ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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第二章開始。

さて、ここからどんな物語が始まるのか。

お楽しみください。

そして、遂に評価バーに色も付いてUAも6000突破にお気に入りも60を越える事が出来ました。

これも評価してくださった方。

お気に入り登録された方。

そして、読んでくださってくれる皆様のお陰です。

それでは第二章始まりです。


二章 九人の女神
八話 篠原沙紀 その三


 1

 

 私──篠原沙紀は自分が通う音ノ木坂が廃校になるって聞いて、そこまで驚きはしなかった。むしろ、ああやっぱりか、なんてくらいにしか思わなかった。

 

 そもそも私がここを受験した時点で、明らかに人が少なかったし、入学してからクラスが二クラスしかないと知って廃校まで秒読み。この場合は年読みって言えばいいのかな。

 

 そんな訳で私は妥当かなと思っていた。少なくとも私がいる間は、学校は存続するから別に興味ないかなって思っていた。

 

 でも絢瀬生徒会長のことだから廃校を阻止しよう行動するのも彼女の性格を考えれば分かる。それに多分希お姉ちゃんを通して、私に協力を求めてくることは読めていたから、そうなったら手伝おうかな、ってくらいの気持ち。

 

 案の定──希お姉ちゃんが私に頼みに来て、私は手伝うことになったわけ。その時点で既に私は廃校を阻止するための案を二つ思い付いていた。

 

 一つはこの音ノ木坂でスクールアイドル活動を始めてPRすると言う案。

 

 スクールアイドルの人気はもう既ににこ先輩が説明してくれたから省略させてもらうけど、まあ、早い話長いものには巻かれろ、ってことかな。

 

 もう一つは私自身が音ノ木坂のPRをする案。

 

 こっちも既ににこ先輩が説明してくれたからわたしの正体は知っていると思うけど、わたしはそれなりに知名度あるアイドルだった。

 

 だった。って過去形だけどその通りで今はアイドル活動を休止して、普通の女の子として高校に通っている。それを止めて私がアイドル活動を再開すればそれなりには人を集めるかなと考えた。

 

 だけど、それは出来ない。

 

 私にはアイドルとして致命的なものが欠けている。だからこれは成功しないと考えて、私はスクールアイドルを使った学校のPRをする案を頭の中で計画した。

 

 その際にスクールアイドルとして活動するのはにこ先輩。

 

 にこ先輩は歌もダンスもスクールアイドルとしては普通くらい実力。ただにこ先輩はキャラって言う強みを持っているから、これを売り出してスクールアイドルとして活動して貰おうと計画していた。

 

 もちろんアイドルなのだから歌もダンスは普通くらいではダメ。全く印象に残らないので、わたしがアイドル時代に経験したトレーニングを無理の無いようにかつ、にこ先輩専用に調整して、半年こなしていたからそれなりの実力は付いていた。

 

 元々プロのアイドルがやっていたトレーニングをこなしていたのだから、上達しない訳がない。上達しないならそれは才能がないだけ。

 

 にこ先輩なら、一人でも今や千を越えるスクールアイドル中から、上位百位以上は狙える実力を持っているいくと予測できる。その実力なら学校をアピールする上でもにこ先輩の夢のお手伝いをする意味でも、ここまでいい作戦はなかった。

 

 本音を言えばやっぱり他のメンバーは欲しかったかな。せめてキャラが強い以外で、特徴のあるメンバーがもう一人居れば更に順位は上がる要素が増えるから。

 

 でも居ないものは仕方がないので諦めるしかない。

 

 あとはどう絢瀬生徒会長を納得させるかだったが、ここで計画は思わぬ事態で変更せざる負えなくなった。

 

 そう──穂乃果ちゃんたちがスクールアイドルを始めようとして生徒会にやって来た。

 

 だから私は急遽、計画を練り直して、あの時の穂乃果ちゃんの奇行と希お姉ちゃんの占いを聞いて、別の計画を思い付いた。

 

 そしてその計画のために私は穂乃果ちゃんたちに近付いた。

 

 私の大切なにこ先輩の為に。

 

 2

 

 ファーストライブ翌日の午前中の授業──私の心は縄で縛られたみたいに締め付けられて、授業に集中出来ずにいた。

 

 理由は自分でも分かっている。私が穂乃果ちゃんたちの熱意を知るためにわざと失敗するのが分かっていて伝えなかったこと。それどころか確実に来るはずだったにこ先輩に頼んで、観客がゼロの状況を作ってしまったのだから。

 

 あのライブで穂乃果ちゃんたちは本気でスクールアイドルやるって熱意は伝わった。それににこ先輩も彼女たちのことを、少なからず認めてはいた。

 

 結果からすれば前進した。

 

 私たちの計画としては問題はないけど、それと私が穂乃果ちゃんに酷いことをしたのは別問題。そもそも穂乃果ちゃんたちに近付いた理由も理由だからなおさら。

 

 だから謝らないといけないのは、分かっているんだけど、今日の朝はライブのあとだったから練習がなかった。それに私は穂乃果ちゃんたちと別のクラスだから、謝るタイミングが見つけられず、今に至る。

 

 自分から謝りに行けばいいと思うかもしれないけど、と言うかその方が絶対良い。ただ下手をすれば、穂乃果ちゃんたちに嫌われると思うと、私は謝りに行けなかった。

 

 だって穂乃果ちゃんたちは私にとって……。

 

「この問題、解けるやついるか」

 

 私が考え事に夢中になっていると、先生が黒板に書いた問題を解ける生徒が居ないか探していた。

 

 しかし、誰も反応しない。

 

 仕方がない。だって黒板に書いてある問題はそれなり難しい問題なのだから、自信を持って答えるのは少し難しい。

 

「誰も居ないか。なら篠原……すまんがこの問題答えてくれるか」

 

 少しして誰も答えないのが分かると、先生は申し訳なさそうに私を指名する。

 

「はい、答えは……」

 

 私は考え事をしていた為、ちゃんと問題を見ていなかったから、立ち上がると同時に問題を確認する。確認が終わると、すぐに答えを導きだして答える。

 

「流石は篠原だ。正解だ」

 

 先生にそう言われて私は座る。特に正解したからって嬉しいとは思わなかった。私にとってそれは当たり前のことだったから。

 

「やっぱり、篠原さんすごいね」

 

「そりゃそうだよ。学年首席だよ。当たり前だよ」

 

「と言うか、何であんなのがここに居るの。もっと上の学校に行けるでしょ。例えばUTXとか」

 

「私が聞いた話だと推薦貰っていたけど、男とヤって取り消されたとか」

 

「え? 私が聞いた話だとどっかの不良とケンカして取り消されたって聞いたよ」

 

「止めなよ。篠原さんはそんなことするわけ無いじゃない。篠原さんいい人だもん」

 

「そうだよ。篠原さんこの前、スクールアイドルをやっている子達一緒に廃校を阻止しようと頑張ってるみたいだから」

 

「さあ、どうだろうね。どうせ点数稼ぎじゃないの」

 

 なんてクラスメイトの話し声が聞こえる。

 

 その話し声について私は別に気にしていないからどうでもいい。可愛い女の子にそんなことを言われれば傷つく。でも可愛くっても性格が腐っている奴に言われても何とも思わない。

 

 だって、それは何時もの事だから。

 

 私はクラスで浮いている。

 

 それは自覚しているつもり。基本的に目立つような事しかしていないから当たり前。

 

 私の噂は勝手に独り歩きをして知らぬ間に新しい噂が増えて、この音ノ木坂に広まっていく。

 

 それを聞いてどう受けとるかはその人次第だから、いちいち噂を取り消すのも手間が掛かる。それに中には真実も含まれているから、下手に取り消すと真実が明るみになってしまうから私は放置している。

 

 最も穂乃果ちゃんみたいに噂自体を知らない子もいるみたいだけど。

 

 こんな私だから正直教師陣も私の事をどう扱っていけば良いのか分からず何とも言えない対応しかしない。

 

 結局──何が言いたいのかと言うと私はクラスで一人。友達も居ない。

 

 そのせいで見た目が委員長みたいってことだけで、クラス委員を押し付けられてやっている訳。まあやるからにはちゃんとやるのが筋だし、一応委員長としての責務は果たしている。

 

 話は逸れたけど、今は穂乃果ちゃんたちとどう接すれば良いのか考えなければならない。

 

 ぶっちゃけ、そっちの方が最重要だ。

 

 そんな風に授業はノートを取るだけ取って、穂乃果ちゃんたちにどう謝れば良いのかを考えていると、時間は過ぎ授業は終わってしまった。

 

 はぁ、結局いいアイデアは思い付かなかった。

 

 3

 

「はぁ~、本当どう謝れば良いの」

 

 授業が終わった休み時間──私は屋上の隅でひっそり座って俯きながら、一人でまた考え込んでいた。

 

 クラスは色々と居づらいし、もしかしたら穂乃果ちゃんたちが来るかもしれないから、一先ず退避兼外の空気を吸いたくってここに来た。

 

 でも、ここも間違いな気がする。だってここ彼女たちの練習場所だし来る可能性が高いと思う。

 

 なにやってるんだ──私。

 

 キャラのスイッチを入れているときの私は全然問題なく行動できるのに……。ただの私に戻ると、こういうときはどうしたらいいのか本当に分からなくなる。

 

 頭の中で悪いことばかり考えてしまってまともに思考が出来ない。あと可愛い女の子と話してるときも余計な雑念が入ってくる。

 

 仕方がないよ。だって可愛い女の子と話すと自然と目が身体の方を見ようとするし、それでスタイルが良いと何かこうムラムラする。

 

 そういう観点で行くと絢瀬生徒会長はホント駄目。あのスタイルは私のドストライクだから。何時──欲望に身を任せて行動するか分からないから常に自制心を持たないと私の社会的地位が終わる。

 

 だから生徒会のお手伝いをするのは疲れる。仕事が、じゃなくって精神面で。

 

 あとは可愛い仕草や弄りやすそうな女の子を見ると、ちょっかい掛けたくなるし、頭を撫で回したくなる。

 

 そんな訳で私は可愛い女の子と話すと邪念が私の思考が邪魔をするので上手く話せない。

 

 ちなみに私が可愛い女の子が好きなのに理由はありません。

 

 強いて、理由を挙げるなら──

 

 私の魂が百合を求めているから。

 

 男性? はて、何ですかそれ? 男の娘なら知ってますけど、そんなものは知らないですね。

 

 話を戻してそんな私が穂乃果ちゃんたちに謝るためにどうすればいいのか考えると──

 

「委員長ちゃん。な~にやってるんや」

 

 私の事を呼んでいる声がした。

 

 委員長ちゃん何て私の事をそう呼ぶ人はこの学校で一人しか居ない。私は顔を上げて声がした方を見るとそこには希お姉ちゃんがいた。

 

「隣──座っていい?」

 

「うん」

 

 私に隣に座っていいかを確認してから座る。

 

「どうしたの? 穂乃果ちゃんたちに用があるんだったらここには居ないよ」

 

「違うよ」

 

 どうやら穂乃果ちゃんに用があったと思ったけど、違うみたい。なら、お姉ちゃんは何しにここに来たんだろう。

 

 私は考えるが思い当たる理由が特に思い付かない。だってここには何もないし、穂乃果ちゃんたちが練習に使っているくらいかお昼を食べに来るしかここ使い道ない。

 

「ふふ、何でウチがここに来たか分からない顔しているなぁ」

 

 私が分からないからってお姉ちゃんすごい楽しそうな顔している。だって分からないものは分からないもん。

 

「ウチは委員長ちゃんに会いに来たんや」

 

 私に会いに来た? どうして? ますます理由が分からない。お姉ちゃんに会えるのはすごく嬉しいけど、今はそんな気分じゃない。

 

「委員長ちゃんが落ち込んでいるってカードが告げたから励まそうかなって思って」

 

 ああ、そういうこと。なら私がいくら考えても思い付かないわけだ。それなら納得だ。

 

 私は物事や状況を論理的に考えて行動するタイプだから、お姉ちゃんみたいに運やスピリチュアルなものを使って行動する人の考え方は予測できない。

 

 どちらかと言えば苦手なタイプの人間だ。

 

 そもそも本心がばれたのもお姉ちゃんの運やタイミングが良かったのが原因。本当ならそんなミスは起こさない……はず。

 

 本来ならにこ先輩にしか明かさないつもりだったのに。

 

 まさかあれだけで本心に辿り着かれてしまうなんて予想しなかった。

 

 正直に告白すれば私は恐かった。寂しいとか誰かに甘えたいとか子供みたいだから、バカにされるんじゃあないかと。だけどお姉ちゃんは私の事を受け入れてくれた。

 

 妹みたいに甘えていいと言ってくれた。

 

 久しぶりだった。

 

 流石にお姉ちゃんになってあげるなんて言う人はいないけど、私にそんなことを言ってくれた人は彼女くらいしかいなかったから。

 

 篠原沙紀なら大丈夫だって、無責任なこと言う人ばかりで誰も関わろうとしない。それか私を見て不気味だと思われて、気付いたら人が離れていくかのどちらか。

 

 けどお姉ちゃんはそんな私に手を伸ばしてくれた。私にとってそれだけで嬉しかった。

 

 今はまだ話せてないこともあるけど、私がお姉ちゃんを信じようって思ってお姉ちゃんの言ったようにお姉ちゃんに目一杯甘えている。

 

 もちろんお姉ちゃんが困っている時はいくらでもお手伝いする。だって私の大切なお姉ちゃんだもん。

 

「委員長ちゃん。ここで横になっていいよ」

 

 お姉ちゃんは自分の膝をポンポンと叩き私に膝枕をしてくれるようだ。

 

 えっ? 膝枕? 

 

 お姉ちゃんの膝枕だって!! 

 

 そ、そ、そ、そんな幸せな事をしてくるの。嘘? 本当に? 

 

 落ち着け。落ち着くんだ!! 私。今はそんな邪念に飲まれている場合じゃない。穂乃果ちゃんたちにどう謝るか考えなきゃいけないだ。

 

 その至高の提案にここは踏みとどまらないと。まあ、踏みとどまれないだけどね。

 

「失礼します!!」

 

 自分でもビックリするくらい私の行動は早く、そのまま頭をお姉ちゃんの膝に乗せて膝枕をしてもらう。

 

 やっぱり何時ものように後先考えず、欲求に飲まれてしまった。

 

「ふふ、ホント、委員長ちゃんは甘えん坊さんやな」

 

「だって……お姉ちゃんが膝枕して良いって言うから」

 

 あぁ、お姉ちゃんの良い匂いがする。それに柔らかい。更にこの二つを堪能する事ができてお姉ちゃんに頭を撫でてもらえる何て幸せだよ。

 

 もう、明日死んでもいいや。

 

「こんなんで委員長ちゃんが元気になるならいくらでも良いよ」

 

「ほ、ほ、ほ、ホント!! そんな幸せな事を幾らでもされたら本当に幸せ死するよ」

 

 今でもだいぶ幸せなのに何時でもやってくれるなんて桃源郷は本当にあったんだ。

 

「さてと、委員長ちゃんが元気になったところで何を悩んでいたの」

 

 お姉ちゃんは私を元気付けてから悩みでいる事を聞こうとしてくる。

 

 少し話すのを躊躇ったけど、お姉ちゃんにこんなことをされたんだからもうこのまま相談しようと私は全て話した。

 

 私が話している際、お姉ちゃんは真剣に私の悩みを聞いてくれてた。

 

「そっか、委員長ちゃんがあんなことを言ったのはそんな理由やったんやね」

 

 お姉ちゃんは私の話を聞いて、あのとき私が何であんなことを言ったのか、納得したみたいだった。

 

 そういえばにこ先輩には話して、お姉ちゃんには話してなかったね。

 

「ねぇ、お姉ちゃん。私どうしたら良いと思う。謝りはするんだけど、どう謝れば良いか分からなくって」

 

「そうやね。そのまま何も考えず素直に謝ればいいんや。それだけで十分や」

 

 私の悩みに対してお姉ちゃんはシンプルな答えを返してきた。

 

「えっ、それだけでいいの?」

 

 あまりにもシンプルな答えだったから、私は思わず聞き返してしまう。

 

「そうや。そもそも委員長ちゃんは考えすぎやよ。謝るときは誠意持って謝るそれだけで十分伝わるよ」

 

「でも、もしそれでも穂乃果ちゃんたちに嫌われたら。そんなことになったならこれからやることにも支障が出るし、それに……」

 

 またあの時のようにせっかく出来た友達を失いたくない。

 

「はぁ、謝る前からケンカする何て考えたら駄目や。謝ってどうなるかは委員長ちゃんや穂乃果ちゃんたち次第や」

 

「それにそもそも委員長ちゃんはにこっち為にやってきたんやん。だけど、穂乃果ちゃんたちと一緒に居ることで穂乃果ちゃんたちの事好きになってたんでしょ」

 

 そうだ。私はにこ先輩の為に穂乃果ちゃんたちに近付いたけど、穂乃果ちゃんたちと一緒に居ると楽しくって嬉しくって堪らなかった。

 

 最初は不安だった。

 

 そのときは委員長モードだったから顔には出てないけど私が自分の名前を名乗るとき、距離を取られるじゃないかと内心──不安でしかなかった。

 

 案の上──海未ちゃんとことりちゃんは私の名を聞いて距離を取ったのは感じたけど、穂乃果ちゃんは違った。

 

(篠原沙紀ちゃんね。じゃあ沙紀ちゃんだね。よろしくねっ)

 

 そう笑顔で言ってくれた。友達として手を伸ばして、受け入れてくれた。

 

 穂乃果ちゃんの笑顔を見て私は思った。何て太陽みたいに眩しくっていい笑顔をする子なんだろうって。

 

 それに続くようにことりちゃん、海未ちゃんはちょっと時間掛かったけどすぐに友達になれた。

 

 心に巣食った不安や悲しみが晴れていく感じがした。そうか、穂乃果ちゃんは私が持っていない才能を持っているだってそのとき確信した。

 

 だから私は穂乃果ちゃんたちのお手伝いがしたいし、仲良くなりたい友達になりたいって心の底から思った。

 

 絢瀬生徒会長に穂乃果ちゃんたちがダメ出しされたとき思わず口に出して穂乃果ちゃんたちを庇ったり、ライブで穂乃果ちゃんたちを信じてあんなことをやった。

 

 穂乃果ちゃんたちがこれから頑張れるように、もっと先に進めるように。

 

「ケンカしたっていいやん。それで仲直りすればもっと仲良くなれる。だってそれが友達やん」

 

 その言葉で私が考えすぎなんて言われて理由が分かった。友達なんだからケンカだって当然するし、気不味くなるときだってある。

 

 そんなときは単純だ。仲直りすればいい。たったそれだけだったんだ。

 

 ホント、バカだ。私は……。

 

「分かったよ、お姉ちゃん。自分の気持ちを思いきりぶつけて謝ってみるよ」

 

 私は迷いを振り払って立ち上り自分が出来る最善の方法を口にする。

 

「もう大丈夫やね」

 

「ありがとうお姉ちゃん。お陰で元気が出たよ」

 

「気にしなくって良いよ。だってウチはお姉ちゃんやもん」

 

 お礼を言うとお姉ちゃんはまるでお母さんみたいに優しく微笑んでそう言ってくれた。

 

 4

 

「ごめんなさい」

 

 昼休み──穂乃果ちゃんたちとお弁当を食べる前に私は謝った。

 

「えっ? なんのこと? 分かる? 海未ちゃん」

 

「この前、穂乃果の家でお団子食べ過ぎたことでしょうか」

 

「多分、あれかな。衣装合わせのとき急に鼻血出して倒れたことじゃない」

 

 穂乃果ちゃんたちは私が何を謝っているのか分かっていない様子で戸惑っていた。

 

 それはそうだ。だってこれは私が勝手にやって、勝手に悩んで謝っているだけの自己満足みたいなものだったから。

 

 私は何で謝ったのかを説明した。自分の失敗談を当事者に話すのはとても変な話だけど。

 

 一先ず、一通り全部話し終えて穂乃果ちゃんたちは口を開いた。

 

「えっ? そうだったの? てっきり穂乃果たち人気が無かったから失敗したんだと思ったけど」

 

「はぁ、まさか完全にタイミングの問題でしたか。それもそうですよね。生徒の大半が部活に所属してますから」

 

「そうだね。やっぱり部活として活動しないと今度も同じことになっちゃいそうだよね」

 

 各々が私の思っていたのとは違う三者三様の反応をしてこの前のライブの反省を口にした。

 

「えっ? えっ? 怒らないの?」

 

 てっきり私はもうちょっと、何でそんなことしたの、酷いよ、くらいは言われる覚悟はあったんだけど。全くそんな反応が三人にはない。だから、つい私は聞いてしまった。

 

「どうして? 沙紀ちゃんはことりたちの為を思ってやってくれたんでしょ」

 

「そうですよ。そもそも穂乃果が考えなしに部活でもないのにあの日にライブをやろうって言ったのが原因なのですから沙紀は深く考える必要はありませんよ」

 

「ヒドイよ、海未ちゃん。確かにライブを取り敢えずやらなきゃ、って考えてたから全然考えてなかったけどみんなも良いって言ってくれたじゃん」

 

「それは借るだけ借るとこうって話だったのに穂乃果が勝手にライブの告知をするからです」

 

 あれ? 何か知らない間に私じゃなくって穂乃果ちゃんが怒られているだけど。どうなってるの。

 

「穂乃果ちゃんも海未ちゃんもケンカは止めようよ。沙紀ちゃんキョトンしているよ」

 

 話に置いていかれてる私を気遣ったのかことりちゃんは二人の仲裁に入る。

 

 何かことりちゃんを見ているとことりちゃん、マジ天使って思ってしまう。ああ、駄目だ。また邪念に飲まれている。

 

「あっ、沙紀ちゃんごめんね」

 

「ううん。良いけど、私がもうちょっと頑張って手伝えばライブは成功したかもしれないだよ。それなのに怒らないの」

 

 例えば、私がにこ先輩を説得すれば部活として活動出来たから新入生歓迎会ときにライブだってみんなの前で披露出来たはずなのに。

 

「確かにライブは成功しなかったけど、あのライブをやって本気でスクールアイドルやりたいって思ったし、講堂を満員にしたいって目標が出来たから沙紀ちゃんには感謝しているんだよ」

 

「それに沙紀は色々とライブの前に裏で頑張ってくれましたのは私たちは知っています」

 

「他にもいっぱいお仕事してみんなのお手伝いしていたからね」

 

 みんなは私を責めず逆に私はちゃんと手伝ってくれたのに感謝してくれた。すごく嬉しいけど──

 

「えっ、でもそれじゃあ私どうしたら良いの」

 

 それだけじゃあ、私の気が収まらない。

 

「じゃあ、沙紀ちゃんが気がすまないって言うだったら今日帰りに何か奢ってもらおうよ」

 

「そうですね。それで沙紀の謝罪ってことにしましょう」

 

「じゃあ、何を奢ってもらう?」

 

「じゃあ、アイスでも奢ってもらうかな。いい沙紀ちゃん?」

 

 そんなこんなで私が穂乃果ちゃんたちにアイスを奢るって方向性で話が纏まって私にそれで良いか聞いてきた。

 

「良いけどそんなのでいいの?」

 

 別にアイスくらいならお金に余裕はあるから幾らでも問題ないけど本当にそんなでいいだろうと口にしたけど穂乃果ちゃんたちは──

 

『うん(はい)』

 

 そうハッキリと答えた。

 

 ああ、やっと分かったよ。これが友達なんだね。

 

 そうかなら私は友達に出来ること最大限にやろう。

 

 そう思っていると、私の頭のなかで九人の女神を集める次の計画を思い付いた。

 

「分かった。じゃあ帰り何処かでアイス買って帰ろうね。でもその前に私と一緒に放課後付いて来てほしい場所があるんだけどいい?」

 

「良いよ。沙紀ちゃん何か考えがあるんだよね」

 

「うん」

 

 もう同じ過ちはしない為に必要な事だから。だからまずは行くところがある。そこ行くことでやっと動きやすくなる。

 

 μ'sに九人の女神を揃えるため、μ'sを更なる高みに目指すため。

 

 にこ先輩の為。

 

 そうしてここから私たちのメンバーを揃えるための物語が始まった。

 




今回は遂に通算十八話目でこの物語の主人公篠原沙紀の語り手でした。

結構長かったですね。自分でもここまで時間が掛かるとは思いませんでした。

そして、目次にありますがそんな沙紀の簡単な設定を活動報告に公開中です。

そんなわけで沙紀も語り手解禁というわけでここから沙紀の語り手もあるわけですが残念次は別のキャラを予定しております。

そんなわけで次回も誰が語り手がやるのかお楽しみに。

何か感想等ありましたら気軽にどうぞ。

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