俺が攻略対象とかありえねぇ……   作:メガネ愛好者

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メガネ愛好者です

投稿時間間違えてた……遅くなってすいません

キャラ崩壊注意—キャラ崩壊注意—キャラ崩壊注意

とりあえず一言
やりすぎた感が否めない……だが後悔はしない!……と思う
とりあえず美九さんは裕福な家庭と言うことにしましたが……多分大丈夫ですよね?金持ちだったはずだし

それでは


間章後編 「ミクは可愛い? 知ってる」

 

 

 「実はな? 千歳さんは精霊なんだ」

 

 「せいれいさん、ですかー?」

 

 「そうそう、精霊さんだぞー」

 

 現在俺は、この前ベンチで行き倒れた俺を拾ってくれた幼女、ミクと共に天宮市の駅の近く……確か北の方だったかな? 適当に歩いてたからそこまではっきりとは思い出せねーわ。とりあえず、その辺りにある森の中の池に来ていました

 決して誘拐ではない。俺にそんな度胸は無い。寧ろ捨て犬みたいに拾われてますです。ミクちゃんのアグレッシブさには驚きを隠せない千歳さんだー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が目覚めたのを確認したミクは、急いで部屋から出て行った。どうやらご両親を呼びに行ったみたいで、しばらくすると二人を連れて戻ってきたよ。……そんなミクの両親から、この現状に至る事情を教えてもらうのでした

 

 簡潔に言うと、どうやらベンチで倒れた俺を保護してくれたようです。ありがたや~

 そして、なんと俺は四日間も眠り続けていたみたいなんだわ

 

 ……え? そこは三日が普通だろって? 知ってる

 でもよく考えてみてくれ。俺からしてみれば四日の方がキリがいいと思うんだよ。……ある意味ではな

 まずは日付を時間に直してみてくれ。そうするとよくわかると思うぞ?

 三日を時間に直すと……72時間だ。正直俺からすればキリが悪い数字だと思う。少し時間をずらしても70時間と75時間のどちらかだし……あまりキリがいいとは言えないんじゃねーかな?

 

……それならば四日はどうだろう?

 答えは96時間だ。これって少し経ったら100時間になるじゃん? 70時間や75時間よりはキリがいい数字じゃなかろうか?

 

 ——ま、そう語ったところであまり意味はないんだがな? ようは気持ちの問題だ

 

 ……コホン。とりあえず話を戻そう

 そんな訳で四日間眠り続けていたのを知った俺は、改めて自分の状態……今回で言うと霊力の事だな。今回の時空間転移で消費した霊力量を調べてみることにした

 

 ここでこの前目覚めた新たな能力を公開しよう! 公開する能力だけに、な

 

 

 

 六番目の力、その名称を【(ティファレス)】と呼ぶ

 その能力とは……視界に収めた対象の情報を開示することだ

 

 対象は人に関わらず、動物や機械からも調べられることが出来る。調べられる内容は主に2つ、個人情報と構造情報だ

 

 まず個人情報についてだが、これはあまり説明の必要もないだろう

 ようは身長とかの対象の身体情報や、運動神経などの内面の事もざっくりと知ることが出来るのだ。ついでに、その対象の簡単な近況もわかるらしい。……近況って、今おかれてる自分の立場とかそんな感じの事だよな?……まぁ使ってみればわかるか

 とりあえず例として……あー……必要かどうかは知らんが、俺の身体情報を例として開示してみるか

 

 俺はベッドの近くにあった鏡台に映る自分を見据え、そのまま【(ティファレス)】を発動してみることにする。どうやら直接見なくとも、間接的にも効果が出るみたいなんだよね。少し力のかかりが遅いけど

 そして、それは俺の目の前に姿を現した

 形状を見てみると、それは自身の霊力で作られた……モニター?多分モニターだった。そのモニターには様々な項目で情報が開示されており、どうやら俺だけに視認出来るみたいだわ。現に、近くにいたミクは見えていないのか何の反応も見せていない

 とりあえずは俺は、その文字だけで構成されたモニターに記載されている情報に視線を向けるのだった

 

 

 名前:千歳

 年齢:推定18歳

 種族:精霊

 識別名:〈アビス〉

 役職:銭湯の番台

 現状:ホームレス→居候

 精神状態:平常

 好きなもの:五百円玉

 嫌いなもの:気にいらないこと

 身長:167cm

 スリーサイズ:83/59/87

 

 

 ……………うわぁ

 

 ま、まぁ……こんなもんだよな。うん。……これ人にやったらプライバシーの欠片もねーわ。てか各所各所の記述にいろいろツッコミを入れたいんだが? キリがねーから今回はスルーすっけどよ

 

 

 

 とりあえず個人情報開示についてはこんなところだ。次に構造情報だが、これは主に機械や道具など、無機物などを対象にしているのが多い

 それはどう使うのか、どういった仕組みなのかを簡単に開示する……ようは説明書だ。機械などの操作法、道具などの使用法をこれまたモニターとして開示するみたい。……因みに裏話として、実は十香の【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】を顕現するために一役かっていたりする。構造わかっていた方が顕現しやすいんだよな

 あん時はとりあえず【(ゲブラス)】の事を中心に説明したかったから【(ティファレス)】は端折ったんだよね。どちらかと言うとあっちの方がメインだったし

 

 

 

 

 

 とりあえず【(ティファレス)】に関してはそんな感じだ。詳しい事……と言ってもこのぐらいなんだが、とりあえずまだよくわからないところは次に使った時にでも補足していけばいいだろう

 

 ——【(ティファレス)】によって開示された情報の中を探し、今知りたい情報……霊力残量の項目が無いかを探す

 俺がモニターをある程度流し読みしていくと……それはあった

 

 

 霊力残量割合:42%

 

 

 ……俺は四日間眠ってたってことは、少なくとも四日分は回復したはずなんだよな?

 この前の【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】顕現時に消費した霊力が……大体全霊力の4割程だったはずだ。その時に消費した霊力は、約一週間で全快まで回復していたのを思い出す。ついでに今【(ティファレス)】を使った分の霊力消費も加えるとするとしたと……

 

 

 

 ——おや? もしかして……9割程使ったのか?

 

 

 

 霊力を一気に9割も使えば、体調を崩したのにも頷ける。そうだったとしたら、力の使いすぎによって起きた症状なんだろうね。立ち眩みや眩暈が一番酷かった辺り、視力関係に負担をかけたんだろう

 ……に、してもだ。四日熟睡して大体3割程しか回復しねーってことなのか? まぁ、俺自身どういう原理で回復してるのかわかんねーから気にはしないが……そもそも気にしたら負けか

 それにしても、9割か……もしかして遡る時間によって変わる感じだろうか? 9年前に来て——あ、そういや言ってなかったな。とりあえず9年前には無事に着いたっぽいぞ。近くにあったカレンダーの年号が新聞の切り抜き写真に記載されてあった年号と大体同じだったから、遡れたことは間違いないと思う

 とりあえず気づいたことは、9年前に遡るには反映して9割の霊力を消費するんじゃないかってことだ。それなら約10年前までしか遡れないというのも頷けるってもんだね。何せ10割消費——全霊力と比例してるかもだからな

 ……もし霊力を使い果たしたらどうなるんだろ? いや試す気はねーけどさ。だって碌なことにならないってのだけはハッキリとわかるもん

 

 ——結論、時間転移は燃費が悪い

 

 それほどやる必要性も無いことだし、年単位での時空間跳躍は控えよう。別に過去を変える気なんて元からねーわけだし、遡るたびにグロッキーになんてなってられんわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……と、少し話が長引き過ぎたな

 とりあえず、現代に戻るには霊力が全快するまで出来そうにない。つまり……それまでの間をどう過ごすかが問題だった

 一週間で大体三割から四割ってことは、全快には後最低でも一週間はかかる。それまでの間はこの年代に留まり続けなければいけない

 

 それが意味するものは……またもやホームレス生活が始まるということだ

 

 期限付きとはいえ、せっかくおじちゃんの家に居候させてもらってたって言うのにな。はぁ……この時代なら高台の公園は無事そうだし、またベンチベッド生活の始まりかねぇ

 ……おい【(ティファレス)】のモニターよ。現状のところから居候の文字を消すんじゃねぇよバーロー。なんか腹立つなこのモニター

 てかまたベンチ生活かよ。くそぅ……このベッドの感覚を味わってからではまともに寝付けなさそうじゃねーかよ! ……ふかふかぁ

 

 

 

 

 

 ——だが、そうなることは無かった

 

 ミクのご両親方に何故倒れていたのかを追及されたとき、咄嗟に言っちゃったんだよな……「実は俺、旅してるんですよ。自分家無いから」って

 つい嘘っぽいけどそうでもない事実を言った俺に対し、二人は少し何かを思考しながらしばしの間、話し合う

 

 その結果に告げられたものは……

 

 「千歳君。君さえ良ければなんだが……しばらくの間、娘の従者になってはくれないだろうか? その間の衣食住は約束しよう」

 

 「……ぱーどぅん?」

 

 「娘の執事になってくれ」

 

 「何故に執事。一応女なんですが」

 

 「君からは然程女性らしさを感じられないのでね。気にしてもいないのだろう?」

 

 「自覚はある。だが解せぬ」

 

 「ふむ……では、手始めに女性らしさを出すために口調を——」

 

 「執事、喜んでやらせていただきます」

 

 はい、そんな訳でミクの執事になりました。……どうしてこうなった

 何故俺なんかを娘さんにと問い掛けてみると、どうやらミクのご両親はどちらも多忙らしく、あまりミクに構ってあげられないそうだ。……前世の俺の両親もそんな感じだったな。頑張ってくれてるのはわかるんだが、もう少し家族との時間を増やして欲しいな~なんて考えていた気がするよ

 

 そんな訳で、少ない期間と言えどミクの傍に誰かがいてくれた方がよいだろうとのことです。見ず知らずの俺をいきなり娘の従者にしてもいいのかとも聞いたが、人を見る目はあると断言されて、そのまま採用されてしまった。そこまで言われたら断れないじゃねーかよ……断る気もなかったけど

 霊力が回復する間の衣食住は提供してくれるようだから俺としても悪い条件ではないしな。この極上ベッドで寝てもいいって言うし役得ってやつだわ

 

 ただ……その間の期間を執事らしく執事服着用を義務づけられたわ。肩っ苦しくてしょうがねー

 どんな執事千歳さんは……ミクとご両親方には好評だったようです。気付けば外にいた使用人達も俺の姿に称賛を——って、いつからいたんだよオイ。そこ、目をキラキラさせない。涎を垂らすのはもっとアウトだ馬鹿野郎

 

 因みにこの執事服姿の状態だが、服装だけではなく身嗜みも整えられましたわ

 適当に伸ばしていた髪を後ろで一纏めにし、前髪を横に流して顔を完全に出している(疑似霊装さんが両目の霊力膜を残してくれたことにはマジ感謝)。そんでもって……何故か眼鏡をかけさせられた。俺目が悪いわけじゃねーんだけど?

 

 ……なんか「男装鬼畜眼鏡執事キタコレ……!」とか聞こえた気がす——いや気のせいだ。うん、気のせいだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな訳でミクの世話(……と言っても子守みたいなもんだが)をすること二週間が経った。思ったよりも長引いたわ……

 それにしても……いやーいろいろあったなぁ

 

 

 

 「そこ間違ってるぞ?」

 

 「え? ……あ! ほんとうです! ありがとうございますチトセおねーさん!」

 

 「(この笑顔、守りたい)」

 

 時にはミクの勉強を見て上げたり——

 

 

 

 「おおー! チトセおねーさんじょうずですぅ!」

 

 「そうか? 趣味の範囲だったんだけど……」

 

 「しょうらいミクがアイドルになったら、いまのうたをつかってもいいですかぁ?」

 

 「え……」

 

 ミクに暇つぶしにでもと前世スキルのオカリナを吹いたら、思った以上に好評だったり——

 

 

 

 「ホントサラサラだよなぁ……やっぱり育ちが違うってやつか」

 

 「チトセおねーさんのかみもすてきですよぉ?」

 

 「おう、ありがとな」

 

 ミクと共に入浴してその綺麗な紫紺色の髪を洗ってあげたり——

 

 

 

 「チトセおねーさん……」

 

 「——んあ? どうしたんだこんな時間に……」

 

 「えと……いっしょに……ねても、いいですか?」

 

 「是が非でも」

 

 ミクが一緒に寝たいと枕を持って俺の部屋に来たり——

 

 

 

 「オラ手を上げろ!! さっさと金出せゴラァ!!」

 

 「あいよ。五百円玉お待ちぃ」

 

 「は? ——ふごっ!?」

 

 「ブタさんみたいな、なきごえですねぇ」

 

 ミクと共に、コンビニ強盗を取り押さえたり——

 

 

 

 「あぁ………あぁ……!!」

 

 「恍惚とした表情してんじゃねー変態メイド。ミクの教育上よろしくねーだろうが」

 

 「いい……! いいです千歳様!! もっとお願いしますッ!!」

 

 「——チトセおねーさんたちは、なにをしているんでしょう?」

 

 ミクに悪影響を与えそうな、頭がちとアレな 使用人を縛り上げ、そのまま説教をしたり——

 

 

 

 「お待ちくださいまし!」

 

 「うははははははは!!!」

 

 「あははははははは!!!」

 

 「話を聞けと言っているでしょう!? 頭おかしいのではありませんの!?」

 

 ミクを肩車した状態で、なんかゴシックドレスに身を包んだ眼帯(医療用)さんと鬼ごっこをしたり——

 

 

 

 ——そんな充実した二週間でした

 

 いやー今思い返すと、結構内容がつまった二週間だったぜ……え? 後半ろくなことしてないって? 知ってる

 とりあえず、そんな感じに充実した日々を送った俺の霊力はもうバッチリ回復し、いつでも現代には帰れる状況になった。ミクのご両親からは期間が長引いてしまったことに対しての謝罪と、それと同時にミクの傍についてくれたことへの感謝を貰えたり。ご両親方から見て役目を果たせたようで何よりですよ

 

 

 

 

 

 そして今日、俺は現代に帰ることにした

 

 ただ……まぁあれだ。この二週間を常に共に過ごしてきた俺とミクだ。いろいろあったが仲は深まっていることは目に見て分かる。そんな俺が立ち去ると言えば当然……

 

 「やですー! ミクはチトセおねーさんとずっといっしょにいるんですー!!」

 

 こうなるわけだ。まだ8歳だしな

 

 歳相応に泣き喚くミクに……正直心が痛くてしょうがねーよ。これは四糸乃がいなくなったレベルで胃に穴が開きそうだぜ。……思い出したら余計ダメージが増えました。口の中が鉄くせー

 

 ——でもなミク? それでも俺は……現代に帰らねーといかんのですよ

 

 一応言っておくと、このまま元の時代まで時間を過ごしても問題は無い。現代の時間軸を起点とするなら、今この時間はその起点から延びた延長線だ。起点となる現代から、俺の霊力で遡れる……おそらく十年前までの時間の間のみ【(ビナス)】は反映される。試してはいないが、おそらくこの時代から再び時間を遡るとしたら……起点となる十年前、この時代で言う一年前までしか遡れないと思うわ。起点こそが【(ビナス)】のスタート地点だからな

 そして、過去の時代から起点である現代までの時間を【(ビナス)】を使わずに追いついてしまうと、起点を回収——ようはリセットがかかるのだ。つまり、そうなった場合はそのリセットされるまでの間の時間がifの世界ではなくなり、歴とした現実の世界へと改変されていく……

 

 ——そうなった場合、四糸乃や十香、主人公クン達の出会いはどうなるんだ?

 

 俺の行動によっては出会わないかもしれない

 俺の行動によっては敵対するかもしれない

 俺の行動によっては……嫌われてしまうかもしれない

 

 今ある現代の流れは、現代に戻らなければ気づかぬ間に改変されてしまうかもしれないのだ

 だからこそ——俺は帰らないといけない。本来あるべき俺の世界(歴史)にさ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、冒頭に戻る

 

 俺が立ち去ることを納得しないミクに、俺から提示する条件を交わすことにより、何とか納得してもらうことに成功した

 

 その条件とは……俺の秘密を教える事。そして、ミクのお願いを一つ聞くことだ

 

 流石にそのお願いで留まるのは無しだぞ? と、そう俺が言った時にはあからさまに目を泳がしていたのは見逃さんぜお嬢様? 伊達に二週間も執事をしていないぜよ

 ……あ、言っておくが今の服装は普段の私服だ。前髪もいつも通りでなんか落ち着くわー。執事服に関しては、ミクのご両親(+変態)が記念にと渡されかけた。正直に言って、貰う必要がないんだよね。疑似霊装さんがいるから着ようと思った時に、いつでも身にまとえるもん

 

 ——っと、話が逸れたな

 とりあえず俺は、そこでミクに打ち明けることにしたのだ。自分が精霊である事、未来から来た精霊だという事、そして……元々男だったということ

 精霊とか未来人よりも、男と言う事実に驚き——はしなかった。うん、そりゃこんな性格なら納得もするだろうね。……気にしてない感じもするけど

 

 

 

 ある程度教えても問題ないだろうと思った事を話しながら、池の畔で話し合う俺とミク。他にもちょっとした小話を交えながら俺の隠し事をミクに伝えたのを最後に、しばしの沈黙が訪れる

 ある程度話せることは話した。後は……ミクの願いか

 こればかりは俺のペースでやれることは無いんだよなぁ……全てはミク次第だ

 ミクが口に出すまで俺は口を閉ざす。きっと今、ミクはお願いを考えているのかな? もしかしたらもう決めてあったりして

 

 そうこうして待つこと数分。ようやく決心? 願い事? を決めたミクが、その小さい口から言葉を漏らした

 

 「……チトセおねーさん。やくそく……して、くれませんか?」

 

 ミクが俺の方に向き直り、覚悟を決めた瞳を俺に向ける。身長差から大きく見上げる形になるミクだが、それも気にせず俺を見据える。……これ霊力膜が無かったらミクに【心蝕瞳(イロウシェン)】がかかってたかも知れないよね? 前髪で隠れてるからって絶対安心なわけじゃないんだからさ?

 ……もし、症状に感染したら自殺するかもな。ハハハ

 

 俺はミクの言葉を待つ

 何かに恐れて不安になるも、それに負けずに伝えようと決意を固めるその姿は……どことなく、男女の告白にも似た雰囲気を感じ取れる。まぁ俺らは女同士だし、そんなことは無いだろう。……あの変態メイドに毒されない限りはな

 あ……なんか急に心配になってきた。未来ですごく嫌な予感がする……

 

 あれ? でも精神的にはまだ男なんだし、これは同性愛じゃなくなるのでは? いやでも肉体的には同性だから……どうなるんだ? 現代に戻ったら大体一つ下ぐらいの年齢だから世間体的にはセーフ? いや見た目女同士だからアウト……いや、執事服なら異性にも見えてセーフ? 肉体的同性愛? 精神的異性愛? これはどっちなんだ?

 

 ——あれ? そもそもなんの話だっけ?(迷走)

 

 あ、ミクが歳に似合わないほど大人びた雰囲気を出しているってことだった

 勝手に空回りして混乱している俺だったが、そこでミクがとうとう言葉を紡ぎ始めるのだった……

 

 「——チトセおねーさん」

 

 「……おう」

 

 「もし……またあえるとしたら、いつになりますか?」

 

 「……9年後だな」

 

 「……」

 

 俺が告げた返答に、一瞬泣きそうな顔になるミクだったが、すぐに立ち直り改めて俺に願いを言い放つのだった——

 

 

 

 

 

 「——それなら、9ねんご。9ねんごにまた……ここであいたいです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「千歳お姉ぇ様ぁあああああ!!!」

 

 「ふげぇッ!?」

 

 はい。現代に戻りました。そして、俺の死角から腹部に頭から突っ込んでくる紫紺色の髪をした美少女を俺は受け止めきれず、その勢いのまま背中から地面に倒れる千歳さんなのでした。背中いてー……

 ——あれ? なんか……体から何かが抜けていく感覚がするぞ? 前にも何処かで似たようなことがあったような……まぁ今はいいや

 

 

 

 あの後、約束を交わした俺は自分が精霊である証拠を見せるために、ミクの目の前で現代に戻った。因みにだが、遡る前におじちゃんの家で割り当てられた俺の部屋の光景を【(ゲブラス)】で記憶しておいたのですぐに転移できたよ。とうとう記憶ストックが無くなった件について

 

 そして再びぶっ倒れたぜ

 

 まぁ当たり前か。現代に戻るのにも霊力を使うんだからな、倒れてしまってもしょうがないことだろう

 そして再び二週間もの回復時間を……待っている暇はないのです。ミクとの約束があるからな

 一瞬目覚めた時に気力を振り絞ることで目を覚ました俺は、時間として二日しか休んでいない体に鞭を打って、おぼつか無い足取りになりながらもミクと約束した池の畔に足を運ぶことするのだった。マジつらたん

 ……余談だが、当分番台の仕事を休むことをおじちゃん達には伝えてある。流石にこの状態で仕事は無理、今にも倒れそうですしね

 

 そんな絶賛「オデノカラダハボドボドダァ!」状態の俺が、不意打ち気味に攻撃を受ければ……まぁ支えが効かない訳で倒れてしまうのもしょうがないだろう? 意識も落ちてしまうのも、な?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「知らない天幕——いや、知ってるなこれ」 

 

 天丼しかけるも一歩手前で踏みとどまり、俺は状況を整理し始める

 このふかふか極上ベッドと天幕には見覚え……と言うよりも、少し前まで味わっていたものだ。つまりここは——

 

 「お目覚めですかー?」

 

 「デジャブを感じる」

 

 俺の傍から柔らかい口調で俺の耳に届く、その綺麗な声は……9年前のあの子、ミクのものと同じだった

 そちらを向けば……正直見違えた

 あの頃から変わらず綺麗な紫紺色の髪は健在だ。だがスタイルは、もう目に見張るものがある。まるでモデルの様な魅力的に育った肉体は、あの頃に会ったミクの母親に似てスタイル抜群だった。成長しすぎやしませんか?

 

 そんな彼女、ミクが俺の傍で目覚めるのを待っていてくれていた……まさにあの時の場面を再現したかのような状況だわ。何か作為的なものを感じ——

 

 

  カチャ……

 

 

 俺が成長したミクを見て思いに更けていると、何やら不吉な金属音が聞こえたのでした。……俺の両手の辺りで

 

 「……あのー……ミクさんや」

 

 「私のこと覚えてくれたんですねぇ。うれしいですー」

 

 「まぁ俺にとっちゃあそんな時間も経って——おい待てミク話を逸らすな。俺に手錠なんかつけて一体何をしようとしてるんでしょーかねぇ? 千歳さんさっきから冷や汗が止まらないぞー」

 

 そう、ベットの端に繋ぎ止められるかのように両手を手錠で拘束されてるのですよ。あの時の再現? 前言撤回だよバーロー

 そんな今の俺の状態に、嫌な予感を抱きつつ困惑していると……

 

 「ふふ………千歳おねーさまー?」

 

 傍にいたミクが、仰向けの俺に近づき……覆い被さってきた

 

 

 ……いや、マズイ。これは流石にマズイ。この状況はとてつもなくマズイ……!?

 え? え? 何この状況? ……何この状況!? 再会早々何しちゃってんのこの子!? ちょっとこれから先やろうとしてることを想像したくないんですけど!?

 

 「ずっと……ずっと待ちわびておりました」

 

 「ミ、ミク……? とりあえず退いてほしいなーと千歳さんは思うんですよ。ダメっすかね?」

 

 「だぁめ、です……」

 

 「うん、知ってる」

 

 言葉を紡ぐごとに表情が恍惚としたものになっていくミク。それを見た俺は……気付いた

 

 

 ——あの変態メイドと同じ表情じゃねーか!? 嫌な予感が的中したよチクショーッ!!

 

 

 あの頭のおかしい使用人と似た表情をするミクを察するに、いらんことを吹きこみやがったなアイツ……次あったら容赦しねー。精霊スペック使って全力で叩きのめしてやる

 ……逆に喜びそうで困るわ

 

 俺があの使用人のことを考えていると、ついに……ミクの我慢の限界に達した

 この9年間、自身の胸に秘めた純粋な想いを——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……あぁ、あぁ!! 千歳お姉様ぁ!! 美九はこの時を、この瞬間をずっと待ちわびておりました!! 千歳お姉様の事は一瞬たりとも忘れていません。千歳お姉様のお姿、声、雰囲気、匂い、肌触り……その全てを美九は覚えております!! ハァ……ハァ……あぁやっと!! やっと千歳お姉様が帰ってきてくれました!! 早速この九年間の埋め合わせをしましょう? 今しましょう? すぐしましょう! じっくりねっとりいたしましょう!! 今日からまた私の執事になってくださいね? また私と一緒にいてくださいね? 千歳お姉様の為なら私何でもやりますよぉ? 私の全てを捧げてもよろしいです寧ろ捧げたいですいっその事美九をめちゃくちゃにしてほしいです!! ——あぁでもまず最初は私が責めたいですねぇ……この九年間で磨きに磨き上げた私のテクニック、きっと千歳お姉様も満足して頂けると自負しております!! さぁ千歳お姉様!! 私とひと夏のアバンチュールを——」

 

 ——訂正。純度100%の邪まな想いだった

 そんな美九が冷静さを欠いて自身の思いを代弁している間に、千歳は密かにミクの目の前から姿を消すのだった。転移あって良かった……

 

 

 

 

 

 「……あの頃のミクは何処に行ってしまったんだろう……ハハハ」

 

 【(ゲブラス)】と【(ビナス)】を使用して自身の部屋に転移した千歳は、ただただ呆然と部屋の中心で佇んでいる。……その頬を伝う雫が印象的だったと言っておこう

 

 




あ、あれ……これ誰だ?少し白髪の子が混ざってやしないか?
何か別キャラに見えてきた……うん、まぁいいか。冷静になれば戻ることでしょう

とりあえずミクちゃんこと美九さんは、千歳さんに対する好感度が振り切っています
……シドー君大丈夫かな?いろいろと

何気に初めてかもしれない千歳さんのスタイル情報
イメージは艦これの木曾改二に近い感じですかね?多分

……やっと眼鏡をかけさせられましたぜ。フッフッフ……

次回から四糸乃編に入ります

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