「いいじゃありませんこと。それに、男の子は体を張って女の子を守り通すものなのでしょう? ならノープロブレムですわ♪」
「問題しかねーから! 君が理不尽な理由で傷つくような目に合ってるんだったら助けようとは思うけどさ!! 明らかに相手を煽って怒らせてる子の身代わりになるのは流石の俺でも納得しかねるからね!? 寧ろ俺の方が理不尽な目に合ってるんですけど!?」
「——そこですわ!」
「いや『そこですわ!』じゃないからね!? 何問答無用で撃ってるの!? 俺って死んだら駄目なんじゃなかったっけ!? 狂三にとっては都合が悪いんじゃなかったっけ!? てか少し楽しんでない狂三さん!? 若干口角が上がってますけど!?」
「そ、そんな事ありませんわ!! 今優先すべきはそこにいる汚点である出来損ないの排除以外にありえません!! ——それ以外はどうでもよい事です!!」
「それって自分の目的をどうでもいいって言っちゃってるようなもんなんですけど!? それならせめて人を撒きこむようなことしないでください切実にぃい!!」
「汚点って酷いですわねー。ワタクシはあの頃の狂三様をお慕いしているというのに……あ、こう言うのもありましたわよね? 『時を刻みて夢現に広がる闇へと墜ちよ! バロッ——』」
「その記憶をあなた自身の存在と共に忘却の彼方へと抹消させていただきましょうかぁぁぁあああッ!?」
——ダダダァンッ!!
「だぁあああっ!! 危ねぇ!? 今のはガチで危なかったぞ!? ねぇ何処狙ってるの!? 今確実に急所狙ってたよな!? 後ろの子じゃ無くて俺を狙ってたよな!? もうこれただの八つ当たりなんじゃねーの!?」
「あら、タマが三つになると思いましたのに……」
「お前はお前で何言ってんの!?
この場に置いて、士道は完全に被害者だった
最早狂三も本来の目的を忘れて駆瑠眠の排除に没頭している。それが駆瑠眠の狙いなのかは定かでないものの、結果としてすぐさま士道が狂三の手に落ちる事を防いだのだった
その点を見れば〈フラクシナス〉側としては運が良かったのだろう。少なくとも、〈フラクシナス〉の司令官が艦内に戻るまでの時間は稼げたのだから
まぁその間に、とある理由で琴里も予想だにしなかった人物を回収せざるを得なくなってしまったのだが……
そもそも、琴里は駆瑠眠に時間を稼いだこと以外で感謝する気になれなかった
それもそうだろう。時間を稼いでくれているとはいえ、自らが慕う兄を肉盾にされている状況を見れば憤りを覚えるのも必然というものだ
その上、回収した少女の精神状態が思っていた以上に不安定になっている原因の一人が駆瑠眠——いや、狂三の分身体なのだから
それらの要因によって、少女の相手で精霊への対処が遅れてしまっているのが現状だ。何しろその少女、信頼しているのか依存しかけているのかはわからないが、琴里から引き離そうとしても全然離れようとしないのだ。流石の琴里も少女の相手をしつつ正確なサポートをするのにも限界がある
様々な問題を解決するため琴里が下した判断は、現状を令音や神無月を中心にクルー達に任せ、その間に琴里が少女に一時的なメンタルケアを施すというものだった
可能な限り少女の心を安定させた後、急いで現場に戻るようにした。堪えていたものが決壊したかのように、精神が徐々に幼くなっていっている少女が琴里以外のクルーを怖がっている以上、無理に他人へ押し付けることも出来ない
こう言うのは令音が得意なんだけど……そう頭を抱えながら、琴里は司令室から一旦席を外す事になる
そんな状況を知るよしも無い屋上の三人は、その身に任せて喜劇を演じ続けた
そう、喜劇だ。一人の堕天使によって、先程までの殺伐とした雰囲気は霧散しているのだからそう表現しても間違いはないだろう
士道にとっては堪ったものではなく、狂三にとっては自身のイメージを守るためにと、もう最初の目的はなんだったのかと問い正したくなる現状
今も尚屋上に響く発砲音はこの状況に陥れた元凶へと向けられる。その向けられている相手、駆瑠眠はと言うと――
「……士道様は狂三様の事を名前で呼んでいらっしゃるのに、ワタクシの事は名前で呼んでくださらないのですか?」
「え……いや、その……」
「気軽にくるみんと呼んでくださいませと、先ほどもワタクシは言いましたわよ? さぁさぁ」
「えっと……くるみん」
「はい、士道様♪」
「……っ」
今聞くことではない事を士道へと問い掛けていた。この娘は真面目に事を進める気はあるのだろうか? ……ないだろうな
士道の返答に対して満足そうに微笑む駆瑠眠。そんな駆瑠眠の純粋な喜びを乗せた微笑みに、士道は不覚にも胸が高鳴ってしまった。駆瑠眠の微笑みだけで頬を染める辺り、まだまだ女性慣れはしていない事が傍からでもわかるだろう
……そんなやり取りを不快そうに傍観する少女が一人
「……なんでしょうこの気持ち。これは……殺意? ——コホン。それはともかく、わたくしを退け者にして何をしていらっしゃるのでしょう? はっきり言って、腹立たしいことこの上ないですわね」
「あ、いやこれはッ——!?」
「——あら? まだいらしていたのですか狂三様?」
「なんでそんな煽るようなこと口走っちゃうかなぁ駆瑠眠さんや!?」
先程よりも機嫌を悪くする狂三
彼女にとって、自身と同じ顔の存在が彼女の意思にそぐわない行動をしている事自体が気に入らないのだが、その上で煽られると言うのは屈辱の極み。彼女のプライドが駆瑠眠の存在を許す事が出来ないところまで傷つけられているのだった
そして——
「……何をやっているのだ? シド-」
「……何をしているの士道?」
「……え?」
そのやり取りを不快そうに傍観する少女が、追加で二人
服装の一部を霊装のそれと化した姿で、片手で大振りの剣を軽々と携えている少女、夜刀神十香
レオタードの様なスーツに身を包み、レイザーブレイドを構えながら見据える少女、鳶一折紙
十香の天使〈
——背後から見れば、駆瑠眠が背中に抱きついているようにも見える状態の士道へと——
そこからは修羅場だった
己が感情に従い、士道に対する憤りをぶつける十香
物静かに、しかし凄みのある言葉で問い掛ける折紙
未だに駆瑠眠に対して憤慨し、銃撃を浴びせる狂三
そして、その三人と士道の反応を愉快そうに眺め、時に彼女達の心に薪を入れて燃え上がらせようとする駆瑠眠
おそらくここまでは彼女の掌の上なのだろう、本来冷静である狂三をも焚き付け、自分は安全圏からそのやり取りを傍観する……ある意味性格がいいと言ったところだろうか?
——だからこそ、やりすぎた事に気付いた時にはもう遅い
「——もう我慢の限界ですわ」
声のトーンを落とし、顔に影が差した状態の狂三が静かに呟く
バッ! ——っと手を上空に掲げた狂三。それと同時に——この場に人影が現れた
『な……っ!?』
その光景を見た士道、十香、折紙は驚愕の声を上げる。駆瑠眠は知っていた故に驚きはないものの、先程に比べ表情が引き締まっている。その能力を知っているが故に警戒を強めているのだ
場に現れた影は1人ではない
4人、9人、17人と次々に現れ続ける人影
その人影一人一人が――狂三の姿をしていた
彼女達は皆「時崎狂三」その人だ
しかし、その者達は本体である狂三にとって過去の自分の生き写しに過ぎない
一秒前、一分前、一時間前、一日前と、あらゆる時間の「時崎狂三」を天使の力で構築し、召喚する
それに限りは無い。彼女の”時間”がある限りいくらでも呼び出せるのだ。これが、彼女が真那に殺され続けても尚生きていた理由だった
屋上に現れた狂三の分身体は――ざっと50人はいる。屋上のほとんどを占領し、一人一人が二丁一対の銃を士道達四人へと構えていた
その人数を前に士道達が抗う事は出来なかった。その兵力差に十香や折紙だけでは手に負えないだろう
十香がもし万全の状態であれば可能性も見えてくるが、彼女の力のほとんどは士道に封印されている
現にここまで来る間、十香は狂三の分身体に足止めされていたのだ。本来の力があれば難なく蹴散らすことが出来たものの、足止めとは言え狂三の分身体が撤退するまで突破することも出来なかったのだ。そんな分身体が目の前に数十人もいる
折紙もまた十香と同じで分身体を振り撒くことが出来なかった。AST内で屈指の実力者とはいえ、やはりそこは精霊と人間だ。自力が違かった
十香と折紙にこの人数を捌ききることは出来ない。ましてや守る対象である士道を庇いながらでは可能性などありはしない
だからこそ、この場に本来いるはずがなかった存在によって戦況は変わってくるだろう
(……ここまでは
多数の分身体が現れても尚顔色一つ変えずに佇む駆瑠眠に、先程までのいい加減さは存在しなかった
ここまでは”知っている”が故のお遊びに過ぎず、ここからが彼女の本当の舞台。彼女にのみ許された能力により、ここから先は彼女にも知り得はしない未知の歴史
本来ならこの場に真那が現れた。駆瑠眠の代わりに真那が現れ狂三と対峙した——それが
初めに体験した時は本当にこの日に対峙したのかと疑ったものだ。そのせいで数回”やり直す”羽目になったが、それから駆瑠眠が居る時代では真那がこの場に現れる事は一度もなかったのを皮切りに方針を変える駆瑠眠
故に
まぁ演じたとは言ったものの、彼女は彼女なりの足止めによって狂三の所業を一時的に鈍らせたのだが
それも仕方が無い事だ。彼女は戦闘特化ではない、故に戦闘慣れしている真那の役割を演じるなど無理な話だ
だからこそ彼女は何度もやり直し、自身の望む未來が来るまで演じ続ける
幾度となく狂三に殺された。ヘマをして狂三の銃口の餌食となった
そしてその度に何度もやり直す
それが駆瑠眠が誇る〈
その能力は”死に戻り”
自身の命が潰えた瞬間、指定した時間軸へと意識と記憶を逆行させる能力
自由に時をかける駆瑠眠だからこそ可能とした疑似蘇生能力、それが駆瑠眠の切り札だった
いくら殺されようが指定した時間へと回帰する。その経緯や記憶を過去へと送り、対処法を見出す能力。それは最早未来を見ているのと同意義であり、過去へと遡っているとも呼べるもの
遡れる制限はあるものの、彼女が本当の意味で死に絶える事など在り得はしない
彼女にとっての死とは、思考を捨てる事以外に在り得はしない
だからこそ慎重に、そして上手く事が運ぶよう流れを誘導する。……自身が望む結末へと目指して
駆瑠眠が望む未來を掴む。それこそが彼女の目的——『千歳と言う名の少女の運命を変える』という未来の狂三の願いによって生まれた堕天使——〈
——全ては、あの忌まわしき結末を否定する為に——
正直な話、天使の中では〈
詳しく挙げるのであれば、柄が長くて両刃の斧だともう最高。ダクソで言う黒騎士斧なんかが当てはまります。使っては無いですけど
……え? なら何を使っているんだって? ハルバードです(ドヤァ)
……おっと失礼。ここはダクソ談義ではありませんでしたね
とりあえずそんなロマン武器の〈
さて、今回の主役と言っても良い駆瑠眠の能力ですが、まぁ言葉通り死に戻りです
マイクラで言う経験値を持ってリスポーン地点に復帰、ダクソで言う常時犠牲の指輪状態で篝火に復帰みたいなものだと考えていただければ幸いです
前半は事が済んだ後の反省会、後半は屋上での出来事後半でした
途中とある少女が琴里司令に依存しかけてましたが……千歳さんは悪くないよ! 多分悪くないよ! おそらく悪くないよ!(自信を持って肯定が出来ないという……)
次回後半戦、深淵と炎鬼が乱入するぞい
そして……原作崩壊はアニメで言う二期からと以前に言った事がある私ですが、はっきり言いましょう……
第四章は、最早薄皮残った状態になると思われます。結果は同じ、でも過程が見る影もないかもしれないですね
しかし水着回はあるよ! これからの季節にピッタリだ!
では次回、次章をお楽しみに