ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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お待たせしました。

さて、沙紀の正体がばれるのかどうかお楽しみください。


十三話 星野如月

 1

 

 星野(ほしの)如月(きさら)

 

 二年前までプロのアイドルとして活動してた中学生トップアイドル。

 

 スクールアイドルの発展に大きな影響を与えた立役者であり、多くのスクールアイドルの憧れ。

 

 そんな彼女にそっくりな先輩がわたしの目の前にいる。

 

「如月ちゃん……?」

 

 わたしは篠原先輩のメガネを握ったまま、気づいたら思っていたことを口にしていた。

 

 メガネを外した篠原先輩の顔は、テレビやライブで何度も何度も見て目に焼き付けて、見間違えないくらい見てきた如月ちゃんにそっくりだった。

 

 昨日相談に乗ってもらったときに先輩の顔をどこかで見たことがあるって思ったのは、如月ちゃんに似てたから。

 

 それによくよく思い出したら篠原先輩の声も如月ちゃんによく似てる。年だってわたしより一つ上だったはず……つまり篠原先輩と同じ年。

 

 もしかして本人……? 

 

「ねぇ」

 

「は、はい!!」

 

 わたしのただの勘違いでただのそっくりさんかもしれないけど、本人かもしれないと思うと緊張する。

 

「そろそろ眼鏡返してくれないかな?」

 

「えっ? ……あっ!! ごめんなさい」

 

 篠原先輩に言われてメガネを渡そうとしていたことを思い出して、篠原先輩にメガネを渡す。

 

「ありがとう花陽ちゃん。それと貸してくれたタオルは明日洗って返すから代わりに私のタオル使って」

 

 そう言って篠原先輩は立ち上がって、鞄からタオルを取り出してわたしに渡す。

 

 わたしは疑問が頭に残っているせいでされるがままに、篠原先輩からタオルを受け取る。

 

「大丈夫、それ新品のタオルだから。それに返さなくっていいよ」

 

 わたしがぼうっと立っていたから篠原先輩は勘違いして的外れなことを言ってくる。

 

「いえ、そんなわけじゃあ……」

 

 わたしが気にしているのはそんなことじゃあなくって、あなたは本当に如月ちゃん何ですか。なんて聞いてみたいけど、そんなことを聞く勇気が出てこなかった。

 

「そう? それならいいけど。それじゃあみんな揃ったし練習始めるから花陽ちゃん。凛ちゃんと真姫ちゃん呼んできてもらえる?」

 

「は……はい……」

 

 疑問が晴れないままわたしは、篠原先輩の言われた通り凛ちゃんと真姫ちゃん呼んで行って、初めての練習を始めた。けど、結局その朝の練習は篠原先輩の事が気になりすぎて、練習に身が入らなかった。

 

 2

 

「かよちん、今日ずっと集中できてなかったみたいだけど、どうしたの?」

 

 お昼休み一緒にお昼ご飯を食べていた凛ちゃんにそんなことを言われる。

 

「そうね。何かこう上の空って感じだったわよ」

 

 同じようにお昼を食べていた真姫ちゃんもわたしが集中できてなかったみたいと思っていたみたい。

 

「うん……。ちょっと気になることがあって……」

 

 篠原先輩が如月ちゃんなのか気になって仕方がない。

 

 結局、練習が終わったあとでも聞けなくって、今日はずっと心がモヤモヤした気分だったから。

 

 多分それが授業中ずっと出てて、そんなわたしを見て凛ちゃんと真姫ちゃんは気付いたんだよね。

 

「もしかして篠原先輩のこと?」

 

「どうして分かったの!?」

 

 凛ちゃんに篠原先輩が気になっていたことが一回で気づかれて思わず驚く。

 

「今日練習中かよちんチラチラと篠原先輩のこと見てたから」

 

「私も花陽が篠原先輩のこと気にしてるの気付いていたわ」

 

 そんなに見てたかな。でも言われてみれば結構篠原先輩の事を見てた気がする。

 

「かよちん。篠原先輩に変なことされたの!!」

 

「あり得るわね。あの人普通にやりそうだもの」

 

 二人はわたしが集中できなかったのは、篠原先輩がわたしに何かしたと勘違いする。

 

 二人のなかで篠原先輩の評価が低いのはどうしてだろう。少し変わったところがあるけど、優しい先輩なのに……。

 

「そうじゃなくって……ただ……」

 

『ただ?』

 

「篠原先輩、如月ちゃんにそっくりだったから気になって……」

 

 勘違いしてる二人にわたしが気になっていることを話した。

 

「如月ちゃんって……かよちんが好きだったアイドルの?」

 

「うん……。気のせいだと思うけど、とても似てたから気になって」

 

「ふ~ん。そんなに似てるの? そのアイドルに」

 

 凛ちゃんは何回も如月ちゃんのことを話したり、ライブに一緒に行ってもらってるから分かるけど、真姫ちゃんはちょっと付いてこれてないみたい。

 

「じゃあ、先輩に直接聞けば良いじゃん」

 

 凛ちゃんはもっともな提案をする。確かにそれが一番いいんだけど、何かそう言うのが失礼なんじゃないかなって思っちゃう。

 

「そうね。別にただ似てるだけかもしれないし、それにアイドルに似てるって言われて不快な思いはしないでしょ。それに……」

 

「それに? 真姫ちゃんも篠原先輩で気になることがあるの?」

 

 何か真姫ちゃんも篠原先輩のことで気になることがあるみたいだけど何だろう。わたしと同じ事気になってるわけじゃないんだよね。

 

「ええ、あの人が考えたって言ってた練習を受けて思ったのだけど、素人が考えたにしてはキッチリしてたのよね」

 

「それ凛も思ったよ。中学のとき陸上部だったけどあんなしっかりした練習受けたことなかったからビックリしたよ」

 

 そうだったんだ。わたし運動部とかに入ってなかったから分からなかったよ。それどころかスクールアイドルってみんなこんな練習してるのって思ってたから。

 

「ある意味篠原先輩がアイドルって言えばわりと説明が付きそうなのよね」

 

 確かに本当に篠原先輩が如月ちゃんならプロのアイドルが受けてるトレーニングやってるわけだから、どんなトレーニングが良いのか知ってそうだし。

 

 それを使ってトレーニングメニュー考えればちゃんとしたトレーニングになるよね。

 

 あれ? もしかして本当に如月ちゃんだったらわたしたち相当贅沢なことしてる? トップアイドルに練習を教えてもらえるなんて、UTXとか大きい学校じゃないと出来ないから。

 

 えっ? えっ? どうしよう。流れでだったけど篠原先輩に悩みを聞いてもらったし、一歩を踏み出してスクールアイドルを始めて入ったグループのマネージャーは実はトップアイドルでしたなんてファンとしてすごく贅沢なことしてる。

 

「何か花陽が落ち着かない感じになったみたいだけど大丈夫?」

 

「アイドルのことになると何時ものことにゃ~」

 

「そう。なら花陽が落ち着いたら先輩たちのところに行くわよ」

 

「分かった。あっ、でも時間掛かりそうだからこのまま連れて行くね」

 

 そんな感じでわたしがもしかしたら予想してちょっとテンションが上がっている横で二人は話を進めて、このあと先輩たちのところへ気づかないまま連れていかれました。

 

 3

 

「沙紀ちゃんは隣のクラスだよ」

 

 わたしと真姫ちゃんの疑問を解決するために二年生の教室に行くと、高坂先輩たちにクラスが違うよって言われる。

 

「へぇ~、そうだったんだ。てっきり同じクラスだと思ってたよ」

 

 凛ちゃんの言う通りわたしも篠原先輩と穂乃果先輩たちは同じクラスだと思ってた。二年生は二クラスしかないし、一人だけ違うクラスだと思ってもいなかったから。

 

「何か一人だけクラス違うのって可哀想ね」

 

 真姫ちゃんは指で髪の毛を弄りながら可哀想って言うけど、確かに色々と不便だと思う。

 

「でも沙紀ちゃんは隣のクラスに居ないと思うよ」

 

「大体お昼は私たちかにこ先輩と一緒に食べるか他の仕事でいないときのほうが多いですから」

 

 そうなんだ。今日は先輩たちとは一緒じゃないみたいだし、今日のお昼は忙しいのかな。どうしよう。

 

「確か特に今日は何も言ってなかったですから部室に居ると思います」

 

「ありがとうございます。海未先輩」

 

 わたしたちは先輩たちにお礼を言って、部室に行こうとすると──

 

「待って、みんなで沙紀ちゃん探してるみたいだけど、また沙紀ちゃん何かしたの」

 

 ことり先輩に止められてまた篠原先輩が何かしたのか勘違いしてた。

 

 どうしてみんな篠原先輩が悪いことをしたことが前提で考えたるだろう。そんな悪いことしてるイメージないのに。

 

「今日は何もしてなくて、かよちんが篠原先輩がアイドルの星野如月に似てるって言うから確認しようしてたところにゃ~」

 

 凛ちゃんが先輩たちに篠原先輩を探してる理由を説明する。

 

「へぇ~、そんなに似てるんだ。それで星野如月って誰? 有名なアイドル?」

 

「知らないですか!? スクールアイドルなのに!!」

 

「花陽ちゃん……顔が近い」

 

 穂乃果先輩が如月ちゃんの事を知らなかったことに驚いて思わず詰め寄ってしまう。

 

「スクールアイドルって言っても私たち始めてまだ一ヶ月しか経ってないし、穂乃果ちゃんは始めるまでアイドルのこと全然知らないから無理もないよ」

 

「そうですね。私もアイドルのことは詳しくはないですから星野如月と言う人がどんなアイドルか分からないですし」

 

 おお、これは由々しき事態です。先輩たちはあの伝説の中学生アイドルを知らないなんて。スクールアイドルなら一度は目を通すべきアイドルなのに。

 

「いいですか!! 星野如月と言えばデビュー時は現在も活躍中のトップアイドルユーリちゃんとユニットで活躍し、中学生と思えないルックスと高い歌唱力とダンスで瞬く間にトップアイドルの仲間入りを果たしデビュー僅か一年で武道館ライブまで行った伝説の中学生アイドル何ですよ!!」

 

「花陽ちゃん……またキャラが変わってる」

 

「凛はこっちのかよちんも好きだよ」

 

 何かいまいち如月ちゃんのスゴさが伝わってない。これがにこ先輩なら分かってくれると……そうだ!! にこ先輩ならライブDVDを持ってるはず!! 

 

「先輩たち行きますよ!!」

 

「えっ? どこに?」

 

「部室に決まってるじゃないですか!! 如月ちゃんの凄さを知ってもらうために」

 

 わたしは穂乃果先輩の腕を引っ張って部室に向かう。如月ちゃんの素晴らしさを知ってもらうために。

 

「花陽……目的が変わってるわよ……」

 

「もう無理にゃ~。ああなったかよちんはもう誰にも止められないよ」

 

「私たちも付いていかなきゃ駄目なんでしょうか……」

 

「もちろんです!!」

 

「ははは……行くしかないみたいだね……」

 

 みんなが何か言いながらも部室に向かって歩く。部室に近づくと、何かとても甘い空気が漂っていたけどわたしは気にせず部室に向かう。

 

「何か部室の近くの空気が甘過ぎるけど何なの!!」

 

「この感じは確実に沙紀がいますね」

 

「そうだね。この空気を昼間から作れるのは沙紀ちゃんくらいだし」

 

「花陽ちゃんイタイイタイ!!」

 

「と言うか……色々と酷い状況……」

 

 そうして目的のアイドル研究部の部室の前に到着。そして扉を開けるとそこには──

 

「にこ先輩。あ~ん」

 

「だから!! 自分で食べられるわよ!!」

 

「もうにこ先輩照れちゃってツンデレさんなんだから。でもそんな先輩も可愛い」

 

「何でそんな思考になるのよ!!」

 

 なんて会話をしてたけど気にせずにわたしは堂々と中に入っていく。

 

「ちょっとあなたたち何勝手に入ってるのよ。ここは私とにこ先輩の愛の巣なのに!!」

 

「バッカ!! ここはアイドル研究部よ!! あんたの妄想を垂れ流してるじゃないわよ!!」

 

 先輩たちは私たちに気付いてそんなことを言うけどわたしは目的のものを探す。でも探しても目に見える場所にはなかった。

 

「にこ先輩、星野如月ちゃんのライブDVDってどこにありますか」

 

「えっ!! 花陽ちゃんまで私のことスルー!?」

 

 にこ先輩にDVDの場所を聞くと、一瞬驚いたような顔をしていたけど、すぐに何時もの顔に戻り指を指した。

 

「あそこの棚の段ボール中に入ってるわ」

 

 わたしはにこ先輩に教えられた棚のほうへ行き段ボールの中を見ると、そこには如月ちゃんのグッズが大漁に入っていた。

 

「これはユニット時代のサイン!! 超レア物です」

 

 中を探してるとレアなグッズが入っていて驚くけど、今はライブDVDを探さなきゃ。あとでゆっくり見せてもらえばいいし。

 

「えっ? ホント何があったのよ?」

 

「えぇ……何か色々とあって星野如月について知ってもらおうとなりまして花陽が暴走しました」

 

「意味分かんない!!」

 

「それ私のセリフ。真似しないで篠原先輩」

 

「あった!!」

 

 段ボールを探し続けて、ついにわたしは星野如月の伝説なったライブであるサマーライブのDVDを見つけた。

 

「と言うわけでにこ先輩。パソコンお借りしますね」

 

 そう言ってわたしはパソコンを借りてDVDを入れて再生を始めると、みんなが画面の前に集まっていた。

 

 だけど、ただ一人篠原先輩だけは遠くからその様子を見ていたことにわたしは気づかなかった。

 

 4

 

 画面から映し出される映像はとても印象的だった。

 

 歌声は感情的でありながらも音程は常に正しくずれることなくって、ダンスは勢いがありながらも美しく綺麗にキレのある動き。

 

 そして、如月ちゃん本人は何処か冷めたような目だけど、本気で楽しんでいる熱意が伝わってきた。

 

 このライブはわたしも実際に会場に行って見に行ったけど、この映像を見ると数年前なのにあのときの興奮が甦ってくる。

 

 一曲の中に込められてる如月ちゃんの熱量が映像越しでも伝わってきてるのか、他のみんなも彼女の歌にダンスにそして全てに引き込まれていった。

 

 そうして時間の関係もあるので、所々場所を選びながらライブを見ていると、いつの間にか彼女のライブはあっという間に終わっていた。

 

「すごい……」

 

 そう誰かが口にした。

 

「そうだね。私たちとそこまで変わらない年なのにあんなライブが出来るなんて」

 

「これが本物のアイドルと言うものなんでしょう。私たちとは住む世界が違います」

 

「でも、そんな彼女──星野如月に憧れて多くの学生がスクールアイドルを始めたわ」

 

 そう。海未先輩が言ったようにスクールアイドルとプロのアイドルでは住む世界が違う。だけど、如月ちゃんはライブを見た多くの学生に影響を与えていた。

 

 その結果今のようなスクールアイドルブームを造り上げた。そしてスクールアイドルでも実力のあるアイドルは、プロの世界に入っていったりもして、アイドルそのものすらも影響を与えていた。

 

「にこ先輩もこの子に憧れて?」

 

「そうね。にこは元々アイドルが好きで憧れてたけど、星野如月を見てもっとその気持ちが強くなったわ」

 

 やっぱり、そうだよね。なんたってあのA-RISEでさえ大きな影響与えたアイドルなんだから。

 

「でも、どうして急に星野如月の話になったのよ」

 

「あれ? どうしてだっけ?」

 

「えっと、確か花陽ちゃんが何か気になることがあって教室に来たのまでは覚えてるけど……」

 

 あれ? わたしも思い出せない。何か取っても気になることがあって如月ちゃんの話をしたけど何だったっけ? 

 

「まあまあ、ゆっくりお茶でも飲んで思い出せばいいじゃない」

 

 そう言って篠原先輩がいつの間にか人数分のお茶を机の上に用意してくれていた。

 

「そうだね。沙紀ちゃ……」

 

『あっ!!』

 

 篠原先輩の顔を見て、にこ先輩と篠原先輩以外のメンバーは何をしにここにやって来たのかを思い出した。

 

 篠原先輩が如月ちゃんに似ているから本人かどうか確認するために。

 

「確かに……花陽ちゃんの言ってた通り似てる……」

 

 ことり先輩がDVDの表紙と篠原先輩の顔を見比べながら似てると言う。

 

「DVDの表紙とは少し幼さを感じや髪型とメガネで判断はしづらいですが、とても似てます」

 

「それに声もかなり似てるから本当に沙紀ちゃんって……」

 

 海未先輩も穂乃果先輩も篠原先輩が本当に如月ちゃんなんじゃないのかって思い始めているから篠原先輩本人は──

 

「嘘!! ホントですか。私あんなすごいアイドルに似てるですって、にこ先輩どう思います?」

 

「まあ、言われれば似てるかもしれないわね。でもこれが星野如月本人とは思えないわ。だって中身とても残念だもの」

 

 何て言ってちょっと嬉しそうに言いながらにこ先輩にどうかと言って、にこ先輩も見た目だけなら似てると言う。

 

「そういわれると、否定できないところがあるよ」

 

「だって沙紀ちゃんだもんね」

 

「みんな酷い!! 何でそんなことを言うの」

 

 さんざん言われて嬉しそうな表情から一気に悲しそうな顔をする篠原先輩。本当に何か可哀想に見えてくる。

 

『日頃の行い』

 

 わたし以外のメンバーが篠原先輩に口を揃えてそう言い切った。

 

「ああ、やっぱりそうですか。分かってましたよ」

 

 最初から分かっていたかのように篠原先輩はなんとも言えない表情していた。

 

「そんなことより似ているかどうかメガネと三つ編み取れば分かることじゃないのかにゃあ」

 

「そんなことって!! 何気に凛ちゃん酷い」

 

「そうだね。じゃあ沙紀ちゃんメガネと三つ編み取るね」

 

 凛ちゃんの提案に乗って穂乃果先輩は篠原先輩のメガネと三つ編み取ろうとする。

 

「バカ止めなさい!!」

 

 にこ先輩が大きな声で止めようとするが既に遅く穂乃果先輩の手が篠原先輩の三つ編みに触れた瞬間──

 

「Don'ttouchme!!」

 

 何故か英語で触ると言って穂乃果先輩の振り払い、大きく後ろに下がる。

 

「遅かった……」

 

「えっ? えっ? 何? どういうこと?」

 

 穂乃果先輩は何が起きたのかそれどころかにこ先輩以外何が起きたのか全くわからない状況だった。

 

「沙紀は人前で三つ編みをほどかれるの何故かとても嫌がるのよ。だから無理矢理ほどこうとすると沙紀は……」

 

「NOIdentityNOLife!!」

 

 高らかにまた英語で何かを叫んでいた。

 

「あんな風に暴走するわ」

 

 にこ先輩はとても可哀想なものを見る目で篠原先輩を見ていた。

 

「私=『白百合の委員長』OK」

 

「私=三つ編みメガネOK!!」

 

「委員長ならすべからく三つ編み委員長であれ!!」

 

 また何かよく意味の分からないことを言ったり、完全偏見が混じったりしてる。

 

「どうするのあれ」

 

「何時ものように黙らせる。それで解決よ」

 

「何時も通りだね」

 

 何時も通りなんだ。何かこう色々とおかしいけどみんなそれで納得しちゃってる。

 

「そんなわけだから海未あんたも手伝いなさい」

 

「何で私が」

 

「あの状態だと何時もより素早いから手伝ってほしいのよ」

 

「なるほど、そういうことでしたら」

 

 そうしてにこ先輩と海未先輩は篠原先輩を止めようと近づくけど、篠原先輩は素早い動きで二人を避けていく。

 

「本当に何時もより素早い。と言うよりもめんどくさい」

 

「ああもう、めんどくさい」

 

 さっきから紙一重で避けられるからどんどんイライラしていく二人。

 

「私は何にも屈しない、三つ編みばんざ~~い!!」

 

 対称にどんどんテンションがおかしくなっていく篠原先輩。この不毛な戦いがいつまでも続くかと思っていたけど、勝負はなんとも言えない形で終わりを迎える。

 

「あとで片付けるのめんどくさいけどこれを使うしかないわね」

 

 そう言ってにこ先輩はポケットから何かを取り出して篠原先輩に向かって投げる。篠原先輩は最初はキャッチしようとしてたけど、投げたものに気づいたとたん避けようとする。

 

 それがいけなかったのか急に避けようとしたから体勢が崩れて身体が倒れようとするけど、倒れる方向が悪かった。

 

 ちょうど、倒れた先に海未先輩が居て海未先輩も急に篠原先輩が倒れたことに対応できず、そのまま巻き込まれる形で一緒に倒れる。

 

『きゃぁ~~』

 

「だ、大丈夫ですか」

 

 倒れた二人がどうなってるのかちょうど机に隠れてよく見えない。わたしは二人が心配になって駆け寄るとそこには──

 

 篠原先輩と海未先輩の口が重なってキスをしていた。

 

「ヘッ? へっ!?」

 

 わたしは予想外の展開に戸惑うことしかできなかった。

 

「はっ!! 私は何を!! と言うかごめん海未ちゃん……?」

 

 倒れた影響なのかキスしたせいなのか分からないけど正気に戻った篠原先輩は海未先輩に謝るけど、海未先輩に反応がないまま次の瞬間──

 

「あべし!!」

 

 海未先輩が目には見えない早さで篠原先輩を殴り篠原先輩は宙を舞っている間に海未先輩は部室から駆け出していった。

 

 そのあと、海未先輩は今日の練習に来ることがなく一週間くらい篠原先輩と口を聞いてはくれませんでした。

 

 その間、篠原先輩はと言うと泣きそうになりながら海未先輩に土下座する姿を見てわたしたちはなんとも言えない気分になりました。

 

 ちなみににこ先輩が投げたのは台所に出てくるあれのおもちゃでした。

 




そんなわけで正体についてはうやむやなってしまい別の問題が発生する事態になりましたね。

まあ、それが沙紀らしいと言えばらしいですけど。

次回もどうなることやらお楽しみに。

何か感想がありましたら気軽にどうぞ。

誤字、脱字等ありましたら連絡いただけるとありがたいです。

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