ラブライブ! 委員長はアイドル研究部のマネージャー   作:タトバリンクス

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まあ、サブタイがおかしいのは読んで確認してください。

そんなわけでお楽しみください。


十話 今日から私たちは強敵ね

 1

 

「私──自分でも言うのはあれだけど寂しがりやなんだよ」

 

 沙紀は私たちの前でそんな事を口にした。

 

「どのくらい寂しがりやかと言うと動物で例えるならウサギ。英語でRabbit。何でってよく言うでしょ。ウサギは寂しいと死ぬって」

 

「何でわざわざ英語を言ったの?」

 

「しかもとても発音が良いですね」

 

 ホント、海未が言ったように沙紀の発音は無駄に良くて私的にはすごくムカつく。

 

「まあ沙紀をウサギって例えるのは間違いじゃないわね。こいつ年中発情してるし」

 

 女の子の身体を見るだけで興奮する変態だから。そのせいで何回私は襲われそうになったことか。まあでも全部返り討ちにしてるだけど。

 

「周りからは『白百合の委員長』なんて呼ばれてるけど私は普通の女の子なんだから」

 

『普通?』

 

「何で疑問系!!」

 

 穂乃果と海未の疑問は分からなくもないわね。こいつを普通の部類に入れたらほとんどの人間が普通になっちゃうから。

 

「そんな気を失った私を忘れてみんな帰っちゃって気付いたら夜なって学校に一人放置」

 

「まあ、結局何が言いたいのかって言うと──」

 

「すごく寂しかったんだよ!!」

 

 私たちの前でそう沙紀は叫ぶ。

 

「それについては申し訳無いと思ってますからあまり叫ばないでください」

 

「ははは、ごめんね沙紀ちゃん。穂乃果はてっきり沙紀ちゃんのことだからすぐに起きると思ってたよ」

 

「にこもまさかあんたが起きてこないとは思ってなかったわよ」

 

「はあ、モフモフ気持ちいい」

 

 沙紀の叫びにそれぞれそんな反応する私たち。一人は完全に別世界に旅立ってるけど。

 

 まあ事の発端は沙紀の言ったように私たちが気絶した沙紀を置いて帰っちゃった事が始まり。

 

 てっきり、私は穂乃果たちと一緒に帰ったと思っていたけどそんなことはなく、穂乃果たちも私と帰ったと思っていたみたい。

 

 穂乃果たちの方は途中で気付いたみたいだけど、沙紀の事だからちゃんと帰ってると思って放置。

 

 その結果、沙紀は誰にも気づかれることなく学校で一夜を明かすことになってしまったの。

 

 で、部室に行くとそこには寂しさのあまりいじけて大泣きしていた沙紀が見て私は状況を察したってわけ。

 

 そのあと、穂乃果たちも部室に来て状況を察したわけなのだけど沙紀は昼休みになってからもいじけている。

 

 ちなみに制服については部室に来る前に希から渡された。どうやら沙紀が連絡していたみたい。けど、何で希が沙紀の制服と下着を持っていたのか疑問は残るけど。

 

「私だって一日で三回も気絶させられる制裁を受けてピンピンしてるわけないよ。そこまで頑丈じゃないんだから」

 

 確かに昨日はちょっとやり過ぎたかなって思っているけど、そもそも三回も気絶させられたことについては自業自得としか言えないわね。

 

 明らかにこいつ調子に乗ってたと言うか欲望が全面に出てたし。そのせいで下手したら話が進まなかったし。

 

「それに知らない間に勝手に話は進んでいつの間にか穂乃果ちゃんたちはにこ先輩に入部を認められてるし」

 

「そこは私がにこ先輩と穂乃果ちゃんたちの間を取り持ってスムーズに穂乃果ちゃんたちを入部させて、沙紀ちゃんは出来る女って所をみんなにアピールして好感度上げる予定だったのに!!」

 

「あんた、欲望が口に出てるわよ」

 

「あっ!! しまった」

 

 思わず口を押さえる沙紀。しかし、口にしたのが不味く周りの視線が冷たい。

 

 けど仕方がないわよね。私が昨日、三人に沙紀は百合だって事言っちゃったし。

 

 完全に墓穴を掘ったわね。と言うかあんたそんなこと考えていたの。何よ好感度って。私たちをどうするつもりよこいつ。

 

「そんなことよりみんな私のこと忘れて楽しそうに練習に励んで帰るなんて酷いよ。にこ先輩に至っては『ごめん。素で忘れてた』なんてもっと酷いですよ!!」

 

「だから!! ごめんって謝ってるじゃない。しつこいわよ」

 

「それだけじゃないんですよにこ先輩。さっきから海未ちゃんの視線が痛いんですけど昨日何か口を滑らしました?」

 

 沙紀に何か口を滑らせたかと言われて思わず目線を逸らす。口を滑らせたのは事実だし。本人的にはあまり知られたくないことだしね。

 

 学校じゃあ猫被って委員長キャラをやってるわけだから。そんな彼女の秘密を暴露したら流石に沙紀でももっと怒るわよね。

 

 だが、私には秘策がある。これをやれば沙紀は間違いなく私を許してくれるはず。

 

「あんたが百合だって事話しちゃった。てへっ」

 

 そう言って舌を出しながら沙紀の性癖をカミングアウトしたことを可愛く言う。

 

「さっきのにこ先輩が可愛かったので全部許します」

 

 私の予想通り沙紀は迷いなくそう即答した。

 

「早っ!!」

 

「即答ですか。しかもホントだったんですね……」

 

「はああ、ふかふか」

 

 穂乃果たちはそれぞれそんな反応をしていた。特に海未はすごく落ち込んでいる感じがする。もしかしてこの子、沙紀のファンだったりしたのかしら。

 

「と言うかことりちゃん!! 何でさっきからスルーなの!!」

 

 ずっと会話のなかに入ってこなかったことりに触れてる沙紀。

 

 何故彼女が沙紀の話に入ってこなかった言うと彼女は音ノ木坂で飼育されているアルパカに夢中だったから。

 

「アルパカさんモフモフでかわいい~」

 

 何でアルパカを飼育しているのかよくは分からないけど音ノ木坂の数少ない名物として有名よ。

 

「無視ですか……。クソ!! 私の価値はアルパカにも劣るのか!!」

 

「沙紀ちゃんキャラがブレブレだよ」

 

「私が憧れてた篠原沙紀は一体何処に……」

 

 沙紀の言葉に最早委員長としての威厳がない。むしろ残念さが更に酷くなってる。

 

 そして、海未。あんたの気持ちよく分かるわ。だって、あれ私が憧れてたトップアイドルなのよ。そんな人がクソとか言い出すと夢をぶち壊された感じがするもの。

 

 やっぱり、アイドルは夢を与える仕事ね。常に見られてる意識をしておかないといけないってよく思い知らされたわ。

 

 ありがとう沙紀。私たちの反面教師をしてくれて。

 

「あのアルパカよく見るとすごい勝ち誇った顔してムカつく」

 

 そんな風に思ってると沙紀はアルパカを見てそんなことを口にしたから見てみると、何となくだけどそう見えなくもないけど気のせいよね。

 

「チクショー。家畜の分際で私をコケにしやがってもう我慢できない!! 殺るしかない」

 

 そう言って沙紀は何処からともなくネギを取り出てアルパカ小屋の方へ走っていった。

 

 いや何でネギなのよ。しかもあのネギ……。

 

「何で沙紀ちゃん。ネギ持ってアルパカに突撃しようとしてるの? しかもあのネギ曲がっているよ」

 

 そう穂乃果の言ったように沙紀が持っているネギは曲がってる。

 

「あれは……曲がりネギって言って……茨城や仙台、福島で取れる特産品です……」

 

 私たちの疑問に海未が辛そうな感じで説明してくれた。さっきから沙紀の目に余る行動で頭が痛くなってるのに。

 

「へぇ~、そんなネギがあるんだ」

 

「はい……まあ、特産品と言ってもネギですから探せば東京でも見つかるでしょう……。何故……沙紀が武器として使っているかはさておき……」

 

「なるほどね。まあ、そんなことより沙紀がいつの間にかアルパカ小屋に入ってるんだけど」

 

 海未の説明を聞いている間に沙紀はアルパカ小屋に入ってネギでアルパカを仕留めようとしていた。

 

「取った!! ゴフッ」

 

 ネギで殴りかかろうとする沙紀にもう一頭のアルパカが攻撃をして沙紀は吹き飛ばされる。

 

「そういえば、もう一頭いたわね。いいわ。先にあんたから相手してやるわよ」

 

「人類を舐めるな!!」

 

 そう言って沙紀とアルパカの激しい戦いの火蓋が切って落とされた。

 

「そんなことよりにこ先輩。沙紀ちゃんって何時もあんな感じなんですか」

 

 沙紀とアルパカの不毛な争いに見るに耐えなくなったのか、穂乃果は私に沙紀は何時もこんな感じなのか聞いてきた。

 

「まあ、今日はちょっと酷いけど大体こんな感じよ」

 

 嘘を言ってもしょうがないので事実を話す。話さないとこの子達が何か酷い目に会いそうな気がするから。

 

「こんな感じなんですか……」

 

 横で聞いていた海未が更に落ち込む。どんどん彼女の中の沙紀のイメージが崩れていっているのだろう。可哀想に。

 

「何時もならいきなり別のキャラになったり、ドッキリを仕掛けたりするから大変なのよね。あんたたちの方でも何か無かったの?」

 

「どうだったかな。沙紀ちゃん、たまに鼻血を出すくらいで今日みたいな事なかった気がするだけど」

 

 ああ、穂乃果の言葉で大体分かったわ。委員長キャラと今のキャラの中間くらいで接してたのね。

 

 中途半端に委員長キャラの部分が理性となってるけど、沙紀に取って刺激が強いことがあれば身体が勝手に興奮して我慢できず鼻血を出す。

 

 なるほどなるほど。穂乃果たちとはあまり飛ばさず軽めで接していたみたいだからこのギャップの違いは戸惑うのは仕方ないわね。

 

「は……初めて一緒に帰ったときに胸を触られました……」

 

 前言撤回。あいつ始めからアクセル全開だった。

 

「海未。強く生きなさい」

 

 それしか掛ける言葉が見つからなかった。

 

「いえ、違うんです。初めのころは私が緊張してましたので沙紀がスキンシップとして緊張を解すためにやってくれたですけど……」

 

 海未の弁解を聞いて私は事情を把握して納得する。

 

 大方、希からわしわしでも教えてもらってそれを使って距離を縮めようとしてたんでしょ。

 

「確かに緊張は解れて沙紀と普通に会話できるようになりましたけど、沙紀があれと聞いて少し不安な部分が出てきただけです」

 

 沙紀の事だから海未の緊張を解すためにやったと思うけどそれは海未も理解できるけど、それと下心があったかどうかは別の話。

 

 結局、海未は何が言いたいのかと自分の胸を下心で触ったかどうかが知りたいわけね。

 

 これに対する回答は一つしかないわ。

 

「あんたの信じる篠原沙紀を信じなさい」

 

 完全な丸投げ。しょうがないでしょ。だってあの子本当になに考えてるのか未だに分からないときがあるから。

 

 そんな適当な発言に海未は真剣に考えている様子。

 

 そして、少ししてから考えが纏まったのかまるで憑き物が落ちたみたいなとても清清しい顔をしていた。

 

「にこ先輩、ありがとうございます。お陰でスッキリしました」

 

 とても清清しい顔をしているけど果たして彼女の中の沙紀はどんな答えを出したのか。彼女のみが知るところ。

 

 と、まあ沙紀を放置して雑談をしていたわけだけどそろそろ沙紀の様子を確認しようと(出来れば確認したくないけど)飼育小屋の方を見る。

 

「あなたなかなかやるね」

 

「フーン」

 

 制服が泥とかで汚しながらアルパカの首に手を掛けてアルパカと仲良くなっている沙紀の姿がそこにはあった。

 

「あなた、名前何て言うの?」

 

「フーン」

 

「そうなんだ」

 

 何か知らない間に沙紀がアルパカと会話できるようになってるだけど、あとどうでもいいけど曲がりネギはどうしたのよ。

 

 沙紀の手元にはない感じだけどまさかアルパカに食べられたの? と言うかアルパカがネギ食べても平気なの? 

 

「何言ってるのか全く分からないけど、今日から私たちは強敵(とも)ね」

 

「分からないか~い!!」

 

 しまった。思わずツッコンでしまったけど沙紀たちはそんなことはお構いなしに続ける。

 

「けど、次はこうはいかないよ。今度はMO手術を受けてあなたにもう一回勝負するから覚悟しておいてね」

 

 更にツッコミどころが増えていくなか沙紀はそう言ってアルパカから離れて私たちの所に戻ってきた。

 

「にこ先輩、篠原沙紀ただいま戻りました」

 

 笑顔を向けて私たちの元に戻ってきた沙紀。そんな沙紀に私たちは鼻を摘まんで数歩距離を取る。

 

「あれ? どうしたんですか? 私から距離を取って? それと何で鼻を摘まんでるんですか?」

 

 私たちの行動に疑問を思ったのか、沙紀はそんな質問をしてくる。しかし、その質問に答えるのは少し酷な話。

 

「え~と、沙紀ちゃん。とても言いづらいけど……。やっぱり、無理!! 穂乃果には言えないよ!!」

 

 穂乃果は何で私たちがそんなことをしているのか言おうとしたけどとても今の彼女に伝えるには難しすぎて諦める。

 

「そ、そうですね。流石に女性にそんなことは言えませんよね」

 

 海未もこんな事を伝えるのは無理と言っているようなものなのでこれは私が言うしかないみたいね。

 

「沙紀!! あんた……アルパカに唾掛けられなかった?」

 

 流石に私も直接的に言うのは無理だったので遠回しに言ってみる。多分、沙紀ならこれで伝わるはずだけど。

 

「何回か掛けられましたけどそれが……!!」

 

 どうやら彼女は私たちが何を言いたいのか伝わったみたい。

 

「あの……もしかして……私臭いですか?」

 

 すごい泣きそうな声で沙紀はそう言った。

 

『……』

 

 とても私たちはそんなことを口に出来ないので黙っている事にした。

 

「やっぱり!!」

 

 沈黙は肯定の意味もあるためそれで察した沙紀は更に泣きそうな声で叫び私たちの方へ一歩前に出る。それに合わせるかのように私たちは一歩下がる。

 

「今日はもう踏んだり蹴ったりだ~!!」

 

 そう叫びながら沙紀は何処かへと走っていった。私たちはその姿を黙って見ることしか出来なかった。

 

「あれ? 沙紀ちゃんどっかへ走っちゃって行ったけどどうしたの?」

 

 自分の世界からやっと戻ってきたことりは隣でアルパカと戦っていた沙紀が近くに居たのにもかかわらず、一部始終全く知らない様子だった。

 

「あんた、結構図太いわね」

 

 そんなことりに対して私はそう口にした。

 

 2

 

 沙紀が走り去って今回のオチ。

 

 結局、沙紀はそのままいじけて音ノ木坂に来てから初めて早退したらしい。

 

 沙紀が早退したせいで学校中が大騒ぎになった。一応かなり真面目な生徒として有名な為そんな生徒がいきなり早退したとなればどうなるかと言うと……。

 

 まず、緊急職員会議が行われて、授業がほとんど自習となった。それだけで済めば良かったのだけど更に沙紀のファンクラブ(非公認)の生徒が暴動を起こし、全員学校を早退した。

 

 そのあと、まあ何か色々とあって、生徒会が頑張っていたみたいだったけど、真実を知る私と穂乃果、海未はただ苦笑いするしかなかった。

 

 ちなみにちゃんと今日の練習メニューは置いて帰っていた。そこはちゃんと律儀にやるのねと思いながら午後の授業を終えて、部室に向かおうとすると携帯に着信が入る。

 

 私は携帯を取り出して誰からの電話か画面を確認するとそこには──

 

 東條希と写し出された。

 

 ヤバイ。すごく出たくないだけど……。嫌な予感しかしない。

 

 そう思って私は携帯を鞄に入れて見なかったことにしようとする。

 

「な~んでにこっちはウチの電話に出ないのかなぁ」

 

 急に後ろから今は聞きたくない声が聞こえて思わず全力で走るけど、何故か何もないとこで転んで呆気なく希に捕まってしまった。

 

「な~んでにこっちはウチを見た瞬間逃げ出したのかな? 何かウチにやましい事でもあるやね」

 

「な、な、何も無いわよ!! 別にただ早く行かないと後輩たちを待たすから走っただけよ」

 

 今の希に捕まったら絶対ヤバイ。本能的にそう感じされて早く逃げ出そうとよく分からない言い訳をする私。

 

「そっか、そっか。でも大丈夫やよにこっち。すぐにウチの用は終わるから」

 

 とてもいい笑顔でそんなことを言う希。その顔から狂気しか感じない。

 

「一体なんの用よ」

 

「えっ? 委員長ちゃんのことに決まってるやん」

 

 委員長ちゃんって言葉で私は血の気が引いていくのを感じた。今日、私死ぬかも。

 

 今日の出来事の大半は沙紀の自業自得なのに何故か酷い目に合わされるそんな気がするから。

 

「そんなわけでにこっち。ウチと一緒に屋上や」

 

 私は言われるがまま、希と一緒に屋上に向かった。

 

 このあと、私の身がどうなったのかを知るものは当事者のみだった。

 




はい、なんと言うか酷い回でしたね。

そんなわけで感想、誤字、脱字などございましたら気楽にどうぞ。

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