ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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お待たせしました。遂に絵里加入回の序盤

一体どんな物語になるのかどうぞお楽しみください。


十七話 最後の女神

 1

 

 私が初めて絢瀬生徒会長に会ったときの思ったことは、凄く私が彼女にしたい理想のスタイルを持っている人だなぁ、なんて思っていた。

 

 もしにこ先輩に出会って無かったら確実に会って早々告白していたと思うくらいに。ホントマジで、絢瀬生徒会長のスタイルはドストレートで私の好みだったから。特に金髪碧眼が良いね。

 

 生徒会のお手伝いをしていたおかげで、絢瀬生徒会長と会う機会も多い。その旅に私は彼女を自分の物にしたいなんて欲求が出てくるし、生徒会にはお姉ちゃんも居るからいろんな意味で危なかった。

 

 まあそこは我慢して欲求を抑えていたから、何とか踏み止まっていた。できれば絢瀬生徒会長の前で欲求が爆発する前に、何とかにこ先輩に付き合えちゃえばこんなこと悩まないで済むのに。何て思って何度も告白していたが、毎回ことごとく失敗。

 

 いや今は私の欲求不満がどうこうって話じゃなくって、絢瀬生徒会長のことを話しているのだから関係ない。やっぱり関係ないじゃあ色々と問題あるけど。

 

 話を戻して何度か一緒に仕事をする機会も増えて(もちろん委員長モードで)色んな事が分かってきた。

 

 生徒会長としてはキッチリとして仕事もそつなくこなすけど、絢瀬絵里と言う一人の女の子としては可愛らしいところもあるんだって。

 

 学校にいるときじゃあ殆んど見せないけど、たまに見せる可愛らしいところがある。それを見ると安心して、ますます彼女にしたいって欲求が出てくる。危ない。また話が逸れそうになるからその話はしない。

 

 印象は本当に不器用で真面目な人なんだなと思った。不器用って言うか責任感が強すぎて、何処か空回りして大事なことを見落としてるそんな感じ。

 

 特にそれを感じられたのはあの日──穂乃果ちゃんが生徒会に部活の申請書を出しに来たとき、私は絢瀬生徒会長にどうして廃校を阻止したいのか聞いてみた。

 

 そうしたら絢瀬生徒会長は生徒会長として廃校を阻止したいと言った。

 

 それを聞いて確信した。絢瀬生徒会長は私と同じだ。

 

 このまま放置すればあの時の私のように確実に全てを無くしてしまう。そう確信してしまった。

 

 2

 

「今の話本当ですか!!」

 

 穂乃果ちゃんは理事長から音ノ木坂が廃校の確定の話を又々聞いてしまい思わず飛び出して、理事長室に入り、理事長に真偽を確認する。

 

 そんな穂乃果ちゃんのあとに続いて、私と海未ちゃん、ことりちゃんも理事長室に入って行く。

 

「貴方!!」

 

「本当に廃校になっちゃうんですか」

 

 絢瀬生徒会長は急に話に入ってきた穂乃果ちゃんに驚くけど、穂乃果ちゃんには全く届いてない。ただ理事長の方を真っ直ぐ見て、それが事実なのか聞こうとしてた。

 

「本当よ」

 

 穂乃果ちゃんの質問から少し間を開けて、理事長は音ノ木坂が廃校になるのが事実だと告げた。

 

「おかあさん、そんなこと全然聞いてないよ」

 

「お願いします。もうちょっとだけ待ってください」

 

「あと一週間、いえ二日で何とかしますから」

 

 それを聞いて穂乃果ちゃんたちは取り乱すが無理もない。自分の学校が廃校になるのが確定して取り乱すなってのが無理があるよ。特に穂乃果ちゃんたちは廃校を阻止するために活動してきただから余計に。

 

「ちょっと待って穂乃果ちゃん。廃校がショックなのは分かるけど、落ち着いて、ちゃんと話を聞こう」

 

 穂乃果ちゃんが取り乱しすぎて無茶な事を言ってるから、穂乃果ちゃんの肩を持って落ち着くように言い聞かせる。

 

 流石に二日ではどうにもならない。準備や練習が時間的にも無理。そんな完成度が低いもので、廃校がどうにかなるくらいならそもそも問題にすらなってない。

 

 だけど変。廃校の条件は入学希望者が少なかった場合。でもまだそれを判断するようなイベントは……いや、合った。今月に確かあれが合ったはず。

 

「多分近々何かで判断してそれで廃校かどうか決めんじゃないのかな」

 

 私の予想が正しければ私たちが聞いたのは結果だけで、ちゃんと廃校を決める過程を絢瀬生徒会長に話してたはず。

 

 もし廃校が確定してるなら、絢瀬生徒会長の顔ももっと暗い絶望的な表情をしてるはず。だけど実際に絢瀬生徒会長の顔を見てみると険しいけど、まだ諦めてない顔をしてる。

 

 つまりまだ余裕はある。余裕と言っても僅かな期間だろうけど。まあ、穂乃果ちゃんが来て険しい顔をしてる可能性もなくはないけど。

 

「えぇ、廃校にするって言うのはオープンキャンパスの結果が悪かったらって話よ」

 

 やっぱり予想通りオープンキャンパス。なら期間もそうは長くない。だから私は自分の持ち札と現状の計画の進捗状況、μ's全体の現在の実力など様々な情報を整理し始める。

 

「オープンキャンパス?」

 

「一般の人に見学に来てもらうってこと?」

 

「見学に来た中学生にアンケート取って結果が芳しく無かったら廃校にする。そう絢瀬さんに言ってたの」

 

 確かにこのやり方ならどれだけ入学希望者が居るのか、おおよそではあるが指標にはなる。それにそもそも中学生来るかどうかでも分かる。そもそも来なければアンケートの取りようもないし。

 

「なんだ」

 

「安心してる場合じゃないわよ」

 

 穂乃果ちゃんはまだ余裕があると思って安心してるが、絢瀬生徒会長の言う通り安心できない状況。

 

「オープンキャンパスは二週間後の日曜日。そこで結果が悪かったら本決まりってことよ」

 

「どうしよう」

 

 残りの猶予は二週間しかないと聞いて、余裕が無いことを自覚した穂乃果ちゃんたちは不安になる。そんな中絢瀬生徒会長は理事長の前立つ。

 

「理事長、オープンキャンパスのイベント内容は生徒会で提案させて頂きます」

 

「止めても聞きそうに無いわね」

 

 例の如く生徒会として動こうとする絢瀬生徒会長に、今まで活動を許可して無かった理事長は遂に許可を出す。

 

 状況が状況なのできっと絢瀬生徒会長なら許可が無くても動いてしまうから、理事長が無駄だと分かって許可を出したんだと思う。

 

「失礼します」

 

 絢瀬生徒会長は許可が取れたのを確認したら、すぐに行動に移すつもりか、さっさと理事長室を出ていった。

 

「穂乃果ちゃん。私たちも行くよ」

 

 絢瀬生徒会長が出ていってから、すぐに私の中で考えが纏まった。これ以上ここに居ても時間の無駄だから、立ち尽くしてる穂乃果ちゃんに声を掛けて、私たちも理事長室をあとにする。

 

「何とかしなくっちゃ」

 

「何とかしなくちゃいけないね」

 

 穂乃果ちゃんの多分独り言に私はそう返事をする。

 

 理事長室から出てくると、中に入ってこなかった残りのメンバーが何処か心配そうにして私たちを待っていた。

 

「何があったのよ」

 

 にこ先輩が代表して中であったことを聞いてくるので、私はみんなにさっきのことを伝える。

 

「そんな……」

 

「じゃあ凛たちやっぱり下級生がいない高校生活」

 

「そうなるわね」

 

 最初に反応したのは花陽ちゃんと凛ちゃんだった。廃校が決定してしまうと、一年生である彼女たちが一番辛い思いをするから当然だよね。

 

 廃校が確定しても在校生が卒業するまで完全な廃校にはならないが、その代わり新入生を募集せず、凛ちゃんの言う通り下級生が入ってこない。

 

「まっ、私はそっちの方が気楽でいいけど」

 

 何て真姫ちゃんは言うけど嘘だろう。何だかんだで真姫ちゃんは意地っぱりだから、自分の本心を素直に口にしてないだけ。

 

「とにかくオープンキャンパスでライブをやろう。それで入学希望者を少しでも増やすしかないよ」

 

「穂乃果ちゃんならそう言うと思ったよ」

 

「沙紀ちゃん……」

 

 もし落ち込んでるなら空気をぶち壊してやろうかと思ったけど、その心配も無いみたい。その証拠にメンバーの顔はやる気に満ちてる。

 

 この状況を黙って見てるだけじゃなくって、打破するために自分たちが出来ることをする穂乃果ちゃんらしいやり方。そんな穂乃果ちゃんだから私は手を貸してるかもしれない。

 

「猶予は二週間。現状は最悪だけど各々がやれる事を精一杯やるしかない」

 

 そう言いながら私は手に持っているペンと紙であるもの書きながら、私は今やれることをやる。

 

「だからこれが今の私に出来ること」

 

 そう言って私は穂乃果ちゃんに紙を数枚渡す。

 

「沙紀ちゃんこれは?」

 

「オープンキャンパスまでの特別トレーニングメニュー。本当はもうちょっとあとにやりたかったけど、時間がない以上これをやってもらうよ」

 

 二週間で歌とダンスをより良いものする為なら拒否権はない。でもみんななら進んでやってくれるはず。

 

「このトレーニングで基礎を完璧にして確実に実力を付けてもらって、各自に見合ったメニューで得意なところを伸ばして苦手なところを補強する。それで私の見立てでは倍くらいは実力が付くはず」

 

 ファーストライブの時じゃあデータが足りなくて出来なかったが、今まで練習を何度も見て観察した今の私なら作り上げるのは造作もない。

 

 実のところ九人揃った段階でやりたかった内容だったけど四の五の言ってる場合じゃない。

 

「倍って……短期間でそこまで実力が上がるもの何ですか」

 

「上がる。実際に似たような練習をにこ先輩にやってもらったら、前の倍近くは上がったから」

 

 そう。この練習は半年くらい前ににこ先輩にもやらせたことがある。その時は一ヶ月くらいの期間だったけど見違えるくらいレベルが上がっていた。

 

「そうね、確かに上がったわ。制裁スキルだけど……」

 

「本当なんだ……ん? 制裁スキル?」

 

「そう。制裁スキル」

 

 穂乃果ちゃんは何が上がったのか疑問に持つと、にこ先輩はもう一度自分が上がったスキルを言う。

 

「いやいや、今絶対にいらないじゃん。今欲しいのは歌とダンスの技術だよ。何で沙紀ちゃんを制裁するスキル何て上げるの」

 

「いや何で私が制裁される前提何ですかね」

 

 いやもう理由は分かるから良いけど。でもみんながみんな制裁スキル何て覚えたら私の身体がボロボロになる未来しか見えない。

 

「それは私があのとき歌とダンスの技術を上げるトレーニングメニューを考えてたつもりだったけど、無意識に制裁スキルを上げるトレーニングメニューを作っちゃった。てへっ」

 

 ホントビックリしたよ。二人でやってた頃私とにこ先輩で何か上手くなってると勘違いして、挙げ句の果てに調子に乗ってしまった。誰も端から見れば絶対違うだろうって止めてくれなかったし。そもそも止めてくれる人がいなかったんだけど。

 

「でも大丈夫。今回はそんな変な間違いはしていない。ちゃんと歌とダンスのトレーニングメニューだよ。決して制裁スキルのトレーニングメニューじゃないよ」

 

「当たり前よ。何で廃校が決まる瀬戸際でそんなもの上げなくちゃいけないの」

 

 全く真姫ちゃんの言う通りです。そんなふざけてる余裕はもうないから。

 

「でもいつの間にこんなトレーニングメニュー考えたの。今日のトレーニングメニュー別に用意してたよね」

 

「それはオープンキャンパスが廃校の期限だと聞いたときから構想して今書き終えたところだよ」

 

「あの少しの時間でこれだけのを思い付くなんて……」

 

 海未ちゃんが驚くのも無理もない。

 

 あの紙に書かれてるのは基礎を固めるためのメニューと七人分の個別メニュー。今までの練習で私が全員を観察して組み上げたもの。私の本気。

 

「そんなわけで今から練習始めるけど……海未ちゃんあとは頼んだ」

 

「沙紀……何処へ行くつもりですか」

 

 練習を海未ちゃんに任せて私は彼処に行こうとすると、海未ちゃんに制服を掴まれて止められる。

 

「この前の海未ちゃんとの約束を果たしにちょっとね」

 

「分かりました。こっちは私に任せてください」

 

 周りのみんなに聞こえないように海未ちゃんの耳元で囁いて、私が何をしようとしてるのか伝える。それで海未ちゃんは理解し、制服を離してくれる。

 

「じゃあみんな練習頑張ってね」

 

 そう言って手を振りながら私は目的と約束を果たすためにある場所に向かっていった。

 

 3

 

 私はみんなと別れて一人別行動して廊下を歩いている。

 

 理由として今のみんなには一先ずは練習に専念してもらうため。μ'sと彼処を自由に動けるのは自分くらいだから。

 

 それに今いるメンバーに出来る精一杯のことはやった。次はこれから入るメンバーの為にやれることをするだけ。

 

 そう考えながら私は目的の場所──生徒会室の前まで着くと、そこでゆっくり深呼吸をして自分の心を落ち着かせる。

 

 ここに入る前に何時もこれをやってる。やっておかないとあの人の前で変な行動を取りかねないから。

 

 そうして心を落ち着かせて委員長モードをONにすると、扉をノックして生徒会室の中に入る。

 

「失礼します」

 

 中に入るとそこには希お姉ちゃんとそして絢瀬生徒会長が居た。他の役員はいないのは何時もの事。基本的に他の役員がいない時間を狙って生徒会室に来てるから。

 

「あれ? 委員長ちゃん。こっちに来たん?」

 

 お姉ちゃんは私が今日はアイドル研究部のほうに行くと思っていた反応。どうやら生徒会の方に来るとは思ってもみなかったみたい。

 

「はい、少し絢瀬生徒会長にお話がありまして」

 

「私に? 何の用かしら」

 

 自分に用があると分かった絢瀬生徒会長は仕事を止めて私の方を見る。基本的に交流もあるから穂乃果ちゃんたちと比べれば塩対応ではない。

 

 それにしても相変わらず良いスタイルしてる……。ダメダメ。今はそんなこと考えてる場合ではない。

 

「絢瀬生徒会長単刀直入に言います。μ'sに入ってくれませんか」

 

 変な前降りや言い回しは不要。最早時間がない以上直球で勝負するのみ。

 

「何よ急に」

 

「急にではありません。廃校までの時間がない以上お互いに手を取り合うのが、正しいと思ったからです」

 

「確かに廃校まで時間はないわ。手を取り合うのが正しいと思うわけど、私は彼女たちを認められないわ」

 

 私の提案に絢瀬生徒会長は案の定予想通りの返事をしてくれた。ここで入ってくれたらホント楽だけど、それで入るくらいならもっと早くメンバーになってる。

 

「それは貴女が昔バレエで優秀な成績を修めてたからですか?」

 

 私がバレエのことを言うと絢瀬生徒会長はお姉ちゃんの方を見るが、お姉ちゃんの顔は明らかにウチは何も言ってないって言いたげな顔をしてた。

 

「他にも知ってます。ファーストライブの動画をネットに上げてくれたのも貴女だって」

 

「それは園田さんから聞いたのかしら」

 

「はい、でもあの動画をネットに上げた時にはもう既に誰が上げてくれたのか予想は付いてました」

 

 あのファーストライブに来ていた人は限られてる。あのときの状況を思い出せば、消去法で絢瀬生徒会長と簡単に予想は出来る。

 

 念のため、あのライブに来てた人に動画について聞いて回っていた。そのうち殆どが今のμ'sのメンバーとお姉ちゃんと穂乃果ちゃんの友達だったから聞き込みは簡単だった。

 

 そして彼女たちは誰も知らないと口にした。となると聞き込んでいないのは、絢瀬生徒会長だけだから誰が上げたのか自ずと分かる。

 

「なら私がどうして上げたのか知ってるでしょ。それに彼女に言ったことも」

 

「貴女がμ'sが素人に見えるのは仕方ないことだと分かってます。貴女ほどの実力を持ってる人ならそう見えるでしょう」

 

 絢瀬生徒会長が海未ちゃんに言ったこともちろん知ってる。私も絢瀬生徒会長と同じでまだμ'sはそこまで実力を持っていないと思っている。

 

 けどμ'sはまだまだ成長する。今も頑張って練習してるし実力も付けている。それに──

 

「そんな貴女がμ'sに入ってくれればμ'sはもっともっと成長できます。だからμ'sに入ってください」

 

 そう言って私は絢瀬生徒会長に頭を下げる。

 

 今の私はメンバーの為に必死に頑張ってる健気なマネージャーに見えてるだろう。これは私が星野如月だと知らないからこそ使える手。

 

 私が星野如月だと知ってると貴女が居るでしょで終わってしまう。計画上それでは意味ない。

 

「理解できないわ。どうして貴女はそうまでして彼女たちの為にやるの? 貴女はそんな不確定な事をする人じゃないのに……」

 

 確かに絢瀬生徒会長の言う通り、私は成功するか分からないものや先が見えないものに、そんな力を入れる人間じゃない。ましてや絢瀬生徒会長には、委員長モードしか見せてないから余計にそう見えるだろう。

 

 これがμ'sのメンバーやお姉ちゃんだったらそうは思わないだろう。けど私はとても現実主義者だ。

 

 物事を見ただけで瞬時に判断できるからこそ、大抵の事はどうなるのか、大体予想ができ分かってしまう。

 

 それにどうやれば効率良くやれるのかも瞬時に理解できるから、生徒会の手伝いやμ'sの練習も効率良くやれる。

 

 これが私がわたしであるために唯一努力して手に入れた技術。それだけで今まで全部やって来た。

 

 だからこそ今はμ'sの為にこの技術を存分に使う。

 

「もしすぐに返事が出せない場合は練習一度でも良いので見に来てください」

 

 私は絢瀬生徒会長の質問には答えず、猶予と練習を見に来てほしいと付け加えて頭を上げる。

 

 取り敢えず今回はここまでにしておこう。これからの布石は取れたから次の行動に移そう。

 

 そう頭の中で今後の事を纏めながら、私はゆっくりと扉まで歩いて生徒会室をあとにする。

 

 現状絢瀬生徒会長をμ'sに入れるには条件がある。

 

 それは生徒会長としての絢瀬絵里を排除して、ただの絢瀬絵里を曝け出せなければならない。

 

 まずはただの絢瀬絵里を曝け出すためには刺激が必要。これはそれをやるための布石。

 

 今の会話で私は敢えて絢瀬生徒会長の質問には答えなかった。答えなかったことで、彼女の中では疑問として残り続ける。

 

 生徒会長として廃校確定が目前に迫って心に余裕がないなか余計な疑問が残る。さぞ頭を抱えるだろう。それが狙い。

 

 絢瀬生徒会長は不器用な人だ。そんな疑問を完全に忘れることは出来ない。確実に頭の片隅に残るはず。あとはそれを刺激させてμ'sの練習を見せる。

 

 一度練習を見に来てほしいと言ったのもそのため。決して絢瀬生徒会長は自分から見に来るとは言わない。なら、こっちから誘えば少しは来やすくなる。

 

 まあ、向こうから来るのを待ってるそんな時間は無い。なので、こっちはこっちで明日にでも来させるための準備をしよう。

 

 アイドル研究部でもそろそろ海未ちゃんがμ'sの練習を見てそろそろ口にする頃だから。

 

 そう頭の中で思考しながら私は取り敢えず喉が渇いたので、飲み物買いに自販機に飲み物を買いに行った。

 

 4

 

 生徒会から帰り──中庭のイスに座って、途中で買ってきた飲み物を飲みながら、私は一人考え事してた。

 

「あんたここに居たのね。探したわよ」

 

 突然、聞き覚えるのある声に声を掛けられたので、声がした方を見ると、にこ先輩がいつの間にかそこにいた。

 

 にこ先輩の服装を見てみると、練習用の服ではなく、制服を着ている。それに鞄も持ってるからもう練習は終わったみたい。

 

「にこ先輩どうしたんですか? もしかして私に会えなくて寂しかったんですか。良いですよちょっと待って下さい。今すぐに服脱ぎますから」

 

「違うわよ」

 

「即答ですか」

 

 渋々私は制服を脱ぐのを止める。せっかく一線越えて、にこ先輩の寂しさを埋めてあげようと思っていたのに、残念。

 

「まあにこ先輩照れてるだけなんですよね。それともやっぱり外じゃあ恥ずかしいから、場所を変えようとしてるだけなんですよね」

 

 中庭には人が少ないとはいえ、偶々人が通ることもなくはない。だから人に見られるのは恥ずかしいのは分かる。私も恥ずかしいから。にこ先輩には見られるのは良いけど、他の有象無象に見られるのは嫌だ。でも……。

 

「にこ先輩が交わろう……って言えば、何時でも何処でも準備は出来てますから……」

 

「はいはい分かったから。そんな日は一生来ないから」

 

「何かにこ先輩冷たい。はっ!! もしかしてこれって停滞期ってやつ!!」

 

 もうちょっと前のにこ先輩ならまだツッコンではくれたのに……最近は黙って制裁もといご褒美をくれることが多い。あれ? でもご褒美くれるからまだ大丈夫じゃない? 

 

 本当に停滞期ならきっとご褒美すらくれないはずだし。と言うことはつまり……。

 

「私とにこ先輩には言葉なんていらないくらい愛が深まってるですね」

 

「何をどうしたらそんな結果になるのよ……まあいいわ、それよりもあんたに聞きたいことがあるわ」

 

 私の発言を聞いて何故か呆れた顔をするにこ先輩だけど、そんなことは置いておいて、私に何か用があるみたい。

 

「ちょっと待ってください。これあと少ししかないので全部飲みきりますから」

 

 そう言って私は残っていた飲み物を飲み始める。

 

「良いけど、あんたまたミルクティー飲んでるのね」

 

「はい好きですから。それににこ先輩知ってますよね。私、炭酸はあんまり好きじゃないですし、コーヒーは至っては論外ですから……」

 

 実のところ炭酸は飲めなくは無いけど、好き好んで飲もうとは思わない。但しブラックコーヒーお前は絶対に駄目だ。

 

「覚えてるわ。あんたが昔間違ってコーヒーを飲んでスゴイ顔したあと、気持ち悪いって言ってトイレに駆け込んだ事も」

 

 ブラックコーヒー対して私はどんだけ苦手なのか思い出したにこ先輩は急に顔がにやけだして笑い始める。

 

「あの……ときの……あんたの……顔……思い出したら笑えてきたわ」

 

「酷いですよ。あの顔を見られたのは私に取って人生の汚点の一つなのに」

 

 ブラックコーヒー飲んだあと、自分があんな顔をしたのはビックリしたなあ。それよりもにこ先輩に可愛くない顔を見られた方がショックが大きいけど。

 

「いいじゃない。あのときはあんたが入って間もない頃で好みとか分からなかったんだから」

 

 まあにこ先輩がそういうのは仕方ない。ホントに出会って間もない頃だったし。

 

 色々とあって私がアイドル研究部のマネージャーとして入部したあと、少し経ったくらいににこ先輩が私の為に歓迎会を開いてくれた事があった。

 

 あまりにも突然、歓迎会を開いたので、理由は分からないけど、多分、部員が入って嬉しかったんだと思っている。

 

 そのときに適当に飲み物を買ってきたわけ何だけど、その中にブラックコーヒーが混ざっていて、私はそれに気付かずに飲んでしまったのが事の顛末。

 

「まあ確かにあれは私の不注意でしたけど」

 

 あの事を思い出してみればそうとしか言いようが無いが、昔の事を思い出して少し懐かしい気分になった。本当にあの頃は何をするにも新鮮な事が多かったから余計に。

 

「それでにこ先輩。私に用って何ですか?」

 

 懐かしさに浸るのも良いがそこまでにしておこう。そもそもにこ先輩は私に用が合って、探してたみたいだからそろそろ本題に入るべき。それに聞きたいことは大体予想が付く。おそらく練習中の事だろうから。

 

「そうね……。私あんたに聞きたいことが合って来たんだから。私も昔の事を思い出しに来たわけじゃないし」

 

 どうやらにこ先輩も昔の事を思い出してみたい。何か二人だった頃のアイドル研究部の事をにこ先輩も思い出してたと思うと嬉しい気分になる。

 

 ちゃんと私とにこ先輩だけの思い出があるってことが実感できるから。

 

「あんた海未の様子がおかしかった理由、何か知ってるじゃない?」

 

 そうにこ先輩に聞かれて確信する。やっぱり海未ちゃんは私の思った通りの事をしたんだろうなあ。

 

「その顔……何か知ってるのね」

 

「えぇ、まあ大体は。ですけどすぐに本人から聞けると思いますよ」

 

「そう……ならいいのだけど。なら取り敢えず何が合ったのか聞きたい?」

 

 すんなり引き下がるにこ先輩。むしろ私に何があったのか説明してくれるみたい。

 

「そうですね。大方予想は付きますが、実際何があったのか聞いておきたいですね。予想とズレがあると困りますし」

 

 にこ先輩の提案は実に有難い。多少のズレなら問題ないが自分でも言ったように予想と結果がズレやそもそも結果が違うことがあると、今後の計画を修正しなければならない。

 

「なら場所変えましょうか。そろそろ学校を出なければいけない時間ですし、あと鞄も取りに行きたいですから」

 

 にこ先輩と楽しくお喋りしてたせいか、割りと時間が経って、気づけば最終下校時間になっていた。

 

 それに今日は色々とあって私の鞄は部室に置いてきたままだから、いっそのこと場所を変えた方がいい。

 

「分かったわ。校門で待ってるわよ」

 

 私の提案に納得したにこ先輩は先に校門の方へ向かい、私も鞄を取りに部室に戻って鞄を回収しに向かう。

 

 私は急いで鞄を回収すると、そのままにこ先輩の待ち合わせ場所の校門まで移動して、にこ先輩と合流する。

 

「お待たせしました」

 

「いいわ。それで何処に行く?」

 

「そうですね……」

 

 何処に移動するのか聞かれるけどこれと言って何処へ行くか決めてない。今日もお姉ちゃんのところ行く予定だからそんな遠くには行けない。

 

 そんな風に考えてると少し小腹が空いた感じがする。どうしよう、何か食べたいな。

 

「じゃあポテト食べに行きましょう。私少しお腹が空きましたので」

 

「そう。ならそこで」

 

 そういうことでポテトを食べるのとにこ先輩の話を聞くために、ファーストフード店に私たちは移動することになった。

 

 道中で話を聞けば良かったけど、ここ最近にこ先輩と一緒に帰る機会も少なくなったので、他愛のない話して楽しく移動した。

 

 何だかんだと話してると、あっという間にファーストフード店に着いた。中に入り、適当に注文すると、自分の携帯が鳴っているのに気付く。携帯を開いてみると、通話アプリで海未ちゃんの名前が表示されてた。

 

 通話アプリって事は……と思いにこ先輩の方を見ると、にこ先輩も全く私と同じ状況だった。つまり海未ちゃんは部員全員に話があるってことになる。

 

 はぁ、先ににこ先輩の話聞いておけば良かったと後悔しながら、通話アプリを開いて、海未ちゃんたちと通話を始める。そして全員が揃ったくらいに海未ちゃんが──

 

「お話があります」

 

 そう言って今日練習を見て感じたこと。そして絢瀬生徒会長の事を話始めた。

 

 5

 

『えっ!! 生徒会長を』

 

 μ'sのメンバーと通話を始めて少ししたくらいに、海未ちゃんは絢瀬生徒会長をμ'sに入れた方が良いのでは提案し、驚く一年生とにこ先輩。

 

 穂乃果ちゃんとことりちゃんが驚かないところを見ると事前に聞かされたみたい。あの三人は殆んど一緒に帰る事が多いから当然と言えば当然か。それどころか今一緒にいる可能性もある。

 

「うん。海未ちゃんがメンバーに入れようって」

 

「はい、あの人のバレエを見て思ったんです。私たちはまだまだだって」

 

 予想通りことりちゃんは話を聞いていて、海未ちゃんは今のμ'sの実力と絢瀬生徒会長の実力を比べて、自分たちの現実を口にする。

 

「貴方話があるってそんなこと」

 

 海未ちゃんの話を聞いてにこ先輩は私のほうを見ると、大体状況を察した顔して私に合図を送ってくる。

 

「でも生徒会長私たちのこと」

 

「嫌ってるよね。絶対」

 

「嫉妬しているじゃない」

 

 今までの絢瀬生徒会長の態度を見て一年生は辛辣。絢瀬生徒会長の立ち振舞いを一面から見ると、そうとしか言えないからなんとも言えない。

 

「私も思ってました。でも……」

 

 海未ちゃんもみんなが言いたいことは分かる。実際に絢瀬生徒会長に厳しい事も何度も言われたわけだから。それでも。

 

「あんなに踊れる人が私たちを見て素人みたいだと思う気持ちも分かるんです」

 

 昔の絢瀬生徒会長のバレエを見てそう言えるだけの実力を才能があるのを知って、海未ちゃんはあの人の気持ちが理解できる

 

「本当に絢瀬生徒会長は実力があるからね」

 

「そんなにすごいんだ」

 

 私も海未ちゃんが言いたいことは分かるので、そう付け加えておくとことりちゃんが驚いた反応がする。練習を見てる私が言うのと、前に一度だけみんなの前で踊って、実力を見せるのが説得力になってるみたい。

 

「私は反対。潰されかねないわ」

 

「うん」

 

「生徒会長……ちょっと怖い……」

 

「凛も楽しいのがいいなあ」

 

 真姫ちゃんが絢瀬生徒会長をメンバーにすることに反対すると、殆どのメンバーがあまり絢瀬生徒会長に良い印象を持ってなかったため、反対気味だった。

 

「そうですよね」

 

 みんなの反応を聞いて海未ちゃんもそうなるとは分かっていたみたいで、絢瀬生徒会長をメンバーに入れることは諦めたくは無いけど、説得が難しい状況になった。

 

 そんな状況を感じて私は絢瀬生徒会長が入ると、どんなメリットがあるのか言おうとした。そんなときに──

 

「私は良いと思うけどなあ」

 

 一人のメンバ──―穂乃果ちゃんが絢瀬生徒会長を入れても良いじゃないのかと、海未ちゃんの提案に賛成する事を言った。

 

「そうね。にこも良いと思うわ」

 

「私も絢瀬生徒会長は入れるのは、μ'sに取ってプラスになると思う」

 

 穂乃果ちゃんに続いてにこ先輩、私と絢瀬生徒会長をメンバーに入れることを賛成する。

 

『えぇ!!』

 

 三人も絢瀬生徒会長を賛成する人が居て反対していたメンバーが驚く。特ににこ先輩が賛成したのが驚きの大半だと思うけど。

 

「何言ってるの」

 

「だってダンスが上手い人が近くにいてもっと上手くなりたいから一緒に居た方が良いって話でしょ」

 

「そうですが」

 

 穂乃果ちゃんが言いたいことはそんな簡単なことだけど、実際に今の絢瀬生徒会長をメンバーにするのは難しいことだけど──

 

「だったら私は賛成」

 

「頼むだけ頼んでみようよ」

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

「でも絵里先輩のダンスちょっと見てみたいかも」

 

「それはわたしも」

 

 それでも穂乃果ちゃんの一声でどんどん絢瀬生徒会長をメンバーするのを賛成する人が増えていった。

 

 やっぱり穂乃果ちゃんには人を引っ張るそんな才能があるんだろう。最も本人はそんな自覚一切ないみたいだけど。

 

「よ~し!! じゃあ明日早速聞いてみよう」

 

 私は今日生徒会室で合ったことを黙ったまま絢瀬生徒会長を頼んでみるだけ頼んでみようって事で、話が纏り通話を終了した。

 

 6

 

 みんなと通話が終わって、さっき店で買ってきた飲み物(もちろんミルクティー)を飲んでから、ポテトを一口食べて一息付いた。

 

 話は大体予想通りに進み安心するが、絢瀬生徒会長がまだ生徒会長として振る舞っている以上、まだ油断は出来ない。けどその前に。

 

「にこ先輩ありがとうございます。絢瀬生徒会長をメンバー入れることに賛成してくれて」

 

 さっきの通話でにこ先輩が賛成する側に立ってくれたことにお礼を言う。実際のところにこ先輩は反対する方に行くと思っていたから。

 

「あれね。良いのよ別に。あんたや希からあの事を聞かせれたから邪魔しちゃ駄目かと思ったから」

 

 どうやらにこ先輩はお姉ちゃんが計画して私が手伝ってる九人の女神を揃えることを邪魔しないように気を遣ってくれたみたい。

 

「それに希が誰の為に頑張ってるかって考えると、あの生徒会長様しか居ないからね」

 

「お姉ちゃんのこと何だかんだで気にしてるですね」

 

 部室にお姉ちゃんが来る旅に、苦手そうな顔をしたり、口では何か嫌がってる事を言いながらもお姉ちゃんの事を気にしていたみたい。

 

「そんなじゃないわよ。ただあんたと関わってから、あいつと関わる機会も増えたから何となく分かるのよ」

 

「そうですね。ちょっと前まではよく遊びに来てましたね」

 

 ファーストライブ前くらいまでは何回も遊びに来てることが多かったけど、穂乃果ちゃんたちがアイドル研究部に入部してから全然来なくなった。

 

 多分絢瀬生徒会長の方に集中したいのと、私やにこ先輩にそっちを完全に任せてくれてる所があると思う。そう考えるとお姉ちゃんの為にも絢瀬生徒会長にはμ'sに入ってもらった方がいい。

 

「それにしても少し前までは私とにこ先輩しか居なかったですけど、大分部員が増えましたね」

 

 たった一ヶ月で穂乃果ちゃん、海未ちゃん、ことりちゃん、真姫ちゃん、花陽ちゃんに凛ちゃんと六人も増えていった。

 

「そうね。あんたが入部する前は私一人だった時期もあるわけだし。そう考えると……賑やかになったものね……」

 

 そうだ、私が入る前はにこ先輩だけの時期もあった。あの頃は自分の事もあって色々と大変だったけど、そんな時ににこ先輩が自分も辛い思いをしてたはずのに、私に声を掛けてくれた。

 

 あの時の私に取ってそれがどれだけ嬉しいことだったか。どれほど救われたことか。今でも覚えてる。

 

「これからもっと賑やかになりますよ」

 

 だからこそ絢瀬生徒会長をμ'sに入れて、お姉ちゃんも入ってくれて、オープンキャンパスで廃校の確定を延期させることが出来れば、もっともっとあの場所は賑やかに楽しい場所になる。

 

 そうすればにこ先輩ももっともっと笑ってくれるようになって、にこ先輩との約束を果たすことも出来るようになる。

 

 にこ先輩に恩返しが出来る。

 

 それが今の私のやるべきこと。

 

「何か変な感じね。あんたとこうして真面目な話をするのは」

 

「そうですか? 私は割りと真面目に話してるつもりですが」

 

「あんたはどっちかと言うと、真面目な話でもふざけてるでしょ」

 

 そうかな? 私は何時も大真面目なつもりでにこ先輩に愛を伝えてるのだけど、にこ先輩にはふざけて見えてるみたい。何かショック。

 

「なら真面目ついでにあんたに聞きたいことがあるんだけどいい」

 

「何ですか? にこ先輩の質問には全力で答えますよ」

 

 どんな質問されてもにこ先輩に質問されれば大抵の事は答えるつもり。にこ先輩は色々とお世話になってるわけだし。

 

「もしメンバー集めも廃校の事も上手くいって、ラブライブも優勝して、私が卒業したらあんたはどうするつもり?」

 

「…………」

 

 突然、私に取ってずっと先の事を聞かれたから思考が上手く働かない。と言うよりも正直考えてもいなかった。今はみんなの約束を果たすことばかり考えて、これからの自分の事なんて微塵も考えてなかったから。

 

「そうですね。まだまだ先の事ですから考えてなかったですけど、多分にこ先輩が卒業したら私きっといないと思いますよ」

 

「居ないって……あんた、まさか……」

 

「変な風に考えでください。アイドル研究部に居ないって話ですから」

 

 全て事が上手くいけば確実に私の役目もお役御免で事が終わって、私が彼処にいる必要が無いだろうから。別に本当にいなくなるって言う話ではない。

 

「なら……また星野如月としてアイドル活動するの?」

 

 まあ、私がアイドル研究部に居ないならそうなるわけだけど、これも答えづらい質問だなあ。

 

「それも分かりませんけど、多分それはないと思います。にこ先輩知ってますよね。今の私じゃあ無理だってこと」

 

「知ってるけど、もしかしてって事もあるじゃない」

 

「もしかしても無いですよ。これは私の在り方の問題ですから」

 

「そうよね……。あんたならそう言うと思ったわ。悪かったわね変な話をして」

 

 私がそう断言するとにこ先輩は明らかに落ち込んだ顔をする。にこ先輩はやっぱりわたしがアイドルに戻るのを望んでるみたい。

 

「良いですよ。これからの事を考えるいい機会になりましたから」

 

 私はそう言って残っていたポテトを食べきって、ミルクティーで流し込む。にこ先輩も自分が買った飲み物を飲みきって片付け始める。

 

 そうして何か変な空気なままにこ先輩と別れて私はお姉ちゃんの家に向かった。

 

 その道中で私はにこ先輩に言われたことを思い出していた。

 

 にこ先輩はああ言ってたけど、今の星野如月は大切なものを失っている以上、アイドルとして活動することは絶対に無い。それに全てが上手く行くとは思ってない。

 

 上手くいくといってもμ'sに取って上手くいく話で合って私が上手くいく話ではない。何故ならμ'sがラブライブ本選に出場って時点でもう私は詰んでいるのだから。

 

 ラブライブ本選に行けば確実にあの子と会うだろう。そうなれば私の秘密も全てバレる。それで楽しい時間も終わり。

 

 それは私にとってとっても辛いことだけど、にこ先輩の約束を果たす為ならそれでもいい。

 

 だって今の私にはそれしか無いのだから。

 

 7

 

「お姉ちゃん……柔らかいね」

 

 私はお姉ちゃんの体に触れながらそんな感想を口にする。お互いの体も結構密着させているから、お姉ちゃんから女の子特有の良い匂いがしてちょっとドキドキする。

 

「委員長ちゃんやって柔らかいやん」

 

「そう……だけど……」

 

 確かに私も柔らかいけどお姉ちゃんと比べると、そっちの方が柔らかいから、そう言われても何とも言えない。

 

「それよりももうちょっと力入れるよ」

 

「良いよ……委員長ちゃんの好きなタンミングやって」

 

「じゃあ行くよ……」

 

 そう言って私はお姉ちゃんに合図をして、お姉ちゃんの背中を押して柔軟性を上げる練習を始めた。

 

「ふぅ、大体今日の練習はこんなものだね」

 

 考えておいた練習を一通りやって充分だと判断した私はこれで切り上げようとする。それにあんまりやり過ぎるのも良くないからね。

 

「そうやね。いくら家で出来るん練習とは言えちょっと熱くて汗掻いてきたんよ」

 

 動いて体が熱くなっているのか手で扇ぎながら体の熱を冷まそうとするお姉ちゃん。僅かに顔も紅くなっているせいか妙に色っぽいので、私の理性が飛びそうだったけどグッと抑える。

 

 そういう私も練習を手伝っているだけとはいえ、私も体を動かしてるからお姉ちゃんと同じように汗を掻いて、服が少しべたべたする。

 

「それにどっかの誰かさんはウチの体に触れる旅に興奮してるんみたいやったから余計やよね」

 

「さ、さあ、いっ、一体……だ、だ、誰のことだろうね。わ、私には分からないよ」

 

 目線を逸らしながらお姉ちゃんとは明後日の方を向く。何だろうさっきよりも汗が止まらないのだけど。

 

「動揺し過ぎや委員長ちゃん」

 

「べ、べ、別にそんなわけ無いじゃん。私は『白百合の委員長』だよ。そ、そんな事でど、動揺するわけ無いもん」

 

 お姉ちゃんの匂いとか嗅いでないし。薄着でハッキリとする胸が動く旅に凝視なんかしてないし。腋とか項とか脚とか瞳とか見て興奮なんてしてないから。

 

「そっか、そうやね。委員長ちゃんは『白百合の委員長』やもんね。でも残念、せっかく正直に言ったら一緒にお風呂に入って上げようと思ってたんやけどなあ」

 

「お姉ちゃんに触れる旅に興奮してました!!」

 

 一緒にお風呂って聞いた時点で私の行動は速かった。私はお姉ちゃんの方を向いて、光の速さで(それは言い過ぎだと思うけど)土下座をしながら、お姉ちゃんに正直に言う。

 

「素直でよろしい」

 

 そんな私の行動に驚かず堂々としてるお姉ちゃん。どうやら私の行動が読まれていたみたい。流石はお姉ちゃん私の扱いに慣れている。

 

 まあでも一緒にお風呂って言っただけで土下座する私も私だけどね。だって仕方ないじゃん。お姉ちゃんとお風呂だよ。それだけで土下座する価値はあるんだよ。それにこの前は一緒に結局入れなから余計に。

 

 それどころか一緒にお風呂に入るためなら何だってやるよ。と言うか入れたら思い残すことはない……。いや、やっぱり色々と思い残すことあるな私。

 

「それじゃあそろそろ入ろうっか」

 

「そうだね。グヘヘお姉ちゃんの体を合法的に胸とか色々と見られるなんて……」

 

「やっぱり入るんの止めよ」

 

「ちょっと待って!! 今の無し!! 無しだから何もしないから」

 

 お姉ちゃんと一緒に入れるってだけで興奮して、思わず本音を口にしてしまった。

 

「ホントに~委員長ちゃんちょっと自分の顔見てみん」

 

 そう言って私に手鏡を向けて私の顔が見えるようにしてくれて、私は自分の顔を見てみると、完全に顔がにやけてる。うん駄目だ。これじゃあ信じてくれないのは当然だ。

 

 それにしてもさっきからお姉ちゃんの顔が楽しそうに見えるだけど、口元も若干にやにやしているし、もしかして……。

 

「お姉ちゃん……私の事からかってる?」

 

「そんなわけ無いやん」

 

 絶対嘘だ。

 

「むぅ、お姉ちゃんの意地悪……」

 

「はいはい、いじけてないで入ろうね」

 

 そんなわけで私とお姉ちゃんは引っ張られる形で、お風呂に連れて行かれた。それから一緒にお風呂に入るために脱衣所に移動する。

 

「それにしても委員長ちゃん何時見てもスタイルが良いよね」

 

 脱衣所で服を脱いでいると、同じように服を脱いでいるお姉ちゃんがじろじろと見ながら、そんな感想を口にした。

 

「まあ、結構スタイルの良さには自信はあるけど、お姉ちゃんだってスタイル良くて私以上の良いものを持ってるでしょ」

 

 中学生アイドル星野如月は持ち前のスタイルの良さもアイドルの売りの一つだったし(最もあの事と比べ更に良くなってるから)スタイルの良さには自信がある。

 

 そんな私のスタイルに負けず劣らずと言うか一部完全敗北している。お姉ちゃんには私以上のお胸様を持っている。マジでどうしたらそんな風になるの。

 

「そんなにやけながら胸ばっかり見て言われても嬉しくないんやけど」

 

 どうやらついついお胸様の方を凝視していたみたい。だが仕方がないと思うだって普通の同性だって羨むレベル物なのに、女の子大好きな私からすれば宝の山だよ。

 

 触りたい。直ですごく触りたい。あのお胸様を触れて弾力を、感触を出来れば味も味わいたい。あと触られた時のお姉ちゃんの反応も見たい。

 

「委員長ちゃん。顔が凄く怖いんやけど」

 

 私の中でお姉ちゃんのお胸様を触りたいと言う欲求に飲まれていたけど、お姉ちゃんに怯えられて正気に戻る。

 

「はっ!! 危ない危ない、もうちょっとで欲望に飲まれるところだったよ。ありがとうお姉ちゃん」

 

 もし欲望に飲まれてお姉ちゃんを押し倒そうとすると、マジでマズイ。私の持ち前の不運とお姉ちゃんの幸運が相乗作用して、私の身に部室いるとき以上に酷い目に合うところだったよ。

 

「全く何でこう女の子を欲望のまま襲おうするときに限って、運の悪いことが起こるのはホントに止めてほしいね」

 

 何時も何時もそうだ。女の子と一線越えようとする旅に邪魔が入ったり、私の苦手な虫が飛んできたり、何故か頭上に何か落ちてきたりとなかなか一線を越えられない。

 

「ウチやにこっちたちに関してはその方が有難いんやけど」

 

「またまた冗談でしょ」

 

「冗談じゃないんやけどなあ」

 

「でもお姉ちゃんとは今のところ一線は越えられないけど、一緒にお風呂に入ってくれるからまあいっか。はやくお風呂入ろう」

 

 まだ脱いでいなかった下着を脱いだらお姉ちゃんの背中を押して一緒にお風呂に入る。何だかんだでお姉ちゃんの柔肌に触れられたからちょっと満足している自分がいた。

 

「委員長ちゃん前向きやけど、妙に色々と気になることを言ってるん気がするやけど」

 

「細かいことは気にしない気にしない」

 

「いや、流石に気にするよ」

 

 そんなわけでお姉ちゃんと楽しくお喋りをしながら楽しい楽しいお風呂の時間がやって来た。

 

 8

 

 楽しいお風呂の時間が始まったわけだけど、ここで少々問題が発生した。問題と言っても些細なものでホントすぐに済む話何だけど。でその問題はと言うと──

 

「何でお姉ちゃん洗いっこしてくれないの。私楽しみにしてたのに」

 

 そう。お風呂に入って早々に体を洗おうとして私が体を洗いっこしようと提案した。しかし、お姉ちゃんが私と洗いっこしてくれないと言う問題が発生したのだ。

 

「いや、別にやっても良いんやけど、ただ……」

 

 何かとても言いにくそうにする辺りが、私と洗いっこしてくれない理由なんだと思うけど一体なんなんだ。いや、言わなくても分かるけど一応。

 

「委員長ちゃん。取り敢えず自分の行いと言動を思い出してみようか」

 

「その必要はないよ。既に心当たりなら千以上思い付いたから」

 

 何時も何時もと言うかほぼ毎日日頃の行いを見つめ直す機会があるから、言われてなくても私の行動や言動に問題があることは把握済み。

 

「あぁ、そんなにあったんや……」

 

 私の言葉を聞いて何かとても可哀想なものを見る目で私を見てくるお姉ちゃん。止めて、私をそんな目で見ないで。マジで心折れそうになるから。

 

「分かったにこ先輩に誓って絶対変なことはしないから、洗いっこするのは髪の毛と背中と二の腕くらいにするから」

 

 私としてはお胸様を触れないのは苦肉の策だが四の五の言ってたら洗いっこってイベントすら逃してしまう。それだけは阻止しなければ。

 

「いやそれをにこっちに誓われてもなあ」

 

「何言ってるんの!? お姉ちゃん。にこ先輩は私にとっては神と同じ。いやそれ以上の存在だから私が誓うのは当然だよと言うか常識だよ」

 

「一体何処の国の常識や」

 

 さっきよりも可哀想なものを見る目で私を見てくるけど気にしない。何故なら私にとってにこ先輩はそこまでの存在だからね。毎日2時52分になったらにこ先輩のためにお祈りしてる。

 

 いやそもそもにこ先輩を先輩と呼ぶこと事態烏滸がましい。これからはにこ先輩の事をにこ神様と呼ぶべきだと思う。いやそうしよう。

 

 あっ、でもこれは私の心の中だけにしておこう。何かそうしてた方がいい気がしてきた。

 

 そんなわけで私の中でにこ先輩の事を心の中でにこ神様と呼ぶべきだと(勝手に)決まったわけだけど、まだ肝心な洗いっこの件が片付いていないことに気づく。

 

「お願いします。洗いっこしてください」

 

 正直こんなくだりで時間も使いたくも無いから、土下座してお姉ちゃんに洗いっこしてくれるように頼むことにした。しかし、全裸で土下座って何か色々と問題がある気がするのは気のせいだろうか。

 

「そこまでするんやね。じゃあしょうがないんやね。髪の毛と背中と二の腕は頼んだよ」

 

 よっし、何とかお姉ちゃんの許しも得て洗いっこすることに成功したし、二の腕も死守出来たから、これでお姉ちゃんの二の腕を堪能が出来る。

 

 二の腕の柔らかさはお胸様と同じくらいとよく言われるけど実際のところどうだろうか。自分で比べても良くは分からなかったけどまあ触れるだけ有難い。

 

「それじゃあさっそく髪から洗うよ。お姉ちゃん座って座って」

 

 お姉ちゃんに座ってもらい、やっと洗いっこが始められる。先ずは髪の毛を洗うために私の手にシャンプーを付けて洗いっこを始めようとしたが、私は忘れていた自分がとてもこういう時に限って運が無いことに。

 

 唐突にお風呂場の電気が切れて、辺りが急に真っ暗になる。

 

「えっ!? 何、急に」

 

 私は驚くが、ブレーカー落ちたのか電球が切れたんだろうと思い、一先ず手に付いたシャンプーを落とそうとシャワーの蛇口を探す。しかし暗くてよく見えなかったため、色々と何かを床に落としてしまった。

 

 何とか手探りで蛇口を見つけるが、ここで思わぬ事態が発生する。

 

「ちょっと冷たっ!!」

 

「ウチにも掛かってるんよ」

 

 何故かシャワーの温度が低く水になっていたのとシャワーの位置を確認してなかったので、水が私の体を直撃する。それどころかお姉ちゃんまで巻き込む事態になり、何とかシャワーを止めようとするが、更に不幸は続く。

 

 シャワーを止める前に自分の体を水に当たらないように足を動かすと、不意に何かヌメヌメするものを踏んでしまった。そのせいで足を滑ってしまい、バランスが崩れる。

 

「ちょっ……なにこれ!?」

 

 何とか転ばないように何か掴もうとするが、ここで私はあることを忘れていた。

 

「ちょ……何で手が滑るの……?」

 

 そう。私の手にはまだシャンプーが付いていたのだった。

 

 それに気付いたときにはもう遅い。私はそのまま地面に倒れるかと思ったが、更に予想外の事に湯船に顔からダイブする。

 

「ゴホッ……ゴ……ボボ……」

 

 何とか起き上がろうとするが、体勢も悪く足も手も滑りやすくなって、なかなか起き上がれない。

 

「委員長ちゃん!!」

 

 お姉ちゃんは私が溺れてるのに気付いて、私の事を引っ張って何とか助けられる。

 

 そうして助かった私だけど心の中であることを思っていた。神は私が二の腕にすら触れるなとでも言いたいのか。私は自分の不幸を恨みながらそう思った。

 

 9

 

「お姉ちゃんに……あんな姿見せるなんて……それよりも洗いっこが中止になるなんて……」

 

 お風呂に上がった私はお姉ちゃんの部屋の隅でいじけていた。自分の不運なところに落ち込んでるが、洗いっこが中止になったほうがメンタル的に辛い。

 

「何時までもいじけてないでこっち来たら?」

 

「……」

 

 そんな私を見かねてお姉ちゃんは声を掛けるけど、返事はしない。自分の失態を見られたのと洗いっこイベントを逃したことが、私にとって穴があったら入りたいレベルの事だから、正直誰とも話したくない。

 

「しょうがない。ウチが膝枕してあげるんからこっちおいでや」

 

「ホント!! 今行く!!」

 

 お姉ちゃんが膝枕してくれると言った直ぐ様、私は立ち直り、お姉ちゃんの膝まで飛び込んで行く。その間、さっきの失態の事を彼方へと追いやり、お姉ちゃんの膝に着く頃には忘れていた。

 

「お姉ちゃんの膝枕は落ち着く」

 

「ホント委員長ちゃんは甘えん坊さんやな」

 

 そう言いながらお姉ちゃんは私の頭を撫で始める。

 

「えへへ」

 

 何だろうお姉ちゃんに撫でられると心が落ち着くのは。やっぱりお姉ちゃんの母性が強いからかな。

 

「それにしても委員長ちゃんを膝枕するんとあのときの事を思い出すなあ」

 

「あのとき?」

 

「覚えてないん? ほら、ファーストライブの次の日の昼休みに屋上で膝枕したこと」

 

「覚えてるよ。私が悩んでいたときの事だよね」

 

 忘れるはずもない。あの日はずっと穂乃果ちゃんたちにどう謝ろうかと悩んでいた。そんなときにお姉ちゃんが来て、私の悩みを聞いてくれたことは忘れるわけもない。

 

 お姉ちゃんが悩みを聞いてくれたお陰で穂乃果ちゃんたちに(私の取り越し苦労だったけど)謝れた。それどころか、にこ神様を紹介する流れになって、何かそのあと色々とありすぎて忘れるのが難しい。

 

「そうやね。委員長ちゃんはどうも人付き合いが苦手な所があるから、今日も心配してたんやよ」

 

「心配? 私なんかした?」

 

 別に今日は特にお姉ちゃんの前で何か変なことした覚えが無いから、そう思われる節が見当たらないし、思い当たらない。

 

「いや今日家に来たとき何か委員長ちゃん落ち込んでたみたい見えたから何かあったんかなって」

 

 そうか、お姉ちゃんに会う前ににこ先輩とこれからの事を話して、私は楽しい時間に限るがあることに気付いてしまって落ち込んでいたんだ。

 

 それに気付いたお姉ちゃんが気を利かせてお風呂とか一緒に入ろうとか言ってくれたと思う。結局けど失敗して膝枕をしてくれてるわけだけど──。

 

「別に何でもないよ。気にしないで」

 

 出来ればこの話には触れないでほしい。触れられると私は自分の事を全部話さなきゃいけなくなる。

 

「やっぱりまだ委員長ちゃんが話してくれてない部分が関係あるん」

 

「ごめんなさい。まだ話すことは……出来ないから」

 

 こんな風に膝枕をしてくれるくらい私とお姉ちゃんは仲良いけど、まだ話すのは恐い。自分の事が嫌われるじゃないのか。必要とされなくなるじゃないかと思うと本当に恐い。

 

「そう。委員長ちゃんが話したくなるまでウチは待ってるから。委員長ちゃんは委員長ちゃんのペースでいいから」

 

「うん。ありがとう」

 

 正直な話お姉ちゃんには話しても良いかなって思い始めてる。あのとき私の事を受け入れてくれたお姉ちゃんならきっと私の事をちゃんと受け入れてくれるじゃないのかって。

 

「ねえ、お姉ちゃんに聞いていい?」

 

 けどそんな私の気持ちよりもその前にやらなきゃいけない事がある。

 

「何?」

 

「お姉ちゃんにとって絢瀬生徒会長は何?」

 

 今後、絢瀬生徒会長をメンバーに入れるために重要なこと。お姉ちゃんからこれを聞き出せなければ、きっと絢瀬生徒会長はメンバーに入れる展開を作るのは困難になる。

 

「そうやね。ウチにとってエリチは大切な親友や。本当に大切な」

 

 お姉ちゃんは私が一番欲しかった言葉を言ってくれて本当に良かった。きっと絢瀬生徒会長にも伝わってくれると思う。

 

「そう……ならその気持ちちゃんと伝えて上げて……最後に必要になるのはそういう言葉や気持ちだから……」

 

 あとはちゃんとお姉ちゃんが自分に思っている事を伝えることが出来れば最後の仕上げは万全になる。だからこそお姉ちゃんにはちゃんと伝えるように言っておく。

 

「そうやね。何か顔を見て言うんのは恥ずかしいやけど」

 

「頑張って、私も絢瀬生徒会長にちゃんとお姉ちゃんの言葉が伝わるように準備しておくから」

 

 ただ無闇に言葉を伝えたとしても相手に伝わらない事もあることを私は知っている。だからこそちゃんとお姉ちゃんの言葉が伝わるように準備しておかなければならない。

 

 それがお姉ちゃんの思い描いた九人の女神を揃えるための計画における私の最後の仕事。

 

 これで必要なピースは揃った。あとは明日やるべき事をやればもう少しで入ってくれるはずだと私はそう信じている。

 




と言うわけでにこと希それぞれも一対一で会話をして沙紀は絵里をμ'sに入れるための準備を終えた回でした。

次回から本格的に絵里を加入するために動いていきます。

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