俺が攻略対象とかありえねぇ……   作:メガネ愛好者

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お久しぶりです。メガネ愛好者です

此度は大変長らくお待たせしてしまいました。申し訳ありません
詳しい事は省きますが、書く時間などが足りなかったことが遅れた原因と言えましょう
その上、数日置きに書く内容が変わったりするのでなかなかまとまらなかったり……

だからこそ、もう一つの謝罪を

……次回予告詐欺をしてしまいました。申し訳ない
その上、章終話にもならずに……突発的に閃いたからと言って読者様方を騙すような真似をしてしまったことを深くお詫び申し上げます
しかし、この話は入れておかなければいけないものだったのです。計画性が無さ過ぎてもう情けないですね……


今回の話はとある眠らされた少女のお話です
ぶっちゃけ原作読んで「こう言う展開もあるかも?」って思ったのが事の発端だったり
それでは


第八話 「頭が可笑しくなりそう? 知ってる」

 

 

 ——時は少し遡る―—

 

 

 千歳によって眠らされた真那は、ASTに回収されて数時間後に目を覚ました。ASTは知るよしも無い事だが、千歳が転移後にすぐ〈終幕の瞳(ダース・プリュネル)〉を解除したからだろう

 〈瞳〉の干渉を受けた真那なのだが、目覚めてからの彼女にはこれと言って異常が見当たらなく、報告されていた依存症状に悩まされる事もなかったのだった。寧ろ目覚めてから妙に体調が良い事に真那は困惑したとか

 何故真那に【心蝕瞳(イロウシェン)】の症状が現れなかったのか? それは今のところわからない。今回真那が無事だった理由が明かされれば【心蝕瞳(イロウシェン)】の依存症状に対抗する術を見出せるものなのだが、果たして上手くいくのだろうか……そこは今後の課題となるだろう

 

 

 ——そんな依存症状の原因究明に奔走するASTとは打って変わり、真那は目覚めてからずっとあることに頭を悩まされていた。依存症状の事など気にも留めずにだ

 

 

 眠りから目覚めて暫しの間、真那は何処か上の空と言ったような感じでボーっとしていた

 寝起きの為に呆けている訳ではない。依存症状に苛まれている訳でもない

 彼女は……数日前から抱くようになってしまった悩みを整理するのに夢中になっているのだ

 

 

 

 その悩みというのが――兄、五河士道の事だった

 

 

 

 数日前に出向社員としてASTに配属されてから耳にするようになった少年。その少年は、真那が今まで追い求めていた人物だった

 血を分けた家族。今まで離れ離れとなっていた唯一の肉親であり、その年齢に見合う至って普通の高校生男児。……ちょっと周りに綺麗な少女達が囲んでいるが、それは今気にするところではない

 

 そんな一見普通の少年なのだが……もしかしたら、ただの一般人ではないのかもしれない

 

 そう考えてしまったのにも訳がある

 士道と出会ってからというもの、真那は士道について調べ始めていた。士道とは一体どんな少年なのか? 彼の周囲の環境はどうなっているのか? それらの彼にまつわる情報を秘密裏に集めていたのだ

 最初はただの好奇心。だが調べていくうちに士道やその周りから不可解な点が多々浮き彫りになってきたのだった

 一見何の不備も無さそうに見える書類に、真那の勘が何か違和感を感じ取れたことが始まりだった

 真那としては実の兄を疑うような事をしたくは無いのだが、今までの人生で得た経験からくる勘がその不可解な点を見過ごすことを許さなかった。目を逸らしたくとも自分の勘から目を背けることは出来なかったのだ

 その上で”彼女”の証言やあの場所での状況がその不信感を確信的な方向へと向かわせてしまったのだった…… 

 

 

 

 

 

 人間であり、何の力も持たない筈の一般人……五河士道

 あの時、二体の危険な精霊が集ったあの場所に、精霊とは無関係な筈の士道が立ち会っていた。寧ろ巻き込まれていた

 真那が駆けつけたあの場には件の士道と仇敵——〈ナイトメア〉こと時崎狂三の一人と一体だけだった。その他にいたであろう民間人は、既に動かぬ肉塊と化している

 その現場を見た真那は最初、士道が偶然にも巻き込まれたものだと考えていた。偶然にも〈ナイトメア〉と遭遇し、偶然にも奴の”食事”に居合わせた事で命を狙われたと最初は考えたのだ

 ……そう、”最初は”考え

 

 

 ——駄……目だ! 殺しちゃ——!——

 

 

 彼の口から途切れ途切れに漏れ出た言葉は、どれも〈ナイトメア〉を殺す事を否定する言葉だった

 一般人であろう士道は、きっと彼女が精霊と言う世界を殺す災厄だとは知らなかっただろう。もしくは、彼女がクラスメイトと言う立場にいるからこそ、級友を殺めないでほしいというものだったのかもしれない。それか、単純にどんな状況化でも人殺しをしてはいけないというモラルの上での言葉だったのかもしれないし、目に広がる光景が現実のものだったかも疑わしく、ただただ命を殺める行為に否定的だっただけなのかもしれない

 とにかく士道は〈ナイトメア〉を殺す事に否定的だった。……そんな士道の言動が、真那に一つの疑問を抱かせてしまう事になる

 士道が本当にただの一般人なのだとしたら、一度は言う筈であろうその言葉を……彼は言わなかった

 

 

 

 (……なんで……自分の身を案じねーんですか、兄様……)

 

 

 

 士道は人が目の前で殺害されている状況下にも関わらず、その加害者である精霊が目の前にいるにも関わらず、その精霊の力によって押し倒されても尚——士道は一言も()()()()()()()()()

 

 士道の元に辿り着く少し前、空から現場へと接近していた真那の目にはまだ一人だけ生き残りがいるのを確認していた

 悔しくもその者の救助には間に合わなかった。士道が食われる前には間に合ったものの、救えたかもしれない命を守れなかったことに歯嚙みする

 そんな人の命を簡単に詰み取る〈ナイトメア〉の所業に苛立ちを抱いていたが故に、真那は士道の言動に対する不可解な事に気づけなかったのだ

 

 自身の身を考慮せず、例え命を狙っている相手に対しても手を伸ばそうとするその姿勢には好感を覚えるものの、限度が過ぎればただの愚者だ

 限りある自身の命を粗末に扱おうとする奴ほど周りの事を考えていないとも言える。もしも自分が死んだ時の事を……その後の事を何も考えていないのだ

 

 声は聞こえなかったが、魔力によって強化した視力によりどんな状況かは遠くからでも確認できていた真那

 最後の犠牲者は目の前で銃を構える化物に怯え、必死に助けを求めていた。その姿はとても痛ましいものだったが、最早逃げられるような状況ではなく、数秒後にはその助けを求める口の動きも止まってしまう。再びその口が開く事はもう無いだろう……

 

 そんな状況化、人の命が潰える瞬間を目撃した士道は〈ナイトメア〉に対して確かに怯えていた

 体は震え、その場から逃げ出そうとする動きも確認できた。〈ナイトメア〉に捕まった時も表情は恐怖に埋め尽くされていたのも確認している

 

 

 しかし、真那が助けに入った時もその後も……結局士道の口から助けを求める言葉が漏れることは無かった

 

 

 目の前にある死の恐怖に硬直していただけなのかもしれないが、そうだったとしても少し妙だ

 何時殺されてもおかしくない状況で一言も助けを求める動きを見せなかったのは何故なのか。いきなり奇妙な武装を身に纏った真那が現れたとしても、今にも自身に手をかけようとしていた相手から庇ったのを見れば少しぐらい助けを求める声が上がっても良かろうに……

 その上、士道は助けを求めるどころか目の前にいる〈ナイトメア〉を口でだが庇おうとまでしてきたのだ。ただの一般人が殺そうとした相手を庇うなど普通はありえないだろう

 例えそれが知り合いだったとしても、最近知り合ったばかりの相手に……それも明確に命を狙っている相手に対して、自身の身の安全を懇願するよりも優先的に庇おうとするものだろうか?

 

 ——否、そんな一般人などいやしない

 

 例え真摯に他人へ接する者だったとしても、()()なら自身の命を最優先にするのが一般人の反応だ。命を蔑ろにして何かを成そうとする奴など一般人なんて言える訳がない。そんな事をするのは才能に恵まれた天才か命知らずな馬鹿のどちらかだろう

 

 だからこそ疑ってしまう。本当に士道がただの一般人なのかと——精霊に関わる関係者なのではないかと

 

 もしそうだったとしたら、今回の〈ナイトメア〉との遭遇も偶然ではなかったのかもしれない。危険な存在に意図的に接触したのかもしれないのだ

 その結果、ようやく出会えた実の兄を信頼したいと思っている傍ら、兄は一体何者なのかと警戒してしまう事となってしまう

 警戒すれど信頼したい。そんな矛盾な感情が真那に押し寄せ、言い様の無い感情が思考の中で渦を巻く

 その纏まらない感情に、真那は人知れず苛立ちを覚えてしまう……それが真那の現状だった

 

 

 

 

 

 そもそもな話、何故真那は士道に対して不信感を抱いてしまったのか?

 たった一度の不可解な事なら頭を悩めるほどではなかった。「兄様は他人に対して心優しい人」で片づける事も出来たのかもしれない

 

 だがそれは、以前にとある人物から聞いた言葉でその選択肢を無くしていたのだ

 

 

 

 『注意して。士道はこれまでに多数の精霊と接触している』

 

 

 

 自身の兄の彼女と名乗る少女。AST内において最も交流がある鳶一(とびいち) 折紙(おりがみ)が語った士道の情報……それが真那に疑問を抱かせることとなったのだ

 

 

 

 数日前、真那が天宮市に滞在してから初となる〈ナイトメア〉の討伐に成功した次の日の事だった

 士道を一目見て「兄様はどんな人物なのか?」と折紙に会って話していた時に出てきた話題が真那の疑問を増長させてしまう事になる

 

 折紙自身は士道の安全を願って話した事だったのだろう。先日に討伐した対象が、昨日殺された事をなんでも無かったかのような態度で学校に登校してきたのだから

 その上、思い切って〈ナイトメア〉に何が目的か問い質す為に接触した折紙は——〈ナイトメア〉の胸を締め付けるような目的に焦りを抱いてしまう事となったのだ

 

 

 その返ってきた言葉というのが——「士道さんが欲しい」

 

 

 精霊である彼女からこんなことを聞かされては、その対象の恋人(だと思っている)の折紙としては最早気が気じゃないだろう

 ただでさえ最近は精霊の被害が酷いのだ。〈アビス〉による集団催眠に〈プリンセス〉による街の被害、挙句の果てには逃げる事しかしてこなかった〈ハーミット〉が顕現する天使の狂暴化。いくら他の隊員達よりも腕が立つとはいえ、折紙一人の力では手に負えない状況の中で新たに加わった〈ナイトメア〉の目的

 これらの要因から折紙はここ最近にあった出来事を真那に伝え、その上で士道が何かしらの目的を持って精霊と接触しているような言動を見せていること含めて真那へと忠告する事としたのだった。全ては士道の安全を守るが故に……

 

 

 

 四月十日、来禅高校の始業式の日に〈プリンセス〉が現界した際、シェルターに向かった筈の士道がその場に居合わせていた

 

 次の現界時、士道は空間震発生源の来禅高校にて再び〈プリンセス〉と接触している。最初は精霊に捕まったのかとも思ったが、士道自身に逃げるような動きは無く、逆に精霊へと語りかけていたようにも見えた

 

 静粛限界によって現れた〈プリンセス〉及び〈アビス〉と同行し、街中を歩きまわる。まるでデート、私が士道の彼女なのに……彼の両脇にいる雌犬共が憎たらしくて仕方が無かった

 

 約一月後、〈ハーミット〉を殲滅中に再び士道は現れた。対象に呼びかけていたのを確認している。その日士道は私の部屋に来てくれていたのに……そのまま一晩を過ごして……深めようと思っていたのに……結論、精霊は空気を読めない。やはり殲滅すべき存在である

 

 

 

 折紙が居合わせた場面で士道が精霊と接触して何かをしていた状況を告げられた事により、真那はその信じがたい情報に困惑することになる。……途中彼女の私怨が混ざっていたが、今はそれどころではない

 そんな馬鹿なと折紙の言葉を否定したいが一方、彼女の表情や雰囲気から嘘をついている節が見られないことにもしかしたらと思ってしまう

 きっと何かの間違いだ。単に義姉様が見間違えただけだ

 真那は深くそうであってくれと願ったことだろう。士道がそんな危険な行為に及んでいる事実を信じたく無かったのだ

 

 

 きっとただの偶然だ……そう、ただの偶然なのだ……

 

 

 ……そうであってほしかった

 

 

 そこで真那は思い出してしまう。入隊当初、AST隊員10名との模擬戦後に見せられた〈ハーミット〉との戦闘映像を

 そこに映し出されていた——兄の姿を

 

 あの映像に映し出されていた物こそ、先程の折紙の会話に出てきた場面その物であった

 まさかと思い、真那はすぐさまASTの隊長に許可を貰ってここ最近の戦闘映像なども見せてもらった

 

 

 

 ——映っていた。自分と顔つきの似た少年が――

 

 

 

 戦闘音によって声は聞こえない。士道が映ったのも一瞬の事だったが為に精霊とどんな事を話し、接しているのかも上手く伝わらなかった

 しかし、先程の折紙の話を聞いてしまった今の真那には……どの映像からも、その少年が精霊へ敵意や畏怖の念を向けている様には見えなかった。——見えなくなってしまったのだ

 寧ろ精霊に歩み寄っているように見えてしまい、そんな精霊も彼に歩み寄っているようにも見えてしまう

 特に〈プリンセス〉と〈アビス〉を映した映像なんかは……もう見ていたくない程に、彼等が親密な関係なのではないかと疑ってしまえる程だった。……いや、疑うも何も本当の事なのかもしれない

 

 

 何せ士道を射貫かれ倒れた時に見せた精霊達の反応が——彼の死を目の当たりにして怒り狂っているようにしか見えなかったのだから

 

 

 〈プリンセス〉の暴乱も、〈アビス〉の敵意も士道の死がきっかけで引き起こってしまったことのように見えてしまう。大事な人を失ったが為に、その身に憤怒の念を抱き込んでいだ

 真那は頭を悩める。精霊が人間に感情を向けるものなのか? 精霊はただただ周りに暴威を振り撒く危険生物なのではないのか? そんな考えが脳裏を飛び交う

 その後は〈プリンセス〉の蹂躙によって映像が一時途切れ、再び映像を再開させた時には二体の精霊は姿を消していた。死体となった筈の士道の姿もまるで幻だったかのように消えている

 静まり返ったその場に広がる光景は、二体の精霊が胸に抱いた憤怒による壊滅的な残痕だけだった

 

 しかし、その映像が流れる時点で真那は既に映像へと視線を送ってはいなかった

 真那はただ静かに俯いて黙り込んでいた。……映像を見ている余裕が無かったのだ

 

 

 真那の常識が崩れ始めていく。今まで精霊に対して向けていた——全ての精霊が人類の敵だという認識を……

 

 

 混乱する頭を落ち着かせる為に、必死に思考を落ち着かせようと頭を整理する

 今までに真那が精霊に対して持ち得ていた常識は『世界に破滅をもたらす災厄』というものだった。現に〈ナイトメア〉に対しては今でも考えは変わっていない

 しかし、〈ナイトメア〉以外の精霊をも同一の存在だと決めつけるには些か早計じゃないか? ——と、真那の精霊に対する認識が変わろうとしているのだ

 これが士道ではなく他の人物だったとしたら、そこまで気にかけることもなく、認識が変わることもなかっただろうかっただろう。だが実の兄の士道を通して精霊という存在を見てしまったことで、真那の認識は変わらざるを得なかったのだ

 

 何故精霊が人間を思って怒り狂う? 精霊は人間を、世界を滅ぼす元凶ではないのか? そんな精霊になんで……兄は歩み寄っているのだろうか?

 

 疑問と困惑、他様々な感情が混ざり合わさり、真那がその日の内に頭を整理することは叶わなかった

 ただ深く考えすぎなだけなのかもしれない。でもそれを決める証拠が無い

 真那は今まで〈ナイトメア〉以外の精霊に遭遇した事が無いが故の「もしかしたら」と思ってしまう

 資料でしか知らない精霊達がもしかしたら友好的な存在なのかもしれないと考えてしまう

 それらの要因が嘘か誠かを決めるものがない以上、真那の考えはまとまらないのであった……

 

 

 

 そして数日後、一時的にその考えを頭の隅に追いやる事で何とか平静を取り戻した真那だったのだが……その日、士道と〈ナイトメア〉の接触によって再度頭を悩まされることとなるのだった

 

 真那は考える。——「今日の事が偶然の出会いではなく、兄様から接触したものだったとしたら?」と……

 

 目覚めてからあの場で起きた事を振り返り、その中で不可解に感じた士道の言動によって真那は焦燥に駆られ始めてしまう

 この街に来てから変化しようとしている精霊への認識がただの妄想で終わるのならよかったのだが、それで済ませるにはあまりにも状況証拠が揃いすぎていて異議を上げられない

 それでも真那はあくまで巻き込まれただけなのだと、本当にただの偶然なのだと思い込もうとし、とにかく認めようとしなかった

 真那は士道が精霊とは無関係だという証拠を欲した。その情報を求め、ベッドから飛び出し血眼になって彼に関する事を掻き集め始める

 全ては兄の為、自身の唯一の肉親の身の安全の為に……

 

 

 

 

 

 しかしその行動は、真那自身の首を絞める結果となってしまった

 調べればすぐに見つかった。あってほしくなかった精霊との関わりを……士道の周りにいる存在がそれを証明してしまったのだ

 

 

 ——精霊が力を失い、人間の少年と親身な関係になっている可能性あり——

 

 

 信じられなかった。理解出来なかった。最早訳が分からなかった

 しかし折紙の証言や独自の捜査網で集まった情報にある〈プリンセス〉と思わしき人物——夜刀神十香の存在が、士道と精霊の間に関りがあることを裏付けようとしていたのだ

 

 四月頃、〈プリンセス〉の現界が確認できなくなった時期と同時期に士道のクラスへと転校してきた少女。彼女は〈プリンセス〉の容姿と酷似していた

 そんな少女の住まい先は、最近になって急遽建てられたマンションの一室だ。——そのマンションは五河家の隣に隣接していた

 

 ここまで情報が揃ってしまえばただの偶然で終わらせるには早計すぎた。ASTの観測機は十香から精霊の力を確認出来なかったようだが、その容姿や言動は〈プリンセス〉のそれと何ら変わらない。最早同一と言ってもいい程に酷似しているのだ

 折紙に確認を取ったところ、人気のない場所で話す士道達の会話から〈プリンセス〉と夜刀神十香が同一人物である様な会話を複数確認していることを聞いたのも大きい。……何故人気のない場所での話を知っているのかはあえて詮索しない

 

 因みに折紙は士道の身の安全を考えてASTにはその事を報告していないようだ

 もしも知られてしまえば〈プリンセス〉を含めて士道の元にも何かしらの接触があるだろう。上層部や一部の隊員達は精霊を敵視している以上、精霊と交友を持つかもしれない士道を快く思うものなどまずはいない。それが原因で士道に何かあればと考えると、どうしても折紙は報告できなかったのだった。……例え自分が精霊を憎む者の一人だとしても

 

 

 

 真那としては頭が痛い事実だっただろう。士道の潔白を証明しようと突いた藪からは蛇が出てきたのだから

 しかもだ。折紙からの情報提供によって知り得た情報からは、もっと確実性のある精霊との関わりをちらつかせていたことが判明した

 以前に折紙の部屋へ訪れた士道がその際に告げた言葉——「精霊の力が確認できなくなったら、もうその精霊に攻撃をすることはないんだな?」——という言葉が、少なくとも士道が精霊と関わっている事を確証づけることとなってしまう

 

 これらの事によって真那はもう目を背けることが出来なくなってしまった

 一般人だと思っていた実の兄が精霊に関わっている。それがもう目を背けることができないものにまで信憑性が高まってしまったのだ。泣き叫んでこの言い様の無い感情を発散させたくなった真那であった

 

 しかしそこで真那は何か頭の隅に引っかかる知識に気付く事となる

 

 士道の言った言葉。そして現実に起きている不可思議な現状

 それらを組み合わせ、もういっそのこと士道が何で精霊と関わろうとしているのかを考え始めた真那は、数刻を持ってしてとある存在を思い出す事となるのだった

 

 

 精霊を武力以外で無力化する事を掲げた組織——〈ラタトスク機関〉

 

 

 噂で聞いた程度の組織。真那自身、その組織を都市伝説かなにかだと考えて意識を伸ばす事もしていなかった

 だが士道が言った言葉の事も考えると……どうにもその組織の存在が匂ってくるのだ

 最初は真那もまさかと自分の考えに疑うのだが、精霊を対処するための組織であるASTや自身が身を置くDEM社にも関わりが無いと言うと……最早そこしか選択肢がなかった

 真那が疑ってしまうのも無理はない。今まで殲滅対象だった存在を対話によって懐柔するなど、そんな夢物語が実在するとは思ってもみなかったのだから

 しかし〈プリンセス〉の現状や士道の言動、そして価値観が変わりつつあった真那はその可能性を見出すことになったのだ

 

 もしかしたらその組織に自身の兄が席を置いているかもしれない

 それならば話が早い。こうなってしまえば後はヤケクソだと言わんばかりの開き直りっぷりを見せる真那は、すぐさま行動に移すことにしたのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「——てなわけで、そこんとこどうなのかお話を聞かせてもらえねーですか?」

 

 「……いきなり人をこんな辺鄙な所に呼んだと思ったら訳の分からない話をし始めて……あなた、頭は大丈夫かしら?」

 

 「……正直もう無理ですかね。頭がパンク寸前でもう何が何だか……あれ? もしかしてこれは真那の妄想でいやがりますかね? もしもこれが現実で無ければ真那としては願ったりかなったりなのですが……まぁ現実ですよね。フフッ……まさに悪夢(〈ナイトメア〉)ってことで嫌がりますでしょうか? ホント憎たらしくて仕方がねーですね全く……ダルマにして風俗店にでも売り飛ばしてやりたい気分ですよははは……ハァ、真那はどうしたらいいんでしょうね、姉様……」

 

 「(思っていたよりも重傷じゃない……てかこれ、まさか千歳の【心蝕瞳(イロウシェン)】の影響じゃないでしょうね?)」

 

 とある廃墟、そこで青髪ポニテと赤髪ツインテは言葉を交えていた。……片方は最早満身創痍ではあるけれど。主に精神的に

 

 




真那ちゃん病み期に突入。もう一人の士道の妹へと質問(救助)を求めるの回でした
そしてようやく折紙さんの名前が出せた……ぶっちゃけ千歳さん側で名前を出すのが難しかったんですよ

本編がわかりにくかった人の為の簡単な流れ(真那視点)

・兄がどんな人なのか知りたい! 調べてみよう
・兄の彼女とエンカウント。兄にこんな可愛い彼女が!?
・話を聞くと兄が精霊とエンカウントしてた!?
・そういや映像にもいたっけ? 他の映像はどうだろう?
・なんで精霊に歩み寄ってんねん。危ないでしょーが
・てか〈プリンセス〉って兄の家にいた少女そっくりやん
・義姉様によると精霊らしい。でも観測機が……
・それにしてもめっさ仲良かったな……あれ? 精霊だよね?
・あの人が精霊だったとしたら今までの精霊に対する印象ががが
・セイレイ? 何それ? 美味しいの?
・数日後にようやく落ち着いた真那ちゃん
・しかしその日、兄と怨敵がエンカウント!
・〈ナイトメア〉には圧勝。〈アビス〉に完敗
・すぐに目が覚めた。でも兄の言動のせいで再び精霊に対する印象ががが
・てか兄は何故自分の心配しないし。死の寸前だったよ?
・そもそも何で精霊庇うし。あれ害悪でしょ? ……え? 違う?
・もう何が何だかわからないよ。助けてもう一人のシスター

——多分こんな感じ
正直に言って勢いで書いた。めちゃくちゃかもしれないという不安が……

……ゆっくり書く時間が欲しい

因みに千歳さんの〈瞳〉が原因ではありません。あくまで真那ちゃんが深く考えすぎた結果です

最後に一つ……正直言って書いてる本人が何を書いてるのかよくわかっていない状態で書いた話です。書き直す可能性あり

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