アブソリュート・デュオ〜銀狼伝〜   作:クロバット一世

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原作突入です!!









銀狼入学編
1話 入学式


昊陵《こうりょう》学園。

一般の高校と違い、特殊技術訓練校という面がある。

この学校で教わる特殊技術とは、戦闘技術。 平和な日本において、日常必要としない術を教えるという非常に特異な学校だ。

この昊陵学園は東京湾北部、懸垂型モノレールでのみ立ち入ることの出来る埋め立て地に存在する。

周囲を巨大な石壁に覆われ、そのサイズに見合った門が唯一の入口となっていて、敷地の中央には学外からも望むことの出来る巨大な時計塔がそびえ立っていた。

校舎や学生寮など内部の建造物は馴染みのない西欧風で、学校と言われると少々違和感を覚えてしまう。

俺はそんな学校の桜並木を歩いていた。

 

「やっぱり桜はいつ見ても良いもんだな…」

 

俺は季節としては冬が好きだ、しかしそれとは別にやはり桜を美しいと思うのは父親の日本人の血が流れているからなのだろう。

 

「…?」

 

ふと、自分の歩く先を見るとその先に、二つの人影が見えた。

一人は自分同様の色の銀髪を腰まで伸ばし、透き通るような白い肌と深紅の瞳が印象的な少女

もう一人はそんな彼女に見惚れている同年代の少年であった。

 

「このまま一人で講堂まで行くのもつまんないし声かけてみよ。」

 

そんなことを考えながら俺は、少年の方へと向かっていった。

 

「なぁ…」

 

「うぉっ!?」

 

どうやら俺がいきなり声をかけたもんだからビックリしたらしく、少年はそんな声をあげた。

 

「あ〜悪い驚かせて、良かったら一緒に講堂まで行かねーか?」

 

「なんだそういうことか、それなら良いぜ。俺の名前は九重透流、これから三年間よろしくな。」

 

「天峰悠斗だ。こちらこそよろしくな」

 

そんなことを話していると

 

「ちょっとあんたたち、早く行かないと遅れるわよ」

 

「ん?」

 

ふと後ろを振り返ると茶色い髪をポニーテールにした少女が立っていた。

 

「あぁ、悪い」

 

「良いわ気にしなくて、私は永倉伊万里これからよろしくね」

 

「俺の名前は天峰悠斗、んでこいつが九重透流」

 

「よろしく」

 

そして俺たちは講堂へと向かっていった。

 

講堂へ着き、俺たちは席に座った。

 

「隣失礼」

 

俺が隣の新入生にそう言うと

 

「ん、おう」

 

と、黒い逆立った短髪の体格の良い新入生が答えた。

 

「なんか銀髪ってスゲーな。あっ俺は本郷勝元(ほんごう かつもと)よろしく」

「天峰悠斗だ、こちらこそよろしくな。それと銀髪ならえーとああいた、ほらあそこにもいるぞ」

俺はそう言うと先ほど見かけた銀髪の少女の方へ指をさした。

 

「うぉっ!?スゲー可愛い!!!後で声かけてみよ!!」

 

そんな風に駄弁っていると

 

『あ、あ……』

 

というマイクテストの声が聞こえる。

 

『一同静粛に。まもなく、入学式を開始します。進行は私三國が行います』

 

壇上へ続く階段の脇に立った二十代後半と見られる男性教師らしき人物が、『静粛に』ともう一度口にすると、それに伴って講堂内のざわめきが小さくなっていく。

 

『ただ今より、昊陵学園高等学校入学式を始めます。まず最初に、当学園理事長より新入生の皆さんへ式辞をお贈りします』

 

 

進行役の三國の言葉を受け、壇上へと上がる朔夜。

 

 

『昊陵学園へようこそ、理事長の九十九朔夜ですわ』

 

(朔夜の目的は《絶対双刃(アブソリュート・デュオ)》とか言う領域に《越えし者(イクシード)》を至らせること……。その為に罪のない人たちを傷つけるようなら俺たちボンゴレが許さないぞ…)

 

 

壇上で年齢からは想像できない程堂々と式辞を述べる理事長を悠斗は見つめていた。

数年前にドーン機関が開発した《黎明の星紋(ルキフル)》と言う名の生体超化ナノマシンを投与され、人間の限界を遙かに超えた身体能力と超化された精神力により《魂》を《焔牙(ブレイズ)》と呼ばれる武器として具現化させる能力を得た人間を《越えし者》と呼び、その《適性(アプト)》を持つ者は千人に一人とされている。そしてこの《超えし者》の最終到達点が《絶対双刃》であると悠斗は朔夜から聞いている

 

 

 

『貴方達はこの昊陵学園にて様々な技術や知識を得ることになるでしょう。しかしそれらはすべて、より高みを目指すためのものであると常に念頭へ置いてください。それこそが当学園の校訓、十全一統となりますの。……それでは最後に、この言葉を贈らせて頂くことで式辞を終わりとさせて頂きますわ』

 

 

朔夜はそこで一度言葉を止めると、新入生全体を見渡し、そして告げる。

 

 

『願わくは、汝がいつか《絶対双刃》へ至らんことを』

 

 

締めの言葉を告げ終えたが壇上から降りる気配がなく、その場に留まり続ける朔夜に透流が首を傾げる。

 

 

「どうしたの、透流?」

「いや、理事長が……」

 

 

不思議に思う透流に答えるように、朔夜は再び口を開く。

 

 

『これより、新入生の皆さんには当学園の伝統行事《資格の儀》を行って頂きますわ』

「伝統行事?」

「進行表には書かれてないけど……」

 

 

本来の予定ならば次は在校生代表による歓迎の挨拶の為、透流や伊万里はもちろん辺りからは動揺する新入生が数多くいた。

 

『それでは《資格の儀》を始める前に、貴方達にはして頂くことがありますわ。隣に座る方を確認して下さいませ。その方が此よりの儀を行うに当たり、パートナーとなる相手ですの』

 

悠斗は右隣に座る勝元を、勝元は左隣に座る悠斗を、透流は自身の右隣に座る伊万里を伊万里は自分の左隣の透流を見る。

 

「パートナーっていったい何をするの?」

 

伊万里が首を傾げながら呟く。そしてそれは伊万里だけではなく、あちこちから聞こえてきた。そしてその答えは朔夜の次の言葉で理解する事となる。

 

『これより貴方達には決闘をしてもらいます。』

 

行事の内容を伝えられた瞬間、そこかしこで驚きの声が上がった。

 

『此より開始する伝統行事《資格の義》は、昊陵学園への入学試験ということになりますの。勝者は入学を認め、敗者は《黎明の星紋》を除去した後、速やかに立ち去って頂きますわ』

 

新入生たちの驚きとは正反対に、涼しげな顔で理事長がとんでもないことを口にする。

やがて言葉の意味を理解すると、新入生がざわめきだした。

 

「じょっ……冗談でしょ……!?」

「どうりですんなり、入学式に出られたわけだ」

 

どうやら伊万里は納得がいかなかったようだ。

 

「今更、入学試験って……《黎明の星紋》の《適性》があれば、誰でも入学できるんじゃなかったの……!?」

 

その問い掛けに対して答えたのは、理事長ではなく進行役の三國と言う男だった。

 

『入学試験が存在しないなどとお伝えたした覚えはありません。《適性》があれば、当学園へ入学資資格があるとお伝えしただけです』

「この入学に落ちた者から学園内の情報……《黎明の星紋》のことも、洩れてしまうことは考えていないのか? そのリスクを負ってでも、半数を落とすつもりかっ……」

『当学園の内情に関しては、様々なかたちで情報規制がされています。心配はありません』

 

薄い笑みを浮かべる三國の表情に、いま聞かされたことが真実だと肌で理解する。

困惑と動揺でざわめく講堂内。

 

『……ご理解を頂けましたら、試験のルールについて説明いたしますわ』

 

けれど壇上に立つ黒衣の少女は、特に気にした様子も無く、淀よどみない口調で残酷なルールについては話し始めた。

 

『この決闘は基本的に何をしようとも自由……つまり武器の使用制限はありません。もちろん《黎明の星紋》による《魂》の具現化武器《焔牙》の使用も許可します。決闘が嫌ならば逃げ出して下さっても構いませんわ。決着はどちらかの敗北宣言もしくは戦闘不能と判断された場合、また、10分以内に敗北が決まらない時は……どちらも不合格。―――これは、何処にもある入学試験ですわ。他人を蹴落として自分が生き残る単純なルール』

 

そこに命が懸かってなくても、負ければ道は閉ざされるのだから、理事長の言っていることは間違いは無い。

間違いは無いのだが、それで全員が納得できるわけじゃない。

 

「だからって……どうして決闘なんですか! 普通に試験じゃ……」

 

伊万里が問いかける。

それは大半の新入生の代弁と言えるものだった。

 

『いつか必ず……貴方達には闘う時が訪れますわ。《超えし者》として、ドーン機関の治安維持部隊へ所属後……時には命を懸けた闘いも……こんな事よりも厳しい決断の時が必ず……やって来るのです』

「つまりこの入学試験は、学園側から俺たちへ贈る最初の決断ってわけか」

 

透流の言葉に理事長が笑う。

 

『……それでは、開始前にひとつ……《焔牙》について補足説明をさせて頂きますわ。《焔牙》とは《魂》を具現化させて創り出した武器……故に、傷つけることが出来るのもまた《魂》のみですの。―――よく聴きまして……《焔牙》の攻撃は相手の精神を疲弊させるだけのものであり、肉体を傷つけ命を奪うことはありません。……つまり、制圧用の武器なのですわ』

 

これがどれ程どこの場の新入生を安堵させ、迷いを揺さぶるものだっただろうか。

ざわりと動揺が広がる様が目に見えてわかる。

次いで一人、また一人と意思を固めていく様子もまた。

 

「……すみません。ひとつ……」

 

透流が手を上げ、理事長へと質問を投げる。

 

「パートナーの変更……は……」

 

彼は僅かばかりの期待を込めて問うも―――

 

『―――できませんわ。貴方は受験で数学が苦手だから得意の教科で評価してくれと言えますの?』

 

返ってきた無慈悲な言葉へ、彼はその後を続けることが出来なかった。

おそらく過去に同じような要望を問い投げ掛けた者がいたのだろう。

しかし、理事長は容赦無く歯車を動かしてしまう。

 

『闘いなさい。天に選ばれし子(エル・シードら)よ!! そして己の未来をその手で……掴み取るのですわッ!!』

 

鋭い声、同時に講堂のみならず学内すべてに鐘の音が響き渡る。

一瞬だけ間を置き…

 

「うわぁああああああっ!」

 

誰かが発した叫びが本当の合図となった。

 

そして―――この試験を、決闘を受け入れ、闘う意思を持った者が《力ある言葉》を口々に叫び、あちこちで紅蓮の《焔》が発せられる。

 剣、槍、弓―――視界に映る幾多の武器、それを手にすると試験相手へ向けて振るう。

 講堂内へ喧騒が、剣戟が響く。

 

「構えろ悠斗」

 

気づくと勝元が俺の前に立っていた。

 

「わりーが俺も手加減する気はねぇ本気でこい。」

 

「俺も手は抜かねーよ」

 

そして二人はふっと笑うと

 

「「焔牙!!!」」

 

それぞれの焔が煌めき、武器の形となった。

 

勝元の焔牙は《大剣》

そして俺の焔牙は《長槍》であった。

 

「行くぜ!!!」

 

勝元は大剣を上段から振り下ろした。

俺はそれを難なく避けるが次々と斬撃が繰り出される。

 

「どおした悠斗ォ!!避けてばっかじゃ勝てねぇぞ!!」

 

勝元はそう言いながら剣を前に突き出してきた。

 

「ただ振れば良いってもんでもねぇ」

 

次の瞬間俺は勝元の大剣を交わしながら懐に入り、

 

「狼王一閃!!!」

 

勝元に渾身の突きを放った。

 

そしてそのまま勝元は吹っ飛び…

 

 

 

 

 

 

 

ヤンキーっぽい新入生の一人を巻き添えに倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

〜???〜

 

…こんなの聞いてない

 

いきなり始まった闘い、しかも自分の相手はいかにもガラの悪そうな自分が特に苦手なタイプの男だった。

 

「…女に手をあげる趣味はねぇけどよぉ」

 

そう言うと男は自分の武器の鉈の焔牙に振り上げ、

 

「ちょっと眠ってろ」

 

そう言いながら鉈を振り下ろした。

 

ごめん、お母さん、お姉ちゃん…私やっぱり弱いや

 

 

 

 

 

 

「ぶへぇ!!!!」

 

 

すると、突然そんな声がして目を開くと…

 

 

 

 

 

 

 

気を失った男の下敷きになって先ほどの男が少し離れたところで伸びていた

 

 

 

 

「…え?」

 

 

 

 

私がそんな声を上げていると

 

「あー悪い。捲き込んじまった」

 

そう言いながら銀髪の少年がこっちに来た。

 

「立てるか?」

 

そう言いながらこちらに手を差し伸べる少年から…

 

私は目が離せなかった。

 

 

 

 




文字数多かったですがここまで書きたかったので悔いなし!!!

悠斗の焔牙のモチーフはマドマギの杏子の槍を黒くした感じだと思ってください

…多節棍にはなりません

感想待ってます。

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