ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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お待たせしました。

そんなわけで二年目最初の投稿です

それではお楽しみください


三十五話 プールでの奇妙な出会い

 1

 

「おぉ~!! 大きなプール!!」

 

 目の前に色んな種類のプールがいっぱいあるから、テンションが上がって、つい大きな声を出しちゃった穂乃果。

 

 流れるプールに、波のあるプール、ウォータースライダーとかあって、どれも面白そうで早く中に入って遊びたいよ。

 

「凛ちゃん、どれから遊ぼっか?」

 

「やっぱりウォータースライダーにゃ~」

 

「よしっ!! それじゃ……」

 

「二人とも今回は遊びに来た訳じゃないのですから」

 

 早く遊びたくてウズウズしてるから、早速凛ちゃんと一緒にウォータースライダーで滑りに行こうとしたけど、海未ちゃんに止められちゃう。

 

「そうよ、今日はここでライブしに来たんだから」

 

「おぉ~!! そうだった、ついプールが楽しそうだからすっかり忘れてたよ」

 

 絵里ちゃんの言う通り、今日はここのステージでライブをするために、μ'sのみんなで、大きなプールにやって来たんだよ。

 

「全く……アイドルがライブを忘れるなんて何を考えてるのよ」

 

「そう言うにこちゃんも、さっきからチラチラとプールの方を見てるにゃ~」

 

 説教するくせに、にこちゃんも結構プールの方を見て、遊びたそうにしてるから、全然説得力がないよ。もうにこちゃんも、素直に遊びたいって言えばいいのに。

 

「まあまあ、みんな遊びたいのは分かるけど、今はライブに集中しよう」

 

「そうだね、今は沙紀ちゃんの言う通りライブに集中しよ」

 

 今日は遊びに来たんじゃないもんね。ライブに来たんだから、ちゃんとライブが成功できるように頑張らないといけないよね。

 

「それにライブが終わったら、自由に遊んで良いって言われてるし、それからみんなで楽しめばいいからね……フフフ……」

 

「完全に委員長ちゃんは別のことを楽しみにしてるやん」

 

「ち、ち、違うから!! 別にみんなの水着が見れるから楽しみにしてる訳じゃないから」

 

「口から本音出てるわよ」

 

「あっ!!」

 

 真姫ちゃんに言われて、沙紀ちゃんはハッと口を手で塞ぐ。何時も通り沙紀ちゃんは女の子大好きだよね。

 

「でも……良いのかな、こんな大きいプールのステージでわたしたちが歌うなんて……」

 

「結構お客さんも多いよね」

 

 周りを見てみると、大きいプールで、しかも夏休みだから、ことりちゃんの言ったみたいに、いっぱい人が多い。何か気付いたら、みんなとはぐれて迷子になっちゃいそうなくらい。

 

「よくこんな場所からライブの依頼が取れたわよね」

 

「うん……まあね……ちょっとね……」

 

 絵里ちゃんの疑問に沙紀ちゃんは何か複雑そうな感じで答える。

 

「確か沙紀の知り合いからこの話を貰ったって言ってましたが、にこと花陽はその話を丁度聞いてたんですよね」

 

「そうね、そんな話をちょっとだけ聞いてたわね」

 

「でもわたしたちもこんなに大きなところでやるなんて……聞いてなかったから……」

 

 へぇ~そうなんだ。穂乃果たちも少し前に沙紀ちゃんから急にプールでライブをやるって、聞かれて驚いたけど、せっかくだからやるって返事をして、今日ここに来たんだよね。

 

「理由はどうあれ、ここに来たんだからやるしかないでしょ」

 

「真姫ちゃんやる気だにゃ~」

 

「べ、別に……」

 

 恥ずかしがって何時ものように髪の毛を指でクルクルする真姫ちゃん。

 

「そうね、真姫の言う通りせっかくこんな機会を貰ったんだから、しっかりとやらないとね」

 

「じゃあそろそろ移動しよっか、こんなに人が多いと迷子になりそうやし」

 

 そうして、みんなでステージのある場所まではぐれないように移動してたんだけど、人が多くて、すぐに向かうことが出来なかったんだよね。

 

「まさかここまで人が多いなんて……みんな居る?」

 

 あまりの人の多さに、とりあえず落ち着ける場所を見つけると、そこにみんなで休憩して、沙紀ちゃんがみんな居るのか確認してた。

 

「特に穂乃果、凛、にこはちゃんと居ますか」

 

「ちょっと何で凛たちは名指しなの」

 

「いえ、一番はぐれそうな三人ですから」

 

 そんな当たり前のように普通に答える海未ちゃん。

 

「ヒドイよ!! 海未ちゃん」

 

「そうよ、何でにこがこの二人と同じ扱いなのよ」

 

 穂乃果たちの扱いが酷いことについて、三人で文句を言ってるけど、さらっとにこちゃんも酷いことを言ってる。

 

「いやいやにこちゃんも十分仲間だよ」

 

「はあ? なに言ってるのよ、にこが迷うわけないでしょ」

 

「そんなこと言って、にこちゃんだけ迷うのがオチにゃ~」

 

 そうだよ。大体そんなことを言う人が迷うのが、何時もの流れだよ。沙紀ちゃんを見えればよく分かるよ。

 

「まあ、にこっちに関してははぐれても、委員会ちゃんが血眼になって見つけそうやからね」

 

「それはもちろん、地獄の底まで、草の根分けてでも探しますよ」

 

 うぅ……確かに沙紀ちゃんならやりかねないよ。簡単ににこちゃんを探してる姿が思い付くもん。

 

「そういうことよ、だからにこが迷うことがないわ」

 

「偉そうに言ってるけど、完全に他力本願よね」

 

「う、うん……」

 

 胸を張って堂々と言うにこちゃんに、真姫ちゃんがツッコミを入れてると、花陽ちゃんは苦笑いしながら頷く。

 

「あっ、大丈夫だよ、私とにこ先輩は一心同体、運命共同体だから」

 

「何が大丈夫なのか全く意味が分かりませんが……」

 

「まあでも沙紀ちゃんがにこちゃんのこと、大好きなのは何時ものことだからね」

 

「いやおかしいわよ、何で普通に受け入れてるのよ、十分愛が重いわよ」

 

 さっきの会話でことりちゃんが普通に流そうとしたから、にこちゃんは怒るけど、ことりちゃんは特に気にしてない感じ。むしろ楽しんでるみたい。

 

「流石は私のソウルフレンド、よく分かってるよ、そんなわけでにこ先輩、今から私と愛を──」

 

「誓わないわよ」

 

「なら一夜限りの──」

 

「犯さないわよ」

 

 ことごとく沙紀ちゃんの言うことを先回りして答えるにこちゃん。やっぱりこの二人って仲良いよね。

 

「まあ、あの二人は放っておいて、今度こそステージに向かいましょう」

 

「そうね……あの人のならにこちゃん連れて、二人でも来れるでしょ」

 

 海未ちゃんの提案に真姫ちゃんが賛成して、ステージへ行こうと歩き始めて、みんなも何か納得してるみたいで歩き始める。

 

「ちょっと待ちなさいよ、にこを置いていかないでよ」

 

「えぇ~!? にこ先輩は私と一緒じゃ嫌ですか」

 

 後ろから何て会話が聞こえるけど、みんな聞こえてない振りをしてるのか、気にせず歩き続ける。

 

 そうして穂乃果たちはもう一度ステージまで向かうけど──

 

「あれ? みんな何処?」

 

 何故か穂乃果は一人はぐれちゃった。

 

 2

 

 いやいやちょっと待って、おかしいよ。何で穂乃果みんなとはぐれてるの。

 

 みんなとはぐれないように、ステージの場所を知ってそうな海未ちゃんや絵里ちゃんの後ろに付いていって、向かってたのに……。

 

 確かに途中で人がいっぱいで、ちょっとみんなと距離が離れちゃったけど、たったちょっとだよ。それだけで、みんなとはぐれちゃうなんてどんだけ人多いの。

 

 それに何時ものパターンだったら、沙紀ちゃんかにこちゃんがはぐれて大騒ぎになるパターンなのに、何で今日に限って穂乃果なの。

 

 心の中で文句をいっぱい言ってから、少し落ち着いてから周りを見てみる。もしかしたらステージがすぐ近くにあるかもしれないもんね。

 

 周りに見えるのはプール、人、プール、人、人。うん、ステージ何て全く見えないね。

 

「ど~しよう、全然場所が分からないよ!」

 

 不味い。このままじゃあみんな心配するかもしれないし、何より絶対海未ちゃんに怒られる。しかもさっき海未ちゃんが心配してた通りなってちゃったよ。

 

 早くみんなと合流したいけど、全然ステージの場所が分かんないよ。どうしよう……。

 

 近くにこのプールの地図とかないかな。あれば今居る場所とステージの場所が分かるのに……。

 

「とりあえず歩いてみよう、もしかしたらステージに着くかもしれないよね」

 

 悩んでもしょうがない。歩けばステージが見つからなくても、みんなが見つかるかもしれないし、地図が見つかって、何とか着けるはずだよ。

 

 そう気合いを入れて数分間歩き始めるけど、全くステージが見えないし、みんな見つからないし、それどころか地図もない。

 

「広い、広すぎるよ!!」

 

 歩いても歩いても見えるのはプールしか見えないよ。何で? そもそも本当にここにステージがあるの。それすらも怪しいよ。

 

 それどころか地図が全くないって不親切にもほどがあるよ。

 

 ライブはお昼くらいからだから、まだ時間があるけど、リハーサルとかするって沙紀ちゃん言ってたし。

 

「あの……」

 

 このまま迷子になったままだと、みんなが心配するよね……。

 

「あの……?」

 

 心配かけすぎると海未ちゃんに本当に怒られるし。本気で怒った海未ちゃんすごい怖いもん。

 

「あの!!」

 

「うわっ!!」

 

 急に後ろから大きな声が聞こえて、思わずビックリしてから後ろを振り返ると、そこにはお人形さんみたいな可愛い女の子が、心配そうな顔で穂乃果のことを見てた。

 

「ごめんなさい、急に大きな声を出しちゃって、何か困ってたみたいだったから声を掛けたんですけど……」

 

「ううん、こっちこそごめんね、せっかく心配して声を掛けてくれたのに、色々と考えちゃってたから気づかなくって」

 

 大きな声を出したことを謝る女の子に、穂乃果は気づかなかったことを謝ってから穂乃果は女の子の方を見る。

 

 お人形さんみたいに可愛い顔をしてる。髪も綺麗なブラウンでちょっとカールが掛かって、ゆるふわな感じがする。

 

 身長は大体にこちゃんと同じくらいか、ちょっと低いから、多分中学生だと思うけど、もしかしたらにこちゃんみたいに背が低い高校生かもしれないよね。どっちだろう。

 

「それで何か困ってたみたいでしたけど、どうしましたか」

 

「えっ……あっ、うん、ちょっと友達とはぐちゃって……」

 

 どっちか悩みながら女の子を見てると、困ってることを聞かれたから、ちょっと恥ずかしいけど答える。

 

「なるほど迷子なんですね」

 

「うぅ……」

 

 確かにそうだけど……そんなストレートに言われると、落ち込むよ。この子見た目に限らず割りとズバッと言うんだね

 

「どうかしましたか?」

 

「ううん、何でもないよ……」

 

 すごい透き通った瞳で穂乃果のことを心配する女の子。多分、この子悪気があって言ってるじゃないと思う。凛ちゃんと同じタイプだよ。

 

「それで一応集合場所をステージにしてるんだけど、全然見つからなくて」

 

「ステージですか……ごめんなさい、ちょっと場所分からないです」

 

「そっか……ありがとうね」

 

 もしかしたら知ってるかもしれないって思ったけど、知らないみたいだし、やっぱり自分で歩いて探すしかないよね。

 

 少し落ち込みながらそんなことを考えながら、声を掛けてくれた女の子にお礼を言って、またステージを探そうと歩き始めると──

 

「分かりました、一緒にステージを探しましょう」

 

 女の子から思いもしない提案をしてきた。

 

「えっ? 良いの?」

 

「はい、ここは広いですし、探すから一人よりも二人の方がいいですから」

 

 聞き返すと、女の子はとても良い笑顔で返事をしてくれて、心の底から言ってることが伝わってくるよ。

 

「ありがとう!!」

 

「いえいえ、困ったときは助け合わないと」

 

 そんなわけで私とこの女の子とで一緒にステージを探すことになったけど……。

 

「それに私も道に迷ってましたから、それじゃあ行きましょうか」

 

「えっ!?」

 

 何とも言えない不安が穂乃果を襲ってくるよ。本当にこの子大丈夫なのかな。

 

 3

 

 どうしよう……。せっかく一緒にステージを探してくれるのに不安しかないんだけど……。

 

 まさか穂乃果のことを心配してくれて声を掛けてくれて、さらに一緒に探してくれる女の子は同じ迷子だなんて……。

 

「あなたも迷ってる言ってたけど、誰か探してるじゃないの」

 

「あぁ……気にしないでください、今日は一人でここへ来ましたから、道に迷っただけで迷子じゃないですよ」

 

「いやいや迷ってる時点であなたも迷子だよ」

 

 この子の事心配してくれてる人が居るじゃないかと思って聞いてみると、穂乃果でも変って分かるくらい変なことを言ってきたよ。

 

「違います、迷子は何か目的地があって、迷うから迷子であって、私は……そもそも何で私ここに居るんでしょうか?」

 

「えぇ~!? そんなこと言われてもこっちは分かんないよ」

 

 迷う迷わないよりももっと酷いよ。この子自分がここに来た理由すら忘れてるよ。そもそも理由すらあったのか怪しいレベルだよ。

 

 本当にこの子と一緒に探して大丈夫かな。何かさっきから不安がどんどん増えてくるだけど……。

 

「確か……今日ここで何かのイベントで誰かが来るから……これは行くしかないって思って……一人で来たような……」

 

 ん? 今日のイベント? それって……。

 

「もしかして今日やるスクールアイドルのイベントを見に来たんじゃないのかな」

 

 すごい曖昧な感じでこの子は言うけど、何か色々と聞き覚えのあるようなことを言ってるから、何となくだけど、そんなことを聞いてみる。

 

「そうでした、やっと思い出しました、そうです、今日ここで最近気になってるスクールアイドルがステージでライブをすると聞いてここに来たんでした」

 

 やっぱりそうだよね。もしかしたら穂乃果が知らないだけで、他にイベントがあるかもしれないけど、今日やるイベントって、私たちのライブくらいしか思い付かないもんね。

 

「確か……今日ライブをするのは九人のスクールアイドルユニットの……」

 

 そうそう。やっぱりこの子は私たちのライブを見に来たんだよね。

 

「キューズ!!」

 

「惜しい!! 確かに九人だけど、九人の女神でμ'sだよ!!」

 

「おお!! そうでした、そんなグループ名でした、詳しいですね、あなたも好きなんですか、ユーズって言うアイドル」

 

「今度は普通にありそうな間違いしてるね、しかも色々と気付いてない」

 

 好きって言ってるわりにグループ名間違えてるし、そもそも穂乃果がメンバーって事すら気付いてない。

 

「気付いてない? そういえば……あなた何処かで見たことがあるような……」

 

 穂乃果のことをジロジロと見ながら思い出そうとしてるけど、何か色々と落ち込むよ。

 

「あっ!? ……いえ……お隣の山田さんの娘さんは先月土に……ましたから違いますし……」

 

「今、一瞬思い出したと思ったけど全然人違いだし、それにさらっと変なこと言ってなかった!?」

 

「いえ、気にしないでください」

 

 十分気になるよ。お隣の娘さんを土で何したの。何か色々とヤバイ感じがするよ。何だろう、この疲れる感じ。すごい何処かの誰かさんと同じ感じがするよ。

 

「……あっ……今日見に来たμ'sのセンターの高坂穂乃果さんにそっくりですね、いやただのそっくりさんですよね……」

 

「いや……そっくりさんじゃなくって、私……高坂穂乃果本人何ですけど……」

 

「いやいや冗談を……えぇ!? 本物だ!!」

 

 自分の名前を言うと、女の子は最初は信じてないみたいなことを言って聞き流そうとしたけど、私の方を見て、本物だと気付いたみたいですごい驚いた顔をしてる。

 

「ど、ど、ど、どうしよう……本物にエンカウントするなんて……」

 

「エンカウントって……」

 

「何かサインが書けそうなものは……そうだ、穂乃果さんこれにサインしてください!!」

 

 そう言って女の子が渡してきたのは水着だった。

 

「いやおかしいよ!! 何で水着にサインさせようとしてるの」

 

 サイン頼まれるのは初めてだから嬉しいけど、何で初めてのサインで水着にサインなの。色んな意味でビックリするよ。

 

「今日と言う思い出を記録するには水着が一番だと思って」

 

「なるほど!! 確かに」

 

 何か色々とおかしいけど、何か納得しちゃったから、穂乃果は女の子から水着を受け取って、人生初のサインを書く。

 

「ありがとうございます!!」

 

「ううん、こっちこそ応援してくれてありがとう」

 

 あぁ~、何か本当のアイドルみたいなこと言えてる。それにサインを頼まれる経験がなかったからすごい嬉しいよ。

 

 しかし、この時穂乃果は忘れていた。人生初のサインを水着に書いてたことを。

 

「私……この前の秋葉の路上ライブで初めてμ'sのライブを見てハマりました」

 

「あぁ!! この前の!! そっかそっか……」

 

 あのときの秋葉でライブをやるって、みんなの判断は間違ってなかったんだね。こんな風に知ってもらえるなんて嬉しいよ。

 

「A-RISEのいる秋葉で堂々と路上ライブを行うなんて、何て刺激的なグループ何だろうって思って、見てみたらホントに刺激的で良かったです」

 

「し、刺激的?」

 

「あっ、分からないですよね、私はとってもすごくて面白いって意味で使ってるんですよ」

 

 なるほどね。大体分かったよ。そうなんだ……とってもすごくて面白いんだ……。

 

「えっ!?」

 

「えっ? だって普通スクールアイドルの頂点のA-RISEがいる秋葉でライブをしようなんて思わないですよ」

 

「うぅ……確かに……」

 

 秋葉でライブをしようなんて言ったときも、メンバーの誰かが驚いてたけど、面白いからやるって感じでやって成功したけど、そういった風に見に来た人もいるんだ。

 

「それにあのライブでもっと刺激的なものを見つけたから」

 

「ん? 何か言った?」

 

「いえ、何も言ってませんよ」

 

 そう。何かさっきまでとは雰囲気が違う感じの声が聞こえたけど、人が多いから聞こえた空耳かな。

 

「あっ、穂乃果さん見てください、あそこに係員が居ますよ、あの人にステージの場所聞いてきますね」

 

「ちょっと待って……行っちゃった」

 

 女の子が係員が居るって言った方へ走り出して、穂乃果は止めようとしたけど、思ったよりも足が速くて穂乃果の声が聞こえてる前に行っちゃった。

 

「あれ? そもそも係員って居たっけ」

 

 そんな疑問を感じて女の子が走ってた方を見ると、そこには係員の姿は見えないし、それどころか女の子の姿すら見えなかった。

 

「えっ? また一人……」

 

「良かった……穂乃果ちゃんやっと見つけたよ!!」

 

 自分がまた一人で迷子になってどうしようと口にしようとすると、目の前に沙紀ちゃんが出てきて、とても安心した顔で穂乃果の所まで駆け寄ってくる。

 

「もう……はぐれたから心配したよ、みんなも心配してたよ」

 

「ごめんなさい……」

 

 やっぱりみんなに心配掛けちゃったみたいだね。まずは穂乃果を探してくれた沙紀ちゃんに謝る。

 

「特に問題ないみたいだし、それじゃあみんなのとこ行くよ」

 

「ちょっと待って……実はここまで一緒に来た女の子が居たんだけど……」

 

 沙紀ちゃんに今度こそはくれないように手を握られて、ステージに向かおうとしたけど、穂乃果はあの子のことが気になって立ち止まる。

 

「そうなの? でも……」

 

 沙紀ちゃんも立ち止まって、周りを見渡すけど、周りには人がいっぱい居るから、探すのは難しいって雰囲気を出していた。

 

「分かった、ここでちょっと待ってみよ、もしかしたらここに来るかもしれないし」

 

「ありがとう、沙紀ちゃん」

 

 そうして二人であの子を待つけど、全く来る気配もなくって、時間を掛け過ぎると、みんなが心配するからと言って、穂乃果たちはその場から離れた。

 

 結局、その日はその女の子とは会えず、名前も知らないままだったけど、多分ライブには来てくれたら良いなって思うしかなかったよ。




今回は穂乃果の語りでした。

さて、今回出てきた女の子は一体誰なんでしょ?

彼女の正体、登場が一体何をもたらすのか、それは今後の展開をお楽しみに。

何か感想などありましたら、気軽にどうぞ。

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