ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

35 / 75
お待たせしました。

今回は誰が語りでしょうか。

そんなわけでお楽しみください。


三十二話 勝負は何時でも本気

 1

 

 図書館で穂乃果が遊ぶために宿題を必死にやり、予想以上に早く宿題を終えた私たちは、近くの飲食店で昼食を取ることにしました。

 

「ことりちゃん、こっちこっち~」

 

「勉強会参加出来なくって、ごめんねぇ」

 

 穂乃果が手を振りながら合図をすると、遅れてきたことりがそれに気付き、私たちが座っている席に謝りながらやって来ました。

 

「良いですよ、でもことり、今日は用事が合ったのでは」

 

「うん、衣装を作ろうって思ったんだけど……良いイメージが思い付かなくって、気分を変えよっかなって」

 

 最初に連絡を入れたときはやりたいことがあるって言ってましたので、無理して来たのかと思ってましたが、なるほどそう言うことでしたか。

 

「あれ? そういえば沙紀ちゃんは? 来てるんだよねっ」

 

「あら、ことり来たのね」

 

「沙紀……ちゃん?」

 

 ことりが席に沙紀が居ないことに気付くと、丁度沙紀が戻ってきますが、何時もと見た目と雰囲気が違って、ことりは戸惑った声を出しました。

 

「あなたもそんな反応するけど、そんなに変かしら」

 

 沙紀はそんなことりの反応を見て、自分の服装などを見て、自分が変かどうか確認しました。

 

 でも沙紀には悪いですけど、ことりの反応は分からなくもないです。

 

 何時もは表情が分かりやすく、テンションも高いのですが、今の沙紀は表情がとても分かりにくく、声も冷淡なしゃべり方で、いまいち感情が読み取れません。

 

「ううん、変じゃないよ、すごく似合ってるよ」

 

「あらそう、ありがとうことり」

 

 ことりは今の沙紀を観察してから、そんな風に感想を言うと、沙紀は興味がなさそうな冷淡な感じでお礼を言いました。

 

 その後、ことりが来たので私たちはメニューを取って、自分たちが食べるものを決めて注文してから、何時ものような他愛ない会話を始めます。

 

「やっぱり沙紀ちゃんって、スタイル格好良いからクールなキャラも似合うね」

 

 こっちに来て良かった。これなら良いイメージが湧きそう何て、ことりから小さな声が聞こえた気がしました。

 

「そうだよね、沙紀ちゃんってスタイルが良いもんね」

 

 穂乃果も沙紀の姿を見ながら羨ましそうに言いました。沙紀はそれをまるで当たり前かのように気にせず、注文してた飲み物を飲んでいました。

 

 何時もなら調子に乗って、何か仕出かすのですが、今日はそういった流れにならないので、こちらの方が調子が狂います。

 

 それにしてもことりたちの言う通り確かに沙紀はかなりスタイルが良いですから、こういうキャラも似合ってますけど、何時もの滅茶苦茶なイメージが強すぎて、違和感の方が強いです。

 

「沙紀ちゃんって、ブラックコーヒー飲めるんだぁ」

 

「すごい、私なんてコーヒー飲めないよ、大人だ~」

 

「そう? 意外と慣れるといけるわよ」

 

 何て会話をしてると、私はふと疑問に思いました。そもそも沙紀って、学校でそんなにコーヒー飲んでいましたっけ。何時もは別の飲み物を飲んでいたような。

 

「そうなの? じゃあちょっと飲んでみようかな……やっぱりにが~い!!」

 

 そんなこと考えると、穂乃果が沙紀からコーヒーを少し貰って飲んで、凄く渋い顔をして、沙紀にコーヒーを返していました。

 

「ほら、お水です」

 

 私は口直しに穂乃果に水を渡すと、穂乃果は一気にお水を飲み干しました。

 

「すごい顔してたよ、穂乃果ちゃん」

 

「良い反応で面白かったわよ」

 

「うぅ……だって~すごく苦いんだよ」

 

 今の会話で味を思い出したのか穂乃果はまた渋い顔をして、自分の飲み物を飲んでブラックコーヒーの味を忘れようとしました。

 

 そんな様子を見ていると、突然誰かの携帯が鳴っている音が聞こえました。

 

「どうやらわたしの携帯みたい」

 

 どうやら沙紀のだったみたいで、謝りながら沙紀は自分の携帯を取り出して確認すると、沙紀の表情が僅かに不機嫌そうなそんな気がしました。

 

「ちょっと席を外すわ」

 

 そう言って沙紀は立ち上がり、そのまま私たちとは少し離れたところに移動しました。

 

「どうしたんだろう?」

 

「うん……何か携帯見たら機嫌悪そうな感じがしたね」

 

「ことりもそう感じましたか」

 

 今日の沙紀は表情の変化がどうも分かりにくいので、私の気のせいかと思ってましたが、やっぱり気のせいではなかったのですね。

 

「何か珍しいよね、沙紀ちゃんが機嫌悪いのは」

 

「何時もは騒がしいくらいですし」

 

「そういえばそうだね、何時もはそんな雰囲気作らないもんね」

 

 何時もテンションが高くふざけて、にこ辺りに止められるのがお決まりにですから、あまり沙紀は暗い顔を私たちの前ではしません。

 

 だから穂乃果の言う通り、沙紀が機嫌が悪そうに見えるのはとても珍しい。

 

 そんなことを話してると通話を終えたのか、沙紀が何事もなかったように戻ってきました。

 

「ごめんなさい、少し抜け出して」

 

 そう言って沙紀は席に座り、携帯を雑に置くと、自分の飲み物を一気に飲み始める。どうやらまだ少し機嫌が悪いみたいです。

 

「いいよ、気にしなくって……それで誰からだったの?」

 

「別に誰だって良いじゃない」

 

 穂乃果は気になったのか電話の相手を聞こうとしましたが、沙紀は答える気がないみたいで、そう言ってから、黙り始めました。

 

 どうやらあまりその件に触れて欲しくないみたいですので、これ以上話を続けるのは止めて、話題を変えようと、私は一つ気になってた事を口にします。

 

「そういえば、沙紀の携帯って二つあるですか」

 

 沙紀が何時も使ってるのは白い携帯ですけど、目の前にあるのは黒い同じ機種の携帯。

 

「えっ!? 買い替えたんじゃないの?」

 

 ことりはどうやら沙紀が携帯を買い換えたのかと思ってたみたいですが、でも普通だったら新しく買い換えたのかと思いますが……。

 

「沙紀ちゃん、途中で会ったときに何時も使ってるの持って使ってたよね」

 

 そう、図書館に向かう前に会ったときに何時も使ってる携帯で、今日入れた私の連絡を確認して普通に使ってましたから。

 

「確かにわたし携帯二つ持ってるわよ」

 

 沙紀は鞄から何時も使ってる私たちが見覚えのある白い携帯を取り出しました。

 

「こっちの白いのが私の携帯、それでこっちの黒いのがわたしの……仕事用の携帯よ」

 

 両手に二つの携帯を持ちながら私たちに見えるようにそう説明しました。僅かに黒い携帯の方を説明する際に間が合ったのは私の気のせいでしょうか。

 

「仕事用って……芸能人みたいだね」

 

「みたいって穂乃果……沙紀は芸能人ですよ」

 

「トップアイドルの星野如月ちゃんだよ」

 

 惚けたような顔をした穂乃果は私たちにそう言われると、思い出すような仕草をして、それから少しすると思い出したかのような顔をしました。

 

「おぉ!! そうじゃん、沙紀ちゃんって芸能人じゃん」

 

「今は休業中だから元だけど」

 

 思い出してテンションが上がってる穂乃果に対して、相変わらず冷淡に話し訂正を加える沙紀。

 

「私も今思い出しましたけど、今日の沙紀のキャラは星野如月のときのキャラみたいですよね」

 

「そうね、確かにわたしはこんな感じでやるけど」

 

 やはりそうでしたか。ずっと今日の沙紀のキャラは何処か見たことがあるような感じがしてましたが、星野如月の名前を聞いて、しっくりしました。

 

「へぇ~、そうなんだぁ~、でも沙紀ちゃんってキャラを演じるの上手いよね」

 

「うんうん、それで沙紀ちゃんが演技してたの知ったときに海未ちゃん結構落ち込んでたよね」

 

「何時の話をしてるのですか!!」

 

 確かに沙紀の演技に騙されましたけど、そこまでは……いえ、結構落ち込んでましたけど……。それに沙紀と一緒にいると、別の意味で変な目に会いますし……。

 

 キ、キスとか……。うぅ……思い出すと恥ずかしいです。

 

「それで、このあとどうするの?」

 

 人の気を知らずに沙紀はこのあとの予定をどうするのか聞いてきました。

 

 元々遊ぶために集まったわけではないのと、ことりが居なかったので、勝手に決めるのは良くないと思い、このあとの予定は決めていませんでした。

 

「そうだね、どうしよっか?」

 

「いろんなところ見て回る?」

 

「そうですね、特にないのでその方が良いのでは」

 

「良いんじゃない」

 

 そんなわけで私たちは食事を終えたあと、色んなお店へと出掛けるのでした。

 

 2

 

 食事を終えた私たちはそのあと色んなお店へと出掛けました。

 

 服を見てると、ことりが私たちに似合う服を選び出して、それをほぼ無理矢理着させられました。

 

 いや穂乃果や沙紀は意外と乗り気でしたので、ことりが選んだ服を次々と着ますけど、無理矢理着させられたのは私だけです。

 

 ことりの選んだ服がセンスないわけでは無いんですけど、ただあまり自分が着ないような服を選んでくるので少し恥ずかしかったです。

 

 そうしてことりが選んだ服を着て見せると、実際にみんな似合ってるなど、誉めたりして楽しんでいました。

 

 ちなみに着せた本人であることりは、これなら良い衣装がいっぱい思い付いた何て口にしてましたので、今度は彼女が作った服を誰かが着させれそうなそんな気がしました。

 

 そのあとはまたまた見つけたクレープ屋でみんなでクレープを食べてると、沙紀がかなり大きなクレープを食べていたので、穂乃果は流石はトップアイドルと、訳の分からないことを口にしてました。

 

 いや、全くアイドル関係ないと思いますけど、私はそんなに食べて太らないのか心配すると──

 

「別に私いくら食べても太らないわよ」

 

 何て言って、それと同時に横で穂乃果とことりが何だか落ち込んだ姿が目に入ってしまいました。

 

 そもそも学校で色んな仕事をして体を動かしてたり、自分の体の管理をキチンとしてる沙紀ですから、杞憂でしたね。

 

 そんな風にみんなで色んなところを行って、現在はゲームセンターで遊んでいました。

 

「負けないよ、沙紀ちゃん」

 

「わたしに勝てると思ってるのかしら」

 

「絶対に負けません」

 

「ははは……程ほどにね」

 

 あまりゲームセンターに来ないので良くは分かりませんが、今は私たちレースゲームと言うものでしょうか、それで遊んでいました。

 

「うわ、また負けた~あとちょっとだったのに」

 

「惜しかったね、穂乃果ちゃん」

 

「甘かったわね」

 

「どうして……勝てないんですか……」

 

 決着が付いて穂乃果はゲームの台から悔しそうにして、ことりが励ますが、勝った沙紀は余裕とした雰囲気でしてますが、私はこれまでの敗戦に落ち込んでいました。

 

「沙紀ってゲーム強いよね」

 

「エアホッケーも一対二でも勝っちゃてたね」

 

 そう、沙紀は不利な状態でも普通に勝ったりしてました。それもかなり点差を付けて。それどころか色んなゲームでも沙紀は勝ち続けてました。

 

「だからもうちょっと手加減してよ」

 

「いやよ、負けたくないもの」

 

「そうです、沙紀には本気で来てもらわなくては困ります」

 

 勝負と言うものは真剣にやってこそ意味があるものです。それに手加減して勝っても嬉しくありません。だからこそ沙紀には本気でやってもらいます。

 

 そんなことを考えてる私を見てた穂乃果とことりは二人で、後ろを向いて何か話し出しました。

 

「ヤバイよ、海未ちゃんのめんどくさい負けず嫌いが出てきてるよ」

 

「うん、それに沙紀ちゃんも負けず嫌いみたいだから、更に悪化してるよ」

 

 コソコソと何か話してますが、私には何を言ってるのか聞こえませんが、私は気にせず沙紀と勝負できるゲームを探します。

 

「次はあれで勝負です」

 

『あ、あれは……』

 

「私にそれで挑むとは良い度胸ね、嫌いじゃないわ」

 

 次に沙紀に挑むゲームに指を指すと、穂乃果とことりは驚きの声を上げ、沙紀は更に余裕そうな雰囲気で言いました。それもそのはず何故なら──

 

 私が指差したのはかつてみんなで遊んだことのあるあのダンスゲームだったからです。

 

「無茶だよ海未ちゃん、相手はアイドルだよ」

 

「そうだよ~、忘れたの? 沙紀ちゃんこのゲームで私たちで一番だったんだよ」

 

「私も重々承知の上です」

 

 沙紀がアイドルだと言うことも、私たちの中──しかも当時居なかった絵理や希以外のメンバー中でも、一番だったことも分かってます。

 

 ですが、私も沙紀も遊んだことがあの時の一回だと言うことと、あの時と比べてだいぶダンスが上達してるはずですから。

 

 そもそもこのゲームダンスの上手さではなく、リズム感と反射神経があれば、何とかなるゲームですから、それらを鍛えてきましたから、私でも沙紀に勝つ可能性がなくもないはずです。

 

「どうやら勝算はあるみたいな感じね、その勝負良いわ、受けるわ」

 

「沙紀ならそう言ってくれると思いました」

 

「えっ? えっ? 何この感じ」

 

「ツッコミ担当の海未ちゃんがあっちに行っちゃったから、もう止められないよぉ~」

 

 私と沙紀の雰囲気に付いてこれないのか、穂乃果とことりは戸惑ってるような事を言ってますけど、私は気にしません。

 

「それよりも私たちも参加なの?」

 

「それをもちろんです」

 

「完全にことりたち巻き込まれたよね」

 

 こうして私たちはダンスゲームで勝負することになりました。

 

 3

 

 ダンスゲームの順番はじゃんけんで決めて、順番はことり、穂乃果、私、そして沙紀と言う順番に決まりました。

 

 ルールは前回と同じですが、沙紀が最後になりましたので、私が勝つには如何に点数を上げることが出来、沙紀にプレッシャーを与えるかが重要になります。

 

 ですがこの程度のプレッシャーなどアイドルとして活躍してた沙紀にとっては些細なものでしょう。

 

 確実に沙紀は前回の記録辺りを出して来るでしょうから。むしろ、私の方が沙紀の前回の記録を越えなければならないと言うプレッシャーがあります。

 

 勝てるかもと思っていましたが、これはかなりきつい勝負です。だからこそ勝つ意味があります。

 

「ふぅ~、終わったぁ~」

 

 ゲームを終えたことりがそう口にしてから、画面に結果を表示されるのを待っています。

 

「あっ! 前より良くなってるよ~」

 

「おぉ!! すごいよ、ことりちゃん!!」

 

「やはり前よりも上手くなってるんですね」

 

 結果が表示されて、前よりも点数が上がって喜ぶことりに私と穂乃果は喜びの声を出します。

 

 前回はことりはダンスの点数はメンバーの中では低かったですが、実際に点数を見てみると、かなり点数が上がってます。

 

「何せ私が直々にトレーニングを作ってるのよ、当然じゃない」

 

「それ自分で言うの沙紀ちゃん」

 

 ことりの結果を見て、自分でそう堂々と言う沙紀にツッコミを入れることり。確かに自分で言うのはどうかと思いますけど、それは事実ですから特に私は言いません。

 

「じゃあ次は私だね」

 

 そう言って穂乃果はゲームにお金を入れて、ゲームの前に立って、準備を始めてそれから少しすると、曲が始りましたので、遊び始めました。

 

「上手いね、穂乃果ちゃん」

 

「そうですね、前回も点数が高かったですからね」

 

 前回は沙紀を除けば、運動神経が高かった凛が一番がでしたが、穂乃果も負けずも劣らず高い点数を出していました。

 

 今はバレエをやってた絵理や色々と予測不能な希がいますけど、その二人とも良い勝負が出来ると思います。

 

 沙紀に勝つことばかり考えてましたけど、二人にも勝たなければいけないことに気づきましたが、相手にとって不足がありません。

 

「よしっ!! 終わったよ」

 

 そう言って穂乃果は結果を表示されるのを待ち私たちも後ろから見守ってると、結果はことりより高く、穂乃果もことりと同じように前回よりも結果が良くなってました。

 

「ホントだ~、前よりも良くなってる」

 

「すごいよ、穂乃果ちゃん」

 

「さあ、私に感謝しなさい」

 

「流石は沙紀ちゃん」

 

「いや、何故今沙紀に感謝する流れになるんですか」

 

 結果を見て、みんな喜んでるなか沙紀がまた変なことを言ったので、ツッコミを入れてしまいました。

 

「まあ良いわ、次は貴方よ海未」

 

「分かってますよ、それでは始めますね」

 

 私のツッコミを軽く受け流して沙紀は私に遊ぶように進めると、私はお金を入れて、準備を始めます。

 

「ファイトだよ、海未ちゃん」

 

「そもそも海未ちゃんと沙紀ちゃんが始めたんじゃあ……」

 

 二人の声援を受けて、私は曲が始まるまで心を落ち着けて、何時でも始まっても良いようします。

 

 そうして曲が始まると、私は画面に映し出されるマークに合わせて反応して体を動かし、ダンスを踊ります。

 

 前回もやっているからか、戸惑うことなく、マークに対応して体を動かして次々と点を上げてきます。所々やや反応に遅れましたが、殆んど対応すること出来ましたが、沙紀相手にこれはキツいですね。

 

 そうして曲を終え、結果を見てみると、何とか穂乃果にはギリギリ勝つことが出来ましたが、点数的には前回の沙紀の記録に少し及ばずと、予想通りなかなかキツい結果となりました。

 

「あぁ~!! 海未ちゃんに負けた~」

 

「これ、今日の最高記録だって!!」

 

 私に負けて落ち込む穂乃果と私の記録を見て、興奮してることり。でも私個人としてはもう少し点数が欲しかった所です。

 

「やるわね、流石に挑むことだけはあるわ」

 

「ありがとうございます」

 

 沙紀が私の記録を見て誉めてくれましたので、私は有り難く沙紀に言葉を受け取り沙紀の方を見ると、軽くストレッチしてました。

 

「本気でやってくれるのですね」

 

「当たり前よ、何事も常に本気でやるのが、私の流儀なのよ」

 

「嬉しい限りです」

 

 プロのアイドルがただのスクールアイドルであるに対して、本気でやるのは端から見れば、大人げないように見えますが、そういうのは関係ありません。

 

 ただ本気でやってくれるそれだけで私は十分なんです。

 

 それにこういうことに対しても本気でやる沙紀はかっこよく見えて、少しドキッとしましたが、それは秘密です。

 

 そうして沙紀が準備を始め、曲がゲームが始まりました。

 

 4

 

 帰り道、穂乃果とことりと別れた私は家が同じ方向らしい沙紀と一緒に歩いてました。

 

「楽しかったわね」

 

「そうですね」

 

 今日はずっとそう冷淡な口調で話す沙紀に私は同意します。

 

 ダンスゲームの結果、私は沙紀に負けました。

 

 当然の結果と言えばそうなのですが、今までのゲームと比べて不思議と悔しいと思いませんでした。

 

 やはりそれは沙紀が本気で勝負にやってくれたからでしょうか。

 

「それに今日で色々と分かったこともあるわ」

 

「何ですか」

 

「いえ、何でもないわ気にしないで、こっちの話だから」

 

 一体何が分かったのか、私は沙紀に聞くと、何も教えてくれませんでした。もしかしてダンスゲームを終えたあとのあの言葉でしょうか。

 

(やっぱりわたしだけだと、これが限界ね)

 

 そう沙紀はボソッと口にしてました。私にはその言葉の意味が分かりませんが、今の沙紀がアイドルを休んでる理由に絡んでくるのでしょうか。

 

 それに色々と分かったって言ってましたけど、何なんでしょうか。でもさっきはぐらされたのできっと沙紀は答えてくれないでしょう。

 

「それにしてもあなた意外と負けず嫌いなのね」

 

「うぅ……それは沙紀も同じじゃないですか」

 

「それは認めるわ」

 

 いくらお互いが負けたくないからと言って、白熱させ過ぎました。途中若干変なノリになってしまったのが、恥ずかしいです。

 

「でもこういうの久々だったから……わたしもついはしゃいでしまったわ」

 

「その口調、顔ではしゃいだと言われても説得力ありません」

 

 本当に言葉通りの意味で、今の沙紀の表情は冷たくなんと言うか楽しいのか冗談に思えてしまいます。

 

「それもよく言われたわ」

 

「そうなんですか」

 

 何となくですが、何処か懐かしそうな雰囲気が感じますが、沙紀にそう言ったのは一体誰なんでしょうか。私は少し気になってしまいました。

 

 そういえば昔の沙紀ってどんな感じなのかよく知りませんから、ただアイドルをやっていたくらいしか分からないんですよね。

 

「失礼じゃなければ、誰なのか聞いても良いですか」

 

「気になるの?」

 

「えぇまあ……」

 

 私が曖昧な感じで返事をすると、沙紀は少し考えてから、ゆっくりと口にしました。

 

「わたしの母親とバカな相方よ」

 

「お母さんと……」

 

 お母さんだと言うことはすぐに理解できましたがもう一人の方は少し誰だか理解できませんでした。

 

「もしかして、ユーリのことですか」

 

「そうよ」

 

 沙紀には一緒にユニットを組んでいたアイドルを居ると、聞いたことがありますので、その人の名前を口にすると、沙紀は頷きました。

 

「それにしても酷い言われようですね」

 

「良いのよ、ホントにバカなのよ、夏休みの宿題最終日にやるくらいの」

 

 それは流石になんとも言えません。私の身近に似たような人が居ますから。

 

「理由もホントバカみたいな理由だったのよね……」

 

 何て遠くを見ながらボソッと呟く沙紀に何か色々と察することが出来ました。

 

「その二人がよく言ってたのですか」

 

「そうね、よく言ってたし、よく勝負ふっかけて来たわ、それでどっちも面倒ってのが厄介だったわね」

 

「面倒って一人はお母さん何ですよね」

 

「面倒よ、何時もテンションが高くって、よく抱きついてくるし、変なこと思い付くし、あれを母親と呼んで良い人種なのか分からないわね」

 

 そうなんですか、なんと言うそれだけ聞くと、何時もの沙紀のように聞こえるのは気のせいでしょうか。でも親子なのですから、似るのは当然ですか。

 

「だからムカつくから、何時も母親のこと名前で呼んでたわ」

 

「だいぶ酷い理由ですね、普通怒るじゃないんですか」

 

「怒るんだったらマシよ、あれは『もう照れてるだけなのよね、ツンデレなだけなのよね』ってテンション高く言ってくるのよ」

 

「いや、それ……散々沙紀がにこ言ってることと同じなのでは……」

 

「そう? 覚えがないわ」

 

 惚けてくる辺り沙紀自信に自覚はないんでしょうか。聞いてる限りではとても似てるような感じがしますが、これで見た目も殆んど似てたら、完璧に何時もの沙紀です。

 

「そんなことは置いておいて、そんな二人に色々とやられたのよ」

 

「それは……」

 

 何時もの沙紀みたい人と、多分穂乃果みたいなタイプの人にそんなことされると、考えると、大変なことだと考えるのは容易です。

 

「でもそれは楽しそうですね」

 

「そんな感想はないんじゃない」

 

「確かに大変だと思いますけど、私も穂乃果やことり、沙紀と居て、毎日退屈しない騒がしい日々を過ごしてますから」

 

 穂乃果は思い付きでいろんなことをやって、沙紀は変なことを言ったり、やったりして、私とことりはそれに巻き込まれるそんな毎日。

 

 疲れることは多いですが、決して嫌と言うわけではないですから、私はそれを楽しいと思っているのでしょう。それはきっと沙紀も同じ。

 

 悪態は付いてるもの、なんと言うか、本当に嫌そうな感じでは無かったですから。きっとそうだと思ったのです。

 

「そうね……」

 

 沙紀は私の言葉を聞いて何処か納得したようなそんな雰囲気でそう答えました。

 

 やっぱり沙紀も同じだったみたいですね。

 

「どうやら今日はホントに色々と分かったみたいね」

 

 またボソッと沙紀は同じことを呟くと、私が帰る道とは別の道の方に進んでから、振り返りました。

 

「それじゃあわたしこっちだから、また何時か」

 

「はい、また明日です」

 

 私たちは挨拶をしてから、私と沙紀は別れました。

 

 そうして私は一人で家に帰るときにふと思いました。

 

 今日はどうしてずっとあのキャラだったのでしょうかと。

 




そんなわけで今回は海未の語りでした。彼女もずいぶん久々の語りでしたね。

次回は残り六人から誰が語りになるでしょうか。お楽しみに。

では何か感想などありましたら気軽にどうぞ。

誤字、脱字などありましらご報告していただけると有り難いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。