アブソリュート・デュオ〜銀狼伝〜   作:クロバット一世

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14話 幽霊

「てな感じでリーリスと戦ったわけだ」

 

リーリスとの初戦後、悠斗とみやびは透流たちと合流した。透流たちもリーリスの実力をあらためて実感した。

 

「分かってはいたがやはり、一筋縄ではいかない相手だな…」

 

「全くだ…まさか悠斗が苦戦する相手とはな。悠斗、勝機はあるか?」

 

「正直一対一だとちょっと厄介だな…そこで今後の展開について皆で話し合いたいんだけど」

 

悠斗はパンフレットを開くとマップを皆に見せた。

 

「さっき銃声が聞こえた方向から察してリーリスは現在この《空の広場》のあたりで交戦していると思う…そこでリーリスを追撃するかもしくは待ちに徹して迎え撃つかだが…」

 

「もちろん追撃だ」

 

「ふん、僕にも否は無い」

 

「フンッ(ビシッ)」

 

「わ、私も頑張る」

 

「我々も賛成だ」

 

「はい、追撃あるのみです」

 

「…私もトールたちに賛成です」

 

「だと思った、それでなんだけどな、リーリスはおそらく後数分もしたら俺たち以外は倒しちまうと思う。リーリスの武器は連射、射程範囲、威力においても俺たちの武器を上回っている…更に接近戦も得意ときている。そこでだ…まずは二手に分かれよう。《空の広場》への道はちょうど二つある。俺とタツ、透流とユリエが大通りから、みやび、トラ、巴と梓が迂回路を使って来てくれ、一番有効なのはやっぱり周囲を囲むことだ、それでだな…」

 

 

悠斗の指示どおりのチームでそれぞれ『空の広場』へと向かっていった。悠斗たちが《空の広場》に着くと、思っていた通り、自分たち以外は全滅していた。

 

「皆気をつけろよ…どこから撃ってくるか分からないからな。例えば……

 

 

 

 

 

そこからとか」

 

その瞬間悠斗が後ろへ槍を振るうと、悠斗に向かって銃弾が飛んできた。悠斗はそれを即座に弾いたが、更に銃弾が放たれ、そのうちの一発がタツに当たり、タツはそのまま倒れた。

 

「タツ!!…くそっ」

 

「よく分かったわね…擬態は得意だったんだけど」

 

すると、倒れていた生徒の一人が起き上がってカツラを取り、リーリスが姿を現した。

 

「一瞬気配を感じたんだ。俺、勘はいいから」

 

悠斗は透流たちと共にリーリスへとそれぞれの『焔牙』を向けた。

 

「透流、俺の合図と共に作戦開始だ」

 

「あぁ、分かった。俺たちに任せてくれ」

 

「ヤー、悠斗もお気をつけて」

 

悠斗はそのまま息を吸うと、

 

 

「行くぞ!!!」

 

リーリスに向かって走り出した。

 

「はぁ!!」

 

悠斗はリーリスへと接近し、槍の大振りの一撃を放った。

 

「無駄よ」

 

しかし、リーリスは《超えし者》の身体能力を活かして空中へと避けた。

 

「悪いけど、私は兎狩りにも全力を出す主義なの。それに、天峰悠斗の方も対策済み、後はもう貴方たちくらいだわ。」

 

そう言うと、リーリスは再び悠斗たちに向かって《銃》を放った。悠斗たちはそれを柱に隠れてやり過ごすと、再び悠斗がリーリスに向けて攻撃を繰り出した。

 

「同じことよ!!」

 

リーリスはさっき同様に空中へと避け、悠斗に向けて銃口を向けた。

 

それに対し悠斗は

 

 

「今だ橘!!」

 

 

すると、突然《鉄鎖》がリーリスの足へと絡みついた。

 

「____っ!?」

 

リーリスも突然のことに同様したがすぐさま鎖から抜け出し、《鉄鎖(チェイン)》を放った橘へと銃口を向けた。しかし、

 

「無駄だ!!」

 

リーリスの背後からトラが自身の『印刀(カタール)』で奇襲をかけてきた。

 

「なっ…!?まさか、伏兵がもう一人…」

 

「いいえ、私もいます」

 

トラへ気を取られたリーリスへと梓が『大鎌(デスサイズ)』を繰り出した。強力な大鎌の一撃がリーリスの胸の薔薇へと放たれたがリーリスはとっさに体を捻り、紙一重で見切った。

しかし、そこに悠斗が《長槍》を振るって更に追撃をした。

 

「く…まさか、もうすでに潜んでいたなんて…」

 

「言ったろ?《俺たち》の実力を見せるって」

 

悠斗は作戦開始の時、はさみ打ちの他に、もう一つ作戦を伝えていたのだ。それは、トラたちには先に動いてもらい、リーリスを見つけても攻撃せず、彼女に気付かれない距離から監視して、自分たちと交戦し始めたら彼女に接近し、自分の合図と共に畳み掛けてほしいと連絡したのだ。

 

「まさか、集団戦をしてくるなんて…」

 

「俺は本来一人より皆と戦った方が実力を出せるんだ」

 

悠斗はリーリスに接近して言った。

 

「リーリス・ブリストル、覚えておくといい。ボンゴレの真骨頂は《個》の能力じゃない。仲間との《連携》にあるんだ」

 

「くっ…でも、これくらいならっ!」

 

「俺たちを忘れるな!!」

 

リーリスが悠斗と鍔迫り合いをしていると、透流とユリエがリーリスへと接近する。

 

「これで終わりだリーリス!!」

 

「チェックメイトです」

 

透流たちがリーリスの胸の薔薇めがけて攻撃を繰り出す。だが…

 

「甘いわ」

 

リーリスは悠斗の《長槍》を逃れると、すぐさま上の階へと回避した。

 

「惜しかったわね、あと一人くらいいればちょっと危なかったけど」

 

「じゃあその一人はどこにいるでしょう?」

 

「____っ!!しまっ」

 

「ヤァァァ!!」

 

リーリスの逃げ込んだ階にはみやびが《騎兵槍》をリーリスに向けて突進してきた。

 

「くっ…だけど彼女一人なら」

 

リーリスはみやびに『銃』を向けるが

 

「させねえよ!!」

 

悠斗が自身の《長槍》をリーリスの方へと投げつけた。

『長槍』はリーリスの《銃》へと当たり、リーリスの手を離れた。

みやびの《騎兵槍》がリーリスへと向かっていき、リーリスはとっさに見切ったが《騎兵槍》はリーリスの胸を掠め、薔薇を貫いた。

 

 

「よしっ!この勝負…俺たちの勝ちだ!!」

 

悠斗がガッツポーズをとり、勝どきを上げた。

 

「…まさか、ここまでやるなんて思わなかったわ」

 

「リーリス・ブリストル、オメーの敗因は俺だけに警戒を絞ったことだ。他の奴らの実力を甘く見たな」

 

「…どうやらそのようね。悔しいけど私の負けよ」

 

 

 

 

 

 

 

「ナカナカオモシロイ《チャバン》ダッタゾ」

 

突然声が聞こえ、そっちを向くと、口元しか見えないヘルメットを被り、戦闘服の上から胸部や腕を装甲で覆い、手には突撃銃を持つという物々しい姿をした連中が現れた。

しかし、真ん中の男は口元までも隠したヘルメットで手には大型のナイフと明らかに他の奴らと違っていた。

 

「貴方たち、人のダンスパーティーに土足で入ってきて何の用かしら?」

 

「オマエガモクテキダ《リーリス・ブリストル》、オレタチトキテモラオウカ」

 

リーダー格の男はリーリスにナイフを向けてそう言った。

 

「お断りよ!!貴方たちの様な無礼な輩のエスコートなんて誰が…」

 

ダァァン!!

 

「うっ!!」

 

突然銃声が聞こえ、リーリスはフラついた。

「《装鋼の技師》カラハ、タショウイタメツケテデモツレテコイトイワレテイル」

 

「テメェ!!」

 

悠斗の怒りの声と共に、悠斗、透流、ユリエ、トラたちが連中に攻撃を仕掛けた。

悠斗の攻撃にリーダー格の男が自身のナイフで攻撃を仕掛けてきた。

 

(…!?こいつ、強い!!)

 

悠斗も敵の強さに気付き追撃するが、

 

「イイノカ?オレバカリコウゲキシテ?」

 

「…っ!!みやび逃げろォ!!」

 

「きゃあっ⁉︎は、離してぇっ‼︎」

 

「ククッ……。こんなのでも《越えし者》ってことか。なかなか力はあるみてぇだが、俺たちにとっちゃただの小娘ってことに変わりねぇな」

 

敵の一人の男はみやびの首に腕を回して拘束すると、頭へ拳銃を突きつけた。

 

「ひっ……⁉︎」

 

「うるせぇから叫ぶな。その頭に風穴開けるぞ‼︎」

 

男は引き金に手をかけた。つまり勝負はこの時点で決まった。

 

「待ちなさい‼︎」

 

その手を止めたのは、誰であろうリーリスだった。

 

「……あんたたちに大人しくついていくわ。だからそれ以上、あたしのクラスメイトに手を出すのはやめて貰えるかしら」

 

「…イヤダトイッタラ?」

 

「あたしを殺さないように連れて帰るのがあんたたちの役目なんでしょう?」

 

そう言ってリーリスは、ガラス破片___先が尖ったそれを自らの喉元へ突きつけた。

 

「その子から汚い手を離しなさい」

 

「…ソイツハモウイイ、トットトハナセ」

 

リーダー格の男はみやびを人質にとってる男に命令した。

 

「分かりました…」

 

リーダー格の男の命令に男は渋々みやびを離した。

 

「アアソレト…」

 

リーダー格の男はリーリスに、近付くと___ぱぁんっと乾いた音がリーリスの頬を打つ。

 

「オレハ、ウルサイオンナハキライダ」

 

「…以後気をつけるわ」

 

「…ツレテイケ」

 

リーリスの背中に銃を突きつけ、男たちは「空の広場」を立ち去ろうとする。

 

「り、リーリス……‼︎」

 

透流が呼びかけるがリーリスは

 

「…………。また、いつか会えたら……会いましょう」

 

それだけを言って、リーリスは男たちとともにこの場を立ち去る。そのリーリスの瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい……わたしが、捕まらなければ……う、ぐすっ……」

 

大粒の涙がみやびの瞳から零れ落ちた。

 

「我々も何もすることができなかった……っくそ‼︎」

 

皆が自分の無力さに苛立っていたそのとき___

 

「みやび、もう泣くな」

 

「で、でも、でも……わたし、が、……ううっ……」

 

「いい。誰もお前を責めたりなんかしない。俺の方こそ守れなくてごめんな…それにリーリスは俺が助ける、だからもう泣かなくて大丈夫だ」

 

そう言うと悠斗はみやびを優しく抱きしめた。

 

「皆…ちょっと行ってくる」

 

「え……?ひ、一人じゃ無理だよ……!わ、わたしも___ 」

 

「大丈夫、あの手の奴らは俺の得意分野だ。それに、さっきのお礼もしないとな」

 

「俺も行くぜ」

 

悠斗の言葉に透流も立ち上がった。

 

「俺もリーリスを助けたい、今度は文句を言っても無理やり行くぜ」

 

「透流…ったく本当にそーゆーとこだけはツナと同じだな」

 

「誰だツナって?」

 

「俺の友達だ」

 

「そっか…んじゃあ行くか」

 

「無茶すんなよ」

 

そう言うと、悠斗と透流は共に連中の消えた方角へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

別動隊

 

「どうやらうまくリーリス・ブリストルを確保できた様だな」

 

「思ってたより楽な仕事でよかったぜ。それじゃあ俺たちも本隊と合流するか」

 

 

「ねぇ」

 

「!?」

 

突然聞こえた声に男たちはその方向へ銃を向けると、そこには一人の少年がいた。見たところ制服も昊陵学園のものではなく、『超えし者』ではないと判断し、

 

「おい貴様、ここは立ち入り禁止だ。とっとと失せろ」

 

銃を向けて軽く脅して追い払おうとしたが彼らは知らなかった。

 

「何僕の前で群れてるの?」

 

確かにその少年は『超えし者』ではなかった。しかし、それ以上の化け物であるということを

 

そして、彼は群れることを誰よりも嫌っていることを、そして、『風紀』を乱す奴を誰よりも嫌うことを

 

 

 

 

 

 

「咬み殺す」

 

 

 

 

 

 

数秒後、男たちはその少年に一蹴されていた。そして彼はそのまま《あらもーど》の中へと歩いて行った。

 

会場に怪物が放たれた。

 




敵急襲!!

そして…《奴》が来た!!

次回2章終了です!!

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