MUGENと共に   作:アキ山

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 皆様、たいへんお待たせしました!

 他の作品にかまけて更新が遅れてしまい本当に申し訳ありません!!

 皆様の更新依頼、ほんとうに励みになりました。

 もう一つの作品も日刊では無理になってきたので、半々の割合で更新していきたいと思います。

 どうぞ、よろしくお願いします!


閑話『獅子王・地獄変(6)』

 聖杯動画大賞をご覧の皆様、こんにちわ。

 動画配信初挑戦の姫島慎です。

 今から10分ほど前に聖都の砦を一つ、攻め落としてまいりました。

 どうしてこうなったかと言うと、集落に向かう道程で呪腕さんが『近くにある聖都の砦に仲間が捕らえられている』という情報を受け取ったのが原因。

 これから世話になるんだから、と土産物を買うような軽さで救出が決定された。

 関わったのはメンバー全員という過剰戦力。

 害虫駆除組は連戦の疲れがあるのでは、心配したがそんな事は無かった。

 砦は別れた場所から徒歩で20分くらいの場所にあり、大きさは小さな事務所兼住宅と同程度。

 正門には二人の粛清騎士が警備に立っていた。

 でもって、メンバーの役割分担は陽動でヴァーリと美猴、ご先祖ちゃん。

 潜入と救出が俺・立香嬢・マシュ嬢・呪腕さん。

 後詰めに玉藻とシェーファー少佐、それにアラーシュさんとエミヤのアンちゃんに決定。

 作戦はヴァーリがラディカル・グッドスピードで衛兵ごと城門を蹴り飛ばすところから始まった。

 バックアップ組の援護射撃を受けてヴァーリ達が暴れている隙に内部に潜入した俺達は、呪腕さんの誘導のもと地下へと降りた。

 あ、床面ブチ抜きはしていませんよ?

 今回は狭い建物だったから、それをやると救出対象まで巻き込んじまうし。

 さて、そんなこんなで地下に降り立った俺達が見た物は、牢に繋がれた紫の髪をもった褐色の少女に拷問を加える粛清騎士という光景だった。

 まあ、直接触れるのではなく、何故か牢屋の外から棒で突くような真似だったが。

 こちらの姿に慌ててに迎撃の構えを取ろうとする騎士達。

 指揮官っぽい奴曰く、現れた粛清騎士はヤヴァイ薬でランスロット並みの能力を備えてるとか。

 せっかくのフリだったので、そいつも含めて全員仲良く『男殺し』で男性廃業していただいた。

 この光景に呪腕さんは縮みあがり、立香嬢達は目を押さえながらも隙間から見る、というテンプレを披露してくれた。

 粛清騎士の皆さん、これからは琉球唐手の奥義である『コッカケ』を憶えましょう。

 まあ、俺の蹴りは鎧有りでも骨盤まで届くから、体内にタマを引っ込めても無駄なんですがね! 

 泡を吹いて気絶した騎士達をふん縛っていた俺は、牢獄の隅にあるトイレの前でカリッカリに干乾びているトカゲ人間を見つけた。

 言わずとも分かると思うが、悪魔六騎士の一人であるスニゲーター先輩である。

 ギリギリ意識はあったので何があったのかを(たず)ねたところ、参謀であるアグラヴェインからの依頼で拷問を行おうとしたら、原因不明の下痢に罹って体中の水分を出し尽くしたらしい。

 なんで牢屋のトイレの前でぶっ倒れていたかと言うと、下痢が止まらなかったので動けなかったからだとか。

 そこまで口にして意識を失った先輩は、死亡防止の光によってその姿を消した。

 まぁ、あんな脱皮した後の残骸みたいな様じゃあ、闘えるワケないもんなぁ。

 どういうことなのかを視線で問うと、呪腕さんはそれに応えてくれた。

 なんでも囚われている『静謐(せいひつ)のハサン』は全身はもちろん体液に至るまで全て毒を含んだ毒人間なんだそうな。

 スニゲーター先輩を円卓の騎士からトイレの住人にジョブチェンジさせたのも、彼女の身の内にある毒ということだ。

 という事は、一緒の部屋にいる俺もヤバいのでは……? なんて疑問が浮かんだ途端、視界がグラリと揺れた。

 案の定、こちらも毒に侵され始めていたのだが、どっこい俺の体はそこまで柔ではない。

 『聖母の微笑』を使用するとあっと言う間に耐性が出来たのだが、静謐嬢はこっちが対処している内に立香嬢が助けていた。

 ヤバいと思って声をかけようとしたら、思ったとおりに静謐嬢ともつれ合って倒れる立香嬢。

 慌てて浄化法を施そうと駆け寄ったところ、なんと立香嬢が頭を押さえながらも立ち上がったではないか。

 『もしかして耐毒に特化した体質なのか?』と首を傾げていたところ、触れて死なない立香嬢に感動したのか、彼女に抱きついてボロボロと泣き出す静謐嬢。

 なんとも邪魔できそうに無い雰囲気だったので、彼女の事は立香嬢達に任せて早々に脱出した。

 あ、砦の方は魔物まで現れた事でテンションを上げたヴァーリの聖剣(手刀)の一撃によって見事に真っ二つになったあと、ガラガラと崩れていきました。

 その後は静謐嬢が立香嬢から離れなかったり、『一生この方について行く』という爆弾発言をしたりとのハプニングがあったが、概ね平和な旅行きだったと思う。

 たどり着いた集落への道が戦火に包まれていなければ、だが。

 

 

 

 

 俺、衛宮士郎は混乱する集落の人達の中を必死に駆け抜けていた。

 エイリアンの巣の(そば)で体調を崩した美遊を連れて一足先に集落へたどり着いた俺達は、行方不明者の捜索に尽力したことから大歓迎を受けた。

 まあ、本当のところは俵さんの持つ米俵からあふれ出す食料に感激したのかもしれないが。

 空き家のベッドを貸してもらったお陰で美遊の体調も順調に快復し、広場で開かれた宴会のお下がりを食べられるようになった頃、集落に続く道から爆音と悲鳴が聞こえた。

 慌てて二階部分から目を凝らすと、こちらに向かってくる聖都の粛清騎士達が爆発に巻き込まれて馬ごと吹っ飛ばされていた。

 ……えぇっと。

 こういう展開ってさ、騎士達が攻め込んだ事で村の人たちが悲鳴を上げるのが普通じゃないか?

 いや、そういう風になって欲しいわけじゃないんだけど。

 なんかこう、釈然としない何かを感じて……。

 いったい何がどうなってるのかと首を傾げながらもさらに目を凝らしてみると、ススキのような背の高い草むらの中を誰かが巧みに移動しているのが見えた。

 しゃがみ歩きなのか、匍匐(ほふく)前進なのか。

 動いている時には殆ど姿は見えないんだけど、立ち止まって弓を構えた瞬間に顔が見えた。

「……なんでさ」

 全身の筋肉を(みなぎ)らせながら弓を引いていたのは、ハリウッドスターのスタ●ーンだった。

 首まで伸びた髪に赤い鉢巻、そして爆薬が仕込んである弓を使ってるところを見ると、あれってもしかしてランボーなのか?

 というかさ、現実であんなポンポン敵を倒せるっておかしいよなぁ。

 引きつる顔を必死に押さえてると、村全体に響くような木を叩く音が鳴った。

 慌てて視線を他に向けると、ランボー(でいいや、もう)が足止めし切れなかった騎士の一団が、村に向けて突進してきているのが見えた。

「くそっ!? ここには美遊がいるのに!」

 舌打ちを漏らしながら踵を返した俺は、美遊に部屋から出ないように言いつけて外に飛び出した。

 英霊エミヤに置き換わりつつあるこの身体で、何処まで戦えるか分からない。

 このまま力を行使し続ければ、待っているのは破滅だけ。

 力を貸した本人からの忠告なのだ、嘘偽りはないだろう。

 それでも俺は妹を、美遊を護りたい。

 あの世界でエインズワースに奪われた時のような気分をもう一度味わうなんて、絶対にゴメンだ。

 俺が村の入り口に辿り着いた時には、既に戦端は開かれていた。

 隊伍(たいご)を組みながら襲い掛かってくる粛清騎士達を、俵さんや三蔵法師、アーサーさんが必死に村の外で押さえている。

「早く加勢しないと……ッ! 武装練金!!」

 シルバースキンを(まと)ってみんなに合流しようと一歩踏み出した瞬間、総毛立つような感覚に襲われた。

 真っ白になった思考はそこで機能不全を起こしてしまったが、身体に染み付いた英霊エミヤの戦闘経験は別だった。

 殆ど無意識で干将・莫耶を投影して交差するように頭上で掲げると、次の瞬間に身体が潰れるかのような強烈な衝撃が来た。

 吹き飛ばされながらも、地面に足を噛み付かせて転倒を回避する。

 あまりランクの高い宝具ではないが、頑丈さだけは折り紙付きである一対の中華刀が手の中で崩れ去っていく。

「ぐぅ……ッ!? なんて……バカ力…!?」

 骨格がバラバラになりそうな痛みの中で顔を上げると、赤いラインが入った強固な銀鎧に猛牛の角を思わせる飾りが付いた重厚な兜を被った騎士がこちらに剣を向けている。

「オレの一撃を受けるとは、少しはやるじゃねえか。褒美としてこのモードレッド様が直々に遊んでやるよ」

 兜越しに放たれる愉悦と憤怒が入り混じった声もそうだが、俺は目の前の騎士が放った名前に息を飲んだ。

 モードレッド。

 アーサー王とその姉の間に生まれた不義の子であり、アーサー王伝説に終止符を打つ反逆の騎士。

 奴の言葉が本当だとすれば、今から相手にするのはクラスカードから英霊の力を借り受けた魔術師とは違う、本当の英雄という事になる。

 だが、例えそうだとしても退くわけにはいかない。

 後ろには美遊がいるんだ。

 奴等の目的は分からないが、聖抜に選ばれてしまったあの娘も狙われる可能性は十分にある。

 聖杯戦争を勝ち抜いて、あの滅び行く世界から神稚児の辛い役目から美遊を解放したんだ。

 こんなイカレた世界に縛り付けられてたまるものか!!

「それはありがたいな。だったらお前の部下が全滅するまで相手をしてもらおうか!!」

 両手に再び干将と莫耶を投影し、俺は一気にモードレッドの懐に飛び込んだ。

「甘いんだよッ!!」

 初手である干将による袈裟斬りは、力任せに振られた奴の剣によって大きく弾かれる。

 たった一合しか刃を合わせていないにも拘らず、身体の芯にまで響く衝撃。

 だが、そのくらいで音を上げてはいられない。

 続く莫耶の斬り上げも籠手で弾かれ、こちらは大きく隙を晒してしまう。

「おらぁ!!」

 不良のようなガラの悪い掛け声と共に振り下ろされる騎士剣。

 それは大きく体勢を崩した俺では対処が出来ないものだった。

 もっとも、それはこちらの隙が本物だった場合だ。

 勢い良く脳天に向けて降り注ぐ刃。

 それを視界に納めながら、俺は弾かれた勢いを殺さずに身体を反転させ、全ての勢いを込めた干将を剣の腹に叩き込んだ。

 魔術による身体能力の強化ともろもろの勢いが込められた干将は、モードレッドの剣をあらぬ方向に弾き飛ばす。

「………ッ!?」

「おおおおおおおおおっ!!」

 体勢を崩し大きく泳いだ胴に、続けざまに放った莫耶の刃が食らいつく。

 だが甲高い金属音と共に此方の腕に伝わって来たのは、慣れてしまった肉を断つ感覚ではなく硬い物に棒を打ち付けた時のような痺れだった。

「そんな鈍らにオレの鎧が───抜けるわきゃねーだろうがッッ!!」

「がっ!?」

 モードレッドに怒りの声と共に視界がブレた。

 頭が吹っ飛ぶかと思うほどの衝撃に身体が大きく弾き飛ばされたが、頬の内側を噛み裂いた痛みを気付けにして何とか踏ん張れた。

 腕を振っただけで数メートルも吹っ飛ばされるなんて、やっぱり英霊ってのはトンデモない。

「まだ終わりじゃねーぞ、オラァッ!!」

 全身から魔力を噴き出して、此方へ突っ込んでくるモードレッド。

 俺は黒塗りの弓を投影し、後ろに跳びながら狙いを付ける。

 干将・莫耶の刃が通らないのなら、並の剣を矢に変えても効果は無いだろう。

 なら、打てる手はアレしかない。

 脳裏へ設計図を起こすのはドリルのような形状の剣。

 ケルト神話の英雄フェルグス・マック・ロイが振るった魔剣『カラドボルグ』

 それを英霊エミヤが矢に改造した『偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)』だ。

 奴の鎧が如何に強固だろうと、エミヤの知識の中でも屈指の威力を誇るコレならば……ッ!!

投影(トレース)───ッッ!?」

 投影の為の魔力を流そうとした瞬間、内部を食い荒らされるような激痛が全身を奔った。

 恐らく英霊エミヤへの置換(ちかん)が進んだ事による弊害だろう。

 俺は咄嗟(とっさ)に『偽・螺旋剣』の投影を破棄し、冬木で言峰から買った事がある黒鍵を矢として投影し、奴に向かって放つ。

 狙いは兜に空いた目の部分。

「しゃらくせぇっ!!」

 だが、それも奴の剣によって容易く打ち払われてしまう。

「小手先だけのザコ野郎がッ! そろそろくたばりやがれぇっ!!」

 更なる加速によって間合いを詰めてきたモードレッドが振り下ろす刃を、ギリギリのタイミングで投影した干将・莫耶で防ぐ。

「ぐっ……はあっ!!」

 刃の方は辛うじて防ぐことが出来たが、怪力によって地面に叩きつけられた俺は、そのまま数度バウンドして地面を削りながら吹き飛ばされた。

「……ごほっ……」

 軋む身体を起こしながら頬の内側から流れた物と喉からせり上がったもの、その二つが混じり合った血反吐を吐き捨てる。 

 全身がバラバラになるような衝撃だったが、シルバースキンが護ってくれたお陰で何とか戦える。   

 ……剣を交えたのはほんの少しだが、それでも確信した。

 奴と俺とでは実力が違いすぎる。

 少なくとも出し惜しみをして勝てる相手じゃない。

 だったら、やるしかない。

 全力で無理でも、死力を尽くせば届くかもしれない。

 元々、美遊を助けるために使い切るつもりだった命だ。

 今更惜しむ理由なんてどこにある。

 覚悟を決めた俺は、左手を肘に添えて右手を真っ直ぐに突き出す。

 今から使うのは英霊エミヤの奥の手、本当の意味での彼の『宝具』だ。

 『正義の味方』だった彼のコレは、『悪』である俺では扱いきれない。

 だからこそ、俺が使えるように改変する。

 普通ならそんな事は絶対に無理だ。

 だが、平行世界の同一人物であり彼の経験と起源を譲り受けた俺ならば……ッ!!

「体は剣で出来ている……」

「あん?」

 俺の言葉にモードレッドが怪訝(けげん)そうな顔をするが、そんな事は気にしていられない。

「血潮は鉄で、心は硝子……」

「へっ、なんだそりゃ。東洋で言うところの念仏のつもりかよ」

 念仏か、言いえて妙だな。

 奴の言う通りだ。

 これは念仏になるだろう。

 奴と、そして俺自身への。

「幾たびの戦場を越えて不敗……」

「いい加減、ウザってぇぞ」

 言葉と共にモードレッドが剣を構える。

 チッ、詠唱にはもう少しかかるってのに……っ!?

「たった一度の敗走もなく、たった一度の勝利もなし……っ!」

「黙れってんだよぉッ!」

 先程と同じく魔力を漲らせながら突っ込んできたモードレッドの一撃を、咄嗟に展開した『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』で防ぐ。

 無茶な投影だった所為か、魔術回路が軋む音が聞こえた。

 だが、その程度で音を上げてなんていられない。

遺子(いじ)はまた独り、剣の丘で細氷(さいひょう)を砕く……」

「テメェ……ッ!」

 『熾天覆う七つの円環』を砕きながら、モードレッドは魔力で出来た薄紅の花弁越しにこちらを睨む。

 もう少し……もう少しだ!

「けれど、この生涯はいまだ果てず……」

「ウゼェってんだよぉ、ザコがぁぁっ!!」

 ガラスが砕けるような音と共に、奴と俺を(へだ)てていた薄紅の花弁が砕け散る。

 『熾天覆う七つの円環』は本来は対投擲武器のものだ。

 英霊の放つ斬撃を止めるには荷が重すぎたんだろう。

 だが───

「偽りの体は」

「いい加減、くたばれぇぇぇぇっ!!」

 再度振り上げられたモードレッドの剣がこちらを襲う。

 だが───遅いッッ! 

「それでも剣で出来ていた――――!!」

 最後の一節を口にした瞬間に世界が裏返った。

 蒼天は光一つない黒一色に。

 汗ばむくらいの気温は肌を斬る程の冷気と吹雪に。

 そして乾いた土で出来た村の入り口は、無数の剣が突き立つ雪原に。

 これが英霊エミヤの『宝具』固有結果『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)

 術者の心象風景で現実世界を塗りつぶし、内部の世界そのものを変質させる魔法に最も近いと言われる魔術の奥義。

 眼下に広がる、この殺伐とした風景が俺の心の中というワケだ。

 雪に覆われた丘に突き立つ剣達が、美遊を選んだ事で滅びを免れなくなった、元の世界の人達の墓標に見える。

 そんな下らない事が頭を過ぎってしまう。 

 俺は空振りした剣で雪を撒き散らしているモードレッドの後ろ姿を見据えながら、傍らに突き立つ剣に手を掛けた。

「こと世界、空想と現実」

「テメエ、いつの間に……!? それにこの景色……ッ!?」

 背後に立つ俺と変わり果てた周囲に気付いたモードレッドは、混乱を隠そうとせずに周囲を見渡している。

「内と外を入れ替え、現実世界を心の在りようで塗りつぶす。魔術の最奥、固有結界」

「固有結界……。母上から聞いた事があるぜ、魔法に限りなく近い禁呪だってよ」

「そういう事だ。この結界は俺を倒さない限り、解除されない」

 手にした名も無き剣を引き抜いた俺は、その切っ先を目の前の反逆の騎士に向ける。

「今からお前が挑むのは無限の剣……。悪いが付き合ってもらうぞ、俺の(からだ)が尽きるまで!」

「上等だぁ!!」

 三度、魔力を放出しながら突撃を行うモードレッド。

 だが、そんなものはもう通じない。

「行けッ!」

 こちらの意思によって、周囲に突き立っていた剣が一斉にモードレッドに向けて牙をむく。

「なにぃッ!?」

 驚愕の叫びをあげて足を止めるモードレッド。

 周囲から矢継ぎ早に放たれる剣群を剣と空いた手で撃ち落としているが、当然の事ながら手数はこちらの方が上だ。

 俺は再度弓を投影し、周辺から集まって来る剣を矢に変えてモードレッドに向けて放つ。

 ここにある剣は玉石混合で、高ランクの宝具も登録されている。

 だが俺が使用している所為か、数発は命中しているものの奴の鎧を抜く程のモノはない───。

 いや、違うな。

 モードレッドの奴、質の低い物は無視して高ランクの剣だけを狙って撃ち落としてる。

 これでは『偽・螺旋剣』を撃ち出しても仕留められる保証はない。

 逡巡(しゅんじゅん)は一瞬だったが、その隙を見逃す程円卓の騎士は甘くなかった。

 剣群の中に高ランクの武器の姿が消えた瞬間を狙っていた奴は、襲い来る剣を魔力を放出して弾き飛ばしたのだ。

「ザコの分際で好き勝手やってくれやがって……! 固有結界だか何だか知らねえが、纏めてブッ潰してやるッ!!」

 怒声と共にモードレッドが剣を正眼に構えると、健を中心として奴が纏っていた魔力が赤い電流を帯び、兜が分解しながら鎧に収納されて奴の顔が露わになる。

 顔立ちはアーサー王によく似ているが、張り付いた獰猛な笑みの所為で酷く粗野な感じだ。

「……これこそは、わが父を滅ぼし邪剣ッ!」

 モードレッドが大上段に振り上げた剣に、奴が纏っていた魔力と赤雷が収束していく。

 その力の膨大さに思わず背筋が凍った。

「跡形も無く消し飛びやがれッ! 『我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)』!!」

 振り抜かれた切っ先から放たれたのは、深紅の暴虐だった。

 破壊のエネルギーと化した魔力は赤雷と化し、進行方向の剣達を蹂躙しながらこちらに迫る。

「クッ……! うおおおおおおおおっ!!」

 俺の叫びに応じるように剣が群をなして、赤雷に挑んでは消えていく。

 幾十幾百の剣が犠牲になるがこれでいい。

 神秘は神秘によって打ち消される。

 ならば奴の宝具が如何に強力だろうと、ここにある無限の剣をぶつければ威力の相殺は可能なはずだ……ッ!! 

「野郎、ふざけやがって! おらああああああっ!!」

 モードレットの咆哮と共に赤雷の出力がさらに上がる。

 凌ごうと呼び出した追加の剣群を蹴散らして、此方を飲み込まんとする破壊の権化。

 だが───

「『熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)』!!」

 突き出した左手を中心に花開いた薄紅の花弁が赤雷を阻む。

 着弾の瞬間には手が砕けるかと思うほどの衝撃があったが、歯を食いしばってそれに耐えた。

「ぐううう……っ!? あああああああああああッッ!!」

 次々と砕けていく花弁の音を聞きながら、俺は吼えた。

 軋む身体と次第に左手へと近づいてくる熱。

 限界か、と諦めの言葉が脳裏をよぎった時、ようやく赤雷は力を使い果たしてその姿を消した。

「信じられねぇ……。あの野郎、俺の真名解放を凌ぎきりやがった」

 再び装着された兜越しに呆然と呟くモードレッドを睨みながら、俺は荒い息を整える。

 ……参ったな。

 流石は本物の英霊の宝具、威力は聖杯戦争で戦ったインストールされたアーサー王の聖剣を大きく上回っている。

 奴がどれだけの間隔であと何発宝具を撃てるのかは分からないが、こっちはさっきの一発を防ぐのでいっぱいいっぱいだ。

 いくら美遊の魔力に支えられてるとはいえ、結界も長時間維持は出来ない。

 その上、素の力には天と地ほどの開きがあり、むこうはほぼ無傷だがこっちは満身創痍。

 さらには奴の防具に通用する武器も数少ないと来た。

 状況は(わら)っちまいそうなくらい不利だ。

 けど、付け入る隙は有る。

 奴にもう一度宝具を撃たせることが出来れば、このほぼ詰んでしまった盤上をひっくり返す事も可能かもしれない。

「今のがクラレントか。……大したことないな」

 息を整え、此方に余裕がないのを悟らせない様に口を開く。

 本当のところは全身冷や汗塗れだから、顔が見えないシルバースキンは本当に助かる。

「あ”!?」

 ヤンキーの恫喝(どうかつ)にしか聞こえないような声を上げてこちらを睨みつけるモードレッド。

 ほんとうにガラが悪いな、こいつ。

「聞こえなかったのならもう一度言ってやる。お前の剣なんて大した事は無い。アーサー王の聖剣に比べれば、(なまく)らもいいところだ」

「テメエッ!?」

 激昂して襲い掛かろうとするモードレッドだが、俺の手に握られた剣を見た途端に目を見開いて動きを止める。

「それは……オレのクラレント!? テメェッ! なんだそりゃあッッ!?」

「言ったろう、ここは無限の剣を内包する世界だと。当然、お前の剣もあるさ」

 もちろん嘘だ。

 このクラレントは今投影して造りだしたものなのだから。

「なんなら今から真名解放を撃ち合うか? この剣は贋作だが負けない自信があるぞ」

「ふざけんなよ、テメエ。そんなチャチな偽物で俺に勝てるワケねーだろ……」

「どうかな? 偽物が本物に勝てないなんて道理は無い。担い手が未熟だったら特に、な」

 瞬間、モードレッドの周辺が弾け飛んだ。

 宙を舞う剣と土の先には、帯電した紅い魔力を纏った反逆の騎士がこちらに切っ先を突き付けている。

 こちらへの怒りと憎悪に塗れた奴の顔には、例の兜は無い。

「上等だ、ペテン野郎! このクソッタレな世界諸共、跡形も無く消し飛ばしてやるよッ!!」

 よし! 乗ってきた!! 

「やってみろよ、やれるもんならなぁ!」

「くぅたぁばれえええぇッ! 『我が麗しき(クラレント)

 最後の挑発によって奴が剣を振り上げると同時に、俺は思いっきり地面を蹴った。 

 魔力によって限界まで強化した両足は、モードレッドとの間合いを一瞬にしてゼロにする。

 虚を突かれて呆然となった奴の懐に飛び込んだ俺は、右手のハリボテでしかないクラレントを破棄して最後の切り札を切る。

「シルバースキン "リバース" !!」

 俺の叫びに応えて、全身を包んでいたシルバースキンはモードレッドの身体を包んでいく。

 瞬きをする間に装着は完了し、モードレッドは頭部以外はすべてシルバースキンに覆われた状態になった。

「クソッ、動けねぇ!? なんだこりゃあ!?」

 突然の事に混乱するモードレッドの声が結界の中に木霊する。

 シルバースキン "リバース"

 シルバースキンのもう一つの姿で表が着用者の身を護る『防護服』なら、こちらは敵の動きを封じ攻撃を全てシャットアウトする『拘束服』だ。

「 ――――投影、開始(トレース・オン)

 声を荒げるモードレッドをよそに、俺は最後の投影を行う。

「 ――――投影、装填(トリガー・オフ)

 天高く掲げた右手に握られているのは、身の丈以上の大きさを誇る岩を削りだして造り上げた斧剣だ。

「テメエ……ッ!?」

 こちらの持つ得物のあまりの異様と、その用途を想像して反逆の騎士は絶句する。

 だが、すぐさま怒りに顔を真っ赤にしてこちらを罵りだす。

「ペテン野郎がッ! 真名解放の勝負だったんじゃねーのか、汚ねぇぞ!!」

「ああ、汚いよ。───だから?」

 おそらく、何の感情も籠っていないこちらの目に二の句を飲み込んだモードレッド。

全工程投影完了(セット)――――是、射殺す百頭(ナインライブズ・ブレイドワークス)

 繰り出される超高速の九連撃。

 その全てを無防備な顔面に食らったモードレッドは、首から上を失ってその場に倒れ伏した。

 奴の身体が光の粒子になるのを見届けた俺は、固有結界が解除されるのと同時にあおむけに倒れた。

 身体も魔力回路も限界だ。

 もう指一本動かせない。

 こちらを気遣うアーサーさんや三蔵法師の声が聞こえるという事は、むこうも無事に敵を撃退できたのだろう。

 その事に安心した俺が半分下がった瞼を閉じようとした時、異様なモノを目にした。

 蒼穹から降り注ぐようにこちらに迫って来る白い光。

 最初は点くらいだった代物なのに、今では自分の手くらいの大きさになっている。

 それに感じる魔力も桁が違う。

 アレに比べたらモードレッドの真名解放なんて子供のおもちゃだ。

「逃げろ! あれは獅子王の聖罰の光だ!! アレを喰らったらこの村なんて一たまりも無いぞ!!」

 村の人たちの声に立ち上がろうとするが、此方の意思に反して身体はピクリともしない。

 クソッ! はやく美遊を迎えに行かないといけないのに……ッ!?

 こちらがモタモタしている間にも光はどんどんその大きさを増していき、今では視界に映る空の青すべてを覆い尽くしてしまった。

 絶望のまま呆然と空を見上げていると、ジェット音と共に見慣れた白い鎧が見えた。

 ヴァーリ・ルシファー。

 異界のトンでも超人の片割れだ。

「なかなかのエネルギーだな、アルビオン」

『ふん、卑王を葬ったという聖槍か。だが、この程度では俺達には通じない。そうだろう、ヴァーリ』

「ああ、その通りだ」

『それでどうする? 覇龍になればこの程度容易く半減で消し去れるが』

「……いや。折角だ、あのエネルギーを頂いてしまおう」

 ……うん?

 なんだか不穏なセリフが飛び出したぞ。

『ほう、あの機械人形から奪った能力を使うか。たしかにアレを極めれば、バアル家の『滅びの魔力』も含めて、エネルギー攻撃が通用しなくなるな』

「そういう事だ。アルビオン、準備を頼む」

『うむ』

 ヴァーリの声にアルビオンが答えると、鎧の籠手の部分が変化するのが見えた。

 なんというか、手の部分が大きくなって肘から身体に左右一本ずつチューブが伸びている。

 そしてそのまま聖槍のエネルギー向けて飛び立つと、接触の瞬間に両手を向けてこう叫んだ。

「吸い取ったぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 すると信じられない事に、ヴァーリの手にエネルギーがドンドン吸い込まれて行き、十秒も経たずに聖罰の光は跡形も無く消えてしまったではないか。

「ふん、見た目と違って貧弱だな。これでは覇龍を十分保たせるのが精々じゃないか」

『あの出来損ないを倒した程度だ。この位が妥当だろう』

 理不尽極まりない事を口にする一人と一匹の言葉を聞きながら、俺は安心から来る眠気に身をゆだねた。

 

 

 

 

 さて、ようやっと山岳地帯の集落に付いた訳だが、そこは何ともエライ事になっていた。

 なにがあったのかと言うと、俺達が来る少し前に聖都の騎士達の襲撃があったらしい。

 騎士の多くは山に住む謎の傭兵が倒したし、生き残りも俵さんやアーサーの手によって対処したので村人に被害は無かった。

 獅子王が村を壊滅させる為に放った聖槍の一撃も、ヴァーリの新必殺技である『エネルギー吸収』によって奴の糧になって終わった。

 というか、あいつもそろそろ自重した方がいいと思う。

 掌からエネルギーを吸い取るって、ドラゴンボールの人造人間19号・20号の技っていうか機能じゃねーか。

 白龍皇の鎧で再現ってどんな原理でやってんだ、いい加減にしろ!

 ちなみにこう言ったら、『お前が言うな』と返された。

 失礼な、俺は基本的に人間が習得できる技しか身に着けとらんわい。

 おっと、話が逸れたな。

 村に被害が無かったとはいえ、まったく問題が無かったわけじゃない。

 なんと敵の首領格とである円卓の騎士モードレッドを倒した衛宮君が、危険な状態になっているという。

 意識が戻らないうえに体温の上昇が著しく、内臓機能も低下しているらしい。

 彼が収容されている民家の一角に向かった俺は、ベッドに寝かされた衛宮君の容態を確認する。

 ……刀傷や刺し傷といった物は無し。

 打ち身や肉離れに近い症状は手足を初めとして全身にあるものの、内臓器官に関しても異常は見当たらない。

 どう見ても危篤状態になるような怪我ではないのだが、何故こんな不調が続いているんだ?

「なんだぁ、こりゃあ?」

 不審に思いながらも氣脈や経絡を調べて、俺は驚きに声を上げてしまった。

 衛宮君の経絡はなんというかグチャグチャだったのだ。

 例えるなら、成人男性と少年のパーツをデタラメに継ぎ接ぎにしたというべきか。

 しかもタチが悪い事に、継ぎ接ぎされた部分が同一人物のモノのようで、不完全ながら機能しているうえに徐々に衛宮君本来の身体を侵食していっている。

 なんとも特異なケースに首を捻っていると、部屋に来客があった。

 入り口に目を向けると、そこに立っていたのは冬木のアーチャーだった。

「病人の治療中だ。用事がないなら入室は遠慮してくれないか?」

「これは失礼。治療の役に立つ情報をとお邪魔したのだが」

「……すまん。ちょっとばかり特異な症状だったんで気が立ってた。聞かせてくれ」

 こちらは素直に頭を下げると、アーチャーは小さく頷いて口を開く。 

「衛宮士郎は何らかの手段を用いて平行世界で英霊へと至った己へ繋がり、その力を手に入れたのだ」

「英霊って、衛宮君は未来で英雄になるってのか?」

「そいつがではない、平行世界の己といっただろう。衛宮士郎という人間の中には、そういった可能性もあるという事だ」

「ふぅん。それで?」 

「方法までは分からんが奴は英霊の座にある可能性にアクセスし、その魔術回路と技術全般を借り受けた。しかし、そんな破格の力を無償で手に入れられるわけではない。奴は力を振るう代償として、使うほどに英霊へ至った自分に浸食されていくようになったのだ」

「なるほどな」

 原因は分かった、問題はその対処だ。

「どうするつもりだ?」

「今考えてるよ」

 試すようなアーチャーの問いに言葉を返して、俺は頭を回転させる。

 これが赤の他人からの浸食なら、呪法なり因果律操作なりで引き離した後で『聖母の微笑』を使って回復させれば何とかなる。

 だがしかし、今回は年齢差とか種族差はあっても同一人物だ。

 本人と浸食先との境界は曖昧な上に、一部は癒着しているような状態で一体化している。

 衛宮君本来の部分への悪影響を思えば、引き剥がすというのは使えない。

 ならば、浸食部分の因果を操作して衛宮君の物と変わらない様に変質させるしか無いワケだが、果たして俺の腕でそこまでの精密操作が可能だろうか?

 下手をすれば衛宮君の可能性を潰したり、最悪の場合は逆の意味で適合しなくなるかもしれない。

 そうなった場合は、障害が残るのを覚悟で引き剥がす他なくなる。

 さて、どうしたものか……。

「何を悩んでいるのかは分からんが、手を出すのなら早くした方がいい。小僧に残された時間は思っているより短いぞ」

「わかってるよ」

 アーチャーの声に頭を掻きながら答える。

 あれだけ経絡がガタガタなのだ、身体がそう長く持つわけがない。

 そうだとしても、自分の身体ではなく他人様の身体で博打を打つのは戸惑ってしまうのだ。

 ため息と共に苛立ちを吐き出していると、再び入り口のドアが開いた。

 目を向けた先には、目じりに涙を溜めた美遊嬢がベッドに寝かされている衛宮君を見つめている。

「お兄ちゃん!」

 制止する間もなく駆け込んで来た美遊嬢は、ベッドで荒い息を吐く衛宮君の枕元に噛り付いて何度も声を掛ける。

 だが当然の事ながら返事は無い。

 ベッドの脇にある水入り桶の中にあった手ぬぐいで衛宮君の額の汗を拭いた後、美遊嬢は涙を湛えた目でこちらを見た。

「お願いします。お兄ちゃんを……お兄ちゃんを助けて」 

 彼女が絞り出した涙ながらの懇願に、俺は大きく息を付いた。

 この位でオタついて二の足踏むなんてガラじゃねえな。

 いつもの俺なら『失敗したならもう一回因果を弄ればいい』くらいは言いそうなのに、なにをビビってたんだか。

 自嘲交じりの考えを打ち切った俺は、思い切り自分の頬に拳を入れた。

 部屋の中に鈍い音が響き渡り、頭の中にジンとした痺れが走る。

「……なにをしているのかね?」

「気合を入れただけだが」

「血がボトボト出てるよ」

「ちょっとしくッて、口の中を切っちゃったんだ」

 口元を拭いながら答えるとアーチャーは呆れたような顔になり、美遊嬢からは予備の手ぬぐいを渡された。

「気合を入れるために自傷行為とは、何処の体育会系かね君は」

「MUGEN部ですが何か?」 

 『MUGEN部?』と首を捻っているアーチャーを尻目に、俺は再び衛宮君に向き直る。

 『気合』のおかげで口の中が滅茶苦茶鉄錆臭いけど、これで気合は入った。

 あとはバシッと決めるだけだ。

 額に手を当てて氣脈にアクセスした俺は、検査の時よりも深く彼の中心に意識を沈めていく。

 経絡を通り、闇と吹雪に覆われた無数の剣が突き立つ丘を越え、魂魄の中枢にある彼の因果に辿り着くと、英霊に置き換えられた箇所を一つづつ衛宮君の物に直していく。

 ただし、戻していくのは彼の健康上害がありそうな肉体部分だけだ。

 経絡の方は活性化しているだけでそれ程変化していないし、こういう部分を弄ると支障が出やすい。

 身体を元に戻すと、それに呼応して経絡の流れも元に戻っているところを見るに、このままでも問題はあるまい。

 そうして集中する事しばし。

 全ての箇所の操作を終えた俺は術を解いて意識を浮上させた。

 一息ついて部屋を見回すと何故かウチのメンツやカルデアメンバー、山岳地帯組がいた。

 というか、狭いんだが。

「シン、シロウは大丈夫なのですか?」

 何故か真っ先に衛宮君の安否を問うてくるご先祖ちゃん。

 術が成功した事を伝えると、安心したように小さく笑みを浮かべた。

 ふむ、衛宮君と知り合いだったのか?

 定員オーバーなので美遊嬢に任せて病室を出ると外には月が昇っていた。

 思った以上に時間がかかったらしい。

 その後、みんなから俺が治療を行っている間の事を聞いたのだが、カルデア組は呪腕さんの先導で初代山の翁の霊廟に行ったらしい。

 なにか用があったのか? と聞いたところ向こうから呼ばれたようで、廟の中では初代さんに操られた静謐嬢と闘ったり、アトラス院とかいう錬金術師の本拠の情報を貰ったりと色々あったらしい。

 ウチの連中と山岳地帯組は襲撃の後始末と村の警護を行っており、特に異常はなかったそうな。

 その後、このクセのある面々で今後の予定を話し合った結果、カルデア組がアトラス院から戻ってきたら聖都に攻め込む事になった。

 俺達は将軍様にリミットを切られているし、山岳組やカルデアも今回の聖槍の一撃を重く見ているようだ。

 そのアトラス院とかの場所は割れているらしいので、明日の朝一で俺達が運んでやれば昼過ぎには帰ってこれるだろう。

 侵攻はその後ということになる。

 けっこう色々と有ったが、この世界にいるのもあと一日。

 しくじることが無いように、聖杯動画大賞とはぐれ悪魔コンビ対策はしっかりしておこう。

 ん、獅子王?

 そっちはなんとかなるでしょ。     




 ここまで読んで下さってありがとうございます。

 久々に美遊兄視点、そして養父なみの外道戦法を取らせてしまいました。

 まあ、聖杯戦争を実質一人で勝ち抜いた彼なら、このくらいの絡め手はやりそうですね。

 さて、終わる終わる詐欺の閑話ですが、次こそは本当に終わらせるぞぉ!!

 いい加減本編もネタが集まって来たし、皆さんが採集決戦に将軍様を出せってリクエストするし!!

 あの人だしたら、他のキャラがみんな空気になるんですよ?

 マシュやドクターの献身なんて、「地獄の断頭台ィィッ!!」で台無しですよ!?

 多分、ゲーティア時点であの世に逝って、人王なんて湧いて出ませんよ?

 ……まったく。
 
 皆さん、肉成分大好きなんですから。

 それでは作者も覚悟を決めて書きますので、今しばし時間をください。

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