ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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お待たせしました。

ついに解答編スタートです。

それではお楽しみください。


六十六話 彼女は一体誰なのか?

 1

 

 翌日の放課後、彼女に指定された公園にやってくると、約束通りそこには古道さんが待っていた。

 

「どうやらみんな揃っているみたいだね」

 

「お待たせしてしまったみたいですいません」

 

「気にしなくてもいいよ、こうして会うのは、夏のイベントのとき以来かな?」

 

「そうですね、その節はお世話になりました」

 

 何て挨拶を絵里に任せておいて、周囲を確認すると、特に何かあるわけでもなかった。

 

 てっきり何かあってこの場所を指定したのかと思ったけど、本当にただの集合場所に選んだだけかもしれない。

 

「今回の件、色々と君たちを巻き込んですまないと思っている」

 

「いえ、気にしないでください、古道さんが悪いってわけではないんですから、それに沙紀を保護してくれましたし」

 

「いや、今回の件だけでなく、他の件でも家の妹がμ'sに迷惑かけたかもしれないので」

 

 深々と頭を下げる古道さん。別に私たちは気にしていないが、やっぱり思うところはあるんだと思う。それよりも……。

 

「あっ、やっぱり結理ちゃんって古道さんと家族だったんですね」

 

「と言っても僕の嫁の妹なんで、義理だけどね」

 

 穂乃果の質問に答える古道さん。なるほどユーリちゃんとは親戚の間柄ってことだったのね。というか古道さん結婚してたのね。

 

「それじゃあ、彼女が待っているからそろそろ行こうか、付いてきてくれるかい?」

 

「はい、分かりました、ただ……どこへ向かうんですか?」

 

「彼女たちの家さ」

 

 話の区切りが付いたところで古道さんは私たちを案内し、彼に付いていく。

 

「古道さん……一つ聞いても良いですか?」

 

「なんだいにこちゃん?」

 

 あいつの家に向かう途中で、私はあることを確認するため彼に尋ねた。

 

「古道さんは初めから知ってて付けたんですか」

 

「……そうだね」

 

 私の質問の意図を理解して、古道さんは間を空けてから答えた。

 

「ありがとうございます」

 

 お礼を言うと、私はそれ以上彼とは会話をすることはなかった。聞きたいことは聞けた。

 

「そういえばここって……有名な事故物件があるところやん」

 

「ちょっと……希……変なこと言わないでよ……」

 

 へぇ~そうなのね。というか何でそんなこと希が知っているのよ。

 

「さて、ここが彼女たちの家だ」

 

「ここが……?」

 

「沙紀の家?」

 

 古道さんに案内された場所を見て、みんな困惑する。だって案内されたのは人気のないアパートだった。

 

 とてもトップアイドルが住んでいるような家ではない。それどころかどことなく不気味な気配を感じる。

 

「というかさっき話してた事故物件やん」

 

 訂正、ガチで不気味な家だった。

 

「本当に沙紀ちゃんがここに住んでるの!?」

 

「……そうだよ」

 

 穂乃果の質問に苦々しい表情で答える古道さん。彼自身もあいつがここに住んでいることに対して、不満があるみたい。

 

「僕は次の準備があるからこの辺で、庭の方で彼女が君たちを待っているから」

 

 意味深なことを言いながら古道さんは去っていった。次の準備とは何のこと? まあけど、そんなことよりも庭に彼女がいるのね。

 

 そうして古道さんの言われた通りにアパートの敷地の中に入り、庭の方へ向かうとそこには──

 

「待っていたわ」

 

 彼女が四つん這いなったユーリちゃんを椅子にしながら座って待っていた。

 

 まだそのネタやってたの……。

 

 2

 

「わざわざ我が家に来てくれてみんなありがとう」

 

 淡々とお礼を言う彼女だけど、当然、彼女の話しなど耳に入るわけもなく、彼女の椅子になっている真顔のユーリちゃんの視線は奪われる。

 

「……」

 

「どうしたの、みんな黙りこくって」

 

「どうしたもこうしたもないわよ、あんたの椅子にしているその人って……」

 

「どうもイスです……」

 

「イスって言ってるじゃない」

 

「いや、あんたたちのプレイにどうこう言うつもりはないけど、ネタでやっているなら滑ってるわよ」

 

『……』

 

 私の指摘に二人は突然黙り始めて、何事も無かったように立ち上がる。

 

「ちょっとタイムいいかしら」

 

「どうぞ」

 

 よく分からない確認だけど、訳が分からないけど私は承諾する。

 

「ちょっとユリリのせいで滑ったじゃない、どうするつもり、今からシリアス始める雰囲気だったのに」

 

「はあ!? 私のせいにするんですか!? ふざけないでくださいよ!! 乗っかったあなたも同罪ですから!!」

 

「何か楽屋裏みたいな会話が始まったわね……」

 

 急に喧嘩を始める二人に絵里はそんなツッコミを入れる。

 

「そもそもユリリはバラエティアイドルなんだからもうちょっと受けるように笑いを取りなさいよ」

 

「私がバラエティアイドルだって!? 言ってはならないことを口にしましたね!!」

 

「実際にどうなん? にこっち、花陽ちゃん」

 

「え~と……」

 

「最近はそっちも多いわね」

 

 ファンを楽しませるために、色んなことに手を出してることもあって、一発芸披露的なノリでバラエティーに出てくるのが最近のユーリちゃん。

 

「ほらっ!! 多いだけですから本業はちゃんとアイドルしてますよ!!」

 

「多い時点でユリリはもうバラエティアイドルよ」

 

「止めて!! それだけは路線的に刺激的に早すぎるから、口にするのを止めてほしいです!! まだ王道路線で舞えますから!!」

 

「一体……何の話を聞かされてるのですか私たちは……」

 

「さ、さあ……」

 

 マジで困惑する海未とことり。私だってこんな話聞きたくないわよ。悲痛すぎる。

 

「というよりも……滑ってるよりか私的には小さいユーリちゃんの上に大きいあんたが乗っていることにドン引いたけど……」

 

 パッと見の絵面が幼児虐待的なものにしか見えなかったのよ。

 

「刺激的にあなたのせいじゃないですか!! デカ女!! 尻デカ!! デカパイ!!」

 

「はいはい、この件はわたしのせいで良いし、あとでアイス買ってあげるわよ」

 

「良いんですか!? やった~もちろん高いやつですよね」

 

「それで良いわよ」

 

「流石はパイがデカイだけはある!!」

 

「チョロ……」

 

 何か勝手に話を進めて、勝手に折り合いを付けて、楽屋話を終わらせた。というよりも彼女がめんどくさくなって止めた感がすごいわ。

 

「さて、待たせたわ」

 

「正直、もう帰りたかったわ」

 

「何よ、わたしたちのトークで場を温めたのに……ねぇ、ユリリ?」

 

「穂乃果さん、二日振りですね~」

 

「えっ、うん……そうだね、二日振りだね」

 

 同意を求めた彼女をガンスルーして穂乃果に絡みに行くユーリちゃん。

 

「簡単に足並みを揃えさせてくれないわね……」

 

「そうね……」

 

 何て声を掛ければいいか分からないから同情しておく。そもそも何でユーリちゃんここにいるのよ。

 

「同情なんていらないわ、あと、ユリリ関しては何か勝手に来ただけ」

 

「勝手に来ただけって失礼じゃないですか!! ねぇ~花陽ちゃん」

 

「えっ!? その……え~と……」

 

 私の思考が(何か知らないけど)読まれたせいで花陽を困らせる流れになってしまったわ。

 

「明らかに自分の味方してくれる人に話を振るのは止めなさい、花陽が困っているわよ」

 

「ハ~イ、ごめんね、花陽ちゃん、あっ、いつもの応援ありがとうね」

 

 彼女に注意されると花陽に手を振って彼女の隣に戻るユーリちゃん。今のはユーリちゃんなりファンサービスだったのかしら。

 

「気を取り直して……一応確認だけど、わたしの元へ来たってことは答えの検討が付いていると思っていいかしらにこに~」

 

 下らないお喋りが終わったところで、彼女は私の方を真っ直ぐ見つめる。

 

 明確に流れが変わったことを理解できた私は、心を落ち着けるため深呼吸して雑念を取り払う。他のメンバーも空気が変わったのを察して、静かに私の方を見て見守る。

 

 色々と思うところはあるけど、今は深く考えない。私が答えないことには全てが何も知らないまま終わる。だから、真っ直ぐ彼女を見て──

 

「もちろんよ」

 

 ハッキリと答えた。まずは先に進むために今は迷いを片隅に置いて。

 

「そう……なら、答えを聞かせてもらうわ」

 

 何時もと変わらない冷淡で冷めた口調だが、どことなく真面目な雰囲気を感じる。

 

 彼女の態度を感じた私はゆっくりと口に始める。

 

「あんたの正体は……篠原沙紀本人ね」

 

 そう、私は静かに答えた。

 

 3

 

「あんたの正体は……篠原沙紀本人ね」

 

 私がクイズの答えを口にすると、後ろで聞いていた他のメンバーがざわめき始めた。ただ一人真姫ちゃんを除いて。

 

「にこちゃん!! どうゆうこと!? この人が沙紀ちゃんって!?」

 

「言った通りよ、穂乃果……目の前にいるあいつは沙紀……元中学生トップアイドル──星野如月よ」

 

 穂乃果が言いたいことは分かるし、混乱するのも分かる。他のみんなも穂乃果と同じ反応をしている。

 

「みんな、にこに~の答えに混乱しているみたいね」

 

「分かっているわよ、だから、これからそう結論した根拠を言うわよ、というかあんたがそういう流れにしたじゃない」

 

「そうね、わたしの提案だけど、それはさておき、聞かせてくれるかしら、何故その結論に至ったのか」

 

「でもその前にややこしいことになっているからある程度段階を踏ませて欲しいんだけど」

 

「もちろん、良いわ、一気に納得してなんて不可能だから」

 

 私の提案を了承してくれたことにホッとする。この話は意図的にややこしくされていたから、全部言った上でみんなを納得させろなんて、私一人じゃあ難しい。

 

 こうして彼女から了承を得たので、私は話し始める。

 

「まず前提として、μ's再結成の時点で私が彼女の正体が当てれるようになっていたのよ」

 

 彼女自身、私が答えれると思ってクイズを出していた節があるのは、口振りからも分かっている。

 

「その時点で私はあいつの両親は亡くなっていることや姉妹や親戚、血の繋がった人が居ないことを知っていたわ」

 

「単純にあいつがウソを言っている可能性もあったけど、昨日の理事長の話を聞いて、この話がウソではないって確証を得てる」

 

「となれば、考えられる可能性は一つ、目の前にいる彼女は沙紀自身ってことになるわ」

 

 消去法で考えれば必然的にそうなる。推理もへったくれもない。むしろ当てさせるための質問。

 

「確かに言われてみればそうとしか言えないわね」

 

「むしろ、変に難しく考え過ぎてたのかもしれませんね」

 

 私の話を聞いてみんなは納得してくれたような反応をしてくれる。正直、ここはすんなり納得してくれるだろうって確信はできてたけど。

 

「さあ、みんな納得したわよ、あんたが答えてくれないと先に進めないわ」

 

「そうね、良いわ……まずは正解よ、にこに~の言う通り、わたしが篠原沙紀よ」

 

 私が答えるように急かすと、すんなりと彼女は答えてくれた。

 

「なんだ~、本当に沙紀ちゃんだったんだ~そうならそうって言えば良いのに~」

 

「安心するのはまだ早いわよ、穂乃果、言ったでしょ段階を踏むって」

 

「段階を踏むってどうゆうことや、にこっち? この子委員長ちゃんなんやろ?」

 

 安心しきってる穂乃果に私は釘を刺すと、話を聞いていた希が疑問の顔を浮かべる。

 

「逆に聞くけど、何で希は目の前のこいつが沙紀って簡単に受け入れられたの?」

 

「何でって……この子が委員長ちゃんやったら、単純に別人を演じてたってことやろ?」

 

 希はそれがごく当たり前のことのように言う。他のみんなもそれが当たり前みたいな空気を出している。

 

「そうね、あいつは演技するのは上手いわ、別人を演じるなんて余裕よ、みんなもそれはよく知っているわよね」

 

 私の問い掛けにみんなは頷いてくれた。散々今まであいつの行動を見ていたからこそってのはあるけど。

 

 さて、問題はここからよ……。ぶっちゃけ私一人で全員を納得させろなんて無茶よ。そう思いながら私は真姫ちゃんの方をチラッと見ると、真姫ちゃんは呆れたように溜め息を付いた。

 

「はぁ~しょうがないわね……必要に応じて助言や補足しても良いわよね?」

 

「それくらいなら良いわよ」

 

 真姫ちゃんのサポートを認められたところでほぼ肩に寄り掛かる気持ちで話を進める。

 

「けど、思い出してみて、この質問の発端は私が知っているあいつとは別人だっていうのに気付いたことが原因よ」

 

「そういえば、昨日にこが沙紀とこの人は別人って言ってたわね、好みとか考え方とか色々と沙紀とは全く違うって」

 

「けど、そういう演技をしてただけじゃないかにゃ~?」

 

 私の話を聞いて、絵里は昨日話した内容を思い出す。そして凛は予想していた通りのことを言ってくれた。

 

「そうね、そういう演技をしていたのかもしれないわね、けど、別人を演じるだけなら別のキャラでもいいのに、何でわざわざ星野如月のときに演じてたキャラをやったのかしら?」

 

「確かに……あのとき……何で如月ちゃんの時みたいな……喋り方や格好しているんだろうって……思っていた、あんまり正体がバレるの嫌がってたのに……」

 

 私が投げた問い掛けに花陽が答えてくれると、何人かはハッとした表情をした。

 

 そう。花陽の言う通り、あいつは自分が星野如月だってバレるのを嫌がっていた。なのにどうして、あのとき、星野如月と同じキャラを演じていたのか。そんなことをすれば、自分が星野如月だってバレるリスクが高くなるのに。

 

「それに演技するにしたって自分の好みだって変える必要あるかしら、それも飲むと気持ち悪くなるようなブラックコーヒーを数日も飲もうだなんて」

 

「う~ん……ちょっと……無理かな……」

 

 ことりが苦笑いしながら答える。普通はそうだ。苦手なものを大好物みたいに飲み食いするにしても一日が限界。下手したら一日も持たない。それを目の前のこいつは普通にやった。まるで元々好物だったかのように。

 

「それにもう一つ理解不明なところで演技していたところがあったのよ」

 

「理事長が昔のあんたたち親子の話をしたときに、あいつに対して『表情作るのが苦手なのか、ちょっと見た目よりも冷めた感じの子』 って言っていたわ」

 

「その話を聞いて、今の沙紀ちゃんとは全然雰囲気違うよね、明るいし、表情も分かりやすいから」

 

「そう、あいつとは性格は全然違うけど、今のこいつの特徴とはガッチリと合うわよね」

 

 そう目の前の彼女に視線を向ける。目の前の彼女は表情がほぼ変化せず、冷めた表情を常にしている。口調も冷めた感じがある。

 

 あいつよりも目の前の彼女の方が理事長の話していた人物像がピッタリ合う。

 

「でも……やっぱり沙紀ちゃんが演技してただけじゃないの?」

 

「理事長があいつに会ったのは小学生のとき、星野如月が活動し始めたのは中学生のとき、理事長に会ったときに演技する必要性が全くないのよ」

 

 アイドルをやっているならまだしも、ただの小学生がキャラを演じる理由なんて、あったとしても遊びくらい。

 

「まあ、散々あいつが演技が上手いってのは、みんな知っているけど、そもそも何であいつは別人の演技をよくやったりするのかしら?」

 

「それも昨日話しましたね、人と距離を取り、自身を曖昧にしていると……」

 

「そうね、至るところで別人を演じ、自分のキャラを曖昧にすることで、例えば、中身が入れ替わっていても、ただあいつが別人を演じていると思わせられるように」

 

「中身が入れ替わるってどういうこと?」

 

 私の例え話に穂乃果が食いついてくる。

 

「簡単な話よ、あいつが演技をしていた理由はある事実を隠すため、それは……篠原沙紀が二重人格であることを隠すためよ」

 

「二重人格ってマンガとかドラマとかであるあの?」

 

「そうね、現実にそういった事例がいくつもあるわ、沙紀の場合は一つの身体に二つの心があるってこと」

 

「普段とは違う人格が突発的に一定期間現れて、元の人格に戻る、分かりやすく言えば、急にキャラが変わって急に元のキャラに戻るって感じね」

 

 凛の疑問に真姫ちゃんが補足をしてくれる。マジで助かるわ。

 

「確かに沙紀ちゃんはキャラ変わったりするけど、ただ単純に演技しているだけじゃないの?」

 

「そう思わせることこそがあいつの狙いだったのよ、自分が演技が上手いってことを周囲に思わせておくことで、人格が入れ替わっても違和感を持たれないようする」

 

 木を隠すなら森の中と言うように、別人格を隠すなら、演技したキャラの中一つにすると言った手。

 

「言われてみると、理屈は通っているように思えるけど……納得できるかと言えば……難しいわね」

 

 絵里の言う通り、この件に関しては状況証拠的なものしかない。本人が口にするか、物的証拠があれば納得させられるけど。

 

「はぁ~そうなるとは思ってたわ、念のため、準備してて正解だったわ、篠原沙紀は二重人格で間違いないわ、だって彼女、昔パパの病院でそう診断されていたわ」

 

「はあ!?」

 

 思わぬ援護に思わず大声を上げてしまったわ。それガチもの証拠じゃない。

 

「昨日言ったでしょ、パパから小路雪音がどんな人か聞いたことあるって」

 

 そういえばそんなこと言ってたわね。さらっと口にしていたから忘れてたわよ。理事長も何か金持ちの知り合いがいたとか言ってたけど、もしかして。

 

「正確にはママの友達だったらしいけど、そんなことはいいわ、昔、パパの病院で篠原沙紀は診察を受けて、二重人格だと判明した、これは事実よ」

 

 あっやっぱりそうなのね。というか医者の診断結果と言うめちゃくちゃ強い証拠を突き付けられて、みんな納得せざる追えなくなったわ。

 

「……そうね、にこに~や真姫の言う通り、わたしたちには二つの人格があるわ」

 

 明らかに向こうも予想してなかった感じが出しながら答えてる。さすがにこのパターンは予想できないわ。

 

「……」

 

 しかし、改めて向こうが肯定したことでみんなあいつが二重人格だったことに困惑するしかない。まあ、すぐに受け入れるなんて無理だわ。私だってまだ受け入れてないもの。

 

 けど、まだ終わりじゃない。

 

「あんたがあいつの別人格だって分かった以上、聞くけど、あんたが星野如月として活動していたのは間違いない?」

 

「そうね、ここは素直に答えるわ、その通りよ、星野如月としてメインで活動していたのはわたしよ」

 

「メインってことはたまに入れ替わってたってことね」

 

「そうね、けど基本はわたしが歌って踊って、あの子がわたしの歌やダンスの微調整をしてくれてたわ」

 

「そう……」

 

「にこっち……今の確認なに?」

 

 私の反応に心配そうな声を掛ける希。心配してくれるのは嬉しいけど、もうそんなこと気にしてられない。

 

「じゃあ……やっぱり……あいつは……星野如月──篠原沙紀じゃ……なかったのね……」

 

 自分がやらかした罪を実感しなければいけないのだから。

 

「にこそれってどういうこと!? 沙紀が沙紀じゃないって!?」

 

 私の発言に説明を求める絵里だけど、正直、もう既に頭の中は罪の意識でいっぱいで何も答えられない。

 

「やっぱりそうなるわよね……」

 

 何処か冷めたように口にする彼女……いや、沙紀。けど、それは突き放したような口振りではなく、どことなく後ろめたさを感じる。

 

「にこちゃんの代わりに私が説明すると、篠原沙紀が二重人格だと分かった上で、古道真拓、古道結理、そして綺羅ツバサの会話を思い出してみると、ある共通点があるわ」

 

 喋れなくなった私の代わりに真姫ちゃんが話してくれる。

 

「みんなそれぞれ私たちの知っている沙紀に対して、誰も彼女のことを沙紀とは呼んでないのよ」

 

『……』

 

 みんな真姫ちゃんの言われた通り、三人の会話を思い出して、少しずつ青ざめた表情をし始める。

 

「じゃあ、私たちの知っている沙紀が沙紀じゃないなら、篠原沙紀とは一体誰なのか……それは自分がメインで星野如月として活動していると言った目の前の彼女よ」

 

「元々星野如月という名前は名付け親である古道真拓さんが篠原沙紀という名前を並び替えて更に一を足したもの」

 

「つまり、篠原沙紀は星野如月である以上、逆も当然、星野如月は篠原沙紀であること」

 

「結論、主人格は今、目の前にいる彼女──沙紀であり、私たちが知っていた沙紀と名乗っていた人格は本来の篠原沙紀の別人格ってことよ」

 

『……』

 

 真姫ちゃんの結論にみんな黙るしかなかった。それもそうよ。そんなこと言われても信じられるはずないわ。けど──

 

「そうよ、私が篠原沙紀よ」

 

 彼女はそう断言するのだった

 




如何だったでしょうか。

これこそが彼女が隠していたのも。

何故、彼女が隠していたのか。何故、打ち明けられなかったのか。そもそも何故星野如月は活動休止したのか。

それら一つ一つ明かされていき、それを知ったにこはどうするのかそれをお楽しみに。

次回は何故星野如月は活動休止したのか、この真実が明かされる予定です。

気軽に感想や評価など頂けるとモチベにも繋がって嬉しいです。

誤字、脱字ありましたらご報告していただけると有り難いです。

それでは次回をお楽しみに。できれば次回も年内に投稿できたら良いなと思っています。

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