ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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何とか一週間以内に投稿できました。

それではお楽しみください。


四十四話 変化は突然に

 1

 

 学校の存続のお祝いがお開きになって、私は一人部室でぼうっとしていた。

 

 みんなで部室の片付けを分担してあっという間に終わり、あとは沙紀がゴミを捨てに戻ってくるのを待つだけ。

 

 沙紀以外の二年生組と一年生組はもう先に帰って、絵里と希は多分まだ校内にいると思う。

 

 私は沙紀が戻ってきたら一緒に帰るつもりだから、部室で沙紀を待ってることにした。

 

「それにしてもあいつ何時も通りだったわね……」

 

 お祝いのときの沙紀を思い出しながら独り言を口にする。

 

 あの日──学園祭が終わった放課後の雨の屋上で見た沙紀を見て、私は心配だった。

 

 学園祭のライブが失敗に終わったこと。

 

 ラブライブ出場辞退になってしまったこと。

 

 その二つのことが重なって、あいつなりにかなり責任を感じていた。

 

 それからあいつとは今日までまともに会うことがなくて、久々にあいつの顔や何時ものウザイテンションで私は安心した。

 

 あいつなりに気持ちの整理がちゃんと着いていたんだって、確認することができたから。

 

 ラブライブは終わったけど、また一から沙紀とμ'sのみんなで頑張ればいいわ。なんてそう思っていたら……。

 

 ことりは留学するわ。それで穂乃果とことりがケンカするわ、で大変なことになりそうな予感がする。

 

「これからμ'sはどうなるのかしら……」

 

 ここ最近色々と有りすぎて、この先のことが不安になってくる。

 

「それにしてもあいつ遅いわね」

 

 私は携帯で時間を確認すると、沙紀がゴミを捨てに行ってから30分くらい経ってる。

 

 部室からゴミ捨て場までそこまで遠くないからすぐに戻ってこれるし、遅くても10分くらいで戻れる。

 

「やっぱり一緒に行けば良かったかしら」

 

 ゴミの量はそこまで多くはなかったから、あいつ一人で持っていくってさっさと持っていっちゃったし。

 

 もしかしたら部室に戻る途中で誰かの頼み事を引き受けたのかもしれない。でもそれだったら私に連絡をくれるはずだし……。

 

「私が心配したと勘違いしてあいつが喜びそうだけど、まあ、仕方ないから探してあげようじゃない」

 

 なんて誰に対しての言い訳か分かんないけど、私は沙紀を探しに部室を出ると──

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!」

 

 そんな叫び声が廊下から聞こえてきた。

 

 その叫び声を聞いた瞬間、私は考えるよりも先に走り出していた。

 

 私は走りながらさっきの叫び声が誰の声か考えていたけど、そんなの考えなくても分かってた。

 

 今の声は……沙紀の声だけど、一体どうしたの。

 

 明らかに何かに怯えるような声だったけど、何があったの。

 

 走りながらそんなことを考えていたけど、考えても何も分からないから声が聞こえた方へ走ってると、目の前に人が倒れてるのが見えた。

 

「沙紀!!」

 

 私は倒れてるのが沙紀だと分り、急いで沙紀の所まで駆け寄って沙紀の様子を見ると、息が荒くて汗が異常なくらい出ていた。

 

「どうしたのよ、沙紀!! しっかりしなさいよ!!」

 

「……」

 

 私は必死に呼び掛けるけど、沙紀からの反応はなくて、私は少しずつ焦ってきた。

 

 どうして倒れてるのか。さっきの叫び声は何だったのか。怪我とかしていないのか。心配することが多くて何をどうしたら良いのか分からなかった。

 

「どうしたの!?」

 

「大変や、委員長ちゃんが倒れてるやん」

 

 私が一人で焦ってると、絵里と希が急いでこっちに駆け付けてきた。

 

「にこ、沙紀に何があったの!?」

 

「分かんないわよ!! 私が駆け付けたときには沙紀が倒れてて……」

 

「状況を確認するのは後や、今は一先ず委員長ちゃんを急いで保健室まで運ぶのが先決や」

 

「そうね、希の言う通りね、絵里、沙紀を運ぶの手伝って」

 

「分かったわ」

 

 そうして私たちは気を失ってる沙紀を心配をしながら沙紀を保健室まで運び始めた。

 

 2

 

 私たちは急いで沙紀を保健室まで運んで、保健の先生に沙紀の様子を診てもらった。

 

 けど保健の先生でも沙紀がどうなってるのか分からなかったから、一先ず両親に連絡を入れてくると言って、保健室から出ていった。

 

 私たちは何かあったらすぐに先生に知らせられるように代わりに沙紀の様子を見ていた。

 

「ねぇ……」

 

「どうしたんエリチ?」

 

「先生はさっき両親に連絡するって言ってたけど……」

 

 絵里が何かとても言いにくそうにしていると、希は何か察したような顔をして、私は絵里が何が言いたいのか分かった。

 

「あいつに連絡できる両親がいないから一体誰に電話するつもりなのってことでしょ」

 

「にこ……」

 

「にこっちやっぱり知ってたんやな」

 

「ええ……あんたたちの反応を見ると、そっちも知ってるみたいね、意外……いや……あんたたちがやたらこいつの事を気にかけるのは訳が分かったわ」

 

「あいつ……話したのね……」

 

 あいつが自分のことを他人に話すのは、必要だと思ったときと、ぽろっと口に溢したときくらいだから、とても珍しい。

 

「直接聞いたのは希だけよ、私は希から聞いただけ」

 

「そう……」

 

 それでもあいつが人に話したっていう事実に変わりないし、どうして希に話したのか理由を追求するつもりはなかったわ。

 

 多分……沙紀が希の家に泊まりに行ったとき何かあったんだと思う。その翌日から沙紀は希のことをお姉ちゃんなんて呼んでる。そこで何かあったことだけは分かる。

 

「確かにあいつには……両親がいないわね……連絡をしてこいつを迎えに来てくれる人が……いるのかも怪しいくらい……」

 

 親代わりなってる人はいると思う。ただ沙紀が一人暮らししてる状況を考えると……。

 

「まあ、いざとなったら私の家に連れていくわ」

 

 ママに連絡すれば迎えに来てくれると思うし、家の家族は沙紀とも面識があるから大丈夫だと思う。

 

「そう? 別にウチが委員長ちゃんを連れて帰ってもええんやけど……」

 

「そうね、確かにこいつもあんたの家は結構泊まってるみたいだから安心できると思うからそれもありね」

 

 それはそれでありかもしれないわ。私の家に連れていったらウザイテンションになるか、私の家族に気を遣って落ち着けないかもしれないし。

 

「一先ずは先生が戻ってくるのを待って、どうするのかはそれにしましょう」

 

 確かに絵里の言う通りね。私たちがああだこうだ言っても沙紀の保護者みたいな人がもしかしたら来るかもしれないし。

 

「それにしてもどうしてこいつはあんなところで倒れてたよ……」

 

「そうやね……そっちの方が重要やね」

 

「にこが見たのは沙紀が倒れてるところだけなのよね」

 

 絵里は沙紀が倒れていた状況を私に確認する。一応私が先生に状況を説明したときに二人とも一緒に聞いている。

 

「そうね……私は沙紀が戻ってくるのが遅いから、探しに行こうとしたら廊下から叫び声が聞こえて……声が聞こえた方へまで行くと、そのときには沙紀が倒れていたわ」

 

「つまりにこにもどうして沙紀が倒れていたのか分からないのよね」

 

「そうね……そういえばあんたたちはどうしてあそこにいたの?」

 

 そういえば私が沙紀の所まで駆け付けてからすぐに二人も沙紀のもとにやって来たのが気になったから聞いてみる。

 

「ウチたちもたまたま廊下を歩いてたらにこっちと同じように委員長ちゃんの叫び声が聞けて駆け付けたんや」

 

「私と同じ理由ね」

 

 確かに学校であんな大きな叫び声が聞こえたら気になるわよね。

 

「やっぱり沙紀が目覚めないことには何も分からないってことよね」

 

「まあそうなるわね」

 

 沙紀に何があったのか気になるけど、今はあいつがちゃんと目を覚ましてくれるのを待ってるしかない。

 

 沙紀の方を見ると、今は呼吸も落ち着いて汗も大分引いてきてる。私たちが運んでる途中で急に呼吸も落ち着いて汗も引いていたけど。

 

「沙紀……」

 

 あいつのことを心配しながら、ベットの上で眠ってるあいつを見ていると、沙紀はゆっくりと目を覚まして起き上がり、辺りをキョロキョロを見渡してた。

 

「……」

 

「沙紀……あんた大丈夫なの……」

 

 辺りをキョロキョロと見渡してる沙紀に声を掛けると、沙紀と目が合った。その目を見ると何処かぼうっとしてるような感じ。

 

「ここは……」

 

「保健室よ、沙紀、あなた廊下で倒れていたの覚えてない?」

 

「そう……ごめんなさい、少し記憶が混乱してよく覚えてないわ」

 

「そうよね、気を失って倒れてたみたいだから混乱するのは無理もないわね」

 

「ウチ先生に委員長ちゃんが目覚めたって伝えてくるよ」

 

 沙紀がちゃんと目覚めたのが分かると、希は保健室を出ていって、先生を呼びに職員室に向かっていた。

 

「大丈夫なの? あんた……さっきからぼうっとしたみたいに喋って」

 

 さっきから沙紀の声を聞くとどうも生気が感じられなくて心配になる。

 

「ええ……大丈夫よ、それよりも二人がわたしを運んでくれたみたいね、ありがとう」

 

「いいわよ、お礼なんて……」

 

 一先ずこいつが無事に目覚めてくれただけですごく安心したわ。

 

「それで沙紀……あなたが気を失ってる間に……先生があなたの保護者に連絡したみたいだけど……」

 

 絵里が少し言いにくそうに沙紀にその事を伝える。しかも敢えて両親ではなく、保護者と言い直して。

 

「そう……大丈夫よ、気にしなくても」

 

 保護者を呼ぶことに対して沙紀は特に気にしてないような感じで、一応沙紀がそういうなら大丈夫なんだと思う。

 

「そろそろあれに会わないといけなかったし、丁度いいわ」

 

「何か言った?」

 

「何でもないわ気にしないで」

 

「?」

 

 沙紀がボソッと口にしたことに私と絵里は顔を合わせて疑問を浮かべた。

 

「一先ずわたしは大丈夫だから希が戻ってきたら帰っても大丈夫よ」

 

「そう……沙紀がそういうならそうするけど、大丈夫なの?」

 

「ええ、大丈夫よ、大分意識がはっきりしてきたから」

 

 まだ心配なことがたくさんあるけど、本人がそういうなら多分大丈夫だと思う。

 

「そう、分かったわ、けど何かあったらすぐに連絡しなさいよね」

 

「ええ、そうさせて貰うわ、ありがとう」

 

 そうして私と絵里は希が戻ってくるのを待って、希が戻ってくると私たちと同じように沙紀のことを心配してることを言ってたわ。

 

「今日は助かったわ、絵里、希……そしてにこ」

 

 私たちが保健室を出ていくときに私たちは沙紀にお礼を言われてから保健室を出ていった。

 

 だけど何処かお礼を言った沙紀の言葉に違和感を感じていた。

 

 3

 

 その翌日、沙紀は学校を休んだ。

 

 昨日倒れたから病院で検査をするため休んだって先生から聞いた。

 

 あいつのことも心配だけど、穂乃果たちも心配。昨日穂乃果とことりがケンカしてまだ仲直りができてないみたい。

 

 私も何か二人の為にできることがないか考えたけど、何も良い案が思い浮かばないで一日が過ぎていった。

 

 そしてさらに翌日──私は一人で登校してる。

 

 今日は沙紀は学校に来るのかしらなんて考えると──

 

 とても綺麗な黒髪の同じ制服を着た生徒が私の横を通り過ぎた。

 

 私は一瞬、その生徒の髪に目を奪われて、立ち止まってしまう。

 

 私の目の前を歩く生徒を見つめる。綺麗な黒髪も目を奪われるけど、彼女の後ろ姿だけでも彼女の一つ一つ動作が魅いられる。

 

 それは周りにいる生徒も同じで、彼女とすれ違った生徒や彼女を見た生徒は立ち止まり彼女に魅いられてた。

 

 あんな綺麗な黒髪の人うちの学校にいたっけと疑問に思うと同時に、あの立ち振舞い、あの動作一つ一つに魅いられるような感覚に私は覚えがあった。

 

「あの……」

 

 声を掛けようとしたけど、彼女の放つ雰囲気に飲まれて声が小さくなっていた。

 

「あの!!」

 

 私は彼女の雰囲気に飲まれないようにもう一度勇気を振り絞って、私の目の前を歩く生徒に声を掛けると、その生徒は私の声に気付いて振り返ると──

 

「あら、声が聞こえると思ったらあなただったのね」

 

 冷淡な声で、何処か興味なさそうな冷めたような瞳をしたその生徒は──

 

「おはようございます、にこ先輩」

 

 私のよく知っている後輩篠原沙紀だけど、彼女のアイデンティティーだった眼鏡や三つ編みのお下げでなく、かつて星野如月として活動してたスタイルだった。




如何だったでしょうか。

彼女のアイデンティティーだった三つ編み眼鏡をなぜ崩したのか、一体彼女に何があったのか次回をお楽しみに。

来週で丁度二周年なりますので次はその日投稿する予定です。

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