ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー 作:タトバリンクス
また何時ものように彼女がやらかしてくれました。
では、お楽しみください。
1
「にこお姉ちゃん。おはよう」
私が何時ものように朝──アイドル研究部の部室にやって来ると私よりも先に来ていた
「おはよう、沙紀。朝からテンション高いわね」
「当たり前じゃない。朝からにこお姉ちゃんに会えるんだから元気にならずにはいられないよ」
にこやかな顔で答える沙紀。今回のキャラは前二つと比べると、まだ可愛らしい方だから別段気にするつもりはないわ。
「それで、昨日はどうだったの。何か進展はあった?」
「ははは、それがね、結局忙しくて何も進まなかったの」
それから昨日の生徒会の活動ついて聞かされたわ。運の悪いことに生徒会の通常の業務が大量に送られて、更に部活の申請してきた人が来て(何の部活かは言ってないけど)それを生徒会長が追い返して一日が終わったみたい。
「何それ、意味ないじゃないの」
正直な感想を口にすることしか出来なかったわ。せっかく、沙紀を貸したのに何も進んでないなら、私の練習を手伝って貰った方がよっぽど有意義じゃないの。
「そんなことないよ。昨日、希お姉ちゃんの家に泊めてもらえたから凄く楽しかったよ」
「いや、何をどうしたら希の家に泊まることになるのよ、ホント、あんた生徒会で何してきたのよ」
「え~と、希お姉ちゃんともっと仲良くなるため?」
「廃校を阻止するためでしょ!! 大事なことなんで忘れてるのよ」
そもそもそのために沙紀を貸しただから、決して希と仲良くなるために貸したわけでないのよ。それに沙紀と希がこれ以上仲良くなると、二人掛りで私を弄る確率が上がるじゃない。
「希お姉ちゃんに凄く甘えてきたから、つい忘れちゃった。テヘッ」
「テヘッ、じゃないわよ。この年中お花畑が~!!」
可愛くはにかむ沙紀についイラッとして、沙紀の元へ詰め寄り彼女の制服を掴んでグラグラと沙紀の体を揺らす。
「にこお姉ちゃん。制服引っ張らないで伸びちゃうからそれに痛いから。助けて~希お姉ちゃ~ん!!」
「バカ止めなさいよ。本当に希が来るでしょう」
「呼んだ?」
「ホントに来た!?」
不吉な名を叫んだ沙紀を何とか捕まえて抑えようとするとガラッと、部室を開けてタイミング良く現れたスピリチュアル悪魔。
「希お姉ちゃん!! 助けて~にこお姉ちゃんが苛めるの~」
しまった。私は驚きのあまり沙紀を逃がしてしまい沙紀はそのまま希の方に泣き付いて行った。
「よしよし、可哀想な委員長ちゃん。ウチが慰めてあげるからなぁ」
希に頭を撫でられる沙紀。その姿は微笑ましい限りだけど、微かに見える沙紀の顔をよく見ると凄くにやついているのが見えた。
こいつ……どさくさに紛れて希の身体を堪能しているわね。私はそんな沙紀に若干どころかかなり引いた。
「何やにこっち。ウチの可愛い妹を苛めるなんてあんまりやない」
「ちょっと待ちなさいよ。何時からあんたたちは姉妹になっているのよ!!」
沙紀の奇行に気付いてない哀れな希は可哀想だと思ったけど、それよりも希の台詞の中に変な言葉が入っていたことを聞き逃せなかったわ。
「決まってるやん。昨日、委員長ちゃんが泊まりに来たとき姉妹の契りを交わしたんやよね~。委員長ちゃん」
「そうだよ希お姉ちゃん言う通りだよ」
何言っているのと言いたげな目で私を見る希。その目から感じるのはまるで真実を言っているのか如く真っ直ぐな目だった。
ホント、どうなってるのあんたたち。昨日の私たちみたいに今度は私を嵌めようってわけ。上等よ、やってやろうじゃない。
覚悟を決めた私の行動は早かったわ。沙紀と関わるようになってからセクハラを幾度なくやられ、そのたびに制裁を与える日々。
その結果、悲しいことにアイドルとして全く役に立つことない制裁スキルが上がってしまったのよね。
だが、今はそんなことを悔やむ気持ちが一切なかったわ。有るのはただ純粋にこのバカどもを制裁できると言う高揚感のみ。
ただ一つ問題があるなら希の幸運の高さ。彼女の運の高さは異常なくらい高いわ。
例を挙げるならおみくじで常に大吉を引き当てたり、商店街の福引きで一等を当てたり、適当に買った当たり付きのお菓子が全部当たりだったりと、彼女はまるで世界にでも愛せれてるかのように幸運なのよ。
逆に沙紀は全く良いほど運がないのよね。
沙紀の場合、別の意味で化け物だけど、基本的に沙紀は私の前では隙だらけ。まあそれだけ信用されているということなんだけど、そのため沙紀はそれほど脅威ではないわ。
そうなればこの二人に制裁を加えるには沙紀を使って間接的に希に制裁を与えなければならないわ。下手に希から狙えば、彼女の幸運によって私のみが不幸な目に会うのは明らかよ。
幸い沙紀が希にくっついたままだから、沙紀の体勢を崩せば希も巻き込まれて倒れることになる。沙紀が可愛い女の子と顔と顔が触れそうな距離で倒れている。そんな状況で沙紀が取る行動はただ一つ。
自身の欲望に身を任せようする。そうなれば、私が手を下さずとも希を制裁が出来るわ。沙紀は完全にご褒美だけど……。多分、そのあとに沙紀は勝手に自爆してくれる……はず。
完璧な計画ね。流石は私と言うべきかしら。
「何やにこっち。何か探し物? 手伝おうか」
「いい。すぐに見つかるから」
もと居た場所から移動した私に気になったのかそう質問した希にそう答えた。もちろん、探し物があるなんてなんて言うのは真っ赤な嘘。入り口でイチャイチャしている二人に怪しまれず近付くため口実。
「にこお姉ちゃんの身長ですぐ見つかるかな。私も手伝う!!」
若干、沙紀にイラッとするが(というか何時までそのキャラを続けるのか疑問はあるけど)ここはぐっと我慢して少しずつ気付かないように彼女たちに近付く。
そうして距離を少しずつ縮めて私の脚の長さが沙紀に届くくらいの距離のところで脚に力を込めて沙紀の脚を払って倒れさせようとするが──
「ほな、そろそろ気がすんだやろ」
「うん!! ありがとう希お姉ちゃん」
タイミングの悪いことに丁度希が沙紀から離れてしまったわ。
「にこお姉ちゃん? 何を……きゃぁぁ!?」
「しま……、きゃぁぁ!?」
脚を止めようにも既に遅く沙紀だけが倒れそうになるがたまたま沙紀は倒れる瞬間に私を掴んでしまう。その結果、私を巻き込んで二人で床に倒れてしまった。
床に倒れてしまった際に痛みで目を開けられず周りを確認できない。幸いなことに勢い余って脚を棚にぶつけただけで、机や椅子にぶつかることなく倒れただけなので大怪我はしていない。
ただ棚から小物やアイドルグッズが床に若干散らばってしまい中には限定品もあるから、安全に立ち上がれるかを確認しないと、後で後悔する羽目になるので手探りで物が落ちてないか確認する。
とりあえず手当たり次第に手探りで確認するとムミュと柔らかくて弾力のある感触が手に触れた。
初めはボールかと思ったけどこの部室にボールなんて無かったはずそれに妙に弾力がある。とりあえず、触って何かを確かめることにした。
「ひゃうぅ!!」
何かを触ると何故か沙紀の変な声が聞こえて私は何か嫌な予感を感じ恐る恐る目を開けると、そこには顔を赤くした沙紀が私を見つめていた。その沙紀の表情を見て私は震えが止まらなかったわ。
そして、ゆっくりと自分の手を見るとその手には沙紀の胸を掴んでいた私の手が見えた。
「違うわよ沙紀!! これは事故なの」
「にこお姉ちゃん……。私、嬉しいよ。やっと私のことを求めてくれたんだね」
慌てて弁解しようにも既に沙紀のスイッチが入っていて訳の分からないことを言い出しそのまま私が逃げないように一瞬で抱きついてきた。
「にこっち朝から大胆や」
「希うるさいわよ。事故だと言ってるでしょ。それより助けなさいよ!!」
「えぇ~、だってにこっち自分から委員長ちゃんを押し倒したんや。つまりそういうことやろ」
近くで見ていた希は余計な茶々を入れるだけで助ける気が微塵もない。確かにこれは私の自業自得だけどここ学校であんたは生徒会副会長でしょ。なら、この不純行為を早く止めなさいよ。
「ほな、ウチはお邪魔やしそろそろ戻ろうかな。ごゆっくり~」
私の心の叫びは希には届かずニヤニヤした顔しながら部室を出ていった。あの顔、明らかに事故だと分かっていて面白そうだから見逃したのが丸見えだった。
「これで希お姉ちゃんも居ないから二人きりだね。にこお姉ちゃん」
「だから事故なのよ。アクシデント。偶然。たまたま運悪く」
「ふふふ、初めてだからって緊張しているんだね。そんなにこお姉ちゃんも可愛い。心配しないで私がリードしてあ・げ・る・か・ら」
沙紀の口調はまだ妹キャラだけど顔が色ぽっく見えて私が男だったらきっと理性が吹っ飛んでしまいそうなそんな風に思うくらい私は沙紀の顔に釘付けにされた。
「ちょ……、顔が近い近い。何で顔を近付けてるのよ」
「勿論、キスするためだよ。それとも接吻って言った方がいい?」
それ言い方が違うだけで何も変わってないわよ。そんな突っ込みを心の中でするけど意味はなく、確実に沙紀の唇が私の唇に近づいてくる。
何とか抜け出そうとするけど、沙紀がガッチリと私の身体を固定しているので、手も足の動かせず制裁を加える事が出来ない。
あっ、これダメだわ。もう詰んだわ。私は沙紀から逃げ出す事が出来ないし、希は裏切っていなくなっている。
それに他に助けを求めようとも朝が早いから生徒も少ない。そもそも近くにまともに活動してある部活はない。この状況から助かる確率は限りなく0。
「沙紀……」
「何、にこお姉ちゃん……」
顔の距離が残り僅かなところで沙紀を呼ぶと、少し不思議そうだけど、何処か色っぽい顔で顔が近付くのを止めた。
「私……女の子とそういうことするの初めてだから凄く怖いけど、そんな私としていいの?」
「大丈夫だよ。普通、同姓同士ですること自体おかしいから怖いのは当たり前だよ」
初めてだから怖いと答えると、沙紀は自分がおかしいのが理解した上で私を安心させるため優しい声でそう答えた。
「だから、にこお姉ちゃんが気持ち良くなるためしっかりリードするから安心して私に身を任せて」
「分かったわ。貴方に全部任せるわ」
ここまで来たらなるようになれ見たいな自棄になり、全てを沙紀に任せるため身体の力を抜く。
後輩に全てを委ねるなんてカッコ悪いけど沙紀ならそんな私も受け入れてくれる。そんな気持ちが心の中に生まれていた。
そうして再び沙紀の顔が少しずつ近づいてくる。柔らかくて少しピンク色をした沙紀の唇。
それが私の唇と重なるなんて思うと少し恥ずかしくなるし、初めてのキスが女の子なんて一生忘れられないけど、きっといい思い出になるじゃないかななんて考えている自分がいる。
そんなことを考えてると沙紀もう少しで私の唇触れそうな距離まで近づいていた。その時、私の近くで何か落ちたような気がするけど、まあいっか。
ゆっくり、目を閉じてその時が来るのをじっと待つ。だけど、いくら待っても沙紀の唇が私の唇に触れる感触がしない。
不思議に思った私はそっと目を開けると沙紀は私の方を見ていなく私の少し横を見ていた。しかも、沙紀の顔は先程までの色ぽっさなく、目の焦点が妙にあってなく、汗も凄く掻いており身体が異常に震えていた。
明らかに沙紀の様子がおかしいためただ事ではないと何とか顔を少し動かし目線を沙紀が見てる方に移動させるとそこには…………黒光りするやつがいた。しかも、私のすぐ近くに。
「きゃぁぁ~~!!」
流石に近くにやつがいるなかそういう行為をするほど精神が図太くなく私は思わず叫んでしまった。叫んだところで沙紀にガッチリと身体を固定されているので逃げられない。
「沙紀!! 早く退きなさいよ!!」
何とか沙紀に退いてもらおうと呼び掛けると沙紀はあの状態で気絶していた。そういえば、この子。虫は苦手だったわね。
「はっ!! にこ先輩? 何かありましたか……!?」
そして、私の呼び掛けで何とか意識を取り戻す(ショック余り口調が元に戻ってる)と再び沙紀の目線がやつの方に向く。
「きゃぁぁ!? テラフォ…………」
やつに気付いた沙紀は恐怖の余り何か変なことを言いながら立ち上がり、私を置いてその場から離れようとするけど、さっき私が散らかした小物で踏んづけて、そのまま身体のバランスを崩して壁に激突して気絶した。
この時の沙紀には私に対する忠誠心や委員長としての威厳が全く無かった。
沙紀が離れたことでやっと身体の自由を手に入れた私も沙紀の二の舞にならぬように素早くその場を離れようとする。流石に騒ぎすぎたため奴も移動して私も万事休すかと思って奴の方を見るとやつは一歩も動いてなかった。
疑問に思った私は奴をよく見るとあることに気付いたわ。
「何これ、偽物じゃないの」
小学生とかが誰かを驚かす際に使われる奴の偽物のおもちゃ。偽物と分かると実際に触って確かめて見るとゴム見たいに柔らかい。
そして、奴の偽物を触ると今までの事がバカらしくなってゆっくりと立ち上がり部室を見渡すと、床に散らばった小物とアイドルグッズ。そして、気絶してる馬鹿が一人。
「ハハハ、一体私は何をしてたのかしら」
この現状を見てみると笑いしか出てこない。実際、馬鹿みたいなことしかしていないのだから。だが、一つ疑問が残る。この私の手に握ってる奴の偽物は誰のか。まあ、誰なのか大体分かっているのだけど。
「終わった? 何や……これ?」
すると、また、タイミング良く希が戻ってきて、この惨状に少し驚くが直ぐ様沙紀の方に向かって沙紀を安全なところに移動させていた。
「希、これあんたのじゃないの」
「あぁ、これこの前学校で見つけて委員長ちゃんを驚かそうとここに隠しとったやつや。忘れてた」
私はやつの偽物を希に見せると案の定希の物だった。しかもその反応から完全に忘れていたみたい。
結果的に希に制裁を与えようとした結果希に助けられたことになってしまった。やっぱり、こいつには敵わないわ。
この騒動で私が得た教訓は三つ。
一つ目は希に一人で害を与えないようにすること。自分に全部返ってくるため。
二つ目に沙紀と絶対一緒に寝ないこと。今日は何とかなったけど、次はこうなるとは限らない。確実に次は初めてを奪われるから。
三つ目に沙紀が暴走したら虫を用意しておくこと。これで沙紀は平常心が保てなくなるから隙が出来る。
その三つを踏まえたうえで私は奴の偽物をポケットにいれた。
2
「それで結局、あんた何しに来たの」
散らかってしまった部室を片付けながら、希がここに来た理由を聞く。
散々ふざけていて忘れていたけど、希がわざわざ朝早くからアイドル研究部に来るなんて珍しい。いつもは生徒会の仕事があるはずだから、そっちに行くはず。だから私か沙紀に何か用があったはずよね。
「ん? 委員長ちゃんに報告したいことが有ったけど……今、こんな状態やし」
そう言って沙紀の方を見ると椅子の上で横になって、それほど怪我もなく気絶してる。どうして保健室に運ばないのかって? これを保健室まで運んでいくと騒ぎになるからよ。
私も何時も忘れてるけど、沙紀はこの学校でかなり有名人。学校には沙紀のファンみたいな人が居るみたいで、その中でもかなり心酔している生徒が居るとか居ないとか。
これも沙紀の噂の一つ。実際はどうか知らないけど、念のため沙紀をここで放置することにしているの。
「少し待ってなさいよ。どうせ、沙紀のことなんだからすぐに目を覚ますわよ」
沙紀はやたらと身体は頑丈だから、数分放置したら、勝手に目を覚ましてテンションもまともに戻っているはず。多分……きっと……。
「なら、そうさせて貰うで」
希は空いている椅子に座って、沙紀の回復を待つことにした。私も片付け終わったので、何時もの定位置に座る。運が良いことに片付けていたアイドルグッズは壊れてなかったから凄く安心したわ。
定位置に座ると、何時ものようにネットでアイドルの情報でも集めようかなと思ったけど、希が居るので止めておくことにした。
「別にウチのこと気にせんでも良いのに」
「ふん、別に気にしてなんかないわよ。今はそんな気分じゃないだけよ」
「にこっちは素直じゃないんやから」
「そんなんじゃないわよ!!」
別に素直じゃないとかそんなじゃない。ただ……人が来てるのに少しは持て成す気持ちを持ってないと、沙紀に怒られるのよ。あの子、その辺はきっちりしてるから。
まあ、お茶を出すのは沙紀の仕事だから目覚めたら勝手に淹れてくれるでしょう(というかお茶とかお茶請けの場所私知らないし)。私はせめて希の話し相手にならないといけないから、こうして希と話すことにしてるのよ。
「それにしてもや。にこっちとこんなに仲良くなるなんて少し前やと考えられないなあ」
「確かにそうね。あんたとは沙紀が来るまで関わったこと無かったわね」
今ではこんな感じに話したりしているけど、去年の秋か冬くらいまではお互いに学校ですれ違う程度で、あんまり話したことがなかったのよね。
「あの頃のにこっちは友達が全然居なくて、捨てられた子犬みたいに寂しそうな目をしてたやん」
「誰が捨てられた子犬みたいよ。それに友達が居ないってどういう意味よ。にこがぼっちって言いたいわけ」
「流石にそこまでは言うつもりはないやん。ただ、にこっちはあのときから委員長ちゃん来るまであまり人と関わろうとしなかったやん」
そう言われると、否定は出来ないわね。希の言う通り、沙紀がここに訪れるまでは、一人でここへ来てはアイドルについて調べるだけ調べて帰る毎日を繰り返してた。
「だから、びっくりしたんや。誰とも関わろうとしなかったにこっちと仲良くなった子が居るのを見てな」
「そして沙紀のことを調べて、あいつのハチャメチャ振りを知っちゃった訳ね」
あの事件は相当酷いものだった。まさか私の写真を盗撮してたなんて……それどころか可愛い女の子の写真を大量に部室に隠してあるなんて思ってもみなかったわ。
そして、それがバレた沙紀は写真を持って部室から逃走。そのあと、丁度沙紀のことを調べていた希にぶつかってしまい、偶々落ちたその写真を見られて沙紀の本性を知ってしまった。
「まあ、あのときは流石にウチじゃなくてもびっくりするやん。正直、びっくりを通り越してたんやけど」
本人の言うとおりびっくりどころか、完全に頭が追い付いてなかったみたいだったような……。
まあ、そのあと何だかんだあって、結局、希の胡散臭いスピリチュアルパワーでいつの間にか沙紀は捕まえることに成功。そして、沙紀の持っていた全ての写真は私たちの手で、誰にも知られず灰にしてやったわ。
ちなみにそのときの沙紀の顔はまるでこの世の地獄を見ているかのようなスゴイ顔をしていたわ。
「でも知れて良かったと思うんや。委員長ちゃんはにこっちに変なことはするけど、絶対に悲しませることはしないって。それににこっちとも仲良くなれたし」
「そうね。あんたとは仲良くなれたどうかは知らないけど、少なくとも沙紀は馬鹿だけど良くやってくれてるわ」
沙紀が来てから随分賑やかで楽しい毎日が送られてるような気がする。
スクールアイドルとしての活動はまだ出来てないけど、その準備だって真剣に手伝ってくれる。かなり変なちょっかいは掛けてくるけど、何だかんだで私を笑顔にしちゃったりして色々とやってくれてる。
「やっぱり、にこっちはここでも素直じゃないやね。素直に感謝してるっていえば良いのに……委員長ちゃん凄く喜ぶと思うやけど」
「良いのよ。変に褒めるとあいつ調子に乗ってまた今日みたいなことされても困るし。こういう関係が丁度良いのよ……私たちは……」
「ふぅん、成る程なぁ。にこっちたちがそれでいいんだったらウチは口出しするのは無粋やな」
希は私たちの関係にとりあえず納得したみたいで、凄く満足した顔して、この話を切り上げる。
「そう言えば、あんた沙紀に用事があるって言ってたけど、それってにこが聞いて良いことなの。生徒会の話でしょ」
私はさっき言ってた希の用事を思い出して、そっちの話題に切り替える。ただそれを一生徒である私が聞いては不味いかなって思うから一応確認した。
「う~ん……どうかな……」
希は何となく複雑そうな顔をして考えているのが分かる。どうやらグレーゾーンな話みたい。
「なら、沙紀が起きたらにこはここから出るべきね」
「いや、生徒会関係の話じゃないからそこまでしてもらう必要ないやけど。ただ……」
私は気を利かせて部室から出ようとすると、希はそこまでする必要がないと言うけど、やっぱり話しにくいそうな顔をしてる。
生徒会の話じゃない? けど、話しにくい話って一体何なのかしら。気になりはするけど、本人が話しにくそうな感じがするから、私は聞かないほうがいいかもしれない。
「良いじゃない希お姉ちゃん。にこ先輩に話しても別に問題があるわけでもないし」
『!!』
唐突に第三者の声が聞こえて驚いた私たちは声のした方を見る。
「うぅ、少し頭と背中が痛い」
沙紀が身体を伸ばしながら少し痛いと言うだけで、いつの間にか目を覚まして何事も無かったように普通にしていた。
いや、背中に関しては椅子に寝かしておいたから少し痛いのは分かるけど、流石に頭は少し痛いってじゃすまない気がするけど。
結構凄い勢いで壁に頭激突したみたいだけどそれでも少し痛いってだけで済むのは頑丈過ぎない。もしかして沙紀の頭は石頭なの。
「それであんた、何時から起きていたのよ」
まあ、それは何時ものことだから置いといて、問題と言うほどでもないけど、こいつが何時から起きていたか聞いとかないといけない。
さっきの沙紀の話を聞かれてると流石に恥ずかしいし、それにこいつは気絶した振りをしていた可能性も無くはないから。
「にこ先輩が希お姉ちゃんに生徒会の話を聞いたくらいです」
どうやらさっき目を覚ましていたみたいね。口調もテンションもまともに戻っているからさっきまでの話は本当に聞いてないみたい。聞いていたらテンションがウザいほど高くなってはずだから大丈夫ね。
口調もテンションもまともになのに、明らかに一部おかしいところはあるけど、今はそれを追求するつもりはないわ。追求すると、また話が逸れそうだし。
「それであんたたちは何するつもり。あんたたちのことだから変なこと企んでるじゃないの」
この二人が手を組んで何かしようとすると、大抵はろくなことにならない。けど、今回は何時もよりは真面目な雰囲気。
「委員会ちゃん本当に話すの? にこっちに話すとあの子たちの邪魔するやない」
「大丈夫だよ。にこ先輩なら分かってくれるよ。だって、にこ先輩には悪い話じゃないもの」
こそこそと話す二人。あの子たち? 私に悪い話じゃない? よくは分からないけど、本当に変なことをするわけじゃあ無さそう。
「委員会ちゃんがそこまで言うなら止めないやけど」
私がそうこう考えているうちに、希は沙紀に説得されて私に説明するのを許可した。
「すいません。待たせてしまってにこ先輩。実は……」
そう言って沙紀は私にこれからのことを話始めた。
3
「……と言うわけです」
私は昨日の生徒会で起きた出来事を説明してくれた。
「何よそれ……。生徒会来た二年生たちは思い付きでスクールアイドルをやろうとしてるの。ふざけてるじゃないの」
沙紀から説明を終えて最初に出た感想はこれだった。他にも言うべきことがあるのだけど、私にとって二年が取った行動はアイドルを馬鹿にしているようにしか思えなかったから。
私とってアイドルはみんなに笑顔を届け、楽しい時間を与えるのが仕事だと思っている。会場に来てくれた人たちに楽しい夢の一時を与えて来てくれたファンみんなを笑顔して楽しんでもらう。それがアイドルに一番必要なものだと思っている。
それなのに思い付きでアイドルを始めるなんてふざけるじゃないわよ。そんな中途半端な気持ちで誰かを笑顔に何かに出来るはずないじゃない。だからこそ最初にそんな感想が出た。
「にこ先輩ならそう言うと思ってました」
どうやら沙紀は私が最初に何を言うのか分かっていたみたい。それはそうね、何だかんだで一緒に居るから私がアイドルにどれだけ拘りがあるのは、知っているのだから。
「分かっていて話すって言うのは、あんたたちは何か考えがあるつもり。言っとくけどそんな連中連れてきてもここに入れるつもりはないから」
「それは百も承知です。ですから、私は彼女たちがどれだけ本気なのか見極める為に彼女たちのお手伝いをしようと考えてます」
「でも、昨日生徒会で生徒会長に言われてるでしょ。正直、もう諦めてるじゃないの」
あの生徒会長のことだから凄くキツイ言葉で彼女たちを追い返したんでしょうね。上級生しかも生徒会長にそんなことを言われれば、誰だって止めとこうと普通は考えるじゃない。
「それは問題ないんよ。今日、高坂さんたち朝早くから講堂の使用許可を取りに生徒会に来たんや。ウチはそれを委員会ちゃんに伝えようと思って来たんやけどね」
今まで黙っていた希が口を開てそう言った。講堂を使うと言うことは、アイドル活動の本業であるライブをするつもりがあると言うこと。つまり、彼女たちはスクールアイドル活動を続ける意志があることが分かる。
「やっぱり、彼女たちは諦めてなかったんだ……。ちなみに講堂の使用許可した日は何時?」
希の知らせを聞いて、沙紀は少し嬉しそうな顔をしながら、希から何時ライブをやるのかを聞く。ライブをするにも結成したばかりだから、そんなに早くはないだろうけど。
「高坂さんたち講堂が使うのは新入生歓迎会の日。つまり、あと一ヶ月もないや」
『えっ?』
私の予想よりも早く、どうやら沙紀もすぐにやるとは思っていなかったみたいで、一緒に驚いてしまう。
「まあ、希お姉ちゃんの言ったとおり高坂さんたちはまだ諦めていません。けど、諦めなかったからと言って、ライブが上手くいくとも限りませんから」
「そうよ。現実はそんなに甘くない。ましてや結成したばかりのアイドルユニットのライブに人がそこまで集まるとは思えないし」
確かに最初のライブの時期は悪くはないわ。新入生歓迎会はこの学校でスクールアイドル活動をしているアピールができるから。ただ一ヶ月では期間があまりにも短すぎるわ。
作詞、作曲をオリジナルの物を自分たちでやるならもう始めなければ、振り付けや衣装のイメージが難しい。ましてや彼女たちに作詞や作曲の出来る人がいなければ、余計に時間が掛かるわ。更にその他にもやることは多い。
それだけライブを一つやるにも色々と準備は必要なのよ。それを一ヶ月足らずでやろうとするなら完成度はかなり低くなるわ。
「だから、私は見てみたいですよ。彼女たちが最初のライブで結果はどうあれ、どんな答えを出して、その先に踏み出すかどうかを」
そう言った沙紀の瞳は真剣なものだった。
沙紀にとってライブが成功するかどうかは問題ではない。成功するならそれだけ彼女たちは実力があると言うことになる。失敗したにしても続ける覚悟あるならまだ伸びる可能性がある。
結論を言えば沙紀は彼女たちの最初のライブではそこまで成功を求めていない。彼女は歩き続けるかどうかが重要なのだから。
「分かったわ沙紀。あなたの好きにしなさい」
だから、私は折れることにした。珍しく本気になった沙紀を無理矢理止めるほど、私は鬼ではない。
「良いんですか?」
「好きにしろって言ってるでしょ。でも、やるからには本気でやりなさい。中途半端は許さないだから」
聞き返して来る沙紀に厳しい言葉で返す。あぁ~、何でこう何時も素直に頑張れとか言えないよ。
「ありがとうございます。にこ先輩の言う通り中途半端にはしませんよ。やるからには全力です」
相変わらず素直になれない自分に腹は立つけど、それでも沙紀は私が応援してくれていると理解してくれるのは嬉しくはなる。だけど、やっぱり素直に応援の言葉を掛けたいと余計に思ってしまう。
「それで私は何をすれば良いの?」
何かすることがあると言われても、本気かどうか分からない彼女たちに何か出来ることはないわ。仮に合ったとしてもきっと余計なことしかしなさそうだし。
「ライブが終わってまではひとまずは何時も通り練習に励んでください」
つまり何時も通りにしていろと言うことね。その方が余計なことをせずにいられそうだから楽だし、安心だわ。
「彼女たちが本気ならいずれ部員を五人以上揃えてここに来るはずですから。その時はにこ先輩がこの部の部長として彼女たちがスクールアイドルに向いているかどうか判断してください」
結局、私の仕事は大分先みたい。部員を五人以上集めてもきっとあの生徒会長ならこのアイドル研究部が存在してるから認められないと言うわ。
だから既に部長として成立しているこの部と相談しにやって来ると、その時に私が判断しろとそう言うことね。
「分かったわ。とりあえずはあんたたちの考えに乗ってあげる。ただし、私が必ず認めるとは限らないわよ」
「なら、決まりやな。にこっちも協力してくれって一応は言ってくれたからこれで一安心や」
「それじゃあ、私は早速高坂さんたちと接触することにしますね」
今後の方針は固まり一先ずはこれで終わりというべきかしら。沙紀は既に次の行動を決めているけど、まあ何時ものことだから気にしないわ。
正直、沙紀をここまで本気にさせた二年生たちに若干焼きもちを焼いている。彼女は基本誰とも親しく見えるが実はそうでもない。彼女は他人とは一線を引いている。それは親しい希だって例外ではない。
いや、違う。私は沙紀の今回の行動の意図に気づいてしまった。
沙紀は高坂さんたちに興味を持って関わろうとはしていない。だってそれは絶対に有り得ないことだから。
他人とは一線引いている沙紀が誰かと関わろうとする理由が一つだけある。それを果たすためなら沙紀は自分のプライドだって捨ててしまう。
それだけ彼女にはどんなことよりも優先してすることがあるのだから。その為だけに二年生たちに近づくことだって十分有り得るわ。だって、沙紀は目的のためなら手段を選ばない。
そんな彼女に酷いことをさせてる原動力。理由は──それは私の為だ。
何故なら沙紀にはそれしか無いから。それだけしか彼女の心には無いのだから。
やっぱり、私は早くあの子に恩返しをしなければならない。私が卒業するまでもうあと一年しかない。だから、それまでに私が恩返しをしなければ沙紀を救えない。
だから、今回二年生たちに掛けてみるのも手かもしれない。私は沙紀を救わなければならない。彼女たちが本気ならきっと私は彼女たちを受け入れるだろう。
お願いだから、彼女たちが本気でありますように。
沙紀に本当の笑顔でいられる日々が戻りますように。
この場に居ない知らない人にすがるなんて馬鹿みたいだけどそれが今の私の願いだから。
「いきなり私の顔を見てどうしましたかにこ先輩?」
考え事してたら無意識のうちに沙紀の顔を見ていたみたい。
「いや、何でもないわ。それよりも練習の準備をしないと」
そう言って私は今日も自分のため、そして沙紀のために練習の準備を始めた。
「頑張ってください」
沙紀は何時ものよう笑顔で私を応援した。
如何だったでしょうか。
次回からはまた今までとは別のキャラでやっていきたいと思っています。
誰なのかは次回のお楽しみというところで今回も読んでいただきありがとうございした。
誤字、脱字等がありましたらご報告ください。
では、また次回もお楽しみに。