俺が攻略対象とかありえねぇ……   作:メガネ愛好者

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メガネ愛好者です

お待たせしてしまい申し訳ありません。誓約アイテムマラソンやってました(わかるかな?)

とりあえず一章と二章……原作で言う一巻と二巻の間の話と言うことで
これは入れておかねばと思った話です。今後の展開に深くかかわる(とは思う)ので

あ、他の話も、段落の頭文字に空白を入れておきました
後、急にですが、章ごとに題名を区切ることにしました。こっちの方が分かりやすい気がするのですよ

それでは


第一間章 『過去での出会い』
間章前編 「それは涙の味? 知ってる……」


 

 

 あれから一週間ぐらい経ちました

 

 あの「久しぶりに……キレちまったぜ」事件のせいで、全壊どころか地形が変貌したと言っても過言じゃないまでに消滅した高台の公園は未だ整備を終えていない。……それでも整備速度が異常に早いが

 その為、せめて横になれて雨風……風は別にいいか。とりあえず雨に打たれない場所を探していた千歳さんだ。ホームレスはつらいぜ。段ボール食ってはないけどな

 どっかの廃墟にでも行けばいいのかな~なんて、そんな浅ましい考えは完膚なきまでにホームランされたりしたもんだ。都市開発の進んでいる天宮市でそんな場所なんてなかったんや……

 いや、無かった訳ではないよ? ただ……何故か人の出入りがあるんだよ。それも頻繁に

 流石に人の出入りがある廃墟になんていられないわ。暗い場所で急に人と遭遇するとか軽くホラーだしな

 そして結局廃墟に居つくのは諦めた訳だ。……だからと言って、寝床を探すことを諦めた訳ではない

 そうして必死に……とは行かないまでも、探し続けること数日間。時には顔を隠しながら寝床を求めて歩き続けるのでした

 ……え? なんで顔を隠してるんだって? いやもしもASDの皆さんに見かけられたら何をされるかわからないじゃん? 前髪のせいで顔バレはしていないとは思うけど、寧ろそのシルエットで気付かれるかもしれないし

 あの時、大っぴらに霊力解放した上で霊装まで見せちゃったわけだからな。せっかく霊力を隠していたのが無駄になっちまったよ

 それでも隠しておくには越したことはないから未だに隠し続けているけどさ? ……もし見つかっちゃたら、証拠隠滅に【心蝕瞳(イロウシェン)】で昏睡させてやろうかな? ……余計警戒度を上げられそうだからやめとこ

 

 まぁとりあえずは服装変えておけば大丈夫だろ

 服装変えただけでも人の印象って変わるもんだし、霊力も隠している状態なら滅多なことがない限りは大丈夫だと思うしな。……そこはかとなく心配だが

 因みにだが、今の服装はここの銭湯に元からあった従業員用の従業服に、この前顕現させたハンチング帽をかぶってます

 ……え? ハンチング帽してたら余計気づかれるんじゃないのかって? そこは安心したまへワトンソ君(ワトンソって誰だよ)

 いつからASDに見られていたのかは知らん。だが十香に見つかり逃走した時……多分走ってる時だろう。十香に捕まった辺りで気づいたんだが……その時には俺の頭からハンチング帽は姿を消していたよ。ようはどっかで頭から落ちた

 多分、下手したらまだその辺りに置き去りにされてるかもしれねーな。強く生きろハンチング帽! 例え泥に汚れても……!

 その為、あの似非デートの間は帽子をかぶっていなかったわけだ。フードもかぶるのを忘れてたし、運が良ければ頭を晒していた状態の俺しかASDは見てないんじゃねーかな? それならば帽子を外さん限りは多少の誤魔化しがつきそうだ

 とりあえず今のところは大丈夫だし、いちいち気にしててもしょうがない。もしバレたとしても適当に否定すれば何とかなるかな? ……考えるのもめんどいから、これ以上は見つかった時にでも考えればいいか。うん、それがいい

 

 

 

 

 

 とりあえず話は戻り、俺が寝床を探す事約三日後の事だった

 そん時は寝床探しぐらいしかやることがなかったので、昼の間は銭湯で番台しながらくつろいだりして時間を潰し、夜の間に外を出歩くことにした。多分夜の方がASDとばったり会うことも少なさそうだしな。下手に人に会う必要も無いなら夜間行動は基本っしょ? あの時何も言わずに去った分、十香や主人公クン達に会うのも……なんか気が引けるし

 

 さて……とりあえず結果から言いますとな

 

 

 

 ——しばらくの間、おじちゃんのとこに世話になる事になったわ

 

 

 

 ホントおじちゃんって勘が鋭くてさぁ……その三日目の夜、俺が銭湯を後にしようとしていた時の事だ

 銭湯から出て行こうとする俺に、おじちゃんが何の脈絡も無く「帰る場所を失ったか?」なんて言ってきたんだよね。その言葉に図星を突かれた俺は、唐突に言われたこともあってつい表情に出しちゃったんだよ

 そっからはもうおじちゃんのペースだ。行くとこないなら泊まっていけ、子供が金の心配なんかするな、などなどの理由を付けられ……気付けば、おじちゃん家に厄介になることになってしまった

 

 いや確かにありがたいことではあるんだけど……俺、精霊じゃん?

 今はいいとしてもこの先の事を考えると……あまり一緒にいない方がいいと思うんだよ。寧ろいたら迷惑だろ

 絶対俺に厄介事が起きる気がするからな。起きなかったとしても自分から起こしそうだし←

 そんな俺の事情におじちゃんを巻き込みたくはないんだよ。今までの事を振り返ると、俺の周りで起きた厄介事って……そのどれもが自業自得の結果にしか見えねーんだよな

 ……え? 寧ろそれ以外に無いだろって? 知ってる

 

 

 

 とりあえずだ。俺がおじちゃん家に居候などすれば、高確率で俺の厄介事におじちゃんを巻き込みかねん。そう考えた俺は、詳しいことはぼかしつつ説明してやんわり断ろうとするんだが……

 

 「そんなものお主の様子を見ればわかるわい。……その上で、儂は気にするなと言っておるのだ」

 

 何の躊躇も無くはっきりとそう答えた

 

 ……何このイケメン

 其処らの下手な男子よりもカッコいいのはどういうこと? 前世の俺よりも断然カッコイイんじゃね? これ。……え? 当然だろって? うるせーやい

 別に俺は他の奴等にカッコイイと思ってほしかったわけじゃねーし。カッコイイ俺は弟と妹の前だけで十分だし。皆だってそうだろ? な? ……な?(真顔)

 

 ……コホン。それはともかくとしてだ。それでもやはり気が引けた俺は、いっそのことはっきり断ってやればいいんじゃね? と決心し、おじちゃんに断りを入れようと思ったんだが……まぁあれだ、その間の会話は省略する

 

 だって断れなかったもん

 

 仕方ないじゃん。あんな真っ直ぐな目で見られたら断る方が申し訳なくなっちまうっての……

 ホントおじちゃんカッケーんだけど。こう……堂々とした態度って言うか……物怖じしない威圧と言うか……とにかく男らしかった

 そらモテますわこれ。きっと若い頃はブイブイ言わせてたんだろうな~

 ——え? それ死語だって? 知ってる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな訳で現在、番台やってます

 ……え? そればっかりじゃねーかって? しょうがねーやん、これしかやることねーんだから

 俺としてはのんびりするのが好きだから、結構この番台は俺の性に合ってるんだよ。お客さんとの談笑も楽しいしな

 特にどこかへ出歩きたいわけでもねーし、元から俺はインドア派だったから問題は無い

 それでも番台以外のことをやれって言うなら……昼寝するぞ?

 だって他にやることないだろ? やることないんだったら怠けていたっていいじゃない。だって怠け者だもの

 

 ま、居候させてもらってる身だし、おじちゃんの負担をなるべく軽くすることが出来んなら、例えめんどくさくても番台以外の仕事もやってやるけどな。風呂掃除とか

 そもそもな話、この銭湯での仕事は結構気に入ってるんだよな。番台でのんびりできる分やりたくないって思うこともないし

 

 因みにだが、この銭湯は午前中の間に準備をして、午後から営業を始めるスタイルだ。そんな営業時間のため、午後一番で浸かりに来るような人は滅多にいない

 その事から、基本1時から3時の間は自由時間みたいなもんだったりする。まぁそれ以降もほとんど趣味でやっている銭湯、仕事だからと言って気張る必要もあまり無いのがこれまた性に合ってるんだよね

 

 

 

 そんな現在1時半、おばちゃんが作ってくれたきな粉餅を食べながら読書中だ

 ……え? おばちゃんって誰だって? おじちゃんの奥さんだよ

 いやーおじちゃん家に出向いたらさ? 雰囲気から優しさを感じられるような穏和な方がいらっしゃったんだよ。やっぱりモテたんだねおじちゃん

 かなり優しい人でさ? 俺のことを孫の面倒でも見るかのように親身に接して来てくれたよ。おじちゃんもだけど

 そんな二人に……ちょっと前世の親のことを思い出したりもしてたっけ?懐かしいもんだ。転生してからもうすぐ一カ月だしな

 

 とりあえず、そんなおばちゃんから銭湯に来る前に「おばーちゃん印のきな粉餅~」を受け取ったのだった

 居候することになってからは毎日の如く、何かしらの手作りお菓子を差し入れとして受け取っていたりする。どれもウマカターヨ

 このきな粉餅なんかはきっと十香も気に入りそうだわ。確かきな粉パン好きだったはずだし

 今度十香に会った時のための詫びの品として、おばちゃんにきな粉餅の作り方教えてもらおうかな? 別にそこまで極端に下手じゃないから作れるとは思うし

 そんな訳で、ラノベを読み進めながらきな粉餅を咀嚼するわけだが……

 

 ——ただ、なんでかな? きな粉餅はうまいはずなんだけど……少し、しょっぱいです

 

 

 

 

 

 ……まぁいいや。そんなおばちゃん印のきな粉餅を竹串で掬って頬張りながら読み更ける

 いやーあれだね。別に学校行く必要とかも、せっせと仕事をやることも無いからラノベ読む時間がたんまりあるぜ!

 前世ではそこそこ多忙だったし、弟と妹の世話もせんといかんかったからなー。あまり自分の時間とか取れやしなかったよ。特に忙しかったのは……二人の要望に応えることだな

 あれやってーこれやってーとせがまれては断れず、いろんな事に手を出して二人を満足させてたな。そのせいで様々な分野を中途半端に身についてしまった千歳さんです

 その一つが腹話術だったりするのだが……あの時はまさか役に立つとは思わんかったな。……まぁ最終的な結果は大敗北だったんだけどね

 

 ……あれ、しょっぱさに加えて血の味が……何これ不思議、もうきな粉餅食ってる気がしないや……

 きな粉は黄色いはずなんだけどなぁ……ちらほらと赤い色が見えるのはなんでだろう? とうとう目もオカシクナッタ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——あ、そういえば少し報告がある……と言うよりも、言わなきゃいけねぇ事があるんだった

 

 

 実は——もう【(ゲブラス)】で覚えて置けるストックが一つしかなかったりする

 

 

 ……え? 流石に早すぎないかって? 俺もそう思うよ。でも使ってるうちにラス一になっちまったんだからしょうがない

 何に使ったかと問われれば……うん、道具に使ったとしか言えんわ。せっかくだし一つずつ説明していくよ

 

 

 

 一つ目は道具じゃない……と言うよりも、初めて覚えてそのままにしている十香の【最後の剣(ハルヴァンへレヴ)】だ

 貴重な俺の火力源でもあるし、忘れるわけにはいかねーわな。まともに剣を扱えないとは言っても振れはするんだから、単純に火力だけが欲しい時なんかは重宝するだろう。十香のパワーアップにも繋がるし、覚えていても損は無いでしょ 

 

 んで二つ目、五百円玉

 いちいち広告見て出すよりも手っ取り早いしな。五百円玉一つあれば~って思った時もあるが、もし手持ちに無かったら何も出来ないじゃん?

 常に持ってるわけでもねーし、多く持ちすぎるとかさばるしな。それに、たくさんあれば……ちょっとした使い道もあるからね

 

 続いて三つ目、デジカメ

 いつなんか起きて、その結果にデジカメがぶっ壊れるかもしれない。そうなったら中身のデータまでお陀仏になるかもしれない……いや、確実になるわな。だからこそ、これに関しては安全な場所(銭湯のロッカーとか)に保管して、必要な時に【(イェソス)】で取り寄せることにした。今までは写真越しに転送していたが、その写真が使用不可能な状態まで原型を失ったらどうしようもなくなるからよ

 

 そして四つ目、アルバムだ

 今までデジカメで撮った写真や、手に入れた広告などを挟んでいる物だな。これもデジカメと一緒に保管している。理由としてはデジカメとほとんど同じだから割愛。ボロボロにしたら目も当てられないことになるし、転送後も取り扱いには注意だ。何より思い出は大切にせんとな

 

 

 

 そんな訳で、便利ではあるが容量的に頼りなさすぎる【(ゲブラス)】さんなのでした。もう少し容量あってもよかったのではないだろうか……?

 ……え? そもそも使う用途がズレてるって? 知ってる。だがしょうがない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「——そういや、力と言えば……【(ビナス)】って時間移動できたな」

 

 しばらく【(ゲブラス)】の事を考えていた俺は、そこで不意に思い出す

 そうだったそうだった。霊力めっちゃ使うし移動ぐらいにしか気が向かわなかったせいですっかり忘れてたよ

 うーん……今の俺、ぶっちゃけ暇だよな……?

 あの日から時間も経ち、その上こうしてのんびりしていたおかげか霊力も回復したことだ。一度ぐらいは試しておいた方がいいか?

 

 

 

 ――よし、過去に行こう。暇だから

 

 

 

 もしかしたら何か過去を変えちまうかもしれねーが……まぁ極力面倒事に首を突っ込まず、ただ観光気分で見て回るだけなら大丈夫だろ。出来るかどうかの確認なんだし、ヤバそうだったらすぐに戻ってこればいい訳だ

 

 そうと決めれば話は早い。俺は一旦番台から離れておじちゃんの元に向かう

 俺が番台をやっている間、おじちゃんはいつも休憩室でお茶を飲んでくつろいでいるから多分今もいるだろう……

 そんな訳で休憩室を覗いてみると、案の定テレビに視線を向けながらお茶を飲んでいるおじちゃんがいた

 おじちゃんがいるのを確認した俺は、早速頼みごとをしてみることに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「天宮市よ……俺は遡ってきたあああああ!!」

 

 どこぞの核弾頭ブッパしたソ〇モンの悪夢っぽい台詞と共に、俺氏過去に現界。……あ、空間震を起こしたわけじゃねーぞ?

 

 おじちゃんへの相談事とは……昔の新聞記事が無いかの有無だ

 昔の記事にある写真は、まさにその時代の情景であるため過去にも飛べるのだ。新聞には日付も記入されてるからどのぐらい遡ったかの目安にもなる

 ……おじちゃん達の写真を見ればいいじゃんって思った人、それは無粋と言うもんだぜ? おじちゃん達の思い出はおじちゃん達のものなのだよ。それを利用するのはいかんでしょ

 

 

 そんな訳で、今俺は——9年前の天宮市にやってきました

 

 

 なんでそんな中途半端な年代と聞かれれば……まぁ保管してあった新聞の限界と言うもんだな

 新聞自体が残ってたわけじゃなかったが、何か衝撃的な出来事があった時の切り抜きが保管してあったんだよ。良く集めてたもんだよ

 限界としては多分10年前までは行けると思うのだが、その10年前の切り抜きは生憎となかったんだ

 それ以前の時代は……無理して何があるかわからないからやめた。とりあえず9年前の記事に乗っている写真から、その時間軸に転移することにしたのでした

 

 

 ただ……転移した後に、一つ問題が……

 

 

 「……霊力が……空っぽじゃー……」

 

 

 近くのベンチに仰向けでぶっ倒れている千歳さんでした

 

 いや……な? 転移して到着したのはよかったんだが……ついた瞬間、強烈な立ちくらみが……さ

 まさかここまで霊力を使っちまうとは……不味いな、このままじゃすぐに帰るのは無理そうだわ……

 とりあえず何とか近くのベンチまで眩暈を堪え、ついた瞬間ぶっ倒れたのであった。周りの目とか気にする余裕がありましぇん

 無事9年前に来れたのかぐらいは知りたいんだけど……あーやば、意識まで朦朧としてきやがったぜ……

 

 「……? なにしてるんですー?」

 

 「……んあ……?」

 

 もうこのまま寝ようかなーなんて考えていた時の事だった

 何やら俺のすぐそばで、どこかほんわかした口調で話す幼女がいるんだが……気のせいか?

 

 「おねーさん、だいじょうぶですかー?」

 

 「あぁ、問題無い」

 

 ……つい『おねーさん』という言葉に反応してしまった俺は悪くない……悪くないんだ

 そんな俺は、無理に体を起こして呼びかけてきてくれた幼女に視線を向ける

 

 ——だが

 

 

 ドサッ……

 

 

 「——え? ……あれ? おねーさんどうしたんですぅ?」

 

 「……」

 

 ごめん……やっぱ無理。無理に起こしたせいで、なんか頭ん中でプッツンした感じがする。これあかん奴や

 てか無理に体起こしたせいで頭ん中がヤヴァい。まるで頭を掴まれ「ヒート……ッ! エンドォ!!」されたかのような気分だわ……頭が熱いぜ

 あぁ……視界がスローで移り変わる。まだ教えてないってのに、力を使ってるみたいだわ……

 

 そして俺は、再びベンチに意識ごと沈むことになるのであった——

 

 

 ……顔を見たのは一瞬だったけど、可愛らしい子だったなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……知らない天井だ」

 

 まさかこの言葉を使うことになるとは……いや、それ以上に言いたい事があったわ

 

 「……知らない天幕だ」

 

 そう……天幕なのだ。あの貴族とかが使う、高級そうなベッドとかについてるようなアレ。……てかまさにアレなんです

 今の俺、なんかスッゲーふかふかするベッドの上に寝かされてる状態なんですよ。どうしてこうなった

 ……まぁいっか。それよりもこのベッドの方が問題だ

 何このベッド? めっさ寝心地いいんだけど? 最早いつも寝床にしているベンチとは比べようがないほどの安らぎ感が俺の身を包むのですが? 癒し度が極限までに達しているのですが?

 ――え? 比べることすらおこがましいって? 知ってる

 それにしても……あ~……ヤバい、マジでふかふかだわ~……もう何でもいいや。俺はこのままこのベッドで寝ることにしよう

 だって仕方がないじゃないか……凄く寝心地がいいんだから。俺の中の怠け者も喜びすぎて狂喜乱舞しちゃってるよ? 怠け者が逆に元気ハツラツしてるときは、大抵自分にとって新たな(怠惰の)新天地が見えた時だからこれは相当なことだぞ?

 

 はふぅ……そんな訳なんで俺は寝るぜ。おやす——

 

 「——あ、おきた!」

 

 「……」 

 

 ——起きるとするか。うん、起きよう。それがいい

 

 俺はベッドから重い体……あれ? 思ったよりも軽い? 意識が落ちる前はあんなに怠かったってのに……まぁいいか。とりあえず上半身を起こすことに

 そうして起き上がった俺の視界に映ったのは……ベッドのすぐ横に備えられていた椅子に座り、こちらを見ている幼女……俺が気を失う前に『おねーさん』と呼んでくれた幼女が、晴れやかな笑みを見せつつ俺の方に顔を向けていた

 

 「えっと……ここは……」

 

 「わたしのおうちですー」

 

 「あ、そうなん」

 

 まだまだ舌足らずな口調で話す幼女。どうやら俺はこの子に誘拐されたようだ……いや冗談だよ?

 多分、落ちつける場所に運んでくれたのかな? こんなベッドに寝かせてくれたことに全力で感謝したい

 

 「とりあえず……ありがとな」

 

 俺はそう言って彼女にお礼と言わんばかりに頭を撫でてしまう

 あー……やっておいてなんだが、どうも弟と妹にやってた癖が抜けねーな。褒める時はよくよく頭撫でてたからほとんど無意識でやってたわ

 てかこの子、めっちゃ髪サラッサラやん。周りの上品な内装からして裕福な家庭なんだろうね。羨ましい妬ましい

 

 「おねーさん。だいじょーぶですかぁ?」

 

 「おう。おねーさんはもう大丈夫だぞー」

 

 俺は彼女の頭から手を離し、自身の安否を告げる

 俺の言葉にホッとしたのか、少し肩の力が抜けたようだ。なんかすまんね

 

 「とりあえず……自己紹介しとくか。俺は千歳だ。君は?」

 「わたしは”ミク”っておなまえですぅ。よろしくおねがいしますね、チトセおねーさん!」

 

 

 

 

 

 ――この出会いは、本来の史上には決してありえる事はなかった

 

 だが、その出会いは……彼女達のかけがえのない出会いとなる事象(イベント)となったのは言うまでもない……

 

 




おや? これは千歳さん失れ「うっせぇ黙れ」
……コホン。とりあえず千歳さんが過去に行くお話でした

一体『ミク』ちゃんとは誰なんだ……!?

……まぁここまで来ればわかりますよね。別に隠す必要も無いですし
早期に出てきた彼女……次の出番はかなり先かも……ね。もしかしたらいずれかの間章で出番があるかも?

次回、多分後編。中編ではないはず……

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