ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー 作:タトバリンクス
新年最初の投稿です。
それではお楽しみください。
1
学園祭が終わり私──矢澤にこは、教室の後片付けをしていたわ。
私の他にも何人か教室の後片付けをしながら、今日の学園祭の思い出を楽しそうに話してる。
あそこのクラスの出し物が面白かった。あれが美味しかった。なんて話し声がクラスの至るところから聞こえて、その話題で教室の中は楽しそうな雰囲気になっている。
そんな中、私は一人だけその楽しい雰囲気に溶け込めていなかった。
今の私の気持ちは、悔しさと後悔の気持ちでいっぱいだったわ。
何が原因でそうなってるのかは分かってる。それは今日のライブが原因。
穂乃果がライブ中に倒れたあと、絵里がお客さんたちにライブを中止にすると宣言したわ。そのとき私は続けるつもりでいたけど、希に止められてしまったわ。
それからライブは中止になって、私たちは急いで穂乃果を保健室に運んだわ。
運び終えたあと、私たちは服が雨で濡れたから部室で着替えてる途中で、放送で沙紀と絵里が理事長に呼び出されて、二人は着替え終わると、理事長室に向かったわ。
どうして理事長に呼び出されたのか、残ったメンバーは予想が付いていて、部室の中は重い空気に包まれ、誰も喋ろうとはしなかったわ。
そうして絵里が理事長室から戻ってきて、それから何故か少し経ってから沙紀が遅れて戻ってくると、絵里が理事長に言われたことをみんなに説明したわ。
絵里の話を簡単に纏めるなら問題を起こしてしまったから、そのけじめとして、ラブライブ出場をしなさいってことだったわ。
理事長の言うことは最もだけど、私は納得はできなかったけど、問題を起こした以上、素直にラブライブ出場を辞退するしかない。
話が纏まると、すぐにラブライブ出場の辞退の手続きを行い、スクールアイドルのランキングからμ'sの名前が消えたわ。
思い出すだけでも悔しさと後悔の気持ちがさらに強くなるわ。
今日のライブが失敗に終わったこと。
穂乃果がライブ中に突然倒れたこと。
穂乃果の体調に気づけなかったこと。
そしてラブライブ出場を辞退してしまったこと。
この原因は完全に部員全員の不注意があったから。いや、もっと言うのなら、部長である私がもっと周りを見ていれば、穂乃果の体調の変化に気づけてこんなことにならなかったわ。
けど、そんなことを言ったってもう遅い、だってもう全部終わってしまったのだから。
私はこの気持ちを抱えながらぶつけるように、ただひたすらに教室の後片付けの作業を続けた。
気が付くと、いつの間にか教室の後片付けは終わっていたわ。まるで何事もなかったように何時も通りの教室に見ると、少し寂しくなる。
それを見ると、虚しさと寂しさが一気に沸いてきて、本当に学園祭が終わってしまったこと実感してしまう。
本当に全部終わっちゃったのね……。
そうして私たちのラブライブは、この日をもって本当に終わってしまったわ。
2
教室の後片付けが終わった私はすぐに教室から出て、部室に向かっていたわ。
本当は今日はすぐにでも帰りたかったけど、鞄が部室に置きっぱなしだったから取りにいかなくちゃいけないわ。
だけど部室に行くのは、他のメンバーと鉢合わせする可能性があるから、抵抗がある。出来れば今日はμ'sのメンバーとは会いたくない。
会っても何を話せば良いのか分からないし、私自身今日の出来事に、気持ちの整理が出来ていないから。
そういうことなので、誰かと会う前にさっさと部室に向かって鞄を取りにいかないと。
だけど、大抵そんなことを考えてるときに限って会ってしまうのが、世の中の常なのよね。
部室に向かうための階段が見えた辺りで、とても見覚えのあるお下げの三つ網み女子の姿が、階段を上がってくるところが見えてしまったわ。
「完全に沙紀よね……」
もう一年くらい付き合いになる後輩の姿を見間違うはずはないわ。
「それにしても今日一番会いたくないやつを見つけたわ」
数週間前にあいつの前で部長として、キッチリとみんなのことを気にするからなんて言っちゃったくせに、あんなことが起こっちゃったから会っても気不味い。
どうやら沙紀は私のことに気づかないまま階段を上がっていっちゃったし、今のは見なかったことにして、さっさと階段を下りて部室に向かうわ。
「……」
そういえば理事長室から戻ってきてから顔が下を向いてずっと黙ったままだったわよね……。
それに階段を上がっていったけど、この階の上って屋上しかないわ。それにステージだって、とっくに片付いてるのに、屋上に用なんてあったっけ。
「はぁ~、しょうがないわね~」
会いたくはないけど、気になってちゃったから行くしかないわね。
私は部室に向かわないで、沙紀を追いかけて階段を上り屋上に向かうことにしたわ。
階段を上り屋上への扉まで来るけど、沙紀の姿はなかったわ。
「あれ? おかしいわね、私の見間違い?」
いや、そんなはずないわね。ここにいないとなると、あとは屋上になるけど……。
私は階段の窓から外を見るけど、今でも傘が必要なくらい雨は降り続けていて、さっき見た沙紀は傘を持っていなかったように見える。
もしかしたら折り畳み傘か合羽を持ってたかもしれないけど……わざわざ雨に降ってるなか屋上に用事なんてあるのかしら。
あっ、でも学園祭実行委員として仕事があるかもしれないわよね。それなら納得はできるわね。
とりあえず色々と考えてみるけど、屋上の扉を開けて確認すれば分かることだから、私は扉を開けて屋上の様子を確認したわ。
相変わらず雨は止む様子はないけど、雨に濡れないようにそこから見える範囲で沙紀を探してみると、それらしき人影が立っているのが見えたわ。
「あれ……やっぱりあいつよね……」
それからその人影の少し様子を見てみるけど、傘を差しているようには見えなくて、一歩も動こうとはしなかったわ。
何だか見ていると心配になってきたから、私は雨に濡れるのに構わず、その人影のところまで駆け寄って近付くと、やっぱり人影の正体は沙紀だったわ。
だけど、遠くから見た通り傘は差していなかった。それどころか合羽すらも着ていなかったわ。
「あんたここでなにやってるのよ!!」
「あれ? にこ先輩……どうしたんですか? 雨が降ってるのに傘を差さないなんて、風邪引きますよ」
そんな沙紀の姿を見て、私は心配になって声を掛けると、私に今気づいたみたいだけど……。
「それはこっちのセリフよ!! 何であんた傘も合羽も無しでこんなところにいるのよ!!」
「あっ……すっかり忘れてました……ははは……おっちょこちょいですね私……」
そういう沙紀の声には何時もの馬鹿みたいな元気はなかったわ。
「何してるのよ、早く中に入りなさいよ、あんたのほうこそ風邪引くわよ!!」
「あぁ……そうですね……風邪引きますよね」
今の沙紀を見ていると、とても心配になってくるから私は腕を引っ張って階段の方へ連れていこうとすると──。
「ここで穂乃果ちゃんが倒れたんですよね……」
「えっ?」
沙紀のその言葉で私はその場で固まってしまったわ。沙紀が立っているところを見てみると、そこは今日の簡易ステージがあった場所。
「穂乃果ちゃんを運んだあと、私、雪穂ちゃんから聞いたんですけど、ここ最近ずっと家に帰ってたから穂乃果ちゃん一人で自主練してたらしいんです……」
「そうなのね……」
それは知らなかったわ。私に昨日までの穂乃果の様子なら確かにみんなに黙ってやってもおかしくないわね。
「でも私みんなに家に帰ったらゆっくり休んで言ったはずなんですけど、穂乃果ちゃんのことだから多分体力有り余ってるかもしれないから、私に相談すると思ったんですけど……」
その言い方だと、やっぱり沙紀はそこは予想済みだったわけだったみたいだけど……。
「私に相談せず、勝手に自主練するなんて穂乃果ちゃんは、私のこと信用してないんですかね? 私の言うことは信じて貰えないんですかね」
「そんなわけないでしょ、穂乃果のことだから勝手に突っ走っただけよ」
突然、沙紀がおかしなことを口にしたから私は否定する。何か話をしてる沙紀の様子がどんどんおかしくなっていくのが、沙紀の声、表情を見て、感じ始めてきた。
「そうですよね、そんなわけないですよね、これは私が早く穂乃果ちゃんのことを気付いていれば良かった話ですよね」
沙紀は穂乃果が悪いのではなく、自分が悪いなんて言い始めたけど、それは違うわって、口にしようとしたけど、変わっていく沙紀の雰囲気に飲まれてしまって、言葉に出来なかったわ。
「穂乃果ちゃんが来たときにあの子に気をとらわれずに部室に来て、みんなの体調を確認が出来れば、最悪今日のライブが中止になるだけで済んだんですよね」
「それだったら……ラブライブ出場……辞退になんて……」
そういう沙紀の顔は泣き出しそうな顔をしてる。違うわ……もうすでに沙紀は泣いているけど、この雨のせいで沙紀の頬に流れてるのが、涙なのか、雨なのか、分からないだけ。
「私が……もっとしっかりしていれば……学園祭実行委員会も……μ'sのマネージャーや……他全部を……完璧に出来てさえいれば……こんなことには……」
次第に沙紀は自分のことを責めるようなことを口にしていた。
「にこ先輩の……夢が……叶え……るチャンス……だったのに……ごめんなさい……ごめんなさい……」
そんなことを言ったあと、沙紀は誰に対してか分からないけど、多分私に対して……いやμ'sのみんなに謝り始めて、それから──。
「にこ先輩の役に立てなくてごめんなさい、役立たずの私でごめんなさい、完璧に出来なくてごめんなさい、穂乃果ちゃんのことに気づけなくてごめんなさい、ライブを中止になってしまってごめんなさい、ラブライブ出場できなくなってしまってごめんなさい、マネージャーとしての仕事が出来なくてごめんなさい、無能な私でごめんなさい……」
悔いるかように、次々と謝罪の言葉を呪文のように口にしていたわ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」
止まることなく謝り続ける沙紀に対して、私は何て声を掛ければいいのか分からなかった。
どうしてそこまで沙紀は自分を責めているのか理由が分からない。
何もかもが理解できていないせいで、私はその場で立ち尽くすことしか出来なかったわ。
3
沙紀が謝り続けて何をどうすればいいのか分からなかったけど、我に返って無理矢理屋上から部室まで連れてくることはできたわ。
連れてくるまでの間、沙紀は俯いたままで、私と目を合わせようとしなかったわ。
「どうしたの!? 二人ともびしょ濡れじゃない」
「ちょっと待ってな、今すぐタオルを用意するから」
部室に入ると、絵里と希が鞄を取りに来てたみたいで、私たちの姿を見ると、驚いた声を挙げてけど、すぐに二人は私たちにタオルを手渡してくれた。
「何でそんなに濡れてるのよ」
「別に……何でもないわよ」
私は服を脱いでタオルで濡れた身体を拭いてると、絵里から事情を聞かれるけど、沙紀がいる前では答えたくなかったから曖昧な感じで答えた。
「そう……」
絵里は私の気持ちを感じ取ってくれたみたいで、それ以上は何も聞かなかったわ。
「それでそんなにびしょ濡れなって、着替えとか大丈夫なん?」
「まあ……ジャージを持ってきてるから、それに着替えるけど……」
雨で下着まで濡れたけど、私は少し乾かせば何とかなるけど、沙紀の場合は……。
「私持ってきた服が全部濡れちゃったから……着替えが……」
沙紀はライブのときと今ので制服とジャージが両方とも雨で濡れて着替えれる服がなくなってる。
「それならウチのジャージを貸してあげる、ウチのやったら委員長も着れるやん」
「そうね、それがいいわね」
一応部室の中にアイドルグッズとしてTシャツだけならあるけど、悔しいことに沙紀にはサイズが合わないことはこの前の件で分かってる。
「えっ……でも……」
「ええやん、ええやん、ウチと委員長の仲やし、そうだ、今日はそのままウチの家でシャワーを浴びて泊まればええやん」
「そんな……急に……」
希の急な提案に驚く沙紀。だけどそんな沙紀を無視して強引に希は話を進めようとする。
「急にって何時も泊まりに来てるやん、そうと決まれば早く着替えて行くよ」
「えっ!? ちょっとお姉ちゃん」
希はジャージを渡して、沙紀を無理矢理着替えさせるために隣の部室へ押し込んだわ。
「悪いわね……」
「何の事? 別にウチはただ単純に委員長ちゃんとお泊まりしたいだけやで」
私が希に謝ると、希は惚けたように言う。だけど間違いなく分かっててやってるのは私でも分かる。
「そう……あんたがそういうならそういうことにしとくわ」
それなりに希とは付き合いが長いからこいつが何をしようをしてるかは大体分かる。それに今の沙紀を一人にするのは不味いから希の提案は助かったわ。
「お姉ちゃん……着替え終わったよ」
「じゃあ、いっこか……じゃあね、エリチ、にこっち」
そう言って希は沙紀を連れて先に帰っていったわ。
それを見届けたあと、私はジャージに着替えてると、絵里が話しかけてきた。
「それでにこ何があったの?」
沙紀が希の家に行ったから絵里は私に事情を聞こうとしたから私は絵里にさっきのことを話した。
「そう……別に今回のことは沙紀だけのせいじゃないわ、私たちの全員のせいよ」
「そうね……あいつのせいじゃないわ、体調管理を怠った穂乃果とそれに気付けなかった私たちのせいよね」
もっと言うんだったら、部長として部員の管理が出来ていなかった私が一番悪いわ。
「にこ……今あなたも自分が一番悪いなんて思っているでしょ」
「うっ!」
「はぁ~、やっぱりね」
私が考えてることはお見通しみたいで、絵里は呆れた声を出した。
「責任を感じるってことは悪いことじゃないけど、感じすぎてそれが重みになってしまったら意味がないわ」
「あんたがそれを言うのね」
「そうね……少し前の私はまさにそうだったわ、だからこそ自分一人で抱え込むことが良くないってことは分かるわ」
μ'sに入る前の絵里は、生徒会長として学校の廃校を阻止しようと責任を感じて行動をしていたわ。
それで不味い状況になりかけそうだったけど、希の計画と沙紀の手伝いのおかげで、何とか回避できたわ。
「そうね……けど私は部長なのよ……それなのに……」
部長なのに、目の前のライブに集中し過ぎて周りがちゃんと見れなくてこんな結果になってしまったわ。これは私の責任なのよ。
「だからそういうのがダメだって言ってるでしょ」
「今回はにこ以外でも誰かが気づけば何とかなったことよ、みんなが注意を怠った結果なのよ、だからこれは私たちみんなが悪いわ」
「そうね……そう言われると何か心が軽くなったわ、ありがとう絵里、けどこれは穂乃果にも言うべきことじゃない?」
私は絵里に言われて納得は出来たけど、今回一番責任を感じるのはこういうのは悪いけど、体調管理を怠ってしまった穂乃果。
「そうよ、これは穂乃果にも言うつもりよ、あの子が一番責任を感じてるはずだから……」
「そう、ならいいわね……」
そのうち穂乃果のお見舞いに行くと思うからそのとき付いていけば、フォローすればいいわね。多分そのときには海未とことりも付いてくると思うから少しは納得しやすいと思うわ。
あとは……。
「沙紀には多分希がフォローを入れてくれるはずよ、何だかんだで沙紀は希にかなり心を開いてるから」
「そうね……希なら今のあいつでも話を聞いてくれるわよね……」
「そんなに沙紀は自分のことを責めてるの?」
「ええ……どうしてか分からないくらいに自分のことを責めてたわ、ただ……」
「ただ?」
「いえ、何でもないわ」
今の沙紀は何となくだけど、少し前のあいつに戻りかけてたような気がしたけど、まだ確証はないから伝えないことにしたわ。
それにもうこの件はフォローをすれば終わりだと思うから大丈夫なはずよね。
だけどその考えは甘かったことにすぐに気付かされる。
そしてどうして沙紀がそんなに自分を責めていたのか理解していれば、あの状況を見せないようにしてあの子があんなことにならなかったかもしれない。
如何だったでしょうか。
にこが意味深な感じで締めましたが一体何が起こるのかどうぞお楽しみに。
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