ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー 作:タトバリンクス
夏休み編最初は久々の彼女の語りです。
それでは夏休み編開始です。どうぞ、お楽しみください。
1
合宿を終え、夏休みに入ったある日の事、何時もようにウチは学校に来ていた。
今日ウチは午前に生徒会の仕事、午後からμ'sの練習と、やることはたくさん合って、朝から来てるんやけど、夏休みなのに運動部が練習に来てて、生徒の数が多い。
何かと夏の大会があるみたいやから、運動部の熱気が見てるだけでもすごい。
それでも運動部の人を見てると、朝から暑い中頑張ってるな、何て思うんやけど、ウチたちも午後から練習があるんやから、変わらないかって気付いたん。
暑い中練習か~、ちょっと考えるだけで憂鬱になるやん。みんなと一緒に練習するのは楽しいんやけど、それとこれは別やん。
そんな事を考えながら校舎の中に入っていくと、廊下で見覚えのある三つ編みの後ろ姿を見つける。
「委員長ちゃん、おはよう、今日も暑いね」
「希さん、おはようございます、そうですね、午後からもっと暑くなるみたいですよ」
「えっ!? それホントなん」
「ホントみたいですよ」
委員長ちゃんに声を掛けて話を始めると、あんまり聞きたくなかった事実を知って、にこっちや穂乃果ちゃんやないけど、ちょっと練習が嫌な気分になる。
「午後からの練習は休憩をこまめに入れないと、いけませんね」
「そうやね、みんなが倒れたら元も子もないからね」
いくら廃校の阻止のため、ラブライブ出場のために頑張らきゃいけない時期だけど、身体を壊したら何も出来なくなるし、その辺の体調管理は大切やからね。
「それにしてもやっぱり慣れないやけど……」
「何がですが?」
「それや、委員長ちゃんの喋り方」
「そうですか、私は何時も通りに喋っていますけど」
ずっと気になってることを指摘すると、委員長ちゃんは不思議そうな顔をする。
まあ、理由は分からなくもないんやけど、さっきからずっとウチに対して、敬語で喋ってるのは、委員長ちゃんの事よく知ってる身としては、違和感が半端ないんや。
「特に何と言うんか、その……ウチのこと、さん付けで呼ぶのも……」
「えっ? だって合宿の時にみんなで先輩禁止って、決めたじゃないですか」
「それはそうなんやけど……」
確かにみんなで決めたことなんやけど、何かこう違うやん。何時ものようにもうちょっと、スキンシップがある感じの距離感的なやつ。
「まあ、でも今は『白百合の委員長』モードやもんな」
「何言ってるんですか、常に私はこんな感じですよ」
言うやん。周りに人が居るからって、優等生みたいな雰囲気を出して、いや、実際に優等生なんやけど……ここ最近の素行を見てると、つい忘れるんやけど。
「それで来るの早いけど、今日も学園祭の仕事?」
委員長ちゃんのキャラ云々の話を続けても不毛やから、別の話題に話を変える。
「そうですね、今日は学園祭に使う備品のチェックなどを」
「大変やね、学園祭実行委員長も」
「大変ですけど、選ばれたからには、キッチリと仕事をしないといけませんから」
真面目やな。と言うより、責任感が強いって言うべき何やろうな。誰かさんと同じで。そこは委員長ちゃんの良いところ、なんやけど、それはそれでウチは委員長ちゃんのこと心配や。
こうは言ってるけど、実際殆ど夏休みなのに学校に来てるみたいやし。委員長ちゃんに負担が大きい。
ただでさえ、クラス委員にμ'sのマネージャーもやって、それに生徒会の手伝いまでやってくれてるから。
「まあ、ウチに手伝える事があったら何時でも言ってや、可愛い妹の頼みやからね」
「ちょ……いきなりそんなことは言わないでよ……」
照れてる照れてる。うんうん、委員長ちゃんはウチに対してはこうでないと。こういうときの委員長ちゃんが一番可愛いんやから。
「……ありがとう……、何かあったら相談しますね」
恥ずかしそうにお礼を言ったあと、心を落ち着かせてから、委員長モードに戻る委員長。戻る際にまだちょっと恥ずかしさが残ってて、見てるとホント面白いなぁ。
からかうと戸惑うのは、誰かさんに似てるのもあるんやけど、委員長ちゃんの場合、何処か子供っぽさがあるから余計に。でもやり過ぎると、やり返されるリスクがあるんやけど。
「それでは私はこっちですので、またお昼に」
「そうやね、またお昼に」
一緒に歩いてると、目的地が違うので、そう言ってウチたちは別れて、それぞれの部屋に向かう。
どうするかな、委員長ちゃんも忙しいし、ウチに何か出来ることないかな。
一人になってから、ウチはそんな事を考えていたけど、特に思い付かずに、そのまま生徒会室まで着くんやった。
2
「確かにそれは心配よね」
生徒会の仕事の合間に、ウチはエリチに委員長ちゃんの事を相談すると、エリチもウチと同じように、今の委員長ちゃんの状態を心配してくれた。
「練習は私や海未、真姫が居るから何とかなるし、生徒会も私たちが頑張ればいいから大丈夫だけど……」
今のμ'sにはエリチや真姫ちゃんのような経験者や、海未ちゃんのように、委員長ちゃんからトレーニングについて、色々と教えて貰ってる人が居るからフォローは出来る。
生徒会も元々委員長ちゃんお手伝いやから、積極的に参加する必要がないから、エリチの言う通り、ウチたちが頑張ればいい話や。
「問題は委員長ちゃんが素直に、ウチたちに任せてくれるかやよね」
多分、委員長ちゃんの事やから、言ったら好意は受け取ってくれるやろうけど、あの子気付いたらやってることが多いから。
「沙紀はふざけたところもあるけど、根は真面目だからね」
「ちょっと昔やったら、委員長ちゃんのこと、真面目で片付くのに、エリチも言うようになったやん」
μ'sのメンバーの中で、にこっちやウチに次いで、付き合いが長いエリチやけど、委員長ちゃんに騙されてた期間は誰よりも長かったから。
「話を逸らさないでよ、それは確かに昔だったら、真面目ってだけで片付けるけど……今は正直、真面目だった沙紀が思い出せないくらいだから……」
あっ、エリチがちょっと遠い目をしてる。いや、ウチもエリチの気持ち分からなくもないやん。委員長ちゃんのキャラを知ったときは、即倒もんやったし。
そういえばエリチは、委員長ちゃんのキャラを知ったときは、告白とかその他諸々のせいで、本当に倒れたんやっけ。
あの時はホント、大変やったな~。エリチを隣の部室に運んで寝かせて、にこっちは委員長ちゃんに制裁を入れて、気絶させたやっけ。
そのあともエリチは委員長ちゃんに、からかわれたみたいやったけど、それだけで真面目だった頃の委員長ちゃんを忘れるには、十分やけど。
「それに沙紀について相談があるなら、私よりもにこの方が良いんじゃない、私たちの中で一番沙紀と付き合いが長いでしょ」
確かに委員長ちゃんについて相談するなら、にこっちなんやけど、何というか気が引けるやよね。
ウチたちより長く委員長ちゃんと一緒に居るから、色んな事を知ってると思うやけど、結局最後はにこっちが、無理矢理委員長ちゃんを制裁して、終わりそうな気がするやよね。
主に委員長ちゃんの悪ふざけのせいで。
「そうやね、にこっちにも相談するかな」
まっ、相談するのは悪くないとは思うやから、練習中の合間に相談してみようかな。
そんな風にウチの中で決めると、扉の方からノックする音が聞こえる。
「失礼します」
そう言って扉を開けて入ってきたのは、丁度話の話題になってた委員長ちゃんやった。
「どうしたん?」
「去年の学園祭の資料が確かここにあったと思いまして」
学園祭関係で来たんやね。ここなら今までの学校行事の記録とか資料が置いてあるから。去年の学園祭の記録は何処やったっけ。
「それならそこの棚の中に入ってるわよ」
「確かにこれです、ありがとうございます絵里さん」
エリチに教えてもらった棚に移動して、中に入っているファイルを委員長ちゃんは確認すると、その通りだったので、お礼を言う。
流石はエリチやな。生徒会室に置いてある物をちゃんと把握してるなんて。
「希の言う通り何か変な気分ね、沙紀に敬語で話されると違和感しかないわ」
「そうやろ、委員長ちゃん今は他に人居ないから、何時も通りでお願いや」
「分かったよ──それにしても変って酷くない」
ウチがお願いすると、委員長ちゃんはすんなり何時も通りの喋り方に変えるけど、エリチの言葉にちょっと不満げな様子。
「ごめんなさい、でも私の中での沙紀って、今のほうが印象が強いから」
「何か絵里ちゃんにそう言われると納得いかない」
「そんなことより、去年の学園祭の資料持ち出して、何か調べもの」
さっきも似たような話をしたし、またこの話で長くなりそうやったから、ウチは話を逸らすた。
「そんなことって……お姉ちゃんに言われると何か心外だけど……うん、ちょっと去年がどんな感じか、確認したかったから」
なるほど、去年の様子を確認して今年はどうするのか、考えるつもり何やろうね。
「それに私、今年実行委員初参加だから、勝手も分からないし」
「そういえば、去年実行委員と顔合わせのときに、居なかったわよね」
エリチに言われてウチも思い出した。学園祭は実行委員主体やけど、生徒会も協力するから、その関係で一応顔合わせはするやったっけ。
それでウチとエリチは去年から生徒会で活動してるから、去年も顔合わせしたけど、委員長ちゃんは居なかったっけ。
「去年は普通ににこ先輩と学園祭楽しんでたから」
「にこっちの事やから文句言いながら、一緒に回ってそうやね」
基本的ににこっち素直じゃないから、委員長ちゃんが一緒に誘っても、すんなり回ってくれなさそうやし。
「そうでもないよ、にこ先輩から誘ってくれたし、屋台とかも奢って貰っちゃったし」
「へぇ~、意外とにこにもそういうところあるのね」
嬉しそうに話す委員長ちゃんを話を聞いて、エリチはにこっちの知らない一面を知って、感心したみたい。
普段から意地ばっかり張ってるから、そうとは思わないやけど、割りと後輩思いなんやよね。まあでも結局素直になれないから、そんな一面が見れるのが、滅多にないけど。
「そうだよ、まだまだにこ先輩の良いところがいっぱいあるから、みんなはもっと知るべきだよ」
自分が尊敬してると言うより、愛しているにこっちの事を褒められて、とても嬉しそうに喋る委員長ちゃん。
「ホント、沙紀はにこのこと、大好きなのね」
「何があっても委員長ちゃん、そこだけはぶれないんやよね」
人前で色々とキャラを演じたりすることも多い委員長ちゃんやけど、にこっちが大切って所は最初から最後まで変わらないんや。
「もちろん、二人も大好きだけどね、むしろ可愛い子はいくらでも大歓迎」
ただこういうところがあるから、本気に思えないのも否定は出来ないんやけど。
委員長ちゃんはテンションが上がったのか、ウチたちの方へ近づいて、何かしようとしてくる。
そうしてここに制裁役不在と言う最悪な事態になって、委員長ちゃんを止めるのは、苦労したんやけど、最後は自滅して終わりましたっと。
3
「はっ? そんなの無理に決まってるじゃない」
午後からμ'sの練習を始めてから、その休憩時間の合間に、エリチに言われたように、場所を変えてにこっちに委員長ちゃんの事を相談したら、そんなこと言われたんや。
「いい、あのバカは結局効率で動くんだから、何言ったって無駄よ」
「そうなんやろうか……」
委員長ちゃんは確かに色んな事を効率よくやってるけど、効率よくても彼処までの仕事量を一人で捌き切れるやろうか。
「忘れたの、あいつあれでも元トップアイドルよ、下手したら、今よりもハードスケジュールで動いたのよ」
そういえば委員長ちゃんって元アイドルやったっけ。どうもウチは委員長ちゃんが、アイドルやってたってイメージが湧かないんやよね。
何と言うか、委員長ちゃんの性格から、アイドルの星野如月やっけ、その時の性格が結び付かない──と言うか全然違うから、ホント、別人に感じるんやよね。
でも本人も認めてるから、そうなんやろうけど。なら確かににこっちの言う通り、ハードスケジュールで動いてったって納得出来るやけど……。
「それにファーストライブのときだって、あいつ
にこっちに言われて、ウチは思い出したんや。あの時は生徒会も新入生歓迎会や、クラスでも新しいクラスで色々と大変で、その上でスクールアイドルを始めた穂乃果ちゃんたちの練習を見てた。
しかもにこっちの分の練習メニューを別で考えてたし、明らかに大変やったけど、それを委員長ちゃんはやり遂げてた。
「そういえばそうやったっね、でも確か……」
「そう、最後はあいつ、効率よく穂乃果たちを試すような真似をしたのよ」
それはウチも覚えてる。その件は委員長ちゃん、すごい落ち込んで、ウチはその話を無理矢理聞いたんやから。
「あの時、ちょっとくらい休んだらみたいな事を言ったら、あいつ、やるからにはちゃんとやらないとって、言ったのよ」
新入生歓迎会のときは委員長ちゃん、生徒会の仕事をやって、当日にはウチの仕事が無くなってた。それどころか他も万全な状態にしてた。
「あいつは責任感が人一倍強いのよ、あんただって、似たような人が近くに居たんだから分かるでしょ」
似たような人……。生徒会長として義務感でやってるエリチのことやね。確かにあの時のエリチは何を言っても余裕がなくて、話を聞いてくれなかった。
話をするには委員長ちゃん曰く、生徒会長としてエリチでなく、ただのエリチを表に出す必要があるって言ってた。
その方法は委員長ちゃん自身がエリチと似てるのと、自分の経験を上手く使って、最後のほうはウチが本心をエリチにぶつけて、出すことには成功してるんやけど……。
委員長ちゃんに親友とケンカ別れした辛い記憶を思い出せるような結果になった。
「あんたの計画が本番になったときは、他に仕事もなく、あいつが他人任せざる得ないことが、多かっただけよ」
エリチの最後のほうや、よくは知らないんやけど、花陽ちゃんたちが入ったときは、委員長ちゃん殆んど動いてないんやっけ。
最近やとことりちゃんの件や、真姫ちゃんの件もそう。どれも友人関係や人付き合い関係。
そうや、忘れてた。あの子、どんなに仲良くなろうともある程度で線を引いてるんや。だから他人に踏み込まず、自分よりも仲の良い人に任せたりしてた。
そんなことを親密になりすぎて、油断してウチは完全に失念してた。
「いい、今回はファーストライブの方に状況が近いってことよ、この意味は分かるわよね」
「つまり完全に一人で効率よく動くってことやよね」
「そうよ、あいつのことだから、とっくにスケジュールは組んでるはずよ、それをあいつは完璧にこなそうとするわ」
しかも多少の誤差は承知の上でっと、にこっちは付け加える。委員長ちゃんの事やから、そのくらいは想定済み何やろうな。
「そう考えると、ウチがやろうとしてることは無駄なん?」
「無駄ね、そんなことをするんだったら何もしない方があいつのためよ」
キッパリ、ハッキリと、にこっちは答えた。
「けどやるんだったら、あいつが楽しい時間や落ち着いた時間を過ごせるようにしたほうが、リフレッシュになって良いのよ」
「つまり、何時も通りに過ごせって事やな」
何時ものように委員長ちゃんが変な事をやって、何時ものようににこっちとかに制裁を加えられるそんな時間。確かにそのときの委員長ちゃんはとても楽しそうにしてる。
「まあ、ただ今は夏休みだし……あいつの事だからちゃんと休みを入れてると思うから、そこで誘ってみるのも良いかもしれないわね」
そうや、今は夏休みや。練習も生徒会も実行委員も毎日あるわけないから、その日に委員長ちゃんを誘ってみるのも悪くない。
それに委員長ちゃん……一人暮らしやから。ならウチに出来ることは決まってるやん。
「ありがとう、にこっち……」
「別にお礼を言われることやってないけど」
ウチがお礼を言うと、にこっちは照れてそっぽを向く。フフフ、相変わらずにこっちは素直じゃないやから。
「そういえばにこっちは、何か委員長ちゃんと遊ぶ約束とかしてるの」
何だかんだにこっちも委員長ちゃんの事考えてるみたいやから、多分誘ってるとは思うんやけど。
「そうね、少し前から気になってたアイドルのライブに花陽と一緒に誘ってるのよ、チケットももう取ってあるわ」
「ふ~ん、にこっちらしいけど、元アイドルにアイドルのライブに連れていくって、どういう神経してるんやん」
「べ、別に良いでしょ、これしか思い付かなかったのよ、それに結構一緒に行ってるわよ」
そうなん、それは知らなかった。ってやっぱりにこっちは委員長ちゃんの事大好きなんやないの。本人は認めたくないみたいやけど。
「なかなかあいつと一緒に行くと面白いわよ、ライブを見ただけで、誰が売れるかピタリと当てるのよ」
「へぇ~、それはすごいやん」
確かにそれは面白いと思うけど、流石は元アイドルって事なんやろうか。
「それにライブに連れていくのが、あいつのためになると思うのよ」
「それはどういう意味や」
「気になくて良いわ、にこが勝手に思ってるだけだから……ほら、そろそろ練習に戻るわよ」
そう言ってにこっちは練習に戻っていった。ウチはにこっちが言ってたことが気になるけど、にこっちのあとに続いて戻る。
多分、にこっちにはにこっちの考えがあるんやろ。なら、ウチはウチでやれることをやるだけや。
取り敢えず委員長ちゃんを何時ものように、家にお泊まりするように誘ってみるかな。それがウチにやれることやし。
そんなことを思いながら、ウチは練習に戻るのだった。
しかし、この夏休みににこっち以外にも何人かのメンバーが委員長ちゃんに対して、偶然にも動きがあるなんて思いもしなかった。
そんなわけで、久々の希の語りでした。
今回の夏休み編は沙紀に関わるμ'sメンバー視点で基本的に一話完結のお話をやっていこうと思ってます。
次回は一体誰になることやら、その辺を含めてお楽しみに。
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