俺が攻略対象とかありえねぇ……   作:メガネ愛好者

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 どうも、メガネ愛好者です

 とりあえず原作組との邂逅は次回です
 今回のお話は、時間軸的には原作ちょっと前ですね

 それでは


序章 『転生したけど女だった』
第一話 「盗みは犯罪? 知ってる」


 

 

  ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ—————

 

 

 転生した。

 

 

 どうも、千歳(ちとせ)というものです。名字は無い。

 何せ戸籍や住居が無いんだ、あるわけがない。

 そんなホームレスな俺が、何の因果か——

 

 

  ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ—————

 

 

 ——転生した。

 しかも女にだ。なんかいろいろと失ってると同時にいろいろ得ている。何がとはあえて言わない。ご想像にお任せすんぜ。

 にしても、性転換もとい女体化かぁ……前世はバリッバリの高校男児だったって言うのにな。違和感が全力で仕事してて心も体も落ち着かないッス。

 

 ——そもそもの始まりは、あのよくわからん存在と対面した時から始まったのだろう。

 

 何やら自身を”神様”と自称する変な奴がいきなり現れたと思ったら「お前。死んだ。転生。転生。転生転生転転てててててて」等と、壊れたラジオみたいに狂いだし始めやがった。

 とりあえず相手方の様子がなんかおかしかったんで、(何故か)近くにあったテレビを右斜め45度で叩きつけたら治りました。……え? 突発過ぎてクレイジーすぎる? 知ってる。

 

 

  ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ—————

 

 

 ……そして、(おそらく)正常に戻った”神様”とやらが俺に事の経緯を語り始めたんだけど……まぁなんだ、別に話をまともに聞く気はなかったし、どうせなるようにしかならないんだろうからと、俺は地べたに寝そべりつつ聞くだけ聞くことにしたんだわ。そんな俺の対応は悪くないはず……え? 態度が悪い? 知ってる。

 そんで、一先ず適当に聞き流していたんだけど、不意に”神様”の「貴公の望み述べよ」って問いかけがやけに鮮明に聞こえてきたんだよ。

 まぁ聞かれたからには言わにゃあならんと思った訳で、その時はとりあえず無難に「(らく)して充実に堕落したい」って言ったんだっけ? 見事にダメ人間の理想図だなコレ。

 

 

 その結果、女になりました。

 

 

 ……何だろうね? 金持ちに(なび)いて玉の輿生活でも送れってことなのか? キャラじゃねーから却下だよバーロー。

 そんなTS少女な俺は——

 

 

  ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ—————

 

 

 …………うん。

 

 

 「うっせぇ」

 

 

  ——ガシャァアアアアアンッ!!!

 

 

 あらやだ女の子っぽい凛々しい声。それなのに口調が汚いとか誰得だろう?

 とりあえず俺はさっきから隣でうーうーうるさく鳴り響くソレ——こっち向きで横倒しになっている警報機の付いた電柱を()()()()()()()()()()

 お? なんか力が上がってる? 苛立ちを込めながら蹴ったら電柱が木っ端微塵になったわ。その破片も近くのビルに散弾銃の如く突き刺さったし……もしや俺の筋力高すぎィ!?

 

 いやそれ以前に疑問なんだが、なんで横転してるし警報さんや。一体君に何があったっていうんだ?

 ……ん? なになに? えーと……俺のせいなのですか? うん、知ってた。

 なんとなく察せるよこのぐらい。明らかにこんな非日常のことなんて神様に転生してもらった俺ぐらいしか起こせないんじゃね? ってぐらいには想像がつくからな。記憶に無いけど。

 とりあえず周りがどうなってるのか気になり周囲を見渡す俺氏。果たして俺の出現にどれだけの被害が生まれたのやら……あれ?

 

 

 なんだろうこれ。俺を中心にクレーターが広がってるんですが……

 

 

 ………………

 

 待った、ちょっと待ってくれ! 俺そんなに体重重くないよ!? あってもきっと綿あめぐらいしかないからこのクレーターは俺のせいじゃないよ!! ……それはそれでバケモンだな。

 ……いい加減現実見るか。いつまでも現実逃避していたら話が進まないからな。……これが現実っていう自信はないけどね。

 

 周囲の景色はクレーターの余波なのか酷い有り様である。まさに廃墟。まるで廃墟、マジで廃墟である。

 いやー全く、俺は一体何をしてこんな惨状を作っちゃったんだろうな? 地面はアスファルトだって言うのに、まるで隕石が落ちたみたいに綺麗に抉れて——

 

 

 ——あれ? これは俺が隕石ってことか?

 

 

 そしたら何か? 俺は宇宙からやってきたと? そう言いたいのかワレェ。それならせめて見た目をリトルグレイとかにし——やっぱ無し。まだ今の姿の方がいい。

 それと、もし墜落によるクレーターだったのならせめて宇宙船に乗ってきてくれよ俺。墜落した宇宙船とか一度生で見たかったし。

 てかこれさ、単体で地球圏入場を果たした感じ? うーん……

 とりあえず……この状況から言えることは、だ。

 

 

 

 新事実、俺はTS少女系宇宙人に転生しました!

 

 

 

 ……え? 違う? 知ってる。

 

 

 

 □□□□□

 

 

 

  ——ピキリリリンッ!

 

 「見えたッ……何を?」

 

 とりあえず俺は直径5m程のクレーターから上にあがろうとしていた。ただ突っ立ってるのも暇だしな。

 そうして俺がクレーターの外に向かおうとしたその時、ニュータイプばりの閃きが俺の脳裏をよぎったのだった。私にも見えるぞ! 何かが。

 ただその閃きは……なんとなーく嫌な予感がしてしょうがない。よし、フラグは全力回避するに限る。

 とりあえず俺は急いでクレーターから脱出(なんかすげージャンプできた。これで立ち幅跳びは世界新だぜ!)、そのまま近くの……えーと……とりあえずコンビニにダッシュ!(足も速くなってる。このまま走り続け——やめよう。何かに憑りつかれそうだ)

 とりあえずコンビニの中に入って雑誌コーナーに身を隠します。……棚にあった牛乳とあんパンを手に取って。

 やっぱ張り込みと言ったら牛乳とあんパンだよな。多分俺が容疑者側だろうけど。

 何故に俺が容疑者に……くそぅ、あんパン握りつぶして「なんじゃこりゃー!」って叫びたい気分だぜ!

 ……どこかで「ボクの頭を粗末にするなあああああ!!!」——って聞こえた気がする。パンマン先輩ウィッス。

 そもそもな話、俺あんパン好きじゃねぇから取っただけで元から食う気なかったんだけどな? すまんなアソパソマーソ、俺はジャムパン派だ。

 

 

 

 結局パンじゃなくて米を食べてる千歳さんでした。白米旨し。

 パンの代わりにミックスグリル弁当を勝手に手に取って、勝手にレンジ使って、勝手に割り箸取り出す俺は元コンビニアルバイターだぜ! 大体の物の位置は簡単に把握できているのさ。

 金? んなもんねーよ。転生したばっかだぞ、ある訳ないジャマイカ。

 監視カメラ? 先にぶっ壊しといたから問題ないね。顔バレはしたくない臆病者(チキン)です。

 犯罪? 一度してみたいお年頃なのです。禁忌に惹かれるのは人の(さが)ってもんさ。

 

 

 そんなこんなで弁当を食べながら見張ること数秒後……

 

 

 「空間震の発震源に到着。……精霊は?」

 

 「周囲に人影はありません! 移動した可能性が大きいです!」

 

 「観測と同時に現界したっていうの? いくらなんでも予震から出現が早すぎる……総員、辺りを散策! きっとすぐ近くにいるはずよ! おそらく新種、霊力波を辿って見つけ出しなさい!」

 

 『了解!』

 

 そんな感じのやり取りをしている……痴女さん達。

 そう、痴女さん達がクレーターに(たむろ)ってるのだ。唐揚げウマァ。

 モグモグ……いやだってさ? 何やら近未来的な装備してるからまだマシなのかもしれねぇけど、実際に着てるのは肌にピッチリ張付くボディースーツぐらいじゃないかと思えるレベルの薄着なんだぜ? 恥ずかしくないのかねぇ……あ、漬物美味しい。

 ポリポリ……いい歳した女性が揃いも揃って何て格好をしてるんだ全く……お父さんはそんな——お、このスパゲティ旨いな……ズルズル……ごくん。子に育てた覚えはありません! そもそもアンタらに見覚えも何もないけどね。

 そう考えながらハンバーグをハムハム咀嚼ナウ。結論、このミックスグリル弁当気に入ったですことよー。

 

 ——え? 呑気に弁当食ってる場合じゃないって? 知ってる。

 

 どうやらあのクレーターの発生原因(多分俺)を探してるみたいだわ。

 そういやあの痴女集団、クレーターを見ながら”精霊”だか何だか言ってたけど……精霊? それって俺のことか? 宇宙人じゃなかったのか俺……OTZ。

 はぁ、まぁいいや。精霊だか幽霊だか闇霊だか知らないけど、とりあえず物騒な武装してるし見つかってもいいことはなさそうだな。……物騒な武装……ないな。

 それと、どうやらその白霊(え?違う?)から出る霊力とやらを辿ってるみたいです。多分俺がさっきから人外パゥワーを使うときなんかに出てるオーラっぽい空気の事だと思う。

 因みにそのオーラは、今の俺の髪の色と同じ濃い抹茶みたいな……深緑色って奴か? まぁそんな感じの色だった。何かパッとしないでござる。

 

 てか今改めて見ると結構奇抜な姿かもしれねぇわ俺。それに前髪が目を隠すほどに長いせいで視界が……まぁ邪魔ってわけじゃないからいいや。

 根暗で地味っぽいけどそのおかげで変に目立たなくていいだろうしな。……服装で完全に目立っちゃってますけども。

 

 

 そんな俺の服装は……所謂”改造軍服”というものになっていた。

 

 

 深緑色をベースにした軍服を身に纏い、漆黒のマントを風に靡かせる。そのマントには、何やらよくわからない不可思議な紋様が描かれているけどなんだろうなこれ? 見れば見るほど底が無い様に感じるような不思議な紋様である。

 

 軍帽を深めにかぶり、袖を肘辺りまで捲りあげている。うん、上は特に問題ないな。……上は、な。

 問題は下なんだよ……そう、下の服装。

 

 

 ——だって今の俺、スカート履いてるんだもん。

 

 

 極端に短い訳ではないのが救いかな? それでも膝上ぐらいしかないけどさ。

 ……いや、それ以前の問題か。スカート履くとか男としてどうよ? 今は女だけどさぁ……

 そもそもなんでスカート? 普通軍服って言ったらズボンでしょうに。だから改造制服だって俺に言われんだよ。スカート履いた軍人とか舐めてるにも程があるでしょうが。

 ……もういいや。あまり気にしてると何か大事なものを失いそうだわ。とりあえず他に身に着けているのを言っておくか。——とはいっても、後は焦げ茶色のアーミーブーツを履いてるぐらいしかないんだけどね?

 

 とまぁこんな感じの服装になっている訳だが、不思議と動き難さとかはないんだよね。こういった肩っ苦しい服なんて着た事なかった筈なのに……まぁそれももういいか。不便じゃないなら気にしてもしょうがねーからな。

 

 そんな変わり果てた姿の自分がコンビニの窓ガラス越しに映っていたので、近くに置いてあったウイダーを手に取りつつ開封しながら眺めていると——

 

 「……あ」

 

 「……」

 

 ——不意に俺の横から間の抜けた声が聞こえてくるのでした、まる。

 とりあえずそちらを向いてみると、先程の痴女集団の中にいた茶髪で小柄な少女が俺を見て固まっていたのだった。あら~見つかっちゃったぜ☆

 でも慌てちゃいけない。こういうときは冷静に対処してこそなのさ。

 まずその子の後ろを何気無~く伺ってみる。……誰もいないな。どうやら分散して探しているみたいだ。

 

 この場には彼女一人しか居合わせていない。

 

 ならばすることはただ一つ——

 

 「俺の代わりに料金出しといてくんね? ——これは上官命令だ」

 

 「え? ——あ、はい! 了解しましたっ!」

 

 ——威圧的な態度で意識を俺から背けさせるに限る。

 

 俺の言葉に一瞬だけ唖然とした少女は、俺から放たれる威圧と軍服姿によってか意識するよりも早く行動に移すのだった。

 茶髪の少女は一旦武器を放り出し、懐から財布を取り出しては会計へと向かっていく。それはもう本能的に。

 

 ……………

 

 確かに俺から注意を逸らそうと思って脅しはしたけどさ……流石に素直すぎやしないかい? 思っていた以上にすんなり聞き入れたことに驚きだよ。もしかして軍人だったりするのかな? そうだったとしたらしっかり仕込まれてるねぇお嬢さん。

 とにかく一言。君が今後、悪い人に騙されてしまうかもしれないと思うと千歳さんは心苦しいです……

 

 まぁ、そんな悪い人第一号は俺だけどな? はっはっは。

 とりあえず今のうちに逃げるか。たたた~

 

 

 

 「——って!? 何で私が払わなきゃいけないんですか!? ……あ、あれ? さっきの人は何処に!?」

 

 ようやく気づいたのか辺りを見渡す少女を背後に確認。今度会ったら何か奢ろうと思った俺なのでした。……金があったらの話だけどな?

 はっはー! あばよとっつぁん! 次会うまでに財布の補充をしておいといてな!! ……また会うか知らんけどさ。

 

 

 

 □□□□□

 

 

 

 心の中で一方的に言葉を送った俺は、ある程度離れ少女を撒いたところで状況を確認する。

 とりあえず次は……服だな。流石にこれだと目立ちすぎるわ。

 幸い、何故だか知らんが街から人が消えている現状だ。いわば必要物資を補給し放題ってやつなのだ。

 

 盗みじゃない。死ぬまで借りてくだけなんだぜ。

 

 そうなると次の目的地はデパートだな。服屋とか食料もあるだろうし、本屋とかに行ってもいいかも? この世界のラノベとか気になるわ。

 下着は……また今度にしよう。

 

 

 

 「はい到着」

 

 何の苦も無しに最寄りのデパートを発見、同時に入店だ。

 結構充実しているのかパッと見でもかなりの品揃えである。なかなかに利用しやすそうだ。

 それにしても……うぅむ……俺はこれを初めとした施設を破壊しちゃったのかね? さっきのクレーターで。

 俺がやったかはまだわかんないけどちょっと罪悪感が……これじゃあいい品をも壊してしまってネコババできないじゃないか! え? 発想がゲスイって? 知ってる。

 転生した以上やりたい放題やってやるさ。どうせ人外みたいだし、好きにやったって文句は言われんだろ。

 それは犯罪だって? 残念、それは人間が決めたルールであって、精霊(?)である俺には当てはまらねーのさ!

 

 とりあえず服屋にGOだ!

 これからの事もまずは着替えてから考えればいい。……本意は別のところにあるけどね?

 いや流石にさ? この服装のままずっと過ごすのはちょっとねぇ……難易度が高いものがあるからね。コスプレイヤーで通すのにも無理があるから。

 

 

 

 「わお、めっさ便利やん」

 

 はい、そんな訳で着替え終わりました。……え、何? 着替えシーンはどうしたって? んなもんねーよ。それに着替える暇も無かったからな。一瞬だったし。

 なんかこう……あの服にしてみようかなーなんて考えてたら、俺の体——厳密には着ていた服が光り出したんだ。そして光が止めば考えていた服装と全く同じ物が装着されていました。

 何この便利機能!? 服代浮くじゃん!! これで他のことに金を回せる!!

 ——まぁ現場なら仮パクでおっけいなんだけどよ?

 

 そして現在の服装は、少し大きめのパーカーとズボンで体を隠すような感じにしてある程度体と服の間にゆとりを持たせている。

 俺ってピッチリした服って嫌いなんだよね。それだったらダボダボの服の方がすごしやすいのです。ファッションセンスとかは気にしない方だ。

 とりあえずパーカーについてるフードをかぶって顔以外の露出を無くす。前髪のおかげで視界もある程度隠れるため、最早口元ぐらいしか肌は見えないだろう。とにかく出来るだけ外界から自分という存在を切り離すのだ!

 何故そんなことをするかと聞かれれば……ぶっちゃけ閉鎖的な空間って落ち着かない? 自分だけの領域って感じがしてさ。

 靴もスニーカーに履き替えたので、今の俺はシルエットだけなら女か男かわからないだろう。これならそこまで自分が女になったことが気にならなくなる。何せこの服装こそが前世の俺が良く着ていた服装だからな。

 

 「いやーマジ便利だわ。このお着替えシステム。うし、次行こ次」

 

 そうして服屋である程度服装を整えた俺は次なる新天地へと——

 

 

 

 「隊長!精霊を確認しました!」 

 

 『了解!全員彼女の元に向かって!』

 

 ——行く前に見つかってしまいましたとさ。

 

 マジかよおい……本格的に見つかっちゃったよ。こっからどうしよ。

 幸いなのは今の服装のおかげで顔バレを避けられたことかな? さっきの少女が気づかない限りは大丈夫だっぺ。

 とりあえず……

 

 「鉄○ダッシュ!!」

 

 「なっ!?精霊が逃走を謀りました!」

 

 何で逃げることに驚いてんのさ? 明らかに物騒な武器を突き付けられたら逃げるに決まって——って、なんか撃ってきやがった!? 明らかな凶器を人に向けんじゃねぇ!! 親御さんに教わんなかったのか!?

 ……そういや俺って精霊なんだっけ? 人間じゃねーじゃん。

 まさかさっき言ったばかりのことを逆手に取るとはな……侮れんな痴女軍団。

 

 まぁいいや。十分避けられる弾速だし避けながら逃げますか。……避けられる弾速っていう時点で自分の身体スペックが非常識化していることを実感させられるねぇ。

 いやーそれにしても、この体マジで便利だわ。この体になってから身体能力とか動体視力とかがすんばらすぃ~ことになってるもん。

 なんか避けるのがアトラクションみたいで楽しくなってきた自分がいますです。

 はっはっはー、痴女さんこちらっ、手の鳴る方に~♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「追い詰めたわよ!」

 

 「……O☆YA?」

 

 あれれ~? おっかしいぞぉ~?

 

 ——何で俺は屋上に逃げたし。

 

 自分で逃げ道塞いじゃった感じですね。調子に乗って「ホップ、スタンプ、ジャンピングヘッドバットォ(!?)」——してたらいつの間にかに屋上に来てたわ。

 気付けば周囲の空には先ほどの痴女集団が集結しているし……これって所謂絶体絶命ってやつか? 集団リンチカッコ悪い!

 

 「やはり新種……どんな行動をするかわからないわ! 気を引き締めなさい!」

 

 『了解!』

 

 なんか”新種”って言われることに抵抗が……虫みたいな言い方イクナイ。

 それにしても……今の集団リンチは統制が取れているようで恐ろしいことこの上ないです。あのポニーテールの人容赦ないなぁ。

 てかさ? その中の一人の視線が恐いんだけど? 白髪の美少女がめっさ俺のことを睨みながら銃口を向けてるんだけど?

 俺なんかした? 街を壊しちゃったから激おこぷんぷん丸なんですか?

 ……まさかとは思うけど、痴女って思っていたことに気づいてる感じですか? だって事実——ヒィッ!? 眼光の鋭さが増したあ!? 絶対気づかれてるよアレ!?

 

 ど、どうしよっかなぁ……。この状況、なんか詰みっぽい気がするんだよなぁ……

 もしも俺に……何かこう……「覚醒せし超越した力が——今目覚めるッ!」——みたいな感じの展開が来てくれるといいんだけどね。中二とか言って馬鹿にしちゃあいかんぜよ。

 でもまぁ……流石にそれは夢見すぎ——

 

 

 ………………………………

 

 

 ——あれ? なんかあるっぽい?

 この後どうしようと少し考えてたら、なんかそれっぽい感じの物が頭に浮かんできた。何これ不思議。

 神様が与えてくれた力かな? まぁいいや。早速だけど()()()()()()。オラスッゲェワクワクすっぞ!

 

 ——では皆さんご一緒に——

 

 

 「——〈心蝕霊廟(イロウエル)〉」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………うわぁ。えげつねぇなこれ。

 いやぁこれは……マジか? え? マジなの?

 

 その力の名称を呼んだ瞬間、俺の脳裏にその力の説明が刻みこまれた。……俺としても疑いたくなるような力の全容がね。

 あまりにも規格外すぎて引いた。こんな力をくれた神様に引いた。いや確かに「楽して充実に堕落したい」——っていう俺の望みを叶えるには十分すぎる力ではあるけども……流石にこれは使う気になれんぞ?

 救いとしては、まだ俺が未熟だからか()()()()を出せないのが救いだね。だって、下手すればこれ……いや、考えるのはよそう。

 

 とりあえず今使える力だけでも初公演しよう。この場を乗り切るには十分な力が備わってるかし、問題はないだろう。

 てか使いたい。超能力とか前世から憧れていたし、使いたくない訳がない訳で……よし、使おう。

 

 俺はズボンのポケットに手を入れたまま——遠くに見える山を見据える。

 今から力を使うに当たり、周囲には俺の言葉に警戒が強まった痴女集団がいるのだが……最早彼女等には俺を止めることは出来やしないさ。

 

 

 ではさらば。出来れば次に会うときは、普通の服装で平和的に会いたいです。

 

 

 俺は見据えていた山の頂に視線を凝らす。幸いにも前髪で目元が隠れているので、彼女達からすればただ突っ立ってるだけにしか見えないだろう。

 そんじゃ、一応転生してから初の異世界人? だし別れの挨拶でもしようかな。

 とりあえずポニーテールの人の方に手を振る。怪訝そうな顔をされた。ショック。

 そんな俺の行動を見た一人——あの殺気だった視線を送ってきた白髪の少女が、ビームで刀身を形作ったような剣で切りかかってくる。何それカッコいい。

 ……まぁ、今はいいや。

 

 

 

 そして、後少しで少女の刃が俺に届くと言った光景を前に——

 

 

 

 ——俺の視界は、一瞬にして街を見下ろす光景へと映り変わるのだった

 

 

 今俺がやったこと、言ってしまえば簡単なこと。

 

 ——視界に映る場所へと転移する——

 

 ようは見ている場所へと瞬時に移動できるのだ。千歳さんは”瞬間移動(テレポート)”を覚えましたわ! ……”ましたわ”とかガラじゃねーな、うん。

 それはともかく、長距離移動とかに便利だなコレ。

 しかもだ。俺の頭に刻みこまれた知識が正しければ()()()()()()()()()()無視してその場に転移出来るっぽい。

 例えるならば——修学旅行で撮った写真を見れば、まさにその写真を撮った時間、場所、立ち位置に転移可能という破格の能力。

 つまり、これがあれば好きな時に思い出を実体験込みで振り返れるわけだ

 良いねこれ、要望通りの性能じゃん。本来の力は過剰すぎるけど、この力は実に使い勝手がいいね。

 

 「……うし」

 

 デパートの屋上から見据えていた山の頂にある木の幹に腰を掛け、俺はたった今迄いた街を見据える。

 何やらこの街ではいろいろと面白そうなことが起きてるっぽいね。転生直前にも前とは何か違う的なことを神様に言われたけど……さっきの人達からして、前世と比べて結構非現実的なイベントが起きるのは確定的に明らか。

 

 「これから何をしようかねぇ……」

 

 俺は今後のことを考えながら、しばらく滞在するであろう街を眺める。

 街自体も結構発展しているし、前世よりは不自由もしないだろう。

 気ままにダラダラのんびりと。そんなセカンドライフを満喫していこうと考えた千歳さんでした。

 

 「とりあえず……ゲームとか小説かっぱらうか」

 

 ——そして、犯罪さえも既に気にならなくなってきた千歳さんでした。え? 今更だって? 知ってる。

 

 ……というかさっきまでの異様なテンションは何だったのだろう? 謎だ。

 

 

 

 □□□□□

 

 

 

 3月31日。

 その日、いい加減で適当で、面倒くさがり屋で不真面目だけど……身内と決めた者には真摯に対応する情の深い精霊……後に”識別名〈アビス〉”と呼ばれることになる少年改め少女”千歳”が現界する。

 

 そんな千歳だが、この時の彼女は全く予想だにしていなかったことだろう。

 

 まさか——

 

 

 

 

 

 ——元男だったというのに、男とデートすることになろうとは。

 

 





 誰もいないなら盗——借りるのは常識な千歳さんでした。

 とりあえずこんな感じの主人公。一体士道君にどんな感じで口説かれるのやら……ムフフ。
 次回は士道君達と会うかな? それとも……?

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