アブソリュート・デュオ〜銀狼伝〜   作:クロバット一世

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悠斗に変化が…


17話 臨海学校

「さーてっここで大発表ー♪」

 

悠斗たちは月見璃兎に呼び出され船の甲板に集まっていた。他の一年生も皆集まっていた。

 

「この船は間もなく目的の島にとーちゃくしまーす☆で、船がもうすぐ停まるから降りる準備をするよーに♡」

 

『…………?』

 

璃兎の言葉に周囲が何を言ってるのか分からなかった。

…何故なら

 

「…先生、陸がありません」

 

悠斗が全生徒の思いを代弁する。

無理もない。確かに目的地となる島は見える。……遠く数キロ先に。

 

「泳げってこと♡」

 

「泳ぐって…マジで言ってるのか「ギロッ!!」…それは本気で言ってるのですか?」

 

透流はとっさに璃兎にタメ口で聞こうとしたが、璃兎に睨みつけられて慌てて敬語を使った。

 

「もっちろん♪あっ、特訓も兼ねてるから制服着たまま泳いでね♡《超えし者》なら、それくらいこなさないとね♪」

 

璃兎の言葉に皆が騒ぎ出したが、悠斗はふとこちらを見下ろす九十九朔夜を見つけた。

 

(…なるほど、自分のモルモットの生態をじっくり見ようってんのか…)

 

こちらを笑みを浮かべながらこちらを見る彼女を睨みつけていると、トラも彼女の企みに気付いたらしく、同様に彼女を見ていた。

 

「最終目的地は島の中央にある合宿所の建物だよ☆それじゃあ行ってみよ〜♪あっそれと、この間学期末の『昇華の儀』があったけど、レベルアップした子はともかく、レベルの上がらなかったダメッ子動物は絆双刃の足を引っ張らないようにね〜♪」

 

「…………っ」

 

璃兎の言葉に、みやびは悠斗の隣で少し顔を俯かせた。

みやびはこの間の《昇華の儀》ではレベルが上がらず《Ⅱ》のままだったのだ。そのことに彼女は落ち込んでいて、ここのところ元気がなかったのである。

 

「みやび…」

 

悠斗はそんなみやびに何か声をかけようとした瞬間

 

ガシャンッガシャンッウィィィン

 

突然甲板が揺れ出し、開き始めた。

 

「こ、これって…まさか…」

 

悠斗は何か察したが時すでに遅く、

 

「そんじゃ、とっとと行っちゃいなさーい♪」

 

皆まとめて海の中へと落とされた。

 

『うわぁぁぁぁぁぁ!?』

 

生徒たちは突然のことになすすべもなく海へと落ちていった。

 

「ぷはっ…ホントこの学校やることが滅茶苦茶だ!!俺たちじゃなかったら下手すっと死ぬぞ!!」

 

「び、びっくりした…」

 

悠斗とみやびは海に落とされ海面でそんな文句を言っていた。

 

「そんじゃみやび…とりあえず島の方へ進むか」

 

「う、うん…」

 

悠斗とみやびはそのまま島に向かって泳ぎだした。

島までは果てしなく遠かったが、今の悠斗たちには泳ぎきれる距離であった。

悠斗はもともとボンゴレとして鍛えられていた身体にさらに《醒なる者》として目覚めたことで悠斗の身体能力は格段に上がっていた。そのため悠斗は難なく泳いでいたがみやびは身体能力は《超えし者》として超化されていたがそれでも悠斗に比べて劣っており、悠斗自身もみやびに合わせてゆっくり泳いでいたが、

 

「痛っ足が…」

 

突然みやびが溺れ出した。どうやら足を攣ってしまったようだ。

 

「みやび!!」

 

悠斗は慌てて溺れるみやびの元へ行き、彼女を助けると、

 

 

 

 

 

 

 

「……!!」

 

「あっ…」

 

みやびの顔がすぐ近くにあった。

突然、悠斗は顔が急に熱くなってきた。

 

「わっ悪い……安静にした方が良いから岸まで俺がおぶるよ」

 

「あ…ありがとう」

 

「お、おう…」

 

それからは悠斗はみやびと何も会話せずに岸まで泳ぎだした。

 

(なんだ…?今顔が急に熱くなった…?こんな症状今まで無かったぞ…?)

 

悠斗も自分の反応の意味がわからず戸惑っていた。

 

 

 

 

 

その後、悠斗とみやびは島にたどり着き、合宿所へと向かっていった。みやびの足も浜辺で休んだ際に治ったらしく普通に歩けるようになった。

 

「大丈夫かみやびー?もう少しだぞー」

 

川の岩場を歩きながら悠斗は後ろからついてきているみやびへと声をかけた

 

「う、うん…なんだか私、悠斗くんの足を引っ張ってばかりで…」

 

「ははっ何言ってんだよ。そんなわけ「きゃあ!!」…っ!みやび…うわぁ!!」

 

ドッポーン

 

突然みやびが足を滑らせ、悠斗は助けようとしたが、バランスを崩し、みやびと一緒に川へ落ちた。

 

 

「うへぇ〜ビショビショだなこりゃ」

 

悠斗は岩場へ腰掛け、濡れた制服を絞っていた。

 

「…みんな、もう到着しているかな…?」

 

「どうだろうな、まあ俺たちは俺たちのペースでいけば良いって」

 

みやびは悠斗の足を引っ張ってる自分が嫌であった。

彼一人なら、もっと早いペースで目的地へと着いてるだろう。しかし、自分に合わせているせいでかなり時間が掛かってしまっているのだ。

 

「ゴメンね悠斗くん…私「ストップだみやび」…えっ?」

 

「みやびは俺の絆双刃だ。みやびが自分を否定するってことは俺を絆双刃の俺を否定することにもなるんだぜ」

 

「そ、そんなつもりは…」

 

「前にも言っただろ。みやびは俺が選んだ絆双刃だって。だから…自分に自身持てって」

 

悠斗の言葉にみやびは少し嬉しかった。

 

(やっぱり悠斗くんは優しい。私はそんな悠斗くんのことが好きになったんだ…)

 

「ちょうど良いや、ここで海の塩を洗い流そうぜ」

 

悠斗はそういうと、顔や腕に川の水をかけ始めた。

 

 

 

悠斗たちは目的地の近くまで来た頃には空も赤くなりだし、日が沈み始めていた。

 

「もう少しで目的地だみやび、頑張れ」

 

「う、うん。」

 

「よし、その意気…っ!!止まれみやび!!」

 

突然悠斗がみやびを止めて前方に警戒した。

 

「悠斗くん…?」

 

「そこに隠れているやつ!!出てこい!!!」

 

すると、周囲から複数の黒装束の集団が現れた。

 

(以前の奴らじゃない…?)

 

すると黒装束たちの周囲に、《焔》が舞った直後に。《焔》が形を成し、武器と化した。

 

「《焔牙》…!?」

 

「みやび、来るぞ!!」

 

すると黒装束たちが一斉に悠斗たちへと襲いかかってきた。悠斗はすぐさま《長槍》を使って黒装束へと攻撃を仕掛け、数名を薙ぎ払った。

 

「んなっ!?こいつ強い…!!」

 

「数でたたみかけろ!!」

 

黒装束の一人の指示で複数の黒装束が一斉に悠斗めがけて襲ってきた。悠斗は

 

「そのセリフ…大抵やられ役のセリフだぞ」

 

《長槍》を高速回転させて、全て薙ぎ払った。しかし、

 

「フッ…甘い!!」

 

吹き飛ばされた黒装束の一人がいつの間にか持っていた糸を引くと悠斗の足にワイヤーが絡まってきた。

 

「悠斗くん!!」

 

「しま…っ」

 

その隙を逃さずに黒装束たちが悠斗めがけて襲ってきた。

悠斗もすぐに立ち上がって槍を構えるがワイヤーを引っ張られているので思うように踏み込めずにいた。

それに加えて周囲が岩に覆われていて足場が悪いのに対し黒装束はその足場で自在に動いていた。

 

「くそっ地の利は向こうにあるってことか…」

 

悠斗が《長槍》で攻撃を仕掛けようとするが、足のワイヤーを引っ張られてバランスを崩し、その隙に攻撃を次々と仕掛けられてきた。

悠斗も《長槍》で防ぎつつあるが相手の攻撃はどんどん繰り出されて、悠斗もどんどん追い込まれていた。

 

(どうして…どうして動かないの…!?)

 

みやびは恐怖で動けずにいる自分が許せなかった。悠斗が必死で戦っているのに自分が動けない。《生存闘争》の時も自分のせいでみんなの足を引っ張ってしまった。自分はそれが許せなかった。

 

『みやびは俺が選んだ絆双刃だ』

 

『だから…みやびも自分を信じてくれ』

 

その時、みやびは悠斗の言葉を思い出した。いつも自分を応援して支えてくれた彼の事を思い出し、自然と口が動いていた。

 

「《焔牙》!!」

 

そしてみやびは自身の《騎兵槍》を振るって黒装束たちへと攻撃を仕掛けた。

 

「ヤァァァァァ!!」

 

「なっ……ぐわぁぁぁ!!!」

 

突然のみやびの攻撃に黒装束たちはなすすべもなく吹き飛んでいった。

 

「サンキューみやび、助かったぜ」

 

悠斗はみやびに感謝の言葉を述べ残った最後の一人の方を向くと、

 

「さて…これで残りはあんただけだ。降参するか?」

 

しかし、黒装束は手に持っている《大剣》を構えると悠斗にめがけて斬りかかってきた。悠斗も《長槍》でガードし、そのまま反撃するが、《大剣》でガードされ、カウンターをしてきた。

 

「なかなかやるな、だけど…俺のが強え!!!」

 

悠斗は《長槍》で《大剣》の柄近くを突き、相手の『大剣』を弾いた。

 

「これで終わりだ…あんたたちの正体と目的を言いな」

 

「くそっ…以前より強くなってんな」

 

「…?」

すると、黒装束が自身の顔の布を剥がすと、

 

「…っ勝元!!」

 

そこには、入学式で悠斗と闘い敗れた本郷勝元がいた。

 

「久しぶりだな悠斗」

 

 

 

「ようこそ、昊陵学園分校へ‼︎入学式やら本日の《焔牙模擬戦》とやらといろいろあったけど、その辺りは水に流すと言うかお肉と一緒に飲み込んで、今日から一週間よろしくお願いします‼︎」

 

みんなに向かって永倉伊万里がそう演説すると、周囲から笑い声が聞こえ拍手をした。

 

「驚いたな…まさか分校があったなんて」

 

「俺も最初は驚いたぜ、なんでも《資格の儀》で敗れた生徒も希望があればこの分校への入学が許されたんだ。ま、環境も訓練もスゲー過酷だけど、毎日が充実してるぜ」

 

「そりゃよかった、どおりで以前より腕が上がってると思った」

 

「オメーが言うなって。あんなに強くなりやがってよ〜」

 

「フッまぁこっちもいろいろ修羅場をくぐってきたからな」

 

勝元の軽い文句に悠斗は笑いながら答えた。

 

「クッソ、テメェに復讐できると思ったんだけどな…」

 

そんな言葉が聞こえ後ろを振り向くと、髪をオールバックにしたいかにもヤンキーって感じの男が話しかけていた。

 

「誰あんた?」

 

「うぉぉぉい!?俺を忘れたのかよ!!お前に本校入りを絶たれた猿渡大輔(さわたり だいすけ)だよ!!」

 

「いや知らん。それに俺の対戦相手は勝元だし人違いじゃねーの?」

 

「忘れんなー!!ほら、お前と勝元の攻撃に巻き込まれた奴だ!!」

 

「あ…お前か」

 

「チクショー!!今ので思い出すのかよ!?」

 

俺の言葉に猿渡は悔しそうに地面を叩いた。

 

「悪いな、こいつあの日のことスゲー悔しかったみたいでな、『臨海学校であいつにあったらゼッテー復讐してやる』って意気込んでたんだよ」

「まあ気づかないうちに倒してたみたいだけどな」

 

「ハハッ。にしても驚いたな、まさか女子と絆双刃になってたなんてさ」

 

「まあな、みやびはスゲー奴なんだぜ。あいつの活躍で何度助けられたことか…」

 

「まぁ確かにさっきのは凄かったな。スゲー強力な一撃だったぜ」

 

「ま、まぁ俺と闘った時よりはやる様になったんじゃねーの?」

 

勝元と猿渡はみやびの実力に素直な答えを述べた。

「さて…肝心のみやびは…」

 

「さっきの闘い凄かったです!!」

 

「さすが本校の生徒ですね!!」

 

するとみやびは分校の生徒数名に先ほどの闘いについて関心されていた。

 

「そ、そんな…私はそんなに…」

 

「当たり前さ、みやびは俺の絆双刃なんだぜ」

 

悠斗はみやびを褒めながらその一団に混ざると

 

「え…絆双刃って男子?」

 

「しかも凄いイケメン!!」

 

「まさか二人は…キャー♡」

 

なんだか急に分校生徒の女子が盛り上がり出した。

 

「え、えぇぇぇぇ!?そ、そんな違うよ…(ツルンッ)キャッ」

 

慌てたため、みやびは足を滑らせてしまった。

 

「みやび!!」

 

悠斗は咄嗟にみやびを抱きかかえると

 

 

 

 

ムニュン

 

悠斗の左手が運が良いのか悪いのかみやびの胸をしっかりと掴んでしまっていた。

 

「………っわ、悪い!!」

 

「う、ううん、こっちこそゴメンね…」

 

悠斗とみやびは顔を真っ赤にしてしばらく黙っていると

 

『キャァァァァ♡』

 

なぜか女子たちがさらに騒ぎ出した。

 

「み、みやび…ここは一度離れるぞ…」

 

「う、うん…」

 

みやびと悠斗は顔を真っ赤にしてその場を離れた。

 

(…どうなってんだ?今までこんな事一度もなかったのに…俺の身体…どうしちまったんだ?)

 

悠斗は自分の中に芽生えた感情に戸惑いを隠せなかった。

 

 

 

 

 

「準備は出来ました。あとは《神滅部隊》をお迎えするだけです」

 

『うむ、ご苦労じゃったな。やはりお前さんに任せて良かったわい』

 

「ありがとうございます。これで貴方の悲願は間も無く達成するかと…」

 

『うむ、後はこの最新型を《素材》に纏わせばもうこっちのものだ…それに、いざとなっても《シェード》が残っている。儂に敗北はあり得んよ』

 

「勿論です。それではまた何かあったら連絡します」

 

『ご苦労』

 

そう言って影が電話を切った。

 

「これで…全てが終わる…」

 

闇夜の中、影の声が静かに溶けていった。




如何だったでしょうか!?
悠斗がみやびを意識し始めました!!
少し強引だったでしょうか…?でも後悔はありません!!これからもよろしくお願いします!!


後、感想欲しいな…

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