ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー 作:タトバリンクス
ちょっと最近、リアルでやることが多くて、何時もより短めです。
そんなわけでお楽しみください。
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結局、ことりちゃんにあれこれ聞いただけで日も傾き、時間も時間なので、今日はこれで解散し、それぞれ自宅へ帰って行った。
「はぁ~、まさかこんな近くにミナリンスキー本人が居るなんて……」
帰り道に、一緒に帰っていたにこ先輩が、そんな愚痴を溢してた。
まあ高値で買ったと思われるサインが、実は後輩のサインだったと考えると、愚痴を溢しても仕方ないと思う。
「元気出してくださいよ、逆に後輩が有名人でラッキーって思えば良いんですよ」
「その場合、あんたも条件に当てはまるんだけど……」
「ならラッキーが二倍でお得ですね──ちなみに私は、にこ先輩と出会えてウルトラハッピーです」
何かこうウルトラハッピー何て言うと、何故か朝の女の子向けアニメのキャラが過ったけど、気にしない。
「はぁ~、さっきの言葉にツッコミどころはあったけど、面倒くさいから無視するけど……そうね、お得な気分ね」
そう言ってにこ先輩は少し元気が出たみたい。私のにこ先輩への思いはスルーされたけど、にこ先輩が元気になったのなら問題なし。
「それにしてもことりスゴいわね、話聞いた限りじゃあ、一ヶ月くらいでカリスマメイド、なんて呼ばれるなんてね」
確かにそうかも。ことりちゃんがメイドのバイトを始めたのが、μ's結成時──四月のとき。
にこ先輩がミナリンスキーのサインを買ったのが、大体翌月の五月だったから、一ヶ月足らずで伝説の称号を手に入れたことになる。
たまたまスカウトされて、それをきっかけに、自分を変えたいから始めたって言ってたけど、そう考えると、私たちはとんでもない人材を、初めからメンバーに入れていたのかもしれない。
「私のソウルフレンド、レベル高過ぎ……」
「いや、あんたも十分レベル高いわよ」
私がことりちゃんに驚愕すると、にこ先輩にツッコミを入れられた。
「でも……ことり本人はそんな自分を凄くないなって思ってるのよね」
にこ先輩は、ことりちゃんがバイトを始めた理由を思い出したのか、そんなことを口にした。
「私はことりちゃんの悩み……分かるんですよね」
「あんたが──いや、そうね……あんたも常日頃から同じこと言ってたわね」
私がことりちゃんの悩みが分かると言うと、にこ先輩は少し意外そうな顔をしたけど、すぐに理解できたような表情をした。
「あんたも自分の事、普通なんて言うわよね」
「いや、その通りですよ?」
「はぁ~、どう考えても普通じゃないんだけど……」
呆れた表情をするにこ先輩だけど、私はどうしてにこ先輩がそんな顔をするのか、よく分からなかった。
確かに性癖は普通じゃないけど、その他はことについては誇れるのは、わたしの身体くらい。あとは精々自分の目の良さくらい。
それ以外は普通──いや、落ちこぼれだ。
「私より優れてる人なんて山ほど居ますよ、にこ先輩だって、私より良いキャラしてるじゃないですか」
「まあ、確かに……アイドルはキャラ作りは大切で、意識はしてるわよ……」
にこ先輩はキャラ作りについて褒められて嬉しかったのか、少し照れている。
「お姉ちゃんは私より運が断然良いし、海未ちゃん、真姫ちゃんは作詞、作曲が出来る感性があるし……」
次々と私の身近に居る人の私より優れてる才能を口にする。
何処へ行っても私より優れてる人がたくさん居る。私はただそんな人たちから見て、真似る事しか出来ないのだから。
それに私は本当に才能に溢れた天才も知ってるから。その人たちと比べると、私はただの落ちこぼれ。必要ないものだから。
「そう、大体あんたが何を思ってるのか分かったわ、それにことりもどうして悩んでるのかも……」
にこ先輩は私の話を聞いて、私がどうして普通と言うのかどうも腑に落ちない感じを出しつつ、ことりちゃんの悩みも理解できたみたいだった。
「あんたたちは妙に気が合うような感じがするのは、そう言うところもあるかもしれないわね」
「そうですか?」
そう言われて、私はことりちゃんとの事を思い出す。
私個人としては絵里先輩と似てると思ってたけど、ことりちゃんとも似てる所があったかな。
互いをソウルフレンドとして認め合ったあの日から、何度かμ'sのみんなはどんな服が似合うか、小一時間くらい話したりもする。
それに、その話をするときのことりちゃんの反応が何処かとても見覚えと言うか、既視感を感じていた。もしかして……。
「実はことりちゃんも私と同じ趣味があるかもしれません」
もし、そうなら確かに私とことりちゃんは似てると思う。同じ趣味なら、更に彼女とのガールズトークも弾むし。
「流石にそれは勘弁してほしいわ、あんたみたいのは一人で十分よ」
にこ先輩にそんなことを言われて、私はその場で立ち止まる。
「どうしたのよ、急に立ち止まって」
「に……」
「に?」
「にこ先輩についに告白されました!!」
私はとても大きな声でそう喜びの声を上げた。
「何でそうなるのよ!! 意味わからないわよ!!」
「えっ!? 愛してくれるのは、私一人で十分と言ってたじゃないですか」
「言ってないから!! 面倒なのはあんた一人でいいって言ったのよ」
あれ? そうだったっけ? まあでもどちらでも関係ない、何故なら。
「恋は面倒なものですよ」
好きな相手に好きになってもらうには、常に努力をしなければならない。
相手の好きなものを熟知したり、苦手なもの嫌いなものをなるべく避けて、自分に反映しなければならない。つまり相手のことを全て知り尽くさなければいけないからかなり面倒。
その努力の積み重ねこそが真実の愛──Truelove。
努力を怠ったものに真の愛など存在しないのだ。
「いやいやいや、恋とか、愛とか関係ないから、ただ単純にあんたのことが面倒なだけだから」
「またまた照れちゃって、にこ先輩たら恥ずかしがり屋さんなんですから」
「照れてないわよ!!」
嬉しさのあまりテンションがどんどん上がっていく私。にこ先輩はただ照れ隠しで大きな声を出した。
「にこ先輩はツンデレさんですから、言っていることが本心とは、反対になっちゃうのは仕方ないですね」
「にこはツンデレじゃないわよ、と言うかそれでさっきから変な風に変換されてたのね」
にこ先輩の言う通り、ツンデレさんであるにこ先輩の言葉は──私の中で、逆の意味になるように常に変換されている。いずれ、にこ先輩の良妻になるには、必要なスキル。にこ先輩の言葉の意味を一語一句理解できず、何が良妻か。
いや、別に良妻じゃなくても奴隷でも全然いいんですけどね。むしろ性のはけ口にされたい。
そんなことを考えてると、何時ものようににこ先輩にそろそろ愛を頂けそうだと思い、チラッとにこ先輩の方を見ると、にこ先輩は何か考え事をしてる様子だった。
何処か納得いかないような表情や、ちょっと恥ずかしそうな顔をしながら何かを決心したのか、にこ先輩はまっすぐ前を方を向き、そうして──
「沙紀……私、あなたのこと大好きよ、愛してるわ」
「ふえぇぇぇぇぇ!!」
その言葉を言ったにこ先輩の表情はとても恥ずかしそうな顔をして、その可愛さに、思わず私はテンションが最高潮になりなるどころか、マジの告白をされて凄く恥ずかしくなってきた。
「ちょっとなんであんたが恥ずかしそうにするのよ」
私の反応を見て、にこ先輩はさらに恥ずかしくなったのか、顔も赤くなり、そして私も結構顔が赤くなってると思う。
「うぅ……だって……」
にこ先輩が急にちゃんとした告白するだもん。なんて言おうとしたけど、告白された影響か心がドキドキして、全くまともに喋れそうにないし、思考もまともに出来ない。
それはにこ先輩も同じなのか、急に黙り込んでしまって私たちの間で数分間沈黙が続いた。
「え~と、その……ね……沙紀……」
沈黙に耐え切れなくなったのか、にこ先輩何か申し訳なさそうに何か言うとしてるから、私はまだ恥ずかしいので、にこ先輩の顔を直接見ることせず、失礼だけど俯いたままにこ先輩のほうを向いた。
「あれ……冗談よ」
「Pardon?」
にこ先輩の発言がよく聞き取れず、理解も出来ず動揺してた為か、私は思わず英語でにこ先輩に聞き返してしまう。
「ちょ、何で英語なのよ、しかも無駄に発音いいし」
急に英語になってにこ先輩は戸惑ったけど、何かとても吹っ切れた感じで──
「だから!! あれは冗談よ」
そう言い切ったにこ先輩の言葉を聞いて私はようやく理解した。
「えぇぇぇぇ!! 嘘~~!!」
そして理解した上でそう叫んでしまった。
2
「うぅ……にこ先輩が私の心を弄びました……」
何でにこ先輩が私にガチの告白をしたのか理由を聞いて、私の心はかなり落ち込んでいた。
「人聞き悪いこと言うんじゃないわよ!! いや……実際に……そうだけど……」
完璧に否定できないので、にこ先輩の声は段々と小さくなっていく。
まあ、どうしてにこ先輩がそんなことを言ったのかと言うと、私はにこ先輩の事をツンデレと言ったから。
そのためにこ先輩は私の中で全ての言葉が逆の意味に聞こえてると考え、好きと言えば逆の意味に捉えて、大人しくなるのかなって思い、そして告白すると、先程の有り様になったわけ。
「なんというか……あんたがそんな反応をするとは思わなかったから……」
「急に告白されれば誰だって驚きますよ」
「あんたがそれ言う!?」
私が当たり前の事を言ったら、にこ先輩にそう突っ込まれて、私は今までの行動を思い出すと、とても人の事を言えた立場ではない。
「でも私とにこ先輩の愛は永遠ですからね」
「言った側から……いやもうあんたにそれ言っても無駄なのよね」
何か諦めたような顔をしたにこ先輩。私は何を諦めたか敢えて考えず、さっきのにこ先輩の会話で自分の調子が戻ったことを確認する。
「それにしても……あんたのあの反応、久々に見たわね」
「うぅ……それは……」
せっかく調子が戻ったと確認した矢先に、にこ先輩がさっきの私の反応に触れて、私の心はさっきと同じようにかなり揺れる。
「そういえば入部した頃は毎回何かある度に恥ずかしがってたわよね」
更に少し前までの私の話を持ち出してきて、余計に私は心が揺れて、また恥ずかしくなってきた。
「そ、そ、そんなこと……ないですよ……」
「いや、そんな感じで恥ずかしがってたわよ」
私は恥ずかしがってないと否定したけど、今の私には説得力どころか、余計に昔の私の事を思い出させてしまった。
「でも……やっぱり……あのときからは変わってないのね」
「えっ? 今……何て?」
「何も言ってないわよ」
にこ先輩がボソッと何か言ったような気がして、何て言ったのか聞き直したけど、にこ先輩は何も無かったような反応をした。
「まあ、たまにはそういうあんたの反応もからかい甲斐あっていいわね」
「もう止めてくださいよ~~、からかうのは私の仕事なんですから」
「そんな仕事頼んでないわよ!!」
そんな風に結局は何だかんだと何時ものと同じように、楽しくお喋りしながら帰ってると、にこ先輩と別れるところまで来た。
私はにこ先輩と別れの挨拶をして、先輩が見えなくなるのを確認したら、私は180度回転して、元来た道を戻り始めて秋葉に戻っていった。
3
私が秋葉に戻ると夕日も殆んど沈み、空は大分暗くなっていたけど、お店の明かりで街は明るく、まだまだ人通りも多かった。
そんな秋葉の街をふらりと特に目的も理由もなく、私はただ適当に歩く。
正直そんな事をしてる時間は私にはない。
学校で色々な仕事を押し付けられて、出来れば早く家に帰って、今後の仕事のスケジュールを考えたりしないといけない。
次のライブの場所の候補を幾つか考えなければならない。
μ'sのみんなの明日の練習メニューを考えなければならない。
そう私にはやることがたくさんあるのに、私はこうして秋葉の街を歩いている。
本当はあまり秋葉の街をふらりと歩きたくもないのだけど、出来るだけ人通りの多いところを歩いておきたい。
そうしないと……。いや、そもそもここに来ること自体私にとって、あまり良いことではないのに……。
そんな事を考えてると、私は何時の間にか駅の方に着いて、辺りを見渡すと、とあるビルに視線が行った。
「ホント、何してるんだろう……」
今さらここに来たって、もう私には関係ない話なのに、無意識にここに来たのは、やっぱり、今日ちょっとでも昔の私に戻ったから。
ことりちゃんと自分が似てると言われて、何か私の心の奥底で思うことがあったから。
μ'sのラブライブ本選出場が現実味を帯びたしてるから。
少しでも昔のわたしの事を思い出しそうな話をしたから。
いや、全部だ。
「はぁ~、本当に嫌になるよ……」
ここに来たって、何かが変わる訳じゃない。むしろ全て終わる可能性があるのに。
だって……ここには……。
イヤイヤ、そんなことを考えたって、そもそもこのタイミングでは確率的に殆んど少ない。万が一もあるかもしれないけど、そうそう気まぐれを起こさない限りは有り得ない。
だから大丈夫だ。この近くで目立つことをしなければ良いだけの話。
うん。今はやるべきことがたくさんある。
そうして私はまたゆっくりと秋葉の街を歩き始め家に向かった。
真面目にやって、ふざけて、真面目に戻る。一応いつも通り?の回でした。
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