アブソリュート・デュオ〜銀狼伝〜   作:クロバット一世

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ラストバトル開始です!!!


27話《楯》と《長槍》

「はぁ……はぁ……くそ、体が重い……でも急がないと……」

 

悠斗は赤い光と爆発のする方へ急いで向かおうとするが、幻騎士との戦闘の傷が思ったよりも深く、体が重いことから思ったよりも早く走れなかった。出血は《雪》の炎で傷口を《凍結》することで止血出来たが、《装鋼(ユニット)》をまとったみやび、《神滅装備(アルマメント・エル・リベール)》を纏い、さらにヘルリングによって狂化された幻騎士との連戦は予想以上に悠斗の体にダメージを残したのである。しかし、それでも悠斗は見殺しには出来なかった。この学園で出会った大切な仲間たちを。周囲の《神滅部隊(リベールス)》は援軍に来たツナたちがいるので問題ないであろう。

 

「………ふぅ~よしっいくかっ!!!」

 

悠斗は息をめいっぱい吸い再び走り出した。

しばらく走ると、少し離れたところに透流たちの姿が見えた。しかし、ユリエは傷だらけになって気を失っており、その近くには《神滅部隊》隊長《K》が背中に四枚の翼を背負い、宙に浮いていた。

 

「透流!!!」

 

「っ!!悠斗か!?無事だったのか!?」

 

「まあな、みやびも何とか無事だ、ほかの敵は俺の仲間たちが援軍に来たから時間の問題だと思う。それよりユリエは?」

 

「……とりあえず命に別状は無いけど……あいつの翼状の銃の光弾で攻撃されて……」

 

透流は傷だらけで気を失っているユリエを抱きかかえて悠斗へと状況を説明した。

 

「これはこれは天峰悠斗。その様子だと、幻騎士はあなたに負けたようですね。彼には期待していたのですが……まあ仕方がありませんね、あとは私の手によって終わらせましょう」

 

突如、《K》が凶悪な笑みを浮かべて悠斗を見た。

 

「おい《K》。ずいぶんと変わった装備を持ってるな。それも《装鋼の技師(エクイプメント・スミス)》の作った武器か?」

 

「その通りですよ天峰悠斗!!!これこそが《神滅士》の外部兵装___《死化羽(デストラクション)》!!!この力であなたたちに引導を渡してあげましょう!!!」

 

そう言うと、《K》は赤い翼をこちらに向けると、突如二枚の翼から二枚のトリガーの付いたグリップが現れ、翼が銃へと変化していた。トリガーを引き、光弾が放たれる。

 

「くっ……‼︎牙を断て___《絶刃圏(イージスディザイアー)》‼︎」

 

しかしそれを、透流は何やら防御障壁のようなものを展開してそれを防いだ。

 

「なるほどな……それがお前の《焔牙》の真の《力》ってなわけか。」

 

「まあな、気をつけろ悠斗、あの武装、いろんな形態になってかなりやっかいだぞ。」

 

「だろうな、幻騎士の使っていた武装とはまた違った厄介さみたいだな……」

 

悠斗は眼の前の敵を見つめながらそうつぶやいた。

 

「くくく、この《死化羽》の力は幻騎士の《神滅装備》にも匹敵すると自負しています!!!手負いのあなたたちを倒すには十分すぎると思いますねぇ!!!!」

 

《K》は悠斗たちへと銃口を向け、凶暴な笑みを再び浮かべていた。

 

 

 

 

 

「……透流、あの野郎に俺たちの力を思い知らせてやろうぜ。」

 

「……俺はもとよりそのつもりだけど…お前は大丈夫なのか?ひどい傷じゃねーか。」

 

「そのセリフ、菓子折り付きでお返しするぜ。」

 

どちらも先の戦闘で大きなダメージを負っており、まさに満身創痍と言えた。

 

「………この闘い、こいつを倒さねーと終わらねえ………それに、お前も俺が前に出した宿題の《答え》を見つけたみたいだしな。」

 

悠斗の言う《宿題》とは、以前、悠斗が透流へと問いかけた『なぜお前の《焔牙》が《楯》なのか』という問いである。その言葉に透流は小さく頷いた。

 

「俺は……あいつに復讐すること以上に……これ以上大切な仲間たちを失いたくなかった。大切な仲間を《護れる力》が欲しかった……だから俺の《焔牙》は武器の形じゃなくて《楯》……防具の形になったんだ……」

 

「……なるほどな。だと思ったよ。」

 

「だけど悠斗……やっぱり俺はあいつへの憎しみを完全に消すことはできない……いつかあいつをこの手で倒すことになると思う……」

 

「それでいいよ、俺だってお前の憎しみを全部無くせると思っていないし俺にはそんな資格はない……それを決めることが許されるのはお前だけなんだからな……」

 

悠斗は透流にそう言うと、再び《K》のほうを向いた。

 

「勝つぞ透流。勝って皆のところに帰るぞ。」

 

「そうだな悠斗。こんなところじゃお互いぜってー死ねないよな。」

 

そういうとお互い顔を合わせて笑みを浮かべた。

そう、絶対死ねないのだ。天峰悠斗にはまだやらなければならないことがある。

彼女と約束したのだ。また二人で遊びに行くと。そして、まだ彼女に思いを告げていない。それまでは、何があっても絶対に死ぬわけにはいかない。九重透流は《楯》と拳を、天峰悠斗は《長槍》を、互いに構えて《K》に対峙した。

 

「そろそろお話は良いでしょうか?では、最後の闘いといこうじゃないですかぁ!!」

 

「来やがれ《K》!!!俺たちの力、てめぇに骨の髄まで叩き込んでやる!!!」

 

そして、透流と悠斗は《K》へと向かっていた。

 

「天に吼えろ____《覇天狼(ウールヴヘジン)》!!!」

 

悠斗の《力在る言葉》と共に悠斗は銀色のオーラに包まれ額から白銀の炎が現れた。

《K》は銃から剣へと型(モード)を変化させた《死化羽(デストラクション)》で一気にこちらの間合いへ潜り込んでくる。その突進による速度は、悠斗にも匹敵しうるものであったが、

 

「無駄だぁ!!!!」

 

悠斗は《長槍》によって剣の一撃を防ぎ、そのままカウンターの突きを放った。

 

「っ!?………ちぃっ!!!」

 

《K》は悠斗に攻撃を防がれたことが予想外だったのか、一瞬取り乱し、舌打ちしながら間合いを取り、剣から銃へと型(モード)を変化させ銃口を悠斗たちへと向けた。

しかし、

 

「透流!!!強力な一撃が来るぞ!!!回避しろ!!!!」

 

「なっ………!?」

 

《K》の放った一撃、赤色光束砲(エーテルカノン)を悠斗にばれたことにはさすがに動揺したが、《K》は途中でやめるわけにもいかずそのまま発射したが、透流は難なくそれを回避し、放たれた赤色光束砲(エーテルカノン)も悠斗が作り出した氷の壁によって逸らされてしまった。

 

「な……なぜだぁ!!!?なぜ私の攻撃がことごとく読まれるのだぁ!!!?」

 

《K》は現実に起こっていることが理解できないのか激しく動揺していた。

悠斗の煉業(イヴォルト)《覇天狼(ウールヴヘジン)》は身体能力や炎の力だけでなく、悠斗に眠っている野生の本能までをも開放することが出来る。それによって自身に降りかかる危険や相手の行動を察知することが出来るのだ。その力は、戦闘面においてなら、ツナの《超直感》にも引けを取らないであろう。

 

「こ……のぉ!!!!こうなったらぁ!!!!《死化羽(デストラクション)》に秘められし最後の《力》を見せて差し上げましょう!!!」

 

二枚の翼が《K》の言葉に呼応して組み合わさる。《K》はそれを___ニ連装の巨大な銃を手に取り、腰だめに構えた。

 

「これぞ《死化羽(デストラクション)に残された最終兵装___双連赤光束砲(ツインエーテルカノン)。》二門同時に放つことで、これまでの赤色光束砲(エーテルカノン)の倍以上に威力が跳ね上がるとっておきですよ……!!」

 

「なるほどな……確かにやばそうだが……当たらなければ意味が無え。」

 

「そうだな、むざむざ俺たちが当たると思ってるのか?」

 

回避に集中すれば、躱すかとができる。しかし《K》は、二人の考えなど想定内であるとばかりに薄く笑った。

 

「いいえ、貴方たちに避けることは出来ません。銃口の向きを考えればわかると思いますよ。《お友達思い》の貴方たちならね……」

 

『____っ!!』

 

その一言で二人は《K》の狙いを察した。

 

銃口は二人に向けられている。___しかし、その数百メートル先には寮があった。

つまり、躱せば寮のみんなを見殺しにしてしまう。

 

「さあ、最後はシンプルに《暴力(ちから)》と《魂(ちから)》の真っ向勝負といきましょうか。」

 

嗜虐の笑みを浮かべ、《K》が告げる。

 

「透流、俺を信じて全力で防壁を張ってくれ、俺が全力でサポートする。」

 

「悠斗……分かった。ゼッテー勝つぞ悠斗。」

 

ふたりは互いの拳を合わせて笑った。

 

「くくく、まさか躱すことも防ぐことも出来ない圧倒的な《暴力(ちから)》に折れないとは……ここまで来ると憐れみを覚えますよ……」

 

「なめんなよ《K》……俺たちの《魂(ちから)》は、てめーの《暴力(ちから)》なんかには絶対に負けねえ!!!」

 

「終わりです九重透流!!天峰悠斗!!」

 

ニ連装の銃口に集められた殺意と悪意の牙が、巨大な赤色の光と化して放たれた。

 

「《K》!!最後に一つ教えてやる!俺の《絶刃圏(イージスディザィアー)》は一か所にしか展開できないが___同時に展開出来ないわけじゃない!!」

 

透流は残るすべてを一気に開放し、吼えた。

 

「牙を断て___《絶刃圏・參式(スリーフォールド・イージス)》!!」

 

「《雪の防壁》最大防御!!」

 

一箇所へ集中して展開された重なる結界に《雪》の炎のコーティングがされた。

 

「なっ!?結界を重ねる!?___しかも…死ぬ気の炎で強化だとぉ!?」

 

『俺たちを……なめるなぁぁぁぁぁ!!』

 

ふたりの咆哮びと共に、結界に阻まれて蓄積し続けた光が___大きく爆ぜた。

やがて土煙がはれ____悠斗と透流は立っていた。

 

「バ、バカな……何故……なぜ生きている……なぜだぁぁぁぁあ!!」

 

怒りに身を任せて《K》は《死化羽(デストラクション)》の銃口を向けようとした瞬間、目の前に透流の姿が現れた。

 

「なっ……いったいどこにそんな余力が……っ!?天峰悠斗ぉぉぉお!!」

 

悠斗が透流の肩を支えながら残った力と《シルヴァの神速脚》を振り絞って《K》の眼前へと超高速移動したのである。

 

「最後はお前が決めな透流。」

 

「ありがとな悠斗。」

 

悠斗に感謝を述べながら九重透流は拳を振るった。

この闘いを終わらせる最後の一撃を。

 

「終わりだ《K》_____っ!!」

 

「九重透流_______っ!!」

 

瞬間___透流の《雷神の一撃(ミョルニール)》が《K》に打ち込まれ、《K》はクレーターの中心で倒れており、《装鋼(ユニット)》は完全に破壊され、《死化羽(デストラクション)》も粉々と化していた。

 

「はは……あいつ、やっぱりやるじゃねえか…………」

 

悠斗は透流を称賛し、度重なる戦闘の疲労が闘いの終結とともにピークに達しそのまま意識を失った。

 

 




完・全・決・着!!!!!

やっとここまで書きました!!!

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