ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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何か久しぶりにこんな感じの書いたなと思う回です。

それではお楽しみください。


十六話 ラブライブにエントリーしよう

 1

 

 あの日──あのファーストライブから早いものでもう一ヶ月時間が経った。その間色々な事があったなあ。

 

 穂乃果ちゃんたちに謝ったり。

 

 穂乃果ちゃんたちににこ先輩を紹介したり。

 

 にこ先輩に気絶させられてその間ににこ先輩が私のこと百合だと口を滑らせ挙げ句の果てには夜の学校に一人で置いていかれたり。

 

 アルパカと強敵(とも)になったり。

 

 私が休んでる間に私のファンクラブ(非公認)が暴動を起こして、その後私がそれを潰したり。

 

 海未ちゃんとリ〇ル鬼ごっこしたり。

 

 花陽ちゃんの悩みを聞いたり。

 

 階段から転げ落ちた挙げ句、花陽ちゃんに私が星野如月だとバレそうになったり。

 

 私が暴走して何故か海未ちゃんとキスをして色々と大変な目にあったり。

 

 生徒会の取材のお手伝いで監督やったり。

 

 真姫ちゃんが色々と私の事調べようとして、こそこそと裏で何か仕掛けて来たりと色んな事があった。

 

 思い返してみるとこの一ヶ月間色々と酷いかな。日頃の行いもあるだろうけどこの一ヶ月間は特に酷い。

 

 中でも海未ちゃんとキスしたのは一番不味かったかな。

 

 何とか謝って許してもらったけどあの日以来何か海未ちゃんとの距離間が分かりにくくなった。なんと言うか海未ちゃんから変な視線を感じるときがある。

 

 これは私の気のせいだと思いたいけど、多分気のせいだよね。

 

 それにしても花陽ちゃんに私がバレそうになったのは予想外だった。いや油断していたの間違いかな。

 

 希お姉ちゃんにバレなかったから大丈夫だろうと完全に油断した。でもそれはお姉ちゃんがアイドルに詳しくなかっただけで花陽ちゃん相手じゃあ無理があったかな。

 

 そのせいで真姫ちゃんが何から私の事調べ挙げてるみたいだけど、彼女じゃあ調べられるのは精々星野如月の経歴まで。

 

 花陽ちゃんを取り込んでいるみたいだけど、まあ彼女がさらっと口にしてたあの子の事を調べれば、少しは分かるかもしれない。まあ、それでも私自身には辿り着けない。

 

 だから私は真姫ちゃんことは好きにさせておく。これは私自身が口にするか、私の事を本当に知っている人物しか分かるはずもないから。

 

 なので今は目の前の事に集中するべきだ。

 

 今私がやるべき事は九人の女神を集めること。

 

 当初の目的であるμ'sの名の通り九人の女神の内七人は集めることが出来てる。

 

 あと二人……いや事実上あと一人。

 

 彼女をメンバーに加えられればほぼ自動的にもう一人の女神──希お姉ちゃんが加わるのは本人から既に確認済み。

 

 だからこそ私は状況的に一番遅く加入する希お姉ちゃんにみんなと後れを取らないように、練習に付き合うためにお姉ちゃんの家に行って練習をしてるわけ。

 

 決して寂しいからって訳じゃないんだから。

 

 でも最後の一人は特に難関。どう彼女をどうメンバーに引き入れるべきか。さんざん考えてるけど引き入れるきっかけを私自身が潰してるそんな気がする。

 

 だけどそんな悠長に構えてる場合ではない。今はもう六月の上旬廃校確定のカウントダウンは確実に近づいている。

 

 廃校確定のタイムリミットが私の予想では遅くても八月だと予想しているが、現実はそれよりももっと早いはず。

 

 そのことを穂乃果ちゃんたちに伝えるべきか。いやイタズラに不安させる要素を取り込ませて、これからの活動に支障をきたすのは不味い。

 

 今のμ'sは少しずつではあるが結果だし始めてる。その証拠にランキングも大分上がってきてる。あとは彼女たちの士気を上げる何かがあれば更に上へ行けるだろう。

 

 だから私に出来ることは何時ものようにバカやって今の雰囲気を壊さないこと。そして何かあったら冷静に事に当たれ。

 

 それがμ'sのマネージャーとして、篠原沙紀として、今の私に出来ることなんだから。

 

 2

 

 PV撮影が終わった数日後──私たちは部室で集まってみんなが揃うのを待っていると、花陽ちゃんが息を上げながら部室に入ってきた。

 

「どうしたの? 花陽ちゃん」

 

 そんな花陽ちゃんを見て何か合ったのか心配になる穂乃果ちゃん。普段は大人しい花陽ちゃんが慌ててここに来るのはただ事ではない。

 

「た、た、た、助けて」

 

「助けて?」

 

「なんだって!! いったい誰だ。私の花陽ちゃんに不埒な事をするなんて。私が成敗……いえ調教してあげないと」

 

「落ち着きなさいよ。全く……」

 

 助けてと聞いて、私は鞄からマイフェイバリットウェポンを取り出して部室を飛び出そうとするけど、花陽ちゃんの後ろに居た真姫ちゃんに肩を掴まれて止められる。

 

「今さらっと沙紀ちゃん。花陽ちゃんのこと私のって言ってなかった?」

 

「言ってたね。しかも成敗を調教って言い直したときの顔は本当に何かやりそうな顔だったよ」

 

 当たり前だよ。こんな可愛い花陽ちゃんに手を出そうとする輩に慈悲なんて与える必要なんてないよ。やるなら徹底的に生まれたことを後悔させたないとね。

 

「いえ……そうじゃなくて、大変なんです」

 

 私の行動に花陽ちゃんは若干戸惑いながらもさっき言ったことを訂正する。

 

 何だ誰かに何かされたって訳じゃないんだね。良かった良かった。じゃあ花陽ちゃんは何をそんなに慌てていたんだろう。

 

「ラブライブです。ラブライブが開催されることになりました」

 

「ラブライブ!」

 

 ラブライブと言う単語に反応する穂乃果ちゃん。もしかして知ってるのラブライブ。

 

「……って何?」

 

「えっ!! 今の感じ知ってそうだったじゃん」

 

 知ってそうな素振り見せて実は知らなかったみたいだから思わずツッコンでしまった。

 

「沙紀先輩がツッコミなんて珍しい。梅雨だけどこれは明日雪でも降るかにゃ~」

 

「凛ちゃん酷い!! 確かに珍しいけど良いじゃん、たまにはツッコませてよ」

 

 最近ボケてばっかりでたまには気分転換しないとボケもマンネリ化しちゃうんだよ。そうしないとここでのキャラが……。

 

「文武両道で才色兼備の仕事が出来るただのマネージャーになっちゃうよ」

 

「いや、その方がいいのですが……いや……でも私も沙紀に……」

 

 ボソッと何か海未ちゃんが言ったような気がする。気のせいだよね。それじゃあ気を取り直して──

 

「花陽ちゃん。ラブライブの説明お願いします」

 

「はい……」

 

 花陽ちゃんはラブライブの説明をするためにパソコンの前に座り、ラブライブの特設サイトを開く。そして花陽ちゃんはパソコンの画面を見ながら説明を始めた。

 

「スクールアイドルの甲子園、それがラブライブです」

 

「エントリーしたグループの中からこのスクールアイドルランキング上位二十位までがライブに出場、ナンバーワンを決める大会です」

 

 スクールアイドルの甲子園。なるほどその表現は分かりやすい。それにルールも単純だが条件は難しくある。そんなルールはわりと私好みだ。

 

「噂には聞いてましたけど、ついに始まるなんて」

 

「へぇ~」

 

「スクールアイドルは全国的にも人気ですし」

 

 海未ちゃんの言う通りスクールアイドルは人気を集め今では千近くのグループが存在する。正直このラブライブのような大きな大会をやるのは遅すぎなくらいに。

 

「盛り上がること間違いなしにゃあ」

 

 間違いなく盛り上がるだろう。何せ今のスクールアイドル上位に位置するグループは下手なプロのアイドルよりも技術や魅力的。いくらアマチュアの大会と言ってもバカにはならない。

 

 このラブライブ多分多くの事務所やプロダクションもスポンサーとして資金援助をしてるはず。

 

 スポンサーにとっても未来のアイドル──金の卵を見つける場所としての役割には絶好の機会。下手にスカウトして回るよりもよっぽど効率もいい。

 

 少なくともあのプロダクション──あの社長ならやりかねない。となると少々面倒だなぁ。

 

「今のアイドルランキングから上位二十組となると……一位のA-RISEは当然出場として……二位三位は……まさに夢のイベントチケット発売日は何時でしょうか。初日特典は……」

 

 これから始まるラブライブに胸を弾ませながら、何時でもチケットを買う準備が出来てると言わんばかりに携帯を持って待機する花陽ちゃん。

 

「って花陽ちゃん見に行くつもり?」

 

「当たり前です!! これはアイドル史に残る一大イベントですよ!! 見逃せません」

 

 立ち上り穂乃果ちゃんに詰め寄る花陽ちゃん。その表情は何時も大人しい彼女とは思えないほど気迫に満ちて、穂乃果ちゃんもそんな彼女にたじろいでいた。

 

「アイドルの事だとキャラ変わるわよね。どっかの誰かさんみたいに」

 

 花陽ちゃんの豹変に呆れながら真姫ちゃんはどっかの誰かさんの方を見る。

 

「さて、誰の事かな? 私には分からないよ」

 

 私は目線を剃らしながら惚けるけど周りの視線が痛い。すごく痛い。全く誰のせいなんだか。

 

「凛はこっちのかよちんも好きだよ」

 

「私はそんな凛ちゃんが大好きだよ」

 

「え~、沙紀先輩に言われても嬉しくない」

 

 わりとマジなトーンで言われて、私はその場に崩れ落ちる。凛ちゃんに嫌われるなんて……私凛ちゃんにそんな嫌われることなんてした? 

 

 いいや、初対面で急に頭撫でただけであとは可愛い可愛い言い続けただけ。だから嫌われる要素なんてあるわけがない。

 

「なんだ私てっきり出場目指して頑張ろうって言うのかと思った」

 

 安定の落ち込んでいる私をスルーして穂乃果ちゃんはラブライブに出場するのかと思っていたみたい。私にはどちらかと言うと観客として見に行く満々な感じにしか見えなかったけど。

 

「うぅ、えぇ!! そ、そんなわたしたちが出場何て恐れ多いです」

 

 いざ自分たちが出場と言うと、さっきまでの気迫は何処へとやらと何時もの大人しい彼女に戻っていた。

 

「キャラ変わりすぎ」

 

「凛はこっちのかよちんも好きにゃあ」

 

「私もそんな凛ちゃんが大好きだよ。愛してるくらいに」

 

「……」

 

「ごめんなさい。私が悪かったです。ですから無視だけは勘弁してください」

 

 下級生に全身全霊土下座する上級生の姿がここにあったが、断じて私だとは思いたくはない。

 

「でもスクールアイドルやってるだもん。目指してみるのも悪くないかも」

 

「っていうか目指さなきゃダメでしょ」

 

「確かに今後の目標としても十分良いと思うし」

 

 本音を言えば正直こういうイベントを待ってた。

 

 廃校阻止って言う漠然とした目標よりもこういう結果の見える目標があるほうが士気も上がりやすい。それに廃校阻止の手助けにもなるようなイベントを。

 

「そうは言っても現実は厳しいわよ」

 

 真姫ちゃんの言う通りラブライブ出場って言う現実は厳しい。千組以上あるスクールアイドル中から上位二十組のみ。全体のわずか二%しか出場出来ない。

 

「ですね。確か先週見たときはとてもそんな大会に出られるような順位では……」

 

 そう言って海未ちゃんはμ'sのランキングを確認するけど、信じられないものを見たかのように驚いた。

 

「あっ、穂乃果、ことり、沙紀」

 

 私たちも海未ちゃんに呼ばれてパソコンを覗くと、そこには前回とは比べられないくらいμ'sの順位が上がっていた。

 

「スゴイ」

 

「順位が上がってる」

 

「ヤバイ、女の子良い匂いがすぐ近くで感じられる」

 

 みんなが順位が上がって驚いているなか私はそんなつもりはなかったけど、すぐ近くで女の子の匂いを嗅いでしまってそれどころではなかった。

 

「嘘!!」

 

「どれどれ」

 

 真姫ちゃんは信じられないみたいでその場から立ち上り、凛ちゃんは確認しようとパソコンの前まで来て覗き込む。

 

「急上昇のピックアップスクールアイドルにも選ばれてるよ」

 

「ホントだあ、ほらコメントも」

 

 書かれたコメント読むと全体的に好評で中には彼女たちを応援してくれるコメントもあったりする。

 

「もしかして凛たち人気者?」

 

「もしかしても何も確実になろうとしてるね」

 

 現にこうして結果として現れ始めてる訳なんだから出来ることなら、いや今は絶対にこの波に乗っておきたい。

 

「そのせいね」

 

 順位やコメントを見て何か納得したような事を言う真姫ちゃん。

 

「えっ?」

 

「最近学校の帰りに出待ちされてたのよ」

 

『出待ち!?』

 

 みんなは真姫ちゃんが出待ちされてたのに驚く。そんな真姫ちゃんに詰め寄って、出待ちの時の状況を根掘り葉掘り聞き出そうとする。

 

 真姫ちゃん言うには学校の帰りに、中学生二人に一緒に写真を撮って欲しいと頼まれたみたい。最初は急に写真を撮って欲しいと頼まれたから断ろうとしたけど、落ち込んだ中学生を見て写真を撮ったみたい。

 

「嘘!? 私全然ない……」

 

 真姫ちゃんの話を聞いて今のところ一度もなかったみたいで落ち込む穂乃果ちゃん。こればっかりはどうしようもない。

 

「そうゆうこともあります。アイドルって言うのは残酷な格差社会でもありますから……」

 

 ホント、花陽ちゃんの言う通りだよ。人気があるかどうかはファンが多く居るかどうかで簡単に分かっちゃうんだよね。

 

「でも写真なんて真姫ちゃんもずいぶん変わったにゃ~」

 

「うんうん。前の真姫ちゃんならお断りしますってツンツンした感じで言いそうだもんね」

 

 μ'sに入る前の真姫ちゃんならツンデレのツン部分しか見せてなかったからそんなことしないと思うけど、今は大分丸くなって、もしかしたら……。

 

「わ、私は別に……」

 

「あっ! 赤くなったにゃあ」

 

「照れちゃって真姫ちゃん可愛いんだから、いいよどんどん私にデレデレ部分を見せちゃっても」

 

 凛ちゃんと私は顔が赤くなった真姫ちゃんをからかうと少し頬を膨らまして、凛ちゃんの頭上にチョップを食らわせて、私には腹部に拳を入れられる。

 

「にゃあ!」

 

「ゴフッ!」

 

「イッタイよ~」

 

「何故……私は……?」

 

 凛ちゃんは殴られた頭部を花陽ちゃんに撫でてもらいながら泣くけど、私は自分に本気の拳に疑問を持ちながら一人で横わたる。もちろん誰も心配してくれない。

 

 とても悲しいなあ。誰も私の心配してくれないなんて。

 

「あんたたちがいけないのよ」

 

「あの……私なら本気で殴っても問題ないって風潮な止めて頂きたいのですが……これでも一応女の子なので……」

 

 ちょっとからかっただけでこの仕打ち。少し前だったらそんなことにこ先輩しかなかったのに今となっては海未ちゃん、真姫ちゃんと過激なツッコミ組が増えてしまった。

 

「でもきっと私に心を開いてくれてるだよね。全くみんなツンデレさんなんだから」

 

「どうしたらそんな思考になるのよ……」

 

 呆れた目で私の事を見てくる真姫ちゃんだけど、無関心で無視を決め込まれるよりはまだまし。無関心じゃないってことはまだ脈ありってことだからね。

 

「ホント、沙紀ちゃんは前向きだよね変なところで」

 

「誉めてくれてありがとう、ことりちゃん」

 

「いえいえどういたしまして」

 

 流石は私のソウルフレンド分かってる。それにしてもまだ愛しのにこ先輩が来てないみたいだけど、何をしてるのかな。そろそろにこ先輩の愛を受けないと死んじゃいそうなんだけど。

 

「みんな聞きなさい。重大ニュースよ」

 

「あっ、にこ先輩」

 

 噂をすれば影。にこ先輩が勢いよく扉を開けて何かを言いたくてうずうずしてるよう感じで部室に入ってくる。

 

「にっこせんぱ~い。遅いですよ。私にっこにっこに~成分を取らないと死んじゃうんですから」

 

 にこ先輩が入ってきた瞬間。もっと言えばツインテールが見えた瞬間に私はにこ先輩に飛び付きにっこにっこに~成分を採取しようするけど、にこ先輩にかわされる。

 

 かわされてことで私は床に倒れるわけだが、そんな前のめりに倒れた私の背中をにこ先輩は踏みつける。

 

「フフフ、聞いて驚くじゃないわよ」

 

「イタイイタイ。でも痛みを通じてにこ先輩の愛が感じてどんどん快感に変わっていく。あぁ……気持ち……いい……」

 

 私の背中を踏みながら何かを言おうとしてるけど、みんなの目はなんか可哀想な目で私の事を見てそれどころではなかった。

 

「今年の夏ついに開かれることになったのよ。スクールアイドルの祭典……」

 

「あっ……ラブライブですか?」

 

 そんなことには気にも止めずににこ先輩は笑顔で重大ニュースを発表しようとして、最後に少し溜めて期待させようとしたけど、にこ先輩が何を言いたいのか気付いたことりちゃんが先に言ってしまう。

 

「……知ってるの?」

 

 先に言われて笑顔のまま数十秒固まり既にみんなが知っているのか確認する。そして顔を見ただけで大体察したみたいで、踏みつけてる私から離れて一人で落ち込むにこ先輩だった。

 

 3

 

「どう考えても答えは見えてるわよ」

 

 生徒会室の前で入るのを躊躇ってる穂乃果ちゃんに真姫ちゃんはそう忠告する。

 

「学校の許可? 認められないわ」

 

 凛ちゃんが(似てるかどうかは別として)絢瀬生徒会長の真似をする。そんな凛ちゃんを可愛いと思いながら、まあ今のあの人なら言いそうだなあと考える。

 

「でも、今度は間違いなく生徒を集められると思うけど」

 

「そうだね。ラブライブのみたいな大きな大会なら本選に出場に出来ればかなり学校アピールになるはずだよ」

 

 みんなで話し合ってラブライブにエントリーすれば、学校のアピールになって廃校の阻止にも繋がる。そう思って、まずはラブライブにエントリーしようと、学校の許可を取りに来たんだけど。

 

「そんなのあの生徒会長には関係ないでしょ。私らのこと目の敵にしてるだから」

 

 そう。にこ先輩の言う通り現在の生徒会──正しく言えば絢瀬生徒会長は私たちの事を目の敵にしてる。

 

 理由としては生徒会長としての義務感から来てるとこもあるのと、もう一つ希お姉ちゃんから聞いた絢瀬生徒会長のあれだろう。

 

「どうしてわたしたちばっかり……」

 

 理由を知らない花陽ちゃんたちからすれば絢瀬生徒会長に睨まれてるのは不安でしかない。それもそろそろ解消しなければならないと、一々こんなことで時間を取るのも馬鹿みたいだし。

 

「それは……あっ!! 学校内での人気を私に奪われるのが怖くて」

 

「にこ先輩ならもうとっくに私の中ではナンバーワンですよ」

 

 にこ先輩の言ったことがつい可愛くて私はにこ先輩に抱き付く。

 

「はいはい、他所でやりなさいよ」

 

「ちょっと待ちなさいよ!!」

 

 私とにこ先輩が仲良く戯れると真姫ちゃんは気を利かせてくれたのか、体よく厄払いされたのか、分からないけど(多分後者だけど)教室の扉を閉めて二人きりにする。

 

 そのあとは私たちがどうなったかって? それはもちろん何時ものようににこ先輩の愛を受けて満足しましたよ。

 

「もう許可なんて取らずに勝手にエントリーしたらいいんじゃない」

 

 一仕事を終えた真姫ちゃんはもう学校の許可が取れないなら、勝手にエントリーしようなんて身も蓋もない事を提案する。

 

「駄目だよ。エントリーの条件にちゃんと学校の許可を取ることって」

 

 花陽ちゃんの言う通りラブライブにエントリーするには、学校の許可を取らなければならないと出場規約には書かれてる。だから学校の許可は絶対必要。

 

「じゃあ直接理事長に頼んでみるとか」

 

 さっきの案とは打って変わって、いっそのことこの学校の理事長に頼むなんて大胆な事を言う真姫ちゃん。

 

 なるほど、それは妙案かもしれない。

 

「えっ? そんなこと出来るの?」

 

「確かに部の要望は原則生徒会を通じてとありますが、理事長ところに直接行くことが禁止されてる訳では……」

 

 穂乃果ちゃんは真姫ちゃんの妙案が可能なのか聞くと、海未ちゃんは音ノ木坂の校則を思い出しながら出来なくもないじゃないのか言う。

 

 私も校則を思い出してみるけど、あの書き方なら可能だろう。

 

「原則なら対処はしてくれるはずだよ」

 

 原則とは基本的なんだから直接理事長に頼む事事態は出来る。承認されるかどうかは別として。

 

「でしょ。なんとかなるわよ。親族もいることだし」

 

 そう言って真姫ちゃんはことりちゃんのほうを見る。

 

 そういえばことりちゃんは理事長の娘だったね。なら少しくらいなら融通は聞いてくれるかもしれない。頼むにしても承認するのにも確率は少し高くなるかも。それにしても……。

 

「真姫ちゃんの使えるものはどんどん使っていくスタイルは好きだよ」

 

 そう言って抱き付こうとするけど、真姫ちゃんは紙一重でかわして理事長室に移動する。

 

「もう真姫ちゃんのいけず~」

 

 そんなことを言ってから私はみんなのあとに続いて理事長室の前までに来る。だけど、先ほどの生徒会室と同様に穂乃果ちゃんは、中に入るのに躊躇っていた。

 

「更に入りにくい緊張感が……」

 

 穂乃果ちゃんの言うことは分からなくもない。只でさえ職員室に入るのも緊張するのに、それよりも立場の上の理事長室に入るのは、もっと緊張する。

 

「そんなこと言ってる場合」

 

「分かってるよ」

 

「じゃあ失礼します」

 

 穂乃果ちゃんが入る決意を固めたところで、私は理事長室にノックをして扉を開けて堂々と中に入っていく。

 

「ちょっと沙紀ちゃん!! そんな躊躇いもなく」

 

 迷いもなく理事長室に入って行った私に驚きながらも、穂乃果ちゃんたちはあとに続いて中に入るとそこには──

 

「お揃いでどうしたん」

 

「……」

 

「あぁ! 生徒会長」

 

 希お姉ちゃんと絢瀬生徒会長が理事長室に既にそこに居た。

 

「タイミングわる」

 

 にこ先輩はボソッと言うが確かにタイミングが悪い。絢瀬生徒会長にバレないように理事長に頼もうと思っていたのに、理事長室に絢瀬生徒会長がいるじゃあ意味がない。

 

「何のようですか」

 

 そう聞いてくる絢瀬生徒会長の言葉には、敵意みたいなのを感じた。

 

「理事長にお話があって来ました」

 

 その言い方に癪に触ったのか真姫ちゃんは、前に出ていき絢瀬生徒会長に噛み付いてくる。

 

「各部の理事長への申請は生徒会を通す決まりよ」

 

「申請とは言ってないわ。ただ話があるの」

 

「真姫ちゃん上級生だよ」

 

 坦々とした物言いで返してくる絢瀬生徒会長。彼女に対して真姫ちゃんは腹立ったのか言葉遣いも荒くなったけど、穂乃果ちゃんが止める。

 

「そうですよ。二人ともこんなところで啀み合っても駄目ですよ」

 

 絢瀬生徒会長の前なので、委員長モードをONして二人の間に入る。

 

「篠原さん。やっぱり貴方まだ彼女たちの肩を持つのね」

 

「ええ、私はμ'sのマネージャーですから」

 

 どうやら私が穂乃果ちゃんたちと行動してる理由がまだ分かってないみたいだったので、簡単な理由だけ言って真姫ちゃんを下がらせる。

 

「どうしたの?」

 

 そんなことをしていると、奥から理事長が様子にこちらにやって来た。

 

「理事長にお話が合ってやって来ました」

 

 そうして私たちは理事長にラブライブにエントリーしたいとお願いするため、理事長に説明を始めた。

 

「へえ、ラブライブね」

 

 理事長に一通りラブライブについて説明するとそんな反応だった。ちなみに一年生には外で待機してもらってる。流石に生徒会の二人を含めても十一人も部屋の中にいるのは人口密度が高過ぎるから。

 

「はい、ネットで全国的に中継されることになってます」

 

「もし出場出来れば学校の名前をみんなに知ってもらうことになると思うの」

 

 ラブライブ本選に出場出来るれば、どんなメリットがあるか説明する海未ちゃんとことりちゃん。

 

「私は反対です」

 

 これまで黙って話を聞いていた絢瀬生徒会長が、話に割り込んできた。

 

「理事長は学校のために学校生活を犠牲にするようなことはすべきではないと仰いましたであれば」

 

「そうね。でも良いじゃないかしらエントリーするくらいなら」

 

 絢瀬生徒会長の思惑とは裏腹に理事長はエントリーしても良いと口にする。

 

「本当ですか!?」

 

「えぇ」

 

 理事長の決定に確認する穂乃果ちゃん。理事長は笑顔で答える。

 

「ちょっと待ってください。どうして彼女たちの肩を持つんですか」

 

「別にそんなつもりはないけど」

 

 身内贔屓とでも思っているだろうか理事長の判断に納得いかない様子の絢瀬生徒会長。

 

「生徒会も学校を存続させるために活動させてください」

 

「それは駄目」

 

「意味が分かりません」

 

 本当に意味が分かっていない顔をしてる絢瀬生徒会長。どうやらまだ彼女は気付いていないみたい。穂乃果ちゃんたちと絢瀬生徒会長の決定的な違いに。

 

「そう? 簡単なことよ。ねえ篠原さん」

 

「そうですね。理事長が言いたいことは分かります」

 

 何故私にそんなことを聞いたのか分からないけど質問には答える。しかし私と理事長じゃあそんな接点があった訳じゃないのに。

 

 そんな理事長の反応を見た絢瀬生徒会長は納得いかないまま理事長室の扉を開けっ放しで無言で出ていった。

 

「エリチ……」

 

 希お姉ちゃんはそんな絢瀬生徒会長を見て、彼女の心配をして名前を呼ぶ。だけど、その場に居ないに彼女には聞こえてる筈もない。

 

「ただし条件があります」

 

「勉強が疎かになってはいけません。今度の期末試験で一人でも赤点を取るようなことがあったらラブライブへのエントリーは認めませんよ。いいですね」

 

 学生の本分は勉強だし、まあ条件としては妥当な所だろう。たった赤点にさえならなければラブライブにエントリー出来るなんて簡単な条件。

 

「まあ流石に赤点は無いから大丈夫……だと……あれ?」

 

 メンバーを見てると、その場で膝を付いたり、遠い目をするなどするメンバーが三名ほどいた。

 

 どうやらラブライブへのエントリーの道は前途多難みたい。

 

 4

 

「大変申し訳ありません」

 

「ません」

 

 理事長から条件付きではあるが許可は取れたことで部室に戻ると、早々に穂乃果ちゃんと凛ちゃんは私たちに頭を下げた。

 

「小学校の頃から知ってはいましたが……穂乃果」

 

 そんな穂乃果ちゃんの姿を見て呆れる海未ちゃん。

 

「数学だけだよ。ほら小学校の頃から算数苦手だったでしょ」

 

「7×4」

 

 実際にどのレベルで算数が出来ないのか確認したみたいで花陽ちゃんが問題を出してみる。

 

「26……」

 

「かなりの重症です」

 

 まさかの九九を間違えるレベルだとは思わず、海未ちゃん以外が無言となり海未ちゃんは更に呆れる。

 

 これ、わざとなんだよね。そうだと思いたい。

 

 そう思いながら次の問題児のほうを見る。

 

「英語。英語だけはどうしても肌に合わなくって」

 

「確かに難しいよね」

 

「そうだよ。大体凛たちは日本人なのにどうして外国の言葉をいけないの!?」

 

 ここで英語が出来ない人の共通の言い訳をする辺り凛ちゃん本当に英語が出来ないみたいだ。

 

「屁理屈はいいの!!」

 

 まあそんなこと言う人は即行で怒られるのも最早テンプレと言うか、お約束と言うべきか、真姫ちゃんに怒られる凛ちゃん。

 

「真姫ちゃん怖いにゃあ」

 

「これでテストが悪くてエントリーが出来なかったら恥ずかし過ぎるよ」

 

 まさか出場出来ない理由がテストで赤点を取ったから何て、他の学校に知られたらとんだ笑い話だよ。それだけは阻止しなければ。

 

「そうだよね」

 

「やっと生徒会長を突破したって言うのに」

 

「全くその通りよ」

 

 今まで一人黙っていたにこ先輩だけど、その声は妙に震えていた。

 

「赤点なんか絶対取っちゃ駄目よ」

 

 そういえばにこ先輩の成績は……いやきっとにこ先輩なら乗り越えてくれるはずだよ。

 

「にこ先輩……成績は」

 

「にこ……にっこにっこに~が赤点なんて取るわけないでしょ」

 

「動揺しすぎです」

 

 ことりちゃんに成績について聞かれると、明らかに動揺して海未ちゃんにツッコミを入れられる。

 

 動揺してるにこ先輩も可愛いが、これはこれで不味い事態。

 

「とにかく試験までに私とことりが穂乃果の、花陽と真姫は凛の勉強を見て弱点教科を何とか底上げすることにします」

 

 とりあえず各学年分担して二人に勉強を教える案を出した海未ちゃん。教える人たちも成績は良かったはずだから問題はない。

 

「それに私たちには心強い人がいますし」

 

 海未ちゃんがそんなことを言って私のほうを見ると、全員が一斉に私のほうを見た。

 

「そんなみんなに見られると私照れちゃうよ」

 

 顔を隠しながら照れる素振りをする私だけど、穂乃果ちゃんたちとは違う意味でみんなに呆れた顔をされた。

 

「ホントに沙紀先輩って頭いいの? 全然そうには見えないにゃあ」

 

「うんうん。どっちかと言うと私たちと同じ側だよね」

 

 何かとても失礼なことを二人に言われた気がしたけど気にはしない。何時ものように日頃の行いのせいだし。

 

「ホント、そうだと思いたいわよ。沙紀あんたこの前のテスト順位と点数いくつだった」

 

「えっ? 前のテスト順位と点数ですか。一位で総合は確か……498点だったと思いますよ。興味なかったんであまり覚えてませんけど」

 

 にこ先輩に聞かれて思い出すけど、本当に興味がなかったから曖昧でそんな位だったかなと自信がない。

 

「一位で……498点って……」

 

「ほとんど満点じゃん」

 

「しかも興味ないって……」

 

 私が言ったことに驚いている穂乃果ちゃんたち。そんな驚くことかな。まあ確かに一位はスゴいか。

 

「じゃあにこ先輩は沙紀先輩が担当する? その調子じゃあ三年生の範囲まで勉強してそうだし」

 

「いやいや流石に三年生の範囲まで勉強してないよ。だって勉強したら授業退屈になるから」

 

 そこまで勉強熱心って訳じゃないからそんな意識高いことなんてしてないよ。

 

「退屈になるって……もしかして沙紀ちゃん……家で予習や自習一切してないの?」

 

「してないよ。授業一回受ければ分かるし、それにそんなことする暇があるならにこ先輩や可愛い女の子について考えた方がよっぽど有意義だから」

 

 ことりちゃんの質問にそう答える。実際に授業を受ければ分かるし、余程の事がなければ予習なんてしない。

 

 中学の頃は予習し過ぎて授業が一年近く退屈になったことを反省して今はしないようにしている。

 

「沙紀ちゃんの価値観がよく分からないけど、スゴいってことだけは分かったよ」

 

「でもそれだけスゴいって事はわたしたちも教えてもらいながら勉強できるって訳だよね」

 

「そうか!! 沙紀ちゃんに教えてもらえば赤点回避なんて余裕だよね。それに海未ちゃんよりも優しく教えてもらえそうだし……だから沙紀ちゃん教えて」

 

 そう言って私に教えて貰おうと頼みくる穂乃果ちゃん。途中なんか小声で聞こえなかったけど、多分海未ちゃんよりも優しくとか何とか思っただと思う。

 

「いいよ。手取り足取りAtoZまで教えてあげるよ……じっくり……たっぷりとね……」

 

「いややっぱりいいや。何か身の危険を感じたから」

 

 私は穂乃果ちゃんに近づいて、耳元で良いと囁くと即答で拒否された。

 

「何で!! 私が穂乃果ちゃんや他にみんなに何かするとでも」

 

『うん。すると思う』

 

「みんな即答!! 何故!! いやもうなぜも何も日頃の行いだから分かりきってるけどもそれでも……ごめんなさい。教えさせてください」

 

 そうして私は教えてあげれるように頼むために誠意を込めて土下座をする。

 

「教える側が土下座するなんて見たことがありませんよ」

 

 海未ちゃんが呆れた声でそんなことを言うが私にとっては土下座するまでの価値がある。何故なら──

 

「本音は?」

 

「合法的に女の子の柔肌とか匂いが堪能できるまたとない機会だから……はっ!! しまった。口が滑った。今のなしで!!」

 

 絶妙なタイミングでことりちゃんに聞かれて私は思っていたことを口にしてしまった。けどもう遅い。私の完璧な作戦が夢と消えるのか。

 

「やっぱり沙紀に頼るのは止めて私たちだけで頑張りますか」

 

「待って待ってstopplease。真面目にやるからホント真面目にやるから。証拠として委員長モードで勉強を教えるから教えさせてください」

 

「はぁ、分かりました。安全は確保しましたので一先ず沙紀はみんなのフォローをお願いします」

 

 全力で説得すると、溜め息混じりで海未ちゃんは許可をいただけた。これで何とか私も教える権利を得たわけで話は纏まったけど、まだ一つ考えなきゃいけないことがある。

 

「でもそれじゃにこ先輩は誰が担当する?」

 

「えっ!? だから言ってるでしょにこは……」

 

 そう。まだにこ先輩を教える人を決めてない。それにしてもにこ先輩は往生際が悪いもう素直になっちゃえばいいのに。ホントにこ先輩可愛いなあ。

 

 しかしホントにこ先輩の勉強を誰が担当するのだろうか。まあ、私が三年生の範囲まで勉強すれば済む話なんだけど。

 

 いや待って。今ここで私がにこ先輩の担当を志願すればにこ先輩と二人きりで勉強出来るじゃない。おはようからお休みまでずっと? 

 

 ヤバイ。これは非常にヤバくてチャンス。ならばこれは志願しかあり得ない。うん、志願しかないね。

 

「それはウチが担当する」

 

 私が志願しようとすると別の所からとても聞き覚えのある声が聞こえた。そして声の聞こえたほうを向くとそこには──

 

「希」

 

 希お姉ちゃんが気配もなくいつの間にか部室に来ていた。しかし、相変わらずお姉ちゃんは神出鬼没だよね。いや、神出鬼没ってよりも気配を消すのが上手いって言うべきかな。

 

 私でもそう簡単には気配だけじゃあ見つからないし。匂いさえ分かれば一発なんだけど。

 

「いいんですか?」

 

 突然現れた希お姉ちゃんににこ先輩の勉強を見てもらって良いのか聞く穂乃果ちゃん。

 

「言ってるでしょ。にこは赤点の心配なんて……ひっ!!」

 

 またしてもにこ先輩が断ろうとすると一瞬希お姉ちゃんが悪い顔をして、にこ先輩の背後にまで移動するとお姉ちゃんお得意のわしわしのポーズを取る。

 

「嘘付くとわしわしするよ」

 

「分かりました。教えてください」

 

 流石にお姉ちゃんのわしわしは嫌だったのか素直に教えて頼むにこ先輩。

 

「はい、よろしい」

 

 そんなにこ先輩と希お姉ちゃんの様子をみんなは呆れた目で見てるけど、私は羨ましいななんて思いながら見てる。

 

 にこ先輩の相手がお姉ちゃんならいくらでもチャンスがあるからまあいっか。

 

「よし! これで準備は出来たよね。明日から頑張ろう」

 

「お~!」

 

「今日からです」

 

 そんなわけで今日から勉強会が始まった訳だけど……。

 

 凛ちゃんは勉強から逃げ出そうと白いご飯が飛んでるって、そんな引っ掛かるはずもない嘘を言って真姫ちゃんに怒られたり。

 

 穂乃果ちゃんは力尽きたのか途中でお休みと言って、眠りに入った。そんな穂乃果ちゃんをことりちゃんが頑張って起こそうとしてたり。

 

 にこ先輩は問題が分からない度ににっこにっこに~して希お姉ちゃんにわしわしされそうになって(私も混ざりたいなあなんて思いながらも)一向に勉強が捗っている状態ではない。

 

「全く……ことり、沙紀あとは頼みますよ。私は弓道部のほうに行かなければなりません」

 

 そう言って海未ちゃんは立ち上がって弓道部に行く準備を始める。

 

「分かった!! 起きて穂乃果ちゃん」

 

「分かりました。ではお気をつけて下さいね」

 

 私も立ち上がって海未ちゃんを見送ろうとすると海未ちゃんは部室を見渡して──

 

「あれで身に付いてるでしょうか」

 

 何て心配を口にした。

 

「大丈夫ですよ。何とかなりますから多分ですけど……」

 

 この惨状を見て心配する海未ちゃんに私は大丈夫ととりあえずは言うが正直心配しかない。

 

「沙紀……貴方がにこ先輩以外に敬語だと違和感しかありませんよ」

 

「酷いですよ!!」

 

 まさかの委員長モードに違和感しかない発言に私はへこむしかなかった。

 

 5

 

 放課後──部室で勉強会をしたあと、穂乃果ちゃんの家で更に勉強会を開いた。とりあえず穂乃果ちゃんの今日のノルマを達成していたから、このままペースでも大丈夫だろう。

 

 私は一人家に帰る途中。外は既に夕日が沈みきって辺りは暗い。そんな中女子高生が一人歩くのは危ない気がするけど、ここからだと家は近いから大丈夫。

 

 近いと言ってもお姉ちゃんの家だけど。それに仮に不審者が現れても私には心強い武器があるし。

 

 時間的にこのままお姉ちゃんの練習に付き合って、向こうで晩御飯まで食べることになりそう。これは今日はお泊まりかな。

 

 多分お姉ちゃんに泊まっていったほうが良いって言われそうだし。なら晩御飯の材料を買いにスーパーでも寄ろうかな。

 

 私はお姉ちゃんの冷蔵庫の中を思い出してみる。もう何度も泊まってるので、向こうの台所事情には詳しい。確か材料はまだ合ったし、今日は買って帰らなくてもまだ大丈夫。

 

 そういえば……にこ先輩の勉強を見たあと、確かバイトがあるとか言ってたっけ。

 

 私はスーパーには寄らずにお姉ちゃんの家に帰ろうとしたが、直前にそんなことを思い出して、携帯で時間を確認する。確認すると時間的にはバイトが終わるころだった。

 

 時間も時間だし、これなら一緒に帰ったほうがいいね。そうして私はお姉ちゃんのバイト先の神社に進路を変更する。

 

 先に帰って晩御飯の準備をしても良かった。でも今日はお姉ちゃんと一緒に帰って、一緒に御飯作って食べて、お風呂も練習も寝るのも、全部一緒がいいなあと思ったから止めた。

 

 お姉ちゃんと一緒にお風呂入るなら身体洗いっこしたいなあ。もちろん手で。ハンドで。

 

 お風呂ならお姉ちゃんの柔肌とか色々と合法的に触れる。むしろ触れたい。それに日本には素晴らしい裸の付き合いって言葉があるから、それで大体納得してくれるから良いよね。

 

 そんな感じで寝るまでのことに胸を弾ませながら、あっという間に神社に着いて階段を上ると──

 

「そう。エリチにそんなこと言われたんや」

 

 お姉ちゃんが誰かと話している声が聞こえた。

 

 私は咄嗟に鳥居の影に隠れて様子を伺う。幸いお姉ちゃんたちが話している所は神社の境内で、辺りは薄暗かったので、気付かれてはいないと思う。

 

 まあ結局お姉ちゃんには気付かれそうだけど、話している相手に気づかれなけばいい。私はこっそりと境内の様子を伺う。

 

 ただ私も辺りは薄暗かったのでよく見えない。と言うか夜の神社ってちょっと不気味な感じがする。お化けとか出そうなそんな感じ。

 

 私自身お化けとかそういうのは信じていないけど、やっぱり雰囲気の問題かな。お姉ちゃんならスピリチュアルパワーとか言いそうだけど。

 

「はい、A-RISEのダンスや歌を見て素人みたいだっていくらなんでも」

 

 何て変なことを考えてるとお姉ちゃんと話している人物の声が聞こえる。この声は……海未ちゃんの声だね。

 

 何の話をしてるんだろう。さっき海未ちゃんはA-RISEのダンスがどうとか言ってたけど。まだ情報が足りないから、もう少し様子を見るべきかな。

 

 目で見えない以上、耳で聞き取って情報を得るしかない。なので私は聞き耳を立てようと、全神経をそこに集中される。

 

「エリチならそう言うやろね」

 

「そう言えるだけのものがエリチにはある」

 

「どういうことですか?」

 

「知りたい……」

 

 そう言って会話は途切れた。どうやら来るタイミングが遅く話の根幹は私が来る前に話終えてたみたい。

 

 聞き耳を立てるのは無駄だと分かった私は、もう一度境内を確認する。相変わらず薄暗くよく見えないけど、何やら向こうでごそごそとやっている様子。

 

 なら今のうちに何の話をしてたのか今ある情報だけで整理しておこうかと思ったが、お姉ちゃんから直接聞けば良いだけの話。なら向こうが何かやってるうちに境内の中に入って、別の場所に隠れとこう。

 

 海未ちゃんには私がお姉ちゃんを迎え来たとかバレたくない。それに聞き耳を立てていた思われるのは向こうも気分が悪いし。

 

 そう私の中で自己完結したところで、すかさず境内の中に入り、新たな隠れ場所に移動する。

 

 我ながら可愛い女の子の情報を得るために、会得した隠密スキルは恐ろしいなあ。

 

 前世はさぞ名のある忍だったんじゃないかな。いや私前世とか全然信じてないけど。そう思うくらい私の隠密スキルは自負してもいいかもしれない。

 

 そんな馬鹿みたいな事を考えてると、どうやら向こうも何かを終わったみたいで、海未ちゃんが境内から出ていった。そのときの海未ちゃんの顔は何かとてもショックを受けたような顔をしていように見えた。

 

 一体何が……いやショックを受けた海未ちゃんの顔と少しだけ聞いた会話と照らし合わせると、答えはもう一つしかない。

 

「そうか……こう来るんだね」

 

 なら私はどうするべきか。どうするも何もいつも通りに最善に事を成すだけ。そう私の中で纏まると──

 

「何時までもそこで隠れてないで出てきたら?」

 

 お姉ちゃんにそう言われてしまい隠れるのを止めて大人しく出てくる。

 

「やっぱりバレてた。因みに何時から?」

 

「最初からや」

 

 やっぱりお姉ちゃんには敵わないみたい。

 

 6

 

「スゴイ太陽だね」

 

「夏も近いね」

 

 昼休みの屋上──穂乃果ちゃんは日差しを手で遮りながら空を見上げてた。凛ちゃんもそんな日差しを受けてもうすぐ来る夏を感じていた。

 

「ええ、絶好の練習日和ですし、そんな日に練習に励むのは大変いいと思いますよ」

 

「よ~し、沙紀の言う通り限界まで行く……わ……よ……?」

 

 笑顔で練習を始めようとするにこ先輩。だが何か違和感でも合ったのか、徐々ににこ先輩の言葉に勢いが無くなくなり、表情はそのままゆっくりと私の方を見る。

 

 にこ先輩に笑顔を向けられたので私は笑顔で返す。

 

「沙紀!? あんた何時からそこに!!」

 

「何時からって最初からみなさんと一緒に居ましたけど」

 

 最初からと言っても屋上に入ってからだけど、どうやら私のことに気付いていなかったみたい。

 

「でもおかしいですね。私の記憶だとお昼は部室でお勉強と言ってたはずですけど……」

 

 昨日の下校の際に私とお姉ちゃんが三人にそう伝えたはずだけど、私の記憶違いだったかな。

 

「委員長ちゃんの言う通りや」

 

「うぅ! 希まで」

 

「昼休み部室で勉強って約束したやん」

 

「いいや!! 分かってるんです!! 分かってるんです!! けど……」

 

「でも身体動かしたほうがいいかなって」

 

「私は二人に誘われただけよ」

 

 必死になって弁解する穂乃果ちゃんと凛ちゃん。そんななかにこ先輩だけは、自分は罪を二人に擦り付けて一人だけ逃げ出そうとしてた。

 

「嘘!! にこ先輩が最初に誘った癖に!!」

 

「そうだよ。希先輩や沙紀先輩にビビってるようじゃあアイドルは務まらないって何とか言って」

 

「デタラメ言うじゃないわよ!!」

 

「そう。まあ誰でもいいやん。どうせみんな一緒にお仕置きやから」

 

 誰が最初に勉強をサボろって言った犯人なのか不毛な擦り付け合いする三人。そんなのお構いなしにお姉ちゃんは連帯責任として、纏めてお仕置しようとわしわしのポーズを取る。

 

「フフフ……」

 

「嘘……」

 

「では私も」

 

 三人がお姉ちゃんのわしわしに怯えてるなか、私も構えて三人に近づく。

 

「いやいや沙紀先輩はただ触りたいだけだよね!!」

 

「はてさて、何の事でしょうか。私には下心も出来心も一切ないですよ」

 

 まさかお姉ちゃんのお仕置きを手伝おうとしただけでこの言われよう。今の私はただの真面目な委員長キャラなのにそんなこと思うはずもないのに。

 

「嘘よ!! だってあんた今鼻血出てるわよ。それで下心ないとか言い訳できないわよ!!」

 

「沙紀ちゃんは真面目になっても身体は正直だから嘘つけないよ!!」

 

 にこ先輩に言われて手の甲で鼻を触って確認するとホントに鼻血が出てた。穂乃果ちゃんの言う通り私の身体は常に女の子を求めてるようだ。と言うか身体が正直って言葉なんかエロい。

 

「そんなことどうでもいいじゃないですか。私に下心が有ろうが無かろうがどっちしてもお仕置されるのは変わらないんですから」

 

 手持ちのティッシュを鼻に詰めながら、手の甲に着いた血を吹いてもう一度構えて三人に近づく。

 

「いやいや十分違うから。だからちょっとまっ……」

 

 何か言ってたような気がするけど気にせず、三人にわしわしの刑をしてお仕置を済ませる。

 

 意外にも穂乃果ちゃんが合ったことにビックリしたなあ。他二人は大体予報通りの大きさでちょっと穂乃果ちゃんを触った後だと物足りない。

 

 まあ触ったときに三人の可愛い反応や顔が見れただけでも十分かな。そんな顔を見たせいか若干私の身体が熱いがこれ以上望むのはお胸様に申し訳ない。

 

「さて部室に戻ろっと」

 

 お姉ちゃんも満足したのかとてもいい顔をしていたけど、屋上の隅で一人佇んでいた海未ちゃんを見つけて──

 

「ちょっとショックが強すぎたかな」

 

 そんな海未ちゃんの様子を見てお姉ちゃんはそう言った。

 

 7

 

 三人にお仕置きをしたあと部室に連れ戻してお姉ちゃんは三人の前に大量の参考書や問題集などを置く

 

「今日のノルマはこれね」

 

『鬼』

 

「あれ? わしわしが足りない子がおる?」

 

『まさか』

 

 もうわしわしが嫌なのか三人揃って笑顔で答えるが、その様子は白々しい。

 

「ことり、沙紀、穂乃果の勉強をお願いします」

 

 そんななか海未ちゃんは急に立ち上り、私とことりちゃんに穂乃果ちゃんの勉強を任せて、何処かへ行こうとする。

 

「えっ? うん」

 

 ことりちゃんは返事をするが、既に海未ちゃんは部室を出ていっていた。

 

「海未先輩どうしたんですか」

 

 突然の海未ちゃんの行動に心配する真姫ちゃん。他のみんなも(勉強に追われてそれどころじゃない三人を除いて)海未ちゃんの事を心配する。

 

 私は事情を知ってるお姉ちゃんの方を見ると目が合った。それで大体お姉ちゃんがしようとしたことを察したので、目で自分がやると合図をして、私は立ち上がる。

 

「ごめんなさい。私も少し用が出来たのでちょっと席を外しますね」

 

 そう言って私も部室を出ていって、海未ちゃんの後を追う。海未ちゃんがどこに行ったのか予想は出来てるので、あとは接触する前に止めることが出きれば問題はない。

 

 そうして海未ちゃんを追って行くと海未ちゃんは予想通り生徒会室の前で立ち、深呼吸をしてノックをしようとする寸前だった。

 

「何してるの? こんなところで」

 

 今はまだ接触するときじゃないのでノックする寸前で海未ちゃんに声を掛けて止めると、海未ちゃんは私に気付いてノックするのを止めてこっちの方を見る。

 

 因みに今は勉強中じゃないので委員長モードはOFF。

 

「沙紀? どうして?」

 

「海未ちゃんの様子がおかしかったから」

 

 海未ちゃんに私がどうしてここに居るか聞かれて、私は本当の事は言わず別の理由を言う。実際に様子がおかしかったから嘘じゃないし。

 

「そうでしたか、よく見てますね。部室ではふざけてるとはいえ篠原沙紀なのは変わらないですね」

 

「当然だよ。何たって今はμ'sのマネージャーだからね。メンバーの事はちょっとしたことでも気付くようにはしてるからね」

 

 もうにこ先輩だけのマネージャーじゃない。μ'sのマネージャーだからね。もしメンバーに何かあってからじゃあ取り返しの付かない事が起こるかもしれない。

 

 それだけは避けるようにしておかないと。実際に問題が起きたときに私がどんな行動を取るか分からないし。

 

 まあ今回に限っては殆どのメンバーが海未ちゃんのこと気付いてたけど。

 

 それにしても海未ちゃんと一対一で話すのは久しぶりな気がする。前のキス以来ちょっと距離を置いておいたけど、それは私の気苦労だったかもしれない。

 

「ショック受けたの。絢瀬生徒会長に」

 

 そんなことを思いながら私は前触れもなく本題に入る。

 

「どうしてそれを? いえ……希先輩に聞いたんですね」

 

 私がどうしてそんなことを知っているのか疑問に思ったけど、私がお姉ちゃんと仲良かったのを思い出したみたいで、お姉ちゃんに聞いたと質問してくる。

 

「そうだよ。まあその前から絢瀬生徒会長の事は知ってたけど」

 

「知っていたのなら生徒会長のあの動画も見たことがあるんですね」

 

 そう言われて私は頷く。海未ちゃんが言っていた動画はお姉ちゃんに計画を聞かされたときに見せられてそのあとも何度か見てる。

 

 じゃあ海未ちゃんがショックを受けた絢瀬生徒会長の動画は何なのか。それは彼女が幼少時代のバレエの動画。

 

 私も見たときは驚いたよ。見ただけで分かる絢瀬生徒会長のバレエの才能。それに加えて相当な努力もしたんだって言うのが。

 

「いくら沙紀に練習を見て貰っているとはいえ、自分たちが今までやってきたのは何だったのだろうって思いました」

 

 いくら上手くなったとはいえμ'sのメンバーは絢瀬生徒会長と比べると、まだ経験も実力もそして圧倒的な努力の差が足りない。

 

「悔しいですけど、生徒会長は私たちを素人にしか見えない気持ちも分かります」

 

「だから謝ろうと」

 

「いえ、あの人にμ'sに入ってほしいと思いました」

 

 てっきり私は謝るのかと思ったけど、予想外の答えに私は少し驚いた表情をする。

 

「あの人がμ'sに加わってくれれば、もっと私たちもダンスの幅も広がって、更に他のメンバーにも刺激になるじゃないのかとそんな気がしました。だから!!」

 

 海未ちゃんの言葉にはダンスが上手くなりたいもっと前に進みたいってそんな気持ちが伝わってくる。

 

 最初はスクールアイドルに反対だった(って穂乃果ちゃんたちから聞いた)海未ちゃんが。

 

 ならそんな風に思っている海未ちゃんに私が出来ることは? 

 

「だったら先ずは目の前の事をやろう。テストまであと五日しかないからね」

 

 まずはテストで赤点を回避。そしてラブライブにエントリーして出場出来るチャンスを手に入れることが重要。それが終わってからでも遅くはない。

 

「それが終わったら私もマネージャーとして手伝うからさ」

 

 私がそう言うと海未ちゃんは憑き物が落ちたかのように表情が明るくなって、何か思い付いたのか何処かへ走っていった。

 

 私も海未ちゃんの後を追いかけながらあることを思っていた。

 

 それにしても絢瀬生徒会長のA-RISEが素人にしか見えないって発言はちょっと笑っちゃったよ。まさか絢瀬生徒会長ほどの人がA-RISEのダンスを見てそんな感想しかでないなんて。

 

 そんなわけあるわけないじゃん。だってA-RISEには……もう私には関係ない話か。

 

 私は考えるのを止めて海未ちゃんの付いていくと、海未ちゃんは既に部室に戻って中に入っていた。私も部室に戻るので委員長モードONにする。

 

「穂乃果!!」

 

「海未ちゃん……」

 

 戻ってきた海未ちゃんが穂乃果ちゃんに声を掛けると穂乃果ちゃんは今にも死にそうな顔と表情で海未ちゃんの方を見た。

 

 どんだけ勉強するのが苦手なんだろう。他の凛ちゃんやにこ先輩も同じ表情だし。

 

「今日から穂乃果の家に泊まり込みます」

 

「えっ!!」

 

 突然のお泊まりの提案に驚く穂乃果ちゃん。海未ちゃんの思い付いた行動がまさかお泊まりだったとは……。この私の目を持ってしても見抜けなかったよ。

 

「勉強です!!」

 

「鬼……」

 

 今にも泣き出しそうな声でボソッと呟く穂乃果ちゃん。彼女の勉強は多分大丈夫そうだけど、精神的に大丈夫かな。

 

 しかし泊まり込みで勉強会か……。いいアイデアかも。

 

「なら、私たちもやるしかありませんねにこ先輩」

 

「何がならよ!! 私たち関係ないでしょ!!」

 

 流れに便乗してにこ先輩にお泊まりの提案をするけど、流れでOKしてくれなかった。

 

「大ありですよ。にこ先輩の勉強も家で見たほうがより安全に赤点を回避できますから」

 

「OK分かったわ。とりあえず今は委員長モード止めていいから本音を言いなさい」

 

「正直にこ先輩のおはようからお休みまでずっと一緒に居たいです」

 

 お泊まりしたときのメリットを言ってにこ先輩は分かってくれたが、何故か委員長モードOFFして本音を言えと言われたので本音を口にする。

 

「そしてにこ先輩の寝顔を……あわよくば熱い夜を……」

 

「よ~しあんたは一生家に来ないでいいわよ」

 

「何故ですか!!」

 

 本音を言えと言われたので正直に言ったらにこ先輩の家に出禁食らう始末。何故。分かんない。

 

「またにこ先輩と沙紀先輩がコントしてるわよ」

 

 私がにこ先輩と楽しくお喋りをしてると、真姫ちゃんが呆れながら私たちの会話の事をコントって言った。

 

「良いじゃない。何か真面目な沙紀ちゃん違和感しか分かったから」

 

「だから酷いよ。そんなに私が真面目なのは変?」

 

 ソウルフレンドであることりちゃんまで変と言われて部室のみんなにも聞いてみると──

 

『うん。変』

 

「全員即答!!」

 

 どうやらアイドル研究部の部員+お姉ちゃんの中では私は委員長キャラではなく、ただのボケキャラだとハッキリと認識される瞬間だった。

 

 8

 

 そして何だかんだで時間は過ぎていき、テスト本番もあっという間に終わった。あとは結果が反ってくるのを待つだけ。

 

 部室で結果を待っていた私たちはただ静かに待っていると、部室の扉が開き穂乃果ちゃんが入ってくる。

 

「どうだった?」

 

「今日で全教科返って来ましたよね」

 

「穂乃果ちゃん」

 

 入ってきた穂乃果ちゃんに結果はどうだったのか聞いてくる。

 

「凛はセーフだったよ」

 

「あんた私たちの努力水の泡にするじゃないでしょうね」

 

 問題児であった凛ちゃんとにこ先輩は何とか赤点を回避出来た。もちろん他のみんなも赤点はちゃんと回避できてるので、あとは穂乃果ちゃんの結果次第で全ては決まる。

 

『どうなの!?』

 

「もうちょっといい点だったら良かったんだけど……」

 

 みんな結果が気になって穂乃果ちゃんを急かすけど、穂乃果ちゃんはちょっと不吉なことを言いながら鞄から解答用紙を取り出して──

 

「ジャーン」

 

 見せた解答用紙は赤点を回避していた。

 

 つまりそれはラブライブにエントリー出来るようになったってことになる。

 

「よ~し、今日から練習だあ」

 

 勉強から解放されてやっと練習が出来るのが嬉しいのか、穂乃果ちゃんは元気よく部室を飛び出していった。そのあとに他のメンバーも付いていく。

 

「ラ、ラブライブ」

 

「まだ目指せるって決まっただけよ」

 

「そうだけど」

 

 確かに真姫ちゃんの言う通り目指せるだけだけど、まあ喜びたい気持ちがあっても良いと思う。

 

「練習の前に理事長に報告行こうか」

 

「そうだね。じゃあ行こっか」

 

 一応赤点を回避したらラブライブにエントリーしていいと言った理事長に報告して、正式に学校の許可を貰っておかないといけないからね。

 

「ん? あれ?」

 

 理事長室の前に来ると扉は僅かに開いていてそこから何か話し声が聞こえる。こっそりと中を確認すると、そこには絢瀬生徒会長が何か様子が変だ。

 

「そんな!? 説明してください」

 

「ごめんなさい。でもこれは決定事項なのよ」

 

「音ノ木坂学園は来年より生徒募集を止め廃校とします」

 

 理事長が発した衝撃的な事実。

 

 どうやら時の歯車は私が予測してたよりも早く動いていたみたいだった。




次回から本編での絵里加入回。つまりこの小説で言うところでは二章最後の話に入って行くわけですけど沙紀はこの物語にどう関わってくるのかお楽しみに。

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