アブソリュート・デュオ〜銀狼伝〜   作:クロバット一世

9 / 45
いよいよ璃兎戦です。


7話 死ぬ気の炎

暗闇の中で月見璃兎と天峰悠斗は対峙していた。

月見 璃兎は、凶暴な肉食獣を彷彿させる凶悪な笑みを浮かばせていた。

 

「透流、ユリエ、お前たちはみやびたちと合流しろ」

 

「なっ…バカを言うな悠斗!!いくらお前でもひとりじゃ危険だ!!俺たちも協力する!!」

 

「ヤー、私たちもまだ戦えます」

 

「気持ちは嬉しいけどよ、この狭いフィールドじゃむしろ複数は危険だ。それに、やばくなったら俺も退却するから大丈夫だ」

 

悠斗はそう言って二人の顔を見た。

 

「アタシを倒すダァ?やれるもんなら…やってみろやぁぁぁぁ!!!!」

 

その叫び声を合図に璃兎が床を蹴って正面から突っ込む。

《Ⅲ》の全速力は、殆どない両者の間合いを一瞬で詰めた。首を狙い《牙剣》を薙ぎ払う璃兎。

それを『長槍』を用いてガードするが、圧倒的差のある膂力で押し切られそうになり、長槍を斜めに傾けて薙ぎ払いを受け流す悠斗だが、切っ先が頬を擦り血が流れる。

 

「気をつけるんだ悠斗!《焔牙》は人を傷つけるという強い意志を持つ事で相手を傷つける凶器に変わるんだ!」

 

「そうかよ…もしかしたらとは思ってたんだがな」

 

「へぇ〜……。予想はしてたわけか」

 

「まぁな、木々や壁をぶっ壊すだけの力を持つ代物が肉体は傷つけねぇなんて都合が良すぎるもんな」

 

「くはっ、そりゃそうだわな《銀狼》!!そんじゃアタシから特別レクチャーだ!!!」

 

圧倒的パワーとスピードでどんどん攻め続ける璃兎と、璃兎の攻撃を紙一重で見切りながらカウンターを打ち込もうとする悠斗、互いに膠着状態が続いていた。

 

「《黎明の星紋(ルキフル)》にはお前らが知らない超重要機密事項がある。機密事項その一ぃ!!《焔牙》が人を傷つける事のない武器が真っ赤な嘘だってことだ!」

 

「なるほどな、入学式での理事長の宣言は制御暗示(セーフティーロック)だったってわけか」

 

「その通り!そしてその暗示ロックを解除する為には事実を認識する事だ。そして《焔牙》で人を傷つける為に必要なのはもう一つ、敵意、害意、殺意といった人を傷つけるという強い意志を持って《焔牙(こいつ)》を振るう事だよ!機密事項その二ぃ!!《焔牙》を破壊されると、少なくとも丸一日は気絶して目を覚まさねぇっ!まあ《魂》がぶっ壊されてその程度で済むなら御の字だろうがよぉっ!」

 

「…それでトラたちは意識を失っていたのか」

 

「まぁな、あいつらは思っていた以上に大したことなかったがなぁ」

 

「トラたちが弱い?どうやらその目はとんだ節穴みたいだな月見 璃兎」

 

「…さっきから言ってくれるんじゃねぇかテメェ…その憎たらしいツラァすぐにぶちのめしてやるヨォ!!」

 

そう言うと璃兎は悠斗に向けて更に攻撃を畳み掛けた。

 

「早く行け!!もしこいつに仲間がいたらみやびたちが危ない!!」

 

「…わかった、すぐにみんなを連れて戻るからな!!」

 

「悠斗、気をつけて」

 

そう言って二人はみやびたちの方へと向かっていった。

 

「そんじゃあ続きと行こうか月見 璃兎。テメェはゼッテーにぶちのめす!!」

 

「大した口ぶりだけど、その割にはアタシに全然決定打を決められてないようだけどな。まぁ無理もないけどな…何故だか分かるか?」

 

月見 璃兎は凶悪な笑みを浮かべながら悠斗の顔を見て言った。

 

「それはな、単純にレベル差ってヤツだ。今のアタシは《Ⅲ》、あんたは《Ⅰ》。だった二つレベルが違うだけでこの差だ。てめえじゃアタシには勝てねぇってことだ。」

 

「レベルだけが全てじゃねぇだろ。あまり俺のことをなめんじゃねえぞ」

 

悠斗は怒りをあらわにして璃兎をみた。

 

「…まあ確かに今のままだと少しばかりキツイな、だからちょっと本気出す」

 

「…ハッタリか?」

 

「自分で考えな」

 

悠斗は長槍を構え、集中力を高めた。

 

「…いくぜ」

 

すると、長槍の先端に白い炎が灯り、周囲の空気が冷え始めた。

 

「なっ…なんだその力は!?まさか煉業?いやっ《Ⅰ》のテメェがありえねぇ!!っ!まさかそれが噂に聞く《死ぬ気の炎》ってやつか!!だけどそんな色の炎は聞いたことがねぇぞ!!!」

 

「…どうやら《死ぬ気の炎》については知ってるけど詳しくは無いようだな、こいつは『死ぬ気の炎』の中でも特に希少で未だ全てを解明しきれていない第0の炎、《雪の炎》だ」

 

悠斗は長槍を振り回しながら

 

「行くぞ、月見璃兎。こっからは俺のターンだ」

 

その瞬間璃兎は大きく後退した。

それに悠斗はついていき、その距離はそこまで開く事はなかった。

璃兎は悠斗に攻撃を仕掛けるが、悠斗はそれをいとも簡単に防ぐと一気に攻撃を畳み掛けた、

 

(冗談じゃねぇ…力もスピードのさっきと桁違いだ。さっきまでは本気じゃなかったってことかよ)

 

「考え事は構わないが少し自分の体を心配した方がいいんじゃないか?」

 

「?…っ!何だこれは!?テメェなにしやがったぁ!!」

 

璃兎か悠斗の言葉を聞いて、自分の体を見ると、両足と剣を持つ手が凍り始めていた。

 

「俺の《雪の炎》の特性は《凍結》、あらゆるものを凍らせる。まぁいわば冷気を操る力だ。なんでも初代ボンゴレボスはこの炎をヒントにして奥義を編み出したとかっていうけど今はその話じゃねぇ。まぁつまり…詰み(チェックメイト)だ」

 

そう言うと悠斗は、一気に璃兎に近づいた。

 

「な…めんなぁぁぁぁ!!!」

 

璃兎は怒りをあらわにして悠斗に剣を振るうが、

 

「狼王弦月!!!」

 

悠斗の渾身の一振りによって、璃兎の《牙剣》は粉々に砕け散った。そして、轟音と細かい瓦礫が吹き荒れる中、月見 璃兎は気を失って倒れた。

 

「ふぅ、まさかこんなところで炎を使う羽目になるとは思ってもみなかったよ。」

 

悠斗はそう言いながら倒れている璃兎をみていると、

 

「悠斗!!大丈夫か!?」

 

透流たちがみやびたちを連れて戻ってきた。

 

「良かった、お前たちも無事だったか」

 

「おかげでな、しかしまさか月見先生を倒してしまうとは、君は本当に只者ではないな、しかし!!!今度からは二度どこんな無茶はするな!!!自分がどれだけ危険なことをしたか分かっているのか!?」

 

「そうだよ悠斗くん!!もし悠斗くんにもしものことがあったら…」

 

「いくらなんでも無茶しすぎです」

 

巴、みやび、梓の三人にこっぴどく怒られていると、合流してきた透流たちによって学園側へ連絡され、悠斗たちの手当てが行われた。

手当が終わった頃に駆けつけた三國達によって璃兎は拘束され、五人は今回の件は他言無用と念押しされて解放された。

そうして《新刃戦(しんじんせん)》の幕が閉じた

 

 

 

 

 

 

 

その日の深夜の校舎裏

 

「はい、予想外の事態が続けて発生し…ですが、今後の計画には支障は出ません。しかし、天峰 悠斗には用心するべきかと…はい、分かっています。私はあの人の悲願の達成に全てを捧げるつもりです。《装鋼の技師(エクイプメント・スミス)》殿にもそう伝えてください。では」

 

 

 

 

〜某施設内の研究室〜

ここに白衣を着た老人と金髪の好青年がいた。

 

「学園内に潜り込ませたスパイの報告によればどうやらトラブルがあったようですが計画には問題ないとのことです。」

 

「そうかそうか、あの子はとても優秀じゃからな…信用しても良いじゃろう」

 

「それと…天峰 悠斗には用心したほうが良いと」

 

「ふむ、さすがはボンゴレファミリーの幹部といったところか…しかし幾らボンゴレだろうと儂を止めることは出来ん。それに…いざとなってもあいつがおる。そうじゃろう?…《シェード》」

 

そう言うと部屋の奥から漆黒の『装鋼(ユニット)』を纏い、顔を仮面で覆った男が現れた。

 

「ドウデモイイ、オレハ『ヤツラ』ニフクシュウデキルノナラバカソレデイイ」

 

《幽霊(シェード)》と呼ばれた男は仮面越しにそういった。

 

 

 

悠斗たちにさらなる脅威が迫っていた。

 

 




今日はここまでとします!!!


最後に出てきた《幽霊(シェード)》はかつてボンゴレと戦った敵キャラです!!誰が出るかはお楽しみってことで



感想待ってます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。