ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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お待たせしました。

今回は今までとは趣向を変えてますので、それではお楽しみください。


五十話 それぞれのその後

 1

 

「ことり、これはここでいいですか?」

 

「うん、ありがとう海未ちゃん」

 

 講堂でのライブから数日後──私はことりの家に来て、荷ほどきのお手伝いをしていました。

 

 留学の準備で荷造りをして、部屋の中がすっきりとしていたですが、その留学事態をことりが辞めたので、荷物を元に戻さないといけなくなりました。

 

「ごめんね、手伝わせちゃって」

 

「いえ、この量をことり一人では大変だと思うので」

 

 ことりは申し訳なさそうな顔をしていますが、私としては手伝いたいという気持ちが強いので、あまり気にしていません。

 

 それに友達の部屋の模様替えと考えれば、大変だと思いません。

 

「本当は穂乃果も来てくれれば、もう少し早く終わるのですが……」

 

「しょうがないよ、穂乃果ちゃん、今日はお店の手伝いがあるって言ってたから」

 

「まあ……穂乃果が手伝ったとしても、荷物の中なら何か見つける旅に反応して、片付けるのが遅れそうですが……」

 

「ははは……」

 

 私もことりもそんな穂乃果の姿が容易に想像ができてしまいました。

 

 そんなことを話ながらも二人で荷物を片付けていきました。

 

 そのあとは特に問題もなく、(途中何度かことりが懐かしいものを見つけて時間は掛かりましたが)作業は捗って、荷物は殆んど片付け終わりました。

 

「あとはこれだけだね、残りはことりがやっちゃうから海未ちゃんはゆっくりしてて」

 

 そう言ってことりが荷物を運ぼうとすると、荷物の中から何かがことりの足元に落ちました。

 

「ことり、何か落ちましたよ」

 

 私は落ちたものを拾うと、それはむすっとした女生徒と笑顔見せている女生徒が写っていて、その後ろには学校の校門らしきものが写った写真でした。

 

「ありがとう、海未ちゃん……どうしたの?」

 

「いえ、この写真が少し気になって……」

 

「う~ん? 海未ちゃん、見せて……」

 

 私はことりに写真を渡して、ことりはじっくりと見始めました。

 

「あっ!! これ、お母さんの写真だよ」

 

「ことりのお母さんの写真ですか」

 

 写真を思い出すと、確かに笑顔で写っている生徒はことりのお母さんに似ていますね。ことりにも似ていますが、親子なのですから似てるのは当然ですね。

 

「でもどうしてここに?」

 

「もしかして、荷物を入れるときに混じちゃったのかな、あとでお母さんに返そう」

 

「そうですね」

 

 偶々ことりの荷物に紛れ込んだだけなので、そこまで気にする必要はないのですが、ただこの写真にはとても気になることがあります。

 

「ねぇ、お母さんの隣に写っている人って……誰かな?」

 

「何となくですけど、沙紀に似ている気がしますね」

 

 ことりのお母さんの隣にむすっとした表情で写っている方は、何処となく髪を解いている沙紀に似ています。

 

「じゃあ、この人って、もしかして沙紀ちゃんのお母さん?」

 

「分かりません、ただよくは似ていますけど……」

 

 よくは似ていますが、確証はありませんから何とも言えません。もしかしたらただのそっくりな見た目の方かもしれませんから。

 

「あら、随分部屋が綺麗に片付いたみたいね」

 

 私たちが写真を見ていると、突然、ことりのお母さんが様子を見に来たのか、ことりの部屋にやって来ました。

 

「あっ、お母さん」

 

「お邪魔しています」

 

「お母さん、これって……」

 

「あらあら、どうしてこれが」

 

 ことりがことりのお母さんに写真を見せると、ことりのお母さんはとても懐かしそうな顔をしていました。

 

「私の荷物に混じってて……それよりもこのお母さんと一緒に写っている人って……」

 

「驚くのも無理はないわね、この人は私の高校の時の友達で、沙紀ちゃんのお母さんなのよ」

 

 ことりのお母さんは何処か懐かしそうな声でそう告げました。

 

 

 2

 

「はぁ~、すっごい暇!!」

 

 穂乃果は一人で店番しているんだけど、お客さん全然来ないから退屈でつまらない。

 

「こんなに暇なら、海未ちゃんと一緒にことりちゃんのお手伝いしたほうが絶対に良かったよ」

 

 本当なら海未ちゃんと一緒にことりちゃんの家に行って、荷物の片付けをやって、色んなものを見つけるつもりだったのに……。

 

 でもちゃんと店番しないと、お小遣い減らされるし……。

 

「はぁ~、誰か来ないかな」

 

 何て考えていたら、がらがらってお店の扉が開く音が聞こえて、やっとお客さんが来たみたい。

 

「いらっしゃいませ……って」

 

「あれ~!? 穂乃果さんじゃないですか」

 

 やって来たお客さんを見ると、この前に何度か会ったことのある結理ちゃんが驚いた顔をしていたんだ。

 

「穂乃果さんに会えるなんて刺激的にラッキーです、でも、どうしたんですか? もしかしてここでバイトしてるんですか!!」

 

「ここ私の家だよ……って前も一緒に来たじゃん!!」

 

「あれ? そうでしたっけ……そういえばそんな気がしますね」

 

 久しぶりに結理ちゃんに会うけど、この子何時もテンションが高いね。

 

「それで今日はどうしたの?」

 

「実はこの前穂乃果さんから貰ったほむまんが刺激的に美味しくて、買いに来たんですよ」

 

「ホントに!?」

 

 そういえば、この前結理ちゃんが会ったときにあげたらすごく喜んで食べてたっけ。

 

「実はあれから何度か買いに来てるんですよね」

 

 やった。お客さんを増やして、売り上げも上がってるから、お小遣いアップの交渉に使えるよ。結理ちゃんの話を聞いて、そんなことを考えながら、穂乃果は心の中でガッツポーズをする。

 

「え~と……ほむまん三箱ください」

 

「結構買うね、全部一人で食べるの?」

 

 穂乃果は結理ちゃんから注文を聞くと、ほむまんを詰めながら、ちょっと気になったから聞いてみる。

 

「そうじゃないんですよ、食べようと思えば食べられますけど、このあと、人と会うので、お土産に」

 

「そうなんだ」

 

 友達かな。でも結理ちゃんの友達だから中学生だと思うけど、お土産に貰うならお饅頭よりもケーキのほうが良さそうな気がするけど。

 

 穂乃果だったらそっちのほうが絶対嬉しい。

 

「そういえば、この前の学園祭のライブ観に行きましたよ」

 

「来てくれたんだ、でもごめんね、途中で中止になっちゃって」

 

「確かに途中で中止なったのは、寂しいですけど、一番最初の曲刺激的に良かったです」

 

 せっかく来てくれたライブを自分のせいで、中止になっちゃって悔しい気持ちでいっぱいだったけど、結理ちゃんにそう言ってもらえると、すごく嬉しい気持ちになったよ。

 

「学園祭であのクオリティーでしたから、もし、ラブライブに出てたら、優勝間違いなしですよ」

 

「それは褒めすぎだよ」

 

「褒めすぎじゃないですよ、この前の新しくネットに公開されたライブを見て、あれなら絶対優勝できるって思いましたから!!」

 

「そう言われると照れちゃうなぁ~」

 

「やっぱ、ヒューズのライブは刺激的ですよ」

 

「そんなに熱く語ってくれるのに、やっぱりグループ名は間違えるんだね」

 

 流れるようにグループ名を間違う結理ちゃんにツッコミを入れるけど、ここまでくるともうわざとなんじゃないのかなって思ってきちゃう。

 

「はい、お待たせ」

 

「ありがとうございます」

 

 ほむまんが入った袋を結理ちゃんに渡して、穂乃果は結理ちゃんからお代を受け取る。

 

「それじゃあ穂乃果さんのお仕事を邪魔しちゃいけませんので、私はこれで失礼しますね」

 

「うん、またね」

 

「また近いうち会えると思いますので、そのときは私の知り合いも紹介しますね、きっと刺激的なことになりますよ」

 

 そう言って結理ちゃんはお店を出ていっちゃった。

 

 何となく結理ちゃんの言ったみたいに、また結理ちゃんに会えるそんな気がしちゃう。でもその前に言えるのは──

 

「はぁ~、また暇になっちゃったよ」

 

 

 3

 

「暇やな~」

 

「人を家に呼んでおいて……暇って言わないでよ」

 

 ウチは家でだらけた声でそんな口にしてたら、遊びに来てたエリチに怒られた。

 

「でもエリチ、ここ最近、μ'sの活動やら学園祭やら生徒会の活動で忙しかったせいで、それが急になくなると暇って感じるやん」

 

 ここ最近で一気に大きな仕事や問題が片付いて、重荷がなくなったってのもあるんやけど。それにμ'sの活動も今日はないわけやし。

 

「まあ……確かにそうね……暇ね」

 

 エリチも何となくウチが言いたいことが伝わったみたいで、少しぼうっとした顔する。

 

「あとは次の生徒会を決めるくらいやし、エリチは誰か生徒会長を推薦するの」

 

 そう。そろそろ生徒会も代替わりで、次の生徒会のメンバーを決めないといけない時期や。

 

「そうね……穂乃果か沙紀のどっちか」

 

「まあ、妥当なチョイスやね」

 

 一人はμ'sのリーダーにして、廃校阻止の立役者やし、もう片方はクラス委員や学園祭実行委員長として活躍したわけやから。

 

 どっちも校内じゃあかなりの有名人やから、生徒会長としても申し分ないからなあ。

 

「でも二人を推薦してもいいのかなって思うのよね」

 

「そう? なんだかんだ推薦されたら、二人ともやると思うんやけど」

 

 穂乃果ちゃんは最初は驚くと思うけど、最後はやるって言いそうやし、委員長ちゃんに至っては、推薦されたからには期待に答えられるようにするとか言いそうやから。

 

「そうね、多分、二人なら言いそうね……ただ二人ともこの前の件を見ていると……」

 

 エリチが何を気にしているのかウチは大体分かった。

 

 穂乃果ちゃんはちょっと熱くなるときがあるし、委員長ちゃんは責任感が強すぎるところがあるから。

 

「まあ、確かにエリチが言いたいことは分かるんよ、穂乃果ちゃんは周りをサポートしてくれる人が入れば、さらに力を発揮する子やし、委員長ちゃんは残念な部分に目を逸らせば、元はスペックが高い子やから」

 

「そうなのよね……」

 

 エリチも二人の良いところを知ってるからかなり悩んでいるみたいや。

 

「まあ、まだ時間はあるわけやし、そのときになったら決まるやん」

 

「希……全くあなたは気楽ね……」

 

「それがウチの長所や」

 

 何て冗談を言ってみると、エリチが思い出したかのようにこんなことを口にしたん。

 

「そういえば沙紀で思い出したけど、ちょっと前までの沙紀って変じゃなかった?」

 

「変? 委員長ちゃんが変なのは何時ものことやん」

 

「それは否定できないけど……そうじゃなくて言葉にし辛いけど、何か変って感じたのよ」

 

「あぁ~、何となくエリチが言いたいことが分かったんよ」

 

 エリチが変って言っているのは、廃校阻止のパーティーから講堂でのライブの委員長ちゃんが、変だったってことや。

 

「ウチも何か違和感があるって感じたんやけど、それだけで確証はないんよね」

 

「そうよ、あのときはあんまり沙紀と一緒に居なかったら、もしかして、気のせいって感じていたんだけど」

 

「あのときは委員長ちゃんずっとにこっちと一緒やったし、家にも泊まりに来なかったから」

 

 あのときは完全に別行動やったから、ちゃんと見れたわけじゃないからウチもエリチも違和感を感じるんやけど、確証が持てない感じ。

 

 もしかしたら、ずっと一緒だったにこっちなら、何か知っているんかもしれないんやけど。

 

「まあ、にこっちがウチたちに何も言ってこなかったんやから、何も無かったんだと思うんよ」

 

「そうね、にこも沙紀に何かあったら私たちに教えてくれるはずよね」

 

 ウチが言ったことにエリチは納得したみたいやった。

 

「ただ……やっぱり沙紀には気になることがあるのよね」

 

「それって……委員長ちゃんの親友のこと?」

 

 委員長ちゃんの親友──中学生のころ仲良かったけど、喧嘩別れをした人。委員長ちゃんが言うには、ウチらと同じように、今はスクールアイドルとして、活動しているらしい。

 

「私……あの子に親友に会わせてあげるって、約束したのに守れなかったわ」

 

 そういえば、エリチは委員長ちゃんと夏の合宿のときに約束をしてたんやったな。

 

 委員長ちゃんは喧嘩別れをした親友と仲直りをしたんやけど、勇気が出ないから、エリチが仲直りするのを手伝ってあげるって約束らしい。

 

「仕方ないやん、あんなことになったわけやし、それに手掛かりがない訳じゃないやん」

 

「そうなんだけど……」

 

「委員長ちゃんは確かその親友は確実にラブライブに出場するって言ってたんやろ」

 

 エリチから聞いた話では夏の合宿の時点で委員長ちゃんが確信してたって聞いた。

 

 元プロのアイドルだった委員長ちゃんがそう言わせるくらいの実力を持っているなると、数多くあるスクールアイドルの中でも限られるやん。

 

「ランキング上位10以内のスクールアイドルの中にいるんと思うよ、あの辺はランキングが変動が少なかったんやし」

 

「沙紀が自信を持ってそう言ったから、その線は高いと思うのよ、それでもやっぱり確証がないとね」

 

「せめて委員長ちゃんの親友が何処の学校か分かれば良いんやけどね」

 

 学校さえ分かれば、スクールアイドルをソロでやっていれば、一発で分かるわけやし、グループでやっている場合でも大体五人以下に絞れるわけやけど……。

 

「そこは沙紀、頑なに教えてくれないのよ」

 

 委員長ちゃん、仲直りしたいって言っているくせに、聞いても何でか教えてくれないんよ。

 

「何でやろうね、もしかして案外、この近くの学校やから教えたくないとか」

 

「それ言ったら、ランキング上位で当てはまる学校一つしかないじゃない」

 

「まあ、確かにそうやね」

 

 今のところは予想でしかないんやから、幾らとでも言えるだけや。

 

「まあ、この件もそのうち解決するやない」

 

「どうしてそう思うの?」

 

「ウチの勘や」

 

「全く……希は……」

 

 ウチが堂々とそう言うと、エリチは何処か呆れるように呟いた。

 

「でもウチの勘は当たるやろ」

 

「フフフ……そうね……」

 

 そんなことを話ながら、ウチたちはこれからの運命を進むやったとさ。

 

 

 4

 

「だからあのときの沙紀のことを教えなさいっていってるのよ!!」

 

『だからあのときの沙紀ちゃんはところてん中毒者だったんだよ』

 

「はあ!? 何それ、意味わかんない!!」

 

『まあまあ……落ち着いて……二人とも』

 

 ある日のこと、私は通話アプリを使って、花陽と凛から沙紀について聞いていたのだけど……。

 

「ところてん中毒者って何よ、どんな中毒よ!!」

 

 全くこれと言ってまともな情報が手に入らない。

 

『そんなにあのときの沙紀ちゃんのこと知りたかったんだったら、にこちゃんがスクールアイドルを一緒にやろうと言ったときに、一緒にやれば良かったんだよ』

 

「うぅ……」

 

『凛知ってるんだよ、どうせ真姫ちゃんは素直にやるって言えなかったんでしょ』

 

「そ、そ、そんなわけないでしょ!! 私は私でやることがあったのよ」

 

『じゃあ、凛たちが練習している間に何してたの』

 

「とりあえず沙紀の友達がいる学校に行ってきたわ」

 

 そう。凛と花陽がにこちゃんと一緒に練習している間、私は沙紀の友達がいると思われる学校に行ってきたわ。

 

『それで……どうだったの……』

 

「お手上げね……何も分からなかったわ」

 

『ほら、真姫ちゃんも何も分かってないにゃ~』

 

「うるさい、大体学校の制服だけ分かっても、他に何も分からないんじゃあ、探しようないじゃない」

 

 沙紀の友達については、その学校に通っているかもしれないってだけで、それ以外は分からない。

 

 他にも出身校とか、部活とか、情報があるなら探しそうはあるんだけど、それも含めて全く情報が集まらない。

 

 言うなら完全に手詰まり状態。

 

 だからこそ、突然、星野如月のキャラを演じ始めた沙紀から情報が得られないか花陽と凛に聞いていたのだけど、今のところは何もないわ。

 

「花陽は何かは気づかなかった?」

 

『ううん……わたしも凛ちゃんと同じで、あのときの沙紀ちゃんはところてんが大好きなくらいしか……ただ……』

 

「ただ? 何か気になることがあるの」

 

『本当に何となくなんだけど……もしかしたら気のせいかもしれないけど……あのときの沙紀ちゃん……今までで如月ちゃんって感じが一番したの……』

 

『ん? 全然意味わかんないにゃ~』

 

「花陽、あのときの沙紀が星野如月に一番近いってどう意味」

 

『どうって言われても……言葉しにくいだけど……ライブで見てた如月ちゃんが目の前にいるって思っちゃっただけなんだけど……』

 

『それは沙紀ちゃんは如月ちゃんなんだから当然だよ』

 

 凛の言う通り、篠原沙紀=星野如月であることは、さまざまな証拠や本人から証言で確認済み。

 

 だけど、花陽の言うことは気になるわね……。この中で星野如月のことを一番知っている花陽がそう感じた。これに何か意味があるのかしら。

 

 そういえば、合宿のときにも沙紀が突然、星野如月のキャラになっていたけど……。

 

『ごめん、真姫ちゃん、そろそろ晩御飯の時間だから切るね』

 

『わたしも……』

 

「分かったわ……それじゃあ、また明日」

 

 今日はお開きと言うことで、通話を終わらせると、私はベットで横になる。

 

 星野如月。

 

 ユーリ。

 

 星野如月とユーリの友達。

 

 そして、古道さんの話から出てきた人物。

 

 この四人が二年前の星野如月の休業について、確実に知っていると思われる人物。

 

 確実に当事者である星野如月──沙紀からは直接聞くことは出来ない。聞いたところではぐらかされるのがオチよ。

 

 そもそも彼女はこの件に関して徹底的に隠している。それは今の状況を見れば分かることよ。

 

 次にユーリだけど、ある意味一番私たちに縁がなかった存在だけど、沙紀のプロデューサーの古道真拓さんから紹介してもらえば、会えなくもない。

 

 ただ、その古道さんに彼女と会うのは、遠慮したほうがいいと言われた。

 

 何故、古道さんがそんなことを言ったのか分からない。もしかしたら、私たちに会わせたら何か不味いことがあるのかもしれない。

 

 そんなこともあり、色々と疑問は残るけど、現状は会うことが不可能。

 

 次に沙紀の友達はさっきも凛と花陽と話した通り、学校以外は分からない。他に何か分かれば、もう少し絞って探すことができるんだけど。

 

 そして、最も謎の人物。

 

 古道さんの話から突然、現れて沙紀自身が古道さんを口止めしてたから詳細が全く分からない人物。

 

 私の勘だけど、その人物こそが最も真実に近いところにいるのかもしれない。そうじゃなきゃわざわざ沙紀が口止めするはずないわ。

 

 ただ言えることは沙紀以外のその三人の誰かに近づくことができれば、真実に近づくことができるはずよ。

 

 だけど、その三人に全く近づけないのが、現状ね。

 

「はぁ~、誰か何か知ってないかしら」

 

 案外にこちゃん以外のμ'sの誰かが情報を持っていたりしてないかしら。

 

「そんな……都合のいいことないわね」

 

 そんなことを口にしながら、私も夕食の時間だから、部屋を出ていった。

 

 

 5

 

 刺激的に気分がいい。鼻歌を歌いながらスキップしてもいいくらい。

 

 こんなに気分がいいのは、刺激的に久しぶり。

 

 美味しい饅頭を買ったから? 

 

 久しぶりに穂乃果さんに会ったから? 

 

 あの人たちに会いに行くから? 

 

 そうじゃない。私が気分がいいのは、思わぬ探し物が見つかったから。

 

「フフフ……」

 

 探し物が見つかった以上、本当なら今すぐにでもあれが奪ったものを取り返したいところだけど、今はじっと我慢我慢。

 

 今、強行したら、二年前のあいつと同じ失敗をする。それじゃあ全て水の泡。

 

 確実に失敗しないためにも、あれを逃がさないためにも、しっかり準備しないと。

 

「さてと、それじゃあ、最後の仕上げの準備しますか」

 

 そう言って私は何事もなかったように彼女たちがいる部室に入る。

 

 部室に入ると、練習は休憩中みたいで、三人とも相変わらず刺激的に高そうな椅子に座ってゆっくりしていた。

 

「お疲れ様です、お土産を持ってきましたよ」

 

「珍しいな、君がこの時間に来るなんて」

 

「そうね、珍しいわ、今日は仕事サボってきたのかしら?」

 

 私が入ってきたことに気づいたのか、挨拶して早々酷いことを言われる。

 

「ハハハ、もしそんなことしたら、私、全身複雑骨折の刑ですよ」

 

「まあ……そうだな……」

 

「じゃあ、サボりじゃないのね」

 

 若干、一人引き気味だったけど気にせず、私は椅子に座って持ってきたお饅頭を机に広げる。

 

「それであいつは一人寂しそうな引きこもりみたいにパソコンなんて見て、本当は興味ないですけど、何見てるんですか」

 

 一人だけ、私に全く興味無さそうにしているあいつを指を差して、二人に──私も刺激的に興味はないけど、一応聞いてみる。

 

「相変わらず、彼女には毒舌だな」

 

「それは何時ものことじゃない、今は最近、気になるスクールアイドルのグループがいるから、そのライブを見てたのよ」

 

「へぇ~、スクールアイドルですか」

 

 この三人が気になるスクールアイドルねぇ……。

 

「因みにグループ名は?」

 

 私は買ってきたお饅頭を食べながら、気になったから聞いてみる。

 

「μ's」

 

「ゴホッ!! ゴホッ!!」

 

 私はそのグループ名を聞いた瞬間、思わず、驚いて食べていたお饅頭を喉に詰まらせてしまう。

 

「おい、大丈夫か」

 

「ほらっ、お水」

 

 私がお饅頭を喉に詰まらせて、二人は慌てて水を渡し、私はそれを受け取って一気に飲み干す。

 

「ハァハァ……フフフ……ハハハ」

 

「何、死にかけて頭がおかしくなったか」

 

「頭がおかしいのは何時ものことじゃないの」

 

 突然、笑い出す私を見て、酷いことを言っているみたいだけど、私は気にしない。

 

 まさか、既に彼女たちがμ'sに興味を持っているなんて……私は何て刺激的に幸運なの? いや、それともあいつが刺激的に不幸なのだけ? どちらにしてもこれを利用ない手はない。

 

「実は今日私が来たのは……これをあなたたちに伝えるためです」

 

 私は鞄からある書類を取り出して、三人の机の前を置く。

 

「これは……」

 

「はい、是非とも前回優勝者であるあなたたちには、二回目にも参加してもらいたくて……公式発表の前に伝えろと社長が」

 

「前回とはだいぶ変わっているな」

 

「まあ、その面白いじゃない、このルールならμ'sとすぐ競えるじゃない」

 

 彼女たちは渡された書類の内容を見て、興味を持ってくれたみたい。

 

「詳しい内容の説明と参加するかどうかは、後日、真拓が来ますので、そのときに」

 

 まあ、この反応ならほぼ参加決定みたいだけど。

 

 これで準備はほぼ終わりだけど、あとはあれをどのタイミングで確保するか。

 

 あんまり時間を与えると、やっかいだから早目がいいんだけど……。

 

 でも刺激的に私に風が向いてきてる。何たってこっちにはあいつもいるのだから。

 

 これでやっと私の愛しの如月が戻ってくる。

 

 それを考えるだけでも激刺激的に興奮してくる。

 

 私と如月の為にもあなたたち、そしてμ'sを利用させてもらわないと。

 

 ああ……何て激刺激的。

 




如何だったでしょうか。

今回はそれぞれの視点から書かせて貰いました。

この話を以て物語は次の章に入っていきます。

それぞれの思惑や願いが重なったとき何が起こるのか、何が始まるのかお楽しみに。

そんなわけで次章予告

様々な苦難を乗り越えたμ's。
そんなμ'sと沙紀にある知らせが届く。
新たな祭典の始まり。
合宿再び。
にこの過去。
そして運命の出会い。
夢の扉が開いたとき、それは始まりの終わりか、はたまた終わりの始まりか。
そのときは近い。

第五章
『SecondStage』

そんなわけで何か感想がありましたら、気軽にどうぞ。

誤字、脱字がありましたらご報告して頂けると有り難いです。

それでは次章もお楽しみに。

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