俺が攻略対象とかありえねぇ……   作:メガネ愛好者

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メガネ愛好者です

やっと四糸乃ちゃんのターン!
よしのんのターンでもある
ただ最初は美九さんのターンかも……

独自設定になるのかな?
このSSでは、美九の精霊化は三月当たり、そのまま再デビュー、一気に人気を勝ち取った感じです
多分違和感は……無い筈

今回の四糸乃とのエンカウントは時間軸として四糸乃と主人公クンが出会う数日前の出来事です

それでは


第二話 「俺って引きずるタイプ? 知ってる」

 

 あれから数週間が経ったと言っておこう

 今日も今日とて相も変わらず番台中。のんびり気ままに怠けています

 

 ただし——

 

 

 

 

 

 「千歳ちゃん、大丈夫かい? 具合が悪いんだったら休んだ方がいいんじゃ……」

 

 「――んあ? ……あぁ、大丈夫っすよ。気にしないで風呂、満喫してってください」

 

 「そうかい? ……無理はしないようにね」

 

 「これでも体は丈夫な方なんでモ-マンタイっす(精霊だし)」

 

 ——周りから心配されるレベルでボーっとしていました。考えるのがめんどくさくなってきた今日この頃である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直な話、あの一件以来ミクの事を考えると、頭が上手く回らなくなってたりしてるのですよ。どうも何があったのかと気になって……ね

 だからと言ってミクの過去を無遠慮に調べるってのは気が引けるし、その行為自体がミクの機嫌を損ねかねないから下手に手出しできないのがもどかしいぜ。こういうのを親しい仲にも礼儀ありってやつなんだろうね

 ……え? 元から礼儀知らずだろって? 失礼な、そんなことないとは言えないが時と場合はわきまえんぞ? ……多分な

 

 結局のところ、調べるべきか否かと悩んでいるうちに……俺は考えることをやめたとです。めんどくさくなったんで

 きっと何とかなるだろうし、ならないんだったらそん時考えてなんとかすればいいかなーなんて、そう考えてしまったらもう思考タイムは終了だ

 そんな訳で考えることをやめました。もう何かを考えるのが怠かったのんで。頭を使いたくないんだよ、疲れるから

 

 ……ま、だからと言ってミクの事をほったらかしにするつもりは更々ないぞ?

 だから、次の日もミクの屋敷に行ってみたんだが……

 

 「——ごめんなさい千歳さん。忙しい時期なので、少しの間お会いすることができなくなっちゃいます……」

 

 「こっちも朝からおしかけてごめんな。そりゃーミクはアイドルだもん、忙しいのは当たり前だよね。……マジか」

 

 こんな感じに面会謝絶宣言を叩きつけられました。当分の間、ミクとは会えましぇん

 

 まぁよくよく考えたらそうなるわな。街中を歩けば自然と耳に入ってくるもん。ミクの歌

 藤袴から聞いた話だが、ミク——誘宵美九は、数カ月前にデビューしたのを切っ掛けにそのまま大人気アイドルへと上り詰めたそうな

 確かにミクは綺麗な声だし歌唱力も高いから人気が出るのも頷ける。別に身内だからという理由ではないぜ? 客観的に見ても納得がいくって話だ

 

 ただ……どうやら藤袴の話や街で聞く噂を聞くと、普通のアイドルってわけじゃないっぽいんだよね

 

 ……あ、別に情報収集とかそういうのじゃねーぞ? 藤袴が誘宵美九の事を話していたから聞いてみただけだし、噂の方も自然と耳に入ってきただけだからな? どっちも不可抗力ってもんだ

 とりあえず聞いた話によるとだな……どうやらミクは、人前には姿を出してないみたいなんだよ

 今を時めく大人気アイドルだと言うにも関わらず、テレビや雑誌等の取材はノーセンキュー。目に見える活動はCDのリリースとシークレットライブぐらいで、誰もその姿を知りえない。シークレットライブに招待されたファン達も、誰が呼ばれたのか一切わからないため足取りを追うことも出来ないとか

 

 そんな幻のようなアイドルに……ミクはなっていた

 

 なんで人前に出さないのかは……なんとなく想像がつく。多分、誰かに知られたくない、会いたくない、見せたくないとかそんな感じじゃないかな? ……それが俺に対してだったらガチで凹む

 と、とにかく! 訳ありなのは確実だ。その理由……原因か? ミクは自分から何か悪いことをするような子じゃないし、きっと誰かに何かされたとかそんな感じだろう

 ……もしミクに粗相をした奴が分かったら、そいつを裸にひん剥き体中に鎖を巻き付けその鎖を80度ぐらいに熱してやる

 きっと熱いだろうね。知ってるか? 中途半端な熱さの方が我慢できなくなるんだぜ? 痛みがジワリと来るからね、ククク……

 

 ……おっと、話が逸れたな。とりあえずミクが正体を隠しているのにもそれなりの理由があるんだろうし、誘宵美九の正体は秘密にしておいた方がミクにとってはプラスだろう。なら、今俺がやれることはミクの事を周りに知られないようにすればいい。人前に姿を見せるのはミクがその気になったらでいいだろうし、それまでは影ながら支えて上げればいいよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな訳で、(多分)偶然にもあの二日間はオフだったために俺の相手が出来ていたが、それからは時間が取れないみたいなんだ

 アイドル活動もそうだし、ミクは学生だ。学生としての職務を全うしなければいけないのもある。……暇人と比べれば多忙すぎる状況だよなこれ。一応高卒の社会人に見えなくもない俺とは天と地ほどの差だ

 ……え? 比べることすらおこがましいって? 知ってる

 とにかくだ。そんな状況下では……ミクは言うのを躊躇っていたようだが、はっきり言って邪魔になるのは間違いないだろう

 小さい頃からの夢を叶えたんだ。俺だってその邪魔をしたくはないからそれでいいんだが……あれだな。子が離れて行くってこんな感じなのかね? 少し寂しいかもしれんわ……

 

 

 ――あれ? 俺の気落ちの原因ってミクの千歳さん離れ? ……なんかそんな気がして来たわ

 

 

 そんな千歳さん離れしたミクを考えていたから、俺は心ここに在らず状態になっていたのだろう

 それはもう、銭湯で番台をしているときにおじちゃんや常連さん達が心配して声をかけてくるレベルで。ちょっと重傷かもしれんわ……俺ってメンタル弱い?

 藤袴なんて友達を呼んでまで励ましに来るぐらいだったから、多分周りから見たら相当落ち込んでる様に見えたのかな? 申し訳ないです藤袴。お礼に今度”アレ”の予備でもあげようかな?

 ……え? 前から言ってる”アレ”って何だって? 禁則事項です

 その友達も優しい娘達だったなぁ。確か……山吹と葉桜だったか? 初対面だっていうのにも関わらず、持ち前の明るさで元気づけようとしてくれたよ

 普通、初対面だったらこんな見た目が怪しい奴に関わろうとしないって言うのに……ああいう心優しい娘達は貴重だぞ? 良き理解者ってのは誰にでも必要なもんだと思うからな。藤袴はいい出会いをしたようだ

 

 ただ……勝手に恋の悩みだと勘違いして暴走するのはやめてほしかったわ。大声で騒ぎ立てるから「最近千歳ちゃんの元気が無いのは失恋したため」とか「千歳ちゃんが彼氏に振られてしまった」とか「彼氏が友人に寝取られてしまった」などなど、俺の気落ちの原因が変に湾曲して周りに伝わっちまったんだよなぁ……そのせいで余計心配をかけてしまった。ホント何かごめんなさい

 でもよーく考えてくれ。こんな根暗で地味そうな容姿の奴を好きになるような奴なんていねーだろ? 口調だって女らしくないし、モテる要因ゼロじゃん

 その上……山吹よ。泣き崩れるぐらいなら意中の相手を誘うために用意しておいたペアチケットなんて渡すなし。また手に入れればいいとか言ってたけど、その後に続いた「死ぬ気で」って言葉に俺の心がマッハで大根下ろされてるからな? 罪悪感ブッチギリで余計心苦しいからやめてください泣いてしまいます

 

 ――結局受け取ってしまったんだけどさ。無理矢理

 

 未だに番台の隅に置いてある山吹から貰ったペアチケット……これどうしようかな? 貰ったからには使わないと山吹が報われないだろうし……

 時間があればミクを誘えばよかったかもしれねーけど、そんな時間はあっちには無い。ホントコレ貰ってよかったもんなのかねぇ……

 

 ——それにだ

 

 「……山吹よ。そもそも天宮クインテットって……どこよ?」

 

 チケットに書かれてある【天宮クインテット・水族館ペアチケット!】の文字を一目見た後、俺は再び窓の外をボケーっと眺め始めるのだった……

 

 

 

 

 

 ――まぁ結論から言うと、そのチケットを使う機会は……案外早く訪れたんだけどな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ねーねー四糸乃。ほらほら凄いよ見てごらん? お魚さんがいっぱいだよー』

 

 「そう、だね、よしのん!」

 

 「あんまりはしゃぎすぎんなよー? 急いで怪我したら大変なんだから」

 

 チケットを貰って数日後、俺は天宮クインテットの水族館に足を運んでいた。——四糸乃とよしのんと共に

 

 

 

 

 

 それは、ボーっとし続ける俺に痺れを切らしたおじちゃんが「遊んできなさい」と言ったのが始まりだった

 最初は渋った俺だったが、俺がいると逆に銭湯の雰囲気が暗くなると言われたら……な? 遊びに行くしかねーじゃん?

 今思えば最近はおじちゃんやおばちゃん、常連さん達の心配した表情しか見てなかった事に気付いたし、正直悪かったと思ってる

 

 そんな訳で、せっかく時間も出来たことだから街の様子でも見まわろうと思ったわけですよ

 相変わらずのダボダボスタイルで早速街へ繰り出そう! そう思って銭湯を出た瞬間——

 

 

  ザァ——————

 

 

 「……」

 

 いきなりの雨雲襲来。さっきまでのお天道様何処行った

 

 それはもう見計らったんじゃないかと言えるタイミングでの降りっぷりに余計テンションが下がった千歳さんだ。もう踏んだり蹴ったりだねHAHAHA! ……はぁ

 まぁいいや。どうせ霊装さんのおかげで服は濡れないし、雨が降ってるならASDの人達とも会う確率が下がるだろう。それこそ空間震が起きなければな

 

 とりあえず俺は、そんな雨が降る中をのんびり散歩していたんだわ。少し歩いてみて分かったが……雨の中を歩くのって案外落ち着くかもしれない。こう……汚れを落とすかのように心がスッキリとしていくわ。マイナスイオンってやつかな? ナイスだマイナスイオン! キミは今日からマイナンだ!!

 ……別にどこぞの青い応援ウサギではないぞ? ……あれ? ウサギだよな? 耳の形的に

 

 ウサギと言えば……四糸乃の服装もウサギっぽかったな。あげたパペットもそれにちなんでウサギ型にしたしね

 ……え? なんで眼帯を付けたんだって? 趣味です。カッコイイじゃん

 

 

 

 ——そんなことを考えていたからだろうか?

 

 

 

 「——あれ? なんかデジャ——ふぎゃっ!?」

 

 「あうっ……」

 

 俺が気付いた時には、既にお寿司……いや遅し

 四糸乃と会ったのもこんな雨の降る中だったなーなんて考えながら、不意に空を見上げると……まさにあの時の場面の再来が起こった

 

 

 四糸乃がまた、空から落ちてきたのだ

 

 

 なんで空から落ちてくるん? 千歳さんはトランポリンじゃないんだよ? 地味に痛いんだよ? もしかして雨雲に住んでいるとかじゃないですよねハハハ……まぁいっか

 とりあえず俺は、未だに俺の上で不安そうに周囲を見渡す四糸乃に呼びかけることにした

 

 「……あー……四糸乃」

 

 「——え? ……っ!」

 

 俺の声に気づいた四糸乃が視線を下に向けて俺の姿を捉えるなり、素早い動きで俺の上から立ち退いてくれた

 ようやく解放された俺は立ち上がり、四糸乃の方に視線を送ると……

 

 「……ぁ……千歳、さん?」

 

 『おおぉ! まさか現界地点に千歳ちゃんがいるとはビックリ仰天だー。これはもう運命的なんじゃない? 千歳ちゃんも運命感じちゃうかな?』

 

 「おう、千歳さんだぞ四糸乃、久しぶり。よしのんも久しぶりだな。因みにこのシチュは二回目だし、狙ってやったわけじゃないなら運命感じちゃうかもしれねーわ」

 

 ようやく俺だと分かったのか、驚いた表情で俺の名前を呼ぶ四糸乃と、相も変わらず愉快にハキハキと話す、四糸乃の左手に居座るよしのんがいた。相変わらずだなこのパペット、マジでどう言う仕組みしてるんだろ?自分で創っておいて謎すぎるわー……まぁいいか

 そんな二人の反応に、いつも通りのノリで話しかけていたところで……不意に気づく。よしのんが何気無く口にしたある言葉に

 

 「……あれ? 現界? ……もしかして、四糸乃って精霊、か?」

 

 「——っ! ……っ……」

 

 現界。それは精霊が彼方側からこっちにくる時の名称だ(と思う。ASDの人達はそう言ってたし)

 今、よしのんは確かに現界って言ったからな。そのことを確認してみると……四糸乃はまるで、知られたくなかったかのように顔を歪めた。それはまさに、知られることを恐れているような表情で……俺の問いかけに答えたくないよう口を閉ざしている

 

 ——だが

 

 『あちゃー……よしのん、つい失言しちゃったよ。……そうだよ。四糸乃は精霊さ』

 

 「よ、よしのん……!?」

 

 その代わり、四糸乃とは別に俺の問いに肯定で答える者がいた。それは……自分から失言したと言っている、よしのんだった

 まさか答えるとは思っていなかったのか、驚きを隠せない四糸乃がよしのんに呼びかける。その顔は今にも泣きそうで……

 

 やめて四糸乃。もう俺のライフはゼロよ! 既にその泣き顔が俺のメンタルポイントを溶かしたから!!

 

 自分に向けられた顔では無いが、その顔になること事体がとても心苦しかった俺は、とにかく行動に移そうと思ったのだ。だってこのままじゃマジで泣きたくなりそうだもん

 

 そんな俺が、四糸乃の悲しそうな顔を笑顔にするために出した答えが——

 

 

 

 

 

 「——山吹。お前の事は忘れない」

 

 水族館に誘うことだった。……誘拐ではない。断じて

 無理やり話の話題を変えた俺は、四糸乃とよしのんを天宮クインテットの水族館に誘ったのでした。ペアチケットは何となしにポケットに入れてあったから、わざわざ戻る必要がなくてよかったよ

 最初は水族館が何なのかわからなかった二人(一人と一匹?)だったが、俺が楽しいところと言ったらなんとかついて来てくれたよ。……だから誘拐じゃないってば

 ——その移動中、四糸乃から手を繋いでほしいと控えめながらに頼まれたので、ご要望にお応えして手を繋ぎながら向かうことにしたり。因みに水族館の場所は、ペアチケットの裏に書いてあったわ。何故気づかなかったし自分

 

 因みに道中、精霊とわかれば流石にそのままの姿——霊装を着た状態で、街中を歩くのは危険だと思った俺は、四糸乃に服装を変えるよう問い掛けてみた

 もし四糸乃の事がASDの人達に知られている場合、見つかったら一悶着ありそうだしな。のんびりしたいのに面倒事を舞い込むのはごめんだ

 そんな俺の提案に、四糸乃も納得……というか、よしのんが賛成してくれたので事は無事に済みましたよ。グッジョブよしのん

 そしてあれやこれやと俺がいつもやっている通りに霊装の変化のさせ方を教えて上げたら……

 

 「……これで……どう、です……か?」

 

 「文句などあろう筈が無い」

 

 案外普通にできました。四糸乃の霊装さんも万能ですね

 清楚感のある白いワンピースに、それに合わせた白の……キャペリンだったかな? つばの広い帽子をかぶっていた。その姿はまるで”穢れの無いお嬢様”のようで、とても可愛らしかったです

 まぁそれでも軽装なのは変わりないし、このままだと雨に濡れてしまうので、遠くにいた人がさしていた傘を【(コクマス)】でコピらせてもらったよ。流石にこの雨の中、傘を取り上げるのはかわいそうだしね

 まぁ霊装さんのおかげで四糸乃の周囲にも霊力膜が張られているから、雨に濡れることはないんだけどね。こういうのは雰囲気なんですよ

 

 服装に問題が無いかを確認した後、俺が空いている方の手で傘を持ち、四糸乃達が濡れないようにと傘を傾けながら四糸乃と手を繋いで水族館へと向かうのでした

 

 

 

 

 

 ——そして現在に至る

 

 「どうだった? 二人とも」

 

 「えっと……その……」

 

 『とっても新鮮だったよ~。こんなにお魚さんを間近で見る機会なんてなかったし、よしのんは大満足さ! 四糸乃も面白かったよね?』

 

 「は、はい……楽し、かったです」

 

 「ならよかった。来たかいがあったってもんだよ」

 

 控えめながらも笑顔を露わにする四糸乃に安堵する千歳さんでした。ホントよかったよ……あのままだったら確実に泣き始めそうだったからね。山吹、俺のメンタルと四糸乃の不安から助けてくれたお前の事は忘れない。割とマジで

 

 「あ、あの……千歳さん……?」

 

 「——え? あぁごめん。つい、な」

 

 四糸乃の呼びかけに思考を戻すと、そこには四糸乃の頭を撫でている俺の手が視界に映った。手癖悪いぞ俺の手よ

 そのことに気付き、俺は四糸乃の頭から手を離そうとすると……四糸乃が名残惜しそうに、離れて行く俺の手を視線で追い始めた

 これは……もしかして催促してるのだろうか? よしよしよしのんキボンヌって感じですかいお嬢様? それとも「私の頭に触りやがって」的な感じなんだろうか? もしそんなこと言われたらサメのいる水槽の中に転移して餌になろう。……え? 餌の価値さえないって? ショボンヌ

 そんな、四糸乃の視線が何なのか考えていると……よしのんが俺の疑問を晴らしてくれた

 

 『千歳ちゃん千歳ちゃん! 実は四糸乃がね~、千歳ちゃんに髪を撫でられるのが好きみたいなんだよ。この前も千歳ちゃんにお風呂で髪を洗ってもらった時とか~、お風呂上がりに髪を乾かしてもらった時とか~? 千歳ちゃんに髪を触って貰ってる時の四糸乃はとっても心地良さそうだったよねん?』

 

 「——————」

 

 まさかのよしのんの暴露タイム発生。そんなよしのんの暴露に四糸乃が固まってしまった。四糸乃に否定する暇さえ与えないマシンガントークとは……よしのん、おそろしい子……!?

 

 ——ただ、その内容は……

 

 「……そっか。よかったよ、嫌われてなくて」

 

 「……ぇ?」

 

 僅かに曇っていた俺の心を晴らすのには、十分な言葉だった

 

 いや……な。前回の別れ間際、四糸乃達が急に俺の前からいなくなったじゃん? もしかしたら俺といるのが嫌になって逃げたのかと……四糸乃に嫌われたんじゃないかと心配だったんだよね

 だから、今回も俺に嫌々付いて来てるんじゃないかと思ってたりしてたんだわ。四糸乃は怖いのが嫌いだから、もし従わなかったら痛い目にあうと思ってついて来ていたのかもしれないって……さ?

 

 「――でも、少なくとも俺の行為の中で、何かを好きになってもらえたんだって知ったら……なんかホッとしちゃったよ」

 

 「『……』」

 

 俺は四糸乃に対して思っていたことを素直に話す。この際だし、言いたいことは言っておこうと思った次第だ

 そんな俺の独白に、二人は黙り込んでしまうのだった。あれ……俺なんか不味いことでも言ったかな? 少なくとも無言になるような内容じゃなかったと思うんだけど……

 俺が四糸乃達がいきなり黙り込んだことに首を傾げていると……四糸乃達が、口を開いた

 

 「……ごめ……なさい……千歳、さん」

 

 『よしのんからも謝るよ。ごめんね千歳ちゃん? 千歳ちゃんのこと全然考えてなかったや……』

 

 その口から俺に向けて送られた言葉は……謝罪だった

 

 え、あの、なんでそんな畏まっちゃってるんでしょう? なんで謝っちゃってるんでしょう? 俺の単なる勘違いだったって話だったんだけど……そんな真面目に謝られても反応に困るというか……

 てかよしのん、お前までしおらしくすんなし。頼むからいつも通りの愉快な姿を俺に見せとくれよ? 俺の事とか気にしなくていいからさ? だからお願い、二人とも暗いオーラを出し始めないで? 俺の胃がキリキリと軋んでるんだよぉ……

 そんな二人の反応に困惑する俺だったが、しばらくすると……四糸乃がどこからかある物を取り出した

 俺の前に出される形で四糸乃の手に握られたものは……

 

 「それって……あの時の?」

 

 「……はい。わた、しの……宝物、です」

 

 あの時一緒に遊び、記念としておじちゃんからもらったけん玉だった

 

 「私、は……千歳さん、が……好、です。嫌……てな、か……ない、です。これ、か……も、ずっと……」

 

 『そのけん玉はねー。四糸乃にとって、千歳ちゃんとの思い出の品みたいなもんなんだよ? だからそれは四糸乃にとっての宝物なんだ~。……それを未だに持ってるんだもん。嫌ってるわけないじゃん? 勿論よしのんを四糸乃と出会わせてくれた千歳ちゃんを、よしのんが嫌ってるなんてことも無いよん? よしのんは千歳ちゃんが大好きさ!!』

 

 うまく言葉が出せない四糸乃。だが、伝えたい事は……しっかりと伝わった

 しっかりと言葉で気持ちを伝えるよしのん。その想いは……十分に伝わった

 ははは……なんか悩んでた自分が情けないわな、こりゃ……

 四糸乃もよしのんも、俺のことなんて嫌ってなかったじゃないか。ただの俺の勘違いだったってわけだ。俺は一体何を恐れていたんだか——

 

 

 ——え? 恐れる? なんで恐れたんだ?

 

 

 ……まぁ、いいか。そんな気にする程のものでもないと思うし……

 

 とりあえず二人の想いを受け取ったんだし、俺は俺で返事を返さんとな

 

 「……ありがとな、四糸乃、よしのん。俺もお前等の事は好きだぞ?」

 

 四糸乃達の言葉に感謝を伝える。少し気恥しかったりするが……あっちも恥ずかしいだろうし、俺も思いを伝えないとフェアじゃないってもんだろう

 その俺の言葉に、四糸乃は再び自身の思いを伝えてくるのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「千歳、さん……は……おかぁ、さん……みたいで……好き、です」

 

 「……お母さん、ですか」

 

 ただ、それは俺にとって予想外の好意だったけどな

 なんか思ってたんとちゃう……思ってたんとちゃうよ四糸乃……

 お姉さんならわかるけど、お母さんって……

 

 『千歳ちゃんは何処かおかんっぽいからね! 母性を感じるっていうかー、よしのんも千歳ちゃんはおかんっぽいって思うときもあるのは仕方がないってもんだね!!』

 

 「おかん……ですか……」

 

 『あ、でもでもぉ? よしのんは純粋な好意だよん? よしのんは千歳ちゃんが大好き! もう千歳ちゃんの魅力にメロメロさ~!』

 

 「はは……どうも……」

 

 よしのんお前もか。いやまぁ好意の意味合いは違うみたいだけど……お母さんよりもダメージ高いぞオイ……

 おかん……おかんかぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして四糸乃達に抱いていた少しの不安は無くなり、四糸乃達も満足そうに隣界していったのだった

 ……おかん……俺ってそんなに老けて見えるのかな? なんか凹む……

 

 結局のところ、気落ちしていた心はおかんという言葉で余計に悪化させ、銭湯に戻っても逆に落ち込み度が増した俺に、声をかける者はいなかったのだった……

 

 




千歳さんおかん説浮上

もはや姉を通り越してお母さんと思われるレベルにきていた千歳さんでした
まぁ……見えないこともない、かな?当の本人は少しショックだったみたいですね

ちゃっかりアイマイミートリオが千歳さんと友好を深めあっていた件について
もしかしたらアイマイミートリオ経由で主人公クンに千歳さんの場所が知られることになったりしてね。ははは

次回は一気に飛びます。多分

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